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    元スレまどか「それは まぎれもなく コブラだなって」

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    タグ : - コブラ + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 :

    1です、お世話になっております!

    皆様の暖かいご声援、本当に感謝してもしきれません。イラストまで…ww嬉しくてびっくりで嬉しくて毎日涙流しながら見てます。
    おかげさまでこちらも気合が入り、予定より早く2話の調整ができました!本当にありがとうございます!

    と、いうわけで次より投下していきます。よろしくどーぞ!

    52 = 51 :


    恭介「さやかは、僕を苛めてるのかい?」

    さやか「え?」

    恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ…。嫌がらせのつもりなのか?」

    さやか「だって…それは、恭介、音楽好きだから…」

    恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
    恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
    恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」

    さやか「!!」

    聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
    瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。



    コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」

    まどか「ヒューッ!」

    53 :

    ヒューッ!

    54 = 51 :


    第2話「魔法少女vsコブラ」

    ――― 少し前、夕刻、巴マミ家。

    コブラ「いやー、お茶に続いて夕メシまで御馳走になるってのは、嬉しいもんだ。おまけにお誘いが美女からとあっちゃあね」

    マミ「うふふ。…もう少しで出来上がるから、冷たい紅茶でも飲んで待っててね」

    コブラ「どーも。…しかし、いつもマミは一人の食事かい?若いんだし、寂しいんじゃないかな」

    マミ「あら、そんな事ないのよ。キュウべぇは…今日は出かけているみたいだけれど。最近は、鹿目さんや美樹さんが来る事も多いし…今日はジョーさんがご一緒してくれるから腕の振るいようがあるわ」

    コブラ「たはは、美女にモテるってのはいつの時代も悪くないもんだねぇ」
    コブラ(そろそろジョーって呼ばれるのも止めさせたいところだけど…仕方ない、か)

    コブラ「しかし今日は俺だけ。その、まどかやさやかは何か用事かい?」

    マミ「ええ、鹿目さんは、今日は何か用事があるみたい。美樹さんはいつものところみたいね」

    コブラ「いつもの?」

    マミ「言ってなかったかしら。彼女、幼馴染がいるんだけれど…その人の所に毎日のように通っているの。今は丁度その時間だから」

    コブラ「ちぇー、毎日いちゃいちゃ、楽しい時間ってわけか」

    マミ「そういう訳じゃないのよ。…もっと深刻な理由なの、彼女の場合は」

    55 = 51 :


    コブラ「不慮の事故で手を動かせなくなった悲劇の天才ヴァイオリニスト…ね」

    マミ「上条恭介くん、って言うんだけれど…美樹さんは毎日彼のお見舞いに行っているのよ。…献身的よね、事故以来、ずっとらしいわ」

    コブラ「惚れてるのかい」

    マミ「ふふ、どうかしら?…まぁ、彼に対する美樹さんの思いが誰よりも強いのは確かだと思うわ」

    コブラ「だったら、余計にハッキリさせないといけないね。女の一途な思いってのは、なかなか男には理解されないもんだぜ」

    マミ「そういうものかしら」

    コブラ「そうとも。…よぉーし、マミの夕メシが出来る前に、俺がいっちょ恋の指導に行ってやるかぁーっ」

    マミ「…二人の邪魔にならないかしら?」

    コブラ「大丈夫大丈夫!そういう色恋の問題は宇宙一、俺が経験してるのさ。先輩として教育してきてやらなきゃあな」

    マミ「…ジョーさん、貴方…」

    マミ「酔ってるのね」

    コブラ「へへへ、この世界のカクテルも悪くない味でね。つい昼間から」

    56 = 51 :


    マミのアパートから出て、教えられた病院の場所へ上機嫌で歩んでいくコブラ。

    コブラ「オーマイダーリン オーマイダーリン~ …♪ … …んん?」
    コブラ「ありゃあ…まどかと…ほむらと言ったか。あんなところで何してるんだ?」


    ほむら「まだ貴方は、魔法少女になろうとしているの?まどか」

    まどか「…それは…まだ、分からないけど…でも、やっぱり…あんな風に誰かの役に立てるの、素敵だな、って…」

    ほむら「…私の忠告は聞き入れてくれないのね」

    まどか「ち、違うよ!ほむらちゃんの言ってる事も分かるよ!とっても大変で、辛くて、危ない事も分かってるの!」
    まどか「この前だって…マミさん、あんなに戦い慣れしてるのにすごく危なかったって、分かってるから…」

    ほむら「…」

    まどか「…ねぇ、ほむらちゃんはさ」
    まどか「魔法少女が死ぬところって…何度も見てきたの?」

    ほむら「…」
    ほむら「ええ。数えるのも諦めるくらいに」
    ほむら「この前の巴マミの戦い…もし、あの男の介入がなければ、彼女も死んでいたのでしょうね」

    57 = 51 :


    まどか「魔法少女が死ぬと…どうなるの?」

    ほむら「結界の中で死ぬのだから、死体は残らない。永久に行方不明のまま…それが魔法少女の最後よ」

    まどか「そんな…」

    ほむら「そういう契約の元、私達は戦っているのよ。誰にも気づかれず、忘れ去られる…魔法少女なんてそんな存在なの。誰にも見えず戦い、感謝もされず、散っていく」
    ほむら「それでも貴方は、キュウべぇと契約をするつもりなのかしら。…貴方を大切に思う人が、身近にいるのだとしても」

    まどか「… … …ぅ…」

    ほむら「誰かのために魔法少女になりたいと言うのなら、誰かのために魔法少女にならない、という考えが浮かんでもいいはずよ。それを忘れないで」

    まどか「… … …分かった」

    ほむら「そう、良かったわ」

    まどか「…ほむらちゃん!」

    踵を返し、立ち去ろうとするほむらの背中にまどかが声をかける。

    ほむら「何かしら」

    まどか「…ありがとう。私の事…いつも、心配してくれて…」

    ほむら「… … …(ホムホム)」

    立ち去るほむら。

    58 = 51 :


    コブラ「…おっかないだけの子だと思ってたけど、どうも俺の見当違いだったかな」

    道端に隠れていたコブラは、ひょっこりと顔を出して笑った。

    まどか「!い、いたんですか」

    コブラ「偶然。たまたま居合わせちゃってね、失礼だったかな」

    まどか「…だ、大丈夫です。それより、どうしたんですか?こんな所で」

    コブラ「いや、なぁに、恋に悩める純朴な少女がいると聞いてね。人生の先輩としてアドバイスに馳せ参じようとしている最中さ」

    まどか「…え?」

    コブラ「つまり俺は恋というプレゼントを運ぶサンタクロースってわけ」

    まどか「わけがわからないよ」

    59 = 51 :


    まどか「えぇ!?さやかちゃんと恭介くんの応援に行く…って…」

    コブラ「そういう純真な恋はさ、誰かが肩を押さなくちゃ駄目なんだよ!というわけでまどか、俺を病院まで案内してくれ」

    まどか「そ、そんな…邪魔になっちゃいますよ…」

    コブラ「いいから!さぁ、案内してくれ我が愛馬よ!」

    まどか「… … …さやかちゃんの邪魔だけはしないでくださいね。いつも静かに音楽とか2人で聞いてるみたいなんですから」

    コブラ「邪魔なんてするかっ。俺に任せておけっての」

    まどか「…分かりまし…ウェヒッ!ジョーさん…お酒、飲んでません?」

    コブラ「だはははー!こんなの飲んでるうちに入らない入らない。さ、病院まで頼むぜ」

    まどか(…さやかちゃんに後で怒られませんように…)

    60 = 51 :


    コブラ「ここが彼の病室か」

    まどか「はい」

    コブラ「どれ、それじゃあ早速」

    まどか「ま、まままま、待って!…駄目ですよ、いきなり入っちゃあ!さやかちゃん、今頑張ってるかもしれないんだし!」

    コブラ「…頑張ってる?」

    まどか「そうですよ。その…あの…恭介くんと、えっと…い、いい感じになってるかもしれないし…」

    コブラ「… … …」
    コブラ「どうもそういう感じじゃなさそうだぜ、まどか」

    まどか「え?」

    耳を澄ませろ、とジェスチャーをするコブラ。
    病室からは、微かに怒号のような叫び声が聞こえてきた。聞いたことのないような、悲しい叫び声が。

    まどか「あ…」

    コブラ「乗り込むぜ」

    61 = 51 :


    恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
    恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
    恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」

    さやか「!!」

    聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
    瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。

    コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」

    まどか「ヒューッ!」

    さやか「!?ジョーさん!?それに…まどかも!」

    まどか「あ…。…う…ご、ごめん、さやかちゃん…」

    恭介「…ッ!!離せよ…離してくれよ!」

    コブラ「この手を離してアンタのバイオリンが聞けるなら喜んで離すがね。誰かを傷つけるために振り下ろされる手なら、俺はあの世の果てまで離すつもりはないぜ」

    恭介「…ぐ…ッ!…うぁぁぁ…ッ!くそぉ…ッ…!」

    62 = 51 :


    拳から力が抜けたと分かったコブラは、恭介の腕を解放した。
    涙を流しながら、誰かに訴えるように語り始める恭介。

    恭介「諦めろって…言われたんだよッ…!今の医学では治らないなら…バイオリンはもう…諦めろって…ッ!」

    さやか「…そんな…」

    コブラ・まどか「… … …」

    恭介「もう一生動かないんだよ、僕の手は…!奇跡か魔法でもない限り… …!」

    … … …。

    場を重苦しい沈黙がしばらく流れる。
    すると、さやかがゆっくり、静かに言う。

    さやか「…あるよ」

    コブラ・まどか「…!」

    さやか「奇跡も、魔法も…あるんだよ」

    63 = 51 :


    ――― 一方。

    杏子「…それで?アンタは何が言いたいのさ」

    QB「行動は急いだほうがいいという事さ。この前、杏子の縄張りの魔女を倒したのは彼だよ」

    杏子「…!マジかよ。随分ナメた真似してくれるじゃんか」

    QB「ボクでさえ、彼がどんな素性で何を目的をしているかはさっぱり分からない。勿論、どうするかは杏子の自由だけど、何かが起きてからでは遅いからね」

    杏子「…ジョー・ギリアンとか言ったか?おかしな名前しやがって。…上等じゃないのさ」

    QB「どうするんだい?杏子」

    杏子「確かにムカつく話だね。ちょいとお灸をすえてやった方がよさそう、っていうのは同意見」
    杏子「見滝原…あそこはマミの縄張りだったね。前々から魔女の発生頻度が高かったから縄張りをそっちに移そうと思ってたんだけど…」
    杏子「丁度いいじゃん。…マミも、ジョーとかいう男も、まとめてぶっ潰せばあそこのグリーフシードはアタシのものになる」

    QB「気を付けてね、杏子。あそこには、更にもう一人、イレギュラーな魔法少女もいるから」

    杏子「ふん。退屈しなくて済みそうじゃん。ほんじゃあ、行きますか」

    QB「今夜かい?」

    杏子「急かしたのはお前だろ?…まずは、アタシの縄張りを荒らしたヤツ」
    杏子「ちょいとお仕置きが必要だからね」

    64 = 51 :


    さやか「ごめんね…二人とも。変なトコ見せちゃって」
    さやか「こんな事言うの失礼なのは分かってる。…でも、今日は帰ってくれないかな」
    さやか「怒ってるわけじゃないの。…むしろ、感謝してる。ジョーさんが止めなければ、恭介きっと、怪我してたから」
    さやか「なんていうか…あたしも、ちょっとだけ…考える時間、欲しいの」
    さやか「…ありがとう。…ごめんね」



    まどか「…大丈夫かな、さやかちゃん。やっぱり、無理にでも一緒に帰ったほうが…」

    コブラ「ああいう時は、一人でじっくり考えるもんさ。誰にだって落ち着いて考える時間は必要だ」

    まどか「…そう、なのかな…。わたしがもっとちゃんと、二人の事フォローできれば… …っ!?」

    言い終わらない内に、まどかの頭にポンと左手を乗せるコブラ。

    コブラ「まどか。そうやって何でもかんでも自分のせいにするクセ、おたくの悪いクセだぜ」

    時間が止まったかのように、黙る二人。しばらくすると、まどかはポロポロと噛み殺していた涙を流し始める。

    まどか「… …ぅっ、くっ…!だ、だって…!さやかちゃん、かわいそうでっ…!あんなに、あんなに頑張ってるのにっ…!わたし、何もできなくて…っ!」

    コブラ「泣くなよ、まどか。人は、涙を流すから悲しくなるんだぜ」

    65 = 51 :


    パチ パチ パチ。

    二人の前に、拍手をしながらゆっくりと現れる人影。その口には棒状のチョコレート菓子を銜えている。

    杏子「名演説だね。感動してアタシも泣いちゃうくらいだよ」

    そういう杏子の表情は、憎悪に満ちた薄ら笑いだった。

    まどか「…っ!だ、誰…?」

    コブラ「そいつはどうも。なんならカフェでお茶でもしながらゆっくり語りあおうか?」

    杏子「遠慮しとくよ。それに…生憎そんな気分じゃないんだ」

    言いながら、赤いソウルジェムを見せびらかすように取り出し、不適に笑う杏子。

    まどか「…!ソウルジェム!?」

    そしてそれを使い、魔法少女へと変身する杏子。
    出現した巨大な槍を演舞のように振り回し、それを終えて槍を前に構えた戦闘態勢へと移る。

    杏子「アタシの縄張りを荒らしてくれるなんて、ナメた真似してくれるじゃん。…ジョー・ギリアン!」

    コブラ「…やれやれ、夕メシの時間には間に合いそうにないなこりゃあ」

    66 = 51 :


    まどか「あ、あ…っ!」

    コブラ「まどか、すまないが、先に帰ってマミに夕飯に少し遅れると伝えておいてくれないか」
    コブラ「冷めたカレーライスは好きじゃないから、暖かいうちに帰るつもりだがね」

    杏子「その余裕…ぶっ潰してやるよッ」

    コブラ「急げ、まどかっ!巻き込まれるぞ!」

    まどか「…っ!は、はいっ!!」

    まどかが走り出すと同時に、杏子がコブラに向けて一気に距離を詰め、槍を振り下ろす。

    杏子「でゃああああッ!!はぁッ!うおりゃあッ!」

    コブラ「うおっ、とぉっ!ほっ!よっ!」

    閃光のような素早い攻撃を次々と避けるコブラ。

    コブラ「熱烈なアプローチだなこりゃあ!だがもう少し女の子らしいほうが好みなんだがね!」

    杏子「残念だったな!アタシはそんなにおしとやかじゃないんだよッ!」

    67 = 51 :


    まどか「早く…早く、マミさんかほむらちゃんに助けを求めないとっ…!」
    まどか「このままじゃジョーさんが…!」

    急いで、マミのアパートまで走るまどか。
    だがその瞬間、信じがたいものを見てしまう。友人である志筑仁美が、何かに憑りつかれたようにフラフラと歩く、その姿を。

    まどか「…!ひ、仁美ちゃん!?」

    仁美「あら、鹿目さん…御機嫌よう」

    まどか「こんな時間に何してるの?お、御稽古事は…!?こっちの方向じゃないでしょ?どこに行こうとしてるの…!?」

    仁美「うふふふ…」

    仁美「ここよりもずっと、いい場所ですのよ」

    まどか「…!」

    仁美の首筋にある、魔女の口づけの印。そしてその刻印は、気付けば仁美の周りにいる生気のない人間達のほとんどについているのだった。

    まどか「そんな…こんな時に…!?ど、どうすれば…!」

    68 = 51 :


    彷徨うようではあるが、確実にある場所に向かう、仁美をはじめとした集団。
    放っておくわけにもいかず、まどかはその後についていくのだった。

    まどか(あああ、ど、どうしよう…!)
    まどか(わたしのバカ!マミさんの番号も、ほむらちゃんの番号も聞くの忘れてたなんて…ッ!)
    まどか(仁美ちゃんも放っておくわけにいかないし…ジョーさんも…っ!いくら強いからって魔法少女が相手じゃ、どうなるか…!)

    そんな考え事をしているうちに、集団はいつの間にか小さな町工場に辿り着く。

    町工場の工場長「俺は、駄目なんだ…。こんな小さな工場一つ満足に切り盛りできなかった。今みたいな時代に…俺の居場所なんてあるわけねぇんだよな」

    まどか「!!」
    まどか(あれ…洗剤…!)

    詢子「―――いいか?まどか」
    詢子「―――こういう塩素系の漂白剤には、扱いを間違えるととんでもないことになる物もある」
    詢子「―――あたしら家族全員、毒ガスであの世行きだ。絶対に間違えんなよ?」

    まどか「…っ!駄目!それは駄目!皆が死んじゃうよ!」

    まどかを優しく、包むように止める仁美。

    仁美「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ。…私達はこれから、とても素晴らしい世界へ旅立つのですから」

    69 :


    コブラ「うおおっと!!」

    杏子の渾身の一薙ぎを上空に跳躍して避けるコブラ。真上にあった電信柱の出っ張りを掴み、杏子の攻撃範囲から逃れる。

    コブラ「ち、ちょっとタンマ!あんたの縄張りに入ったのは謝るからさ、もう許しちゃくれないかね!平和的に行こう!」

    杏子「…へっ、ちったぁ懲りたかい」

    コブラ「懲りた懲りた、大反省!俺もうなぁーんにもしないから!」

    杏子「…そうかい、それじゃあ…。… … …なんてねっ!」
    杏子「生傷の一つもつけないで帰すなんて、アタシの腹の虫が収まらないんだよッ!」

    そう言って、コブラの掴まる電信柱を斬る杏子。

    コブラ「!!どわあああっ!?」

    切り落とされ下に落ちる電信柱と一緒に、コブラも地面に叩きつけられるように尻餅をつく。

    コブラ「いちちち… …って、のわぁぁぁあっ!?」

    杏子「くらえええーッ!!!」

    瞬間、それを見計らっていた杏子はバランスを崩して座り込んでいるコブラの頭上へ、槍を振り下ろす。

    ガキィィィィンッ!!

    振り下ろされた槍は…。

    杏子「… …ッ!なんだと…っ!?」

    コブラの左腕に食い込み、血の一滴も流さずに止まっていた。

    70 = 69 :


    杏子「…くっ!」

    その異常な事態に杏子は素早くバックステップをして、コブラの様子を伺うように構える。

    杏子「てめぇ、その左腕…何者なんだ…!?」

    コブラ「…身体がちょいと頑丈なもんでね。特に俺の左腕はな」

    にやっと不敵に笑い、ゆっくりと立ち上がるコブラ。葉巻にライターで火をつけながら、身体についた埃を払う。

    コブラ(…とはいえ、こいつはちょっとまずいな。手加減をして戦ってどうにかなるもんじゃないらしいね、魔法少女ってヤツは)
    コブラ(だからって素性の知れない魔法少女にサイコガンを使うわけにはいかない…。女を殴るのは俺の主義じゃない…参ったね、お手上げだ)
    コブラ(…こうなりゃあ…『アレ』でいくしかないか)

    コブラ「仕方ないな、こうなりゃあ俺の奥の手を見せてやるぜ」

    杏子「…ほー、楽しめそうじゃん。何をしてくれるんだい?」

    コブラ「…驚くなよ?」

    槍の刃の音を鋭く鳴らす杏子に対し、コブラは葉巻を杏子の方へ投げ捨てると…。

    コブラ「これが俺の奥の手…逃げるが勝ちだぁーッ!!」

    瞬間、猛然と走り出して杏子の隣をすり抜けるコブラ。

    杏子「…!!??て、てめぇ!待ちやが…っ!?」

    その時、杏子の近くに投げ捨てられた葉巻が閃光のように眩い光を一瞬放つ。

    杏子「うおおっ!?」

    5秒ほどそれは辺りを照らす。次に杏子が目を開けた瞬間、そこにコブラの姿はなかった。

    杏子「…くっ!逃げられた!…あのヤロー、あの腕といい、ただ者じゃないなやっぱ…!」
    杏子「…でも、このままじゃ済まさねぇからな、絶対…!」

    71 = 69 :


    まどか「…!離してッ!!」

    仁美の手を振り切り、洗剤の入ったバケツに猛然と走るまどか。それを掴みとると、勢いよく窓の外へ投げ捨てる。

    まどか(…よ、よしっ!これでひとまず安心…)

    しかし、その行動をしたまどかに向けられる…恨むような人々の視線。

    まどか「…え…」

    群衆「あぁぁああぁぁぁああああっ…!!」

    まるでゾンビが血肉を求めるようにまどかへ襲い掛かる群衆。

    まどか「きゃあああああっ!!」

    襲い掛かる群衆から逃げ、急いで側にあった物置に逃げ込むまどか。

    まどか「ど、どうしよう…どうしようっ…!やだよ…誰か、助けて…っ!」

    その瞬間。

    まどか「…ッ!!」

    まどかの周りに広がる、魔女の結界。それと同時に…窓の割れる音が、微かに聞こえた。

    72 = 69 :


    テレビのようなモニターや、使い魔や、木馬がまるで水中のように浮翌遊する空間。その空間内に、まどかも同じように浮翌遊していた。
    モニターに映し出されるのは、まどかが今まで見てきた、魔法少女の戦いの光景。

    まどか(これって…罰なのかな)
    まどか(わたしがもっとしっかりしてれば…さやかちゃんも、仁美ちゃんも、ジョーさんも…もっとちゃんと、助けられたのに…)
    まどか(だからわたしに、バチがあたったんだ)

    その自責の念はまるで声のように結界内に響き渡る。
    気付けば、まどかの手足をゴムのように引っ張る、翼の生えた不気味な木製人形達。四肢を引き千切ろうと、徐々にその力は増されていく。

    まどか(わたし…死んじゃうんだ…ここで…っ!う、ぐっ…!)
    まどか(痛いよ、苦しいよ…っ!)
    まどか(もう…嫌だよっ…!!)

    その時、まどかの四肢を引っ張る四人の『ハコの魔女の使い魔』が次々に光の波動に消された。

    まどか「…!!」

    まどか「…ジョーさん!」

    コブラ「結界が張られる前に窓に飛び込めて良かったぜ。バラバラになった美少女なんざ、地獄でも見たくないからな」

    73 :

    ヒューッ!

    74 :

    ヒューッ!

    75 = 69 :


    まどか「… …!!ひ、左手が…ジョーさんの、左手が…!」

    まどかが見た、ジョー・ギリアンの姿。
    硝煙をあげるその銃口は、本来あるべき左腕の場所にあった。見たこともない、異形の銃。まるでそれは身体の一部のように当たり前にそこにあるようだった。

    コブラはまどかの前に立ちはだかり、背中を向けながら語る。

    コブラ「…まどか、俺も一つ、罰を受けなきゃいけないのかもしれないな」

    コブラ「俺はあんたらに嘘をついていたんだ」

    まどか「嘘…?」

    コブラ「一つは、俺はしがないサラリーマンなんかじゃないって事」
    コブラ「一つは、俺は宇宙観光の最中なんかじゃなかったって事…」
    コブラ「そして…最後の一つ、俺の名前はジョー・ギリアンじゃないって事だ」

    コブラが喋っている間に、魔女の使い魔は次々とコブラとまどかを襲おうとする。
    しかし、それらの全てはサイコガンの連射で次々と撃ち抜かれ、一つとして外されることはない。

    まどか「…それじゃあ、あなたは…?」

    コブラ「俺は…別の世界では、海賊をしていた。宇宙を流れ星のように駆けながらお宝を見つけ、糧にしていた一匹狼の海賊さ」
    コブラ「俺には、一つの名があるんだ。…それは」

    まどか「それは…?」

    サイコガンに、コブラの精神が集中される。銃口が淡く光り、鋭い、サイコエネルギーをチャージする音が聞こえた。そしてコブラは目を見開き、叫ぶ。

    コブラ「俺の名はコブラ!不死身の…コブラだぁーーーッ!!」

    ドォォォォォ――――ッ!!!

    まるで大砲の砲撃のようなサイコガンの一撃が、放たれた。

    77 = 69 :


    サイコガンの高められた精神エネルギーの光は、使い魔達を焼き払い、その本体であるモニターに隠れた『ハコの魔女』をも爆破した。

    そして、結界が解け元の物置に戻るコブラとまどか。
    コブラは目を閉じて微笑みながら、左腕の義手をサイコガンに被せる。

    まどか「… … …」

    コブラ「今まで黙っててすまなかった。だが、見知らぬ世界で俺の正体をペラペラ喋るわけにもいかなくてね。何せ、あっちじゃあ俺の首を狙ってる奴がごまんといるからな」

    まどか「ジョー…じゃなくって、コブラ…さん?」

    コブラ「そ。…まぁ、色々語るのは後だ。少し急ぎたいんでね」

    まどか「…まだ、何かあるんですか?」

    コブラ「ああ、急ぎの用がある。まどかも一緒にきてくれ、重大な事だ」

    まどか「… … …」

    まどかが緊張した面持ちでコブラをじっと見ると、コブラはにっこりと笑って駆け出す。

    コブラ「早くしないとマミのカレーが冷めちまうんだよーっ!俺ぁ疲れて腹が減って死にそうなんだーっ!」

    まどか「… … …へ?」

    呆然とするまどかを後目に、物置から急いで出ていくコブラ。

    まどか「ま…待ってください!ひ、仁美ちゃんは!みんなはーっ!?わたし一人じゃどうすればいいか分からないよーっ!ねぇ、コブラさーーーーんっ!!」

    まどかの声は、空しく、町工場の中に響くのだった。

    78 = 69 :


    ―― 次回予告 ――

    さやかが魔法少女になっちまった!俺やまどかとしては複雑な気持ちだが、さやかには何よりも叶えたい願いがあるんだとさ。
    健気な少女の願いは受け止められ、一人の戦士が誕生する。まー、男を守る女ってのは俺はあまりお勧めできないんだがね。ここは良しとしてやろうっ。
    だが綺麗な事ばっかりじゃないみたいだね。暁美ほむらに、謎の赤い魔法少女。そしてもう一人、俺の事を追っかけてくる輩もいるみたい。
    相変わらず俺が元の世界に戻る方法も分かんないわ、もーいい加減にしてくれってんだ!


    次回【忍び寄る足音達】で、また会おう!

    79 :

    なっちまったぁぁぁぁッ!?


    乙乙

    80 = 69 :

    2話終了です、ありがとうございました!
    本当に皆様のご声援、ご期待に沿える作品になれるか不安でいっぱいで…でも書いててすごく楽しいです!ww

    コブラのセリフは本当にそれっぽく聞こえそうな言葉を探すのが難しいですが、頭の中で那智さんと内田さんに喋ってもらってがんばってます。脳内再生できる、とか言っていただけると本当に幸いで…ww

    つたない文章ですが、これからも精一杯やっていきます!それでは、また会おう!

    81 :

    オオオーッ!さやかーッ!

    82 :

    乙。
    今回も脳内再生余裕だった!

    83 :

    乙ですたー!
    ミスター・サマータイムな人の声も、脳内再生に加えても・・・いいのよ?

    84 :

    乙! ヒューッ!

    85 :

    乙です!
    相変わらず、らしい!

    次回も期待してます

    86 :

    乙!
    コブラならさやかも救ってくれる!と思いたい…

    87 :

    ヒュー!
    >俺の事を追っかけてくる輩
    クリスタルボーイ登場!?

    88 :

    >>1乙ヒュー!

    89 :

    >俺の事を追っかけてくる輩
    おおお!?誰だ!?クリスタルボーイか?それとも他の海賊ギルドか?はたまたキリカとかオリコなのか?
    ともかく>>1乙ヒュー!

    90 :

    追跡者…… (Q)クリスタル(B)ボーイか!?
    え?クリスタルはCだって? 細かい事は良いんだよ!
    次の>>1乙でまた会おう!

    91 :

    かわええ

    92 :

    >>91
    やっぱコブコブはいつ見てもかわええなぁ

    93 :

    ヒューッ!相変わらず脳内再生余裕だな…
    次回も期待しちゃうっ ビクンビクン

    94 :

    ネタバレひでーっ!まあコブラには医学の知識はないけど…
    そういえばだが、精神エネルギーで不死の怪物と化していたサラマンダーことヒットラーは超タチの悪い魔女みたいなもんだな

    95 :

    原作(というかアニメ版の)通りに次回予告がネタバレ。
    この>>1解ってる。

    96 :

    >>94
    それが医学の知識あるんだよなぁ。
    医者に化けてた時に瀕死の敵の士官の手術成功させて監視されてるのに爆弾まで埋め込む事まで成功させてる…聖騎士伝説編だったかな。本編後の短編シリーズで

    97 :

    しかも芸術全般にも造形が深いんだよな
    上条がksに寝取られる前に、コブラが上条からの信頼を得ればあるいは・・・

    98 = 95 :

    >>96
    地獄の十字軍編だったはず、メドゥサ軍の司令官を治療した時の話なら。

    99 = 96 :

    >>97
    最近ではジョンレノンのギターまで見極めてたからな…

    >>98
    すまん、そっちだったな

    100 :

    1です!いつも沢山のコメント、ありがとうございます!
    おかげさまで三話の調整も早くできましたので、次から投稿していきます。
    今回はいわゆる「繋ぎの話」になってしまい、内容的には少し地味になってしまうかも…ご了承くださいませ。
    それでは、よろしくどーぞ!


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