元スレ晴人「宙に舞う牙」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
101 :
>>100
だからキバットが「使うか?」って聞いたら渡はガルル出してきて「信用するぜ」なんじゃん?
102 :
>>98
サガークは13魔族に含まれてない
103 :
>>102
あー、すまんすまん。
サガーク族は人工モンスターだから十三魔族に含まれないのね。
さっき調べ直したら、ゴブリン族があったの見落としていたわ。
104 :
あーすまん>>100だが
> 一瞬の思考。
> キバは紫の笛をフエスロットに戻した。
> 代わりに蒼い笛を取り出しキバットに吹かせた。
ここ読み飛ばしてたは
105 :
http://www.youtube.com/watch?v=simAIWRrqD4
ファンガイアに突っ込んでいくキバ。
刀身が独特の曲線を描いている剣―ガルルセイバーを振り下ろすが、ファンガイアは姿を消して、キバを返り討ちにする。
(これじゃあ、さっきの繰り返しだぞ)
キバックルにぶら下がり、ガルルのパワーを制御するキバットはそう思った。
消えては殴る。執拗なまでに繰り返されるファンガイアの攻撃にキバが片膝をつく。
(渡!)
ダメージが蓄積して、キバの装着者である渡に限界が来たのかと思った。
だが、違った。渡の意識はまだある。
それだけじゃない。
鎧を通して感じる蒼いキバの荒ぶる闘志が激しく燃え上がっている。
キバは曲刀を構え、身を低くしたまま、じっとした。
痛みを隠し、牙を光らせる野獣のように。
「……っ!」
突然、キバが右を向く。そして、何もない空間を曲刀で斬った。
「ぐおおおおお!」
カメレオンファンガイアの叫び声が聞こえる。キバの攻撃が当たった瞬間だ。
今の攻撃は明らかに敵の行動を先読みした一撃。
どうして見えない相手に攻撃を当てることが出来たのか?
キバットは自身に浮かんだ疑問の答えを直ぐに導き出した。
(そうか……臭いだ!)
ウルフェン族であるガルルは凄まじい嗅覚を持っている。ガルルの力を借りたキバもまた超人的な嗅覚を宿していた。
敵の臭いを嗅ぎ分け、その位置をほぼ正確に把握できる程に。
ファンガイアの攻撃を何度も受けたのは、敵の臭いを確実に覚えるためだった。
「があああああッ!」
雄叫びを上げて、荒々し野生の剣技でファンガイアを追い詰める。
キバの猛攻から逃げるためファンガイアは周囲の景色と同化した。
消えた瞬間、キバはある一点を目指して駆けた。
今のキバに姿が見えないことは何の問題でもなかった。
狼の様に俊敏な動きで、逃げる臭いの塊の前へ先回りすると曲刀を振った。
ガルルの牙が変化した刃はいとも容易くファンガイアの外皮を切り裂く。
キバはファンガイアの胸に曲刀を押し付けた。
ファンガイアが今までと比較にならない痛みに絶叫する。
キバを引き離そうとキバの背中に何度も拳を振り下ろす。
「うぅ……」
キバは痛みに呻くが決して離れなかった。喰らいついてくる。
ファンガイアは力任せにキバを引き離した。
息を乱しながら胸元を覗くと色鮮やかな肉体の一部が失くなっていた。
視線をキバへと移す。
キバの左手に握られている曲刀には刀身と柄の境に蒼い狼の頭がある。
その蒼い狼の顎『ワイルドジョー』にはファンガイアの胸の一部がくっついていた。
蒼い狼の口が動くとゴリゴリと固い物を食べている音がした。口の端からは細かく砕かれたガラス片がこぼれ落ちていく。
(不味いな)
キバの頭に曲刀へ変形したガルルの漏らした感想が聞こえた。
キバは曲刀をキバットに噛ませた。
「ガルルバイト!」
キバの膨大な魔皇力がキバットを中継点にしてガルルセイバーへ流れこむ。
キバが構えを取り、周囲を紅い霧が包んでいく。
「なっ……!?」
それまでキバとファンガイアの戦いを静観していたウィザードは思わず声を上げた。
青い空が漆黒に染まっていく。暗闇はどんどん光を飲み込んでいく。
夜空が出来上がると、そこに煌々と輝く満月が現れた。
(紅い霧の後に満月の夜になった。空間に干渉する魔法なのか?)
キバは曲刀を咥えると凄まじい脚力で上空へ跳び上がった。満月を背に急降下してくるキバ。
注ぎ込まれた魔皇力によって数十倍の切れ味を誇るガルルセイバーの一太刀『ガルル・ハウリングスラッシュ』が炸裂する。
ファンガイアの体が真っ二つに割れて砕け散った。
106 = 105 :
設定ではスピードタイプなんだよ
羊に負けたけど
107 :
へー
108 :
ファイズアクセルより速いドラゴンオルフェノクより速いゴートオルフェノクも山羊だからね
仕方ないね
110 :
そういえばウィザードの特別編ににもやしが出るらしいな<ソースはもやしの役者のブログ
111 = 105 :
DCD出るんだ。楽しみだな
キバはドッガ自体も活躍少ないけどキッチリ勝ち星上げてるからガルルとバッシャーが余計に霞んでしまう
112 :
ウィザード52、53話は脚本も違うお祭会になりそうだからね
キバはそんなに動かないかもしれないが、このSSみたいな妄想が捗る
113 :
名護さんが出るのを待ってます……
114 :
「あんた、スゴイな」
空が青く戻ると緑のウィザードは蒼いキバに話しかけた。
キバは威嚇するように小さく唸った。
「そんなに怖い顔(?)しないでくれよ。聞きたいことがあるんだ」
あくまでフランクな態度をとるウィザードは質問する。
「ファンガイアと戦っていたけど、ファンガイアのことを何か知っているのか?」
キバの反応は変わらない。小さく唸るだけだ。
ウィザードも変わらぬ態度で続ける。
「あの人が狙われているんだ」ウィザードが奏美の方へ顔を向ける。
「……」キバも奏美に顔を向ける。
「何でもいいから教えてくれないか? え~と」
名前を呼ぼうとしたが当然分からない。
視線を泳がせるとキバのベルトに収まっている笛が目に止まった。
ウィザードが指輪で自分の属性を変えるようにキバの蒼い姿は笛を吹いて変わった。
それに先ほどの満月の夜を創りだした現象。まるで魔法だった。
ウィザードは閃いて、キバをこう呼んだ。
「笛の魔法使いさん」
キバは無言でウィザードに顔を戻す。
二人はしばらく睨み合った。
銃剣と曲刀。両者の手には得物が握られている。
風を司る魔法使いと蒼い魔獣。
距離が開いているが、互いに一足で相手の急所を斬りつけに行ける距離だ。
「なあ、答えてくれないか?」
「……」
キバは何も答えない。ウィザードに背中を見せて、ゆっくりと去っていく。
ウィザードは龍と鎖が彫られた指輪をかざそうとしたが止めた。
(あのスピードじゃあ、縛る前に避けられるな)
ファンガイアと敵対しているなら、そう遠くない内にまた会うだろう。
だから、今は追わなくていい。
キバの後ろ姿が見えなくなるとウィザードは変身を解いて晴人に戻った。
「ふぃ……」
ため息をつくと手に不快感を覚える。
晴人の手は汗でベタついていた。
115 = 114 :
「あんた、スゴイな」
空が青く戻ると緑のウィザードは蒼いキバに話しかけた。
キバは威嚇するように小さく唸った。
「そんなに怖い顔(?)しないでくれよ。聞きたいことがあるんだ」
あくまでフランクな態度をとるウィザードは質問する。
「ファンガイアと戦っていたけど、ファンガイアのことを何か知っているのか?」
キバの反応は変わらない。小さく唸るだけだ。
ウィザードも変わらぬ態度で続ける。
「あの人が狙われているんだ」ウィザードが奏美の方へ顔を向ける。
「……」キバも奏美に顔を向ける。
「何でもいいから教えてくれないか? え~と」
名前を呼ぼうとしたが当然分からない。
視線を泳がせるとキバのベルトに収まっている笛が目に止まった。
ウィザードが指輪で自分の属性を変えるようにキバの蒼い姿は笛を吹いて変わった。
それに先ほどの満月の夜を創りだした現象。まるで魔法だった。
ウィザードは閃いて、キバをこう呼んだ。
「笛の魔法使いさん」
キバは無言でウィザードに顔を戻す。
二人はしばらく睨み合った。
銃剣と曲刀。両者の手には得物が握られている。
風を司る魔法使いと蒼い魔獣。
距離が開いているが、互いに一足で相手の急所を斬りつけに行ける距離だ。
「なあ、答えてくれないか?」
「……」
キバは何も答えない。ウィザードに背中を見せて、ゆっくりと去っていく。
ウィザードは龍と鎖が彫られた指輪をかざそうとしたが止めた。
(あのスピードじゃあ、縛る前に避けられるな)
ファンガイアと敵対しているなら、そう遠くない内にまた会うだろう。
だから、今は追わなくていい。
キバの後ろ姿が見えなくなるとウィザードは変身を解いて晴人に戻った。
「ふぃ……」
ため息をつくと手に不快感を覚える。
晴人の手は汗でベタついていた。
116 = 114 :
やべ、ミスった。
没
キバは何も答えない。ウィザードに背中を見せて、ゆっくりと去っていく。
「ああ、そうかい……だったら!」
ウィザードは右の指輪をかざした。
バインド! プリーズ!
キバの周囲に無数の魔法陣が出現すると鎖が飛び出す。
相手を拘束する魔法だ。
キバは強靭な脚力で跳ねて躱し、その勢いのまま素早く駆けた。
「待て!」
ウィザードが追いかけようとした時、目の前に光が溢れた。
神々しい黄金の光だ。
あまりの光の強さにウィザードは腕で視界を塞いだ。
一瞬、ウィザードの周りが暗くなる。そして風が巻き起こった。
巨大な何かが高速でウィザードの上を通り過ぎたのだ。
ウィザードは振り向いて空を見た。
青い空には白い雲が浮かんでいるだけだ。
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
落雷のように激しい―何かの鳴き声が空に響き渡った。
117 = 114 :
やべ、ミスった。
没
キバは何も答えない。ウィザードに背中を見せて、ゆっくりと去っていく。
「ああ、そうかい……だったら!」
ウィザードは右の指輪をかざした。
バインド! プリーズ!
キバの周囲に無数の魔法陣が出現すると鎖が飛び出す。
相手を拘束する魔法だ。
キバは強靭な脚力で跳ねて躱し、その勢いのまま素早く駆けた。
「待て!」
ウィザードが追いかけようとした時、目の前に光が溢れた。
神々しい黄金の光だ。
あまりの光の強さにウィザードは腕で視界を塞いだ。
一瞬、ウィザードの周りが暗くなる。そして風が巻き起こった。
巨大な何かが高速でウィザードの上を通り過ぎたのだ。
ウィザードは振り向いて空を見た。
青い空には白い雲が浮かんでいるだけだ。
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
落雷のように激しい―何かの鳴き声が空に響き渡った。
118 :
新鯖移転したてでエラーはきやすいけど、投稿自体はできてることが多いみたいだぜ
エラー出たら更新してみるのもいいかも
お互い警戒しまくりだな。肩を並べる展開来るかな?
119 :
お互いの目の前で同時に変身解除って展開は期待しちゃうよね。
120 :
次狼だから………
121 :
しかし瞬平の謎がまた増えたな
・一人だけ何やってるのか素性が分からない
・色々買える謎の経済力
・ゲートを避難させるときグールに襲われない
・メイジに思いっきり爪で引っ掛かれたのに出血なし。引っ掛かれたときなぜか金属音←New!
123 :
乙
その内ライダーバトルしそうだな
124 :
留置所で名護さんと隣の部屋になるとか
ウィザード組ってほぼ全員一度は逮捕されてるよな…
125 :
メデューサの人間態ミサは廃工場へ足を運んでいた。
外は真っ暗だったが、崩れた天井から降る月の光が埃っぽい中を薄く照らしている。
「なんで私がこんな使い走りを……」
忌々しそうにソラから頼まれたことを思い出す。
晴人くんが女の人を護衛しているから、ちょっと調べてきて欲しいんだ。
もちろん断ろうとした。自分で行けという話だ。
しかし、ソラは断られるのが分かっていたのか、
僕はワイズマンから君のことを任されているんだよ?
と付け加えた。
忠誠を誓うワイズマンの名前を出されると弱い。ミサは渋々了承した。
「グレムリン」
「はーいっ!」
薄暗い闇の中でソラを呼ぶと、崩れた天井からグレムリンの人間態ソラが顔をだした。
ソラは軽い身のこなしで羽根の様にふわりと床に着地する。
「どうだった、あのバイオリンの人」
「……あの女はゲートよ」ミサは淡々と答える。さっさとこの場を離れたかった。
「報告はそれだけ?」そうじゃないでしょ? と言いたげにソラは聞く。
「怪物と鎧の男も一緒に出てきたわ」
「へえ……そっか」
「とにかくゲートが見つかった以上、絶望させて新たなファントムを生み出させるわよ」
「それがワイズマンの意志だから?」
「当然でしょ。ワイズマンがゲートの絶望を求めていらっしゃるの」
「ワイズマン、ワイズマン……ミサちゃんって、そればっかりだよね。自分のやりたい事とかないわけ?」
「黙りなさい。帽子男」
声に怒気を孕ませたミサの目が光った。
ソラのいる場所に爆発が起きる。薄暗い室内が一瞬、昼間の様に明るくなった。
床には焼け焦げて煙を上げる爆発痕だけが残った。
「ごめんごめん。怒らせちゃったかな?」
ソラはミサの後ろでミサの黒髪を手櫛していた。
人間で例えるなら汚辱感を覚えたミサは強引にソラを振り払う。
頭に小さな痛みが走ったが、気にしなかった。
気色悪い。こいつの全てが私を苛立たせる。
ソラは悪びれもせずに続けた。
「ファントムって可哀想だよね。ゲートの頃の記憶がないから空っぽだ」
「自分は違うとでも言いたいの、グレムリン」ファントムの名前を強調するミサ。
「僕の名前はソラだよ」ゲートの名前を強調するソラ。
「そう。悪かったわね……グレムリン」
言葉の最後を強調してミサは嘲笑を浮かべた。
ソラは呆れる様に大きくため息をついた。
「でっ、さっきの質問の答えは?」
「私の望むことはワイズマンにお仕えすること。それだけよ」
「それしかないの間違いじゃなくて?」吐き捨てるようにソラは言った。
「……お前の下らない言葉遊びに付き合うつもりはない」
ミサはソラを睨むとそのまま闇の中に消えた。
「ミサちゃん、君が人間じゃなくてとても残念だよ」
ソラは銀色のシザーを出現させると、荒げた息でシザーを何度も鳴らした。
「でも、髪の毛に罪はないか」
ソラは自分の手の中にあるミサの髪の毛を覗く。
枝毛一つ見当たらない艶のある綺麗な髪だ。
ソラは心の昂ぶりを抑えて、黒髪を顔に近づける。
甘い香りが鼻腔を満たしていった。
126 = 125 :
床屋の殺人鬼って何かの映画であったよな
127 :
あいかわらずソラはキチってんなぁ……
テレビじゃできない描写表現が盛ってあるのがいいね
128 :
ミサちゃんの髪の毛くんかくんか
129 :
逃げてー真由ちゃん逃げてー!
130 :
河原の高い空は澄み渡っていた。時折強い風が吹くが、それも心地いい。
食事を済ませた大地は土手を歩いていた。
これといって目的はなかった。ただ理由もなくフラフラと歩いていただけだ。
頭を空っぽにして、何気なく周りの風景を見渡しながら歩く。
首の動きに合わせて景色がクルクルと変わる。
景色が変わっても、大地の目に変わらず映るものがあった。
人の姿だ。
土手のすぐ下の河川敷で遊ぶ子供。自分と同じように土手を歩いている老人。川沿いの家のベランダで洗濯物を干す女性。どこを見ても人がいた。
河を跨ぐ橋の上を車が走る。ガラス越しにチラッと人の顔が映った。
大地は車の行ってしまった方を見る。
そびえ立ついくつもの高い建物、ビル群だ。
あそこには、この河川敷の周辺以上に人が沢山いるだろう。
世界の総人口は約六〇億人。
幼稚な発想だが、一人につき一円ずつ恵んでもらえば六〇億円。
果たして自分の人生で使いきれる額だろうか?
多分無理だ。六〇億とは、それほどまでに大きい数字だ。
大地は右の指を鳴らした。
「ほんと……この世界は人で沢山だ」
歩くのにも飽きてきて帰ろうとすると、どこからかバイオリンの音が聞こえてきた。
美しい音に繊細なメロディ。そして、音が自然と心の中に入り込んでくるような独特の感覚。
それは大地が三日ほど前に聞いた音楽と酷似していた。
奏美のバイオリンだ。
大地は耳に入ってくる音楽を頼りに音源を探す。奏美は河岸でバイオリンを弾いていた。
声は掛けない。演奏の邪魔になるからというよりも最後まで演奏を聴きたかったからだ。
「こんにちは、西代大地くん」演奏を終えた奏美は大地に挨拶した。
「僕のこと、気づいていたんですか?」少し驚く大地。
「別に演奏しているからって、ずっと楽器覗いているわけじゃないわよ。人間の手と目は別々に動くんだから」
奏美は実践するようにバイオリンを構えると、弓を弦に当てず宙で弾きながら、横目で大地を見る。
どうやら覗き見されていたようだ。
「私のこと、ジッと見ていたでしょ? 視線すごかったんだから」
「人の演奏を聴くって、そういうものじゃないですか」
奏美のからかいに視線をそらしながら大地は応える。奏美は小さく笑った。
「独りですか?」
「独り……では、ないかな」
そう言って、奏美はバイオリンをケースにしまいながら空を指差した。
空には一匹の鳥が回遊している。
大地は哀れみを含んだ目で奏美を見た。
「奏美さんって、結構メルヘンな人なんですね」
「ちょっと、年上に向かってそういうこと言う?」
「いや……だって」
「あーはいはい。この話は、もうおしまい」
大地のツッコミを聞きたくない奏美はサバサバした口調で遮った。
「それよりどうだった、私の演奏」
「演奏ですか?」
「そう、演奏……退屈しなかった?」
僅かな間を挟んで、奏美の顔が微かに不安げなものに変わった。
大地には奏美が何かに怯えてるように見えた。
奏美はもう一度、大地に質問する。
「私の演奏じゃあ満足しなかった?」ほんの少し声が震えていた。
大地は「もし……」と前置きをすると、ゆっくりと奏美に語りかけた。
「奏美さんの演奏が退屈だったり満足できなかったら、僕はとっくに帰ってますよ」
「大地くん」
「奏美さんの演奏は最高でした。街の音楽を奏でてましたよ」
大地の言葉に嘘はなかった。大地は奏美を安心させるように微笑んだ。
「それに奏美さん、言ってたじゃないですか。次に僕が奏美さんの演奏を聞く時は、もっといい演奏を聞かせてあげるって」
「そうね……私、どうかしてたわ。ありがとうね」
「聞かれたことに答えただけですよ」
大地は河の方へと体を向ける。若干の照れがあった。
奏美はそんな大地の姿を見ていた。
前に会った時と変わらず細い体をしている。風に吹かれたら飛ばされそうだ。
それでも奏美には今の大地は足がしっかりと大地に根付いているというか、何となく力強く頼もしく見えた。
131 :
いい雰囲気だけど、なんか不吉なんだよなぁ……
まさかとは思うんだけど、ね
132 :
「すみませーん」
幼い声と一緒に奏美の足元にボールが転がってきた。
奏美と大地は声のしたほうへ目をやると、ボールを追いかけて十歳くらいの男の子が走ってくる。
河川敷で遊んでいた子供のようだ。
「はい」と奏美はボールを渡す。男の子は「ありがとう」と無邪気な笑顔で返した。
「ねえ、お姉ちゃん」
「ん?」
「お姉ちゃんって楽器弾くの?」
男の子は奏美の側にあるバイオリンケースを興味深そうに眺めている。
「そうよ。お姉ちゃんはバイオリンを弾くの」
「へえ、すごい。ねえ、弾いてみてよ」
「いいわよ」奏美は笑顔でケースからバイオリンを取り出そうとする。
「あっ、いけない」突然、男の子が思い出したかのように声を上げた。
「どうしたの?」
「僕、お姉ちゃんをゼツボーさせなくちゃいけないんだった。メデューサお姉ちゃんから頼まれてさ」
男の子は自分の姿をファントムへと変えた。
133 = 132 :
ファンガイアは通り魔やらせられるから楽だけど、ファントムは明確に目的がある分出し方が難しい
134 :
そういえば、本編で子供の姿をしたファントムっていなかったな。
135 :
無邪気な悪意って怖いけど、子供を倒すのにためらったんかねぇ
人の心は持ってないのが共通認識だし
136 :
子どものような無邪気さを持った敵って言うと平成だとダグバ、北崎、初期のスーパー童子&姫、記憶喪失のダイちゃん、ガメル、ロストアンクがすぐに浮かんだ
後敵じゃないけどリュウタロスやラモンも入るか
137 = 132 :
井上作品で無邪気な悪意と言うなら、やっぱトランかなあ
139 :
>>134
譲が絶望抑え込めなければ子どもファントム一丁上がりだったな
そもそも別人格が、守れなかった人の姿と声(記憶も)で襲いかかってくるってのが鬱すぎる
でも一人ぐらいはそういう幹部加入イベントあっても良かった
140 :
「腹減った~」
広がる青空に向かって、髪の毛を獅子の鬣のように逆立てた茶髪の青年は力なく唸った。
青年、仁藤攻介はついさっき昼食を終えたばかりだ。
唐揚げに好物のマヨネーズをかけるという常人なら油っこさで胃がもたれそうな組み合わせをたらふく食べた。
なのに、どうしようもない程の空腹感が仁藤を襲う。胃の辺りにポッカリ穴が空いている気分だ。
仁藤は檻のようなベルト『ビーストドライバー』を軽く叩いた。
「何でお前が腹を空かせると、満腹の俺まで腹が減るんだよ?」
(その方が危機感を持てるだろ? 我の力なら人間一人の体に干渉するくらい造作もない)
仁藤の頭の中で威厳に満ちた声が響く。
ビーストドライバーの中に封印されたファントム『ビーストキマイラ』の声だ。
仁藤は心の中でキマイラに返事する。
(お前さ、少しは宿主さまに気を使うとか出来ねえの?)
(宿主? 呆れた奴だ。お前は我の下僕に過ぎん。我の力の一部を貸し与えてやっている立場なのだからな)
(まあ、そういう契約だしな)
仁藤とキマイラの間で交わされた契約。
仁藤はキマイラの力の片鱗を扱える代償として、キマイラに餌として魔力を与えなくてはいけない。それが出来ないなら死ぬ。
今のキマイラは魔力を欲している。放っておけば、いずれ限界が来て自分が喰われるだろう。
「探すしかねえか」
いつまで立ち止まっていてもしょうがない。
命の掛かった契約はスリルがあって面白いが、死ぬのはゴメンだ。
仁藤は右中指に指輪をはめると、ドライバー右のソケットにはめた。
グリフォン! ゴー!
仁藤は鳥と獅子が合わさったような緑のプラモンスター『グリーングリフォン』を召喚させる。
キマイラが静かに吠えた。
(仁藤……魔力を使うとは我を更に飢えさせるつもりか?)
「空腹とマヨネーズは最高の調味料だ。腹が空けば空くほど、マヨネーズをかければかけるほど飯は美味くなる」
仁藤はグリフォンが飛んでいくのを見届けるとグリフォンとは別にファントムを探しだす。
しかし、足に力が入らない。キマイラの言うとおり魔力を消費した分、空腹感が更にましたからだ。
おぼつかない足取りで歩いていると向こうから来た男とぶつかってしまう。
「あっ、すんません」
「……」
謝る仁藤を無視して、男はコソコソした様子で去っていく。
変な奴だな、と深く考えないで仁藤も男と逆の方を歩いていく。
そこまでして仁藤は胸の辺りに妙な違和感を覚えた。
あるもべきものが無いというか。しっくりとこない。
上着の上から胸を触ると
「……俺の財布!」
自分の財布がすられたことに気づいた。
慌てて振り返ると男は走って逃げていた。
「野郎!」
仁藤はすりを追いかけた。距離は開いているが追いつけない距離じゃない。
体力には自信がある。伊達に遺跡目当てで世界を駆け巡っていたわけじゃない。
しつこく追い続ければ、向こうがばてて捕まえられるはずだ。
だが、キマイラの空腹の影響で仁藤の体は思うように動かなかった。
すりの背が小さくなっていく。
必死になって追いかける仁藤とすりの前から男が歩いてくる。
「おい、あんた! そいつを捕まえてくれ!」
仁藤は藁にもすがる思いで叫んだ。
男は胸元から端末を取り出し、すりの顔を見た。
「連続窃盗犯、宇田一郎……」
男はすりを殴り飛ばすと素早く関節を決めて地面に跪かせた。
鮮やかな手並みだった。
ほどなくして、騒ぎにかけつけた凛子と部下の警官がやってきた。
凛子はすりに手錠をかけて、男に礼を述べた。
「ご協力感謝します」
「いえ、当然のことをしたまでです」
男はすりの服に手をかけるとボタンを一つむしりとる。そして、すりに向かって言った。
「悔い改めなさい。人はやり直せる」
141 = 140 :
「あなた……」
凛子が驚きの様子で男を見ると仁藤が追いついてきた。
「いやー! あんた、ありがとな。あいつ捕まえてくれて」感謝の印に仁藤は男の肩を叩いた。
「大したことではない」男は仁藤の手をやんわりと払った。男はいつの間に取り返した仁藤の財布を渡す。
「しかし情けないな」
「は?」
「女子供ならともかく君のような若い男がすりに合うなんて注意が足りない」
男の上から物を言う態度に仁藤はカチンときた。
「なんで名前も知らないあんたにそこまで言われなきゃいけないんだよ!」
「ふむ、そうか」
噛みつく仁藤を男はサラリと受け流す。
「君、名前は?」
「仁藤……仁藤攻介」
「俺は名護啓介だ」
「やっぱり、あの有名なバウンティハンターの名護啓介」
「バウンティハンター?」
聞きなれない言葉に首をかしげる仁藤に凛子は「賞金稼ぎのことよ」と教えた。
「仁藤くん。お互いの名前を知った以上、これで俺と君は知り合いだ。故に知り合いとして俺は君に教えを説く義務がある。傾聴しなさい」
「ふざけんな。何で俺がそんなこと聞かなきゃなんねえんだよ。そんなことより」
俺はファントムを探さなきゃいけないんだ、と言おうとすると仁藤の元へグリフォンが帰ってくる。
「なんだ、これは?」名護はグリフォンを物珍しそうに見る。
「あんたには関係ねえよ、おっさん」仁藤はぶっきらぼうに言った。
「おっさん……」
名護の頬がひくつく。どうやら気に障ったようだ。
「私は27だ。おっさんではない」
「四捨五入すれば30だろ? やっぱり、おっさんだ」
「……」名護の顔がプルプルと震えた。
(仁藤、下らない言い争いよりも早く我にファントムを捧げろ)
頭の中でキマイラに催促されるとグリフォンが飛んできた―河川敷の方から女性の悲鳴が聞こえた。
仁藤は不敵に笑った。
「すぐに飯にありつけさせてやるぜ、キマイラ!」
「こら、待ちなさい! まだ話は終わっていない!」
名護は走りゆく仁藤を追いかけた。
142 = 140 :
没というか妄想だね
「浮かない顔だな」
「ん?」
空腹感でげっそりとした顔の仁藤に男が声をかけてきた。
野性的な顔つきの仁藤とは真逆で、男は理知的な顔つきをしている。
男の側に折られた厚紙に「占い 一回五〇〇円」と書かれていた。
この男は占い師らしい。
男はポケットからコインを三つ取り出すと地面に敷いてあるハンカチに放った。
裏・表・裏。
コインの裏表をみて男が仁藤に告げた。
「あんたに破滅が訪れる。しかも、すぐ近くにまで来ている」
「……金は払わないからな?」
バカバカしいと思った仁藤は歩いていこうとする。
男は更に告げる。
「あんたには常に死が住み着いている」
その言葉に仁藤は足を止めた。
(我のことだ。当たっておる)頭の中でキマイラがせせら笑った。
「おめえ何者だ?」
仁藤は男に詰め寄った。
獲物を狙う獣のように鋭い目で睨むが、男は動じない。
「さっき俺に破滅が訪れるとか言ったよな?」
「そうだ。俺の占いは当たる」
男は静かだが、有無を言わせぬ口調で断言する。
仁藤は臆さずに返した。
「占い師ってのは、皆そう言うんだよ」
「違いない」男は小さく笑った。
「にしても破滅か……おもしれえ」
「面白い?」
男は怪訝な顔で聞いてきた。仁藤は「ああ」と短く言った。
「俺の占いでそういうことを言ったのは、あんたが初めてだ」
「人生ちょっとくらい危険な方が面白いんだよ。それに俺は破滅するつもりなんて更々ねえ。運命なんて俺がこの手で変えてやる」
「いい考えだ。その強い意思があれば運命は変わるかもな」
「当たり前だ。破滅なんざ俺が喰ってやるぜ」
仁藤はニヤリと笑うと財布を取り出して、男の敷いているハンカチにコインを置いた。
五〇〇円硬貨だった。
143 = 140 :
没というか妄想だね
「浮かない顔だな」
「ん?」
空腹感でげっそりとした顔の仁藤に男が声をかけてきた。
野性的な顔つきの仁藤とは真逆で、男は理知的な顔つきをしている。
男の側に折られた厚紙に「占い 一回五〇〇円」と書かれていた。
この男は占い師らしい。
男はポケットからコインを三つ取り出すと地面に敷いてあるハンカチに放った。
裏・表・裏。
コインの裏表をみて男が仁藤に告げた。
「あんたに破滅が訪れる。しかも、すぐ近くにまで来ている」
「……金は払わないからな?」
バカバカしいと思った仁藤は歩いていこうとする。
男は更に告げる。
「あんたには常に死が住み着いている」
その言葉に仁藤は足を止めた。
(我のことだ。当たっておる)頭の中でキマイラがせせら笑った。
「おめえ何者だ?」
仁藤は男に詰め寄った。
獲物を狙う獣のように鋭い目で睨むが、男は動じない。
「さっき俺に破滅が訪れるとか言ったよな?」
「そうだ。俺の占いは当たる」
男は静かだが、有無を言わせぬ口調で断言する。
仁藤は臆さずに返した。
「占い師ってのは、皆そう言うんだよ」
「違いない」男は小さく笑った。
「にしても破滅か……おもしれえ」
「面白い?」
男は怪訝な顔で聞いてきた。仁藤は「ああ」と短く言った。
「俺の占いでそういうことを言ったのは、あんたが初めてだ」
「人生ちょっとくらい危険な方が面白いんだよ。それに俺は破滅するつもりなんて更々ねえ。運命なんて俺がこの手で変えてやる」
「いい考えだ。その強い意思があれば運命は変わるかもな」
「当たり前だ。破滅なんざ俺が喰ってやるぜ」
仁藤はニヤリと笑うと財布を取り出して、男の敷いているハンカチにコインを置いた。
五〇〇円硬貨だった。
144 = 139 :
結婚しても相変わらずボタンむしりで安心したw
ループ抜けた手塚さんがいてもいいな
146 :
没も楽しい、二度おいしいスレ
147 :
乙。
名護さんと仁藤とかややこしいことになりそうだな・・・ww
148 :
乙!
名護さんは最高です!
149 :
仮面ライダーキバレビュー
今週のキバ
http://yabou-karakuri.sakura.ne.jp/diary/hanpera/ryuuki/kibatop.htm
150 :
奏美は大地に手を引かれながら河川敷を走って逃げていた。
その後ろをゆっくりとファントム『バジリスク』が追ってくる。
(どうして?)
奏美は動揺していた。
街の音楽を聞く奏美はそこに混ざるノイズを聞き逃さない。
初めての時ならそのノイズすらも街の音楽と考え、誤解する時はある。
だから初めての時は自分に迫るファンガイアの牙に気付けなかった。
だが、今は鳥居坂に来て数日は経った。ノイズはノイズとして聞き分けられる。
なのに、なぜ怪物の接近に気づけなかったのか。
答えは簡単だ。
奏美を襲っている怪物がファンガイアではなくファントムだからだ。
ファントムはこの鳥居坂で何度も晴人たち魔法使いと戦いを繰り広げている。
ファントムの存在は、既に鳥居坂が奏でる音楽の一部になっていたのだ。
「それっ!」
バジリスクは魔石を放り投げる。
すると地面に落ちた無数の魔石は膨張して、灰色のファントム『グール』を産みだした。
「やっちゃって」バジリスクが奏美を指差す。
グールの群れはバジリスクの言葉に従うように歩き出した。
言葉らしい言葉も喋らず、呻き声をあげて奇怪な動きをみせる異形の存在。
その不気味さが奏美の恐怖を煽った。
恐怖で体がうまく動かず、奏美は躓いてしまう。
グールがすぐそこまで迫っていた。大地は奏美を庇うように前に出る。
「奏美さん、早く」
「あなたは逃げて、大地くん」
「そんなこと出来ません」
「怪物の狙いは私なのよ」
「だったら、なおさら出来ません。女性を守るのは男の役目、そういうものじゃないですか」
大地はグールに掴みかかり止めようとする。
力が弱く知能も低いファントムのヒエラルキーの中では最底辺に位置するグールだが、それでも人を超えた力と頑強な体を持っていることには変わりない。
怪物の進行を大地に止められるはずがなかった。
大地はグールに突き飛ばされて地面に突っ伏す。
「大地くん!」奏美は悲鳴を上げた。
「早く……逃げて」
「お兄ちゃん、邪魔」
足元の小石を蹴飛ばすようにバジリスクが大地の脇腹を軽く蹴った。
瞬間、人外の力で蹴られた大地に猛烈な吐き気が襲う。胃の中身どころか内蔵全部を吐きそうになった。
「お前ぇ……」
奏美を守れない悔しさからか、あるいは別の何かからか。
大地は激しい感情に任せて、土を掘り返すほどに芝生を引っ掻いた。
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