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    元スレ晴人「宙に舞う牙」

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    251 :

    「うおあああっ!」

     ビーストは素早く横へ跳ぶと、そのまま木の陰に隠れた。

    (あの男、明らかにお前の手を読んでいたぞ)

     頭に聞こえるキマイラの声に答える余裕は無かった。
     向こうからイクサの声が聞こえてくる。

    「どうして自分の作戦が読まれていたか不思議なようだな」
    「!?」
    「前回の戦いで俺のイクサが収集していたデータはファントムだけではない。君もだ」
    「俺もだと」
    「君のデータを解析・考察したが、君は敵を倒すことでエネルギーを自分に供給している。そして、そのために速やかに敵を倒そうと接近戦に持ち込む」
    「……知った風にベラベラ喋りやがって」
    「教え子のことはよく知っておかなければならないのでね」
    「言ってろ! 要するに近づければいいんだろ!」

     ビーストはカメレオンが彫られたリングをスロットにはめた。
     ゴー! カメレオ!
     カッ! カッ! カッ! カメレオ!
     カメレオマントを身につけたビーストは姿をした。
     イクサはあらゆる索敵システムを使い、ビーストの居場所を探すが反応はない。
     名護は思案する。
     距離は開いていた。簡単に詰められるはずがない。おそらく隙を伺っているはずだ。
     …………試してみるか。
     マスクの下で名護は冷たく微笑んだ。
     ・
     ・
     ・
     息をジッと潜める。ただそれだけを続ける。
     獲物であるイクサも周りを警戒している。
     イクサにはビーストが見えないが、ビーストにはイクサの姿が見える。
     絶対的なアドバンテージがビーストの優位を証明していた。
     だが、ビーストはイクサに仕掛けなかった。
     迂闊に手を出せばいくら姿が見えないと言っても、おおよその場所を教えてしまう。
     狩りは一瞬だ。そして、一発で決めなければならない。
     終わりの見えない持久戦が続く。
     だが、ビーストの集中力は全く衰えなかった。
     それは仁藤がもつ根気からによるものだった。
     大学生の頃、仁藤は退屈していた。
     考古学を専攻して、念願の遺跡の発掘に行ったこともあったが、やっていたことは教授の雑用係みたいなものだった。
     それは仁藤にとって、遺跡という憧れた世界を目の当たりにしながら一番大事な部分に触れられない、というもどかしさでいっぱいな状況だった。
     気がつくと仁藤は大学を休学し、身の回りにあるものを全て売って、レジャーセット一式と愛車のマウンテンバイクを持って海外へ飛んでいた。
     仁藤の持つ未知への探究心が日本だけに収まらなかったのだ。
     仁藤は世界中の遺跡を回るようになった。遺跡の発掘チームにも加わろうとした。
     だが、考古学を専攻している大学生とは言えただの若者。最初は相手にされなかった。
     仁藤は発掘チームに混ざるため、相手が了承してくれるまで額を地面にこすりつけた。
     なんとか加わったチームでの発掘作業が長時間に及ぶことはざらにあった。
     発掘品についた汚れを落とすのに寝る間も惜しんだ。

    (狙った獲物は外さねえ。絶対に喰らいつける時まで待ってやる)

     ビーストはイクサが隙を見せるまでひたすら待ち続けた。
     すると、イクサが構えていた銃を降ろす。隙ができた。
     ビーストは見逃さない。

    (ベロオオオオオ!)

     声なき叫びと共に舌のムチが一直線に伸び、銃を持ったイクサの手元に向かう。
     銃を叩き落とし、迎撃の憂いを失くした上で一気に近づいて決着をつけようという算段だ。
     突然、イクサが空気を掴むと力強く握り締めた。
     ビーストは右肩に強烈な抵抗を感じる。
     イクサは赤い目『ハンティング・グラス』を輝かせながら木ばかりの景色に向けて言った。

    「隙を見せたら、そこを突きたがる。君は分かりやすいな」
    「てめえ、俺をあぶり出すためにワザと」
    「俺はバウンティハンターでありファンガイアハンター……狩りは得意分野だ」

     獲物は罠にかかった。後は仕留めるだけ。
     イクサは銃を再び構えて当たりをつけると発砲する。
     景色が火花を散らし、ビーストのカメレオマントの擬態が解けてしまう。
     そのままイクサは容赦なく銃撃を続けた。

    「―――――――――――!」

     ビーストの絶叫が銃声でかき消されていく。
     やがて銃声が止むとビーストは力なく跪いた。

    252 = 251 :

    名護イクサってかなり強かったよね
    負けらしい負けって、キバとの蹴り合いとビショップとサガにボコボコにやられたの2つくらいだった
    前者は名護さんの驕りもあっただろうけど、後者は無理ゲー

    253 :

    名護さんはなんだかんだいいながら人外級よな

    254 :

    生身で走って車に追いつける時点で…

    255 :

    >>254
    しかも片足で走ってる車をとめてるしな

    256 :

    >>255ファッ!?

    257 :

    トレーニングジムでベンチプレス120kgを持ち上げてたからな

    258 :

    (あの男、相当に戦い慣れておる)
    「けっ! あまりにヘビーで胃もたれしそうだぜ」

     ビーストは悪態をつくと銃撃を浴びて焼けるように熱くなった胸をわし掴んだ。
     イクサは銃を剣に変形させて斬りかかっくる。
     ビーストは力を振り絞って飛び上がった。
     イクサカリバーの切っ先が体を掠めたが、胸の痛みに比べればマシだった。

    (仁藤! 狙い撃ちにされるぞ!)

     キマイラの警告通り、イクサはエッジを押し込み銃に戻しビーストへ狙いをつけていた。

    「やられっぱなしでたまるかよ」

     ビーストは空中で右中指の指輪を草色から橙色のものに変えるとソケットにはめった。
     ゴー! ファルコ!
     ファッ! ファッ! ファッ! ファルコ!
     右肩に鳥の頭の彫刻とオレンジ色のマントが出現する。
     ビーストは隼の力を宿した姿へと変わった。
     木と木の間を縫うように飛び、イクサの執拗な銃撃をかいくぐる。
     ビーストはダイスサーベルのダイスを回し、ファルコマントのリングをはめる。
     ツー! 
     出た目は下から二番目の目だった。
     ビーストは舌打ちするが、嘆いている暇はない。構わずサーベルを振り抜いた。
     ファルコ! セイバーストライク!

    「キイイイイイ!」

     魔力で具現化された二羽の隼がイクサに襲いかかる。
     イクサは迎撃しようと銃を撃つが空中を自在に舞う標的に中々当てられない。
     それでもシステムのフォローを上手く利用し、二羽の隼を撃ち落とす。
     直後、名護の視界――イクサのモニターに熱源接近を知らせるアラートが表示された。

    259 = 258 :

    「囮か!」

     イクサは素早く銃を構える。
     しかし遅かった。イクサは低空飛行から急接近するビーストの体当たりをくらってしまう。
     そのままビーストは指輪を読み込ませてマントを交換する。
     ゴー! バッファ!
     バッ! バッ! バッ! バッファ!
     ビーストは真紅のバッファマントを翻しながら駆けた。

    「ブルウウウウウウ!」

     バッファローの爆発的なパワーから来る突進をイクサは止められない。
     凄まじい勢いで全身を押し出され、イクサは大木に激突した。

    「うぐぅ」イクサは苦しそうに呻き声をあげた。

     銃を落とすまいと手に力を入れるが、体が思うように動かない。
     イクサカリバーが地面に落ちた。

    「うおああああああ!」

     ビーストは一瞬離れてサーベルを構えなおすとイクサに向けて突きたてた。
     サーベルが胸に迫ってくる。
     戦士である俺に敗北は許されない! イクサは心の中で自分にそう言い聞かせた。
     イクサは銀色のフエッスルをイクサナックルに読み込ませた。
     イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ
     無機質な電子音と共にイクサナックルが激しくスパークする。
     イクサは前かがみになってビーストに突っ込んだ。
     サーベルがマスクの横を過ぎ、肩を掠める。
     イクサは至近距離でビーストにナックルを叩き込んだ。
     動力部のイクサエンジンからチャージされたエネルギーがナックルの電極部分から放たれる。
     イクサナックルを使用した必殺技『ブロウクンファング』が決まった。
     ビーストは派手に吹っ飛び、地面に叩きつけられた。

    「かはぁ……」

     ビーストの力が霧散し、変身が強制的に解除された仁藤は苦しそうに喘ぐ。
     すると名護が変身を解除して近づいてきた。

    「言っただろう、君は弱いと。だが……」

     名護は苦い顔をして肩を抑える。

    「筋はいい」
    「褒められても嬉しくねえよ。負けたんだからな」
    「ならば、俺の下で力を磨くといい」

     名護は倒れている仁藤に手を差し出すと言った。

    「その命、俺に預けなさい」
    「……」

     仁藤はしばらく名護の手を見ると

    「絶対にあんたより強くなってやる」

     その手を掴んだ。

    260 = 258 :

    残ってるマントはドルフィン、どー使うかなあ。治癒って正直地味だし

    261 :

    なんだかんだいって二人とも仲いいじゃないのー

    262 :

    使い方がうまいなぁ
    期待しちゃおうかしら

    263 :

    イクサのレーダーとかよく設定使ってるのがいいね

    264 :

    バトライドウォーを参考にしてみれば

    266 :

    展開に詰まってる。そんな時は妄想

     青年はカメラを構えてジッと待った。
     フォーカスを合わせながら被写体である少女をファインダー越しに覗く。
     彼女と目が合う。
     パッチリと開いた目。筋の通った鼻。ルージュがのった愛くるしい唇。胸の辺りまで伸ばしたウェーブの掛かった艶やかな髪。
     華やかな美形であると同時に彼女の初々しさと清楚さがあった。

    (本当に綺麗になったな……)

     幼い頃から少女のことを見てきた彼はそう思った。
     彼女が笑う。シャッターチャンスだ。
     彼は見逃すことなくシャッターを切るとカシャッ!という小気味良い音が立った。

    「どうだった?」
    「バッチリだよ」

     彼は指でオッケーのサインを出す。
     彼女は一瞬安堵の表情を浮かべるが途端、僅かな影がさした。

    「どうしたの?」
    「ごめんなさい。写真の被写体にして、だなんて」

     彼の趣味であるカメラ。今度のコンテストに出す写真を撮りにいこうとした所で彼女が自分を撮ってほしいと言ってきたのだ。
     確かに彼は風景よりも人物を撮る方が好きなので、その申し出はありがたかったが同時に自分の趣味に付き合わせるのも悪い気がした。
     断りをいれてみたが、それでも彼女は自分を撮ってくれと言った。結局、彼は押し切られる形で彼女を撮影に同行させた。
     彼女も彼女で、青年の決して表には出さないがカメラへの熱い思いは知っていた。
     だからこそ彼の力になりたい。そこには彼女の彼に対する淡い想いも混ざっていた。
     しかし、自分はカメラについて禄に知らない。ついて行っても彼の足でまといになってしまうのは明白だ。それでも彼の力になりたいと切に思った少女は、自分をモデルにするという発想に至った。
     美人な母親をもつ彼女は、自分の容姿がいいことを少なからず自覚していた。カメラ栄えもいいだろう。
     だが彼女自身、無理を言ったのは分かっているし、それを承諾してくれた彼の優しさに申し訳ないという気持ちがあった。

    「ありがとう」
    「えっ……」

     突然、彼は彼女に向けて感謝の言葉を送った。

    「いい写真がとれそうだよ」
    「本当に?」
    「モデルが良いからね」

     彼はニコリと笑った。その笑顔に嘘はない。いつだって自分に向けてくれる優しく暖かい笑顔。彼女は顔が熱くなるのを感じた。

    「口が上手いんだから」

     林檎のように頬を赤く染めて恥ずかしそうに顔を逸らす。
     彼はそんな彼女の様子を見ながらニコニコと笑ったままだ。
     彼女には笑顔でいて欲しい。それが彼の願いだ。

    267 = 266 :

    「次、行こうか」
    「撮影場所、ちゃんと決めてあるの?」
    「下見はしてあるからね。この先を真っ直ぐ行った所なんだ」

     彼はカメラをしまい、荷物を背負い歩こうとした。

    「……!?」

     全身に緊張が走りぬけた。
     誰かが自分たちを見ている。いや、正確に言えば彼女だ。
     明確な意思が視線となって彼女に注がれている。

    「どうしたの、ボーッとしちゃって」
    「い、いや」
    「?」

     少し前を歩く彼女は気づいていないようだ。
     どうする?
     彼はしばし考えた後、わざとらしく「あっ」と声を上げて続けた。

    「ごめん。少し先に行っててくれないかな?」
    「ええー!?」

     不満そうに声をあげる彼女。彼と二人で行きたいようだ。
     彼は笑顔でなだめる。

    「フィルムが切れちゃってさ。すぐに買ってくるから」
    「もう……ちゃんと追いついてよ」

     しぶしぶと言った様子で歩き始める彼女。好きな人の笑顔には弱いのだ。
     彼女が青年の元から離れていく。
     フィルムが切れたというのはもちろん嘘だ。予備ならたくさんある。
     そんなしょうもない嘘をついたのは彼女をここから離れてもらうためだった。
     柔和な笑みを浮かべていた彼の顔が険しいものへと変わる。

    「いつまでコソコソ隠れているつもりだ」

     彼女と一緒にいた時とは想像もつかないほどに低く威嚇するような声で彼は物陰に向かって喋った。
     物陰から視線の主が出てくる。黒い肢体に色鮮やかな模様をあしらった怪物だった。
     青年は怪物の正体を察する。

    「ファンガイアか。生物の一つの到達点であるからこそ、統制者の目に留まらずバトルファイトから弾かれた存在」

     ファンガイアは何を言っているか分からない様子で唸り声をあげる。彼は冷淡な顔つきで続ける。

    「まあ、いい……お前たちが何だろうと俺には関係ない」

     俺のすることは決まっている。
     あいつが自分の身を捧げてまで守ろうとした人間。
     俺はそれを守る……人間として。
     ましてや、それが俺の大切な人ならば尚更だ。

    「俺の大切なものに手を出すというなら容赦はしない……」

     ファンガイアは彼を始末しようと命を吸い取る透明な牙を飛ばす。
     彼は迫り来る牙を掴むとそのまま握り潰した。
     ファンガイアは驚愕した。
     ただの人間が牙を掴みとり破壊したこともそうだが、それ以上に牙を砕いた彼の手から『緑色』の血が滴り落ちているではないか。
     明らかな異常事態にファンガイアは後ずさりした。

    「ぶっ殺してやる」

     彼の中で敵意が尖がり、冷たいまでの殺意へと鋭さを帯びていく。
     すると彼の腰にベルトが現れた。
     彼は上着のポケットから緑色の血で塗られた手で一枚のカードを掴んだ。

    「……変身……」

     カードをベルトのバックルに読み込ませる。
     チェンジ!
     音声と共に、青年の姿が黒い外殻で覆われた異形の姿へと変わる。異形はバックルを取り外すと弓のような武器に装着させた。腰にあるホルダーからカードを一枚出して、読み込ませる。
     チョップ!
     更に一枚。
     トルネード!
     二枚のカードを読み込ませると異形の腕に風が吹き、螺旋を描いた。
     スピニングウェーブ!
     異形はファンガイアに飛びかかる。勝負は一瞬で決まった。
     竜巻を纏った異形の腕はファンガイアの頑強な皮膚を難なく引き裂いた。
     ファンガイアの絶叫。異形はファンガイアの腹に刺さった腕を更に沈みこませると上に振り抜いた。
     ファンガイアの体が腹から真っ二つに開き、Yの字になると無残に砕け散った。

    268 = 266 :

     ・
     ・
     ・
     シャッターを切る音が連続でする。
     彼女を撮りながら、ふと彼は思った。

    (俺は後どれだけの間、この子と一緒にいられるのだろう)

     人間として生きていくとはいえ、自分は人間ではない。変えようのない事実だ。
     いつかは別れの時が来てしまう。

    (ならば、俺のすることは……)

     別れの悲しみをすこしでも少なくするために彼女の元を早々に去るべきなのかもしれない。
     でも、それは違うような気がした。
     答えが見つからない。
     あいつなら、なんと答えてくれるだろうか。
     そんなことを考えると彼の頭に声が響いた。

    「俺は人を守りたい。俺がそうしたいから、そうしたんだ。お前もお前のやりたいようにやれよ」

     おもわず彼は顔を上げた。

    (今の声は……)

     幻聴かもしれない。だが、確かに聞こえた。
     彼は小さく笑った。空を見上げると青空が広がっている。

    (そうだな。お前ならきっとそう言うだろうな)
    「ああ……」

     風にのって、同じ空の下にいるあいつの声が聞こえた。
     彼は決心した。
     別れが待っている。
     なら、それまでの限りある時間を大切にしよう。
     過ごした一瞬、一瞬を記憶に残せるくらいのものにしよう。
     俺にはカメラがある。これを使って、その一瞬を永遠にしよう。
     彼はカメラのグリップを握りしめるとシャッターを切った。
     後日、とある写真のコンテストでアマチュアながら銀賞に輝いた写真があった。
     澄み渡るほどの青い空の下で少女が笑っている一枚だった。
     写真の下にあるプレートにはこう書いてある。

    作品名「天音」
    撮影者「相川 始」

    269 :

    まさかの始さん

    270 :

    こんな天音ちゃんも高校生の頃にはケバいゴス魔女になってしまうんだから時の流れって残酷

    271 :

    剣崎…

    272 :

    そして剣崎は戦場で一人、戦災孤児を救っている・・・


    >>270
    その後は剣崎と始が守った世界で、元気な孫もできて、とても幸せな人生を過ごすから大丈夫。
    なお、橘さんはバリバリ現役でご活躍の模様。

    273 :

    >>272しかし睦月、事故で死亡と言う・・・ハブラレンゲルェ・・・

    274 = 272 :

    >>273
    え、睦月が交通事故死? 『たそがれ』でも死んだとあるだけで、事故死とは書かれてなかったと思うけど・・・

    275 :

    >>274すまん、読んだことないんで人から聞いた話で記憶が曖昧だった

    276 :

    「フレイム」「キック」「コピー」
    「バーニングディバイド」

    277 = 276 :

    「フレイム」「キック」「コピー」

    「バーニングディバイド」

    278 :

    >>276-277
    なにも書き込みまで分身しなくても


    MOVIE大合戦で名護さんと仁藤並ぶシーンは残念ながらなかったな
    せっかく本人が出てたのに
    しかし753鉢巻きはふざけとんのかww

    280 :

    >267
    これはこれでなかなかいい。ゾクゾクするねえ

    しかしさすがのファンガイアでも、アンデッド、それもジョーカーからはライフエナジーをうまく吸い取れないのか?

    281 :

    不死身だしな

    282 :

    >>281もしライフエナジーが吸い取れたら人間に害を及ぼさず永遠にライフエナジーを取れる気がしてきた

    283 :

    とてつもなく死ににくいだけで限界はあるんじゃなかった?

    284 :

    ロイストやワイルドサイクロン級の攻撃なら木端微塵にできるっぽいし
    ディケイドの不死概念もろとも破壊でも同上

    でもアンデッドなら、時間が経てば統制者に再構築されると思う
    それこそカードゲームで言う撃破されて墓地送りみたいな感じで

    285 :

    消滅したのはニーサンとトライアルだけじゃなかったっけ
    純粋な52体のアンデッドで死んだのはいないはず

    286 :

    >>2851今やケルベロス・剣崎もいることを忘れないでくれ

    287 :

    ↑おまえはどれだけ先の奴にいっているんだwww

    288 :

    >>287間違えた・・・>>285にだった・・・

    289 :

    >>286
    明日に生きてるな!

    290 :

     色とりどりの花が垣根毎に咲き誇っている。
     静かに息を吸うと無数の香りの入り混じった強い香りがツンと鼻を刺激する。
     街の一角にあるフラワーガーデンが今日の奏美の練習場所だ。少し離れた所で凛子と瞬平が見守っている。
     奏美は耳をすませて街の音楽を聞く。美しい花を見て心を和ます者の笑顔、おしゃべりする者の雑談、頬を撫でる風、強く甘い香り。
     絶対音感を持つ者は耳から聞こえる音全てを音階に置き換えられると言う。
     奏美の場合は、聴覚だけでなく視覚、触覚、嗅覚などの五感で感じ取ったものを音階に置き換えられた。
     奏美は全身を使って街の音楽を聞き取るのだ。
     そうやって奏美に入力された音楽がバイオリンを介して外へと出力される。そこに決して手は加えない。自分という異物を混ぜてはいけない。
     聞こえた街の音楽を聞こえたままに表現するクリアーな音楽だ。

    「綺麗な演奏よね」凛子は穏やかな顔を浮かべている。
    「はい」瞬平も同じで顔を綻ばせていた。
    「ところで仁藤くんは何処にいるのかしら?」

     別に当番制というわけではないが、何となく気になった。

    「テントにはいなかったんですよ」
    「留守となると……買い出しかな?」
    「かもしれませんね。野宿はしていますけど完全な自給自足というわけでもなさそうですし」
    「良家の息子だけあって仕送りとか多そうよね」
    「どうでしょう? 仁藤さん、家を飛び出したって言うし、仮にそういうのがあっても使ってないんじゃないですかね」
    「うーん、謎ね。仁藤攻介の収入源」

     そんな二人の他愛ない話さへも奏美は受け取って、音楽へと変換し演奏する。
     凛子の言うように奏美の演奏は綺麗なものだった。
     しかし、奏者である奏美自身はどこか虚しい気持ちになってしまう。聞き取った音楽を正確にトレースし、演奏することはひどく機械的で退屈なのだ。
     もし自分の演奏したいように演奏できたらなんて考えてしまうが、直ぐに頭を振って追い出す。
     奏美は再び街の音楽を聞く。
     私はこれがいい……これでいい……これしかない。
     言葉を心の中で反芻させて、感情を上から真っ黒に塗りつぶして無心になってバイオリンを弾き続ける。
     その時だった。
     今まで全く聞こえてこなかった新しい音色が奏美の耳に入ってきた。それは地の底から唸るように響き、奏美の全身を揺らした。
     音は奏美の中へと吸収され、全身を駆けめぐる。呪詛のようにおどろおどろしく圧倒的なサウンドが頭の中で弾ける。まるでヘッドホンを強く押し当てた状態で大音量の音楽を聞いているような感覚だ。
     弓を握る手が微かに汗ばむ。
     直感で危険なものだと分かった。だが、奏美はその力強さに惹かれた。
     奏美は、その恐ろしい音色にだけ耳を傾けてコピーする。
     音がより一層に強く聞こえてくる。
     巨大な音の波は奏美に押し寄せて、飲み込み、深みへと連れ去ろうとした。
     
     

    291 = 290 :

    「ダメです、奏美さん!」

     声と一緒に誰かが奏美の手を掴んだ。
     聞こえてくる音から無理矢理引き離された奏美は音を遮った相手を見る。
     その姿を見て、瞬平が反応した。

    「渡さん!」
    「えっ、渡? それって晴人くんが言ってた奏美さんのバイオリンを修理した人よね」

     凛子は、その名前に聞き覚えがあった。いつもの面子で面影堂での他愛ない雑談で晴人から聞いた人物の名前だった。瞬平も会ったと言って、皆でちょっと驚いた。
     ふと凛子の中で疑問が浮かぶ。

    「でも、どうしてその人がまだ鳥居坂に?」

     仕事であるバイオリンの修理を終えて、奏美に届けたはずならもうとっくに鳥居坂にはいないはずだ。
     それなのにまだ鳥居坂にいるのは妙な話だ。

    「あなた、まだこの街にいたの?」

     奏美も同じような疑問が湧いたのか渡に質問していた。
     渡は「少しやることが出来て」とだけ答えた。

    「そう……」

     奏美はさして興味がなさそうに返すと

    「で、私に何の用かしら? あなたの修理してくれたバイオリンは完璧よ」

     遠まわしに「あなたに用はない」と伝えた。
     渡は奏美の質問には答えず、哀しそうな目のまま言った。

    「その音楽を奏でてはいけません。遠ざかっています」
    「遠ざかっている? 何からよ?」
    「奏美さんの音楽です。奏美さんはもっと素敵な演奏ができるはずなんです」
    「またそういう話なの。言ったでしょ、街の音楽が私の音楽だって」

     少しイラついた声で返す。
     わざわざそれを言いにきたとしたら大した嫌がらせだ。
     自分の中で折り合いをつけようとしていることに横槍を入れて迷わせようとする。
     正直、鬱陶しい。
     渡は奏美の心情を知ることなく語りかける。

    「どうして自分の心の声に正直にならないんですか?」

     渡が奏美のバイオリンを修理している時、奏美がどれだけ音楽を愛しているかバイオリンを通じて感じ取ることが出来た。
     だからこそ奏美の演奏に違和感を覚えた。
     自分の奏でたい音楽は自分だけの音楽だ。そんな悲鳴を奏美の分身たるバイオリンがあげていた。

    「奏美さんの音楽はきっと外に」
    「見透かしたようなことを言わないで!」

     琴線に触れられた奏美はおもわず叫んだ。

    293 :


    けどこの「琴線に触れられた」は誤用な気が……
    あれってプラスな感情を生むことに対して使われる言葉だし

    294 :

    「怖いんですか?」
    「……」

     自分の心をまた見透かされた奏美は黙った。
     渡に指摘されるまでもない。
     街の音楽など気にせず好きに演奏したいという自分の希望も、希望を叶えることを恐れていることも奏美は分かっている。
     だが、どれだけ頭で理解していても幼い頃に心にへばりつき、染みつき、固まりついた暗い視線と声への恐怖というどす黒いものが奏美の希望を叶えることを阻んだ。

    「……あなたには何も分からないのよ」

     吐き捨てるように言う奏美の体は小さく震えていた。

    「ああ、分からんねーな」

     すると、ガーデンの一角にあるベンチに座って雑誌を読んでいる男がそう答えた。
     男はつまらなさそうな顔で立ち上がる。

    「あんたの事情なんてどーでもいーんだよ。俺には関係ねーしさ。でもよお、あんたを絶望させないとうるせー蛇女がいるんだよ。だから、さっさと絶望してくれ」

     男の体が激しく隆起し、象のような姿をかたどったファントム『ガネーシャ』が現れた。
     ファントムの出現にフラワーガーデンは人々の悲鳴でいっぱいになった。

    「瞬平くん!」
    「はい、わかってます!」

     凛子と瞬平は奏美の元へ走り出した。
     しかし、演奏の邪魔にならないように離れた位置にいたことに加えて、逃げ惑う人の波を逆走する形となってしまい直ぐにはたどり着けない。
     その間にも象の怪物は逃げ惑う人を気にすることなく巨体を揺らし、地を踏み鳴らしながら悠然と奏美に近づいてくる。狙いはゲートただ一人、それだけなのである。

    「ったく、あの蛇女もひでーもんだ。時間構わず来て、仕事押し付けやがって……俺、今日夜勤明けなんだぞ。こっちにだって元になったゲートの生活があんのによお。どうせだったらゲートの生活捨ててるてめえがやれってんだ」

     ガネーシャはまるで人間のように愚痴りながら、距離を縮めた。
     近づいてくる異形に奏美の顔が恐怖で引きつっていく。

    「おっ、いいじゃん。そのちょーしで怖がって絶望してくれ。やっぱアレだな、見た目は大事ってことか? 人間も肌の色だけでアレコレあったらしいし。違うイコール怖い? それじゃあ、後は」

     奏美の絶望の淵に落とす仕上げに掛かろうとするガネーシャ。
     渡は奏美を庇うように前に出た。

    「どいてくんねーか。俺、さっさと終わらせてーんだよ」
    「…………」

     怪物の言葉に渡は無言のまま一歩も退かない。
     ガネーシャは呆れたような低いため息を漏らすと顔の中央に収まっている鼻を伸ばした。

    「目の前で人が死ねばゲートの絶望も更に深まるか」
     象の鼻が蛇か触手のような動きで迫る。
     渡はガネーシャを睨みつけた。その表情を見て、ガネーシャはゾッとした。

    「な……なんだよ、お前」
    「…………」

     渡の睨みにガネーシャがたじろぐ。どう見てもただの非力な若者でしかない渡から凄まじい圧迫感が放たれている。
     ガネーシャは知らず知らずのうちに後ずさっていた。
     それと同時に凛子は拳銃をガネーシャに向けて発砲した。

    295 = 294 :

    お小言

    凛子の武器は当初ウィザーソードガンをコピー、そこからスモールと暦のプリーズを使って事前に魔力を装填したミニソードガンを使わせる予定だったけど、魔法使いでない凛子がソードガン使うのはどうかと思い、ファンガイアバスターに変えた
    あと琴線に触れるって、プラスな意味なのか失敬。>293、指摘ありがとう

    296 :

    やべ、張りわすれた

    297 = 296 :

    「瞬平くん、奏美さんと渡さんを連れて逃げて!」凛子は瞬平が二人の元へ走り寄るのを確認すると素早く指示を飛ばす。
    「でも、凛子さんが!」
    「ゲートの保護が先よ。早く!」反論を許さない厳しい口調で叫ぶ凛子。
    「わ、わかりました。行きましょう、奏美さん、渡さん」

     瞬平達が遠ざかっていくのを一瞥すると凛子はガネーシャを見据えた。
     一方、ガネーシャは凛子のことなど視界に入っていないかのように瞬平達が走り去っていく方へ行こうとする。

    「あなたの相手はこっちよ!」

     再び発砲してガネーシャの注意を引こうとする。
     凛子はファントムにとって自分が邪魔な存在になることで少しでも奏美たちの逃げる時間を稼ごうとした。

    「全くだりーな。でも、だりーのを片付けないともっとだるくなる。俺のゲートも、そのせいで絶望したしな」

     狙い通り、ガネーシャがクルリと向きを変えてくる。
     凛子は瞬平たちとは真逆の方向に後退しながら拳銃を撃つ。
     だが、銃弾はガネーシャの分厚い皮膚を貫くことなく指で押したようにほんの少し凹むだけだ。

    「きかねーんだよ。そんな豆鉄砲じゃーさ。それこそ魔法使いの銀の銃でもない限りな」
    「確かにそうね。でも……」

     凛子はカバンの中に手を入れて、何かを取り出す。
     それは四角い銃の形をしていた。

    「これならどう!」引き金を引くと同時に銃声が響く。
    「だから、きかねーって…………ぐぅ!?」
     
     攻撃を受けたガネーシャの反応が明らかに違った。刺さるような鋭い痛みに苦悶の呻き声をあげる。
     痛みの出処に手を当てると銀色の矢が刺さっていた。
     ガネーシャは凛子の手を見て、驚く。そこには銀色の銃が握られていた。

    「銀の銃……お前、魔法使いなのか!?」

     確かに魔法使いの特徴である指輪をしている。
     だが凛子は「いいえ」と首を横に振る。

    「なら、なんで銀の銃を使えんだよ!」
    「世の中って広いわね。人間の作った物でもファントムに対抗できるなんて」

     凛子は天使の羽のような装飾がついた銀の銃『ファンガイアバスター』を見る。
     それはトリガーを引くとシルバーアローという銀の矢が高速発射されてファンガイアの体を撃ち抜く小型銃だった。
     本来は名前の示す様に対ファンガイア用の武器なのだが、シルバーアローがウィザードライバーにも使用されている特殊銀合金ソーサリウムと極めて近い構造をもった金属で作られておりファントムの強固な外皮も安々と貫けるのだ。

    「私は魔法使いではないわ。でも、人を助けたいっていう想いは誰にも負けない。だから、戦う力があるなら私は戦うわ!」

     凛子は心の中にある想いを乗せてファンガイアバスターを連射した。

    298 :

    貴重なかっこいい凛子ちゃん

    299 :

    おつです。凛子ちゃんかっこいい。

    今回のファントム、なんとなく剣のエレファントアンデッドっぽいな。
    同じ象型怪人だから狙ったのかな?


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