元スレ春香「冬馬くんかっこいいなあ……」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
201 :
でも10レスくらいは安定してて欲しいです
202 :
乙
続きが楽しみな反面、この後のことを想像するとなんだか胸が痛むな
203 :
ハッピーエンドになるのか。
はたまたバットエンドか。
どちらにしても期待です。頑張ってください。
204 :
春香(765プロで一番のアイドルになりたい)
春香(ただその一心で、私は怒涛ともいえる毎日を過ごしていた)
春香(朝起きたらまず日課のランニングと腹筋をこなし、通勤電車の中ではライブのセトリ曲の聴き込みに集中する)
春香(そして当然のことながら、事務所でのレッスンや外でのお仕事には全身全霊を込めて取り組み、僅かな空き時間にはライブの振り付けのイメージトレーニングをする)
春香(さらにレッスンやお仕事が終わった後も、終電ギリギリの時間まで居残り練習)
春香(その後、疲労困憊の身体に鞭打って、帰りの電車の中で最低限の学校の授業の予習復習を済ませる)
春香(家に帰り、ご飯を食べてお風呂に入ったらまた腹筋。そして寝る前の時間に、リフレッシュも兼ねて他のアイドルの曲を聴いてパフォーマンスの参考にする)
春香(ちなみに最近は響ちゃんの影響もあってジュピターの曲をよく聴いている)
春香(――……私がそんな日々を過ごしているうち、少しずつ、765プロファーストライブの開催日も近付いてきた)
春香(そして、ライブの開催を二週間後に控えたこの日)
春香(私達765プロは、年に一度開催される『芸能人事務所対抗運動会』の収録会場に来ていた)
春香(この運動会には、現在、私達の事務所で一番売れているユニットアイドル――伊織、亜美、あずささんの『竜宮小町』の活躍のおかげで、私達他のアイドルもまとめて初出場できることになった)
春香(つまり私にとって、765プロで一番になるためには、この『竜宮小町』も当然超えなければならない存在といえるわけで)
春香(ただそうは言っても、『竜宮小町』のプロデュース業は律子さんに一任されていて、プロデューサーさんは『竜宮小町』の活動には関わっていないので、ある意味、私がそこまで意識する必要の無い相手ともいえるんだけど……)
205 :
春香(まあ『竜宮小町』の件はともかく、今日の運動会は私達765プロにとっても大きなチャンスだ)
春香(ここで女性アイドル部門優勝ともなれば、メディアにも大きく取り上げられるだろうし)
春香(その結果に貢献できれば、私個人に対するプロデューサーさんの評価も間違いなく上がるはず)
春香(動機としてはちょっと不純かもしれないけど……)
春香(でも、765プロのために頑張ることには変わりないしね)
春香「……ん?」
春香「なんか騒がしいな。……どうしたの、雪歩?」
雪歩「あ、春香ちゃん。ちょっと真ちゃんと伊織ちゃんが……」
春香「ん?」
真「何やってるんだよ伊織! あんなところでもたもたしてるから転んだじゃないか!」
伊織「何言ってんのよ真! あれはレースの駆け引きでしょ!? ペース配分てものを考えなさいよね!」
春香(真と伊織……ああそっか、さっきの二人三脚で転倒してたっけ)
春香(もう、こんなケンカしてるとこカメラに抜かれでもしたら大幅なイメージダウンじゃん。二人ともすぐ熱くなるんだから……)
P「はぁ……あの二人に二人三脚を組ませたのは失敗だったな」
春香「!」
春香(プロデューサーさんが溜め息を……)
春香(そうだ、もしここで私がこの二人を上手く仲裁できれば……)
春香(この事務所で一番のアイドルになるためには、単にアイドルとしての技量があるだけじゃ足りない)
春香(チームとしての765プロをまとめられる、強力なリーダーシップも必要とされるはず)
春香(だとすれば……)
真「勝手にペース配分する方が悪いだろ!」
伊織「言い訳は見苦しいわよ!」
真「そっちこそ!」
伊織・真「うぅ~っ!!」
雪歩「うぅ……ケンカはやめようよ~……」
伊織・真「雪歩は黙ってて!」
雪歩「あうぅ……」
春香「…………」
206 = 205 :
春香「はいはい、二人ともそこまで」ズビシッ ズビシッ
伊織・真「!?」
P「!」
雪歩「は、春香ちゃんが二人にチョップした……!?」
春香「…………」
伊織「ちょっと何するのよ春香! 痛いじゃない!」
真「そうだよ春香! 痛いじゃないか!」
春香「……痛い? そりゃそうだよ。痛くなるように叩いたんだから」
伊織「なっ」
春香「……でもね。伊織、真。私達の方がもっと痛かったんだよ」
真「えっ」
春香「二人がお互いを罵り合う姿を見ていた私達の心の方が、もっともーっと、痛かったんだよ」
伊織「……あ……」
真「それは……」
春香「それに、そうやって失敗を相手のせいにしようとしていた二人の心も、本当は痛かったんじゃないかな?」
伊織・真「!」
春香「本当は自分にも非があるって分かってるのに、でもそれを認めたくなくて、つい、相手のせいにしてしまって」
伊織・真「…………」
春香「そうやって自分自身を騙してお互いに罵り合っていたことに、二人とも心を痛めていたんじゃないかな」
伊織「……わ、私は別に」
真「そうだね」
伊織「!」
春香「真」
207 = 205 :
真「……うん。春香の言うとおりだ。ボク、本当は分かってたんだ。……転んじゃったのは、伊織との歩幅の差を考えないで、先へ先へと進もうとしていたボクの方に原因があるんだって」
伊織「…………」
真「なのに、それを認めたくなくて、伊織のせいにして……後に引けなくなっちゃって。……ごめんね、伊織」
伊織「! そっ、そんな急に謝らないでよ。……私こそ、一言、あんたにちょっとペース落としてって言えばよかっただけなのに、言わなかったから……だからその、えっと……」
真「…………」
伊織「……ごめん、なさい」
真「……ん。気を取り直して、午後の借り物二人三脚は一等目指して頑張ろう! 伊織!」
伊織「……ええ。もちろんよ、真! にひひっ♪」
真「それから皆も……嫌なもの見せちゃって、ごめんなさい」
伊織「私も配慮が足りなかったわ。ごめんなさい」
P「いいって、もう。気にするな。真も言っていたように、また次の競技で挽回してくれたらいいさ」
真「プロデューサー……」
雪歩「でもよかったぁ、二人が仲直りできて。春香ちゃんのおかげだね!」
春香「えっ。そ、そんな。私は別に何も」
真「いや、春香のおかげだよ。春香のチョップのおかげで頭が冷えた。……ありがとう、春香」
春香「真」
伊織「ま、たまにはあんたも良い事するじゃない。一応、礼は言っておくわ」
真「伊織」
伊織「……わかってるわよ。……ありがと。春香」
春香「いいよ、別にそんな。ただ私は、二人に仲直りしてほしかっただけで……」
P「春香」
春香「! は、はい」
P「ありがとうな」
春香「ぷ、プロデューサーさんまで、そんな……やめてくださいよ、もう……」
P「いや、春香が間に入ってくれなかったら、真と伊織は、気まずい空気のまま午後の競技を迎えていたかもしれない。それが元で、ライブ前のこの大事な時期に怪我でもしていたら一大事だったからな。でも春香のおかげで、それを未然に防ぐことができた」
春香「そ、そんな大層なことでは……」
P「だからこれからも、遠慮することなく、どんどん他の皆を助けていってやってほしい。それは春香にしか出来ない事だと、俺は思う」
春香「は……はいっ! ありがとうございます、プロデューサーさん! えっと……じゃあその、私、頑張ります!」
P「ああ。その意気だ。春香」
春香「え、えへへ……」
春香(…………)
春香(よし……この調子、この調子でいけば……)
208 :
これは…あざとい…!
209 :
これから記憶失うような事態になると考えると胃が痛い
210 :
春香が計算高すぎw
211 :
春香さんは腹黒いなぁ
212 :
これ春香さんじゃなくて実は閣下じゃ…
213 :
なんでや、春香さん好きな人のために悲愴なくらい努力しとるやんけ。どこがあざといんや
214 :
あざといはもはや春香さんにたいしての誉め言葉なんだよ。
215 :
春香(――その後、私達765プロは抜群のチームプレーを発揮、多くの種目で上位入賞を果たし)
春香(見事、午前の部を女性アイドル部門1位の成績で終えたのだった)
春香(そして今は、午後の部を前にしてのお昼休憩中)
春香(ステージ上では、各事務所の代表ユニットのミニライブが順々に行われていた)
春香(我が765プロを代表するのは、もちろん――)
伊織『知らぬが~ 仏ほっとけない♪』
亜美『く~ちびるポーカーフェイス♪』
あずさ『Yo 灯台 もと暗し Do you know!?』
伊織・亜美・あずさ『ギリギリで おあずけ Funky girl!』
ワァアアアアアアア…… パチパチパチ……
春香(……『竜宮小町』)
春香(さっきは、『そこまで意識する必要の無い相手』とも思ったけど)
春香(やっぱりこうやってステージを目の当たりにすると、私の中に沸々と込み上げてくるひとつの感情があった)
春香(……負けたくない)
春香(何よりプロデューサーさんだって、自分のプロデュースしたアイドルが律子さんのプロデュースしたアイドルに負けたら悔しいに違いない)
春香(だから私は、やっぱり負けるわけにはいかないんだ)
春香(『竜宮小町』も超えて、私は765プロで一番のアイドルにならなきゃいけないんだ)
伊織『みんな~っ! 今日はステージ観てくれてありがとーっ! これからも私達を――……』
春香(……負けないからね。伊織。亜美。あずささん)
216 :
司会『続いては、女性ファンお待ちかね! ジュピターです!』
キャアアアアアア!! トウマクンカッコイー!! ホックンステキー!! ショウタクンカワイー!!
美希「あ、ジュピターなの」
千早「……すごい歓声ね」
雪歩「ジュピター、今すごい人気だよね」
春香「…………」
♪~~♪~~♪~~
冬馬『声の 届かない迷路を越えて』
北斗『手を伸ばせたら』
翔太『罪と 罰を全て受け入れて』
冬馬・北斗・翔太『今 君に裁かれよう!』
キャァアアアアアアア……
春香(……こうして改めてステージを観ていると、単に流行りに乗っただけの一過性のユニットとは明らかにレベルが違う)
春香(歌も、ダンスも、そして細かい仕草や振り付けに至るまで……全ての完成度が抜群に高い)
春香(…………)
春香(765プロで一番になるのが、私の当面の目標だったけど)
春香(でももしも叶うのならば、やっぱりトップアイドルを目指してみたい)
春香(だってプロデューサーさん、言ってたもの)
春香(この事務所に来た、一番最初の日に――……)
――目指す夢は、皆まとめてトップアイドル! よろしくお願いします!
春香(彼が願う夢ならば、私が追わない理由は無い)
春香(勿論、まずはこの事務所で一番のアイドルになってからの話だけど……)
春香(でも、その先の夢を叶えるには、いつかは必ず超えなければならないんだ)
春香(この完成されたユニットアイドル――ジュピターを)
春香「…………」
217 = 216 :
美希「……春香。なんかえらく食い入るように見てるね」
春香「えっ」
真美「あれあれ~? はるるん、もしかしてジュピターのファンだったりして~?」
春香「いやいや……同業者でそれはないでしょ、流石に」
真美「もー! はるるんったらノリ悪いよー! そこは『か、勘違いしないでよねっ! ちょっとライバルをテリヤキ定食してただけなんだからっ!』って言わないとー!」
千早「……敵情視察、かしら?」
真美「そーそー! それそれ!」
美希「千早さん、何で分かるの……」
春香「……うーん、まあでも実際そんな感じだしね」
やよい「えっ。春香さん、ジュピターをて、てきじょ……」
千早「敵情視察よ、高槻さん。で、そうなの? 春香」
春香「いやまあ……そこまで大げさなものじゃないけどね。ただ男性ユニットでも、パフォーマンスの参考になる部分は結構あるなーって思ってさ」
響「……春香」
春香「ね? 響ちゃん」
響「……ああ、そうだな!」
美希「? 何なの? 二人して」
春香「ふふっ。まあ、ちょっとね」
響「ねー」
美希「?」
真「あー、でもそれは確かにあるかも……っていうか、ボクの場合は特にそうかも。まあ、あまり本意ではないんだけど……」
雪歩「大丈夫だよ、真ちゃん! 真ちゃんの方がジュピターよりかっこいいから!」
真「ええと、雪歩……? それはボクにどういうリアクションを求めているのかな……?」
響「あはは、雪歩は相変わらずだなぁ……って、あ! 春香! もう時間だぞ!」
春香「あっ、ホントだ! じゃあ行ってきまーす!」
やよい「響さんも春香さんも、頑張ってくださーい!」
春香「ありがと、やよい! じゃあ行こっ! 響ちゃん!」
響「うん! じゃあ皆、また後でなー!」
タタタタ……
春香(……私と響ちゃんが向かったのは、複数の事務所から2名ずつの女性アイドルが合同で出場するチアリーディングのステージ)
春香(まあこういうのもアイドルのお仕事だと思うし、765プロからの2名の枠に選ばれただけでも、本当は感謝しないといけないんだろうけど)
春香(やっぱり、竜宮小町やジュピターのライブステージの後だと、どうしても見劣りしちゃうなあ……)
春香(……なーんて。愚痴っても仕方ないか。千里の道も一歩から、ってね)
218 = 216 :
響「あっ」
春香「? どうしたの? 響ちゃん」
響「ごめん春香、先行ってて。チアの衣装、控室でサイズ合わせした後、そのまま置いてきちゃった。急いで取ってくる」
春香「わかった。でも焦って転んじゃダメだよ」
響「そんなどっかの誰かさんじゃあるまいし」
春香「なにをー!?」
響「あはは。でも春香、最近あんまり転ばなくなったよね」
春香「あー、そういえばそうかも。居残り練習の成果かな? って響ちゃん、早く衣装取りに行かないと!」
響「っと、そうだった! 春香、じゃあまた後でね!」タタタタ……
春香「…………」
P「春香」
春香「あっ。プロデューサーさん。どうしたんですか?」
P「いや、ちょっと励ましをな」
春香「……励まし? 私にですか?」
P「ああ。というのも、実はこのチアリーディング、最初は響と真にお願いしようと思ってたんだ」
春香「えっ」
P「でも、最近の春香はダンスのキレがすごく良くなってきていたから、律子とも話して、直前になって真から春香に変更したんだよ」
春香「……そうだったんですか」
P「まあ、真は出場する予定の競技が多かったから、その負担も考えて……っていう理由もあったんだけどな」
春香「あー、確かに。うちの一番の戦力ですもんね、真は」
P「……でもな、春香。その点を差し置いても、やっぱり俺はお前にこの仕事を頼んでいたと思う」
春香「えっ」
P「俺自身、どんどん良くなっていく春香のダンスを、もっともっと見てみたくなったからだ。……春香の、一番近いところで」
春香「……プロデューサーさん……」
P「頑張れ。春香。俺はずっと見ているからな」
春香「……はいっ!」
219 :
おつです
220 :
アニマスよりこういう春香の方が好きだなぁ
221 :
春香(その後のチアリーディングのステージは、直前にプロデューサーさんに励ましてもらえたこともあって、完璧なパフォーマンスをすることができた)
春香(もちろん、ステージが終わってから転倒したりすることもなく)
春香(私と響ちゃんを含むチアガール一同は、満員の観衆から拍手喝采を浴びたのだった)
響「えへへ……自分達カンペキだったな! 春香!」
春香「うん! もしかして、ジュピターよりも目立ってたんじゃない?」
響「そうだなー、うんうん! きっとそうだぞ! 目立ってた目立ってた!」
春香「あははっ」
響「ははは……あっ」
P「春香。響」
春香「プロデューサーさん! どうでしたか? 私達のチア!」
P「ああ、すごく良かったぞ。文句をつけるところは何もない。午後の競技もこの調子で頑張れ!」
春香・響「はい! ありがとうございます!」
P「じゃあ次の競技までもう少し時間があるから、着替え終わったら皆のところへ戻って来てくれ」
春香「わかりました!」
響「あ、春香。自分、着替える前にちょっと飲み物買いに行くね。喉渇いちゃった」
春香「私も行くよ、響ちゃん。じゃあプロデューサーさん、また後で」
P「おう。慌てて転ぶなよ」
春香「転びませんって!」
響「あはは」
春香「…………」
響「どうしたの春香。なんかニヤニヤしてるけど」
春香「な、なんでもないよ!? さ、早く飲み物買いに行こっ!」
響「?」
春香「…………」
春香(プロデューサーさんが褒めてくれた……嬉しい!)
222 = 221 :
~自販機前~
春香「何にしようかなー」
響「自分さんぴん茶にするぞ」
春香「ボタン押してあげようか?」
響「じ、自分で押せるもん! これくらい!」
春香「高い高いしてあげようか?」
響「もー! バカにしてー! やれるもんならやってみてよ!」
春香「あはは。冗談冗談……あっ」
響「え?」
冬馬「……ん?」
北斗「おや」
翔太「?」
春香「ジュピターの……」
響「は、春香。とりあえず挨拶しとこう! 挨拶!」
春香「そ、そうだね、響ちゃん。え、えっと……私、765プロ所属アイドルの天海春香といいます! よろしくお願いします!」ペコリ
響「じぶ……じゃない、私も、同じ事務所の我那覇響だ……です! よ、よろしくお願いします!」ペコリ
冬馬「765プロ……?」
北斗「ああ、ほら。竜宮小町の」
冬馬「……ああ」
翔太「へぇ。お姉さん達、竜宮小町と同じ事務所なんだ。あ、ちなみに僕は御手洗翔太。よろしくね」
北斗「おっと、申し遅れました。俺は伊集院北斗という名のしがない男です。それにしても、こんなところでこんなに可愛らしいエンジェルちゃん達二人とお知り合いになれるなんて……天の導きとはまさにこのことですね。今後とも、末永くお見知りおきを」
春香「は、はあ……」
響「え、えん……?」
冬馬「ああ、気にしないでくれ。こいつちょっと頭がアレなんだ」
北斗「ちょっ、おい冬馬! 初対面で誤解を生むような言い方はやめてくれよ!」
冬馬「別に誤解じゃねぇだろ。ああ、ちなみに俺は天ヶ瀬冬馬。961プロ所属で、こいつらと三人でジュピターってユニットを組んでる。まあ、もう知ってくれてるみてぇだけど。そういうわけなんで、よろしくな」
春香「は、はい。よろしくお願いします!」
翔太「って、あれ? その衣装……もしかして、チアガールでもやってたの?」
春香「あ、はい。ついさっきまで。私と響ちゃんが765プロの代表で……」
北斗「なにィ!? そんな素晴らしいイベントがあったのか! おい冬馬、なんで事前に言っておいてくれないんだ!」
冬馬「真顔で迫るな! つーかそれはどう考えても俺のせいじゃねぇだろ!」
春香「え、ええと……?」
翔太「あはは。騒がしくてごめんね。僕ら大体いつもこんな感じなんだ」
春香「そ、そうなんですか」
響「なんか、意外だな……あ、ですね」
翔太「別にタメ口でいいよ。僕達、そういうの気にしないからさ」
春香「え、でも、芸歴的にも先輩ですし……」
冬馬「別に関係ねぇだろ、そんなの。実力の世界なんだからよ」
北斗「ま、そういうこと☆」
春香「は、はあ……」
223 = 221 :
翔太「それに、年も僕より少し上くらいでしょ? あ、でも響ちゃんの方は僕より下かな?」
響「え?」
翔太「響ちゃん何年生? ちなみに僕は中1なんだけど」
響「……自分、こう見えても高1なんだけど……」
翔太「大変失礼致しました我那覇先輩」
響「急な敬語は余計悲しくなるからやめて!」
春香「あはは。どうどう、響ちゃん」ナデナデ
響「は、春香も頭を撫でるなー! もー!」
北斗「ははは。なかなか楽しいエンジェルちゃん達だね」
冬馬「それ、お前が言うか? ……っと、もうこんな時間か。おいお前ら、そろそろ次の仕事場に移動するぞ」
翔太「えー。もうそんな時間なの?」
北斗「すみません、レディーとの会話の途中でこのような御無礼を……この埋め合わせは、今度必ず」
春香「は、はあ……」
冬馬「じゃあな。運動会の続き、頑張れよ」
春香「は……はい。ありがとうございます」
翔太「それじゃあまたね、春香さん、我那覇先輩!」
響「我那覇先輩はやめて!」
北斗「ではまた近いうちに。チャオ☆」
春香「…………」
響「な、なんかだいぶイメージと違ったな……」
春香「…………」
響「? どうしたの? 春香。なんか思い詰めたような顔して……」
春香「……あ、あのっ!」
響「!?」
冬馬「ん?」クルッ
北斗「?」
翔太「何?」
響「は……春香?」
春香「…………」
224 = 221 :
春香「えっ、と……」
冬馬「…………」
春香「今はまだ……あなた達の足元にも及びませんけど、でも、でもいつか必ず――……」
冬馬「…………」
春香「あなた達を、超えてみせます」
冬馬「!」
響「いっ!?」
春香「……それだけ、伝えておきたくて。足を止めさせて、すみませんでした」ペコリ
冬馬「…………」
北斗「…………」
翔太「…………」
響「は……春香? 急に何言って……」
冬馬「――……面白ぇ」
響「!」
春香「…………」
冬馬「上がってこいよ。ここまで、な」
春香「!」
北斗「……その日が来るのを、楽しみにお待ちしておりますよ」
翔太「へへっ。でも、僕達もそう簡単にはいかないよ?」
春香「……はい。望むところです」
響「なっ……」
冬馬「楽しみにしてるぜ。じゃあな」
春香「はい。いつか必ず、そこへ行きますから」
響「……!」
225 = 221 :
春香「…………」
響「は……春香!」
春香「うわっ、びっくりした。急に大きな声出さないでよ、響ちゃん。背縮むよ?」
響「縮まないよ! どういう原理だよ!」
春香「あはは、どうどう」ナデナデ
響「だから頭を撫でるなー! って、そうじゃなくて!」
春香「ん? どうかした?」
響「どうかしたのは春香の方だろ! なんでいきなりジュピターに宣戦布告みたいなことしちゃってんの!?」
春香「あー……うん」
響「自分、もう心臓止まるかと思ったぞ……。まあジュピターの皆がああいう性格だったから良かったようなものの……」
春香「まあ、確かにいきなりだったかもしれないけど……でも……」
響「……?」
春香「あのとき、去って行く三人の後ろ姿を見たとき……『今言わなきゃ』って……思ったんだ」
響「…………」
春香「……『今言わなきゃ、この夢はきっと果たせない』……そう思った」
響「春香」
春香「だから、言ったの。えへへ……ごめんね? 響ちゃん。びっくりさせちゃって」
響「……ん。いいよ。自分だって、最後に目指す夢は春香と一緒だからな」
春香「えへへ……だよね」
響「ああ。だからこれからも、お互い頑張ろう! 春香!」
春香「うん! 響ちゃん!」
響「……へへっ」
春香「ふふっ……じゃあ飲み物買って、早く戻ろう」
響「そうだな。っていうか自分達、着替えもしなきゃだから急がないと」
春香「お着替え手伝ってあげようか?」
響「……流石に怒るぞ」
春香「あはは。冗談冗談」ナデナデ
響「だから頭を撫でるなー! もー!」
春香「あはは」
春香「…………」
春香(……見てて下さいね、プロデューサーさん)
春香(私は、竜宮小町もジュピターも全部超えて……トップアイドルになってみせます)
春香(いつの日か……必ず)
226 = 221 :
春香(――その後、私達765プロは、午後の部の競技でも快進撃を続けた)
春香(借り物二人三脚に出場した真と伊織も、午前中の借りを返すかのような息の合ったコンビプレーで、見事に一等を獲得した)
春香(こうして私達は、女性アイドル部門で1位の成績を維持したまま、本日最後の種目――事務所対抗リレーを迎えた)
春香(そして今、2位に半周近い差をつけながらも、なお全力で走り続けている我らが最終走者は――……)
真「うおおーっ!」
パンパンパーン!!
司会『今、765プロの菊地真選手、2位に大差をつけてのゴールイン! この最終種目の事務所対抗リレーも、見事765プロが制しました!』
真「へへっ、やーりぃ!」
雪歩「すごいよ、真ちゃん~!」ガシッ
美希「流石は真クンなの!」ガシッ
真「あはは……あ、ありがとう、二人とも。でも暑いからちょっと離れて……」
伊織「ちょっと、真!」
真「伊織?」
伊織「あんたねぇ……2位にあんだけ差をつけてたのに、何で最後まで全力疾走なわけ?」
真「えっ」
伊織「だから、その……二週間後にライブが控えてるのに、無茶な走りして怪我でもしたらどうすんの、って言ってんの! あんたただでさえ、今日は一番多くの種目に出場して、疲れてるはずなのに……」
真「伊織」
伊織「な、何よ」
真「……無茶はしてないよ。ただ、どんな勝負でも全力を尽くさないのは、相手に対して失礼だから」
伊織「そ、それはまあ……そうかもしれないけど……」
真「でも」
伊織「? 何よ」
真「……ありがとう、伊織。ボクの事、心配してくれて」
伊織「なっ……!」
亜美「おーっと! ここでいおりん得意のツンデコ発動なるかー!?」
真美「ツーンデコ! へい! ツーンデコ!」
伊織「う、うっさいわね! ていうか何よそのツンデコって!」
美希「あはは。でこちゃん顔真っ赤なの!」
伊織「う、うるさいうるさいうるさーい!」
ドッ アハハハ……
春香「…………」
千早「春香」
春香「千早ちゃん」
千早「……すごかったわね、真」
春香「うん、そうだね」
千早「これで対抗リレーも1位だったから……私達765プロの、女性アイドル部門の優勝も確定ね」
春香「うん、そうだね」
千早「春香……?」
227 = 221 :
春香「? 何? 千早ちゃん」
千早「いえ、その……なんかあまり、嬉しそうじゃないから……」
春香「えっ! そ、そんなことないよ!? っていうか、嬉しくないわけないじゃん! ただその、まだ正式な結果発表の前だから、なんか実感が湧いてこないっていうか……うん、そんな感じなだけだよ。はは……」
千早「そう? なら……いいのだけれど」
春香「ははは……」
春香「…………」
春香(――その後、本日の最終成績が発表され、千早ちゃんの言った通りに、私達765プロは女性アイドル部門で優勝となった)
春香(そして、今日一番の功労者ということで、代表して優勝トロフィーを受け取った真と、笑顔でその周りを取り囲んでいる皆の姿を――……私はなぜか、他人事のように見ていた)
春香(別に、嬉しくないわけではない)
春香(ただ――……)
P「春香」
春香「……プロデューサーさん」
P「どうした? なんだか元気無いじゃないか」
春香「そ、そんなことないですよ? ただちょっと、疲れちゃって……あはは」
P「そうなのか? ライブも近いんだし、無理はするなよ。一応、この後事務所で打ち上げすることになってるけど、もししんどいようなら……」
春香「! ぷ、プロデューサーさんも来るんですか? 打ち上げ」
P「いや、行きたいのはやまやまなんだが、この後ライブ会場の下見に行かないといけないんだ。すまん」
春香「そう……ですか」
P「悪いな。ああ、それと春香」
春香「? 何ですか?」
P「俺は個人的に、今日の優勝の立役者はお前だと思っている」
春香「へ? 私……ですか? 真じゃなくて?」
P「ああ。確かに真はすごかったが、その真が十分に力を発揮できたのは、お前が真と伊織のケンカを仲裁してくれたからこそだからな」
春香「そ、そんな……私は別に、何も」
P「なあ、春香。以前俺が、『春香の一番の良さは、一人一人のお客さんを大事にできるところだ』って言ったこと、覚えてるか?」
春香「は、はい」
P「あれは何も、お客さんだけに限った話じゃない。春香は誰よりも、この事務所の皆、一人一人のことを大事にできる子だと俺は思う」
春香「…………」
P「だからこれからも、皆の事、しっかり見て、支えていってやってほしい。俺が午前中に言った言葉も、そういう理由からだ」
春香「……はい、わかりました! プロデューサーさん! 私、皆の事、ちゃんと支えていきます!」
P「ありがとう、春香。ただまあそうは言っても、何か特別な事をしろってわけじゃないからな。今まで通りに、皆の事を見ててくれたらそれでいい」
春香「はい! わかりました!」
228 = 221 :
P「それと、もし打ち上げに行けるようなら、今日くらいは皆と思いっきり楽しんでこい。春香は最近、ちょっと頑張りすぎなくらい、頑張ってるからな」
春香「……はい! わかりました! プロデューサーさん! 私、打ち上げ、皆と思いっきり楽しんできます!」
P「ああ、それがいい。でもまあ、本当にしんどいようなら無理しなくていいからな」
春香「はい! わかりました!」
春香「…………」
春香(ねぇ、プロデューサーさん)
春香(私は、あなたの望むアイドルになります)
春香(あなたが皆を支えろというなら、身を粉にしてでも支えます)
春香(あなたが皆と楽しめというなら、何を犠牲をしてでも楽しみます)
春香(だから、プロデューサーさん)
春香(もっと、私の事を見てください)
春香(もっと、私の事を褒めてください)
春香(それが叶うのなら、私はどんな夢だって追えます)
春香(トップアイドルにだって、きっとなってみせます)
春香(だから、ね。プロデューサーさん)
春香(私があなたの夢をすべて叶えて)
春香(あなたの望むアイドルになれたなら)
春香(いつか遠い未来に、そんな日が訪れたなら)
春香(そのときには――……)
春香(――その後、私は事務所の打ち上げに参加し、皆と大いに盛り上がった)
春香(笑って、歌って、踊って、はしゃいで、騒いで、転んで……とにかくひたすら、その場を楽しむことに努めた)
春香(――……私が本当に求めているものは、もうここには無いのだと――……知りながら)
229 = 221 :
のヮの<とりあえずここまで
230 :
乙!
春香さん恋する女の子かわいい
231 = 219 :
この春香若干病んでね?
春香がアイドルじゃなくなってることを考えるとこのあと何が起きるかわからなくて怖いんだが…
232 :
>>230
春香信者はなんであろうとが春香=かわいい!だよな
はるるんまじ麻薬
235 :
>>232
流石メインヘロインやでぇ……
237 :
春香(運動会から二週間――……私達765プロは、可能な限りの時間をファーストライブの仕上げに充てた)
春香(その甲斐あって、私達はほぼ完璧なコンディションでライブ当日を迎えることができた)
春香(以前、プロデューサーさんは言っていた)
春香(今日のこのライブは、私達765プロにとって大きな転換点になるはずだと)
春香(でもそれは私自身にとっても、いやむしろ私自身にとって――……そうでなければならない)
春香(今日この日を境に、プロデューサーさんにもっとよく私の事を見てもらえるように)
春香(今日この日を境に、プロデューサーさんにもっとよく私の事を褒めてもらえるように)
春香(ただそれだけのために、私はずっと頑張ってきたんだ)
春香(そのために団結もした。協力もした。またときにはぶつかり、衝突もした)
春香(そうして皆で培った結束、絆、強さ)
春香(たとえ結果的に、そのすべてを失うことになろうとも)
春香(私はただ、プロデューサーさんのためだけに)
春香(今日の、この日の私の全部を捧げます)
春香(……だから、ちゃんと見ててくださいね)
春香(プロデューサーさん)
238 :
~ライブ会場・控室~
響「伊織達、大丈夫なのかな……。リハには間に合うって、プロデューサーは言ってたけど……」
雪歩「あれから連絡無いし、心配だよね……」
美希「でこちゃん達なら、きっと大丈夫なの。それに律子もついてるし」
真「美希。『さん』付けないと、また怒られるよ?」
美希「むぅ。真クンまでミキにお説教しちゃヤなの」
真「そんな、別にお説教ってわけじゃ……」
春香「…………」
真「……春香?」
春香「え? 何? 真」
真「ああ、いや……大丈夫? 何か思い詰めた顔してたけど……」
春香「あはは、ごめんごめん。ちょっと伊織達の事が心配で……」
真「春香」
千早「……でも、私達がここであれこれ考えていても仕方ないと思うわ」
春香「千早ちゃん」
千早「今私達にできることは、水瀬さん達が間に合うことを信じて、自分達がやれることをやるだけじゃないかしら」
貴音「千早の言う通りです。信じて待ちましょう。竜宮小町を」
春香「はい、そうですね。貴音さん」
春香(…………)
春香(今から一時間ほど前に、プロデューサーさんから一つの報告を受けた)
春香(台風の影響で、別の収録先からライブ会場に向かう予定だった竜宮小町の到着が遅れることになった、と)
春香(今回のライブが開催されるに至った大きな要因は、竜宮小町のヒットだ)
春香(つまりお客さん目線で言うと、その注目度のほとんどは竜宮小町に集まっていると言っても過言ではない)
春香(そんな状況で、もしこのまま竜宮小町が開演に間に合わないような事態になれば)
春香(765プロは、主役ユニット不在のまま、ライブを開催しなければならないという窮地に立たされることになる)
春香(そうなったら、当然の事ながらプロデューサーさんは非常に困るはず)
春香(また真面目な性格だから、自身の責任も感じてしまうかもしれない)
春香(……だが、もしそこで)
春香(私が、竜宮小町に引けを取らないだけのパフォーマンスを発揮することができれば)
春香(竜宮小町の不在を感じさせないほどの盛り上がりを、会場で生み出すことができれば)
春香(プロデューサーさんは安堵し、事務所のピンチを救った私に対する評価を高めてくれるに違いない)
春香(そうなれば、プロデューサーさんはもっと私の事を見てくれるようになる)
春香(そうなれば、プロデューサーさんはもっと私の事を褒めてくれるようになる)
春香(つまり今のこの状況は、事務所にとってはピンチだけど、私にとっては大きなチャンス)
春香(……何の罪も無い伊織達には悪いけど)
春香(大丈夫。私なら、できる)
春香(そのために――ずっとずっと、頑張ってきたんだから)
239 :
おお…純粋なのに黒い春香さんとか珍しい
240 = 238 :
ガチャッ
P「皆、揃ってるか?」
アイドル一同「はい!」
P「よし。じゃあ今から予定通りリハに入るが……その前に、竜宮小町の現状を伝えておく」
アイドル一同「!」
P「……さっき、律子から連絡があってな。電車が全部止まってて、今はレンタカーで向かっている途中だそうだ。リハには参加できそうにないって」
真「! そんな……」
美希「でこちゃん達、本番には間に合うの?」
P「……現状では、何とも言えないな」
美希「そんな……」
雪歩「も、もし間に合わなかったら……」
響「ねぇ、プロデューサー。その場合はどうするの? 竜宮小町がいなかったらまずいんでしょ?」
やよい「お客さん、がっかりしちゃいますよね……」
真美「ねぇ、兄ちゃん。まさかライブ中止にするんじゃ……」
P「……中止にはしない。だがこうなった以上、間に合わない前提での準備も進めておく必要がある」
千早「間に合わない前提……ですか?」
P「ああ。今俺達にできることは、最悪の事態を想定し、もしそれが現実になった場合でも対処できるように準備しておくことだ」
アイドル一同「…………」
P「そして今想定できる最悪の事態は、竜宮小町がライブの終了まで到着できないということ。だからその状況を前提とした対策を練る」
貴音「……成る程。して、具体的にはどのように……」
P「ああ。とりあえず、お前達のリハは予定通りのセトリで進めてくれ。その間、俺はスタッフと話しながら、竜宮抜きで通せるセトリを組んでおく」
アイドル一同「!」
P「だが、もちろんこれはあくまでも最悪の事態を想定してのことだ。開演までに竜宮小町が間に合えば、予定通りのセトリで本番を行う。いいな?」
アイドル一同「……はい!」
P「よし、良い返事だ。じゃあリハ頑張って来い!」
春香「…………」
千早「春香? どうかした?」
春香「……ううん、なんでもないよ。千早ちゃん」
千早「そう? なら、いいのだけれど」
春香「……伊織達、間に合うといいね」
千早「ええ、そうね」
春香「…………」
春香(……間に合わなければ、いいのに……)
241 = 238 :
~リハ終了後・控室~
P「……皆。リハお疲れ様。で、竜宮小町の方だが……」
アイドル一同「…………」
P「……残念ながら、開演までには間に合いそうにない」
アイドル一同「!」
春香「……!」
P「なので、本番はさっきのリハの間に組み直したこっちのセトリで行う。今配るから、各自目を通してくれ。一応、各々がリハ無しでも対応できる楽曲にしたつもりだ」
真「……プロデューサー。じゃあ伊織達は、もう……」
美希「出られない、ってこと……なの?」
P「いや、もしライブ途中に到着出来たら、『自分REST@RT』の後のブロックに竜宮のパートを入れるつもりだ。そのことはスタッフにも話してある」
雪歩「そっか、それならなんとか……」
真「うん。終盤だし、いけるかも!」
響「でも逆に言えば、それまでは自分達だけでつながないといけない、ってことだよね……」
P「ああ、そうだ。『自分REST@RT』までは竜宮抜きで確定だ。流石にそれ以上の細かい変更は現場のスタッフが対応しきれないからな」
千早「仕方ないわ。今の状況なら、これでやるのがベストだと思う」
やよい「お客さんを待たせるわけにもいかないですしね」
真美「ま、いざとなったら真美が亜美の代わりやってもいいしねー」
貴音「……成る程、その手がありましたか。では、私は伊織の代わりを」
真「いや貴音、そこはせめてあずささんにしとこうよ……」
P「はいはい、冗談はそれくらいにして、ちゃんとセトリ見といてくれよ。そしてもし難しそうなところがあれば、今のうちに言ってくれ。今ならまだ調整できるから」
春香「…………」
春香(流石はプロデューサーさん。皆の負担が極力均一になるように、バランス良くセトリを組んである)
春香(…………)
春香(でも、本音を言うなら)
春香(……もっと、私に多く割り振ってほしかったな……)
242 :
真「あっ。プロデューサー」
P「ん? どうした? 真」
真「ここ……美希の『Day of the future』の後に、また美希の『マリオネットの心』がきてます」
P「あっ、本当だ。しまった……気付かなかったな」
響「いくら美希でも、このダンサブルな曲を続けては無理だぞ」
P「ふむ……そうだな。じゃあ『マリオネットの心』をもっと前の方に……」
春香「……プロデューサーさん」
P「ん? どうした、春香」
春香「この新しいセトリって、もう現場のスタッフさんにも行き渡ってるんですよね?」
P「ああ、もちろん」
春香「それじゃあ、今、変に曲の順番を入れ替えたりしたら、かえって現場が混乱しちゃうんじゃないですか? ただでさえ、一度変更してるセトリなのに」
P「それはそうかもしれないが……でも確か、この二曲は両方美希しかボーカル練習してなかったはずだから――……」
春香「私、できます」
P「えっ」
美希「春香……そうなの?」
春香「うん。『Day of the future』も、『マリオネットの心』も、どっちも練習してたんだ。別にこういうときに備えて、ってわけじゃなかったんだけど……」
P「…………」
春香「だからお願いします。やらせてください! プロデューサーさん!」
P「……分かった。春香を信じよう。『Day of the future』は美希、その後に春香のボーカルで『マリオネットの心』だ」
春香「! はい! ありがとうございます! プロデューサーさん!」
243 = 242 :
P「よし、後はもう大丈夫か?」
やよい「……あの、プロデューサー」
P「ん? どうした? やよい。どっか厳しそうなところあったか?」
やよい「いえ、そういうのじゃないんですけど……やっぱり、竜宮小町がいないままでライブが始まっちゃうのは、ちょっと不安かなーって……」
P「やよい」
響「……それは、自分もそうだぞ。あんまり、考えないようにはしてたけどさ」
真「やっぱり、竜宮目当てのお客さんがほとんどだろうしね」
雪歩「うぅ……全然盛り上げられなかったらどうしよう……」
P「お前達……」
千早「皆、気持ちは分かるけど、今それを言っても――……」
春香「大丈夫」
千早「! 春香」
春香「大丈夫だよ」
P「春香」
春香「……オープニングの『THE IDOLM@STER』の後の二曲目は、私のソロの『乙女よ大志を抱け!!』」
春香「ここで一気に、お客さんの興味を引いてみせる」
春香「だから皆、大船に乗った気でいてよ。絶対に大丈夫だから。 ……ね?」
やよい「……春香さん……」
響「なんか、春香にそこまで自信満々に言われると……本当に、大丈夫なような気がしてきたな」
真「うん。やっぱり、ボク達の中の誰よりも努力していた春香だからかな……なんていうか、不思議な説得力があるよね」
雪歩「私も、なんか上手くできるような気がしてきましたぁ」
春香「……皆……」
貴音「世の中には『言霊』という言葉もありますが……成る程、春香の言葉には、不思議な力が宿っているようですね」
真美「ま、そう言いながらもやらかしちゃうのがはるるんのアイスレモンティーだけどねー」
春香「あ、アイスレモンティー?」
千早「真美、それを言うならアイデンティティーよ」
美希「だから何で分かるの千早さん……」
やよい「えへへ……なーんか、すごく楽な気持ちになってきたかも! 春香さん、どうもありがとうございます!」
春香「い、いや別に、そこまでお礼言われるようなことじゃ……」
P「……いや、俺からも礼を言うよ。ありがとう、春香」
春香「! プロデューサーさん」
P「やっぱり、ここ一番で皆の精神的支柱になれるのはお前しかいない」
春香「…………」
P「いざライブが始まったら、俺はステージを見ていることしかできない」
P「だから春香。ステージの上では、お前が皆を支えてやってくれ」
春香「!」
P「お前がそうやってみんなの柱でいてくれる限り、何があっても765プロは大丈夫だ」
P「俺は、そう確信している」
春香「……プロデューサーさん……」
244 :
読んでて緊張するわ…
245 = 242 :
春香「……分かりました。天海春香、精一杯、皆を支えさせて頂きます!」
P「春香」
春香「よーし、そうと決まれば……皆! 円陣組むよ! 円陣!」
千早「円陣?」
美希「なんか、高校野球みたいなの」
春香「いいからいいから! ほら、早く早く!」
真美「やれやれ、まったくはるるんは熱血ですなあ」
貴音「しかし、皆の結束を固めるにはもってこいかと」
響「うんうん! 自分、こういうの一度やってみたかったんだ!」
真「ほら雪歩、こっち」
雪歩「う、うん。ありがとう、真ちゃん」
やよい「うっうー! なんかテンション上がってきちゃいましたー!」
P「……お前達……」
春香「えへへ……こういう感じでいいですか? プロデューサーさん」
P「……ああ。文句無しだよ」
春香「よーし! ……じゃあ皆、いい? いくよー! 765プローっ!」
アイドル一同「ファイトーッ!!」
春香(――こうして、私達765プロのファーストライブは幕を開けた)
春香(紛れもない『てっぺん』を目指して)
246 = 242 :
のヮの<とりあえずここまで
247 :
無事に進んでくれ……
248 :
乙
春香さん凄ぇけどそれ以上に危うくて不安になってくる…
249 :
真美が亜美をやって貴音があずささんをやるから伊織はやよいか?
春香さんの思う通りに事が進んでる感じがしてこのあとなにが起きるのかわからないのが怖い…
なんで春香はアイドルじゃなくなったのか…
250 :
春香(オープニングは全員で歌う『THE IDOLM@STER』)
春香(イントロが流れ始め、ステージ上に立つ私達をライトが照らし出した)
春香(その瞬間、歓声が上がる)
春香(この高揚感は悪くない)
アイドル一同『もう伏目がちな 昨日なんていらない』
アイドル一同『今日これから始まる私の伝説』
春香(お客さんは結構ノッてくれてるように見えるけど、まだまだ熱が足りない)
春香(やはり竜宮小町の不在が影響しているのだろう)
春香(だけど、今はそれでいい)
春香(この程度の逆境――跳ね返せないようじゃ)
春香(トップアイドルになんて、なれっこないんだから)
アイドル一同『男では耐えられない痛みでも』
アイドル一同『女なら耐えられます 強いから』
ワァアアアア…… パチパチパチ……
春香(私は静かな闘志を滾らせながら、無難に一曲目を終えた)
春香(その直後のMCで、竜宮小町が台風のために遅れていることをお客さんに伝え)
春香(あわせて、メンバーの自己紹介も簡単に済ませる)
春香(そして次曲をソロで歌う私を残し、他のメンバーは舞台裏へ)
春香「…………」
春香(こうして今、ステージ上に立っているのは私一人)
春香(大きく息を吸い、吐く)
春香「…………」
春香(見ててくださいね。プロデューサーさん)
春香(あなたのアイドル、天海春香を)
春香(しかと、その目に焼き付けてくださいね)
春香『それじゃあ行くよー! 天海春香で『乙女よ大志を抱け!!』』
みんなの評価 : ★★★×4
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