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    元スレ黒子「……好きにすれば、いいですの」

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    451 = 447 :


    「ああっ!?」

     サーモンピンクの乳首を、人差し指と親指の爪が、きゅっ、と抓った。

     軽い痛み。それを数倍する快感。

     あからさまな喘ぎが、思わず裾を離した白井の口からあがった。

     両手は塞がっている。ぺちゃっ、と無駄な肉のない腹に落ちた裾部分が唾液の音をたてた。

     手の形にもりあがった服の下でモゾモゾと指がうごめき、そのもりあがりに邪魔されて尻を犯す右手の動きが見えなくなった。

    「ああっ、んんあっ、あああっ、あはあっ」

     見えなくなった――視覚による興奮を得られなくなった白井の身体は、それをさらなる動きで代用しようとした。

     ぐぽっ、ぐぽっ、と尻が音をたてる。空気の出入りを自覚して、白井の胸に羞恥がわき、

    「だめぇっ! わたくし、あぅんっ、恥ずかしっ、あっ! ああっ! ああああっ!」

     羞恥は瞬く間に自虐の快楽に変わった。

     アナルバイブが引き抜かれるごとに、押し込まれるごとに空気の音が響き、あわせてグイグイと絶頂までの水域があがっていく。

     何も考えられない――考えなくていい、真っ白の世界が見えてくる。

    452 = 447 :


    「あぁっ! だめですのっ! ああんっ! 声っ! だめっ! ひああっ!」

     声が抑えられない。

     それだけは、と微かに残った理性が、自制を叫ぶ。

     白井の無意識はそれを拾い、頭の片隅に置くことを許した。

     しかしそれは、外向きへは防衛意識であったが、内向きへは違っていた。

     無意識の選択は、危険の自覚。味を覚えはじめた、別の快楽の火種。 

     声が個室から漏れてしまう。

     トイレに響いてしまう。

     誰かに聞かれてしまう。

     人に、気がつかれてしまう。

    453 = 447 :




     こんな自分を、見られてしまう。



    454 = 447 :


    「――ふあっ!」

     ゾクゾクゾクッ、と今までで最大の痺れが背中を撫でた。

    「あっ、あっ、あっ、あっ」

     グポグポと。クリクリと。

     口元からよだれを垂らし、白井は霞んだ瞳で前を見る。

     目の前にはドア。カテーテルのかかったドアは開いていない。

     だが、白井の瞳には、立っている誰かが見えた。

     ここを開けた誰かの驚いた顔。

     次の瞬間に浮かぶだろう戸惑いの顔。

     そして最後に浮かぶであろう、軽蔑の顔。

     その顔は――

    「っ!」

     白井がそれが誰なのかを認識した瞬間、左手が乳首をつねりあげた。右手がアナルバイブを根本まで肛門に突きこんだ。

     右手の親指が掬い上げるように動いて、包皮から完全に外に出た、グミのように固くなった陰核を、ぴん、と弾いた。

     手の届きかけた絶頂が、転がり落ちてくる。

     反射的な動きで上半身は身を縮め、M字の脚は限界まで引き寄せられた。

    「イクっ! イクっ! あああああっ!」

     顎をあげ、嬌声をあげる白井。

     舌先から跳ねた唾液が、動きに引っ張られて、円弧の軌跡を描いた。

    455 = 447 :


     そして、休憩時間は、あと20分。

     今から後始末をすれば、余裕をもって仕事に復帰できる時間だ。

     こんなことで、焦らずにすむ時間だった。

     だが。

    「こんなの、だめですの」

    「こんなの、あの人に見せられないですの」

    「我慢できなかったことがわかってしまいますの」

    「……」

    「……これをくわえてもいませんし」

    「……くわえてたら、声はたちませんの。彼に、ばれませんの」

    「……消して、もう一度撮り直せば……」

    「……もう、一度」


    456 = 447 :



     次の日。

     昼休み。

    「……・、……」

     常盤台中学校のトイレ個室は、流石の施設だ。

     完璧な防音密閉脱臭静穏機能は、背中側でドアが閉じる音を内部にも外部にも響かせない。

    「……、……」

     しかし中に入った白井は、背をドア内側にもたれかけ、右手で胸を押さえて俯いたまま。

     その唇が、小さく動いていた。

     何かを、繰り返し、呟いている。



    『第三位の露払いを自称するなら、もっとしっかりした方がよろしいのではなくて?』



     午前中に行われた能力測定。

     散々な結果だった白井に、投げ掛けられたトンデモ発射場ガールの言葉。

     きっとそれは、彼女なりの叱咤激励だったのだろう。

     だが。

    457 = 447 :


    「……、……」

     空洞のような瞳で、繰り言を紡ぐ白井。

     叱咤激励は、それを放った本人が想像もしていなかった影響を白井に与えている。

    「……、……」

     もう何度目かもわからない、言葉の繰り返し。

     一度止まった唇が、再び開こうとしたところで、個室内に据え付けられた小さなスピーカーから、チャイムの音が響いた。

     予鈴だ。昼休みが終わる。

    「……」

     白井はそこで呟きを止めた。

     目を閉じ、息を吐いてから、顔をあげる。

    「いつもの、わたくしですのよ」

     うっすらと微笑みを浮かべた、『普段の白井黒子』の顔が、そこにはあった。

    458 = 447 :


     夕刻、風紀委員活動中、休憩時間。

     ビジネスホテル。

    「んっ、んんっ、んんむぅっ!」

     右手で股間を押さえて数回。

     僅かにのけ反り、天井を見ながら痙攣した後、白井は、何も纏っていない肢体から力を抜いた。

    「――ぷぁ、……はぁ、はぁ、はぁ」

     胸に当てていた左手で、口からバイブレーターを取り、そのまま横に置く。シーツに唾の染みがついた。

    『んっ、んふっ、んむっ……』

     備え付けのテレビから漏れる艶声――美琴によく似た少女が少年に奉仕している――だけを残し、室内に静寂が満ちる。

    「……」

     しばらくそのまま息を整えていた白井は、けだるげな動きで身を起こし、テレビの横に置いてあった携帯電話に手を伸ばした。その動きについていけなかった黒髪が一房、ふわりとその翻る。

     小さなボタンを、蜜に濡れた指が押す。離れた指先からひいた糸が切れると同時に、撮影を示すLEDが消えた。

    「……」

     やるべきことを――風紀委員の休憩時間中に『拡張』し、その後の自慰行為も性具をくわえて行った白井は、ぽふりとベッドに座り込む。

     丸みを帯びたというにはまだ乏しい尻を、ベッドはギシとも言わず受け止めた。シーツにシワがよる。

     太もも内側の、蜜の跡。まだ渇き切っていないそこに、寄って盛り上がったシーツの一部が張り付いたのを、白井はまだ敏感な肌で感じ取った。

     媚薬入りのローションは、変わらず白井の性感を短時間で開花させてくれる。

     使えば、使うほど、早く。

    459 = 447 :


    「……」

     数秒。

     風紀委員の訓練で鍛えられた少女の呼吸は、もう調いかけていた。動画の保存も終わり、もはやこのホテルに用はない。

     だが、目の前のテレビの映像を見る白井は動こうとせず、その目もどこか放心したように、ぼんやりとしたものだった。

    (昨日は結局バタバタしてしまいましたし……広い分だけここは楽でしたの)

     今までは公衆トイレだった休憩時間の行為を、今日ビジネスホテルにしたのは、昨日の失敗を踏まえてのこと。

     狭い場所ではどうしても後始末に時間がかかり、シャワーがないため、ニオイ消しにも手間取ってしまう。その点、ここならばシャワーがあるだけ、楽なのだ。

     休憩時間に入り、能力を使って着替えを済ませる。ビジネスホテルの近くで休憩時間になるように計算していた警らコースのため、チェックインまで3分。

     そしていま、一連の手続きを終えて、残り時間は30分。

     昨日よりは早く、動画も問題ない。

     後始末はシャワーを浴び、身体の表面の水を転移させれば、すぐに済む。

     これは、利便性を考えた末の結論なのだ。

    「……」

     白井のぼんやりとした表情に、自嘲の微笑。

    (そう、ですの)

     そのように、彼には説明するつもりだった。

    「……」

     だが白井は自覚している。

    460 = 447 :




     ――それ以外の理由が、自分の中にある。



    461 = 447 :


    (わたくし……嘘ばかり、ですの)

     いつの間にか下を向いていた視線を、再びテレビに向ける白井。

     動画はいつの間にか、四つんばいになった少女が、少年に尻を向けて誘っている場面に変わっていた。

    「お姉様……」

     ポツリと呟く。

     動画の少女が美琴ではないと確信している。 

     それでも浅ましい欲望は、どうしてもその声を、表情を、瞳を、美琴と重ね合わせてしまう。

    「お姉様……」

     僅かに、息が速度が上がる。

     少女の尻を少年が掴み、押さえつけるようにして身体を寄せた。

     ビクビクと震える唾液にまみれたペニスが、少女の股間にあてがわれた。

    「お姉様……」

     白井の左手が、ゆるりと胸に当てられた。

     その行為の真意は、美琴に似た少女の痴態に胸が痛んだのか、否か。

     視線の先で、アップにされたカメラが、ズブズブと肉裂に沈んでいくペニスを映し、少女の嬌声を的確に拾う。

    462 = 447 :


    「お姉、様……」

     白井が右手を股間に添えた。

     息がもうあがっている。

     画面の中の少女はあられもない声をあげ、貫かれるだけでは足らず、自ずから腰を振りたてていた。

    (あぁ……)

     身体が燃え上がっていくのを感じる。

     中途半端に餌を与えられた欲望の獣が、再び動き出すのを感じた。

     先程は、彼に送信するために抑え気味の行為だった。

     自身への愛撫も映像への注意もそこそこに、媚薬の力を借りて駆け上がったかのような絶頂。

     ゆっくりと根本から持ち上げられた上での、極まったものではない。

    『ああっ! あっ! ああんっ! もっとっ、もっと突いてっ!』

     少女が短い髪を振り乱す。

     後ろから少年に激しく貫かれるその様は、発情期の犬か何かのよう。

     そしてその体勢はきっと、

    (わたくしも、こんな風にサレましたの……?)

     あの日、あの時、この場所で。

     こんな風に正体をなくし、彼に。

    463 = 447 :



    「はぁ、はぁ、はぁ」

     左手が、右手は動き出す。

     時間は後27分。

    (だめですの……これからでは、間に合わないかもしれないですの……)

     20分で、終わらせられるだろうか?

     7分で、シャワーを浴びて身支度を整えられるのだろうか?

     27分後に『いつもの白井黒子』に戻れるのだろうか?

    「ふぁ……あ、あっ、だ、だめ、ですのにぃ……」

     クチュクチュと音が立ち始めた。

     瞳が再び霞み始める

     白井の脳内で、映像の少女が美琴の姿から彼に犯される自分自身に変わっていく。

    464 = 447 :


     ここに入る前。

     休憩時間でも、ビジネスホテルを使おうと決めた、そのときに思ったこと。

    (声が、漏れたら困りますもの)

    (不自然ではありません。今までも、公衆トイレが使えないことはありましたし……)

    (万が一、声を押さえられなくても大丈夫ですから……)

     それは、もう自覚できるレベルで、声を抑えきれないということ。

    465 = 447 :


     そしていま。

    「ああんっ、ああっ、わたくしっ、あああっ!」

     あられもない声は、映像の他に。

     もうひとつ。

    466 = 447 :


     夕刻。

     風紀委員、○○支部。

    「白井さん、警らですか?」

    「ええ、そうですの。貴女は今日は、珍しく外出のようでしたけれど?」

    「そうなんですよ。なんでも支部の端末でいくつか妙なエラーが出たらしいんです。今日はそれの修復と対策ですね」

    「ウィルスや、ハッキングの線はありませんの?」

    「そっちの心配はありません。ただ、ついこの間更新された業務システムの一部との相性が悪いみたいです」

    「システム化も良し悪しですわね」

    「まぁ、相性だけはいつまでもなくならない問題なのかもしれませんねぇ」

    「貴女なら大丈夫でしょうけど、がんばってくださいまし」

    「はい、ありがとうございます」

    「では、わたくしは行ってまいりますの」

    「あ、白井さん」

    「はい?」

    「いえ、特にたいしたことじゃないんですけど」

    「はあ」

    「最近よく、そのバッグ持ってますよね。」

    「え……」

    「いえ、今までは白井さんって、基本的に手ぶらで警らが多かったじゃないですか。それなのに最近、そのバッグを持ってますから。ちょっと気になっただけなんですけど」

    「……」

    467 = 447 :


    「? 白井さん?」

    「あ、い、いいえ、なんでもありませんの。これはその……着替え、ですわ」

    「着替、ですか? でもなんでまた」

    「この間、空間移動した時にうっかり泥水の真上に着地したことがありましたの。その時は帰り道だったので良かったのですが、活動中にそんなことになってはいけませんので。……取り締まる側の服装が乱れていては、説得力にかけますの」

    「はー、なるほど。確かに足元まで見て跳ぶのは難しそうですもんねぇ。それに説得力の維持ですかー。やっぱり現場の人は色々なことまで考えるんですね」

    「ええ、そうですのよ」

    「あ、今から仕事なのに、つまらないことですみませんでした」

    「いえ、構いませんわ。では、行って参ります」

    「警ら、気をつけてくださいね」

    「あら、誰に向かって言ってますの?」

    「あはは、ですよね。白井さんが負ける人なんて、それこそ数えるほどしかいませんもんね」

    「……ええ、そうですわね」

    468 = 447 :


     夕刻。

     風紀委員待機日。

     ビジネスホテル。

     メールには彼から「今日は行く」との返信。

    「ご、ご奉仕、いたしますの」

    「ああ」

     お互いにシャワーを浴び、お互いに全裸のまま。

     昨日、休憩時間ギリギリまで自慰による快楽を貪ったベッドの傍らに正座した白井は、その真正面に立った彼のペニスに唇を寄せた。

    「ん……」

     ちゅっ、と醜悪な先端に瑞々しい唇が触れる。

     僅かに押し当てられ、すぐに離れ、またすぐ押し当てられる。

     実際の音は小さなものだ。

     しかし鳥が果物を啄ばむがごとく、少しだけでも触れ合えば、そこに音は生まれる。

     それを自覚してさえいれば、音は脳が勝手に作り出してくれる。

     ちょうど漫画で、無音の場面を『シーン』と表現するように。

     ビジネスホテルの部屋の中、白井の耳には、ちゅっ、ちゅっ、と男性器の粘膜と、女性の唇の触れ合う音が響いていた。

    469 = 447 :


    「んぅ……」

     尿道から、亀頭。

     亀頭からカリ首。

     カリ首から、裏筋。

     裏筋から、根元まで。

     キスの雨がペニスに降らされ、その後、

    「は……ん……」

     ちろちろと、小刻みに左右に動きながら、舌先が先端まで駆け上がる。

     そして再びキスの雨。

     また、小刻みな駆け上がり。

     何度も繰り返される口淫。

     それは単一の動きではなかった。

     正面から降りていき、その道を逆に返るだけではなく、時には右から、あるいは左から。

     登るときも同じ道と、異なる道を、ランダムで選択した。

     押し当てるものもキスだけではなく、時に頬であり、舐め上げるのも舌先だけではなく、ぬろぉっ、と舌全体を使う。

    470 = 447 :



    「っ」

     右手を当てた彼の左腿と、左手を添えた彼の右腿が、彼の飲み込んだ声とともに震えるのを感じる。

    「……」

     目を閉じた白井は、彼の表情を視認することはできない。 

     それでも、その反応が何を示しているのか、わからないわけがなかった。

    (……次、こうすれば)

     顔を傾け、ちょうどフルートを吹くように、ペニスを横から唇で甘く加え、そのまま唇を滑らせる。

     根元から先端まで。そしてそのまま逆側の根元まで。

     繰り返す、繰り返す、繰り返す。

     彼の脚が震える。彼の脚が震えた。彼の脚が、震えを返す。

    (……)

     手を沿えた自分はそれをどう感じているのか。

     白井はそれにあえて目を向けない。

     向けてしまったら『彼に陵辱される白井黒子』が、剥がれてしまうかもしれない。

     そうなってしまえば、もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。

    471 = 447 :


     自分は魔女だ。

     嘘つきで、二枚舌どころか三枚も四枚も舌を持つ、己のもっとも敬愛する人も、もっとも憎い人もだます、魔女。

     しかし魔女は泪を流せば、その力を失ってしまう。

     ただの娘に戻ってしまった本当の『白井黒子』は、どんな顔をしているのか。

     それは、知りたくなかった。

     だから白井は目を閉じる。彼の反応を、少しでも見ないために。己の心に、何も浮かばないように。

     そして白井は目を閉じる。頭の中で、動画の少女の動きを少しでも思いだせるように。少しでも早く彼が絶頂に至ってこの陵辱が終わるように――そう、白井が思っていると、彼にも、白井自身にも疑わせないために。

    「くっ……白井、そろそろ咥えてくれ」

    「はい……」

     彼の指示に、一瞬だけ躊躇う素振りを見せてから、白井はペニスを口腔に納めた。

     この数日、自慰の時にバイブレーターを口に宛がっていたためだろう。自分でも驚くほど深くまで飲み込むことができて、そして臭いにも味にも大きな拒否感を感じなかった。

    472 = 447 :



     今日は待機の日だ。

     時間制限は、呼び出されることがなければ、門限だけ。

     

    「いいぞ白井。っ……、うまくなったな」

     彼の右手が前後に揺れる白井の頭に置かれた。

    、相対的な動きではなく、彼自身の右手が優しく柔らかく、乾ききっていない白井に髪を解いていく。

     それを、彼女はどう思ったのか。

     彼の右手と、腿と、そしてペニスから伝わる熱を、どう感じたのか。

    「んんっ……んふっ……んっ、んっ……」

     白井は、それを考えない。

     考えてはいけないと、考えていた。

    473 = 447 :


    「あの……もしかして白井さん、ですか?」

    「!?」

     休憩時間。

     私服に着替えて髪を解いた白井の耳に、予想もしていなかった声と言葉が飛び込んできた。

     動揺、焦り。

     反射的に振り向いた結果、後悔が追加される。

     どこか自信なさそうにこちらを見ているのは、

    「佐天さん!?」

     思わず名前を呼んでしまった。 

     まずい、と思った時は手遅れだ。

    「やっぱり! どうしたですか白井さんそんな格好で!」

     一瞬にして迷いある視線から好奇心で埋め尽くされた視線に。

     四人組の中で最も好奇心の強い彼女――涙子は、身を乗り出すようにして白井に半歩近づいた。

    「い、いえ、その、これは」

    「にっひっひー。もしかしてあれですか白井さん。彼氏さんでも出来たんですか?」

    474 = 447 :


    「っ!」

     彼氏。

     男性。

     彼。

     白井の表情が強張る。

     涙子はそれを見逃さなかった。

    「おおっと、その反応。えー、いつですか白井さん。いつの間に男の人に興味を? というか御坂さんはこれ知ってるんですか? そんな格好してるのはやっぱり学校が厳しいからですよね? これから秘密のデートとかですか?」

     矢継ぎ早に畳みかける質問。

     相手の動揺がなくならないうちに頭を一杯にさせて混乱させる。

     そうなれば相手は質問への理解と、答えを考えることに終始しなければならない。それが後ろめたいことならなおさらだ。混乱は混乱を呼び、受け答えは曖昧になる。

     パソコンでいえば処理落ちさせると言ったところか。

     この状態から漏れる言葉は真実であることが多く、仮に嘘であってもその場凌ぎで深く練られていないため、容易に看破できるのだ。

     これが美琴相手で、話題が『好きな人』だったら高い効果をあげたに違いない。

     しかしここにいるのは美琴ではなく白井であり、そして白井は誰よりもこのことを他人に――美琴に知られたくないと願っている人間だ。

     こんなときにどうするか、考えていないわけがなかった。

     白井は即座に右手で涙子の口を塞ぎ、そのまま空間移動した。

     直近のビル――いつも使うビジネスホテル――の屋上に移動すると、すぐに手を離して、今度は彼女の両手を、ぎゅっ、と握った。

    475 = 447 :


    「佐天さん。わたくし、今は秘匿捜査の最中ですの」

    「え……」

     一瞬で風景が、さらに白井の表情が極めて真剣なものに変わったことで、おちゃらけていただけの涙子の目が驚きの色を浮かべる。

     白井は言葉を続けた。それこそ、先の処理落ちの仕返しのように。

    「詳しいことは言えませんが、これは風紀委員でも極秘のものですの。初春も知りません。わたくしがこんな格好をしているのも、常盤台の生徒は常に制服であるという心理的盲点をつくためですの。実際、佐天さんもわたくしであると確証が持てなかったでしょう? そういう点と、何かあっても離脱の容易なわたくしがこの捜査に従事することになりましたの」

    「そ、そうなんですか」

    「初春でさえ、今日この時間、わたくしは警らに出ているものと思っています。仲間にも存在を隠さなければならない類のものですの」

    「……」 

     ようやく理解が追いついたのか、涙子の表情が引き締まった。

    「ですから、このことは初春にも、お姉様にも秘密にしてほしいんですの。今日ここでわたくしと接触したことも、絶対に漏らさないでくださいまし」

    「はい、わかりました」

     即座に涙子は頷いた。

    「このことは絶対、誰にも言いません。初春にも、御坂さんにも。もしどこかでまた白井さんを見かけても、その格好をしてる限りは知らんぷりした方がいいんですよね?」

     期待どおり、涙子は真剣に確認をとってくる。

     彼女も何度か、命の危険を孕んだ事件に遭遇している。なんのかんの言っても、白井の仕事の重要性は知っているのだ。

    「ええ、お願いします」

     頷く白井。

     この様子ならば、彼女から漏れることはないだろう。



     ――それを見越して嘘をついたのだから、当たり前なのだが


    476 = 447 :


     夕刻。

     風紀委員活動中休憩時間。

     ビジネスホテル。

    「ああっ! ふああああっ! だめぇっ! ああっ! 強いですのっ! んふぅあああっ!」

     浴室で、白井は四つんばいで大きく喘いでいた。

     とうに『洗浄』は済ませ、その後の自慰も終わらせている。

     撮影用の行為は『彼に陵辱される白井黒子』が済ませた。

     そしていまは『いつもの白井黒子』に戻る前の、空白の時間。

    「あはあっ! ああっ! いいっ! いいですのっ! あっ、こんなっ、すごっ、あっ、あっ、あっ!」

     力抜けた腕は上体を支えず、膝を立てた尻は高く上がり。

     固くなった乳首を先端に持つ乳房は、小さく揺れ。

     媚薬入りローションゆえ、あるいは、白井自身の身体の作用でぐしょぐしょに濡れた秘裂は右手が弄び。

     その尻たぶの間からは、もう使い慣れたと言っていいアナルバイブが突きこまれ、肛門はそれを放すまいと強く締まり。

     そして左手に握られた、四角形のリモコンのスイッチは、ONになっていた。

     今まで一度たりとも使わなかった、アナルバイブの遠隔操作用のリモコンが。

    477 = 447 :



    「んんっ! んぁっ! くぁっ! もっとっ! もっと、強くっ! ああぁっ!」

     グネグネと、尻から映えた性具が蠢いている。

     腸内をかき回す振動。肛門入り口を押し広げようとする動き。どんなに力をこめても、徐々に引き抜けていく刺激。

     潤みきった白井の瞳は何も映していない。

     何も見えていない――いまここで喘いでいる淫らな『自分』はなんなのか、白井自身にもわからなっていない。

     白井に意識の中にあるのは、ただ尻穴から突き上げる快感と、昨日、彼に奉仕したときに口内に満ちた白濁液の味と臭い。

    「あっ、あっ、あっ! ああんっ! 当たってますのっ! 奥にっ!」

     彼は昨日、口淫以外は何もしてこなかった。

     口で、二回。

     いずれも白井が彼を導き、無理に動かされることすらなかった。

     彼にされたことはただ、頭を撫でられることのみ。

     確かに拒否の態度は示した。憎悪の視線を向けた。憎まれ口をたたいた――いずれも、尻の奥が疼くのを隠しながら。

     しかし、白井に拒否権はないのだ。

     彼がその気になれば、尻も。

     純潔も。

    「あっ! ああっ! はぁぁっ! だめっ! イクっ! イッちゃうっ! イッちゃうぅっ!」

     白井は上り詰めていく。

     何を考えているのか、何を望んでいるのか、それをあたかも遮断するように。快楽で塗りつぶしてしまうように。

     白井の左手がカチリとメモリを『最強』に移動させるとともに、右手が陰核を強く強く摘みあげた。

    478 = 447 :



     午前中。

     常盤台中学校。

     校庭。

     今日は能力誤差修正訓練。

     先の測定で落差が大きかった生徒が受ける訓練だ。

    「はー、こんなものですのね」

     呟きながら白井は、手の中のA4の紙をピラピラと振った。

     書かれているのは修正訓練結果。

     いずれの数値も、元来の白井の測定値に戻っている。

    「調子が戻ってきた、ということか?」

     担当の教師が微苦笑しながら問うてきた。

    479 = 447 :



     それに白井は、同じような苦笑を返し、

    「まぁ、オンナには色々とありますのよ」

     と、言った。

     教師も女性だ。それだけで何が原因なのかを把握したらしい。

    「それはちょっとどうしようもないが、極力、体調は万全にな? 特に白井は風紀委員もしているのだから」

    「お気遣い痛み入りますの」

     ペコリ、と優雅に頭をさげる白井。

     体操服であっても、仕草は完璧だ。

     そう、まさに、いつもの彼女。

     いつもの、彼女である。

    480 = 447 :


     夕刻。

     風紀委員活動中休憩時間。

     ビジネスホテル。

     電子音がなっている。

     音源は、テレビの横に置いてある、白井の携帯電話。

     4回ほどコールが鳴った後、粘液に濡れた手がベッドから伸びて、携帯を取った。

    「も、もしもし。ああ、初春、ですの?」

    「休憩時間は過ぎてっ、ぅぁっ、はいっ、申し訳ありませんのっ、すぐに……」

    「い、いえ。っ! ちょっと、体調不良でっ……すのっ」

    「そこまではっ、はいっ、ええっ、ぅぅんっ、少しだけっ、休んでもっよろしいですのっ?」

    「っ、っ、っ……はいっ、お願いしますっ、の。ええっ、またっ、っ、連絡を入れますのっ」

     通話が終わり、携帯電話は即座に投げ捨てられた。

     粘液の水音と、何かが振動する機械音。

     そして艶やかな声。

    481 = 447 :


     下校中。

     風紀委員準勤務日。

     カフェテラス。

    (……)

    「黒子? どうしたのよぼーっとして」

    「えっ!? な、なんですのっ?」

    「わっ!? びっくりした!」

    「あ、え……あ、も、申し訳ありませんのお姉様」

    「いや、いいけど……どうしたのよアンタ。なんかさっきからぼーっとしちゃって」

    「いいえ、特に予定はありませんけれど……、わたくし、そんなにぼんやりとしてましたの?」

    「ぼんやりっつーかなんつーか。……もしかして今日、なんか用事でもあった? それともこの喫茶店、気に入らなかった?」

    「そ、そんなことありませんの! わたくし、お姉さまのお誘いでしたら、火の中水の中電撃の中! どこにでも駆けつけますわ!」

    「いやそれは自重しなさい」

    (……あれ? いつもの黒子だ。おかしいわね。なんだかさっき、やけに見慣れない黒子がいた気がしたんだけど)

    「はー……お姉様はつれないですの。いったいいつになったらわたくしを受け入れてくださるのやら」

    「流し目送ってくんな! 私はノーマルだって言ってるでしょうが!」

    482 = 447 :



    「まぁまぁまぁ。お姉様、いけませんわ。世界では場所によっては同性婚も認められているのですわよ?」

    「そ、そりゃそうかもだけど……でも私はそういう趣味はないんだから!」

    「うえへへへへ、でもお姉様。いやよいやよも好きのうちと……っ!?」

    「? 黒子?」

    「あ、あ、い、いえ……なんでもありませんわ」

    「いや、なんでもないって顔じゃなかったわよ? アンタ、ほんっとーに大丈夫なの? やっぱ疲れてんじゃ……」

    「そ、そんなことありませんの! ちょっと自分の台詞で思い出したことがあっただけですの! お姉様が心配することなど、何一つありません!」

    「いや一応、頭こっち出しなさい。ちょっと体内電流で簡単にだけど体調チェックしてあげるから……」

    「……」

    「黒子?」

    「……お姉さまに心配していただけるなんて、黒子は! 黒子はー!」

    「だー! また禁断症状かあんたわぁぁぁぁぁ!」



     空気を切り裂く音が、カフェテラスに響く。

    483 = 447 :


     そして、その次の朝。

     朝食が終わり、美琴が恒例の漫画立読みに出かけてから。

     らしくなく、なんとなくゴロリとベッドに寝転がった白井の携帯に、着信があった。

    「……」

     枕の横にある携帯。

     これもまたらしくなく、ノロノロと手にとり、スイッチを押す。
     
     すすっ、と出てきたシート状の画面には、メール着信を示す表示。

    『午後から』

     簡単な、たった一文だけのメール。

    「……」

     だがそれは、らしくなくぼんやりと天井を見つめていた白井を、すばやくベッドから立ち上がらせるのに十分な内容だった。

     今日は風紀委員は休みの日。

     なんの予定も入れてない日。

     二週間ごとに来る、彼からの呼び出しの日。

    484 = 447 :


    「……」

     白井はシャワー室に向かう。

     うつむいたその表情は、前髪に隠されて、見えない。

     今の彼女は、どの彼女なのか。

     それは怒りで赤くなった白井の首筋が顕している。

     それは羞恥で赤くなった彼女の耳が示している。

     それは屈辱に噛み締められた少女の唇が訴えている。



     だが真実は。

     仮面の下にある『白井黒子』は。





     赤くなった、オンナの頬だけが、知っている。

     

    487 :


    順調に堕ちていってる黒子たまらん

    488 :

    よっしゃ来とった乙

    489 :


    ここの上条さんは相当自制心が強いな

    490 :

    うおお今回は長いぞ
    超乙です
    セルフ開発エロいすなぁ

    491 :

    エロエロやないですか!
    乙!

    492 :

    それでも佐天さんは怪しんでいると信じたい…!

    493 :

    そして黒子を尾行した佐天さんは、上条さんの餌食に……

    494 :

    予想はよそう

    495 :

    もっとゲス条が読みたいんだよ!

    496 :

    黒子が幸せそうで、なによりです

    497 :

    うっ、ふう・・・・・・

    498 :


     午後0時になる10分前に、白井は寮を出た。

     メールの指定は午後から。ホテルは空間移動すればほんの数分で辿り着ける場所にある。

     しかし空間移動系能力者は学園都市でも希少だ。着替えているとは言え、自分に繋がる確率を少しでも減らすためには歩くのが無難だった。

     いつものように制服姿の白井は、最寄の公園に脚を運び、その公衆トイレの個室に入った。

     ここではまだ着替えない。不自然にならない程度の時間をおいて、何もせずに出る。

     そのまま誰も入らないことを視界の端で確認しながら、精密転移限界距離まで徒歩で離れて、そこから能力を使って再度個室に。

     こうしておけば『白井が入った個室から別の人物が出てきた』という目撃を減らすことができる。

     個室の中で着替えた後は、普通に出る。

     今度は転移先が見えない以上、迂闊に能力は使えない。それに『突然出現した私服姿の少女』が目撃されては、白井にたどり着く可能性が残ってしまう。

    「……」

     もはや流れ作業のように、いつものこととして一連の作業を終えた。

    (……もう、これも習慣化してますのね)

     個室のドアを内側から押し開ける白井の口元に、ふっ、と自嘲と諦観の笑みが浮かぶ。

     しかし、どうすることもできない。

     耐えるしかないのだ。

     彼からの凌辱にも。

     ……美琴からの笑顔にも。

    499 = 498 :


    「っ」

     出入口までの短い通路を歩く白井が、眉を詰めて胸を押さえた。

    (……お姉様、申し訳ありません。黒子は、お姉様を騙していますの)

     安らぎを感じる相手の笑顔はいま、それと同時に痛みを伴うようになってしまっている。

     昨日も、カフェテラスで心配をしてくれた。

     いや、昨日だけではない。

     心配をかけまいと意識している白井の小さな変化にも気がついてくれるほど、美琴はいつも気にかけてくれている。

    「……」

     だが、白井にはそれが辛い。

    (……なぜ、わたくしはお姉様にあのようなお顔をさせてしまっているんですの? お姉様の笑顔だけは、護りたかったはずですのに)

     折れた情けない自分を隠してでも護りたかったものは、いま自分のせいで曇ることが多い。

     これまでの白井だったら、たとえそれでも美琴の持つ彼への幻想を殺させないために、と考えられるだろう。

    (わたくしのせいでお姉様に無用の心配をかけていますの……わたくしのせいで……わたくしが……)

     しかし、今日はダメだった。

     今日は、思考は止まってくれない。

    500 = 498 :


     ただでさえ汚される屈辱を感じ、また事情はどうあれ美琴の想い人と同衾する罪悪感にさらされてきた白井だ。

     そこにこの数日間は折れた自分を取り繕い、嘘ばかりをついている。しかも、嘘をつくことになれてきてさえいる。

     今までは支えとなっていた美琴に対しても安らぐことのできなかった白井の精神は、彼女自身が想像している以上に憔悴していた。憔悴しきっていた。

    (……わたくしが抵抗してもしなくても、彼に身を委ねていればお姉様の身は護れる。わたくしがお姉様の前から消えれば、お姉様は憂えることもなくなる)

     疲れからの思考が――胸の中の多くを覆ってしまった黒いナニカが、どんどん自分自身を追い詰めていく。

     言葉が頭の中に響くのに伴って、白井の顔から、最後まで残っていた抵抗力が失せていった。

    (お姉様は強く、魅力ある方……わたくしがいなくとも、すぐに笑顔を取り戻し、すぐに人が集まって……)

     そこまで考えたところで通路は終わった。

     出入口を出れば、後はホテルに向かうだけ。

     ふらりと、まるでそのまま消えてしまいそうな様子で外に出た白井が――ふと、公衆トイレから出たところで脚を止めた。

     後ろめたい人間の心理として、入ったときとは逆の出口から出たせいで、最初は見えなかったモノが、目に飛び込んできたのだ。

    「……お姉様?」

     ポツリと呟く白井。

     その視線の先にあったのは、美琴の姿。

     こちらに気がつくことなく、公園の子供たちと追いかけっこをしている御坂美琴が、そこにいた。


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