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    元スレ春香「冬馬くんかっこいいなあ……」

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    101 :

    続いて

    103 = 89 :

    春香「――――」

    冬馬「?」

    「……ちょ、は、春香!」

    春香「…………え?」

    「あ、あいさつ! あいさつ!」

    春香「あ! ああ、ご、ごめんなさい! わた、私、○○春香って言います! よ、よろしくお願いします!」

    冬馬「……『○○』?」

    「あ、ええと、春香? 今は普通に本名の方でいいんじゃないか? 別に学校の友達ってわけじゃないんだし……」

    春香「あ! そ、そっか! そうだよね! な、何度もごめんなさい! 改めまして、天海春香です!」

    冬馬「…………」

    春香「あ、って言っても、響ちゃんと同じ、765プロに所属してるアイドルの方の天海春香ちゃんとは、何の関係もありません! 別人です!」

    冬馬「……ああ。それは聞いてるけど」

    春香「はうあ! ご、ごめんなさい!」

    冬馬「いや、別に謝るほどのことじゃねぇだろ」

    春香「ご、ごめんなさい!」

    冬馬「…………」

    104 = 89 :

    「は、春香? ちょっと落ち着こう? な?」

    春香「そ、そうだね……ごめん」

    「いや、もう謝らなくていいから。まずは深呼吸、はい」

    春香「すー……はー……」

    「落ち着いた?」

    春香「……うん。ありがとう、響ちゃん」

    冬馬「えっと……もう、いいか?」

    春香「はう! ご、ごめんなさい! ……あっ」

    冬馬「…………」

    春香「あうぅ……」

    「は……はいはい! まあ初対面のあいさつはこのへんで!」

    春香「…………」

    冬馬「…………」

    「……えーっと……」

    冬馬「……なあ」

    春香「!」ビクッ

    「な、なんだ? 冬馬」

    冬馬「……さっきの『○○』って、何だ? 偽名?」

    「今更そこ!?」

    105 = 89 :

    冬馬「ふーん……アイドルの方と間違われないように、ね……」

    春香「そ、そうなんです」

    冬馬「…………」

    「まあ自分はもちろん、冬馬もアイドルの方の春香を知ってるわけだし、間違えたりするはずないからな。だから普通に本名の方でいいよね? 冬馬?」

    冬馬「いやまあ、俺は別になんでもいいけどよ……」

    春香「…………」

    「冬馬……そんなんだからもてないんだぞ」

    冬馬「!?」

    「まあいいや。とりあえず近くの喫茶店でも行こう。春香もいいよね?」

    春香「う、うん! もちろん!」

    冬馬「おい、我那覇。こう見えても、俺宛てのファンレターはユニット内では一番多いんだからな」

    「冬馬はもう黙ってた方がいいぞ」

    冬馬「!?」



    106 :

    ~喫茶店~

    「えっと、じゃあ改めてだけど」

    春香「…………」

    冬馬「…………」

    「春香、冬馬のことが好きなんだって」

    春香「ぶふぉっ!?」

    冬馬「うおっ!?」

    「は、春香大丈夫?」

    春香「ごほっごほっ……ひ、ひびきちゃ、いきなり何を……」

    「え? だってそれで冬馬に会いたいって……」

    春香「ち、ちがっ……そりゃまあファンとは言ったけど……」

    「ファンってことは好きなんでしょ?」

    春香「そういう意味ではそうだけど、そういう言い方したら大きく誤解を招くっていうか……」

    冬馬「……なあ」

    春香「! ご、ごめんなさい! ご本人を前に、私ったらなんて失礼なことを……!」

    冬馬「今のあんたの水の吹き出し方、まるでお笑い芸人みたいだったな」

    春香「!?」

    「そこ!?」

    冬馬「いやだってほら、バラエティとかだとおいしいじゃねぇか」

    「何で今バラエティの話なんだよ! それにこの春香は一般人なんだぞ!」

    冬馬「それは分かってるけどよ……」

    春香「…………」

    107 :

    大丈夫だ、あまとうは出ただけで笑いが取れる

    108 :

    やっぱりあまとうはかわいいなぁ

    109 :

    彼女にしたい男性アイドルNo.1

    110 :

    イケメンはアスペでも許される

    111 = 106 :

    「まったくもう。そんなんだから冬馬は『トークが下手ですね』ってよく芸人さんからいじられるんだぞ」

    冬馬「なっ! お、お前なあ、あれはその……そういうキャラの方が色々とおいしいからだっつうの!」

    「いーや絶対嘘だ。大体冬馬はそういうの計算できるタイプじゃないでしょ」

    冬馬「ぐっ……う、うるせぇな! つーか、今はそんなことどうでもいいだろ!」

    春香「…………」

    「はっ! そうだ! 今は春香が冬馬のことが好きって話だった!」

    春香「響ちゃん!? だからそれ違うって!」

    「え? 違うの?」

    春香「だ、だから私は冬馬く……天ヶ瀬さんのファンってだけで、そういうのとは違うんだってば!」

    「ふーん、そうなのか。残念だったな冬馬」ポンッ

    冬馬「なんで俺がいきなり残念がられなきゃいけねぇんだよ!」

    112 = 106 :

    春香「……ぷっ」

    「春香?」

    冬馬「?」

    春香「くくっ……あははっ」

    「春香」

    冬馬「…………」

    春香「あはは……ご、ごめんなさい。なんだか面白くって」

    「…………」

    冬馬「…………」

    春香「やっぱり二人とも、アイドルなんですね!」

    「えっ」

    冬馬「……いや、今のやりとりのどこにアイドル要素があったんだよ!?」

    春香「えっと、なんていうか……会話のテンポとか、ツッコミ? とか?」

    「それ、アイドル関係あるか……?」

    春香「で、でもなんかアイドルって感じがしたの! やっぱり私みたいな一般人とは違うんだな~って!」

    「……春香……」

    冬馬「…………」

    113 :

    冬馬「……別にアイドルって言っても、そんなに特別な存在ってわけじゃねぇぞ」

    春香「え?」

    「冬馬?」

    冬馬「……あんたさっき、俺のファンだって言ってくれてたよな」

    春香「え? は、はい」

    冬馬「それは俺が、アイドルだからだよな」

    春香「……?」

    冬馬「俺がアイドルっていう……あんたから見れば特別な存在だったから、あんたは俺のファンになった……いや、なってくれた。そうだろ?」

    春香「そ、それはまあ……そうですけど」

    「と、冬馬? 一体何を……」

    冬馬「でも今言ったように、アイドルだって普通の人間だ。別に何か、特別な存在ってわけじゃねぇ」

    春香「…………」

    冬馬「たとえば、今ここにいるあんただって……その気になれば、なれるかもしれねぇんだ。アイドルっていう、あんたにとっては特別な存在に」

    「!」

    春香「……えっ?」

    114 = 113 :

    春香「私が……アイドル?」

    冬馬「ああ」

    「と、冬馬!? 何言ってるの!?」

    冬馬「別に、一般論だよ。誰にだって可能性くらいはあんだろ」

    「そ、それはそうだけど……」

    春香「……私が……?」

    冬馬「…………」

    「は、春香? そんなに深く考えないで……」

    春香「……なんて、あるわけないじゃないですかー!」

    「春香」

    冬馬「…………」

    春香「そりゃあ、現役アイドルの冬馬く……天ヶ瀬さんからすれば、そういうものなのかもしれないですけど……」

    冬馬「…………」

    春香「やっぱり、何の変哲も無い一市民の私からしたら、アイドルなんて雲の上の存在ですよ、雲の上!」

    冬馬「……そうか」

    「……春香……」

    春香「…………」

    115 = 113 :

    冬馬「……さて、悪いが俺はそろそろお暇させてもらうぜ」

    春香「え?」

    冬馬「仕事の打ち合わせに行かなきゃいけねぇんだ」

    「あー、もうそんな時間か」

    春香「ご、ごめんなさい冬馬く……天ヶ瀬さん。お仕事忙しいのに、私なんかに付き合ってくれて……」

    冬馬「……別に、下の名前で良いぜ。いちいち言い直すの面倒だろ」

    春香「え、あ、はい! ご、ごめんなさい!」

    冬馬「あと、いちいち謝るのも無しな」

    春香「はぅ! ご、ごめ……んぐっ」

    「春香……」

    冬馬「……それと……」

    春香「?」

    冬馬「もしよかったら、だけど……連絡先、教えてもらってもいいか?」

    春香「えっ!」

    「と、冬馬!?」

    冬馬「……勘違いすんなよ。別に何か、変な下心があって言ってるんじゃないからな。ただ、これから何か連絡取ろうと思ったときに、いちいち我那覇を経由すんのも面倒くせぇだろ」

    「……あやしい」

    冬馬「そ、そんな目で見るんじゃねぇ! ……で、どうなんだ?」

    春香「え?」

    冬馬「連絡先だよ。もちろん嫌ってんなら、無理にとは言わねぇけど」

    春香「い……いいえ! そんな、嫌だなんて! こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」

    冬馬「……ああ。よろしく」

    「…………」

    116 = 113 :

    「えっと……冬馬行っちゃったけど、これからどうする?」

    春香「…………」

    「……春香?」

    春香「あ、ご、ごめん! 響ちゃん。ええと……何て?」

    「あ、いや……これからどうする? って聞いただけだけど……なんか、考え事でもしてた?」

    春香「ああ、うん……。なんか色々、信じられないなあって……」

    「? 信じられない?」

    春香「……うん。だって、そもそも響ちゃんみたいなアイドルと友達になれただけでも、普通に考えてありえないことなのに……その上、冬馬くんとまで連絡先の交換なんかしちゃって……」

    「あー……」

    春香「ちょっと、自分でも頭の整理が追いつかないっていうか……。もしかしてこれ、全部夢か何かじゃないのかな、とか思っちゃったりして……」

    「……夢、か……」

    春香「? 響ちゃん?」

    「……んーん。何でもない。それより春香、この後予定無いなら、もうちょっと自分に付き合ってくれない? 久々にショッピングとかしたいんだ」

    春香「! もちろん! 私なんかでよければ、いくらでも付き合うよ! 響ちゃん!」

    「えへへ……ありがと! 春香! じゃあ、行こっ!」

    春香「うんっ!」

    117 = 113 :

    ~ジュピター所属事務所~

    ガチャッ

    冬馬「ちぃーっす」

    翔太「おっはよー、冬馬くん」

    北斗「チャオ☆ 珍しいな、冬馬が最後とは」

    冬馬「まあな」

    翔太「もしかして、デートでもしてた?」

    冬馬「……なわけねぇだろ」

    北斗「おや? なんか今、変な間があったぞ?」

    翔太「冬馬くん? もしかしてホントに……」

    冬馬「だからちげぇっての。ちょっと知り合いに会ってただけだ」

    翔太「なーんだ。つまんないの」

    北斗「ま、冬馬は真面目だからね」

    冬馬「うるせぇよ」

    翔太「仕事さえきちんとやってれば、少しくらい遊んだって罰は当たらないと思うけどねー」

    北斗「そうそう。それにいつか、そういう寄り道が思わぬ形で助けになったりするものさ」

    翔太「あー、そうそうそれ! 僕もそういうことが言いたかった。時には寄り道も大事だよね、って」

    冬馬「…………」

    北斗「? 冬馬?」

    翔太「どうしたの?」

    冬馬「……自分の歩く道さえ、見失っていなければ……な」

    北斗「えっ?」

    翔太「冬馬くん?」

    冬馬「……何でもねぇよ。さ、早いとこ打ち合わせ始めようぜ」

    北斗・翔太「……?」

    118 :

    この春香は少し髪が長いのか…アリだな

    119 = 113 :

    ~同日夜・春香自室~

    春香「…………」

    春香「……やっぱりまだ、信じられない……」

    春香「なんていうか、こう……現実味が無いっていうか」

    春香「何の変哲も無いはずの私の人生が、どうしてこんなことになったんだろう……?」

    春香「嬉しいはず、なんだけど……いや、実際嬉しいんだけど……」

    春香「それ以上に……うーむ……」

     ブブブ……

    春香「わ。メール? 誰だろ?」

    春香「! こ、これって……!?」


    ----------------------------------------------------------------------------------------------

    差出人:天ヶ瀬冬馬

    件名:(無題)

    -------------------

    今日は、あんまり話する時間が無くて悪かったな。

    個人的に、もう少しあんたに聞きたいことがあるんだが、もしよかったら、来週の日曜日に会えないか?

    今度は、俺達二人だけで。

    ----------------------------------------------------------------------------------------------

    120 = 113 :

    のヮの<とりあえずここまで

    121 :


    かつてここまで女性に対して積極的な冬馬がいただろうか

    122 :

    あまとうが精神的イケメンすぎる
    いいわこれ

    123 :


    もがき苦しみながらメールの文章考えたんやろなぁ

    124 :

    丁寧に句読点打ってるな、何度も、見直したのかな。

    125 :

    ~一週間後・日曜日~

    春香(……約束の時間より、30分も早く着いてしまった……)

    春香(でもいいのかなあ……人気絶頂のアイドルとそのファンが二人きりで会うとか……これバレたら絶対やばいよね……)

    春香(とか考えながらも、結局こうして来てしまったわけだけど……)

    春香(まあなんだかんだでなんとかなるかな……先週も、変装していたとはいえ、二人も現役のアイドルがいたのに誰にも気付かれなかったし……)

    春香(それに、冬馬くんの『聞きたいこと』っていうのも、何なのか気になるしね)

    冬馬「おう」

    春香「うひゃあ!?」

    冬馬「そ、そんな大きな声出さなくてもいいだろ」

    春香「ごっ、ごめんなさい。全然気付いてなかったから……先週とは、また違った感じの変装なんですね。サングラスも、また違うのだし」

    冬馬「まあな。……一応言っとくけど、我那覇に言われたからじゃねぇからな!」

    春香「ああ、そういえば変って言われてましたもんね」

    冬馬「……そんなに変だったか? あれ……」

    春香「えっ! そ、そんなことないですよ! とってもかっこよかったです!」

    冬馬「そ、そうか? そうだよな! ははっ! 我那覇め、ざまぁみやがれ!」

    春香(……本当はまあ結構変だったけど)

    冬馬「? 何か言ったか?」

    春香「い、いいえ! 何も!」

    冬馬「そうか? ならいいんだけどよ……あ、それと」

    春香「はい?」

    冬馬「……もうちょっと、砕けた感じで話していいぜ。つうか、変にかしこまられると、かえって話しにくい」

    春香「あ、分かりまし……じゃない、分かったよ、冬馬くん。……これでいいかな?」

    冬馬「……ああ。んじゃ、改めて今日はよろしくな」

    春香「うん!」

    126 = 125 :

    春香「えっと、じゃあ今日はどんな感じで……」

    冬馬「まあとりあえず、適当にこのあたりぶらつこうぜ。時間は大丈夫なんだろ?」

    春香「う、うん。私は大丈夫。冬馬くんは?」

    冬馬「俺も今日は大丈夫だ。じゃあ早速行こうぜ」

    春香「うん」

    春香(……『聞きたいこと』っていうのは……後で、ってことなのかな?)

    冬馬「お、なんか面白そうな雑貨屋があるじゃねぇか。ちょっと入ってみようぜ」

    春香「うん。……わあ、なんかごちゃごちゃしてるね」

    冬馬「こういう店って、意外と良いアクセ置いてたりするんだよな」

    春香「へー」

    春香(……なんかこれ、普通にデートみたいだなあ……)

    冬馬「? どうかしたか?」

    春香「う、ううん! 何でも。あ、このチョーカーとか結構良いんじゃない?」

    冬馬「……お前、割と変なセンスしてるんだな」

    春香「冬馬くんには言われたくないんだけど!?」

    冬馬「えっ」

    春香「あっ」

    冬馬「…………」

    春香「……え、えっと」

    冬馬「……ふっ」

    春香「えっ」

    冬馬「良いんじゃねーの。今の」

    春香「……え?」

    冬馬「バラエティとかでウケそうだ」

    春香「またバラエティの話!? それはもういいよ!」

    127 = 125 :

    春香「あっ」

    冬馬「…………」

    春香「え、ええと……」

    冬馬「……ようやく、らしくなってきたって感じだな」

    春香「え?」

    冬馬「……なんでもねぇよ。さ、次行こうぜ」

    春香「う、うん……」

    春香(らしくなってきたって……どういう意味だろう?)

    春香(冬馬くんと私は、会うのも今日でまだ二回目なのに……)

    冬馬「あ、クレープ売ってら」

    春香「そういえば、冬馬くんって甘いもの好きなんだよね」

    冬馬「? そうだけど……何でそんなこと知ってんだ?」

    春香「何でって……ラジオとかでよく言ってるじゃない」

    冬馬「あー……そうか。そういえばお前、俺のファンなんだったな」

    春香「何でそんな醒めた言い方なの!?」

    冬馬「いや、なんかあんまそんな感じしねぇからよ……」

    春香「……え?」

    冬馬「まあいいや、とにかく食おうぜ。……すいません、チョコバナナクレープ一つ。お前は?」

    春香「あ、えっと、じゃあ私も同じのを……」ゴソゴソ

    冬馬「いいって。俺が出すよ」

    春香「でも」

    冬馬「いいから。今日は俺の方から誘ったんだから、これくらい奢らせろって」

    春香「あ、ありがとう……」

    春香(…………)

    春香(……そうだ。私は今、あの憧れのアイドルの、天ヶ瀬冬馬くんと一緒にいるんだ)

    春香(一緒にお店回って、クレープまでご馳走してもらって)

    春香(誰がどう見たって、デートにしか見えないような、このシチュエーション)

    春香(ファンであれば、もう死んでもいいと思えるほどに幸せな状況)

    春香(……のはず、なのに)

    春香(…………)

    春香(……何なんだろう? 私の、今のこの気持ちは……)

    春香(今、楽しいと感じているのは間違いない。それは間違いないんだけど……でも、)

    春香(……これは、私が本当に望んでいたものだったのかな……?)

    春香(…………)

    冬馬「…………」

    128 = 125 :

    冬馬「ほらよ、クレープ」

    春香「あ、ありがとう」

    冬馬「これ食ったら、ちょっとゲーセンでも行かねぇか?」

    春香「うん、いいよ」

    春香(……まあ、今は難しいことは考えなくていいか)

    春香(今が楽しいなら、それで……それで、いいよね)




    ~ゲームセンター~


    春香「冬馬くん、こういうとこ結構来るんだ?」

    冬馬「いや、そんなでもねぇけど……あ、あった」

    春香「?」

    冬馬「ほら、これやろうぜ」

    春香「これは……」

    春香(Dance Dance Evolution……通称『ダンエボ』とか『DDE』とかいう、全身(というか主に下半身)を使って遊ぶダンスゲームだ)

    春香(私はやったことはないけど、結構昔からあるゲームなので、他の人がやってるのを見たことはある)

    冬馬「結構良い運動になるぜ。いいだろ?」

    春香「うん、いいよ」

    冬馬「よっしゃ。じゃあ対戦な」

    春香「えー。現役のアイドルに勝てるわけないよ」

    冬馬「まあ、いいからいいから。な?」

    春香(冬馬くんはそう言って、素早く二人分のお金をゲーム機に投入した)

    春香(私は慌ててお金を払おうとしたが、冬馬くんに「いいから、いいから」と遮られてしまい……そうこうしているうちにゲームが始まり、私はまたも彼の好意に甘える形となってしまった)

    春香(……そして、注目の対戦結果はというと――……)

    129 = 125 :

    冬馬「……まあ、そりゃこうなるか」

    春香「…………」

    春香(……見事なまでに、私の惨敗だった)

    春香「だって私初めてなのに、冬馬くん、難易度最高に設定するんだもん……こんなのできるわけないよ」

    冬馬「いや、まあお前なら……と思ったんだけどな」

    春香「?」

    冬馬「でもよく考えたら、元からそんなに得意な方でもなかったよな……」

    春香「……?」

    春香(私には、彼が何を言っているのかよく分からなかった)

    冬馬「よし、じゃあゲーセンはこれくらいにして……次は、カラオケ行こうぜ」

    春香「カラオケ?」

    冬馬「ああ。いいだろ?」

    春香「うん、いいよ。あ、私冬馬くんの歌聴きたい!」

    冬馬「よし。じゃあ行くか」

    春香「うん!」



    春香(……憧れのアイドルと一緒にカラオケに行き、「観客は私一人だけ」という状況で……生歌を歌ってもらう)

    春香(こんなの、一生分の運を使い切ったって、まず起こりえないくらいの幸運だ)

    春香(私は、自分自身にそう言い聞かせるように、頭の中でそんな言葉を繰り返し唱えていた)

    春香(これでいい、これでいいんだ、と)

    春香(これ以上の幸せは、ありえないんだと)

    春香(そう、心の底から信じることができていれば――……)

    春香(私は本当に、『幸せ』だったのかもしれない)



    春香(……私は、夢にまで見ていたはずの、憧れのアイドルの生の歌声を聴きながら――……何故か、そんなことばかりを考えていた)

    130 = 125 :

    のヮの<とりあえずここまで

    131 :

    またいいとこで切るのか……

    この冬馬なら765の誰かと付き合ってる設定でも
    違和感ないきがする

    132 :

    先が気になるな

    133 :

    (主に下半身)に注目したのは俺だけじゃ無いはず

    134 :

    冬馬「……恋を はじめようよ♪」

     チャチャチャチャ チャッチャッチャッ チャッ

    春香「…………」

    冬馬「……天海?」

    春香「! あ、えっと……す、すごいねやっぱり! 思わず見とれちゃってたよ! あはは……」

    冬馬「…………」

    春香「はは……」

    冬馬「……なあ、天海」

    春香「な、何?」

    冬馬「俺、お前に聞きたいことがあるって言ってたよな」

    春香「あ、ああ……うん」

    冬馬「そのことなんだけどよ」

    春香「……うん。何?」

    冬馬「お前……本当は、アイドルになりたいんじゃねぇか?」

    春香「…………え?」

    135 = 134 :

    春香「私が……アイドル?」

    冬馬「ああ」

    春香「……ははは。やだなぁ、冬馬くん。何言ってるの?」

    冬馬「…………」

    春香「私みたいな一般人が――」

    冬馬「ほら、それ」

    春香「え?」

    冬馬「お前、何かにつけて『私みたいな一般人が……』って言うだろ」

    春香「それはだって、実際に……」

    冬馬「本心からそう思ってるやつは、そう何回も口に出して言ったりしねぇよ」

    春香「…………」

    冬馬「つまり、それだけ何回も口にするってことは……自分で自分に言い聞かせたいからじゃねぇのか」

    春香「…………」

    冬馬「『自分は一般人なんだ』『アイドルなんて遠い世界の存在なんだ』……ってよ」

    春香「…………」

    136 = 134 :

    春香「……ごめん、冬馬くんが何言ってるのか、ちょっとよく分からないよ」

    冬馬「…………」

    春香「そもそも私はアイドルじゃないし、別にアイドルになりたいわけでもないし……」

    冬馬「……そうか。変なこと聞いて悪かったな」

    春香「ううん。いいよ、別に」

    冬馬「……まあでもせっかくだし、一曲くらい歌ってみろよ」ピッピッ

    春香「え? これって……」

    冬馬「聴いたことくらいあるだろ? 去年の紅白でも歌ってた曲だ」

    春香「……そりゃ、知ってる、けど……」

    冬馬「じゃあ歌ってみてくれよ。案外、様になるかもしれねぇぜ?」

    春香「…………」

    春香(私には、やっぱり彼の考えが分からなかった)

    春香(空気を読まずに流れ出したイントロが、なぜだか無性に私の心をかき乱した)

    春香(彼の言うように、知らない曲ではない。いや、むしろとてもよく知っているような……)

    春香「……っ」

    春香(鼓動が早まる。曲名が画面上に表示された)


      天海春香 『乙女よ大志を抱け!!』


    春香「――――」

    137 :

    タイトルから想像できないシリアス

    続き来てくれ~

    138 :

    春香(アップテンポの曲調が、やけに耳に障る)

    春香(何故だろう。身体が、心が―――この歌を、拒絶している)

    春香「…………」

    春香(歌い出しのメロディーに入っても、私は一声も発することなく、歌詞の流れる画面を見つめ続けていた)

    春香「…………」

    冬馬「…………」

    春香(部屋に鳴り響くバックミュージックがサビに差し掛かったあたりで、私はようやく口を開いた)

    春香「…………ごめん、止めて」

    冬馬「…………」ピッ

    春香(音楽は止み、部屋には静寂が訪れた)

    春香「…………」

    冬馬「…………」

    春香「……ごめん、冬馬くん。私……帰るね」

    冬馬「…………」

    春香(私はテーブルの上に千円札を置き、逃げるように部屋を出た)

    春香(意外にも、彼は私を引き留めようとはしなかった)

    春香(……まるで、こうなることが分かっていたかのように)

    139 = 138 :

    春香(動悸が激しい。胸が苦しい)

    春香(カラオケボックスを出てからずっと、私は自身の異変を感じていた)

    春香(より正確に言うと、あの曲のメロディーを聴いてからだ)

    春香(アイドル天海春香の代表曲――『乙女よ大志を抱け!!』 )

    春香「……なんで……」

    春香(なんでこんなに――……)

    春香「……心が、痛いんだろう」

    春香(気が付けば、私は見知らぬ路線の電車に乗っていた)

    春香(おかしいと思いながらも、何故か途中で降りようという気にはなれなかった)

    春香(私は、まるでそうすることが当たり前であるかのように、知らないはずの目的地を目指して電車を乗り継いだ)

    春香「…………」

    春香(そうして降り立った駅は――……忘れもしない)

    春香(私が初めて響ちゃんと会った日に、彼女に送ってもらった駅だ)

    春香「――――」

    春香(駅の改札を出た私は、何かに吸い寄せられるように歩を進め始めた)

    140 :

    まってた

    141 = 138 :

    春香「…………」

    春香(人混みの中を、おぼつかない足取りで歩く)

    春香(私は、どこへ向かおうとしているんだろう)

    春香(……いや、本当は多分……分かっている)

    春香(ただそれを、必死に否定しようとしている私がいて)

    春香(そんなはずないよ、そうじゃないんだよ、って)

    春香(そんな簡単な言葉で、自分を騙せていたなら)

    春香(私はきっと、こんな所まで来ることはなかったんだろう)

    春香「…………」

    春香(見上げた先の小さなビル。その大きな窓に貼られた白いテープが、三つの数字を形作っていた)

    春香「……『765』……」

    春香(どうして私はここに来たんだろう)

    春香(どうして私はこんな所で立ち尽くしているんだろう)

    春香(こんな場所にあるこんな建物を、今の私は知るはずもないのに――……)

    春香「…………」

    142 :

    「――――」

    「――――」

    春香「…………?」

    春香(ふいに背後から、何かが私の耳に届いた)

    春香(行き交う人々の喧騒の中、それは私の意識の奥の方に、すぅっと入り込んできた)

    「すみません、買い出し手伝ってもらっちゃって」

    「いえいえ、ちょうど手が空いてましたから」

    春香「…………」

    春香(何の変哲も無いはずの、誰かと誰かの会話)

    春香(でもその瞬間、私は確かに直感した)

    「……あら? あれって……」

    「……まさか……」

    春香(ここで後ろを振り返らなければ、多分まだ私は『私』でいられる、って)

    春香(だからここで振り返ることなく、さっとこの場を立ち去れば――……)

    春香(きっと私は、まだ『私』のままでいられる)

    春香(……そこまで分かっていたのに、私は)

    春香「――――」バッ

    春香(振り返って……しまった)

    「…………っ」

    「…………!」

    春香(私の視界に、驚いた顔をした男女が映る)

    春香(私はそのうちの一人、男性の方を見て)

    春香(意識するより早く、その呼び名を口にしていた)

    春香「……プロデューサー……さん……?」

    143 :

    気になるー!また見にきます!

    144 = 142 :

    春香(私が自分で発した、その言葉の意味を理解するより早く)

    春香(眼前の『彼』は、私の目を見て、ゆっくりと口を開いた)



    「……はる……か……?」



    春香「――――」

    春香(その瞬間、頭の中に、)

    春香「…………ぃ」

    春香(とめどなく、色々な、ものが、)

    春香「…………い……」

    春香(溢れて――……)










    春香「いやぁあああああああああああああああああ!!!!」










    春香(……そこで、私の視界は暗転した)

    春香(薄れゆく意識の中、頻りに私の名前を呼ぶ声が、やけに耳に響いた)

    春香(知らないはずなのにひどく聞き慣れた、男の人の声と、女の人の声)

    春香(……こうして私は、そのすべてを思い出すことになる)

    春香(自分の心の奥の奥へと封じ込めていた――その、すべてを)

    145 = 142 :

    のヮの<とりあえずここまで

    146 :

    あまとうがヒロインじゃないスレが存在するなんて!(驚愕)

    147 :

    えっ

    148 = 146 :

    春香はアイドルであってアイドルでない世界か?

    150 :

    あまとうどころか響すらいねえよw


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