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    元スレ晴人「宙に舞う牙」

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    151 = 150 :

     バジリスクが奏美の前に立つ。
     奏美は逃げようとするが、恐怖で体が動かない。竦んでしまっている。

    「じゃあ、お姉ちゃん、ゼツボーしてね。でも……ゼツボーってどうすればするんだろ?」

     怯えながら自分をみる奏美を無視してバジリスクは首をかしげる。

    「そうだ。わかった!」

     バジリスクは奏美に向かって言う。

    「あんたのせいで私はこんな目にあってるのよ! この疫病神! あんたなんて産まなきゃよかった!」

     突然、女言葉を激しい口調でバジリスクが使い出した。
     奏美はバジリスクの言っている意味がわからなかった。
     ポカンとする奏美を見て、バジリスクはまた首をかしげる。

    「あれ? おかしいな。僕のゲートはこれを言われて、ゼツボーして僕を産んだのに……そう言えば、あの時、僕のゲートはぶたれながら言われたんだった。だったら、それをやらないとゼツボーしないか」

     バジリスクは腕を振り上げる。

    「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ちゃんと止めるから。でないと、僕がゲートのお母さんにやったみたいに頭が潰れちゃうしね。卵みたいにグシャーってさ」

     奏美はバジリスクの言葉を頭の中で描いてしまった。
     卵みたいに潰れる顔。
     飛び散るのは黄身や白身、殻ではなく自分の脳と血や砕けた頭蓋骨。
     惨たらしい死のイメージが奏美を絶望の淵へ落とそうとする。
     バジリスクが奏美に向かって腕を振り下ろそうとした瞬間、

    「ファントム!」
     駆けつけた仁藤が叫んだ。
     その声にハッとなった奏美の意識が死のイメージから逸れる。

    (魔力が暴走していない。間に合ったようだな。最も我にとっては)
    「ふざけたこと言おうとするんじゃねえよ」仁藤は怒気を孕んだ声でキマイラをたしなめる。
    (……)仁藤の迫力にキマイラは押し黙った。
    「まったくゲートを絶望させようとしやがって許せねえな」

     仁藤は左の中指に指輪をはめる。

    「力を貸せよ、キマイラ。俺の明日のためにも、ゲートのためにも、なによりお前の腹のためにもな」
    (元よりそういう契約だ。存分に我へ魔力を馳走するがよい)
    「皆まで言うな。腹八分目どころか胸焼けさせてやるよ」

     仁藤は構えをとりながら吠えた。

    「変身!」

     指輪をドライバー左のソケットに鍵のようにはめ込み、
     セット! 
     そして、回した。
     オープン!
     ビーストドライバーの檻『リベイションズドア』が開き、金色の獅子が象られたバックル『キマイラオーサー』が出現する。

    (我の力を使うがいい)

     キマイラは自分の魔力の一部をキマイラオーサーから魔法陣として解き放つ。
     L! I! O! N! ライオーン!
     仁藤が展開された金色の魔法陣を潜ると仁藤の全身を百獣の王であるライオンの力が包む。
     左肩にライオンの頭部が備えられた金と黒の全身にライオンを模したマスク。
     仁藤は古の魔法使い――仮面ライダービーストへと変身した。

    「さあ、食事の時間だ」

     ビーストは指輪装填剣『ダイスサーベル』を抜くと群がるファントムに飛び込んでいった。

    152 = 150 :

    すまない
    >>125でゲートの頃の記憶がないとか言わせちゃってるけど、人格が違うだけで記憶は普通にあったよな
    でなきゃ、一般社会にとけ込めないし

    153 :

    元ソムリエのファントムとか元デパート菓子売場担当のファントムとか、そのまま仕事続けてる奴いたな
    そういう元の人間の肩書き・才能を活かして絶望に追い込む話には感心したのに、だんだんただの怪物になってったのが残念
    設定めんどくさいからか

    154 :

    やりすぎるとエグくなるからTVじゃしにくかったのもあるんじゃないかな?
    遠慮なくやらかせるこのSSは実にいい。こういう話もありそうだって思える

    155 :

     仁藤を追いかけてきた名護はビーストに変身して戦う仁藤の姿に驚愕した。

    「彼はいったい……」
    「仁藤くんは魔法使いなんです。ゲートを絶望させるファントムから守るために戦う」

     後から来た凛子の説明に名護は「なるほど」と頷いた。

    「つまり、ファントムは人類の敵で魔法使いは戦士ということか」

     名護はファントム達に向かって歩き出す。

    「何をするつもりですか。相手は人間ではありません」

     凛子は慌てて名護を止めた。
     いくら名護が有名なバウンティハンターだとしても、それは相手が人間だから通用する話だ。
     相手は人外の怪物ファントム。対抗できるのは同じファントムの力を宿す魔法使いしかいない。
     いま、この場をどうにか出来るのはビーストだけだ、と凛子は名護に聞かせた。
     しかし名護は凛子の訴えを聞いてなお、歩こうとする。

    「無茶です! 言うことを聞いてください!」

     警察として民間人の被害を出すわけにはいかない。
     凛子は名護の前に立ち意志の強い瞳で対峙する。

    「いい眼をしている。君のような気の強い女性は嫌いではない。だが……」
     
     名護は左手の薬指にはめてある指輪に視線を移した。

    「俺には一人で十分だ」
    「何を言って」
    「安心しなさい。ああいった怪物相手はむしろ専門だ」
    「えっ?」

     専門とは、どういう意味だろう。
     困惑する凛子を置いて、名護は懐から得物を取り出す。
     それはナックルのような形をしたスタンガン『イクサナックル』だった。

    (銃もなしにそんなもので、どうやって……)

     そもそもファントムには銃すら通用しない。
     名護はイクサナックルを自分の掌に押し当てる。
     レ・デ・ィ……
     ナックルの電極部分『マルチエレクトロターミナル』が名護のバイタルデータを瞬時に解析し、無機質な電子音声が響く。

    「変身!」

     名護は勇ましく叫ぶと、腰に巻きついていたベルトのバックルに待機状態となったナックルを押し当てる。
     フィ・ス・ト・オ・ン……
     金色の鎧が現れ名護の体と重なる。
     瞬間、鎧は穢れのない美しい純白の色を帯びた。
     仮面ライダーイクサ。
     それが名護の纏った鎧の名だった。
     イクサとは『Intercept X Attacker』の略称であり、つまり『未知なる驚異に対する迎撃戦士システム』という意味である。

    「その命……神に返しなさい」

     イクサの仮面の下で名護はファントム達に告げた。

    156 = 155 :

    名護と仁藤は我が強いから早々に絡ませたかった
    書いてる自分もガシガシ、イベント起こさないとモチベーションがもたない

    157 :

    つまりライブ感か

    158 :

    イクサ来たー!

    160 :

    おとうやんは出ないのー?

    161 :

    ファンガイアとファントムの利害が衝突しての怪人同士の争いとかも見てみたい

    162 :

    そういえば、ファンガイアがゲート化するって事はあり得るのか?

    163 :

    >>161大牙さんいるから見れるかもよ……(期待)

    164 :

    「ガルルルウウウウウ!」

     雄叫びを上げて飛び込んだビーストは、着地と同時に目の前にいた一体のグールにサーベルを突き立てた。
     魔力を帯びたサーベルの刀身部『ハイオイドフェンサー』がグールの体を容易に貫く。

    「ぐるおおおおっ!」

     グールは耳障りな呻き声をあげると爆散した。
     爆炎の中からビーストの金色の魔法陣が現れる。
     それはビーストが倒したグールの魔力をキマイラが食べやすいように変換されたものだった。

    「まずは一品。味わえよ、キマイラ」

     魔法陣がキマイラオーサーに吸い込まれ、キマイラへ魔力が届けられる。
     ゴクッと喉を鳴らす音がした。キマイラが魔力を食った音だ。
     同時にキマイラと繋がっているビーストの体に活力がみなぎってくる。

    「これで今日の命は凌いだ。次は……」
    (仁藤、後ろだ)キマイラの警告が飛ぶ。

     ビーストは振り向きざまに襲いかかるグールの攻撃が届くより早くサーベルを薙いだ。

    「明日の命!」

     一瞬の光が走り、グールの体が両断される。グールは力なく膝をつくと魔法陣へと変換され、キマイラオーサーに送られた。

    「どんどんいくぜ! 食いだめだ!」

     ビーストが次の獲物に定めたグールへ目掛けて走る。
     野獣のようにしなやかで力強い脚が生みだす疾駆。
     ありえない程の短い時間でビーストは、グールに肉薄していた。

    「俺に喰われおおおお!」

     振り上げたサーベルで切り裂こうとする瞬間、激しい銃声が聞こえた。
     グールの全身に無数の穴が開き、倒れる。
     サーベルの切っ先が僅かにグールを当たるが、手応えはほとんどない。

    (俺が仕留め損ねた!?)
    (違う。お前が遅れをとったのだ)ビーストの疑問にキマイラが素早く答えた。

     ビーストは銃声のした方を首だけ動かして見る。
     そこには銃を構えたイクサが立っていた。
     イクサはグール達に向けて銃を連射する。
     銃口から弾丸が発射され、グール達にふりそそぐ。
     イクサは自分の視界に移される解析されたグール達の熱量のデータを見る。
     グールの持つエネルギーはイクサが倒してきた相手と比較するとかなり劣っていた。

    (これなら今の状態で問題ないな)

     分析を終えたイクサは悠然と歩きながらグリップに連結しているマガジンを押し込む。
     マガジンがグリップに収納されると同時に銀色の鞘のような物が飛び出し、更にそこから紅いブレードが伸びた。
     銃から剣へ、剣から銃へと変形するコンパチ武器『イクサカリバー』のカリバーモードだ。
     イクサは鍛え上げられた戦士の剣技でグールを次々と切り伏せていく。

    「うごおおおお!」

     まだ息があったのかグールの一体が呻き声をあげて立ち上がろうとする。
     イクサは刀身を押し込み、カリバーモードからガンモードに変形させた。

    「消えなさい」グールを見下ろしながら言い放ち、トリガーを引くイクサ。
     
     顔面に集中砲火をあびるグールは絶命の叫びを上げる間もなく起こしかけた体を倒し、そのまま動かなくなった。
     イクサの躊躇いのない攻撃にビーストは背筋に冷たいものを感じた。

    165 = 164 :

    乱戦は書けないから結局はあちらを立てるとこちらが立たずになってしまう

    166 :

    小説版キバの名護さん思い出してちょい怖くなった

    167 :

    ハードな作風がいい感じ

    168 = 164 :

    (仁藤、我の餌がとられておるぞ。早くしろ)
    「お、おう! まとめて喰ってやる!」

     キマイラの催促にビーストは右中指に草色の指輪をするとソケットにはめこんだ。
     カメレオ! ゴー!
     カッ! カッ! カッ! カメレオ!
     詠唱が終わると同時にビーストの右肩にカメレオンの顔を象った彫刻と共に草色のマントが出現する。
     キマイラの力の一部であるカメレオンの力を宿したビーストだ。
     ビーストは右肩のカメレオンの彫像をグールに向ける。すると、カメレオンの口から巻かれていた舌が一気に伸びた。

    「ベロオオッ!!」気合の叫びと一緒に右肩を二度三度振るビースト。

     変幻自在の動きを魅せる舌の鞭がグール達を打ち据え、蹴散らす。
     サーベルを主な武器として使うビーストにとって中距離から一方的にかつ纏めて攻撃が出来る鞭の恩恵は大きい。
     もちろん、遠くから攻撃するという点ではウィザードのソードガンやイクサの銃の方が優れている。
     そしてビーストも銃は持っている。しかも強力な銃だ。
     だがビーストの場合、銃を撃てば魔力弾の発射に伴いキマイラの魔力を消費してしまう。
     同時にそれはビーストである仁藤にも影響を与える。
     早い話、撃てば撃つほど腹が減ってくるのだ。
     キマイラの魔力は仁藤の命。
     雑魚のグール相手に余計な命は削りたくない。カメレオマントならば指輪の力を発動する分だけの魔力で済む。
     だから、ビーストがグールを殲滅する時にはカメレオマントを羽織ることが多い。

    「ベロロオオオオオッ!」

     ビーストはその場で回転して舌の鞭で自分を囲むグールをなぎ払った。
     爆散したグールが魔法陣に変わり、次々とキマイラオーサーに取り込まれる。

    「腹加減はどうだ、キマイラ?」

     サーベルの柄でキマイラオーサーを軽く叩くビースト。
     キマイラは挑発するように言った。

    (前菜ごときで我を満たしたつもりか?)
    「安心しろ。メインディッシュはこれからだ」

     ビーストはサーベルの先をバジリスクへと向けた。

    169 :

    乱戦は難しいよね
    だがかっこいい。面白いぜ

    170 :

    なるほどそれでカメレオ使用率が高いのか
    面白いよ

    172 :

    名護さんは仁藤の事情知らないからうっかりとどめ刺しちゃいそうだな

    173 :

    でも、これが終わった後ちゃんと説明すれば協力してくれそう?

    174 :

    ビーストは一応ダイスサーベルの先端から銃弾が撃てるらしい

    175 :

    「ライオンのお兄ちゃん、僕と遊んでくれるの?」

     バジリスクは剣を出現させるとビーストへ突進する。
     ビーストはサーベルで迎え撃った。
     互いの武器がぶつかり合い、ギィインという硬質の刃鳴りが辺りに響かせ、火花を散らせた。

    「それ!」

     バジリスクは子供が木の枝をもってなりきり遊びをするかのように、めちゃくちゃに剣を振る。

    「それそれ!」
     
     とにかく振る。息つく暇もなく振る。
     一つの攻撃を捌いたら次の攻撃が、その攻撃を捌いたらまた次の攻撃が。
     休みのない一方的な攻撃にビーストは防戦一方だった。
     ビーストとバジリスクは鍔迫り合う。
     バジリスクは交差する剣とサーベルの間からビーストの顔を覗いた。

    「強いね、お兄ちゃん。毎回やられる敵じゃなくて、途中でやられる幹部くらいには」
    「俺が負けるみたいな言い方だな」

     生意気な子供みたいな口を叩くバジリスクにビーストはイラっとした。
     だが、バジリスクはビーストの怒りを微塵も気にせず「うん!」と明るく答えた。
     バジリスクは愛らしい声で続ける。

    「だってさ、僕はもっと強いから」それを証明するかのように力強く剣を押し込むバジリスク。
    「ふざけやがって。てめえは絶対に喰ってやる」

     ビーストは素早く一歩引いて、サーベルの鍔に埋め込まれた『ビーストダイス』の横の円盤を回した。
     魔力を増幅させる紅い魔法石コアクリスタルを埋め込んだ神秘的なダイスがロールする。
     ビーストダイスはいかなる魔法の干渉を受け付けない完全な博打だ。
     やり直しは効かない。
     そこがダイスサーベルの面白い所ではあるのだが、やっぱり出た目が低い時は嫌なものだ。
     特に1の目が出た時は最悪だ。
     自分の命を削った一撃だというのに1。自分の命の価値がこれっぽっちしかないと宣告された気分になってしまう。
     ビーストはカメレオンの指輪をサーベルの方のキマイラオーサーへ装填して魔力を送り込んだ。
     フォー!
     ダイスの回転が止まり、コアクリスタルの数つまり出た目は4だった。

    (中の上……まあまあか)内心ホッとした。

     ビーストはサーベルを構える。
     コアクリスタルによって増強した魔力が刀身を伝い、剣先『パストラルフルール』で収束され、魔力弾が精製される。
     カメレオ! セイバーストライク!
     呪文の発動と同時にビーストはサーベルをフルスイングした。
     魔法陣が展開されるとそこからカメレオンの形をした魔力弾が4発放たれる。
     カメレオンの魔力弾は四肢を動かし素早く地を這うとバジリスクへと襲いかかった。
     バジリスクは剣で一匹のカメレオンを叩き落とすが、残りの3匹が体に組みつき爆発した。

    「ぐう……」

     バジリスクは苦悶の声をあげる。それなりに効果はあったようだ。

    176 = 175 :

     ビーストは素早くカメレオンの舌を伸ばした。
     舌が的確にバジリスクの手に巻きつく。
     ビーストは右脇をしっかりと閉めて舌を巻き戻そうとする。

    「さっさと……その剣を離せよ」足に力をいれて踏ん張るビースト。
    「嫌だ……よ」引っ張られまいと巻きつかれた腕を引くバジリスク。

     舌の鞭がしなり、ギリギリと音を鳴らす。
     その時だった。イクサの銃撃が割り込んできた。
     銃口が火を吹き、純銀を数%含んだ弾丸シルバーバレットがバジリスクに炸裂した。

    「おい! 横から割り込んで俺の獲物をつまみ食いとかいい度胸だな!」

     自分の横に並ぶ白い鎧に向かってビーストは吠えた。食事を邪魔されるのはビーストにとって一番腹が立つことだ。

    「君はそのまま奴を抑えていなさい」
    「はあ? お前、何様のつもり」

     イクサはビーストの抗議を無視すると銃を剣に変えて、バジリスクに斬りかかった。
     紅いエッジがバジリスクの肢体を切り刻んでいく。

    「痛い……なあ!」

     一方的に攻撃されたことに激昂したバジリスクは半ば力任せに剣を振った。
     ビーストは舌の鞭ごと転がされ、斬りつけられたイクサは数歩下がった。

    「あっ」バジリスクは自分の腕を見ると舌の拘束が解けていることに気付いた。

     最前の攻撃でどうやら振りほどいたようだ。
     それなら遠慮はいらない。
     バジリスクは先ほどのお返しとばかりにイクサを攻撃する。
     イクサは剣を避けるとバジリスクへ反撃した。
     遅い。ビーストのような獣じみた速さがない。
     バジリスクはイクサの一撃を余裕で受け止める。
     軽い。ビーストと鍔迫り合った時ほどの抵抗を、剣を握る手に感じない。
     バジリスクは確信する。
     この白いお兄ちゃんはライオンのお兄ちゃんより弱い。
     そして僕はライオンのお兄ちゃんより強い。
     つまり僕は負けない。

    「弱いね、お兄ちゃん」

     バジリスクはイクサを蹴り飛ばして嘲笑した。
     そこから一太刀、剣を横に薙いだ。
     ブオンと風を斬る音がすると同時にイクサの白い外装に火花が起こり、煙が上がる。
     イクサは膝をついた。
     その様子を見て、ビーストは毒づく。

    「人に命令する割には大したことねえじゃねーか。やっぱり俺が喰うしかないな」

     ビーストはサーベルを構えなおしバジリスクへ向かう。
     しかし、それを遮るようにイクサはゆっくりと立ち上がった。
     イクサはビーストをしばらく見て、続いてバジリスクへ視線を移す。
     イクサが静かに呟いた。

    「君達は実に愚かだ」

     尊大な物言いだった。
     しかし、その言葉は絶対に覆らない事実のように聞こえた。
     イクサは教えを説くように続ける。

    「相手の力量も測れない。相手がどういった主旨を以て行動しているかも考えない。愚かしいことだ」
    「どういう意味だよ?」
    「それを今から見せてあげよう」

     イクサは即座に戦闘コマンドを入力する。

    (戦闘モードをSAVEからBURSTへ移行。並びに現時点までの取得データを元に迎撃プランを再構築)

     イクサのメインシステムであるイクサナックルは忠実にそれを実行した。
     白いマスクにある金色の十字架『クロスシールド』が展開され、紅い目が現れる。

    「イクサ……爆現!」

     イクサは出力を抑えていたセーブモードからバーストモードへ形態を変えた。
     全身にそれまでと比べ物にならない量のエネルギーが流れ込み、膨大な熱量が放出される。

    「うおっ!」

     体を焼かれそうな圧倒的な熱の奔流にビーストは思わずマントを翻す。見るとイクサ周辺の緑の芝生が焼け焦げていた。

    177 = 175 :

     イクサは勝利を確信しているかのように、ゆっくりとバジリスクに向かって歩く。
     バジリスクはイクサの醸し出す気迫に圧されながらも剣を振った。
     だが、剣はイクサの装甲に届かなかった。
     バジリスクの手首が既にイクサの手で握られていたからだ。
     万力のような力でバジリスクの手を締め上げるとイクサは空いた手にある剣でバジリスクを斬る。
     スピードもパワーも直前のイクサと段違いだった。

    「つえぇ!」
     
     ビーストはそう言うしかなかった。それほどに圧倒的だ。
     当然といえば当然だった。
     先ほどのイクサはセーブモード。今のバーストモードと比較して、6割程度の出力で稼働していたのだ。
     装着者である名護にとってセーブモードの戦いは慣らし運転でしかなかった。
     イクサは何度も剣を打ち付ける。

    「悔いなさい。自分の愚かしさを」

     イクサは銃を浴びせかける。

    「悔いなさい。自分の弱さを」

     イクサはベルトからイクサナックルを取り外し、それでバジリスクの腹を殴る。
     強化されたイクサの拳に、バジリスクは声にならない悲鳴を上げて膝をついた。
     イクサはバジリスクを紅い目で見下ろす。
     そして、バジリスクの顔面にブーツの裏を叩き込んだ。
     蹴りとばされたバジリスクにイクサは言った。

    「誇りに思いなさい。俺の相手をしたことを」

     イクサはナックルをベルトに再装着させると右のフエッスロットから金色のフエッスルを取り出した。
     トドメの一撃。
     それを感じ取ったビーストはイクサの腕に舌の鞭を巻きつかせた。

    「君、何をする」
    「つまみ食いは許してやる。だけどな、その勢いで全部平らげようとするなよ」
    「何か問題でもあるのか?」
    「大有りだ。さっきも言っただろ、そいつは俺の獲物だ」
    「……わかった」

     イクサはフエッスルをスロットへ戻した。

    「君の戦士つぃての実力を見せてもらう」
    「戦士じゃなくて魔法使いだけどな」

     ビーストは舌の鞭を解くと姿を消した。
     イクサは一瞬、驚くが冷静に索敵コマンドを実行する。
     熱センサーや厚さ5mの鉄板の向こう側すら透視するスーパーXレイを作動させてビーストを探すが反応はなく、視界には「LOST」の文字が浮かんだ。

    (なるほど。確かに魔法だ)

    178 :

    キバ側もウィザード側もかっこいいな
    しかし仁藤も名護さんもキャラが濃い

    179 :

    名護さんが成長してらっしゃる
    やっぱり名護さんは最高です!!

    180 :

    バーストモードってこんなに強そうだったっけ、やたら格好いい
    本編後の名護さんは素直に頼りになるな

    181 :

    >>180
    初登場時すげえ迫力あった
    っていうかなっただけでファンガイアにダメージ与えてた

    183 :

     バジリスクは何かを感じる。
     それは自分を狙う野獣の視線だった。
     視線は背中だけじゃなくて全身に感じた。
     まるで体が長い舌で舐め回されたかのような不快感でざわつく。
     獣はすぐそこにいる。いるはずだ。
     気配は確かにある。だが、姿が見えない。
     バジリスクは辺りを見回し警戒する。
     声を押し殺し、小さな異変も見逃さないといった様子だ。
     変化はなかった。
     獣は息を潜めている。バジリスクを確実に食うためにジワリジワリと隙をうかがっていた。
     どれだけの時間が経ったのだろうか。
     バジリスクはわずかに顎を上げて空を見上げた。
     青い―ということは、まだそこまで時間は経っていない。
     顎を元の位置に戻そうとした時、景色の中から何かが飛び出してきた。
     それは目にも止まらぬ速さでバジリスクの体に巻きつく。
     そのすぐ後のことだ。
     バジリスクの体は宙に舞った。
     バジリスクが自分の体を舌の鞭に拘束され、空高く放り投げられたことに気付いたのは芝生にビーストの金色の体を見た時だった。

    「余所見したてめえの負けだ」

     ビーストは天に向かって咆哮する。

    「メインディッシュだ!」

     左中指のビーストリングをドライバー左のソケットにはめ込む。
     キックストライク!

    「そこから……一味加える!」

     今度は右中指のカメレオリングを右のソケットにはめ込む。
     ゴー! カメレオ! ミックス!
     詠唱が終わるとビーストの右足に魔力が集中し、マント同様のカメレオンの顔が現れる。

    「よ~く狙って……ベロオッ!」

     ビーストの合図と共に右足の魔力で造られたカメレオンから舌が伸びた。
     舌は鞭というより槍の突きのように風を裂きながら直進するとバジリスクを貫く。
     そのままカメレオンは舌を巻き戻した。
     バジリスクの体が地上へ急速に引き戻されていく。
     落下先には大口を開けたカメレオンが待っていた。

    「ベロロオオオオオオオオオオオオオ!」

     ビーストは迫るバジリスクに高く上げた右足のカメレオンを打ちつけた。
     必殺のキック『ストライクビースト・カメレオミックス』だ。
     強烈な魔力の一撃を食らったバジリスクは爆散した。
     バジリスクの魔力は魔法陣に変換されて、キマイラオーサーへ飲み込まれる。
     ビーストの全身にグールを捕食した時以上の力が湧いてくる。
     こいつは中々の上玉。苦労して食った甲斐があったものだ。
     美味いものを食った後は気分がいい。

    「ごっつぁん!」

     ビーストは意気揚々と両手を「ごちそうさま」の形に重ねた。

    184 = 183 :

     食事を終えたビーストは変身を解除し、仁藤へ戻った。

    (下僕の勤め、ご苦労だった)

     仁藤の頭の中でキマイラが珍しくねぎらいの言葉を掛ける。
     それは今回の食事はそれなりに満足したという証の言葉でもあった。

    (お前が繋いだ命。主である我を楽しませることに精々使うがいい)
    (そりゃあどうも)

     要するに腹が減るまでは好きにしろということだ。
     なんつーか素直じゃねえよな。もっと分かりやすく言えよ。
     そんなことを思っていると近くで機械音が鳴った。
     イクサが変身を解除した音だ。
     変身した時とは逆に白い鎧が離れ、金色に変わるとイクサベルトのコアに収納される。
     イクサの立っている場所に名護が立っていた。

    「おっさんだったか。まっ、そんな気はしてたけどな」

     あの上から物を言う態度、とまでは言わなかった。

    「おっさんではない。君は年上を敬う心がないのか」
    「んなことは、どうでもいいんだよ」名護の見下したような言葉に仁藤は苛立たしげに返した。
    「ああ、全くだ。今は君の相手をしている場合ではない」
    「なっ!」

     名護はスタスタと仁藤の横を通り過ぎると芝生に座り込んでしまっている奏美に手を差し伸べた。

    「大丈夫ですか?」

     人を安心させる慈愛の笑みを名護は浮かべる。
     名護は奏美に力強く言って聞かせる。

    「怪物はもういない。安心しなさい」
    「は、はい……」

     奏美は少し顔を逸らして名護の手をとった。

    「君も大丈夫かな?」
     
     奏美を立たせた名護は次に地面に突っ伏している大地に歩みよった。

    「少し我慢しなさい」

     そう言って名護は大地の体を仰向けにする。
     次に大地の背中に手を滑り込ませ、ゆっくりと大地の上半身を起き上がらせた。
     まるで病院のベッドだ。

    「っ!?」大地は顔を歪ませる。
    「その様子だと彼女を守ったんだな」
    「はい……」
    「こんな細身で……無謀でしかないな」
    「す、すみません」
    「だが、君のやったことは簡単にできることではない。君はとても勇敢だ。誇りなさい」
    「あ、ありがとうございます」

     大地はためらいがちだったが、礼を述べた。
     名護は朗らかな笑顔で返した。

    「何だ……あれ! 何だ……あれ!」

     事の一部始終を見ていた仁藤はそう叫ぶしかなかった。

    185 = 183 :

    カメレオストライクは最初、魔法陣に舌を伸ばして振り子運動からのキックにしようとした
    あとフェアリーフェンサーエフが届いたんで更新ペースは遅くなる

    186 :

    名護さんは最高です!

    187 :

    >>185
    サガと共演した時に披露されると面白そう

    188 :

    >>185
    井上敏樹目的か

    190 :

    ベルデのファイナルベントを真似してもいいんじゃない

    192 :

    魔皇石で指輪をつくるのか……。

    193 :

     面影堂にはいつもの面々に加えてゲートの奏美、そして名護がいた。
     名護はソファーに座り瞬平の淹れたコーヒーを静かに飲んでいる。
     骨董品に囲まれた面影堂の埃っぽい店内が妙に爽やかな空気で満ちる。
     名護の動きには気品があった。
     だが、堅物そうな感じがする。
     それが晴人の名護への第一印象だった。

    「……」見知らぬ男の来訪にコヨミは少し強ばった顔で晴人の後ろで名護を見ている。
    「真面目そうな人ですね」瞬平は名護を好意的に捉えた。
    「俺たちの中ではいなかったタイプの人間だな」面影堂の店主である輪島の声はどちらでもない感想を漏らした。

     晴人はプレーンシュガーのドーナッツを食べながら「誰、あの人?」という意味を込めて名護を顎で指すと、名護と一緒に来た仁藤へ視線を投げた。
     客には見えない。かと言ってゲートにも見えない。
     大抵のゲートはファントムに襲われたことで動揺していることがほとんどだが、名護の顔から動揺の色は伺えない。
     あまりにも堂々としている。
     晴人の視線を柱に背を預けている仁藤は「知るか!」と言いたげに顔を逸した。
     仁藤と名護の間に何かあった事を想像するのは容易だった。
     いかにも堅そうな名護と自由奔放に生きている仁藤では反りが合わなそうだからだ。
     晴人が視線を名護に戻すと凛子から質問を受けているところだった。

    「名護さん、単刀直入に聞きます。あなたは何者ですか?」
    「俺はファンガイアに対抗する組織『素晴らしき青空の会』に所属する戦士だ」
    「ファンガイア」その名前を瞬平は苦々しく口にした。
    「ん、君はファンガイアを知っているのか?」
    「は、はい。じ」
    「ほんの少しだけね」

     瞬平が何かを言う前に晴人がポーカーフェイスで軽く返す。
     正直者な瞬平のことだ。自分が出会った笛の魔法使いのことも喋ってしまうかもしれない。
     名護は何処か見透かしたような目で晴人を見ると凛子に言った。

    「君は刑事だな?」
    「はい、そうですけど。それが何か?」
    「そうなると国家安全局0課が情報の出所か。警察でファンガイアの情報を扱っているのはそこしかないからな」
    「0課をご存知なのですか?」
    「警察の上層部にも青空の会のメンバーがいる。もちろんに国安0課にもだ」
    「随分と大きな組織なんだな。青空の会っていうのは」
    「青空の会は創設してから活動を数十年続けている。そして、その規模は世界だ。ファンガイアは世界中にいるからな」
    「そんなにいるのか」
    「当然、警察の知らない情報もある」

     晴人は木崎が言っていた「ごく僅かな資料」の意味を理解した。
     おそらくファンガイアの情報は青空の会がほぼ独占しているのだろう。
     そして、警察の情報は青空の会に流れている。
     消失事件のことも知られているだろう。
     凛子はまた別の質問を名護にする。

    「あなたの素性は分かりました。では、あの白い姿は一体」
    「随分と派手な格好だったよな。おまけにファントムとも戦える」
     
     それまで沈黙を保っていた仁藤が悪態混じりの言葉を吐いた。
     ファントムとも戦える。
     仁藤の一言に名護の変身を見てない晴人たちは驚きの顔を浮かべる。
     晴人は指輪をはめるとコヨミを庇うように半歩前に出た。
     そんな晴人の警戒を知ってか知らずか名護は優雅にコーヒーを飲んで答える。

    「あれはイクサ。青空の会がファンガイアを狩るために作り出した力だ」
    「狩る? ファンガイアは5年前の内乱で人間と共存する道を選んだんだろ?」

     少なくとも晴人が木崎から聞いた話ではそうだった。
     後に凛子が持ってきた0課の資料には、ファンガイアのライフエナジーに変わる新しいエネルギーを開発したことで人間からライフエナジーを 吸収する必要がなくなったとあった。

    「0課の資料にはそこまであるということか。確かに君の言うとおりファンガイアは人間と共存の道を辿っている。だが」
    「例外があるってことか」
    「ファンガイアは有史以前より闇の住人として存在してきた。彼らは人間を超越した力を持っている。故に自分たちがこの世界で最も優れ、高貴な存在だと自負してきた」
    「傲慢な奴らだな。何様のつもりだよ」感情的に吐き捨てる仁藤。
    「読めてきた。そんなプライドのお高いファンガイア様は下賎な人間との共存なんてごめんってことか」芝居がかった口調で喋る晴人。
    「そういった人間との共存を良しとしないファンガイアの右翼……強硬派とも言える集団。今の青空の会は強硬派のファンガイアを狩ることが主な目的だ」
    「奏美さんや消失事件の被害者を襲ったのは強硬派のファンガイアだったんですね」瞬平が納得したように頷く。
    「あんたはその強硬派を追って?」
    「そうだ。そして、この街で起きている消失事件はファンガイアの強硬派の中でも特に過激な連中によるものだ」

     ファンガイアを何体も狩ってきた名護の経験がそう断言させた。
     ここまで簡単に嗅ぎつけられるような真似をするのは、それこそ人間を餌としか認識してない極右のファンガイアのすることだ。
     同時にそれは強硬派の中心人物が鳥居坂に来ていることの証明だった。

    「5年前の戦いで空席となったファンガイアの頂点に立つ『チェックメイト・フォー』の一つ、ルーク。そこについたファンガイアが強硬派のリーダーだ」

    194 = 193 :

    今回の投下は説明ばっかで書いててつまらなかったんで妄想ネタを

     今から40年ほど前に警察である一つのプロジェクトが発足された。
    『マスクドライダー計画』
     いずれ人類に来る未曾有の危機に対抗するための強化外装装着システム『マスクドライダーシステム』の開発をするためのプロジェクトだ。
     ある時、そのデータが外部へ流れた。
     正確に言うと流された。
     加賀美陸という一人の男の手によって。
     マスクドライダーシステムの技術を提供した『彼ら』を信用していなかった陸は密かにデータを流していた。
     万が一、システムに仕込んだ『赤い靴』が失敗に終わった時の予防策だった。
     どんな思惑があってもいい。どんな形であってもいい。
    『彼ら』を滅ぼす力の誕生を陸は望んだ。
     ライダーシステムのデータはおおよそ人類では手が出せないような未知の塊だった。
     だが、陸は賭けた。これを解析できる天才が現れることに。
     やがて時が経ち、そのデータの一部を解析した天才が現れた。
     イクサの開発者である。
     彼女は独自の理論の下でライダーシステムを開発した。
     それがイクサだった。

     

    195 :

    おお、こういう裏設定的なのは燃えるな

    196 :

    いいね

    197 :

    イクサの開発者はめぐみんのおばあちゃんだったな

    198 :


    …てことは、その辺のデータ関係なしでG-3系列は作られた可能性が…?

    199 :

    バースとかメダルシステム以外はドクターも参考にしてたりして

    200 :

    G3シリーズは小沢さんが警視庁にいたころ開発したもので、
    その発想元は警察を悩ませていたグロンギと戦える戦力だったクウガ。
    それをパワードスーツみたいな感じで再現しようとして生まれたんじゃなかったっけ。
    ならZECT、ひいてはワームとはルーツ違いだから無関係になるんじゃないかと。


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