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~車内~
浜面「……いきなりよくわからねえ研究所に向かえって言われて、連れて行ってみれば大将はなんか拳銃ぶっ放しながら中入って行くしよ」
浜面「しかもまだ同じような研究所が二つあるって言うし……」
浜面「大将って何者……?」
上条「浜面、もう良いぞ。次のとこ行ってくれ」
浜面「おう……、って何だその子!? 裸じゃねえか! もしかして大将、ロリコン……ッ!?」
上条「ふざけたこと言ってんなよ。変な液体の中に閉じ込められてたから連れてきただけだ」
上条「それにこっちで保護しとかなきゃいけない奴みたいだしな」
浜面「そ、そうか……。大将ってさ、やっぱし危ないことやってんの……?」
上条「あー……、まあ言ってもいいか。暗部って奴だよ。人殺し過ぎたし、しょうがないんじゃねえかな」
浜面「ッ!? それって俺ら助けた時のも入ってるよな……。すまねえ」
上条「無関係じゃねえけどよ、もっと色んなことやったツケが回ってきただけだからさ、お前らが気にすることじゃねえよ」
浜面「……」
上条「まあ、知っといた方が良いと思うから駒場さんには言っといてくれよ」
浜面「わかった。……それじゃあ、今日のこれも仕事ってやつか?」
上条「まあな。わざわざ足貸してもらっちまって悪いな」
浜面「いや、そんなことは良いんだ。ただ……」
浜面「死んでくれるなよ、大将」
上条「……くくっ、俺よりお前の方が早く死にそうなくせして何言ってんだ」
浜面「ッ! なんだよ、人が心配してやってんのに!」
上条「まあまあ、怒るなよ」
上条「……ありがとな」
浜面「お、おう」
上条「じゃあ次はこの研究所な」
浜面「了解だ。ところでその子はどうするんだ?」
上条「んー、二つの研究所ぶっ潰した後、俺を送り届けたら病院連れて行ってくれねえか? 冥土帰しがいるとこね」
浜面「研究所ぶっ潰すだけじゃないのか?」
上条「研究所潰すのはあくまで前菜。メインディッシュはその後だよ」
~第十七学区 操車場~
20:25
浜面「ここで良いのか?」
上条「あぁ。入り口から入れるかわからねえからな。この金網登ってくよ」
浜面「まあ、大将が良いって言うなら良いんだけどさ……」
上条「それじゃ、その子を病院に頼んだぜ。俺の名前出せば冥土帰しなら悪いようにはしないはずだ」
浜面「了解。……また飯作りに来てくれよ」
上条「落ち着いたらな」
浜面「おう」
上条「それじゃ、その子送り届けたら帰ってくれて良いから。……今日はありがとな」
浜面「わかった。……それじゃ」
上条「あぁ」
上条「さぁ、決着つけようか」
20:30
ミサカ100号「……時間になりました。これから第100次『絶対能力進化』実験を行いますが準備はよろしいですか、とミサカは事務的に事を進めます」
一方通行「……」
ミサカ100号「どうかしましたか?」
一方通行「……なンでもねェ」
ミサカ100号「……待ってください。研究所と連絡が取れません」
一方通行「あァ? それはどォいうことだ……?」
「そりゃ研究所が潰されたからじゃねえの?」
一方通行「……誰だオマエ、関係者じゃねェだろ」
上条「あぁ」
上条「一方通行、お前を殺しに来ただけだ」
一方通行「俺を殺しに来た、ねェ……」
一方通行「オマエみたいな三下がいるからいけねェンだよ……。このままじゃ……」
ミサカ100号「これから実験があるので関係者以外は立ち退きしていただきたいのですが、とミサカは暗に邪魔だということを隠しながら丁寧な口調でお願いをします」
上条「いや、全然隠せてねえし」
ミサカ100号「はっ、実験を知られてしまった以上、生きて帰してはいけないのでは……、とミサカは重要なことに気付いたフリをして脅してみせます」
上条「そもそもさ、もうこんなことしなくても良いわけ」
一方通行「あァ? なァに勝手にほざいてンだか」
ミサカ100号「そうです、あなたは何を言っているのですか、とミサカは何も知らないはずのこの方に違和感を感じながらも反論してみせます」
上条「だってこの実験、俺の都合で潰させてもらうから」
一方通行「おィ三下ァ、オマエ頭イかれてンのか?」
上条「……なぁ、別におしゃべりしにわざわざ来たわけじゃないんだ。始めようぜ」
一方通行「かっ、この俺が誰だかわかってて言ってンのかよ。もしそうだとしたら哀れだなァ、抱きしめたくなっちまうほど哀れだッ!」
上条「お前が最強の座にずっといられると思ってんなら、まずはその幻想をぶち殺すッ!」
(まだ安定してねェんだ……、ここは遠くから……)
一方通行は近くにあった大量の鉄骨に手を伸ばす
鉄骨に手を触れベクトル操作を行い、一つ一つを上条に向けて投げ放った
上条は一方通行が自身の手でなく近くの物を放ってきたことに違和感を感じる
(なぜ反射を利用して接近戦で来ない……?)
何本もの鉄骨が連続で上条に迫り、地面に突き刺さっていく
一本一本避けるのはさほど難しくはなかったが、地面に刺さった鉄骨により逃げ道が限られてきてしまう
学園都市最強の頭脳の持ち主は頭の良さも学園都市最強である
一方通行の思う通りに追い込まれた上条へと一本の鉄骨が襲いかかる
ドオン、と音をたてて地面に突き刺さる鉄骨
「ンだァ? 思ってたよりもクソ弱ェじゃねェか」
一方通行は拍子抜けといった表情で鉄骨の塊を眺める
見えなくなるほとではないが土埃が舞っていて上条の姿を正確に捉えられない
そこに探していた人物の声が聞こえてきた
「勝手に終わらせるな、臆病者め」
鉄骨の塊の少し後ろに上条は立っている
とどめの一本が上条へと当たる前に上条は、飛び上がって後ろの鉄骨に体重をかけテコの原理を用いて鉄骨を曲げ、逃げ道を作り難を逃れたのであった
「臆病者……? はっ、俺に言ってンのか? この学園都市第一位の俺にッ!」
「遠くから物を投げるだけの第一位なんて、臆病者以外の何者でもねえよ」
「くかかかか、言うじゃねェかッ! そンなにスクラップになりてェなら、遠慮なくそォしてやるよッ!」
一方通行は挑発だとわかっていたが、地面に接する足の裏のベクトルを操作し、上条に向かって常人では出せない速さで駆け出す
(もォ関係ねェ。血液を逆流してぶっ殺すッ)
一方通行の後ろでは砂埃が舞っている
「くたばれェェェェェェェェェェェッ!!」
一方通行は上条の身体に触れようと左手を伸ばす
しかし、上条にとってその速さは脅威にはならなかった
(垣根の未元物質の方がまだ速いぜ)
上条は迫ってくる一方通行を躱し、その時伸ばしてきていた一方通行の左手を右手で弾く
パキーン、と音がなり一方通行の反射が解ける
(……は? なンで反射がなくなったンだよ……、まさかコイツが……ッ!?)
左手が弾かれたことで一方通行の身体が前傾姿勢から上半身が浮いてしまっていた
一瞬惚けた一方通行の隙を上条は逃さない
左足を前に出し腰を捻りながら振りかぶった右手の拳を一方通行の顔面へと放った
バキッ、と上条の拳が一方通行の顔面を捉え数十メートル一方通行が吹っ飛ぶ
ズザザザザと音をたてて地面と一方通行の身体が擦れる
そしてさらに数メートル行ったところで一方通行はようやく止まる
そこらの学生では繰り出せない威力の一撃を命中させたにも関わらず、それをした上条の顔は晴れない
チッ、と上条は舌打ちをした
「さっさと起き上がれよ。手応えなかったぜ」
言葉が聞こえたのか聞こえなかったのかはわからないが、上条から遠く離れて倒れていた一方通行は静かに立ち上がった
~side??ミサカ100号~
これはどういうことなのでしょうか
Level5のクローンとして生まれたが、その力までは受け継ぐことが出来ず、ただ殺されるだけの実験人形になったミサカ達
軍用クローンの名に違わぬ銃器の扱いに長け、それらを駆使しても傷一つつけられなかった学園都市第一位、一方通行
そんな彼を殺しに来たと言う少年
実験を私用で潰すと言い、研究所は潰れたと言った
そして一方通行の攻撃を避け、挑発し、過去の『ミサカ達』が一度も破ることの出来なかった絶対防御、反射を破り彼の顔へ拳を撃ち込んだ少年
おかしい
なぜだろう
――気分が高揚しているのがわかる
これがなんという感情なのか、『学習装置(テスタメント)』にはなかった
わからない
教えてもらってないから
けどわかることもある
――ミサカは涙を流している
悲しいのでしょうか
涙……、悲しい時に流れるもの
でも悲しくない
わからない
でも、
――涙は止まらない
あの少年は何者なのでしょうか
どうして彼に攻撃が出来るのでしょう
わからない……
――ミサカはこの世界を知らなすぎる……
~side 一方通行~
『俺の目的のために死んでもらうぜ』
『俺の未元物質(ダークマター)に、常識は通用しねえ』
『お前は俺には勝てねえよ。そんなブレブレの信念じゃ生きる価値なんてねえ』
『自分が信じたことを曲げてまで生きる人生なんてクソだ』
『人に優しくして欲しいなら、人に優しくしろ』
『人の温もりが欲しいなら、自分から近づけ』
『人を傷つけたくないなら、自分が傷つく覚悟を決めろ』
『お前はただ逃げてるだけだろッ!』
『お前が一人なのは、お前自身のせいだろうがッ!』
『ゴフッ……、ははっ……気ぃ付けろよ、……俺よりも……強い奴が……、お前の……、前に…あら…わ……れ…る……から……よ…………っ………』
そォか、コイツか
お前と同じ目をしてる
――俺を認めない目だッッ!!
「風でも使って殴られる前に俺から少し距離を取ったみたいだな。そのせいで全然ダメージくらってないだろ」
上条の言葉に我に返る一方通行
まだ互いの距離はあるが声が辛うじて聞こえるのだろう
「なンで反射が効かねェ」
「お前の常識は、俺には通用しねえ」
「くかか、そォか……、やっぱりそォだ。……あの忌々しい第二位に似てやがる」
「……垣根の仇は取らせてもらうぜッ!」
上条は足に力をいれ一方通行との距離を詰めるために駆け出す
対する一方通行は足元にある小石をベクトル操作によって音速に近いスピードで蹴り放った
ヒュン??ヒュン??ヒュン
当たれば致命傷のただの小石
それを上条は無意識の内に避ける
理性によってではなく本能で避けていく
(かァ、とンでもねェなァ……。さて、どォする……)
考えに耽る時間など0.1秒にも満たないが、その一瞬一瞬が一方通行を死へと追いやる
――焦り
それは第二位、垣根帝督と戦った時にも感じた恐怖からくるもの
(気にいらねェ……。今回はなんとしてでも自分の力で勝つ……ッ!)
一方通行は足元から上条へと延びる線路を踏みベクトル操作で操る
突然うねり出した線路
上条は線路の動きに対応出来ず空中へと放り出される
それを狙ったかのように一方通行が勢いよく飛び上がってきた
「死ねェェェェェェェええええェェェェェェェェェェェェッッ!!」
「くっ……っ……!」
予想外に空中へと投げ出された上条は抵抗出来ず、一方通行の能力によって強化された右ストレートを左腕で庇うことしか出来なかった
殴られた上条は横にそびえ立つように並べられている倉庫の一ブロックに叩きつけられ、身体を強く打つ
「がはっ」
肺の中の空気が漏れ出す
そのまま重力に引っ張られ地面へと落ちていく
だが、上条は痛みに耐えながらも空中で体勢を立て直し両足をバネのようにして上手く着地し、片膝をついて息を整えようとする
上条の左腕は言うことを聞かないかのように、だらんとぶら下がっているだけ
――骨折
骨が砕けたかはわからないが、確実に骨にヒビは入っており上手く動かせないことを踏まえて骨折と考えるのが妥当であった
すなわちこの戦いでは上条の左腕は使い物にならなくなった
(まあもともと左は期待出来なかったが、……この痛みを感じながらの戦いかよ)
反射がある限り左手、両足の攻撃は一方通行には無効化され、逆にダメージをこちらがくらってしまう
しかし、右手で一方通行を捕まえれば反射を破れる可能性があったため、左手が使えなくなることは少なくともプラスではなかった
しかも痛みに耐えながら学園都市第一位と戦わなければならない状況に、多少の緊張が走る
「ははっ、これじゃ垣根ともまだ差があるのかもしれないな」
「……けど」
「今日だけは……、今回だけは……、背負ってるもんがある! 負けられねえっ!」
(垣根、初春、御坂、――御坂妹、――御坂末っ子……。負けちゃいられねえだろっ!)
上条は遠くからこちらへと向かってくる一方通行を睨む
その顔には邪悪な笑みを浮かべられている
上条はそれを睨みながら立ち上がった
(三下の左腕には俺の能力は効いた……。ン? 待てよ……、反射を破られたのも、殴られたのも、全て三下の右手……)
一方通行は上条を殴り飛ばした後、上条が飛んでいった方向を見ながら冷静に戦況を分析していた
「……もしや、アイツは右手で触れた能力を消す類の能力者」
学園都市第三位の御坂美琴と違い、上条が能力に対抗する際は右手しか使っていないことを見抜く
それが第一位と第三位の頭の違いなのか戦況の違いなのか、それとも冷静さを忘れずに戦況を分析することが出来ていたかどうかなのか、その原因は定かではないが、一方通行は上条の幻想殺しの真実に近づいたのは確かだった
そしてこの情報は、上条との戦いを続ける上でこれ以上価値のあるものはない
(もしこれが事実ならば、……悪ィがこっから先は一方通行だァ!)
顔に邪悪な笑みを浮かべ、こちらを睨みながら立ち上がる上条を見ながら、一方通行はその足を上条へと向けていた
「三下ァ、俺の能力は効かねェンじゃなかったのかァ?」
ニヤニヤと上条に近付きながら歩いてくる一方通行に、上条は悟った
――幻想殺しに気が付いたッ!
上条は右手を握り、額に汗を滲ませる
(どうする……、こうなったら迂闊に近付いてくることはしないだろう……。銃なんかぶっ放してもそっくりそのまま返ってくるのがオチ……、くっ……)
「オマエはこれから俺にいたぶられ続けるしか未来はねェッ!」
一方通行は足元の小石を先ほどと同じようにベクトル操作して蹴る
上条はそれを避けながら一方通行から離れるように走り出す
しかし、一方通行はそれを逃がさぬよう上条の逃げる先に鉄骨を突き刺し、追い詰めようとしていた
しかし、その鉄骨の微妙な傾きや高さの違いを利用して、上条は持ち前の身体能力を駆使し鉄骨の山を駆け上り、飛び越えて行った
「チッ、逃げやがったか」
一方通行はわかっている
上条の戦い方は近接格闘オンリーであるということに
そして、例え遠距離からの攻撃手段があったとしても自分には無意味だということを
垣根の未元物質のように遠近両方で一方通行に有効な攻撃を上条が持ってわけではないことを
(問題は、いつどのタイミングで仕掛けてくるか……)
さめざめとした何の音もなく静かに佇む第十七学区操車場
だがそこは、山積みになっていたはずの鉄骨が地面に無造作に突き刺さり、音速に近いスピードで空気を切り裂いた小石によって倉庫には無数の小さな穴が空けられ、うねりひん曲がった線路があった
そしてこの場所をこのような様にし、他者に有無を言わぬ近寄り難い雰囲気を醸し出していた二人は、お互いの息を感じようと耳を神経を張り詰めていた
夏はまだ遠い春の夜
さすがに肌寒くもあるが白い悪魔と黒い悪魔はそんなことを感じてはいなかった
延々とも感じる短い時間が流れ、空高くに位置する月に雲が差し掛かった頃
カンッ
一方通行の左方で音がなり、上条が現れた
一方通行は焦らず牽制として小石を蹴り出す
(さァ、どォ来る……)
一方通行は小石を避けた上条の行動を見て鉄骨を放り、体勢が崩れたところを不自由な上条の左側から切り崩そうと画策していた
「なッ!?」
しかし、小石は上条に全弾命中
上条は小石の勢いに負けてその後ろの倉庫へと叩きつけられる
ガコッ ガコッ ガコッ
そして、上条の倉庫に叩きつけられた音は不自然だった
一方通行がその音に違和感を覚えたその時、強烈な悪寒が一方通行を襲う
そして無意識に左腕で顔の左側を覆う
ドゴッ
一方通行は、殺人的な格闘を極めつつある上条の一発をくらい、その勢いを殺せずに吹き飛ぶ
数メートル飛ばされ、地面に落ちるかという時にまたしても嫌な雰囲気を感じ取る
そう思ってからの行動は早かった
右手を地面に突きベクトル操作で地面から身体を上空へと放ち、風を操って空中で体勢を整え、何層にも倉庫が重なっているてっぺんに降り立つ
そして、一方通行の右手の跡が残っている地面には、左腕をぶら下げた上条の姿があった
「これでまあ、イーブンってとこだな」
そう言い放った上条の視線の先にいるのは上条と同じく左腕をぶら下げている一方通行
「互いの能力の全容を知り、後はどちらか一方が動けなくなるまで、……いや、死ぬまで続くデスゲームがあるのみだッ!」
「互いの能力の全容を知り……? ぎゃは、ぎゃはぎゃはぎゃは、オマエが俺の何を知っているって言ってンだァ? あァ?」
「……なに?」
「第二位との戦いを経て、俺は進化したンだよ。今じゃ演算領域の限界すら見えねェ! こンなことも出来ンだぜェ」
そう言うと一方通行はおもむろに右手をぶら下がる左腕の負傷していると思われる部分へと重ねる
すると左腕がビクッと跳ね、上条の拳で砕かれる前の完全な状態へとなった
「ッ!?」
「体内の骨や成分、組織をベクトル操作し、元通りとまではいかなくても体内で使われていない部分を用いて再構築。左腕は復活ってわけだァ」
一方通行は、左手を握っては広げて感触を確かめながら、倉庫のてっぺんから飛び降りる
地面には例の如くベクトル操作によって衝撃を無効化し、ストンと何事もなかったかのように着地した
「本当の化物かッ!」
「オマエこそなンで俺の左側にいやがった……、ン? 上着はどォしたァ」
「……その上着とこの糸を使って罠を張っただけだ」
上条は自身のデニムのポケットから細い糸を取り出し一方通行に見せてみせた
上条の格好は先ほどの青のパーカーに黒の細いデニム姿ではなく、黒の細いデニムは変わらないが上半身は黒のタンクトップのみであった
「ほォ、ンなもン持ってるたァ驚いた」
「ふざけ、やがってッ!」
上条は言葉の端々からは感じないが、内心焦り、困惑していた
確実に意識を刈り取れるはずだった一撃を左腕でガードされ、しかもその左腕を元通りにされたことに
しかも一方通行の能力の底がしれないことに
そして、
――その能力で垣根を助けられるかもしれない、と感じてしまった自分に
(こいつを仲間にしようだなんて、無理だったんだ……。どうしても憎い……。それにこいつが他人の言うことを聞くとも思えない……)
――なのにッ!
――どうして仲間にして垣根の治療を頼みたいと考えるんだッ!
――なのにッ!
「……どうしてお前がそんな能力を使えるんだ」
「あァ? 言っただろ、第二位と戦った時になァ能力の新たな可能性に目覚めたンだよ」
「違うッ! どうして人を殺すことしかしないオマエが、そんな能力を使えるんだよッ! 使えて良いはずがねえだろッッ!!」
「……」
「人を助けられるような能力をオマエみたいなクズが使えちゃいけないだろうがッッ!!」
「……俺が殺してきたのは、俺を殺そうと挑んできた三下と、……そこの人形だけだ」
ビクッと物陰に隠れながらも白と黒の悪魔の戦いを見ていたミサカ100号の肩が跳ねる
(そうです、ミサカ達は作られた命……、人形……)
「……人形じゃねえだろ、御坂妹は。例え実験のために作られたとしても! この世で生きてる以上、人形じゃないッ!」
「はンッ! 俺に殺されるためにいるだけの存在で、クソみてェな研究員に命令されて何も言わずに聞くコイツらが人形じゃないだと? 笑わせるな三下ッ!」
「それはただこの世の中を知らないだけだろうがッ!」
「俺がどンなに煽っても、脅しても、実験だからだと言って殺されに来たコイツらをオマエはまだ人形だと言い張るのかッ!?」
「……お前、本当はこの実験やりたくなかったのか……?」
「「ッ!?」」
一方通行とミサカ100号が同時に目を見開く
その表情からは驚きと困惑が見て取れた
「……ンなわけねェだろうがッ!」
「じゃあなんでこんな実験に参加した! 答えろ、一方通行ッッ!!」
「絶対的な力が欲しいンだ! 最強じゃダメだ、無敵にならなきゃならねェ! こンなンじゃ俺に寄ってくるバカみてェな三下で、この世は溢れかえってンだよォォォォッ!!」
「……お前はやっぱり臆病者だ」
「なに!?」
「お前はただ逃げてるだけだろッ!」
「ッ!?」
『お前はただ逃げてるだけだろッ!』
「ふざけたことばっかり言ってンじゃねェぞこの三下がァァァァァァァあああああああァァァァァァッッ!!!」
「百何十人も殺してその事実から目を背けてんじゃねえよッ!??お前も俺みたいなクズなんだから、もっとクズらしく生きろよ一方通行ぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
>>532はなしで
(こいつを仲間にしようだなんて、無理だったんだ……。どうしても憎い……。それにこいつが他人の言うことを聞くとも思えない……)
――なのにッ!
――どうして仲間にして垣根の治療を頼みたいと考えるんだッ!
――なのにッ!
「……どうしてお前がそんな能力を使えるんだ」
「あァ? 言っただろ、第二位と戦った時になァ能力の新たな可能性に目覚めたンだよ」
「違うッ! どうして人を殺すことしかしないオマエが、そんな能力を使えるんだよッ! 使えて良いはずがねえだろッッ!!」
「……」
「人を助けられるような能力をオマエみたいなクズが使えちゃいけないだろうがッッ!!」
「……俺が殺してきたのは、俺を殺そうと挑んできた三下と、……そこの人形だけだ」
ビクッと物陰に隠れながらも白と黒の悪魔の戦いを見ていたミサカ100号の肩が跳ねる
(そうです、ミサカ達は作られた命……、人形……)
「……人形じゃねえだろ、御坂妹は。例え実験のために作られたとしても! この世で生きてる以上、人形じゃないッ!」
「はンッ! 俺に殺されるためにいるだけの存在で、クソみてェな研究員に命令されて何も言わずに聞くコイツらが人形じゃないだと? 笑わせるな三下ッ!」
「それはただこの世の中を知らないだけだろうがッ!」
「俺がどンなに煽っても、脅しても、実験だからだと言って殺されに来たコイツらをオマエはまだ人形だと言い張るのかッ!?」
「……お前、本当はこの実験やりたくなかったのか……?」
「「ッ!?」」
一方通行とミサカ100号が同時に目を見開く
その表情からは驚きと困惑が見て取れた
「……ンなわけねェだろうがッ!」
「じゃあなんでこんな実験に参加した!??答えろ、一方通行ッッ!!」
「絶対的な力が欲しいンだ! 最強じゃダメだ、無敵にならなきゃならねェ! こンなンじゃ俺に寄ってくるバカみてェな三下で、この世は溢れかえってンだよォォォォッ!!」
「……お前はやっぱり臆病者だ」
「なに!?」
「お前はただ逃げてるだけだろッ!」
「ッ!?」
『お前はただ逃げてるだけだろッ!』
「ふざけたことばっかり言ってンじゃねェぞこの三下がァァァァァァァあああああああァァァァァァッッ!!!」
「百何十人も殺してその事実から目を背けてんじゃねえよッ! お前も俺みたいなクズなんだから、もっとクズらしく生きろよ一方通行ぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
上条が一方通行に向かって駆け出す
左腕を庇いながらもそれでも速く、速く駆けていく
一方通行も上条に向かって駆け出した
上条には近接格闘しかないとわかっていてなお近接格闘を望む
その答えは
『無敵』になるため
遠距離からでは上条は攻撃出来ない
しかしそれでは近距離は上条に分があると認めているようなものである
それが一方通行には許せなかった、認めることは出来なかった
強いとは認めても自分よりも強いとは認められなかった
『無敵』になるための障壁――上条当麻
奴を近距離で破ってこそ意味があるのだ
上条の攻撃範囲にもうすぐ一方通行が入るといくことで上条が動く
上条に真っ直ぐ向かってくる一方通行の左側の死角から右フックを狙っていた
その際上条の右側は完全なフリー
また左腕が満足に使えない今、上条の防御は限りなくゼロに近かった
しかも相手は学園都市第一位
自殺行為にしか見えないスタイルをとる上条
一方通行に迷いはなかった
上条の正面から上条の左側へと足の裏のベクトルを操作し凄まじい速さでの方向転換
徹底的に右手を避け、徹底的に上条の左側を攻める
上条の右手が早いか、一方通行が触れるのが早いか、などとギャンブルする気はなかった
それは上条への敬意
強い相手だと認めることが出来る
だからこそ弱点を突きそこを攻める
それは学園都市にいる全ての人を見下してきた一方通行が初めて認めた瞬間だった
垣根は格付けで下にいるためどうしても自分よりも下にしか見えなかった
喧嘩を吹っかけてくる不良も武器を持ち寄り人数をかけてやってくる
そんな奴を同等だなんて思うことは不可能だった
けど上条は違った
能力を無効化する右手を持つ理解不能な存在
自分とは違って人殺しをしてもそれを背負って生きているのが拳を交えて伝わってくる
――まさに『悪党』
学園都市最強に右手一本で立ち向かってくる上条を認められずにはいられなかった
いくら自分を否定しようとも、それでも強いと認められずにはいられなかった
だからこそ
一方通行は確実に完全な勝利を目指す
身体をノーガードにし一方通行を自分の正面へと向かってこさせようとした上条
それは一方通行を一発で狩るために上条が仕掛けた罠だった
上条の右手首には先の戦闘で使った糸が巻きついている
その延長線上にあるのは上条の口
一方通行が突っ込んできたところで右手を繰り出すのと同時に顔を左側へと思いっきり引く
そうすることで普段の右フックにさらにスピードを加え一気に一方通行を狩る算段であった
例え右手首に多大なダメージを負おうとも
しかし一方通行はその誘いには乗らずに上条の左側へと移動する
――やられた
左側は何もすることの出来ない左腕のみ
どんなに右手首を犠牲にしても間に合うスピードは出ない
――まさに絶体絶命
勝利を諦め死を覚悟した、その時
上条に神が舞いおりた
このコンマ一秒にも満たない緊迫した状況の中、戦闘に重きを置いた数年間の集大成とも言える上条の戦闘脳が活性化された
――自分の能力だけじゃなく相手の能力も使う
かつて師であった垣根がよく使っていた戦法
上条の幻想殺しの能力に頼らせた攻撃を仕掛け、その中に能力でない攻撃を混ぜる
幻想殺しを過信していた上条に壊滅的なダメージを与えていた戦法だ
それが今、ここで生きる
一方通行は確信していた
どう考えても右手は間に合わない
(これで綺麗さっぱり終わらせてやるぜェッ!)
一方通行は右手の拳を握りしめ能力を使い殺人的な右ストレートを放とうとする
その時
上条の左肩が一方通行の身体に当たった
攻撃を仕掛けて来たわけではない
ただただ当たったのだ
それは一方通行の絶体防御、反射によって跳ね返される
――一方通行が意図したものでなくても
それにより上条が一方通行と向き合った
(やるじゃねェか……)
勝負は一方通行の右ストレートが早いか、上条の右フックが早いか
結局のところそうなるのであった
そして……
「はぁ、はぁ、はぁ」
立っていたのは
――上条当麻
しかしその身体は満身創痍
左腕はおそらく骨折し、右手首からは肉に糸が食い込み血が垂れている
一方通行の左頬は赤く腫れていた
真っ白な肌に浮かび上がる赤
しかし、無理矢理だった攻撃のため一方通行の意識はまだ辛うじて残っていた
「仲間に入れて欲しかった……」
「ただ、それだけだったのに……」
「こンな能力があったからいけなかったンだ……」
「人を傷付けることしか出来ないこの能力が……」
「だから、誰も近付かないよう無敵になる必要があった……」
「こンなところで諦められるかッ……」
「諦めてたまるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
(こいつも……、一方通行も俺と同じだったのか……)
(もしも、俺に優しい両親がいなかったら……)
(もしも、俺に垣根がいなかったら……)
(一方通行の立場には、俺が立っていたのかもしれない……)
急に一方通行の様子がおかしくなる
半ば意識を失っているようにも見えた
「fwiz殺ptwr」
一方通行の背中からは噴射状に伸びる二本の黒い翼のようなもの
一方通行の声はノイズが混じっていて上条には聞き取れない
しかしただならぬ殺気を感じ、上条は数メートル空いていた距離をさらに空ける
そこで思い出す
垣根と一方通行が戦っていた場所に、垣根の未元物質で作られた白い羽と正体不明の黒い羽があったことを
「ッ!?」
パキーン
上条が頭上に『何か』を感じ右手を振り上げた
その正体は『何らかのエネルギー』であり『何らかの不可視の力』であった
「これで垣根がやられたのか……ッ!?」
ドゴオォォォォオオォォォォォォン
一方通行は空中にその身を置き、急に黒い翼が膨張し始めた
それは程なくして全長が100メートル以上の巨大な翼になる
その膨張により一方通行の近くにあった倉庫は跡形もなく消え去っており、先ほどの大きな音はそれらが一瞬で消滅させられた時に出た音であった
「なんなんだよ、これは……」
すると一方通行が上条に向かって黒い翼を周囲を薙ぎ払う形で撃ってくる
「くっ!」
それを上条はなんとか右手で耐えるも、先ほど右手首を痛め、さらに噴射状の黒い翼は幻想殺しによって消しても消しても再生されてしまうため、防戦一方を強いられる
「く…そ……がっ! ぐっ……!!」
しばらく経っても効果がないとわかったのか、今度はそれを100本以上に分裂させ、そこから黒い羽が何千本も生成される
「ははっ、こりゃ死ぬんじゃないか……、どうするよ……」
(これは能力の暴走か……?一方通行の様子もさっきとは全く違う……。それじゃあ、いつからあいつはおかしいんだ? もしかして今日の戦闘中も……?)
その通りであった
一方通行は数ヶ月前の垣根との戦闘でこの黒い翼を発現させて以来、演算領域が広がっただけでなく時々自身の能力に違和感を感じるようにもなっていた
それが今日の上条との戦闘で最初に距離を取って戦った理由であった
暴走した能力は自分でも止められない
それならば近距離で何度も演算を行う戦闘よりも遠距離から少ない数の演算で済む戦闘を行った方が都合が良かったのだ
上条は目の前の無数の黒い羽をどうするか解決しあぐねていた
そして決断する
「行くぜ最強、……真っ向勝負だこの野郎がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
上条は一方通行に向かい駆け出す
先手必勝、何千本とある黒い羽を防ぐ策がない上条にとっての勝利条件は一方通行を戦闘不能にすること
よって一方通行への攻撃を行うしかない
そこに無数の黒い羽が襲いかかっていく
ドオォォォォオオオォォォォォンッ!!
騒々しい音と舞い上がり視界をゼロにする砂埃
第十七学区操車場は、昨日までの倉庫や鉄骨の山が置いてあった重々しい雰囲気が一変し、何もないあたり一体を見回せることが出来る更地へとその姿を変えていた
一方通行は砂埃により上条の姿を確認出来ずにいた
あれだけの黒い羽を逃れ防げるはずもなく、あとは瀕死の上条にトドメをさすだけだと考えている
それは上条を殺し、自分が一番だと認めさせること
自分が一番ではないと自身が壊れてしまうことからこの暴走は引き起こされていた
垣根も上条も一方通行の行動を、逃げている、と言い一方通行は自分を守るためにその能力を暴走させた
自分がやってきたことを否定されることで自分が嫌々歩いてきたこの数年間が全くの無駄になる
一方通行はそれに耐えられるだけの精神を持ち合わせてはいなかった
物心つく前に両親に学園都市へ捨てられ、能力開発を受ける研究所での日々、内気であった少年にも友達は少ないながらもいることにはいた
だが学園都市最強の能力に突如目覚め、周囲の人間からは化物だと罵られ、自分に触れることが出来る人間はいなくなった
幼い少年は人の温もりを、周囲からの温かい目を、自分と共に歩んでくれる友達を
――失った
他の誰よりも人からの愛情に飢え
他の誰よりも優しい心を持ち
他の誰よりも心が弱く
他の誰よりも人を愛したかった少年
――一方通行
彼は世界を拒絶した
自分に降りかかってくる火の粉を振り払い、自分の心情を表には出さず、誰とも親しくは接しない
悲しい悲しい白い悪魔の誕生であった
その暴走した一方通行は今、半ば意識を失いながらも唯一認めた好敵手――上条当麻を殺さんと空中の地面から二三メートルのところで、上条がいるであろう場所を見ていた
砂埃が段々と晴れていく
一方通行が『何らかの力』を使いその場に衝撃を与える
パキーン
音がしたと同時に砂埃の中から上条が一方通行目掛けて飛んできた
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
上条の渾身の一撃が一方通行を撃ち、この戦いに終止符を打った
上条「はぁ、はぁ、はぁ」
一方通行「」
上条「……ふぅー」
土御門「いやー、カミやん。よくやるなぁ」
上条「……んあ? なんでお前がここにいるんだよ」
土御門「そりゃ今日一日カミやんの跡をつけてきたに決まってるぜい」
上条「んだよ、全然気付かなかったわ」
土御門「それよりも、大丈夫か?」
上条「あぁ。左腕がたぶん骨折に右手首の肉が抉れたくらいだ」
土御門「あの黒い羽の攻撃は無傷かよ。あの衝撃波で俺は死ぬかと思ったぜよ」
上条「そのままくたばればよかったのに。……不思議なことに右手をどこに向けてどう動けば良いのかわかった気がした、っていうか教えられた気がしたんだ。まぁ、身体にはところどころ掠ってはいるんだがな」
土御門「かぁー、一方通行も化物だがカミやんも十分化物ぜよ」
上条「……そういや、ここら辺に御坂妹いなかったか?」
土御門「ん? あぁ、超電磁砲のクローンか。それなら確かあそこら辺で伸びてる。命には別状はないと思うぜい」
上条「じゃあ、土御門は御坂妹を病院に運んでくれるか?」
土御門「……カミやんの方が重症だと思うが」
上条「俺はこいつを病院に運ぶからよ」
土御門「……垣根帝督の仇だろ」
上条「……まだ良いんだ。俺らの仕事にはこいつは使える」
上条「それに……」
「助けてやりたい」
上条「柄にもなくそんなこと思っちまったからよ」
土御門「そうか」
上条「こいつの能力で垣根も助けられるかもしれない。……まあ、まだこいつにお願いなんて出来ねえけどな、こいつを否定した俺がして良いもんじゃねぇから」
土御門「……わかった。それじゃぁ行こうか」
~病院~
冥土帰し「おやおや、またエラく派手なことをやってるみたいだね」
上条「別にやりたくてやってるわけじゃ……」
冥土帰し「君の知り合いが送ってきた彼女ね、明日には目が覚めると思うよ。無理矢理睡眠状態にされてたみたいだから。……けどクローンだからね、適度なメンテナンスは必要になるね」
上条「……クローンだって知ってんのか」
冥土帰し「詳しい話は君と担いでる彼の治療の後にしようか。あー、金髪の君が担いでる彼女は見たところ怪我もないみたいだから、指定する病室に運ぶの手伝ってね」
土御門「了解だにゃー」
上条「……お願いします」
~翌日 初春の寮~
初春(全然寝れなかった……。上条さん大丈夫かな……)
初春「上条さん以外が来たら……」
初春「……」
初春「ううん、大丈夫。きっと……」
ピンポーン
初春「……来た」
ガチャ
上条「待たせたな、初春」
初春「かみ…じょ……う……さん……、その怪我……」
上条「ん? あぁ、左腕は骨折しただけだ。右手首も無茶なことしなきゃすぐに良くなるって」
初春「……もう、あの実験は終わったん、ですか……?」
上条「あぁ、大丈夫だ」
初春「うぅ……ひっぐ……よがっだぁ……良がっだよぉ……うぅ……」
上条「今まで一人でよく頑張った。後の始末は俺に任せとけ」
初春「がみじょ?ざんも無事で……本当に……良がっだでず……うぅ……」
上条「あぁ。……心配かけた」
初春「うぁぁぁぁぁん」
____________________
________________
____________
________
____
~病院~
ガラガラ
上条「……まだ起きないか?」
土御門「あぁ」
初春「……あっ、一方通行……さん……」
上条「まあいいか。初春の方を先に片付けよう」
土御門「わかった」
pipipipipi
pi
電話の男「おう」
上条「……昨日、俺がやってたことは耳に入ってるよな?」
電話の男「あぁ。ったく、好き勝手やってくれちゃってよ」
上条「そこで折り入って頼みがあるんだ。……初春の罪を無しにしちゃくれねえか?」
初春「……」
電話の男「……それは無理だな」
初春「ッ!?」
上条「何が悪い!? 学園都市最強が学園都市最弱の無能力者に負けたんだぞ!? 絶対能力者になんかなる実験は頓挫されるはずだろうが!」
電話の男「それだよ、問題は」
上条「……なにがだ」
土御門「……実験の途中での強制終了による負債か」
電話の男「そうだ」
上条「ッ!? いくらだ」
電話の男「そこの嬢ちゃんが海外への資料も抹殺しちまったせいでな。諸々含めて8億円ってもんか」
「「「ッ!?」」」
初春「そんな額……払いきれない……」
上条「くっ……」
電話の男「まぁこちらとて身体も全部使って必ず返せ、なんて人権を無視したようなことは言いたくねえんだわ。そこで一つ提案がある」
電話の男「初春飾利を暗部組織グループの正規メンバーとすることで手を打とう」
上条「初春を……」
土御門「グループに、だと……」
初春「えっ!?」
電話の男「お前ら二人をサポートする役割を担ってもらう。それに初春のハッキング技術を使えば情報の隠蔽やすり替えなんかも余裕になり、グループはより機密の高い組織として機能出来る」
電話の男「それに監視カメラを使って初春の大事な人の危険にもいち早く対処出来るぜ?」
上条「ダメだッ! 初春に人殺しの手伝いをさせるわけにはいかないッ!」
電話の男「……じゃあ、どうやってこの問題を穏便に解決するよ? 何か良い案でもあるのか?」
上条「くっ……」
初春「……私、やりますッ!」
上条「ッ!?」
電話の男「……」
上条「ダメだッ!」
初春「いいえ、やらなきゃいけないんです。ここで引いたら、私がやった不始末を上条さんに尻拭いをさせることになるんです」
上条「そんなことは問題じゃない! お前はジャッジメントだろうがッ! ……人を守る正義の味方が、俺みたいなクズの手伝いをしちゃダメだろ」
初春「上条さんはクズじゃありません! 自分の信じた道を貫き通すすごい人です」
初春「そのせいで手を赤く染めた人殺しでも、それによって助けられた人もいるんです。……私はそれで救われた人なんです」
初春「それに、私の大事な人に上条さんも入ってますから」
初春「御坂さんや白井さん、佐天さんの危機を未然防ぐことだって出来るかもしれません。そのためだったらジャッジメントだって辞められます!」
上条「……」
電話の男「決まり、だな。……初春は明日からジャッジメントの特別班扱いになり、こちらが連絡した時だけ予め用意した部屋で他のメンバーに指示を出してもらう」
初春「……暗部に所属しているのに、ジャッジメントは辞められないんですか」
電話の男「あぁ」
上条「……罪悪感があるなら考え直せ」
初春「……いいえ、それも今回の騒動を起こした罰として受けます。上条さんだけに痛い思いさせちゃ悪いですから」
上条「初春……」
「なァに、人の病室でギャーギャー騒いでるンですかねェ。あァン、三下よォ」
上条「一方通行……、起きたか」
一方通行「クソがァ……、身体が全然動かねェ」
土御門「全身筋肉痛だそうだ」
一方通行「……ンだ、コイツは」
土御門「土御門元春だ。まぁ、本題はそこじゃないな」
上条「また後で掛け直す」
電話の男「ん? おぉ、わかった」
pi
上条「二人ともちょっと外で待っててくれないか?」
初春「……大丈夫なんですか?」
上条「あぁ」
土御門「それじゃ、頼むぜい」
ガラガラ
上条「……昨日は俺の勝ちだったな」
一方通行「ケッ、なンで殺してないンですかねェ」
上条「今は殺すつもりはない」
一方通行「……用件はなンだ」
上条「一方通行、お前に俺と一緒に暗部として活動してもらいたい」
一方通行「暗部だァ? なンで俺がそンなことしなくちゃいけないンですかァ?」
上条「……お前は何十人もの人と、99人のミサカを殺した」
一方通行「っ……、アレは人形だ」
上条「……お前がなんで無敵を目指したのかはなんとなくだが昨日の言葉で察しがついたよ」
一方通行「チッ、余計なこと言っちまったか」
上条「それを踏まえてお前は逃げちゃダメなんだッ!」
一方通行「俺は逃げてねェ!」
上条「お前がやってきたことを否定したいんじゃない!」
上条「成し遂げたい野望、貫き通さなきゃいけない信念をお前は持ってる。そして、それに向かってどんな犠牲を払ってでも進むことは、正しいとは言えないかもしれないけど、俺は認めてる」
一方通行「ッ!」
上条「ただ、自分がしてきたことから目を背けちゃいけないんだ! ……殺してきた奴らの関係者から恨まれ、憎まれ、命を狙われる覚悟を持って前に進まなきゃいけないんだ」
一方通行「……」
上条「お前はクズだ。……そして、俺もクズだ」
上条「お前の痛みは同じ道を歩んできた俺しかわかってやれないし、俺の痛みもお前しかわからないんだ」
上条「俺も小さい頃は疫病神だと言われ、いじめられ、蔑まれてきた。友達なんていなかった」
一方通行「……俺とオマエが同じ……?」
上条「あぁ」
上条「だから、お前は99人のミサカ達を、99人の人を殺してきたことから目を背けちゃいけない。……まだ二人だけ生き残りがいるんだ」
一方通行「20000人いるンじゃ……」
上条「いや、他のミサカを製造される前にデータを削除した奴が俺の仲間にいてな。だから後は二人だけなんだ」
一方通行「……」
上条「20000体のミサカを世界中で作るこの計画に何か違和感を感じないか?」
一方通行「……『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』での計算でそォなってただろうがァ」
上条「そこからおかしいんだ。……なんでLevel5のクローンを作るのに第三位の御坂美琴なんだ?」
一方通行「ッ!!」
上条「一方通行や垣根の方が有効なはずなんだ。Level5の軍隊を作るには」
一方通行「じゃァ、Level5のクローンは作れねェとわかってて第三位のクローンを作り、それを俺の実験へと流用させた……」
上条「それよりも、きっと本当の目的は世界中にミサカを存在させることだと思うんだ」
一方通行「ッ! ミサカネットワーク!」
上条「あぁ。だからこそ、残っている二人からデータを取って、学園都市はまた『妹達』を作り出す可能性が高い」
一方通行「ふざけ、やがって」
上条「だから、お前に二人の保護を頼みたい」
一方通行「ッ!?」
上条「これは償いだ。二人からは憎まれるかもしれない。けどな一方通行、お前はそれを乗り越えていかなきゃいけないんだ」
一方通行「……」
上条「自分が守ると決めた人は死んでも守らなきゃいけない。……俺はそれが垣根だった」
一方通行「……第二位」
上条「垣根はまだ生きてる」
一方通行「ッ!?」
上条「あいつを助けるために俺は暗部に身を置いてるんだ。そして一方通行、お前には俺を手助けしてもらいたい。お前が俺を助けてくれるならお前が背負わなきゃいけないものも一緒に背負っていける」
上条「一緒に生きていこう、この学園都市の底辺を」
一方通行「……言いてェことはわかった。けど、お前は納得してンのか? 第二位が勝手に俺に勝負を挑ンできたとは言え、俺が奴をボロボロにしたのは事実だ。……憎くはねェのか?」
上条「……憎しみが全くないとは言えない。でも、俺が垣根と出会っていなかったら俺もお前のようになっていたと思うんだ。お前はそういう人に出会えなかっただけなんだ。……だから憎くても放っておけないし、お前の苦しみも痛いほど理解出来る」
上条「それに、能力の有る無し関係なくお前の横にいれるのは俺だけだから」
一方通行「……そォか」
上条「一方通行、お前を殺すのは俺の役目だ。……そして、俺を殺すのはお前の役目だ」
一方通行「……ンな恥ずかしいセリフ真顔で言うな」
上条「ははっ、まぁ良いじゃねぇか」
上条「一方通行、お前自身が胸を張れる生き方を自分で選んでみろよ!」
一方通行「……ケッ! せいぜいクズ同士、仲良く『悪党』やろうじゃねェか」
上条「あぁ。よろしくな!」
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