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    元スレ晴人「宙に舞う牙」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
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    201 :

    パワードスーツ

    Gシリーズ(限りなく人の体型に近い強化装甲)

    マスクドライダーシステム(ワーム技術を元にした変身機能、装着者選別あり)

    イクサ(人の手によって人が扱えるように作られたシステム)

    バース(セルメダル系機能付加)
    とかどーよと思ったけど時代があわんな
    Gシリーズは別系統で考えるべきか

    202 :

    陸の流したデータが青空の会だけじゃなくてスマートブレインやBOARDが手に入れたという可能性もあるかもしれん

    203 :

    加賀美さん警視総監だったから情報流せるんじゃね?とか思ったけど、
    そもそもアギトの頃は別な人が警視総監だったような気がして来た
    もしくは、別な方向から新たな技術が生まれることを期待して情報は流さなかった、って可能性もあり得るか

    204 :


    本郷

    205 :

    そういえば龍騎のライダーのスペックは平成ライダーのなかでも上位くらすだんだよな。それを十年単位で作った神崎
    天才すぎだろ

    206 :

    MOVIE大戦に名護さん出ててワロタ

    207 :

    このクロスもしかして、次狼と山本さんの夢のツーショットが見られるんじゃないか

    209 :

     スーツを着た青年は暗い道路脇を歩いていた。手には鞄とスーパーで今日の夕飯に使う食材のはいったビニール袋。
     青年は自宅のアパートへ帰る途中だった。
     就職氷河期と言われる昨今、いくつもの会社に落ちながらようやく入った職場。
     初めの数ヶ月はけしていい思い出とは言えなかった。妙にプライドの高い上司に見下されながらの仕事。苦痛だった。
     何度も嫌気がさして会社を辞めたくなったが、その度に努力し結果に繋げて、業績という形で自分の価値を上司に見せつけてやると次第に認めてもらえるようになった。
     仕事帰りの飲みに誘われることも増えて、入社して二年になる今では上司のことを「この人はプライドが高くてめんどくさい所もあるけど良い人だ」と思えるようなった。
     やがて角を曲がるとアパートが見えてくる。

    (早く飯にするか。それで風呂入って、とっとと寝よ)

     頭の中で予定を立てながら青年がそのまま次の一歩を踏み出そうとした。
     すると突然、背中に鋭い痛みが走った。

    「うっ!」
     
     短く鋭い叫び声の後、意識が一瞬で遠のいた。
     青年は頭から突っ込むようにコンクリートの地面に倒れていく。
     ゴンッと硬いものがぶつかる音はしなかった。代わりにガラスが砕けるような音がすると青年の全身が砕けて散った。
     青年の立っていた場所には半透明な牙が浮かんでいる。
     やがて、暗闇の中から若者の姿をしたファンガイアが現れて、主の消えたスーツを見下ろした。
     若い分、活力のあるライフエナジーだ。だが、それだけで無難だ。味気がない。
     食らった命が全身に巡るのを感じながらファンガイアは食事の評価を下した。
     餌の価値しかない人間が長命なファンガイアである自分の一時の食事すら満足させられない。
     どうしようもない。やはり、拾い食いはするものじゃない。
     二百年ほど前なら自分の存在に畏敬し、己からファンガイアの糧となる光栄な使命を負った人間すらいたのに嘆かわしい。
     そんな風に過去を振り買っていると「人目についちゃうよ」と誰かの声が聞こえた。
     声の方を向くと帽子をかぶった若者がブロック塀に背中をあずけていた。
     見られた? だから、どうした。食えばいい。
     どうせ餌は腐るほどある。一人二人、間引いてもなにも問題ない。ただうるさい人間社会が少し騒ぐだけだ。

    「ちょっと待って。僕は君と話をしに来たんだ」ファンガイアが宙に舞う牙を出すと帽子の若者は手を出して制止した。
    「話? あなたは誰ですか?」
    「君と同じバケモノさ……今はね」
     
     帽子の若者がその姿をエメラルドグリーンのバケモノ、グレムリンへと変える。
     ファンガイアはグレムリンの中で渦巻く魔力の波動を感じ取った。

    「ファントム」
    「へえ、知っているんだ」
    「下級のファンガイアならともかく優秀なファンガイアならば常識ですよ。なにせ、その名前はファンガイアが与えてあげたものですし」
    「そうなんだ。随分とひどい名前だよね、亡霊だなんて」
    「侮蔑の意味が込められてますから。絶望して死んだ弱い人間の残りカスにはピッタリじゃないですか」
    「残りカス……」

     グレムリンは目に当たる幾重のスリットが闇の中で怪しく光らせる。
     表情が分からないにも関わらずファンガイアはグレムリン――ソラの表情を見透かしているかのように薄く笑った。

    210 :

    これはいい敏樹節

    211 :

    ファンガイアの恐ろしさよな、この空気
    実にいい

    212 :

    小説版キバでは名護イクサに狩られる側のファンガイアにこんな回想入ってたな

    213 :

    「それでファントムが何の用ですか?」
    「君たち、バイオリンの女の人を狙っているでしょ? あれ、やめて欲しいんだ。彼女は僕らの獲物だからね」
    「ファントムが仲間を増やそうとするなんて意外ですね。やっぱり人間を超えた力を持っていても、元が人間だから群れなくちゃいけないんですか?」
    「……群れているのは君たちも同じでしょ」

     慇懃無礼な態度を崩さないファンガイアにグレムリンの人間だった部分が、その言葉を吐き捨てさせた。
     だが、ファンガイアはソラの罵りに全く意に介さず返す。

    「ファンガイアの集団を群れなどと動物的な表現をしないでください。ファンガイアの掟は力の掟。支配するか、されるか。二つに一つ。それだけです」
    (そんな発想こそ動物的だね)言葉にはしなかった。こういった手合いは何を言っても無駄だからだ。
    「でも、まあ……譲ってもいいですよ。ただし、僕らの目的が終わってからですけど」
    「目的って、さっきみたいに人を襲うことかい? それじゃあ意味ないんだ」

     ファンガイアが人を襲うのは一瞬の出来事だ。
     どこからともなく宙に舞う牙が出現し、人間に突き刺さり、命を吸い出す。
     襲われた人間は何が起きたかも分からず死んでいく。
     それでは新たなファントムが生み出せない。ゲートが死の恐怖で絶望する暇すらないからだ。

    「死体からファントムは生まれないんだよ」

     正直に言ってしまえば、新たなファントムを生み出すことに興味はない。
     どれだけファントムが生まれても自分にとっては他人でしかない。
     だが、目の前にいる傲慢なバケモノに譲るのは癪だ。
     グレムリンは出血の名を冠した2本の刀『ラプチャー』を出現させるとファンガイアに振り下ろした。
     けたたましい音が夜の闇に響く。
     瞬間、グレムリンの手に痺れが走った。硬いものを叩いたような感覚。
     見るとラプチャーで切り裂いているはずの若者の肩が腕に掛けてファンガイアのものへと変化していた。

    「残りカスが調子に乗るな」

     ファンガイアの口調に恐ろしいまでの冷たさと荒々しさが帯びた。
     人間の体とファンガイアの片腕というアンバランスな姿をした若者は、本来の自分である方の腕から衝撃波を放った。
     しかし、既にそこにグレムリンはいない。

    「クフフ……」

     ファンガイアの耳に粘つくような嫌な笑い声がはりつくと衝撃波によってえぐれた道路からグレムリンが顔だけ出す。
     物体をすり抜けられるグレムリンの能力だ。
     それを見てファンガイアは楽しそうに笑った。

    「絶望して生まれたファントムを絶望させるというのも中々面白そうだ」

     荒々しい口調のまま若者の顔に色鮮やかな模様が浮かぶ。
     全身が高貴なる闇の力で満たされていく。
     醜い人間の皮を捨てて、本来の自分であるファンガイアの姿へと戻る。
     この高揚感がたまらなく心地いい。
     昂ぶりのままにファンガイアの指を鳴らした。
     その時、後ろで何かが倒れる音がした。
     そこには制服を着た少女が立っていた。すぐ傍には自転車が倒れている。
     単にこの道が帰り道だったか、グレムリンの攻撃を受けた時の音を聞きつけてか。
     どちらにせよ少女の目にはエメラルドのバケモノと異形の片腕をもつ若者が対峙しているという現実だけがある。
     若者は無言で少女に近づき「無粋だな。消えろ」とだけ言うと異形の手で少女の首を絞めると宙に舞う牙を突き立てた。
     少女の体の色素が薄くなり透明になる。
     直後、異形の腕は容赦なく制服を着せたガラス像を握り潰した。
     若者は異形の手を人間の手に戻した。

    「やめましょう。気が削がれました」
    「……」口調が元に戻るファンガイアを怪しみながらグレムリンはソラへと戻った。
    「僕らの目的はあの女を喰うことではありません。重要なのは音楽ですよ。この街に眠る『ヘルズ・ゲート』を開放するための音楽」
    「ヘルズ・ゲート……何それ?」
    「あなたみたいなバケモノが知ることではありません」ファンガイアは邪悪な笑みを浮かべて、グレムリンの横をゆっくりと通り過ぎていった。
     ・
     ・
     ・
     銀色のシザーが走り、黒い髪がはらりと落ちる。
     グレムリンは髪の生えた生首のマネキン――カットウィッグの髪を整えながら思考していた。
     目的を果たした後ならゲートを譲ると言っていたが、どういう意味なのだろう。
     ゲートに絶望されて、ファントムを生み出されては困る事情があるのだろうか。
     それにヘルズ・ゲートとは一体なんなのか。
     ヘルズ・ゲート……地獄門というからには物騒な代物には間違いない。
     わからないことが多くて頭がグチャグチャになりそうだ。

    「何か知っていませんか?」

     気晴らしにソラとしての営業スマイルを浮かべながらマネキンに話しかけてみる。
     もちろんマネキンは何も答えない。
     グレムリンはカットを続ける。
     やがて、それまで使っていたシザーをトレイに置き、仕上げ用に使うシザーを手にとった。
     トレイに置かれたシザーは赤く染まっている。マネキンが刺さった台の近くで首のない女性の体が血だまり沈んでいた。

    214 = 213 :

    殺されるだけの役目の人間に>>209みたいに背景は必要なのか
    それとも殺されるだけなんだからサクっと殺した方がいいのか
    どっちがいいんだろうね

    215 :

    本編ではできないえぐさ
    面白い、すごく

    ほんの少しでも首を突っ込んだ話の方が、死に対する絶望や驚きも大きくて面白いと思う

    216 :

    ちょっとしたキャラのバックグラウンドが垣間見えた方が恐怖感を演出できると思う
    しかし今回のファントムVSファンガイアはいい見所だった
    次回更新も期待して待ってます

    217 :

    何で上げないんだ

    218 :

    ファントムの由来はファントムペイン(幻肢痛)だそうです

    219 :

    乙ー描写が何となく小説敏樹っぽくていいな。

    >>218
    それはあくまで劇外の由来で劇中ではSS中と同じと解釈してもいいんじゃない?

    220 :

     パッションピンクの可愛らしい車を中心に旗と木製のテーブルとイス。そして、甘い香りのする色とりどりの揚げ菓子。
     小さなカフェがそこにあった。
     鳥居坂に住む人間なら一度は見かけたことはある移動式ドーナツショップ『はんぐり~』は今日も休まず営業中のようだ。
     晴人が車に近づくと設けられた販売カウンターから車と同じ色をしたエプロンをつけた男が顔を出す。店長だ。

    「いらっしゃ~い、ハルくん。そろそろ来ると思ってたわよ」
    「三時のおやつには、はんぐり~……ってね」
    「今日はうちで? それともお持ち帰り?」
    「天気がいいから、こっちで」
    「そう。ところで、この新作」
    「プレーンシュガー、買えるだけ」店長自慢の新商品が披露されるより早く、晴人はカウンターに五百円硬貨を置くとお気に入りを注文した。
    「もう、また~?」

     店長はがっくりと肩を落とす。こっちが出す前に潰すのは反則だ。
     プレーンシュガーしか頼まない常連。
     別にそれが悪いとは言わないが、作って売る側としてはやっぱり他のドーナツの味も知ってほしい。
     好きだからなんだろうけど、これだけ毎回推しても頑なにプレーンシュガーしか頼まないのはちょっと変わっていると思う。

    「……ねえ、ハルくん。どうしてプレーンシュガーばっかりなの? たまには新作食べてくれてもいいじゃない。すっごく美味しいんだから」恨み言混じりに呟いた。
    「店長の腕は信用しているさ。プレーンシュガーがなによりの証明だからな」
    「あら、お上手。それに免じて今日は引き下がってあげる。でも、若いうちからそんなにドーナツばかり食べていたら糖尿病になっちゃうわよ」
    「それって体験談? 新作つくって試食ばっかしてたら……みたいな」晴人は悪戯っぽく笑ってからかった。
    「そんなわけないでしょ! 私はいたって健康よ。体は資本だもの。お肌と同じくらい気を使っているんだから」

     自慢げに頬を突き出す店長。「気をつかっている」の言葉通りシミ一つない綺麗な肌だった。
     晴人はドーナツの入った袋と紙皿を受け取りイスに座るとプレーンシュガーをかじった。

    (どうしてプレーンシュガーばっかり頼むのか……か)
     
     プレーンシュガーの生地のもっちりとした食感を楽しみながら晴人は店長の言葉を思い出す。
     きっかけは子供の頃に起こった出来事だった。
     ・
     ・
     ・
     家族三人で出かけた帰り道、その日は土砂降りの雨だった。
     ワイパーが忙しなく動いてフロントガラスを拭くが、あっという間にその上から大量の雨粒が落ちてくる。夜ということもあって視界はかなり悪かった。
     お母さん、まだつかないの?
     後部座席に座る幼い晴人は退屈そうに愚痴った。

    「晴人、わがまま言わないの」

     助手席の母が嗜めると晴人は少し不貞腐れた顔をしてプレーンシュガーのドーナツをかじった。それを見て、母は優しく笑った。
     そんな妻と息子のやり取りを横目で見ながら、運転席の父もまた小さく笑みを浮かべた。
     操真晴人は優しい両親のいる幸せな子供だった。
     しばらく車を運転しているとフロントガラス越しの景色に四角い何かが浮かび上がった。
     次に見えたのは目を覆いたくなるほどの強い光。
     同時にうるさすぎる音が聞こえた。
     突っ込んでくるトラック。それが一家の見た光景だった。
     父は反射的にブレーキを踏んだが既に遅かった。
     一家を乗せた小さな車はそれの何倍もの大きさと重さを持つ鉄の塊に吹っ飛ばされた。
     晴人は割れたガラスが飛んできて自分の顔を切り裂く鋭い痛みも、全身が叩きつけられる激しい痛みも、衝撃で自分が食べたプレーンシュガーを嘔吐しそうになる不快感も、どれも感じる間もなく意識が暗闇の底に沈んでいった。
     操真晴人は交通事故にあった。
     助手席にいた晴人は辛うじて軽傷で済んだ。しかし、両親は違った。
     病院で意識を取り戻した晴人が見たのは、変わり果てた両親の姿だった。
     全身を包帯で巻かれてミイラのようになっていた。

    「良かった。あなたが助かって」母は掠れるような弱い声で晴人の無事を喜んだ。

     お母さん! 死んじゃ嫌だよ!
     悲痛な叫びをあげる晴人に母は優しく語りかけた。

    「忘れないで、晴人……あなたがお父さんとお母さんの希望よ」

     僕が……きぼう?
     母の隣のベッドで父は「そうだ」と言って、続けた。

    「晴人が生きててくれることが俺たちの希望だ。いままでも、これからも」

     父は右手を出して、合わせて母は左手を出した。晴人は両手に父と母の手を収めた。
     家族三人が一列に手を繋いだ。
     その時、心電計が映す波形が一本の直線になった。
     途端に病室が慌ただしくなり、医師が様態を見ようと晴人を動かす。
     離れていく晴人と両親。晴人の手から両親の手が力なく抜け落ちた。
     晴人は両親の危篤を察した。
     嫌だ! 嫌だよ!
     晴人は遠ざかっていく両親を必死に呼び戻そうと必死に叫んだ。
     だが、両親は晴人の言葉に応えなかった。両親は帰らぬ人になった。
     操真晴人はひとりぼっちになった。

    221 = 220 :

     その晩、晴人は自分以外誰もいない家で泣いた。声が枯れるほどむせび泣いた。
     泣いたら今度は猛烈に腹が減った。
     何か食べようとキッチンにいくと茶色い紙袋があった。
     中を見てみるとプレーンシュガーのドーナツがいくつか入っていた。
     その中には晴人がかじったプレーンシュガーも混ざっていた。事故の時に食べていたやつだ。
     一つ手にとってみると既に湿気ってしまった粉砂糖で手がベタベタになった。
     晴人の脳裏に事故の瞬間の記憶がフラッシュバックし、死んだ両親が浮かんだ。
     あれだけ泣いたはずなのにまた涙が湧いてきて、悲しみに押しつぶされて何もないはずの胃が吐きそうになった。
     だが、晴人は歯を食いしばって耐えた。
     お父さんとお母さんは死んだ。死んだんだ。もう何処にもいない。二人は僕に生きいてほしいって言った。だから、僕は生きていかなくちゃいけない。お父さんとお母さんのためにも。僕は父さんと母さんが残した希望なんだ。
     晴人はプレーンシュガーを口に運んだ。
     食べてやる。どんなに思い出しても食べてやる。食べて、食べて、食べ続けて、全部を僕の一部にしてやる。そうすればきっと前に進めるから。
     ・
     ・
     ・
     晴人は何かが置かれる音にハッとした。
     テーブルにはコースターと一緒にアイスティーがあった。

    「これは?」持ってきた店員に聞いてみる。
    「店長からですよ。ドーナツだけじゃ食べづらいだろうって」

     晴人は視線をピンクの車に動かすと店長はカウンター周りを清掃していた。

    「なあ、今日の俺どう見える?」
    「えっ、どうって……いつもの晴人さんじゃないですか」
    「だよなあ」

     手で顔を触ると頬に指が沈んだ。
     顔はこわばっていない。
     昔を思い出して少しナイーブな気持ちになってはいたが、表情には出していない。
     いつもの操真晴人の顔のはずだ。

    「あのさ、店長……」

     もしかして気を遣ってくれたのか? と聞こうとした。
     店長は「バレバレよ」と言いたげにウインクをした。
     マジか……

    「どうしたの、ハルくん?」からかうように聞いてくる店長。
     
     何を聞こうとしたか分かっていた癖に意地悪な奴だ。
     晴人は「ふぃ~」とため息をつくと、いつもの軽口を叩く。

    「奢ってくれるのは嬉しいけど、俺に『そういう』趣味はないぜ」
    「あら、残念。いい男なのに」

     同じく軽口で返す店長に晴人は笑った。
     ありがとうな、店長。

    222 = 220 :

    本編で描写の少ないグレーゾーンは好きに掘り下げる

    223 :

    いいね!

    224 :

    おぉ、いい解釈……ぞくぞくする

    225 :

    いいな

    226 :

    この解釈いいな

    227 :

    食って乗りこえるってアギトだな

    228 :

    いいねえ、こういうの

    230 :

    「キックストライク」「サンダー」「コピー」

    「ライトニングディバイド」

    231 :

    >>230で思いついた

    ハリケェーン!+「ドリル」で

    「スピニングアタック」

    232 :

    そいうのもあるのか

    233 = 232 :

    そういうのもあるのか

    234 :

     晴人がはんぐり~でプレーンシュガーを食べている頃、仁藤は気分よく眠っていた。
     テントから盛大ないびきが漏れて、近くを通る人は何事かといった様子でテントを怪訝な顔で見る。
     すると通行人の一人が真っ直ぐテントに近づき、中の様子を伺った。
     仁藤は大口を開けて、横になっている。口の端からヨダレが垂れて下に小さい染みを作っていた。
     通行人の男はしばらく仁藤を観察する。
     ボリボリ……
     仁藤は気持ちよさそうな顔をして腹を掻いた。
     男は呆れたようにため息をつく。

    「昼過ぎだというのにまだ寝ているとは戦士失格だな」

     男は仁藤に声をかける。

    「仁藤くん、起きなさい」

     男の声に仁藤は少し唸るが、それだけだ。
     男はもう一度「仁藤くん、起きなさい」と同じように声をかけた。
     やはり仁藤は起きない。
     それどころか、寝返りを打って男に背を向けた。
     ブオッ!
     仁藤は盛大に屁を放った。

    「……」

     男は肩を震わせながら、上着の内ポケットに手をいれてメカニカルな形のナックルを取り出した。
     いや、待て。落ち着け。彼はまだ未熟だ。だからこそ、俺が来た。
     その俺が、この程度のことで取り乱してどうする。
     心の中で渦巻く怒りを抑えながら、男はナックルをしまった。
     ここは年配者として落ち着きを持って挑むべきだ。
     男は爽やかな笑顔を浮かべて言う。

    「仁藤くん、起きなさい。いつまでも寝ていたら体にも良くないぞ」
    「………………………………うるせぇ」

     安眠を邪魔する声に仁藤は寝ぼけながら小さく答えた。
     瞬間、男が絶叫した。

    「仁藤―――――くん! 起きなさ――――――い!」
    「うおおおおおおおおおおおおっ!」

     耳をつんざくような声に仁藤は慌てて飛び起きた。

    「ててて敵か?」

     訳も分からず周囲を見ながら、すかさずビーストドライバーを出現させる。
     そのまま両手を回しながら「へん~」と言ったところで、

    (落ち着け、仁藤。客だ)

    余計な魔力を消耗されては堪らないキマイラが止めに入る。

    「あっ……客ぅ?」

     落ち着いてテントの入口の方を見ると名護が立っていた。

    235 :

    来た!続き来た!!
    そして>>222みたいな姿勢、YESだね!

    236 = 234 :

    >235
    ブレンかよ! 俺も大好きだ

    237 :

    やはり名護さんは最高です

    238 :

     串に刺さった肉と野菜は程よい焦げ色がついていた。
     バーベキューセットに敷かれた金網の下にある木炭は赤く光って小さく折った枝を燃やしていた。
     仁藤は目を細めて獲物を狙う獣のようにジッと串を見ながら回した。
     その様子を眺めている名護の目に煙が入ってひどく沁みた。
     仁藤は串を取り上げると鼻をヒクつかせて匂いを嗅ぐ。
     美味い匂いだ。何度もやってきたからわかる。自然と口の中が唾液で湿る。
     仁藤はマヨネーズを取り出すとバーベキューにぶちまけた。

    「かけすぎじゃないか?」
    「これでいいんだよ。ほら」

     食ってみろと言わんばかりに仁藤はマヨネーズが乗ったバーベキューを名護に渡した。
     名護は不審そうにそれを見る。
     バーベキューにマヨネーズをかけているというより、マヨネーズの下にバーベキューを敷いていると表現したほうが正しい位にマヨネーズとバーベキューの比率がおかしい。
     これでは油の塊みたいなものだ。
     だが、当の仁藤は自分の分を本当に美味そうに食べている。名護は試しに一口食べてみた。

    「……」
    「美味いだろ?」
    「マヨネーズの味がする」
    「当たり前だろ、マヨネーズかけてるんだから」
    「……そういう意味ではない」

    239 :

    「それで人を起こして何しに来たんだ?」
    「俺が君の所へ来たのは他でもない。君を鍛えるためだ」
    「俺を鍛える?」
    「つまり特訓だ。俺が直々に指導する。喜びなさい」

     名護は「さあ、この喜びを分かち合おう」とでも言いたげな笑みを浮かべた。
     仁藤はドン引きした。
     喜びなさいってなんだよ。自分のやっていることがただの押し付けだって気づかないのか?
     幼い頃から厳格な祖母にあれこれと言われて育ってきた仁藤は、今の名護がやっているような押し付けを特に嫌っている。

    「冗談じゃねえ。特訓なんてゴメンだぜ」
    「何故だ? 理由を言ってみなさい」
    「おっさんのことが気に入らねえからだ」

     クーラーボックスに入っている元気ハツラツのキャッチコピーで有名な清涼飲料水を飲みながら仁藤はハッキリと答えてやった。

    「大体、弱い奴ならともかく何で俺が特訓なんてしなくちゃいけねえんだよ」

     仁藤は自分が強い人間だと評価している。
     これまでビーストとしての強大な力を操り、数々のファントムを倒し、喰らい、そして自分の命にしてきた。
     死線をくぐり抜けてきた経験が仁藤に揺るぎない自信を与えていた。
     だが、名護は仁藤と真逆の評価をした。

    「先日の戦いを見ていたが君はまだ戦士として未熟だ。君は弱い」
    「……おもしれえ」

     仁藤の中で激しい感情が燃え上がった。
     勢いよく立ち上がり指輪をはめる。

    (仁藤、下らぬことで我の魔力を浪費するな)

     キマイラの諫言は至極真っ当だった。
     恐らくこのまま放っておけば仁藤は名護と戦うつもりだ。
     キマイラにとっては名護と戦った所で何の腹の足しにもならない。
     ただ魔力を消費するだけの無駄な戦いだ。

    (お前はこんなことで命を削るつもりか?)
    (当たり前だ。大体そういうてめえはどうなんだ、キマイラ)
    (どういう意味だ?)
    (ビーストの、お前の力を正面切って弱いって言われてんだ。まさか大人しく引き下がるなんてことはしねえよ、ご主人さま?)
    (むぅ)キマイラは唸った。

     安っぽい挑発。
     だが、今ここで仁藤の言葉を否定すれば自分は臆病者だと宣言するようなものだ。
     そんなことはキマイラの誇りが許さなかった。
     ……喰えぬ男だ。
     忘れていた。この男は態度こそ粗暴だが、決して愚者ではないということを。
     キマイラはいつも以上に尊大な主を装った口調で

    (我に恥をかかせるなよ)とだけ言った。
    (皆まで言うな)仁藤もそれだけ返した。

     仁藤と名護はにらみ合う。先に動いたのは名護だった。
     名護はゆっくりと立ち上がると

    「君の力をよく知っておいた方が特訓のメニューも組みやすいな」

     イクサナックルを取り出した。

    240 = 239 :

    喧嘩させればライダーバトルは起こせるとカブトが教えてくれた

    241 :

    両者のやりそうな所を突いたいい流れ

    242 :

    こういうのいいよね

    243 :

    いいもんだ
    おつおつ

    244 :

    おつ
    ライダーバトルする直前の緊張感いいよね…

    246 :

    さりげないオロナミンCにワロタ

    247 :

     無規則に連立する木々。
     テントからしばらく離れた森の中で仁藤と名護は対峙していた。

    「俺が勝ったら君を特訓させる。いいな?」
    「構わねえよ。その代わり、俺が勝ったらその偉そうな態度を改めてもらうからな」
    「それは出来ないな。君は俺に勝てない。もし君に出来ることがあるとしたら、それは俺の力に跪くことだ」
    「その傲慢なプライドを根こそぎ食い荒らしてやる」

     仁藤は名護へ向かって一直線に駆け出した。
     同時に名護がイクサナックルを素早く掌に押し当てる。
     レ・デ・ィ……

    「変身!」

     フィ・ス・ト・オ・ン……
     純白の鎧イクサが名護を包むと仮面の十字架が展開される。
     イクサはセーブモードからバーストモードへと姿を切り替えた。
     切り替えによって伴う熱排出が凄まじい熱風が起こし、仁藤を襲う。
     仁藤は臆せず走り続けた。

    「変~身!」

     セット! オープン! L! I! O! N! ライオーン!
     キマイラオーサーが展開され出現する金色の魔法陣。
     それが仁藤を守護する盾となって熱風を遮った。
     自分の横を吹き抜ける熱風を肌に感じながら仁藤は思考する。

    (一口で終わらせてやる)

     名護が強敵だということは分かっていた。
     バジリスクとの戦いを思い出せば尚のことだ。
     戦いが長引けば負けないにしても、こちらも間違いなく軽傷では済まない。
     おまけに余計な魔力も消費してしまう。
     故に仁藤は短期決戦を考えた。
     素早く相手の懐に飛び込み、得意のサーベルで切り裂く。
     それは常に命懸けの戦いを強いられている仁藤の常套手段でもあった。
     魔法陣を駆け抜けて、金色の眩しい光が視界に満ちると仁藤はビーストへと変身していた。
     光が晴れて、ビーストが最初に見た光景は――イクサカリバーをガンモードにして構えていたイクサだった。
     イクサはトリガーを引く。激しい銃声が森に響きわたった。

    248 :

    乙です
    フェイスオープンの演出はかっこよかったなあ

    249 :

    あの魔法陣、何気に畳判定あるんだよな


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