元スレ姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
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401 = 387 :
―――――― さいしょから
姫(?)
―――――― さいしょから はじめますか ?
姫「『始める』って……なにを?」
402 = 387 :
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
姫「な、なに!? 『鐘』?!」
カッッ!!
姫(本が光っ……)
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
403 = 387 :
―――――― ・・・
あの日……僕にたった1人の家族が出来た。
昔、初代ロトの勇者は自身の宿命を知った時から『冒険の書』という日記をつけたらしい。
その日記は元はただの日記帳だったが、ロトの勇者が書き続けその人生を物語として描いた事で、魔法の力を持っていた。
僕はそれと同じように、この日記帳に魔法の力が宿る位にこれからの『冒険』をここに書き記したい。
僕は彼女だけの勇者だと、ここにその証を残す。
―――――― ・・・
404 = 387 :
姫(……今の、勇者様の声?)
姫(何が起きてるの? 何も見えない、真っ暗……)
―――――― 初めて『姫』と会ったのは、彼女が生まれた時からだった。
姫(………視界が明るくなってく)
―――――― まだ3歳である僕は『見習い教育係』として、僕の父親に姫と一緒に教育された。
405 = 387 :
幼勇者『おとうさん、ひめちゃんがかみのけひっぱるよー!』
幼姫『ー♪』ぐいぐい
父勇者『男は女の子の為に痛い思いするもんさ、我慢だ我慢!』
僕が五歳にもなると、二歳になり遊びたい盛りの姫と遊ばされた。
お父さんには、よく『女の子には優しく、痛いのは我慢しろ』と言われていた。
姫(……………)
406 = 387 :
勇者母『勇者? 姫ちゃんに薬飲ませてあげて』
幼勇者『なんでー?』
勇者母『姫ちゃん具合悪いのに、どうしてもお薬飲まないのよぅ』
幼姫『だってにがいんだもん……やだぁ』
幼勇者『でも姫ちゃん飲まないとつらくなるよ』
幼姫『うぅー』
幼勇者『僕が背中さすってあげるから、飲もう?』
幼姫『………うん』
407 = 387 :
父勇者『勇者、今日はキアリーの呪文をお前に教えるからな』
幼勇者『姫ちゃんは?』
幼姫『わたしもやるー!』
父勇者『こ、こらこら……姫様は魔力がまだ未熟なんだよ』
幼姫『やーだー!! ゆーしゃといっしょじゃなきゃやだー!!』
父勇者『……やれやれ、モテる男はつらいな? 勇者』ニヤニヤ
今思えば、僕が8歳の時のお父さんはニヤニヤする事が多くなっていた気がする。
408 = 387 :
姫(……これ、ひょっとして私と勇者様の幼い時?)
姫(でもこんなの全く記憶にないけど……)
僕が九歳になった時、つまり去年の夏だ。
同じ年の使用人の男の子達が、小さな猫を城の庭でいじめているのを見つけた。
姫はとても怒ったが、男の子達は猫を人質にして逆に僕達に条件を出した。
あの時、僕が彼等を蹴散らしていたら『スラリン』と会えなかった気がする。
スラリンとは、僕達が男の子達に条件として『森に肝試しに行ってくる』のを出された時に森で会ったスライムだ。
スラリン『ぴきーっ!』
姫(……!)
409 = 387 :
今週中に今度こそ完結したいな
おやすみなさい
410 :
乙でした
411 :
ぼうけんのしょとか胸熱
412 :
おっつん
413 :
姫「……このスライム、前にどこかで…………」
スラリン『ぴきーっ♪ ぴっ?』ぴょこ
姫「……」すっ
スカッ
幼姫『スラリン! おいでー、ゆーしゃと遊ぼう♪』
スラリン『ぴー♪』
姫(……さわれない)
姫(なんでかな、悲しい気持ちになった)
414 = 413 :
幼姫『さあアンタ達! その子猫を大人しく渡しなさい!』
幼使用人『えー? 本当に森に行ったかも怪しいよな~』
幼使用人2『なー?』
幼勇者『姫ちゃんが頼んでるんだ、渡せよ』
幼使用人2『なんだよ勇者! 俺達は年上だぞ?』
幼使用人『年下のくせに生意気だ!』
スラリン『ぴきー!』ドゴォッ
幼使用人『ぐぼぁ!?』
415 = 413 :
幼使用人『な、なんだこいつ!』
幼使用人2『うわぁ! モンスターだ、逃げろー!』
スラリン『ぴっ!(とんでもない奴らだね!)』
幼勇者『えへへ、ありがとうスラリン』
幼姫『子猫ちゃん、大丈夫かな?』
『みぃ…』
姫(わー、優秀なスライムだなぁ)
416 = 413 :
―――――― スラリンが姫と友達になってからはほとんど毎日が楽しかった。
今度はスラリンも一緒に森を探検したし、姫の六歳の誕生日もスラリンと一緒にプレゼントを渡した。
去年の日々は、とても楽しかった。
―――――― ・・・
姫(……あれ)
姫(…………)
姫(何も聞こえなくなっちゃった、何も見えないし)
417 = 413 :
姫(それにしても)
姫(やっぱりこれは、私と勇者様よね?)
姫(仮にそうだとしてなんで覚えてないの……?)
姫(……)
―――――― 半年して、僕が10歳になって少し後の時だ。
姫(!)
―――――― ザァァ・・・
姫(……雨)
418 = 413 :
この日の朝、外ではお父さんとお母さんが何故か慌てていた。
外は物凄い雨の勢いなのに、2人とも傘すら差していなかった。
お父さんはお母さんの手を握ったまま、僕に言った。
父勇者『勇者、俺は母さんと一緒にちょっと海を見てくる』
父勇者『心配はしなくて良いからな、よくある事だと思って諦めてくれな?』
父勇者『……ああ、それから王様に話は通しておいた……姫様の部屋に泊まってろ』
僕はやはり心配で、呼び止めた。
何度も呼び止めた。
419 = 413 :
父勇者『……ははっ、心配し過ぎだ! 勇者は男だろ、今夜は小さな妹みたいな姫様を守ってやれ!』
勇者母『勇者、ちゃんと姫様の面倒は見てね? 勉強も教えてあげなさいね?』
・・・これで、最後の会話は終わった。
僕の両親は戻らなかった。
姫(…………っ)ズキ
姫(? こめかみがちょっと痛かった)なでなで
420 = 413 :
戻らないだけなら良かった。
もしも帰って来ないだけならば、良かった。
幼姫『ゆーしゃ……』
幼勇者『…………』
両親がいなくなってから、何故か雨は半月近く降り続けた。
あの嫌な感覚が、ずっと続いた。
しかし、雨は晴れていよいよ王様が僕の両親を捜索しようとした所で……。
421 = 413 :
王様『何という事だ・・・』
幼姫『…!!』
幼勇者『………おと…さん……』
―――――― ・・・
422 = 413 :
(……え?)
幼勇者「お父さん……お母さん、お父さん!」バッ
< 「リムルダールの海岸に倒れていたそうです……」
< 「一体何が……?」
< 「よせ、勇者や姫様がいる」
王様「……姫よ、ここは勇者を両親としばらく共に居させてやろう」
「……ううん、ゆーしゃと一緒にいる」
423 = 413 :
(……これって、もしかして……)
王様「………良かろう、そなたに様々な事を教えた2人に別れを告げると良い」
王様「私は……玉座の間にいる」
「うん」
「………」すっ
幼勇者「……うぁぁぁ…!! お父さん! お母さん!!」
幼勇者「うわぁあああん……わぁぁ……!」ポロポロ
「………」ポロポロ
424 = 413 :
(……私、が………幼い姫になってる?)
(それとも……これが…………)
幼勇者「うわぁあああ……!! ひっ、ぅぐ……ぁあ」ポロポロ
「…………」ぎゅっ
「……勇者お兄ちゃん、一緒にお別れしよう?」
幼勇者「やだっ!! 起きてお父さん! お母さぁん!!」
「おじさんが可哀相だよ、勇者」
幼勇者「うるさい!! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁい!!!」
ガッ
「ひゃ……っ」ドシャ
425 = 413 :
幼勇者「あ………」
「……っ、大丈夫だよ…私つよいもん」グスッ
幼勇者「ごめん姫ちゃん……」
「……一緒に、お別れしようよ」
幼勇者「………」チラッ
幼勇者「…おとうさん……おかぁ………さ……グスッ 」ポロポロ
「勇者、泣くのはお別れしてからにしよう?」
「……じゃないとおじさん達安心できないよ」
426 = 413 :
(勇者……)
(っ!)ズキ ズキ ッ
幼勇者「……うん」
幼勇者「でも、どうやってお別れすればいいの…?」
「ばいばい、今まで沢山大切な事教えてくれてありがとう……って」
「……私は今そうお別れしたよ」
幼勇者「…………………」
427 = 413 :
―――――― ・・・
姫「……!」
姫「…戻っ……た?」
姫は……ずっと僕のそばにいてくれた。
僕より小さくて、年下で、妹みたいにすら思ってしまうのに。
なのに・・・
< 「……彼女はずっと、俺なんかより大人だったんだ」
姫「!!」
428 = 413 :
勇者?「……」
姫「ゅ、勇者……? なんでここにっ」
勇者?「……あの夜、俺はどうしても両親の悲しみが拭えずに泣いてたんだ」
姫「……」
勇者?「当たり前なのにな……10歳なんてまだまだ子供なのに、直ぐ前を向ける訳がない」
勇者?「でも、姫は心配してくれたんだな……一度も俺は姫に泣いてたりする部分は見せなかったから」
勇者?「…………」スッ
姫「えっ?」
勇者?「………君はあの夜………」
429 = 413 :
幼勇者「……っ、…っ」グスッ グスッ
ガバッ!
幼勇者「!?」
幼姫「……泣いてるの?」
勇者?「……ほんの一瞬、心配してくれている姫を思わず冷たく追い出そうとした」
勇者?「せめてベッドの中で、1人で泣きたかったからだ」
姫「……」
430 = 413 :
―――――― 『泣いてるの?』
幼勇者『……出ていけよ』
幼姫『ゆーしゃ、一緒に寝よう?』
もぞっ
幼勇者『………』
幼姫『泣いていいよ』
幼勇者『……』
幼勇者『…っ……ひっく』ポロポロ
431 = 413 :
幼姫『…どうして泣いてるの』
幼勇者『ぅぁ…っ、ひっく……っ』ポロポロ
幼勇者『ぼくは……1人ぼっちになったから……っ』グスッ
幼勇者『っ……もう、お父さんやお母さんに会えないから……っ』ポロポロ
幼勇者『いやだ……ぁ、いやだよぉ……!』ポロポロ
幼姫『ぎゅー』ぎゅっ
幼勇者『!』
432 = 413 :
姫「ッ……!!」ズキ ッ
姫(…………………………)バッ
勇者?「……」
―――――― 『姫ちゃん、遊ぼう?』
―――――― 『姫ちゃん、僕の手を握ってれば転ばないよ』
姫「……ゆーしゃ……」
433 = 413 :
幼勇者『……姫ちゃん?』
幼姫『寂しくないよ』ぎゅぅっ
幼姫『私がずっと一緒にいるから、寂しくないよ……勇者』
幼勇者『……』
幼姫『好き』
幼勇者『!!』びくっ
434 = 413 :
姫「ぅ……ッ」ズキ ッ ズキ ッ !
姫「………!」
―――――― 『まだホイミできなくてごめんね……薬草、塗ってあげるからおいで』
―――――― 『姫ちゃんはよく具合悪くなるから、お粥の作り方お母さんに教えて貰ったんだ!』
―――――― 『美味しい? 良かった!』
―――― 『 姫、これ食べてみてくれ……作ったんだ 』
―――― 『 美味しい? そっか、今度もっと姫が美味しいって言ってくれる物を作ってみるよ 』
435 = 413 :
幼勇者『…………』
幼姫『私は勇者が好きだよ、大好きだよ』
幼姫『……だから泣かないで、1人じゃないよ……私もいるよ』
ぎゅっ
幼姫『ね、こうやってずっとぎゅーすれば寂しくないよ勇者』
幼勇者『……!!』ポロ…ポロ…
幼勇者『…………うん』
ぎゅっ
436 = 413 :
姫ちゃん、おはよう そりゃ心配だよ
姫ちゃんは弱いもんね
姫は欲張りじゃないよ
かき氷を作ってみた
姫は怖がりだから
悪かったよ、無理に踊らせようとして
あ、こっちのシロップかけると良いと思う 姫ちゃん、大丈夫?
姫ちゃん、大丈夫だよ……すぐに良くなるからね
ルビスさん、僕にその呪文の詠唱を教えて下さい
姫のためなら、僕は何度死んでも蘇ってみせるし、命だって幾らでも……!!
437 = 413 :
姫「………………」
姫「……勇者……?」
439 :
おっつん
440 :
勇者?「……」
勇者?「あの夜から、俺は歴代のロトの子孫が夢見ていた『勇者』になったんだ」
姫「勇者……ゎ、私………」
勇者?「初代ロトがそうであったように、『勇者の血』は世界を守りたいという真の覚悟に呼応して覚醒する」
勇者?「……でも俺が守りたいのは世界なんかじゃないんだ」
勇者?「俺にとって、姫は『友達』であり、『恋人』であり『家族』なんだ」
勇者?「だから、姫が死んでも僕は生き返らせる……姫に危険が迫っているならば何度でも蘇る」
勇者?「姫を守るためならどんな敵もこの力でねじ伏せてみせる」
441 = 440 :
勇者?「……これで、終わりだ姫」
姫「勇者! 私……思い出せたよっ、全部覚えてるよ!」
勇者?「…………『書』が見せるべき物は見せた……お別れだ、ラダトームの王女」
勇者?「 また、どこかで会おう 」
姫「ゆう…」
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
442 = 440 :
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
姫(ま、また『鐘』!? もしかして元に戻るの!?)
姫「勇者! 元に戻ったら、どうしたら勇者の記憶は戻るの!!」
勇者?「……俺が『勇者』だと分かっているなら、普通は聞かない質問じゃないか?」
姫(! 会話が通じた?)
姫「『今の』私なら、あなたが本当の勇者じゃないのは分かるよ! お願い……何か知ってるんでしょ!!」
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
443 = 440 :
―――――― ・・・「君が本当に『勇者』を想っているならば……君の『愛』が奇跡を起こすさ」
444 = 440 :
―――――― ゴゥンッ・・・ゴゥンッ・・・
姫「………」
姫(……大丈夫、ちゃんと覚えてる)ぎゅっ
姫「…………」スッ
勇者「姫様、手頃なクッキー焼いてみたんだが……」
がばっ!
姫「勇者……っ!」ぎゅーっ
勇者「うわっ!?」
445 = 440 :
勇者「ひ、姫様……??」
姫「私は思い出したよ! 勇者が最初に私を助けてくれた時も、全部思い出したよ!」
勇者「なんのことか……分からないんだけど」
姫「勇者、思い出して!」ぎゅっ
・・・シャランッ
姫「?」
姫「……何、この首飾り……?」ジャラッ
446 = 440 :
勇者「綺麗な細工だな、まるで俺の……」
キィンッ!!
勇者「……『ロトの印』が、姫様の首飾りに……!?」
姫「きゃっ……!?」
姫(な、なにこれ? 凄くあったかくて……体が浮く感じ……)
キィンッ!! キィンッ!!
勇者「なんで『紋章』が姫の首飾りと共鳴してるんだ!?」
447 = 440 :
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
勇者「『鐘』……? っ、体の力が抜ける……!」
―――――― ゴゥンッ!! ゴゥンッ!!
448 = 440 :
姫『ばーかっ』
449 = 440 :
勇者「…………なんでもっと早く思い出せないんだ」ガクッ
姫「勇者!?」
勇者「……はは、記憶消されてまだ半日なのに……もう思い出したな俺達」
姫「………」ぎゅっ
勇者「お疲れ様、姫」なでなで
勇者(…それにしてもなんて思い出し方だ……)
450 = 440 :
姫「……ごちそうさまっ」
勇者「クッキーの仕上がりどうだった?」
姫「今まで食べた中で一番美味しかったよ」
勇者「……そうか」
勇者「………とりあえず、『ぼうけんのしょ』が役に立ったみたいだな」
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