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    元スレ黒子「……好きにすれば、いいですの」

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    501 = 498 :


    「……」

     きっと公園でジュースでも飲んでいたところを、子供らに無理矢理引っ張りこまれたのだろう。

     相手は5、6人ほどの男女取り混ぜたグループで、歳のころは10歳になるかならないか、という子供たちだ。流石にやりづらいのか、手加減しながら逃げ回っている美琴は、どこか困ったような雰囲気である。

     それでも、彼女の顔に浮かんだ微笑みは、本物だった。

     それは白井がずっと見ていたいと思った、笑顔のひとつ。

     護りたかったモノだ。

     今でも、護りたいモノだ。

    (そう……そうですの)

     それを見つめていた瞳に、僅かに光りが灯った。

    (わたくしは何を考えているんですの? わたくしが姿を消したとして、あのお姉様が哀しまないとでも、わたくしのことを忘れてしまうとでも、そんな方だと、本気で思っていますの?)

     答えは否だ。

     御坂美琴は、そんな人間ではない。

     納得のいく理由があったとしても、会えなくなれば必ず哀しむ。

     仕方のない事柄で離れてしまっても、絶対に忘れてなどくれないだろう。

    「お姉様……!」

     白井の顔に生気が戻る。

     白井は自分の中で腐りはじめていた何かが、急速に蘇生していくのを感じた。

     救えないところまで堕ちた自分に誇りが戻ってくるのを、明確に確信した。

    502 = 498 :


     自分は強くなかった。むしろ弱かった。

     だが、

    (お姉様とて、決して弱さがないわけではありません。いえむしろ、弱さを知っているからこそ、お姉様は、敬愛すべき優しさと強さを持っているんですの)

     視線の先で、美琴を追い掛けていた子供が、盛大に転び、これまた盛大に泣きはじめた。 

     美琴は心配そうな顔でその子供――男の子だ――を抱え上げ、ベンチに座らせる。周囲に、心配そうな顔をした他の子供が集まった。

     ベンチに座っても泣きじゃくるその子供の前に膝をついて屈み、美琴は努めて苦笑を浮かべ、「男の子がその程度で泣くもんじゃない」とでも言うように、そしてどこかの誰かを彷彿させる仕種で、男の子の頭を撫でる。

    (弱かったからと言って、それだけでお姉様の前に立てないなどと、それこそお姉様への侮辱ですの! 御坂美琴を、見損なうんじゃありませんのよ白井黒子!)

     久しく忘れていた活力が胸の中から沸き上がるのを感じ、頬が笑みを形作った。

     俯いている場合ではない。

     一度折れたからと言って、それがなんだというのか。ただ一度の失敗ですべてを諦めるのは、明らかに間違っていることだ。

     自分の中にある、護りたいという想い。それを信じられないようでは、それこそ何を信じればいいのか。

     白井は、己の中にある何かを取り戻した。そう思って、笑うことができた。

     そしてそれは、

    503 = 498 :











     しかし、ただの幻想でしかなかった。









    504 = 498 :


     傷を確認しようとしたのか、美琴が男の子の頭を撫でるのをやめて、血の滲む膝に顔を寄せる。

     その光景を見た瞬間。

    「っ!?」

     ゾクリ、と白井の背筋に何かが走った。

     ベンチに座った年端のいかない少年。

     その前にひざまづき、膝に手をかける美琴。

     それはまさに。

     いつもホテルでの『拡張』を終えた後に見ている、奉仕する直前の少女のようで。

    505 = 498 :


     白井の姿が掻き消えた。

     視界の端にあったコーポの屋上に転移し、そこからさらにテレポートする。

     周りのことを気にしていられない。

     自分に繋がる確率を少しでも減らすという、そんな思考は働かない。

     ただ一刻も早く、その場を離れたかった。一瞬でも早く、その光景から目を背けたかった。

     しかし、自身が可能な最大速度で公園から離れても、白井は逃れられなかった。

     自身が纏っている私服の下で。



     興奮で固くなった乳首が、ブラジャーを僅かに押し上げていたのだから。



     堪えることを忘れた秘裂が、下着を肌に張り付かせてしまっていたのだから。



     いや、それよりも何よりも。



     ほぼ衝動的な空間移動であったにも関わらず、到着した場所が――白井の無意識が選択した場所が、誰にも見られず、誰にも知られず、欲望を掻き捨てることのできる、いつものホテルだったのだから。

    507 :

    おつ

    510 :

    濡れ場は勿論のこと、それに至るまでの黒子の心の揺れ動きを一つたりとも逃すまいといい放つかのような細部の細部にまでに行き届いた描写に毎回読了後脱帽してるよ。
    まあ帽以外も脱いでいるんだが、な!

    511 :

    うまいこと言ったと。ドヤ顔でいるのかと思うと。ムカつく。

    512 :

    乙ヌス
    >>511
    姫神さんなにやってんすか

    513 :

    必要なシーンだししょうがないんだろうが、自慰シーンばっかで正直飽きてきてたから

    そろそろ上条さんとの濃厚なセクロスが来そうで久しぶりにwktkしとるでぇ

    514 :

    >>513
    この早漏野郎

    515 :

    ただの自慰ではないセルフ開発だ。ここ重要ね

    516 :

    真夜中になんてスレに巡り会ってしまったんだ・・

    518 :

    バレた時の美琴の反応がすげー気になる…
    どちらかもしくは両方を糾弾するのかはたまた自分自身が壊れてしまうのか
    まあ自分は美琴も入れて3[ピーーー]でも全然構わないんだけどね!

    519 :

    まだきてねーのかよ

    520 :


     ガチャリ、と部屋のドアが開いたのは、午後1時を少し回った時刻だった。

    「?」

     入って一歩。そこで彼は僅かに首をかしげた。

     いつもであれば廊下に立ってこちらを振り向く白井の姿が、そこにはない。

    「白井?」

     呼び掛けながら数歩進む。

     短い廊下を抜け、壁の曲がり角の陰から覗き込めば予想通り。

    「……」

     白井は背中を向ける形で、ベッドに腰掛けていた。

     だが、様子がおかしい。

     いや様子というよりも、一目見ていつもの彼女ではなかった。

    「珍しいな。シャワー浴びて待ってるなんて」

     白井は、バスタオルを体に巻いただけで、そこにいた。

     ウェーブのかかった髪はしっとりと濡れており、うなじも、肩も、そして彼の立ち位置からはよく見えない両脚も、汗とも湯の名残ともつかない湿り気を帯びている。

    「……」

     呼び掛けられても白井は無言。

     揃えた太もも――そこにタオルを挟み込むことで出来た溝に両手を置いた姿勢で、身じろぎひとつしない。

    521 = 520 :


    「でもどうしたんだ? 別に雨が降ったわけじゃないし、なんかあったのか? ……もしかして、風紀委員の仕事かなんかか?」

     僅かに心配の色を帯びた彼の声色。

    「……」

     ぴくっ、と白井の肩が動く。

    「まぁ、お前が負ける相手なんかほとんどいないと思うけど、気をつけろよ? なんかあってからじゃ遅いんだからさ」

    「……」

    「?」

    「……」

    「白井? どうしたんだ? やっぱりどっか、怪我でも「どうしてですの?」

     白井が背を向けたまま、彼の言葉を遮った。

    「え?」

     彼が聞き返す。

     それに返ってきたのは、平坦な声だ。

    「……どうして、そんなことをおっしゃるんですの? どうして貴方がわたくしの心配なんてなさるんですの?」

    「なんで、ってそりゃ」

     彼は軽く驚いた表情を浮かべた後、ガリガリと頭を掻いた。

    「誰だって知り合いの様子がおかしけりゃ心配くらいするだろ。そいつのこと、嫌っているんなら別だろうけどさ」

    522 = 520 :


    「……」

     彼の言葉に、白井は無言。

     だがよく見れば、先程一度だけ震えた肩が、いつの間にか小刻みに揺れ始めていた。膝の上に置かれた両手も、ぎゅっ、と握り締められている。

     数秒。

    「……ですの」

     ポツリと、小さな声が響いた。

    「?」

    「……ないですの」

    「白井?」

     一歩、彼がその背中に近づいた。

     瞬間。

    「……ふざっけんじゃないですのっ!」

     怒気ととも叫び、白井が立ち上がった。

     唐突かつ激しい動きについていけなかったバスタオルが身体から離れる。

     一糸纏わぬ姿が見えたのはほんの一瞬。

     振り返りながら跳ね上がった彼女の左手がタオルを掴んだ。

     はためいた黄色の布が視界一杯に広がり、彼と白井との壁となる。

    523 = 520 :


    「!」

     彼が反射的に腰を落とし、右手を構えた。

     同時にタオルのど真ん中が何かで突かれたように紡錘形となって彼の顔に迫った。

     拳。

     それを認識した瞬間、彼は背後にバックステップ。

     届かなかったタオルは白井の腕が伸びきると、バサリとはためいて壁に張り付き、床に落ちた。

    「どの口が心配などとおっしゃりますの!」

     裸身を隠そうともせず、白井が前に跳ぶ。

     ステップ直後で体勢の整いきらない彼に肉薄し、身体に染み付いたコンビネーションを放った。

     拳、蹴り、フェイントを織り交ぜた鋭い連撃が彼を襲う。

    「!」

     短く狭い廊下。回避はできない。

     数発の手応えが白井の拳に、脚に響いた。

    524 = 520 :


     だが駄目だ。舌打ちする白井。

     彼女の攻撃は確かにヒットしたが、それはすべて『当たっても当たらなくてもよい』攻撃だけだ。それらの中に隠しこんだダメージとなる打撃は、すべて防がれてしまっている。

     逆に最低限の動きしかしていない彼は、その間に体制を整えていた。

     今度は彼が一足で接近する。

    「くっ」

     白井の姿が掻き消え、ほぼ同時にベッドの上――置き時計や性具の置かれたベッド枕側に出現した。

    「貴方さえいなければこんなことにはなりませんでしたのに!」

     白井はそれら備え付けてある物品をビンタするようにして片端から空間転移。

     すべて無くなってしまうと、今度はテレビのある位置にテレポートして、同様に転移させた。

     行き先はすべて彼。

     彼の頭、心臓、頚椎――即死する急所だ。

    「甘ぇ!」

     しかし身体を調度品が破壊するより早く、彼は右手を前面で×字に振り回した。

     その軌跡上から突如、置き時計が、性具が、そして最後にガチャンとテレビが床に落ちる。

     空間移動能力は、空間を無視しているのではない。

     11次元を移動させることで、3次元の制約に囚われないようにしているだけだ。

     その別次元を移動中の物体に右手が触れたことで、転移が解除されたのである。

    525 = 520 :



    「!?」

     予想外のことに目を見開く白井。

     打撃も能力も防がれた白井は、思考が空転し、次に何をすればいいのか一瞬だけ判断できない。

     攻撃か、防御か。

     いやそもそも、衝動的に動いた彼女は、まず己の行動と結果を認識する努力で精一杯だったのだ。

     動けなかった。

     それが命取り。

     彼が跳躍。

     テレビの残骸を踏み越え、さらに床を蹴り、彼が接近する。

     そして彼が目の前に。

    「――!」

    「っらあっ!」

     白井が身構える暇もなく、能力を打ち消す右手が水平に打ち振るわれ、その円を描く軌道上で白井の顎先を僅かに掠めた。

    「!?」

     一瞬で白井の目の前が真っ暗になる。

     脳を急速に揺さぶられた彼女は、ただそれだけで床に崩れ落ちた。

    526 = 520 :


     最初はゆっくりと浮き上がるような感覚。

    「ん……」

     まず思ったのは、やけに苦しい、ということ。

     体勢がおかしいせいだ。

     仰向けの状態だということはわかった。

     しかし 両膝は曲げられて胸につくかというくらいまで引き寄せられている。

     それだけではなく、両腕は伸ばされて手首がそれぞれの足首に触れていた。

     苦しさから腕を曲げようと、なぜか動かせない。

    (わた……くし……?)

     体勢の苦しさと動かせない不思議さにうっすらと目を開くと、一本の棒のようなものに括りつけられた両手首と両足首が見えた。

    「……?」

     それがなんなのかわからず、視線をさ迷わせる白井。

     脚、腕、身体。

     見えるのは、素肌。

     全裸である自分。

     それを把握しつつふと視線を真正面に向けた。 

    527 = 520 :


    「!」

     そこに映った――天井は鏡張りに加工されている――己の姿を見た瞬間、白井の意識は急速に覚醒した。

     M字開脚。

     俗にそう言われている格好に、拘束されている。

     ベッドの下端ぎりぎりに、荷物のように留め置かれていた。

    「な、なんですの!?」

     背を伸ばそうとするが、それも無理だ。

     標準よりも小さな体格とは言え、手首と足首が同じ直線上に――しかも手首に揃えて――あれば、背中が丸まってしまうのは道理である。

     反射的に手首と接している棒を転移させようとするが、能力がまったく働かない。

     その原因は簡単だった。

    「お、目が覚めたか?」

     軽い調子で声をかけてきた彼の右手が、肩に触れている。

    「貴方っ……!」

    「おっと、動くなよ白井。まぁ、動けないと思うけどさ」

    「くっ」

     ギチッ、と革の擦れる音がする。

     棒と両手足首は単純に縄で留められているわけではなかった。

     頑丈な革製の輪を持つリストバンド、アンクルバンドと、おそらくそれらと対になるように設計された専用の棒。

     決して身動きが取れないように、しかし被拘束者が多少抵抗しても怪我をさせないように設計された器具だ。白井の腕力で解けるようなものではなかった。大の大人でも無理だろう。

    528 = 520 :


    「それよりも、さっきはどうしたんだ? 飛んできた物とか、ちょっとどころじゃないくらい危なかったんだけど」

    「!」

     ギクリ、と白井が震えた。

    「あ、あれは……」

     釈明しようとするが、言葉が続かない。

     徹頭徹尾衝動的な行動だったのだ。ただただ自分が情けなくて、憎らしくて、惨めで。

     そんなところに、その元凶からの予想外の言葉をかけられた。



     なんでこんなことにんっていると思ってるのだ。

     こんなことになったのは誰のせいだ。

     誰が自分を、こんな風にしたのだ。



     彼からの心配は己の境遇をはっきりと知らしめるとともに、そうなったことへの罪悪感がないということを明確に語っていた。

     自分に絶望した白井は、もう虚ろな精神に浮かび上がった感情を止めることができなかったのである。 

     どうしよう彼を怒らせた。どうしよう約束を反古にした。どうしようこれでもし美琴の身に危険が迫ったら……ここまで堕落した意味は、なんだったのだろう。

     白井の表情が恐怖に青くなり、唇が小刻みに震える。

     言い訳をしようとするが、声がでない。なんとか彼の怒りを納めようとするが、言葉を創ることができなかった。

     だが、そんな白井に向けて彼は、

    「まぁ、いいんだけどな」

     と、言った。

    529 = 520 :


    「え……」

     呆気にとられる白井に苦笑し、彼は続ける。

    「お前との約束は、お前を好きにする代わりに美琴に手を出さないってだけだろ? お前が俺の要求以外のことで何しても、約束とは関係ない。もっとも、」

     彼はそこで間を溜めるように一息置いた。

     楽しげな視線が、怯えに陰る白井を映す。

    「俺に何かあったら――お前が俺を殺したら、美琴が哀しむはずなんだけどな」

    「っ!」

     ギクリ、と再び白井の顔が強張った。

    「いやいや、安心しろよ。べつに約束が反古だ、なんて言うつもりはねぇよ。いま言ったろ? 約束と今日のお前の行動は無関係だって。俺が言いたいのは、もっと別のことだ」

    「……」

     沈黙する白井。

     彼が何を言いたいのか、わからない。

    「わかるか? わからないだろ? 教えてやるよ、白井」

     笑う彼は動けない白井の前髪を掴み、「ひっ」顔を上向かせ、その瞳を覗き込んだ。

     そして告げる。

    「お前はもう、美琴のことなんかどうでもいいんだよ」

    「!」

    530 = 520 :


    「お前は俺を殺したかった。そして実際殺そうとした。さっきの転移とか、おもいっきり急所だったろ? それも即死コースの」

    「ち、ちが「ははっ」

     白井の必死の抗弁を、彼の笑い声が遮る。

    「じゃあ美琴の顔を見てるつもりで言ってみてくれ。『わたくしはお姉様のために殺そうとしたんですの』みたいな台詞を」

    「っっっ!」

     ギリッと音がしたかのように白井の顔が強張った。

     美琴のため。

     その言葉が、とてつもない罪悪感をもって胸をえぐる。

    「結局お前は、美琴を見捨てたんだろ? 俺が死んで哀しむ美琴を見捨てたってことだよな?」

    531 = 520 :


     ――そんなことありません、見捨ててなんて



    「美琴が大事だから。あいつを護るためなら。今のお前はそう思うことで、自分の本心から目を逸らしてたんだよ」



     ――違いますの、ソンナわけがナイですの



    「確かに最初は美琴ためだった。最初は、お前は間違いなく美琴のために犠牲になってたよ。俺が認めてやる。でも、」

     

     ――駄目、ソレ以上言わないで



    「今はどうだ? 美琴のため? 違うだろ? 違うよな? お前はもうそんなこと考えてない」



     ――イヤ、聞カセナイデ



    「お前が言葉にできないなら、俺が代わりに言ってやるよ」

     

     ――ヤメテ



    「……」

     そこで彼が言葉をとめた。

     そのまま、すっ、と白井の耳元に唇を寄せる。

    532 = 520 :


    「お前は美琴のためなんかじゃない。お前は、白井黒子は今、美琴の『せい』で俺を殺そうとしたんだよ。」

    533 = 520 :


    「ぅぁ……」

     喉の奥から漏れたのは、小さな小さな呻き声。

     しかしそれに篭められたのは、真っ黒な絶望だ。

    「……」

    「……」

    「……」

    「……」

    「……」

     沈黙が数秒、横たわる。

     やがてゼンマイ仕掛けの人形のように、白井の目がゆっくりと彼に向き、

    「……」

     彼が、それを微苦笑とともに見返した。

     視線が合う。

     それが合図となって、

    「違いますのっ!」

     白井が絶叫した。

    「そんなはずありませんの!」

     目を閉じ、

    「絶対に違います!」

     首を振り、

    「わたくしがっ、このわたくしがっ!」

     拘束された手足に力を篭め、

    「お姉様をっ、そんなことありませんのよっ!」

     塞げない耳の代わりに声で彼の発言を掻き消そうと言うのか、全力で叫ぶ。

    534 = 520 :


     だが無駄だ。

     目を閉じても、うかんでくるのは公園で見た美琴――子供への奉仕の幻想。

     首を振っても、それは瞼の裏から消えてくれず。

     手足を動かそうにも、革製の器具はミシミシと音をたてるだけでまったく緩む様子はない。

     声をあげても、いちど耳に響いた言葉は記憶に残る。

    「違いますのよぉっ! わたくしっ! わたくしっ!」

     もう白井は自分が何を言っているのかもわからない。

     しかし――白井にはそんなことどうでもよかった。

     叫び、暴れ、喚き、当たり散らす。

     それら一瞬一瞬に縋り付かなければ、全てがバラバラに壊れそうだった。

     彼女はいま、ただ己を保つだけで精一杯。精一杯であることに気がつくだけの余裕もない。

     だから気がつかなかった。

     彼の右手が髪を放し、彼がベッドから降りたことにも。

     ベッドに寄り添うように床に置かれたタライにも。

     そのタライの隣に転がっている、大人の腕ほどの太さのある浣腸器を彼が取り上げ、その先端を白井の剥き出しの尻に向けたことにも。

    535 = 520 :


    「ありえませんのっ! お姉様のせいだなんてっ、わたくしがそんなことを思うわけが…はうっ!?」

     肛門から響いた衝撃に白井の声が止まる。

     何が起こったのかは、視線を向ける必要がない。

     天井は鏡張りだ。驚きに見開いた目が、そこに映った彼の行動をすぐに捉えた。

     彼が顔を上げた。天井を見た彼の目が、鏡越しに白井の目と合った。

     口元の笑み。

     突きこまれた浣腸器のシリンダーを、彼の手がゆっくりと、押し込んでいく。

    「あっ!? ああっ!? あああっ!?」

     響く白井の声には戸惑いの色。

     今まで何度も経験した――そしてつい数時間前に洗浄したときにも感じた――薬液が入ってくる感触だが、今日のそれは今までとは異なり、液と表現するには粘度が高かった。

     ずるり、ずるり、とゼリーのような何かが腸内を逆行する。

     彼の右手がシリンダーを完全に押し込んだ。

     中身がすべて白井の腹に収まったのを確認し、一息に抜く。

    536 = 520 :


    「はあっ!? なっ、あっ、ひぐぅっ!?」

     しかし彼はすぐに、もう一本床に置かれていた浣腸器を取り、同じように先端を突きこんだ。

    「あがっ!? うああっ! ああああっ! やめてくださいましっ! 無理っ! もう無理ですのっ! もう限界っ……!」

     白井が目を見開き、口をパクパクと開閉させる。

     二本目はもう、腸に収まるという量ではなく、そして粘液はそう簡単に奥まで滑り込まない。

     結果として、白井の腹は、二本目のシリンダーが押されるに従って、徐々に膨らんでいった。

    「なっ、かっ、ひっ」

     十数秒。

     シリンダーは無慈悲に動き、中身が全て収まった。

    「抜くぞ白井」

    「待っ、そんなっ、こんなっ……!」

     白井が天井を見ながら切れ切れの声を出す。

     それを意に介することなく器具をゆっくりと引き抜く彼。

     ツルン、と抜け出た先端と肛門の間で、薬液のゼリーが糸を引く。

    537 = 520 :


    「……よし、じゃあ白井。ちょっとしたゲームをしよう」

     彼は用済みになった浣腸器を床に置き、空いた右手を白井の膨れた腹の上に置いた。

     同時に、グルルル、と腸内で音がする。

     限界以上に異物を投入された腸は、もうすでにそれらを排斥しようと動き出していた。 

    「ひぃっ!」

     ぞっとするような悪寒が白井の全身に回り、一気に血の気が引いた。

     生理的な排泄欲求により悪寒だけではない。

     手足を縛られ、彼の右手に触れられた自分。

     この段階ですでに、全力で肛門を締めて置かなければ、すぐにでも出ていきそうな腸の中身。

     ベッドの下端に転がった自分の尻の真下に設置されたタライ。

     それが何を意味しているかは、明白だった。

     いくら洗浄していようが、どうだろうが関係がない。今まで何度も動画を送っているが、それは排泄した後の拡張シーンと、その後始末の自慰行為だけだ。

     『出す』ところは、誰にも見せていない。いや、見せてはいけない。

    (うそ、ですのよね……そんな……まさか……)

     声を出すだけの余裕もなく、鏡に映った光景を目にしながら、それでも白井は一縷の希望を模索する。

     何かの間違いではないのか。

     これはただの脅しで、すぐに拘束を解いてくれる――あるいは、右手をどけてくれるのではないか。

     白井はさっきまでの己の狂乱も忘れ、縋るような瞳を彼に向けた。

     いまの彼女の中には、美琴のことは浮かんでいない。美琴のことで己を見失いかけていた思考は、どこにもなかった。

    538 = 520 :


     無理もない。

     『御坂美琴を敬愛する白井黒子』のそもそもの根幹。『白井黒子』自身の、尊厳の危機。

     そんなところを誰かに見られてしまったら、もう駄目だ。

     白井が人間として最低限持っていたかったモノが、なくなってしまう。

    「……」

     少女の視線を受け止め、彼がゆっくりとその腹を撫でた。

    「いまさっき、お前は美琴を見捨てない、って言ってたよな? だから試してやるよ」

     しかし放たれた言葉は、最悪の形で白井の耳に届くことになる。

    「ルールは簡単」

     ぴ、と彼は左手人差し指を立てた。

    「美琴を好きにしていい、と一言言えば、オレはこの右手をどかせてやるよ」

    「!?」

    「能力が回復すれば、拘束具を転移させることが出来る」

     グルグル、と腹がなった。

    「いや、この部屋のトイレの位置はわかってるんだから、直接そこにテレポートしたっていいすればいい」

     悪寒に、カチカチ、と白井の歯が音をたて始める。

    「どうしても無理なら、それこそ腸のなかにあるものだけを便器に飛ばせばいいんだ」

     恐怖に、ブルブルと白井の肩が震えはじめた。

    539 = 520 :


    「簡単なゲームだろ?」

     彼が目を細めて、笑う。

    「美琴を護りたいんなら、お前が漏らせばいいんだよ。ここで、この中身をな

     彼の手が、もう一度腹を撫でた。」

     その言葉と手の感触に、淡い希望という幻想が打ち消されたのか。

    「いっ、」

     ギシ、と革の軋む音とともに、

    「いやっ! いやっ! いやっ! いやあああああっ!」

     白井の悲痛な叫びが、部屋に響き渡った。

    541 :

    おぉまちくたびれたぜ
    あいかわらずのゲス条で安心した

    543 :


    完落ちまであと一歩ってところか

    544 :


    エグい……。エグすぎてwwktkが止まらん

    545 :

    どうオチをつけるんだこれは…

    546 :

    もうほぼ堕ちてるじゃん

    547 :


    「嫌です! 絶対に嫌ですのっ!」

     白井が半狂乱になって叫ぶ。

     必死に拘束具から逃れようと暴れる勢いは、さきほどまでとは較べものにならない。

     リストバンドとアンクルバンド、それに棒とを結ぶ革が、軋むというよりも悲鳴をあげているような音をたてていた。

    「トイレに行かせてくださいまし! 右手をどけてくださいまし!」

     しかしそれでも、身体は自由になってくれない。演算を組み立てても、能力は応えてくれない。

    「……」

     それを無言で見下ろす彼。

     絶対的な優位と余裕の表情は、膨れた腹をゆっくりと撫でる手の動きと連動して、いっそ優しげにも見えた。

     この男は、許すつもりはない。

     そう確信した白井の背筋を肉体的なものと精神的なものの、双方による悪寒が貫き、脂汗がどっと噴出した。

    「お願いですの! なんでもします! 舐めろと言われればどこでも舐めますの! お尻を差し出せというのなら、どんなに犯しても構いません! 純潔を捧げろと言うのならお好きになさってください!」

     一息に、唾を飛ばすことも気にせず白井が言葉を重ねる。

    「だからお願いしますの! トイレに行かせてくださいまし!」

    「何言ってんだよ白井」

     彼は苦笑。

    「なんでも、なんかする必要はないって。言ったろ? 『美琴を好きにしろ』って一言でいいんだよ」

     ぐっ、と彼の右人差し指が、幼児のように膨れた腹を押した。

    548 = 547 :


    「ああっ!」

     ガクン、と白井が顎を上げた。
     
     白い首筋が数瞬、小刻みに震え、

    「だ、だめですのっ! やめてくださいましっ! 出てしまいますの!」

    「おいおい、こんなのでもう駄目なのか? 早いとこギブアップしないと、本気で間に合わなくなるぜ?」

     彼の言葉を証明するように、白井は己の恥ずべき窄まりがヒクヒクと震えているのを感じていた。

     力を抜いた瞬間に、すべて出てしまいそうだ。

    「っ!!!」

     間に合わない。

     その言葉が、いよいよ現実的な事実として白井に圧し掛かってくる。

     しかしソコを締めているのはボルトやネジではなく、括約筋という筋肉だ。

     常に力をいれていても、息継ぎのように力が抜ける瞬間がある。

     締める、勝手に抜ける、締める、勝手に抜ける。

     それは我慢でありながら、腸の蠕動を誘発してしまう。

     確実に、破滅への階段をあがっていた。

    「い、いやですのぉ……! 許して……許してくださいまし……! トイレに……右手を……お願いですのぉ……」

     徐々に白井の声と身じろぎが弱まっていく。

     諦めたわけではない。

     自分で暴れた衝撃ですらも、己を追いつける要素になってしまっているのだ。

    549 = 547 :


    「ひあああ……だめぇ……もう……もう……」

     奥歯を食いしばり、息継ぎのように声を漏らしながら白井は必死に耐える。

     半狂乱だったときとは違う、理性のある懇願。

     痛みで気を失うことができれば、いっそ楽かもしれない。絶望で気が触れたのならば、むしろ幸せなのかもしれない。

     だが腹部から立ち上がる苦痛と、そして何よりも白井自身の強靭な精神力は、それを許してくれなかった。

     彼女は彼女のまま、追い詰められていく。

    「いやぁ……そんなの……そんなところを見られたら……わたくしはもう……」

     諦められない。

     いやだ。

     絶対にそれだけは。

     我慢しなければならない。

     乏しくなった自分の誇りを護るために。

     しかし同時に白井は、この我慢が絶対に長続きしないということも自覚していた。

     いくら人為的原因とはいえ、生理現象だ。永遠に我慢することはできない。遠からず限界がくる。

     もしも漏らしてしまったら。

     もしも彼に全部見られてしまったら。

     きっと『白井黒子』は完全に屈服してしまう。彼に逆らうことができなくなってしまう。

     そんな確信に近い予感が、白井の中にあった。

    550 = 547 :


     それを防ぐ手段はただひとつ。

     美琴を見捨てるしかない。

     自分可愛さに、美琴を彼に売り渡すしかないのだ。

     売るのか? 

     いやだ。

     もらすのか?

     いやだ。

    「あぁぁぁ……あああぁぁぁぁ……」

     ガリガリと己が削れていく。

     ゴリゴリと最後の誇りが小さくなっていく。

     そうして出来た隙間は瞬く間に黒い染みが埋めつくし、そして白井に囁いてくる。

     もう諦めよう。もう諦めたい。

     自分はここまでよく頑張った。これ以上頑張れなんて誰も言わないはずだ。

     誰が聞いても、絶対に同情してくれる。誰に言っても、情けないだなんて思われない。


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