元スレ晴人「宙に舞う牙」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
351 :
なにそれよみたい
あぁでも続きも読みたい
おのれディケイドォォオオ!!
352 :
↑なんでもかんでもディケイドのせいにすんなwww
353 :
乾巧のせいにする人もいたな
354 = 353 :
乾巧のせいにする人もいたな
355 :
まさかクライシス!?
356 :
ネタ拾って頂いてありがとうございます
想像以上にかっこ良いエピソードでした
555は裏アギト的な構造が根底にあるのでこういう話を待っていました
アギトで北條さんが「私は普通の人間、アギトの力を持つ存在は恐ろしい」と言っていたのと
555で琢磨が最後にオルフェノクの力を恐れ人間として生きることを選んだのも、対比になっていたんだなと今更ながら思ったり
357 :
おつ
三原のエピソードもすごく観たい。
というか主の10年後555も見てみたい。他ライダーとのクロスでも良いから。
358 :
復活したようです
359 :
「今日の夕飯、おっちゃんだっけ?」
「いや、俺じゃないぞ。コヨミだ」
「次、晴人の番だからね」
「分かってるって、なんかリクエストあるか?」
コヨミは大根の漬物をポリポリと噛みながら考えると「鍋がいい」と答えた。
「鍋だったら、他のみんなを呼んでもいいかもな。ん……この鯖の味噌煮、美味いよコヨミ。ご飯が進む。渡も食ってみろよ」
「はい」
味噌汁を飲んでいた渡が口を離し、晴人に薦められるままに皿に盛られたサバ味噌を食べる。味噌の辛さと砂糖の甘さが程よく両立できている。
面影堂に夕食の時間が訪れていた。小さなテーブルを男女四人で囲む。
渡はホテルで奏美のバイオリンを聞いた後、自分が一時的に寝床として使っているマンション(青空の会が所有しており、会員たちの潜伏先として世界各地に存在する)へ戻ろうとした所を晴人から夕食に誘われた。
断ることは出来たが晴人の厚意を無碍にするのも失礼だと思い、今に至る。
「それにしても本当にこのサバ味噌美味いな」輪島はほぐした鯖の身をご飯と一緒に食べながら舌鼓を打った。
「鯖がいいのを使ってる……みたいだから」
「みたい?」歯切れの悪いコヨミに晴人は首を傾げる。
「今日、買い物の帰り道でね。男の人と交換したの。私が買ったスーパーの鯖と松輪の丸特っていう鯖と」
「聞いたことないな。おっちゃん、知ってる? あっ、コヨミ、俺のご飯おかわり」
「松輪鯖と言えば、確か鯖の中でも黄金の鯖と言われるくらい高級な鯖だぞ」
「へえ、そんな凄い鯖をわざわざスーパーの鯖と交換するなんて不思議だな」
「うん。いきなり献立を聞かれたから、鯖の味噌煮って答えたら……『お前は鯖の一番美味しい食べ方を知っているな。なら、そんな安い鯖を使わないで一番美味い鯖で食べろ』……って言われて、交換してもらったの」
「それはまた随分と変わった人だな」
「格好も変わってた。晴人より少し年上なん感じだったんだけど作務衣と下駄で」
「変だな」「変ですね」
晴人と渡は顔を見合わせて男に対して同じ感想を言った。
「はい、晴人。おかわりのご飯」
「サンキュー」
晴人は礼を言いながらコヨミから茶碗を受け取ると、炊きたてでキラキラと光るご飯を食べ始めた。
渡は晴人の指にはめられている指輪に視線が向いていた。指輪の割には少し大きいから目立つのだ。
「あの……」
渡は少し悩むように下を向きながら言葉を続ける。
「晴人さんは魔法使いなんですよね」
「ああ、そうだけど」今更なにを?といった調子で晴人は軽く返す。
「前に僕の目の前でも普通に魔法を使ってましたけど……どうして隠そうとしないんですか?」
渡はフラワーガーデンで襲われた時のことを思い出していた。
奏美がガネーシャに襲われた時、前に出て庇おうとした。威嚇もした。
しかし、キバに変身しようとはしなかった。ガネーシャを退ける力を持っていながら使おうとしなかった。
渡は自分がキバであることを必要以上に知られたくなかった。
キバという異形になった自分。深紅の魔人の姿を晒し、人を遥かに超えた力を使う。
それを見た人は何を感じるのだろう。
驚異。恐怖。あるいは陶酔。
渡は、そういったものを無闇に持たせるのが嫌だった。
知らないなら知らないままの方が幸せなことは確かにある。
だからかもしれない。
自分の力であるキバと同じように人を超えた力、魔法を持っていながら人に隠そうとしないでむしろ披露するようことをした晴人。
その在り方が不思議だったし、聞いてみたかった。
360 = 359 :
井上の新作「海の底のピアノ」の和憲が一人称がぼくで音楽に関わっているから、渡を思い出してしまい瀬戸くんの声で再生される
361 :
晴人はコミュ力あるもんな
カッコつけたら知り合いだったとか普通なら絶望する出来事にも平気
362 :
ライダー主人公は皆基本的にはコミュ力高いよね(たっくん除く)
363 :
しれっと天道ワロタ
364 :
>>362
ああ、あの乾って男はコミュ力のないクズさ。
なんたってオルフェノクだからね
365 :
>>364
おはロリコン
367 :
………………トリップってなに?
370 :
うぽつー
371 :
トリップつけたら変換後の文字列を検索してみるといいよ
たくさんHITするようだと同じトリップ使ったことがある人が多いってことだから、本人証明の効力が薄れる&なりすましの危険性が高まるから
372 :
「俺には何もなかった。両親も親友も夢も……それに魔法も」
つぶやくように言いながら晴人は指輪を外すとテーブルの上に置いた。
「魔法を手に入れたのは偶然だった。渡もファントムに襲われただろ? 俺は、そのファントムを生み出す儀式に巻き込まれたんだ」
「儀式ですか?」
「サバトって言ってさ。地獄だったよ」
・
・
・
晴人が魔法使いになったのはサバトがきっかけだった。
日本から遠いのか近いのかも分からない静かな孤島。そこには晴人を含めた何十人という人が集まっていた。
どうして、自分たちはこんな場所に?
集まった人達は同じ疑問を持ち、互いにそれを聞いたがしっかりと答えられる人はいなかった。
気づいたら、ここにいた。そんな曖昧な答えしか出ない。
晴人はここに来る直前のことを思い出そうとしたが無駄だった。
記憶がドーナッツの中心のようにポッカリ穴が空いていて思い出せない。他の人も同じだった。
不気味な状況に集まった人達は不安で怯えた。更にそれを煽るように突然辺りが暗くなり始めた。
晴人が空を見上げると太陽が月と重なろうとしていた。日食が起きたのだ。
地上を照らす太陽が黒く穢されていく。太陽が輝きのほとんどを失うと同時に地面に亀裂が走った。亀裂は妖しい紫の光を放ちながら島全体に魔法陣を描く。
それが絶望の宴サバトの始まりだった。
人々を強制的に絶望させるサバトは、島にいた人全てに絶望のイメージを貼りつけた。
「こんなはずじゃなかったんだ!」夢破れた自分を見る者。
「もうどうしようもないわ。取り返しがつかない……」悲惨な未来を見せられ後悔する者
「どうして! どうして分かってくれないの!」周囲につまはじきにされる自分を見る者。
「俺を置いていかないでくれよぉ……約束したのにさあ」愛する人に先立たれる所を見せられる者。
「分かってるんだよ。言われなくても分かってるんだよ。焦ってるんだよ。でも、どうすりゃいいか分からないんだよ」自分の不甲斐なさを見せられる者。
絶望のイメージに嘆き、悲しみにくれる人々。
「やめろおおおおおおおお!」
一人の男が、絶望する自分のイメージを振り払おうと頭をめちゃくちゃに振っていた。
狂ったように頭を地面に叩きつけて、意識を痛みで上書きしようとする。
しかし、イメージはいつまでもしつこくベッタリと残る汚泥のように離れない。
「うあああああああああああああああああああああ!」
やがて絶望に耐え切れず発狂したように慟哭すると男の全身はひび割れて、砕け散った。
そして、男のいた場所に牛のような角を持ったファントムが現れた。
男はゲートで絶望の底に叩き落とされた結果、自らの死と共にファントムを産みだしたのだ。
男だけではない。島に集まった人はみんなゲートだった。
あちこちで悲鳴が聞こえる。いくつもの悲鳴は重なり絶望の歌となって、島を揺らした。
歌い終えた者から順々に力尽き、ファントムを産みだしていく。
晴人は次と次とファントムが産まれていく中で必死に絶望に抗っていた。
目に映る化物。あんなのにはなりたくない。
死にたくない。
晴人は、とにかく何かを押さえ込むように踏ん張った。それでも絶望する自分を止められない。
抗い続けていく内にふと晴人は思った。
こんなことをして何になるんだ?
373 = 372 :
俺は親を失って、親友の希望を奪って逃げ出して、夢も捨ててきて、もう何もなくて、生きている意味なんてないんじゃないか?
絶望のイメージが、晴人がひとりぼっちになった時に変わった。
白い病室の中で幼い自分が両親と話していた。
晴人は、その絶望の時をどこか冷静な目で見ていた。
この後、父さんも母さんも死んだんだよな。
でっ、俺ももうすぐ死ぬ。
死ねば、父さんや母さんにも会える。
昔みたいに家族みんな一緒だ。
なんだ…………最高じゃん。
やっぱり死んだ方がいいな。
死の誘惑に負けて、絶望に身を任せようとした時だった。
イメージの中で両親の声が聞こえた。
「忘れないで、晴人……あなたがお父さんとお母さんの希望よ」
「晴人が生きててくれることが俺たちの希望だ。いままでも、これからも」
その言葉を聞いて、晴人はハッとした。
絶望に呑まれかけていて、自分の生きてきた意味を忘れていた。
晴人は光を目指して、太陽へ手を伸ばす。
月と重なった太陽の光は小さかった。
しかし光は消えていない。むしろ影がある分だけ際立って輝いている。
影から漏れでて輝く太陽の光がリングを形づくっていた。
晴人には、それが両親から送られた光の指輪に思えた。
そうだ……俺は父さんと母さんから希望を託されたんだ。その俺が絶望してたら示しがつかないよな。
俺は生きる!
俺は父さんと母さんの……最後の希望だ!
光のリングを掴んだ瞬間、想いに合わせて晴人の手から光が溢れだした。
・
・
・
「サバトで希望を捨てなかったから俺は魔法使いになれた。絶望の中で希望を掴んだ」
語り終えた晴人はデーブルに置いた指輪を改めてはめた。
「俺は伝えていきたいんだ。どんなに絶望しても希望があれば、きっと生きていけるってことを。俺自身を証としてな」
晴人は自分の手に宿した希望を誇らしげに見せた。
「魔法は人を笑顔にできる。笑顔になれば不思議と希望も持てるもんさ」
「それが魔法使いであることを隠さない理由なんですね」
「まあ……俺は、俺の考えの広告塔みたいな感じだな」
「お手製ですね」
「そう、だからノーコスト」
渡のツッコミからの晴人の返しに面影堂の食卓が笑い声で包まれた。
374 = 372 :
晴人は、人を導いて変えていくタイプであり影で静かに見守っているタイプのどっちでもあるんだよなあ
良いとこ取りって感じ
渡や巧は後者なんだが
375 :
晴人が主役っぽくないって揶揄されるのはそういう一面も多分にあると思う
サバトの描写うまくてビビる。やっぱり面白いわ
377 :
面白いぜ
378 :
乙、文章上手くて引き込まれるわー
そして網野刑事・・・
379 :
「今日はありがとうございました。とても美味しかったです」
「ああ、気が向いたらまた来てくれ。うちは千客万来だからな」
晴人は渡が帰っていくのを玄関から見送ると居間に戻った。
コネクトの魔法を使い、自室の机の上に置いてあるはんぐり~の紙包みを取り出し、食後のデザートのプレーンシュガーを頬張る。
(奏美さんのコンサートまでもう少しか)
ちらりと壁にかかっているカレンダーに目をやった。日付の一箇所に大きな赤の丸印。奏美のコンサートの日だ。
コンサートが終われば奏美は鳥居坂から去っていく。
鳥居坂から離れればファントムに襲われる可能性もかなり減るだろう。
あと数日の間だけ守りきればこちらの勝ち。
奏美や凛子達の前では絶対に言えないが正直、晴人は内心ホッとしていた。
ただでさえ今はファントムだけではなくファンガイアの問題もある。
ニュースや新聞では行方不明者の数が増えていると報道されていて、それはファンガイアの犠牲者が増えているという事実でもあった。
ファントムは原則ゲートだけを狙ってくる。だから極端な話ゲートだけを守ればいい。おまけに相手の狙いが明確にわかっている分だけこちらも下準備はできる。
ショーの成功に必要なのは入念な準備。
晴人は今までもそうやってファントムを迎え撃ち、ゲートの希望を守ってきた。
しかし人を餌としか見ていないファンガイアは無差別に人を襲う。老若男女、相手は誰でもいい。
それでは準備すらもままならない。ファンガイアには晴人の魔法使いとして培ってきた戦い方があまり有効ではなかった。
だが、当然晴人も何もしていないわけではない。魔法で使い魔のプラモンスターを放ち、日夜街を回らせていた。
後は何とかしてプラモンスターがファンガイアを見つけてくれればいいのだが……
「晴人!」
「どうしたんだ、コヨミ?」
「見て!」
コヨミは手に持っていた水晶玉を晴人に覗かせた。
水晶玉はあらゆる事を映し出すと言われる「ビジョン」の魔法が込められた魔法石であり、晴人の魔法と同調するプラモンスターの視界と繋がることが出来るのだ。
水晶玉にはファンガイアが会社帰りのサラリーマン風の男を襲おうとにじり寄っている所が映っていた。
高いところから見下ろすように映っている点からレッドガルーダが見つけたのだろう。
「ファンガイア……目立ちたがり屋で助かった!」
晴人はドーナツの残りを口に詰め込むと急いで外に出た。
コネクト・プリーズ!
魔法陣からウィザードとして戦闘する際に搭乗することを想定して改造されたバイク『マシンウィンガー』を引っ張り出す。
シートに座り、ファンガイアのいる場所を目指してバイクを発進させる。
「変身!」
晴人はバイクを走らせながら展開された赤い魔法陣をくぐるとバイクと一緒に燃え上がった。晴人は自分を覆う赤い火を振り払おうとバイクの速度を一気に上げる。
それでも火の勢いは止まらず晴人の全身を焼いていく。燃え盛る火の中で辛うじて人の姿が黒い影になって見える。
晴人は更にバイクを加速させた。強まる逆風に火が横になびく。
暗闇の中を火の玉が揺らめきながら爆走していく。
「さあ、ショータイムだ!」
やがて火の全てが風に煽られて消えると晴人はウィザードに変身していた。
380 = 372 :
・
・
・
「……っ! 行かなきゃ」
同じ頃、渡もまたファンガイアの襲撃を知らせる音が頭に響いていた。
音が導くままに渡はファンガイアを目指して走り出す。
走り続ける渡の耳に奇妙な音が聞こえてきた。
野太いエンジン音。
振り返ってみると巨大な乗り物が渡に向かって凄まじいスピードで突っ込んできた。
乗り物が発する白いライトの光に渡は思わず目をつむる。
(ぶつかる!)
そう覚悟した瞬間、乗り物は渡の直前で停止した。
渡はゆっくりと目を開けて、乗り物の正体をみる。
「これは……」
鮮血の色をした巨大なバイクだった。だがシートには誰も座っていない。
それは渡の愛用するキバ専用のモーターサイクル――王の鉄馬『マシンキバー』だった。
ブオン! ブオン!
マシンキバーは馬の荒息のようなエンジン音を立てて渡に搭乗を促した。
渡は愛馬に跨ると上着の袖をまくりあげた。
「キバット!」
「なんか出番が久しぶりなような気もするけどキバっていくぜ! ガブッ!」
どこからともなく飛んできたキバットは剥き出しになった渡の肌に牙を突き立てた。
「……変身」
渡は紅い鎧を身に纏うとキバに変身した。
キバはハンドルを握ると頭の中で愛馬に「行け」と命じる。
深紅の馬は王の命令を忠実に従い、白い三つの目を輝かせて駆け出した。
381 = 372 :
よーやくバイク出せた、ブロンもカッコイイから使いたいしね
382 :
平成ライダーの中じゃオートバジンたんが一番シンプルで格好いいと思う
384 :
ブロンは本編では扱い悪かったなーその分、劇場版では大活躍だったけど
385 = 372 :
>>384
生い茂る枝木の中を駆けぬけるブロンいいよね
386 :
>>385
同意
出し惜しみしないアクションのつるべ打ちという点に関して、
キバの映画はライダー映画の中でも群を抜いていると思うのです
387 :
キバが急行した場所は溜め池のある温水地だった。池を囲むように道や橋が整備されていて、ちょっとした散歩コースにもなっている。
キバは視界にサラリーマン風の男とカニのような外見をしたクラブファンガイアを捉えた。
クラブファンガイアは両腕の巨大な鋏で男を嬲るように切り裂いていた。
男は腰を抜かしているのか腕と尻だけを使ってズルズルと必死に下がる。
その無様な様子を、クラブファンガイアはハサミを鳴らして恐怖を煽り、奇っ怪な笑い声あげて楽しんでいる。
どうやら存分に追い詰めて、自分の力を見せつけた上でライフエナジーを吸うつもりのようだ。
ファンガイアの悪趣味さにキバの胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
「…………」
キバはマシンキバーの速度を上げると、その勢いに乗って大きくジャンプ。そのままクラブファンガイアの顔面に蹴りを放った。
衝撃で横転するクラブファンガイア。
キバは男を一瞥し、無事だけ確認するとすぐさまクラブファンガイアに追撃しにいく。
体勢を低くし、地面を這うような独特の構えで突進する。
「キバ、一族の裏切り者が!」
体勢を立て直したクラブファンガイアが鋏を振り上げて迎え撃つ。キバはクラブファンガイアの腹に拳を叩き込んだ。
衝撃で僅かに後退するクラブファンガイアと同時にキバの拳に痛みが走った。
クラブファンガイアのカニのように硬い甲殻がキバの攻撃を防いでいた。
「キバと言えど我が鎧を突破するのは困難らしい」
硬い鎧を纏うクラブファンガイアは痛めた拳を空いた手でさするキバを馬鹿にするように鋏を鳴らす。
クラブファンガイアは両手の鋏でキバを切り裂こうと腕を振る。
キバはかわしながら距離を取ると鋏に対抗するために青い笛を取り出した。しかし、キバの判断をキバットが制した。
「渡、切り裂くんじゃない。撃ち抜くんだ!」
「……っ!」
キバットのアドバイスを受けたキバは青い笛をしまうと緑色の笛を取り出した。
「そうそう、そっちだよ!」
キバは緑色の笛をキバットに鳴らさせる。
「バッシャーマグナム!」
トランペットのような音が高らかに鳴りひびき、夜空から緑色の彫像が飛んでくる。
キバが掴むと彫像は魔海銃『バッシャーマグナム』に変形した。
するとキバの右手と胸に鎖が巻き付き、水飛沫を上げながら砕け散る。
鎖が巻いてあった箇所とキバとキバットの瞳は濡れた光沢のある艶やかな緑色に変わっていた。
それこそキバがバッシャーマグナムに変形した彫像のモンスター、マーマン族の『バッシャー』の力でメタモルフォーゼした緑の半魚人――仮面ライダーキバ・バッシャーフォームだった。
388 = 372 :
キバはバッシャーマグナムを構えるとトリガーを引いた。
キバの意思に反応し、 大気中の酸素と水素が吸収され、強制的に水を作り出し、そこに魔皇力が加えられた水弾が秒速700メートルという スピードでマズルから発射される。
水弾の一発一発がクラブファンガイアに炸裂して爆ぜる。
「銃とは最も愚かな手で来たものだ。我が鎧は撃ち抜けん」
甲殻の下にはまだ攻撃が届いていなかった。クラブファンガイアは水弾をまともに喰らいながらもキバに迫った。
「……♪」
キバは焦ることなく鼻歌まじりでトリガーに指を添えた。すると突然、池から1匹の蛇が長い体をうねらせながらバッシャーマグナムに吸い寄せられるように現れた。
蛇の正体は池の水だった。水面からでた水が波紋を作り、とぐろを巻く蛇の胴体になっている。キバはバッシャーの持つ水を自在に操る力で池の水をバッシャーマグナムに供給していた。
水の蛇と繋がるバッシャーマグナムはさながら弾倉帯をつけた機関銃だ。
キバがトリガーを引いた瞬間、バッシャーマグナムは耳をつんざく銃撃音を連続で起こしながら水弾を激しく連射した。
クラブファンガイアを襲う水弾の量は先ほどの銃撃の比ではなかった。スコールとなって降り注ぐ水弾がクラブファンガイアの進撃を阻む。
クラブファンガイアは自分の体に伝わる衝撃が徐々に強まっているのを感じた。
「馬鹿な……我が鎧が!」
クラブファンガイアは驚きを隠せなかった。
自慢の鎧が削られている。
水の滴りが石を削り、穴を開けるようにバッシャーマグナムから発射された水弾はクラブファンガイアの甲殻を凄まじい勢いで削っていた。
このままでは鎧が破られると考えたクラブファンガイアはどうにかして銃撃から逃げようとしたが無駄だった。既に全身が水弾の激流に呑まれている。立っているのが精一杯。今更遅かった。
削られて薄くなった甲殻に水弾が炸裂して、あちこちにひびが入った。
それでも止まることなく襲いかかる水弾にクラブファンガイアの甲殻は決壊した。
鎧を失い、むき出しになったクラブファンガイアの黒い肌が撃ち抜かれる。肉体が削られ風穴が開く激痛にクラブファンガイアは意味不明な叫び声をあげた。
キバはファンガイアの悲鳴を気にもせず連射の意思を辞めなかった。すぐ側には水源の池もあるため水の弾切れは存在しないに等しい。キバに 攻撃の意思が有り続ける限りバッシャーマグナムの銃撃は終わらないのだ。
「♪♪」
キバはエメラルドグリーンの瞳でクラブファンガイアがボロボロと崩れていく様子をじっと見ていた。
キバはクラブファンガイアがどこまで耐えられるのか遊んでいた。
無邪気な子供が虫を使って遊ぶように。
捕まえたトンボの羽を両側から引っ張って、どこまで引っ張れるか。結局やりすぎてトンボは裂けて死んでしまう。そんな遊び。
やがてキバは遊びに飽きたのかトリガーから指を離すとバッシャーマグナムから水弾が出なくなった。
温水地は一気に静寂に包まれた。
クラブファンガイアのいた場所には弾けた水弾の影響で巨大な水たまりを作っている。
水たまりにはかつてファンガイアだったものがプカプカ浮いていた。
389 = 372 :
バッシャーが不遇なんて言わせないよ
390 :
バッシャーフィーバーは
391 = 372 :
>>390
出したいよねえ
しかし、あのバッシャーマグナムと組み合わせたタツロット見るに、どー考えてもドッガフィーバーみたく口から弾丸で被ってしまうんだよなあ
392 :
ビームにしたらいいんじゃね…と思ったけど
それだとイクサライザーと被るんだよな
394 :
地の文うまいなぁ
乙です
395 :
>>1はバッシャー好きなん?
396 :
乙。地の文が毎度引き込まれる
トンボのくだりは銃&水繋がりでかな
397 :
ファンガイアを倒したキバは主を待つマシンキバーの元へ向かった。
その道すがら向こうから自分の足音とは別のものが聞こえてくる。暗闇の中でもキバには近づく相手がハッキリと映っていた。
輝く赤い仮面に漆黒のコートと銀色の銃剣。ウィザードだ。
「また会ったな、笛の魔法使い」
「……」
「挨拶くらい返してもよくないか。喋れないってわけじゃないんだろ?」
「…………」
ウィザードを無視してキバは横を通りすぎた。ウィザードはキバの銃を見る。
「ファンガイアは、あんたがやったみたいだな。全くやってくれるよ。お客を奪われてショーはパアッ! これじゃあ魔法使いも形無しだ」
ウィザードは大げさに肩を竦ませながらキバの後をついていく。
「今日は帰るのは止してくれないか?」
前回のように放っておくつもりはなかった。ファンガイアへの対策を考えなければいけない現状、ウィザードにとってキバは謎の存在だった。
何者なのか、いつ鳥居坂に来たのか、どうしてファンガイアを倒すのか、自分にとって味方なのか、それとも敵なのか。
何も分からない。だが分からないといって放置しておくには、キバは力がありすぎる。危険なのだ。
「ここにはどうやって来たんだ? 俺はバイクなんだけどさ」
「……」
「こいつがまた特注で凄いスピード出るんだよ。200キロ越えるんだぜ」
仮面の下なにくわぬ顔で話をしながら距離を詰めていく。
キバは弾かれたように振り返り、銃を構えた。銃口がウィザードに向けられる。
「おいおい、ちょっと待ってくれ」
ウィザードは片手の掌を前に出してストップをかけるがキバは銃を下ろさない。
「俺は、あんたとお話をしたいだけなんだ、お話。やり合う気はない」
半分本音の半分嘘だった。話はしたい。だが、いざとなれば強引な手を使っても目的を吐かせる気はあった。
その証拠にウィザードはおどけながらも後退していない。一気に飛び込んで攻撃を仕掛けられる距離を保っていた。
「……」キバは微動だにせず銃で狙いを定めている。
「ホントだって、ほら」
ウィザードは諦めるように両手を上げた。ホールドアップの姿勢から手にもつ銃剣を離す。
重力に従い銃剣が落ちていく。
キバは無防備になったウィザードへ水弾を発射した。
398 = 372 :
>>395
バッシャーというよりキバが好きなんだ
でも一番はサガだ。蛇+王冠なデザインのマスクに胸のステンドグラスな配色、全身に走る蛇の胴体のようなシルバーライン
カッコよくて美しいキバライダーの中でも最高だよ
400 :
サガ、いいよな
本編での扱いすげー悪かったけど
みんなの評価 : ★★
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