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    元スレ姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」

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    703 :

    ギガスラッシュ

    なるほど、3のゴン、ズン、クロス系呪文は失われてしまっていたのか

    704 :

    神龍王?

    705 :

    乙!

    DQMルカイルのしんりゅうおうでイメージ余裕でした

    706 :

    >>705
    正解

    707 = 706 :



    勇者「―――――― っッッ!!」

    視界が瞬時に黒く塗り潰され、聴覚が麻痺する。


    勇者の絶叫も既に断末の叫び声となっていた。

    姫が叫ぶ。

    「ゃ、やめて!! やめてっ……!!」


    余りにも非力な声だと彼女自身思うのに、何も出来ない。

    それどころか、目の前で殺されるかもしれない勇者が絶叫しながら必死に近づくのを制止していた。

    勇者ですら抵抗出来ない相手に、姫が近づいても悲劇しか起きないからだった。


    708 = 706 :



    真竜王【【 クハハハハァアアアア”ア”ア”ア”ッッ!! 】】

    真竜王【【 どうしたのだ勇者ッ!!? 我を倒さないと姫は救えなかったのではないかぁ!? 】】


    凄まじい雷撃の雨を降り注ぎながら竜王の憎悪に満ちた声が轟く。

    そして、竜王は更に雷撃の威力を強めるように声を、自身の威厳すら歪めていく。


    真竜王【【 結局は『孤独』のままだった我にッッ、ただの『怒り』に目覚めただけのッ俺にィッ!! 】】


    勇者と竜王の周囲の空間が一瞬 グニャリ と歪み、竜王の放つ黒い雷が壮絶な咆哮を鳴らす。


    真竜王【【 何故に負ける!? ゾーマをもこの俺をも越えた貴様がッ!! 何故俺に敗北するゥゥッ!!? 】】

    真竜王【【 答えてみろォ!! 俺に抗ってみろォッ!! 】】


    ゴバッッッ!! とついに勇者達のいた海岸が崩壊する。


    709 = 706 :



    真竜王【【 ・・・ 】】


    勇者「ゥ……っは、は……ぁ」

    ギシッ、と巨大な腕が勇者の頭を鷲掴みにする。

    呼吸が上手く出来ず、魔法すら使用出来ないほどに瀕死の勇者では何も出来ない。


    竜王が、落胆した声を出した。


    真竜王【【 ・・・こんなものが、この世界の真実とはな 】】



    710 = 706 :



    真竜王【【 『怒り』が貴様をその姿に変えたなら、今の俺が貴様と同じ姿……か? 】】


    ミシィッ!! と勇者の頭蓋が悲鳴をあげた。

    勇者の頭から……いや、既に全身から血液が噴き出し始めていた。

    勇者「ぁ、が……っ!!」


    真竜王【【 醜い、醜いこの悪竜の姿がッ!! この俺だ、お前と同じ姿なんだァッッ!! 】】



    ―――――― ッ!!


    凄まじい速度で、勇者を掴んだ竜王が飛んだ。

    幾度と巨大な岩を破壊しながら、勇者を更に痛めつける。


    711 = 706 :



    ―――――― ドサッッ


    無人となったリムルダールの町で、勇者はようやく解放された。

    しかし、その命はもう風前の灯火と言える。


    竜王はしばらくその勇者を何か期待しながら眺めていたが、何も起きない。


    勇者は奇跡を起こせない。

    ただ蛆虫のように転がり、自身に迫る死に抗いもしない。

    ・・・そこまで考え、竜王は掌を勇者に向ける。


    先の雷撃を再び浴びせるだけで、勇者は絶命する。



    712 = 706 :



    真竜王【【 ・・・ 】】


    だが、竜王はそこで止めた。

    巨竜だった時とほぼ変わらない巨大を誇る彼の背後に、何者かが立っていた。

    竜王は振り向かずに問う。


    真竜王【【 何をしに来たのだ? 姫よ 】】


    「……っ!」びくっ


    背後に立つ姫の体が、過剰に驚く。

    恐怖で足や肩が震えているのが竜王の耳に聞こえる。


    713 = 706 :




    「……っ」

    「勇者から、離れて……!」



    やっとの思いで絞り出した言葉。

    その頼りなさ過ぎる声は、竜王の『怒り』を僅かに停止させた。


    真竜王【【 ほぉ? その手に構えた剣で俺をどかすか? 】】

    真竜王【【 姫よ、貴様が其処まで無謀とはな……失望したぞ 】】


    バヂィッ!! と黒雷が轟く。

    竜王の憎悪が無尽蔵の魔力となり、勇者すら圧倒する力を生み出していく。

    それは目の前にいる姫を殺すのに、あまりにも強大過ぎる力だ。



    714 = 706 :




    ―――――― バギンッッ!!



    『何か』が砕け散る。


    真竜王【【 ・・・!? 】】


    それはガラスが割れた音にも聞こえ、金属を叩き鳴らした音にも聞こえた。

    しかし、竜王には全く別の音として伝わっていた。


    (ぇ……え?)


    姫は何が起きたか分からないでいた。

    何故か、自分が生きている事に疑問が追いつかない。

    彼女はほんの一瞬前まで竜王に殺されようとしていたのではなかったか。


      何故 彼女は 無傷 なのか 。



    715 = 706 :



    「……あ」


    ふと見る彼女の目に、輝きを強くする何かが映った。

    そう、あの『首飾り』だ。


    (もしかして、今のから守ってくれた……?)


    真竜王【【 ………… 】】

    真竜王【【 (どうやって防いだかは良い……だが) 】】


    真竜王【【 (違和感がある) 】】



    716 = 706 :



    強烈な違和感。

    『怒り』で正常に思考出来ない竜王にさえ感じさせる、何か。

    目の前に立つ姫は再び竜王に、僅かに足を進めた。


    真竜王【【 止まれ 】】


    ―――――― バギンッッ!! 


    「きゃぁ!」

    今度は更に強力な黒雷を浴びせられ、姫の体が大きく仰け反り尻餅をつく。

    しかしその華奢な体に傷は無い。



    717 = 706 :



    そこで、竜王は気がついた。

    姫の首飾りが輝く度に、呼応し同じく輝いていたのだ。





    真竜王【【 『レプリカ』の……ロトの剣……! 】】




    「……光ってる」

    竜王と彼女の手にある剣を見比べ、姫が呟いた。

    初めて、『レプリカ』でしか無かった剣が姫の手の中で『本物』となっていたのだ。


    718 = 706 :



    真竜王【【 (本物は俺の城の『無限回廊』に保管されたままの筈……) 】】  


    目の前で異常な力を放つ剣と、姫の首飾りに竜王が混乱する。

    今さら何故、何故自分の前でそんな奇跡が起きるというのか?

    否、否―――――― ッ


    真竜王【【 ならばそれは一族に伝わる儀礼剣ではないのか? 消え失せろッ!! 】】


    激昂した竜王が姫に向けて憎悪の雷撃を射る!!



    『ベギラゴン』や『ライデイン』を遥かに凌駕する、地獄から呼び出した究極の呪文が姫を襲う。



    「……!」


    719 = 706 :




    ―――――――――――――――――――――
    ―――――― 【ジゴスパーク】 ――――――
    ―――――――――――――――――――――



    ―――――― ゴオォッッ!!!!


    巨大な黒雷の柱が鉄槌の如く姫に振り下ろされた。

    たったそれだけなのに、周囲に広がっていた無人のリムルダールの街は瞬時に消し炭となった。


    膨大な魔力の嵐が漆黒の灰を巻き上げ大空に舞う。



    720 = 706 :



    真竜王【【 ・・・ 】】






    ブォンッ―――――― !!!







    「……『また会おう』って、言ったろ? 王女様」





    真竜王【【 ッッ!!? 】】





    721 = 706 :





    ・・・優しい声が、姫の耳をくすぐった。

    そして彼女の予想通り、目を開ければ目の前にいた。

    「……勇者」

    漆黒の灰に視界を半分奪われていながらも、姫はその名を呼ぶ。


    しかし、帰ってきた応えは違った。


    「悪いな、合ってるけど俺は王女様の勇者じゃない」


    「えっ……?」


    ブォンッ!! と、声の主は片手だけで辺りの灰を全て吹き飛ばした。


    722 = 706 :




    勇者ロト「また『会おう』って、言ったろ? 王女様」



    「勇者じゃ……ない?」


    彼女を庇うように包み込んで来る腕の温もりや、声はとても勇者に酷似している。

    だが彼の髪は本当は金髪だったし、瞳の色も確か水色だった。


    では、いま彼女を抱いている黒髪の男は誰なのか?



    ―――――― ヒュッ



    723 = 706 :




    ―――――― ガギィィッン!!



    瞬時に姫の手から剣を奪い、男が竜王と太刀打ちする。

    姫を抱く腕の力が強く締まり彼女を僅かに覚醒させた、彼女の脳裏にようやく男の正体が浮かんだ。

    それは、あまりにも有り得ない者の名前だった。


    そして、姫とほぼ同時に竜王が咆哮した。

    勇者さえ無力化した絶対の闇の力を一斉に爆発させたのだ。



    真竜王【【 散れぇいッッ!! 初代ロトの勇者ァッ!! 】】



    勇者ロト「来いよ竜王、俺と『ルビス』が相手になってやる」



    724 = 706 :



    ゴゴゴォオッッッ―――――― !!


    大地が凄まじい揺れに襲われる程の衝撃波が発生する。

    姫を瞬時に建物の裏に連れ出し、追撃してくる竜王の黒雷を片手のみで掻き消す!


    勇者ロト「今勇者の奴を連れてくる、王女様はここにいな!!」


    ゾンッッ!! と、空間そのものを切り裂くような竜王の爪を紙一重で避ける。


    ―――――― ギィッ!!・・・


    続く竜王の二枚の翼が触手のように勇者ロトを切り刻もうと渦巻き、爆発のような火花を散らし弾き返した。


    ―――――― ・・・ヒュガッッッ


    火花が散り終わるより速く、勇者ロトが瞬速で踏み込む!


    725 = 706 :



    ―――――― ガッッッ!! ギギギギギギギギュィイイイイインンッッッッ!!!!


    刹那、『闇の衣』にさえ守られ最硬の守りを誇っている筈の竜王が・・・


    真竜王【【 ガァ・・・ッッ!!? 】】


    ・・・その巨体が地より浮き、凄まじい連撃の衝撃に後方へと吹き飛ぶ!!


    勇者ロト「ッッ……!」ビシィッ

    勇者ロト(勇者は、どこだ……!!)


    全身に走る激痛を勇者ロトは無視し、辺りを見回す。

    そこで彼は気がついた。

    果たしてあの姫が、死にかけた勇者を放っていられるかという事。

    彼の視線の先には、姫が瀕死の勇者に駆け寄っていた。

    背後に竜王がいるのも気にせず。


    726 = 706 :



    勇者ロト「だぁあああああ!! どうしていつの時代も女は静かに待っててくれないんだ!!」


    ビシィッ!! と、彼の頬にヒビが走るのを無視して走る。

    彼に託された時間が少なすぎるのを実感しながら。


    真竜王【【 ガァアアアアアアアッッ!! 】】


      ドンッッ!!


    勇者ロト「お前の相手は俺だってんだよクソ餓鬼ぃっ!!」

    凄まじい破壊力を帯びた『突き』が文字通り竜王の胴体に刺さり、鈍い音が轟く!


    ―――――― パキィンッ!!


    その一撃で、『レプリカ』の王者の剣が大破する。


    727 = 706 :




    ドゥッ―――――― !!


    間髪入れず、凄まじい一閃が竜王を再び仰け反らせる!

    同時に竜王の『闇の衣』から 轟ッ!! と黒雷が勇者ロトの体を弾き飛ばす!


    勇者ロト「ッッ、グァッ・・・!!」


    ザンッッ!! という大地に剣が突き刺さる音と同時に、勇者ロトの体が踏み留まる!

    そして背後にいる姫と勇者を確認してから



    勇者ロト「………ッ、時間がねぇ…一気に稼がせて貰うぞ!!」




    真竜王【【 !? 貴様、その剣は・・・!! 】】



    728 = 706 :



    大破し、砕け散ったように見えていた『王者の剣』。

    それが竜王の眼前に突きつけられ、初めて竜王が息を呑んだ。


    勇者ロトの手にあったのは、『レプリカ』や『本物』などとは全く次元の違う物だった。

    若き日の竜王が世界中を探しても見つけられなかった、聖剣中の聖剣。



    勇者ロト「力を貸してくれ……『ルビス』」


    ―――――― 『精霊剣・ルビス』 ――――――


    かつて、大魔王ゾーマが最も恐れた最強の刃。

    精霊神の『愛』を勝ち取った者がその真の力を操れると言われる純白のソードだった。


    そして今、まさに、竜王の前に立つ伝説の勇者がそれを振るおうとしていた。


    729 = 706 :




    真竜王【【 ―――――― ッッ!!! 】】



    異質な気配に竜王が空を見上げる。

    暗雲に包まれていた筈の空が、黄金の光に覆われていたのだ。

    正面に立つ勇者ロトが、彼が手にした最強の光の呪文を竜王に放とうとしている。

    かのゾーマでさえ闇の衣を使って全力で防御した、伝説級の奥義。


    勇者ロト「―――――― ッッ!!」

    ビシィッ!! と左目が見えなくなるのを感じ、僅かに顔を歪ませながらも咆哮する。



    ―――――― 『ギガデイン』ッッ!!



    730 = 706 :




    ―――――― 大空全体が呼応するように爆発し、膨大な魔力の柱を撃ち出す!!



    【【 ぐぉおおおおおおおお―――――― !!!!! 】】


    竜王の『闇の衣』の許容量を遥かに越えた超魔法に屈し、瞬間には既に海の彼方まで投げ飛ばされる!



    勇者ロト「ッッ!! づぁ……」ビシィッ






    731 = 706 :




    勇者ロト「……」


    凄まじい激痛に襲われながらも、背後を振り向いた。


    「勇者! 目を開けて、返事をして……!」

    勇者「…」


    勇者ロト「王女、そいつはもう駄目だ」

    「!!」


    心無い言葉に、思わず姫は怒りに声を震えさせようとした時。

    目の前で伝説の勇者は、『崩れていた』。


    732 = 706 :



    勇者ロト「っ……こんな筈じゃなかったんだけどな、本当ならお前らに苦労させる気もなかった」


    ぽつりと、左手の先が僅かに光の粉と化しながら伝説の勇者はそう語った。


    勇者ロト「……『オーブ』の魔法が、根本から作り替えられたせいで…召喚のタイミングも実体化の完成度もボロボロ」

    勇者ロト「……王女、お前に責任はとって貰うからな」


    にっと、彼の笑みを見た姫が腕の中で息絶えようとしている勇者を強く抱き締める。

    それを見た勇者ロトは笑いながらヨロヨロと近づいた。


    勇者ロト「王女、今度はお前がそいつを救うんだ」

    「……私が、救う? でもどうやって!」

    勇者ロト「だから言ったろ?」


    スッ、と彼女の胸にある首飾りを指差した。


    勇者ロト「……そいつが、王女の中で作り替えられた『光のオーブ』なんだよ」



    733 = 706 :



    「これが……?」


    勇者ロト「そうだ、竜王が闇に染めたのは抜け殻も同然の水晶玉だ」

    伝説の勇者は足元の勇者の横に倒れる。


    勇者ロト「っ……俺は今の『ギガデイン』で実体化出来なくなりつつある」

    勇者ロト「王女、お前が勇者から受け続けた『愛』とお前が持つ『愛』で変質したその首飾りなら勇者を救える筈なんだ」


    「……でも、どうしたら…」

    勇者ロト「呪文の詠唱を教える!! それを姫が唱えるんだ……!」

    勇者ロト「『王女の愛』で勇者を救えないようじゃ、絵本にも出来ねえんだよ!!」


    734 = 706 :




    ―――――― ッッ!!



    大気が、震えた。

    極限の『怒り』の頂点に達した竜王の魔力が、更に膨れ上がる。


    ゴッ!!


    凄まじい風が巻き起こり、


      バリィィッ!!


    漆黒の雷が海を叩き割る。



    大魔王ゾーマも到達出来なかった究極の『進化』。



    735 = 706 :





    【【 ッッ!! ォォオオオオオオオッッ!!!! 】】




    巻き上がる海水をドーム状に弾き、そのまがまがしい雄叫びに激しく唸る雷。

    進化の頂点に達し、内なる闇を解放した竜王の魔力がまだ膨れ上がる……!







    【【 オオオオ!! ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!! 】】








    736 = 706 :




    勇者ロト「……!?」


    ゾクリ と、勇者ロトの背中が凍りついた。

    凄まじ過ぎる闇の力に、恐怖すら覚えたのだ。


    勇者ロト(ゾーマ以上……ね、俺1人じゃどうにもならないのはわかってたが……)

    勇者ロト(はっきり言って、規格外の強さだ……『仲間』がいてもこのレベルの敵相手じゃ太刀打ちのしようがない)


    だが、と彼は心の中で付け加えた。



    勇者ロト(………この2人なら、『勇者』にならどうにか出来るって時点で……次元が違うか)



    「…………………」


    737 = 706 :





    ―――――― 全てのモンスター達が、『闇』に飲まれていた。



    「ひぃぃ!! 竜王様、おやめ下さい!! おやめくだっ……ゴェッ」


    ドラゴンもスターキメラもキラーリカントも死霊の騎士も、

    全てのモンスターが、『闇』に飲まれていく。


    アレフガルド全体に竜王の『闇の衣』が魔力を欲し、更なる魔物達を喰らっていく。


    何千何万、竜王の暴走した闇は巨大化し続けた。




    738 = 706 :




    崩れ落ちていく体を引きずりながら、勇者ロトは立ち上がった。


    勇者ロト「何があっても詠唱を止めるな、最後まで唱えろ……」


    羽根のように軽い筈の『精霊剣』を、とても重そうに握り締める。

    彼の目は、空に広がっていく『闇の衣』の中心に君臨する怒りの魔王を捉えていた。


    勇者ロト「多分ダメージすら与えられないかもしれないが、それでももう一度『ギガデイン』を撃ってみる」

    勇者ロト「それで駄目だろうがなんだろうが、俺は元の世界に戻っちまう」


    勇者ロト「……信じてるぞ、お前らの『愛』」

    「……………」コクッ



    勇者ロト(さて、行くか……)


    勇者ロト(………帰ったら、絵本でも書いて隠居したいもんだ)


    伝説の勇者は、竜王に向かって飛んだ。



    739 = 706 :





    ―――――― (……ここは?)




    ―――――― (………ああ)


    ―――――― (俺……死んだのか)


    ―――――― (……今までまともに見渡した事は無かったけど、真っ暗だな)


    ―――――― (……地獄か……)




    740 = 706 :




    ―――――― (……姫……)


    ―――――― (ここって、姫にも会えるのかな……)


    ―――――― (……て、んなわけないか)


    ―――――― (はは………)


    ―――――― (……姫……)


    ―――――― (姫……姫……………!!)



    741 = 706 :




    ―――――― (ここで終わりたくない!!)


    ―――――― (約束したんだ!! スラリンと、姫を必ず守るって!!)


    ―――――― (……出してくれ)


    ―――――― (ここから出してくれ!! 姫を、姫を助けに行かなきゃいけないんだよ!!)


    ―――――― (誰でもいいから!! 生き返らせてくれ……!!)



    742 = 706 :




    ―――――― 【 奇遇ではないか、我もそう思っていたのだ 】



    ―――――― (っ、誰だ?)


    ―――――― 【 我か……名乗る必要はない 】


    ―――――― (……頼む、力を貸してくれないか)


    ―――――― 【 ほう、どうすれば良いのだ 】


    ―――――― (分からない、だけど……竜王に勝てるだけの力を貸してくれ!!)


    ―――――― 【 面白いな、我も死人なのに力を貸せと言うか 】



    743 = 706 :




    ―――――― (…………)


    ―――――― 【 そなた、名は何という 】


    ―――――― (俺か? 勇者だ)


    ―――――― 【 勇者だと? フフフ、益々面白い・・・ 】


    ―――――― 【 勇者よ、そなたに『大賢者』たる魔力を授けよう 】





    ―――――― 【 この魔界の大賢者・・・『ゾーマ』の力を、そなたへの祝福としてな 】




    744 = 706 :




    ―――――― 伝説の勇者は消えた。


    もはや、竜王の前に立ち塞がる者は存在しない。

    もはや、竜王に戦いを挑む力を持つ者は存在しない。


    【【 ・・・ 】】


    だが止まらない。

    暴走した『闇の衣』の力を、竜王は辺りに構わずぶつけたかった。


    そして視界に入る、ラダトームの王女・姫。



    【【 ガァァぁアアアあ”アアアア”アアアッッ!!!!!! 】】




    暴虐の怒王の矛先は既に向けられた。


    745 = 706 :





    (お願い勇者……)

    (生き返って、勇者……! 助けて!)



    勇者ロトに教えられた詠唱を全て唱えあげる。

    そして、彼女は胸元に下がる『王女の愛』を掴み取って祈る。


    (勇者……!!)


    勇者に口づけをし、彼の耳元で静かに囁く。

    その思いに迷いは無くただ彼女は究極の呪文の名を告げた。




    746 = 706 :














    ―――――― 「   『ザオリク』   」















    747 = 706 :




    ―――――― カッッッ!!



    瞬間、姫の胸元から膨大な光が爆発した。

    そしてその光は静かに勇者の肉体を包み込む。



    【【 ―――― !!? 】】



    凄まじい光の力に、究極の存在となった筈の竜王が気圧される。

    暗闇に飲まれようとしていた世界が、『王女の愛』から迸る光によって照らされる。


    その光は、あらゆる者に温もりを感じさせるものだった。



    748 = 706 :




    ―――――― 「ただいま、姫」



    目も開けられない程の光の中で、勇者の声がする。


    「勇者!! 良かった、生き返っ――」

      「ここは、君はいちゃいけない」


    優しく抱き締められながら、姫は勇者の言葉が理解出来なかった。


    「何言ってる……の? 私達はずっと一緒って……!」


    「待っていて欲しいんだ、ただ信じていて欲しい」

    「俺には、姫を守る事は出来ないから・・・」


    「っ…! 嫌っ、やだ! 勇者と一緒じゃないと私・・・!!」


    749 = 706 :




    ―――――― 彼女の唇に、勇者の唇が重ねられる。


      それはとても優しく、儚いキスだった。


      姫の声が出なくなる。


    「……」


      目の前にいる勇者は、姫の為に人間である事を捨て幼い時より『勇者』という化け物になる事を選んだ。


      そして、姫という彼だけの小さな世界を守る為に彼は何度も死を乗り越え、力を手にした。


      その次元はもはや神すら超えても尚、彼は姫の為に、『彼女だけの勇者』として剣を握った。


      そんな彼を、姫に止める事など出来るのだろうか?



    750 = 706 :






    「……どんなに時間がかかってもいいから」




    「 必ず、迎えに来てよ? 勇者! 」





    勇者「……約束、だな」







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