元スレ胡桃「あなたが例え、誰であろうと」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×5
851 = 1 :
京太「………俺
胡桃「ストップ」
京太「………」
胡桃「返事、待ってるから………必ず、さっさと帰ってきて」
胡桃「女の子を、待たせるな」
京太「………ええ」
胡桃「私を――――――――私たちを、忘れないで」
京太「絶対に、忘れません」
852 = 1 :
霞「………それでは、儀式を始めます」
巴「おそらく、完遂まで2分から3分………この陣の中から、出ないようにお願いします」
春「あまり、連続ではできない儀式だから………」
京太「わかりました」
小蒔「………あの」
京太「はい」
小蒔「何を、申していいのかわかりませんが」
京太「………十分ですよ。道を示してくれて、ありがとうございます」
小蒔「………はじめ、ます」
光が、舞う
草も何一つなびいていないというのに、温かい風のようなものを、感じる
あるべきものを………あるべきものへと、正すかのように
853 = 1 :
シロ「京太」
少しずつ、薄れる意識
塞「京太君」
怖くはない。これから、踏み出すための最初の一歩なんだから
エイスリン「キョータ」
だけど、この期に及んで――――――俺は、弱い
豊音「京太君」
――――帰ってこられなかったら、なんて思ってしまうんだから
だから、この一言を抑えられなかった
胡桃「 京太ぁ!!! 」
愛してます。胡桃さん
854 = 1 :
.
小蒔「………儀式は、滞りなく終了………しました」
初美「座標も狂ってないはずです、よー………」
胡桃「………………………」
シロ「………胡桃」
胡桃「馬鹿」
塞「………胡桃」
胡桃「返事は………帰ってきてからって、いったじゃん」
エイスリン「………………………」
胡桃「帰ってくるから、その時にって、言ったじゃん」
豊音「………………………っ」
胡桃「馬鹿」
胡桃「馬鹿………京太の、馬鹿」
胡桃「馬鹿………馬鹿………大馬鹿京太………馬鹿………」
胡桃「京太………京、太………………ぁ………」
胡桃「う、ぁ………あ………
うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!!
京太………京太ああぁぁ!!!」
この日――――『京太』は
宮守高校、麻雀部のメンバーの前から
姿を、消した
855 = 1 :
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世界を隔てた、『向こう側』
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856 = 1 :
京太郎「………っが、あああぁぁあ!!!!」
顔を灼く、記憶にあるその焦熱
戻って、来た――――――――俺は
京太郎「………ぐ、 がぁ!!!!」
ならば、動け
一秒、刹那の間でも、俺に時間はない
ここから先は、『京太』じゃない―――――――――――――
『須賀京太郎』が、為さなければいけないことだ――――――――!!
『京太』が、誓ったことだ―――――――!!
857 = 1 :
京太郎「………ッ、咲ぃ!!!!」
瓦礫を力任せに跳ね除け、立ち上がり―――わずかに残っていた隙間を縫うように、その場を離れる
あの時は落下の衝撃でそれどころではなかった柱も、なんとか押しのけられた
階下に落ちてしまった………ということは、咲を助けるには、一度上に上がらなければいけない
どの道、俺が来た方の道は今の崩落で進めるような状況じゃない。なら、まずはこのまままっすぐ進んで、咲の裏側から回り込むように進むしかない
京太郎「咲ぃ!!待ってろ、絶対に助けてやる!!」
あの、宮守で過ごした毎日で
大切な人たちができた
大切な世界ができた
最愛の人が、できた
だけど、今は――――――――
京太郎「くそ………!!間に合え!!」
『須賀京太郎』にとって、絶対に守るべき者を………
かけがえのない、あの少女を助け出すために―――――――!!
858 = 1 :
京太郎「あと、少しっ………………………!!!」
皮膚が焼ける
髪が焦げる嫌な臭いが鼻をつく
喉が、叫ぶなとでもいうかのように熱く、痛い
それでも、足をとめないのは………
京太郎「咲!!」
咲「………!?京、ちゃん!!」
この少女を救うという、ただ一つの救いのために
859 = 1 :
咲「京ちゃん!!無事、だったの!?」
京太郎「ああ、無事だ!!足だってついてる!!いいから、早く来い!!脱出するぞ!!」
咲「………う、うん!!」
咲の手を引いて、走り出す。できるだけ、できるだけ火の手と煙のない方に
だが、今この場から移動できる場所は―――思ったより、限られていた
京太郎「くそっ!!こっから、どういけば………!!」
咲「………っ?京ちゃん、窓の外!!声が聞こえる!!」
京太郎「!?どっちだ!!」
咲「こっち!!」
今度は逆に、咲に手を引かれて走る
その窓の下には、先に脱出したはずの和たちが集まっていた
それだけじゃない。轟々と燃え盛る炎の中で気づけなかったが、幾台もの消防車がすでに到着していた
窓の下を見れば………そこには、赤いマット。この高さから落ちても助かることを確信させてくれる、分厚いものだ
久「咲!!須賀君!!早く飛び降りて!!」
まこ「もう両脇は燃え上がってて動けん!!はよう!!」
和「窓が狭い………一人ずつ、飛び降りてください!!」
優希「時間がないじぇ!!」
………皆………………………っ
860 = 1 :
言う通りだ。窓は狭く、二人一気に飛び降りるのはきつい
いや、それ以上に二人一緒に飛び降りたら、重なり合って怪我をしかねない―――
咲「京ちゃん!!先に行って!!」
京太郎「は!?お前、そんなことができるはずが………」
咲「京ちゃん、怪我してるでしょ!!?早く、私もすぐに降りるから!!」
どこまでも………どこまでも、自分を優先しないんだな――――お前は
ああ、今になってわかった―――胡桃さんが―――みんなが、俺を危ういって、言ってたその訳が
けど
京太郎「………どっせい!!」
咲「きゃ!?」
咲を、抱え上げる
京太郎「………女の子を助けるから、男なんだろうがぁ!!!」
861 = 1 :
そのまま、咲をマットに向けて落とす
手荒だが………こうでもしないと、あの文学少女は意地でも動かないだろうから、な
下を見れば、咲は無事にマットに落下して、消防隊や他のメンバーの手を借りずに自力で立ち上がる
ああ、よかった………ちと、手荒だったからな
咲「京ちゃん!!私は大丈夫!!だから、京ちゃんも早く………!!」
京太郎「ああ!!今――――――――――――――――」
肩に走る、熱を伴う、覚えのある衝撃
――――嗚呼、なんだよ
咲が助かるまで………待っててくれたのか
久「………!!そん、な………!!」
和「須賀君!!!」
まこ「須賀!!!」
優希「………ッ京太郎ぉ!!!!」
862 :
崩れ落ちる瓦礫に、俺の視界は塞がれる
あの時とは比較にならない――――熱と重量と、実感する、その死の気配
咲「京ちゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
はは………………
また………女の子を、泣かせちまった
やっぱ、俺は………ヒーローには、なれねえなぁ………
けど――――それでも
助けたい奴だけは―――助けられた
胡桃『 京太 』
胡桃さん
みんな
京太「すみません」
863 = 1 :
.
この日
清澄高校で発生した、火災によって
一人の男子生徒が――――――――死亡した
864 = 1 :
これで………………いいよな?
→NO
いいえ
否
駄目
………というところで、本日の更新は終了になります
次回、最終回です。ええ、長すぎですね色々と。本当に申し訳ありません
最終回はもう一本道で頭の中にあるので、できるだけ早く書き進めるつもりです
そのためにも、言うこと聞かない豚さんたちと戦って勝利を収めてきます。そして連休勝ち取ります(フラグ)
それでは、よろしければもう少し、あと一度、お付き合いくださいませ
【独り言】
胡桃ちゃん (ボロン
867 :
乙です
後、何か無償にシュタゲのOPが聞きたくなった
868 :
乙
京太郎が死んでしまうところでMad Worldが頭の中で流れた
870 :
乙。
>>864
おうその粗末なモンしまえや
871 :
独り言でシリアス気分が消し飛んだwww
872 :
うぁあああああああああああ、
このスレのおかげで京白から京胡になりました
873 :
こんばんは
友人に「ほのぼのしててニヤニヤできるような、優しい雰囲気のエロゲない?」と言われたので、「車輪の国、向日葵の少女」を渡したら友人に哀しみを背負わせた>>1です
同じような感じでほのぼの日常アニメを求めた時にエルフェンリート渡された過去から学ばなかった彼が悪い。>>1は悪くねぇ!!
さて、早ければ明日………というか、今晩ですね。18日夜に。遅くとも明日の夜には最終回、というか事実上のエピローグを投下したいと思ってます
1スレ分にこんなに長々と時間をかけてしまったにも関わらず、お付き合いいただきました皆さまには本当に頭が上がりません。
本当に、ありがとうございます
次の投下で本編が完結した後なのですが、需要があれば書きだめ無しで行ける程度の長さの後日談的短編をぽつぽつ投下しようかななんて考えてます
その際には、リクエストをとらせていただくかもしれません。よろしければ、お付き合い頂ければ幸いです
それでは、また今晩か明日の夜に
【独り言】胡桃ちゃん―――――――君を悲しませたままになんて、させない。
消えさせたりだなんて、しない
進もう。そして、勝とう
俺がもう一度………………………君をその場に立たせてあげる
胡桃ちゃん――――――――――――俺たち、これで終わりじゃないよね――――?
874 :
独り言がシリアスなのって今回初じゃなかろうか
875 :
シリアスな独り言でも、事案しか連想できないのはなんでかしら?
876 :
イチャラブなエロゲ欲しいって言ってきた友人にユースティア渡したら文句言いながら感謝されたわ
878 = 1 :
こんばんは
独り言の内容がシリアスとか言われてしまって、実はこれ某エロゲの改変セリフなんだよな………とか言いだせない>>1です
ついでに、車輪の国で目が死んでしまった友人に「いつか降る雪」を渡したらどうなるのかと、今から愉悦が止まらない>>1です
この後、最終回投下を開始いたします。23:30前後に開始したいと思っておりますので、少々お待ちください
879 :
うーんこの畜生
880 = 1 :
更新、開始いたします
881 :
見覚えあると思ったら熊本先輩かこれ
882 = 1 :
一か月後
宮守高校 麻雀部部室
塞「ロン」
エイスリン「ア、ソッチ・・・・」
シロ「………半チャン、終了だね」
豊音「………やっぱり、だめかぁ」
塞(………あれから、一か月)
塞(京太君の抜けた穴は………思ったよりも、大きかったんだろうなぁ)
塞(本当なら、受験とか就活とか………こんなことやってる場合じゃないのに、私たちはいつもみたいにここに集まってて)
塞(しかも、肝心の麻雀にすら身が入らない………さっきからみんな、らしくない打ち筋ばっかりでグダグダだしね)
塞(ほんとなら、もっとしっかりしないといけないんだろうけど………先生も、最近目に見えて溜息の数が増えてる)
塞(遠野物語のマスターも、味こそ落ちないものの………少しばかり元気がなくって、筋肉の動きが鈍いって話)
塞(………その判断方法もどうかと思うけど)
塞(………それに、一番は………)
883 = 1 :
胡桃「………………」
塞「………ほら、交代だよ」
胡桃「………あ、ご、ごめん。じゃあ、始めよっか」
シロ「………ん」
塞(………早く帰ってこい、この………女泣かせ)
884 = 1 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
巴「………え?」
初美「それ、本当なんですかー?」
小蒔「ええ。霞ちゃんとも話し合ったんですが………ほぼ、間違いないかと」
春「………正直、呆れた」ポリポリ
霞「ええ、まあ正直私もびっくりなのだけど………なんでしょうかね、世界を越えちゃうような人って、頑固な人が多いのかしら………」
初美「自分で言ってたじゃないですかー。爆発的な、強い執念なんかが引き金になるって」
霞「ええ、けど流石にこれはびっくりよ………『あの人』も、大概そうだったけど」
小蒔「………例の、『前例』の方ですよね」
霞「ええ。彼は………あの人は、私たちが宮守の皆さんに『不可能』と断じたことを、可能にしてしまうほど爆発的な後悔を抱えていましたから」
巴「………須賀京太郎さんは、『助けに戻る』でしたが」
初美「あの人は………『助けられなかった』後悔の念で、押しつぶされそうになってましたからねー………」
霞「ええ………」
885 = 1 :
.
『頼む………!!俺を、あの少女を失うその前に、送ってくれ………!!!』
『すべてがゼロに戻ってもいい………!!初めからやり直しでも構わない!!』
『この身が砕けても、俺自身が消えてもいい!!』
『俺は、あの子を………あの少女を、救いたいんだ!!!』
.
886 = 1 :
霞「………あの人は、自身にとって大切な少女を………救うことができなかった」
春「どう聞いても、あの人のせいじゃないのにね………」ポリポリ
霞「ええ。ですが、須賀京太郎さん然り………だからこそ、それを許せない人だからこそ、なのかもしれませんね」
巴「自分のせいじゃない、自分の責任はない………という免罪符が、許せないんでしょうね」
小蒔「無理だ、不可能だと何度諭しても………あの方は諦めませんでした」
霞「だからこそ、私たちはダメもとで、あの方を………『入ってきたトンネルの入り口』ではなく、『それ以前の時と場所』に、トンネルを繋ぐ試みを行った」
初美「まさか、本当に成功するなんて思ってもいませんでしたけどねー」
霞「ええ。ですが、その結果私たちは、それがいかに世界に負担をかける行為かを実感することになった」
春「次同じ事をしたら、どうなるかわからない………ん、どうあがいても悪いことにしかならないのが、わかっちゃったから」
巴「だからこそ、須賀京太郎さんがそれを望んでも………それを許容できなかったんですよね」
887 = 1 :
小蒔「………悔しいです。あの人にも、それが必要だったのに………」
霞「………そうね。けど………」
初美「まさかすぎますよー………これ、ある意味一番の力技なんじゃないですかー?」
霞「そうねえ………あの人………萩原さん、だったかしら。あの人以上の、奇跡を起こしちゃった感じはあるわね」
巴「………あの人も、元気なんですかねぇ………」
小蒔「………きっと、大丈夫ですよ。今度こそ………救いたかった人を救い出してますよ」
春「………滞在してた時の黒糖料理、美味しかった………」
巴「もう、またそんな………けど、あの人のスキル、ホント色々凄かったですね………」
初美「平行世界広しといえど、あんな人はそうそういないんじゃないですか?」
霞「うふふ、かもね」
初美「………ていうか、ちょっと脱線しましたですよー。前のことはともかく、今回のことについてちゃんと説明してくださいよー」
巴「そうですよ。流石に、説明がないと納得できません」
霞「………ええ。そうね、じゃあ………」
888 = 1 :
シロ「………はぁ、寒………」
胡桃「雪、凄いね………」
塞「どうする?どっか寄る?」
豊音「………んー、今日は、いいかな………」
エイスリン「………ン」
胡桃「………そうだね」
塞「………………………」
シロ「………死んでるなんて、欠片も思えないからこそ」
胡桃「………シロ」
シロ「………どうしてるんだろうな、って」
豊音「………何度言っても、無茶しちゃうから………」
塞「ほんと………元気にしてくれてれば、それでいいんだけど」
胡桃「………私、贅沢なのかな」
塞「………?」
胡桃「やっぱり、会いたいよ」
.
889 = 1 :
エイスリン「………ワタシモ」
シロ「………さっさと帰ってきてもらわないと、困る」
豊音「………そうだね」
塞「まあ、帰ってき時………私たちが、こんな状態じゃ京太君も呆れちゃうよね」
胡桃「うん………だから、早く―――――え」
890 = 1 :
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
霞「一言でいうとね。それこそ、『トンネル』なのよ」
初美「………?一度道ができたから、ですか?それでも………」
霞「ええ。それだけでは、世界は【異物】の存在を許容できない。けど、それはあくまで【双方の世界】にその人間の存在が『ある』場合、ね」
巴「つまり、どちらか片方の世界でその人間が『いない』ことになってしまえば、ということですか?」
春「けど………本来いないはずの人間が、そこにいるという矛盾は」
小蒔「もちろん、これだけではその矛盾を解決することはできません。ですが………前例となったあの方と、今回の件では―――大きく違う部分があるんです」
初美「………?あ………そうか、そういうこと、ですか」
巴「………確かに、それは大きく違う………」
霞「そう………渡ってきた世界においての行動が、大きく違うの」
891 = 1 :
小蒔「もっと言えば、前提から大きく違ってるんですが………前回は記憶喪失といった事態もなく、あの方は終始世界をもう一度渡る事のみに腐心されていました」
春「………けど、今回は違う」
小蒔「ええ。須賀京太郎さんは………そのご自身の性格と、記憶を失ったことによって自身のすべきことが一切不明だったのも相まって、この世界にきてから―――その周囲の人物と、非常に積極的に交流をもたれました」
霞「それも、その悉くで信頼を得るような形でね。聞き及んだところによると、宮守の皆さんたちだけではなく、近所の方、商店街の方、と………かなり広範囲で交流を持っていたそうよ。アルバイトで喫茶店にいたというのも、大きいでしょうね」
初美「あの宮守高校の皆さんとの交流は特別相当深かったでしょうからねー。その中でも、あの………鹿倉胡桃さんとは」
巴「………正直、最期のあのやりとり見せられて、本気で土下座の一つでもしたくなりましたよ。今でも思い出すたびに気が重くなるんですから」
春「………つまり、纏めると」
霞「ええ………そうね、つまり―――――――――――――」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
892 = 1 :
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
胡桃「ねえ、なんか―――――――焦げ臭くない?」
塞「え?………ほんとだ、なんか………」
エイスリン「アレ!!アソコ!!」
豊音「どうしたの、エイスリンさ………あ!!」
シロ「………なにこれ」
塞「雪が、ここだけ溶けて………草が、焦げ付いてる?」
豊音「火はもうついてないみたいだよー」
胡桃「………見て。なんか、引きずったみたいな跡がある」
シロ「向こうの………神社の方に、向かってる?」
胡桃「………………………………」
塞「胡桃?」
胡桃「行ってくる!!」
塞「あ、ちょっと………!!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
893 :
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
霞「あの人は………もう、本来であればどうしようもなかったの」
巴「それは………どういう意味で?」
霞「一言でいえば、あの人はどうあがいても、その死の運命からは逃れられなかった」
小蒔「この世界にとどまっていれば、自身の消滅か死………最悪は世界を巻き込んで。そして、元の世界へと戻ってしまえば言うまでもなく」
霞「どのような道筋を辿ろうと、その結末は同じだった」
初美「………?じゃあ、どうしてですか?」
霞「それが、さっき言った【此方側で作った縁】なのよ。むしろ、巴ちゃんがすでに答えを言ってるのだけど」
巴「え?………あ、そうか………」
春「つまり………向こう側で【死亡】という事実が発生してしまえば、ということ?」
小蒔「ちょっと、違うんです。本当の意味で【死亡】しなくとも、その存在が【死亡と認識される】、ということなんです」
霞「ご遺体が発見されなくても、生存がまず望めない状況というのがあるでしょう?航空機の墜落とか、潜水艦の沈没………または」
初美「………大火災が発生した建造物からの、逃げ遅れ………」
霞「それも、建造物の中にいることがはっきりと確認された上で、ね」
894 = 1 :
小蒔「そうなってしまえば、その人物と、その世界の【因果】は非常に希薄なものとなります。本来でしたら、その時点で望みは無くなってしまうのですが………二つの要素が、【それ】を為します」
霞「この世界に来た時と同じ………【爆発的な意思】。そして――――――その導きとなる、【縁】」
初美「えっと………向こう側で死亡と判断するしかないような状況になって、その人物の世界との因果が希薄になったところで、」
巴「世界間を移動する事象の引き金となる、爆発的な、何かへの執着と意思………」
春「………それを確実にするのは、すでに自身が開いた【トンネル】と、それを辿る道しるべとなる、【此方側】との縁………」
小蒔「そして、本来この世界に存在しない人物、他の世界との因果がある人物の存在を認められないという世界の矛盾は、片方の世界との縁がトンネルを通った際に完全に断ち切れることで消滅します」
霞「さらに………この世界に【過去】がない人物が、この世界にとどまるために必要な物は、一つ」
初美「つまりそれが………」
霞「ええ………この世界において、『京太』という存在を定義し固着するに足る、この世界の人物との因果と縁、そして―――――」
霞「双方が、双方を求める―――――想い」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
895 = 1 :
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
胡桃「はっはっはっ………ぜぇ、ぜぇ」
塞「ちょっと、胡桃………」
胡桃「わからない………」
塞「え………?」
胡桃「わからない、けど………もしか、したら」
シロ「………行こう」
豊音「………まさか」
エイスリン「クルミ、シロ………」
胡桃「早く、行かなくちゃ………!!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
896 = 1 :
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
巴「………なるほど。すべて、納得しました」
小蒔「それでも、奇跡であることには変わりはないんですが………どれか一つでも欠けてしまったら、為し得なかったことですから」
霞「加えて、彼の『向こう側』との因果は完全に切れてしまった以上………もう、世界間の移動は望めない。それは、彼が支払った代償といえるでしょうね」
初美「完全なハッピーエンド、ではないですもんねー………」
霞「ええ。彼は、これからずっと罪の意識を背負っていくことになる。自身が生まれ育った世界の大切な人たちに、自身の生を伝えることも許されず、本当のことを伝えることもできず、結果的に大きな嘘を塗りたくってしまったことを」
小蒔「人間が一人である以上、どちらかを選ばないといけなかったとはいえ………それは、あの優しい方にはとても重い罪業として残るでしょうから………」
巴「………それでも、こちらに戻ってこれたのは」
春「………両想いの相手ができるくらいこの世界と因果を作ってたこと、もう一度、この世界へ………って思いがあったから、か」
巴「………彼に、彼女たちに。改めて謝罪とご挨拶に伺わないといけませんね」
霞「そうね………うふふ」
897 = 1 :
初美「………………………………あれ?」
小蒔「どうしました?」
初美「………いや、あの………さっきから小難しく色々理屈並べてて、それで納得はもちろんできたんですが………いや、つまりそれって………」
巴「はっちゃん、どうしたの?」
初美「いや………さっきからずらーーーーっと並べ立ててた理屈って、つまるところ一言で纏めると………」
巴「………あ」
春「………………うわぁ」
小蒔「あ、あはは………いいんじゃないでしょうか。世界のルール云々とかより、ずっと素敵だと思いますよ?」
初美「う、うわぁ………………流石に、顔が赤くなりますよー………」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
898 = 1 :
塞「………これ、血………!?」
豊音「………ねえ、あそこ!!」
シロ「どこ………!?」
エイスリン「アソコ!!キノ、シタ!!」
塞「………誰か、木にもたれ………………………………」
胡桃「――――――――――――――あ」
霞「いいんじゃないかしら?」
霞「小蒔ちゃんの言う通り、理屈っぽく説明するよりも、こんなロマンチックな言葉でいいと思うわよ」
霞「うふふ………ほらだって、王道でしょう?前に、はっちゃんが歌ってた歌にもあったじゃない」
899 = 1 :
.
霞「必ず、最期に愛は勝つ――――――――――ってね」
.
900 = 1 :
.
京太「―――――――――遅く、なりました」
胡桃「京太ぁ!!!!!」
.
みんなの評価 : ★★★×5
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