私的良スレ書庫
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元スレ黒子「……好きにすれば、いいですの」
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,r'"= ニ三`ヽ-=-、)'゙ヽ r、
////,r=三ミヾヽヾ} }'ヽ ノソッ
/,////,r'" == ミヾヽ 川 l l./ /"リッ
// /// ///,r三 ミヾ.l リ /ツ/ ノ/ノ ノ
l l/// /////,r = ミヾ ノノ/ /,r"'"")
f/// // / //,r`ヾ∨/,,.r''´/,r="ノ
ノ// // / /// / /ヾ''""ヾ'、'r''''''r='')) 最初にこんなことを言うのもなんだが このSSは18禁です。
ノ// // / /l l l l l l.lll レソ/
. ////〃 / / l l l l | リリ |// 18歳以上の男性が読むといいと思います。さらに純愛スキーさんは回れ右を推奨します。
//// / / ノ―-ヽトトl、 v-"---ッリノ
. //// / /,ィl | F〒tテ‐〉 f:r〒tテッ l゙l | 気が向いたら投下する形式なので、スピードは期待しないでください。
l 川 / / f{ {l゙| ´´ ̄''" {゙`' ̄゛` |,リ
|川 〃/ハヽヾ| l:} l'ト|、 最後に、僕はジョジョが好きなのですがAAは内容に一切関係ありません。
|.ll l / / ヾi`゙l ヾ_フ l l゙ト\
|ll l l / 'il l', _______ /'|.l | ヽo
|l l l l l.l.lヽ. ''ニニニニ'' / |.l.l ゙o
|l l l | | | \ / |リ
| l l ll l.| ヽ____/ リ
l l l,リ f==r,===========l
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ノ// // / /// / /ヾ''""ヾ'、'r''''''r='')) 最初にこんなことを言うのもなんだが このSSは18禁です。
ノ// // / /l l l l l l.lll レソ/
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上条「俺のことが好きなんだろ?」
美琴「そ、そんなわけないでしょ!?///」
上条「正直じゃないな、顔赤くして否定しても無駄だぜ?」
美琴「んもうバカ!あんまり調子に乗ると・・・」
上条「そうなのか・・・俺の幻想だったのか・・・俺、美琴のこと好きだったのになぁ」
美琴「ちょっ・・・い、今なんて?///」
上条「ん?美琴のことが好きだって言ってんの。二回も言わせないでくださいよ(キリッ」
美琴「そ、そんなわけないでしょ!?///」
上条「正直じゃないな、顔赤くして否定しても無駄だぜ?」
美琴「んもうバカ!あんまり調子に乗ると・・・」
上条「そうなのか・・・俺の幻想だったのか・・・俺、美琴のこと好きだったのになぁ」
美琴「ちょっ・・・い、今なんて?///」
上条「ん?美琴のことが好きだって言ってんの。二回も言わせないでくださいよ(キリッ」
「ふにゃ!? すすすすすすす!?」
顔を赤く染めた美琴が、カチリと硬直する。
上条は、彼にしてとても珍しい、いわゆる「女性を愛でる」笑みを浮かべ、右手を持ち上げた。
「美琴」
そっ、と右手が、幻想殺しが、桃のような少女の左頬に添えられた。
「ふにゃ、にゃ、にゃぁ……」
ぷしゅー、と美琴の頭から湯気が噴出した。
学園都市第3位。
つまり学園と、都市で3番目に聡明と言って過言ではない彼女の頭脳は、頬の丸みと柔らかさを楽しむように動く、上条の右手に侵食され、、完璧に停止した。
無理もない。
恩と、感謝と、それらを全て圧倒する恋心。
若干14歳の彼女が受け止めるには、それら感情の複合体は、あまりにも大きすぎたのだ。
「美琴」
上条が、頬に添えた指を僅かに動かし、少女の名を呼ぶ。
「は、はい……」
夢見心地。
あの実験場の夜から、昨夜まで。
夢の中で何度も見た光景が、いま目の前にあるのだ。
美琴はもはや、何も考えることができない。
何も、考えたくはない。
ただいまこの瞬間が、泡のごとく消えないことを、祈るのみだ。
顔を赤く染めた美琴が、カチリと硬直する。
上条は、彼にしてとても珍しい、いわゆる「女性を愛でる」笑みを浮かべ、右手を持ち上げた。
「美琴」
そっ、と右手が、幻想殺しが、桃のような少女の左頬に添えられた。
「ふにゃ、にゃ、にゃぁ……」
ぷしゅー、と美琴の頭から湯気が噴出した。
学園都市第3位。
つまり学園と、都市で3番目に聡明と言って過言ではない彼女の頭脳は、頬の丸みと柔らかさを楽しむように動く、上条の右手に侵食され、、完璧に停止した。
無理もない。
恩と、感謝と、それらを全て圧倒する恋心。
若干14歳の彼女が受け止めるには、それら感情の複合体は、あまりにも大きすぎたのだ。
「美琴」
上条が、頬に添えた指を僅かに動かし、少女の名を呼ぶ。
「は、はい……」
夢見心地。
あの実験場の夜から、昨夜まで。
夢の中で何度も見た光景が、いま目の前にあるのだ。
美琴はもはや、何も考えることができない。
何も、考えたくはない。
ただいまこの瞬間が、泡のごとく消えないことを、祈るのみだ。
もしかして最近途中で落ちた上×黒の人か?
とりあえず期待しとこうか
とりあえず期待しとこうか
真剣な表情の上条。
彼の右手がほんの少しだけ動く。
それはただ、親指がうごいただけ。
彼の親指が、半ば開いたまま震えていた美琴の唇に触れたのだ。
「…いいか?」
問う声は静か。
「……ぁ」
美琴は何も返せない。うなずくこともできない。
視線を返すのが精一杯だった。
不安と期待に潤んだ眼差しを、返すのが。
「……」
上条の顔が、すっ、と近づいた。
空気が動き、かすかに彼のにおいを感じる。
いま自分はどんな顔をしているのだろう。
思考停止の中、僅かだけ残った理性は嘘のように冷静にそんなことを思った。
その間にも、上条の顔は、唇は、近づいていた。
何か言わなければ。
せめて、たった一言、それよりも先に言いたい言葉が。
唇が重なるよりさきに、言ってほしい言葉がある。
しかしそんな想いが少女の吐息を言葉に変える前に。
「ぁ……」
ふわり、と羽毛が大地に落ちるがごとく。
やわらかく、自然に、瞼が、降りた。
彼の右手がほんの少しだけ動く。
それはただ、親指がうごいただけ。
彼の親指が、半ば開いたまま震えていた美琴の唇に触れたのだ。
「…いいか?」
問う声は静か。
「……ぁ」
美琴は何も返せない。うなずくこともできない。
視線を返すのが精一杯だった。
不安と期待に潤んだ眼差しを、返すのが。
「……」
上条の顔が、すっ、と近づいた。
空気が動き、かすかに彼のにおいを感じる。
いま自分はどんな顔をしているのだろう。
思考停止の中、僅かだけ残った理性は嘘のように冷静にそんなことを思った。
その間にも、上条の顔は、唇は、近づいていた。
何か言わなければ。
せめて、たった一言、それよりも先に言いたい言葉が。
唇が重なるよりさきに、言ってほしい言葉がある。
しかしそんな想いが少女の吐息を言葉に変える前に。
「ぁ……」
ふわり、と羽毛が大地に落ちるがごとく。
やわらかく、自然に、瞼が、降りた。
「っ」
目を開くと、天井が見えた。
見慣れた天井。
しかし一瞬、ここがどこだかわからなくなる。
「……」
続いて耳に響いた微かな雀の声で、美琴はようやく状況を理解した。
「ゆ、め……?」
掛け布団を力いっぱい握り締めていた両手を自覚しながら、呟く美琴。
「うぅん……」
「っ」
タイミングよく、隣から響いた声で、ようやく現実に引き戻された。
反射的に見た隣のベッドには、長い髪を身に纏わせた白井がいる。
「――っは、はっ、は……はぁ~」
白井の、どこか強張っている寝顔を0.5秒だけ見てから、美琴は大きくため息をついた。
肺から息が抜けていき、身体が弛緩する。
そうなってからようやく、自分がどれくらい身体を硬直させていたのかが自覚できた。
(そう、だよね。そんな、アイツが、あんな風なわけ、ないわよね)
右手を持ち上げて自分の目の前にかざす。
白く細い指先は、緊張からの解放を示すように、小刻みに震えていた。
目を開くと、天井が見えた。
見慣れた天井。
しかし一瞬、ここがどこだかわからなくなる。
「……」
続いて耳に響いた微かな雀の声で、美琴はようやく状況を理解した。
「ゆ、め……?」
掛け布団を力いっぱい握り締めていた両手を自覚しながら、呟く美琴。
「うぅん……」
「っ」
タイミングよく、隣から響いた声で、ようやく現実に引き戻された。
反射的に見た隣のベッドには、長い髪を身に纏わせた白井がいる。
「――っは、はっ、は……はぁ~」
白井の、どこか強張っている寝顔を0.5秒だけ見てから、美琴は大きくため息をついた。
肺から息が抜けていき、身体が弛緩する。
そうなってからようやく、自分がどれくらい身体を硬直させていたのかが自覚できた。
(そう、だよね。そんな、アイツが、あんな風なわけ、ないわよね)
右手を持ち上げて自分の目の前にかざす。
白く細い指先は、緊張からの解放を示すように、小刻みに震えていた。
「はぁ」
美琴は公園のベンチに座り、ため息をついた。
憂鬱というよりも、何かの感情を吐き出したような呼気は、両手で握ったヤシノミサイダーの飲み口に触れて、消えていく。
いつもの公園。
ちぇいさー、といったところなのだが、出てきたのはこの一本だけ。やはり、今日は、どこか調子が狂っている。
今朝あれから、ベッドで悶々とすること、気がつけば一時間。
休日とはいえ起床が少々遅くなったことに気がついた美琴は、気分転換に街に出ていた。
服装はいつもどおりの常盤台の制服だが、髪にはトレードマークとも言える髪飾りはつけられていない。
髪が乾いていないせいだ。
ドライヤーは音が大きい。
美琴がベッドから身を起こしたとき、白井はまだ眠っていた。
いつもなら美琴とほぼ同じ時間帯(つまり今朝よりはずいぶん早い時間)に起きるのだが、今日はベッドに沈んでいたのである。
昨夜は風紀委員の仕事がずいぶん忙しかったらしい。やけに遅く帰ってきたと思ったら、すぐにシャワーを浴びて寝てしまった。顔色も悪かったし、今朝心配になって覗き込んでみたら、どうにも疲労が抜けきっていない様子だったのだ。
そんなわけで美琴はいま、髪を乾かしがてら、暇つぶしの散歩に興じている。
自然の風に晒してしまうのは傷みが心配であるし、何よりそんな頭を人に見られたくはない。
そう思っていたら、脚はいつの間にか、いつもの公園に向かっていた。
(なんて夢見ちゃったのよ、私ったら……)
ぽわり、と、己の手元を見る視界に、夢の中で見た上条の真剣な眼差しが浮かぶ。
彼はゆっくりと顔を近づけてきていた。そして右手は自分の頬。
目を覚まさなければ、あの後どんな光景になっていたかなど、考えるまでもない。
(わ、わたし、あ、アイツと、き、き、キ……)
ぷっしゅー! と美琴の顔から、本日二回目の湯気が噴出した。
(そ、そりゃ私だってアイツには感謝してるし、それこそ恩だってあるし、でもだって、そんな私がそんな……で、でも夢は願望だって言うし……が、願望?)
視界に、上条の真剣な表情が――
ぷっしゅー! と三度、美琴の顔から湯気があがった。
美琴は公園のベンチに座り、ため息をついた。
憂鬱というよりも、何かの感情を吐き出したような呼気は、両手で握ったヤシノミサイダーの飲み口に触れて、消えていく。
いつもの公園。
ちぇいさー、といったところなのだが、出てきたのはこの一本だけ。やはり、今日は、どこか調子が狂っている。
今朝あれから、ベッドで悶々とすること、気がつけば一時間。
休日とはいえ起床が少々遅くなったことに気がついた美琴は、気分転換に街に出ていた。
服装はいつもどおりの常盤台の制服だが、髪にはトレードマークとも言える髪飾りはつけられていない。
髪が乾いていないせいだ。
ドライヤーは音が大きい。
美琴がベッドから身を起こしたとき、白井はまだ眠っていた。
いつもなら美琴とほぼ同じ時間帯(つまり今朝よりはずいぶん早い時間)に起きるのだが、今日はベッドに沈んでいたのである。
昨夜は風紀委員の仕事がずいぶん忙しかったらしい。やけに遅く帰ってきたと思ったら、すぐにシャワーを浴びて寝てしまった。顔色も悪かったし、今朝心配になって覗き込んでみたら、どうにも疲労が抜けきっていない様子だったのだ。
そんなわけで美琴はいま、髪を乾かしがてら、暇つぶしの散歩に興じている。
自然の風に晒してしまうのは傷みが心配であるし、何よりそんな頭を人に見られたくはない。
そう思っていたら、脚はいつの間にか、いつもの公園に向かっていた。
(なんて夢見ちゃったのよ、私ったら……)
ぽわり、と、己の手元を見る視界に、夢の中で見た上条の真剣な眼差しが浮かぶ。
彼はゆっくりと顔を近づけてきていた。そして右手は自分の頬。
目を覚まさなければ、あの後どんな光景になっていたかなど、考えるまでもない。
(わ、わたし、あ、アイツと、き、き、キ……)
ぷっしゅー! と美琴の顔から、本日二回目の湯気が噴出した。
(そ、そりゃ私だってアイツには感謝してるし、それこそ恩だってあるし、でもだって、そんな私がそんな……で、でも夢は願望だって言うし……が、願望?)
視界に、上条の真剣な表情が――
ぷっしゅー! と三度、美琴の顔から湯気があがった。
(あう、あう……)
頬といわず耳といわず、首元まで真っ赤に染まった少女。抱え込むようにして缶を握る両手の人差し指が、ツンツンと、モジモジと先端を絡ませあう。
もう完全に、視界に浮かんだ幻想以外に何も見えていない。
だから気がつかなかったのだろう。
やや俯き加減の少女の前に、人影が立ったことに。
「美琴? こんなところで何してんだよ、お前」
「!?!?!?!?!?」
がばっ! と顔を上げる。
つい今しがたまで、目の前に浮かんでいた幻想が、現実となってそこに現われていた。
「?」
幻想とは違って、真剣な眼差しではない。
だが、そんなことは少女には関係がなかった。
ぷっしゅー!
本日四回目の湯気が、まだしんなりした赤毛から立ち上ったのだった。
頬といわず耳といわず、首元まで真っ赤に染まった少女。抱え込むようにして缶を握る両手の人差し指が、ツンツンと、モジモジと先端を絡ませあう。
もう完全に、視界に浮かんだ幻想以外に何も見えていない。
だから気がつかなかったのだろう。
やや俯き加減の少女の前に、人影が立ったことに。
「美琴? こんなところで何してんだよ、お前」
「!?!?!?!?!?」
がばっ! と顔を上げる。
つい今しがたまで、目の前に浮かんでいた幻想が、現実となってそこに現われていた。
「?」
幻想とは違って、真剣な眼差しではない。
だが、そんなことは少女には関係がなかった。
ぷっしゅー!
本日四回目の湯気が、まだしんなりした赤毛から立ち上ったのだった。
常盤台中学校寮。その一室。
シャワールームから、ずいぶん長く水音が響いていた。
「……」
長い髪を身に纏わせ、頭からシャワーを浴びているのは、白井黒子だ。
美琴が部屋を出て行って、戻ってこないことを確認してからすぐシャワールームに入ったため、もう一時間近くにもなる。
やや熱目の湯を、長時間。しかしにも関わらず、彼女の顔は冷水でも浴びているかのように、青ざめていた。
――おまえが条件を呑むんなら、美琴には手を出さないぜ?
脳裏に浮かぶのは、普段からは想像もつかないような、酷薄な笑み。
いつも美琴とじゃれているときの顔は幻想だと言わないばかりの、下卑たモノだった。
歪んだ、彼の唇。
「っ……!」
ゾクリ、と身体が震え、白井は己の身体を両腕で抱え込んだ。瑞々しい唇が、強く噛み締められる。
昨夜、そこに重ねられた感触を思い出してしまったせいだ。
(……本当に、下衆な……)
美琴のため。
そう覚悟を決めた自分をあざ笑うかのように、唇だけが奪われた。
それ以上は、明日だ。
彼の言葉。すなわち、今日である。
勢いというものがある。短慮とも言えるが、決断を下すときや、覚悟を決めるときには、大きな後押しになるものだ。
だがそれも、こうして時間を空けられてしまえば、文字通り勢いを失わせてしまう。
決意は鈍り、覚悟は揺らぐ。
間違いなく、自分がこうして葛藤することを見越してのことだろう。
シャワールームから、ずいぶん長く水音が響いていた。
「……」
長い髪を身に纏わせ、頭からシャワーを浴びているのは、白井黒子だ。
美琴が部屋を出て行って、戻ってこないことを確認してからすぐシャワールームに入ったため、もう一時間近くにもなる。
やや熱目の湯を、長時間。しかしにも関わらず、彼女の顔は冷水でも浴びているかのように、青ざめていた。
――おまえが条件を呑むんなら、美琴には手を出さないぜ?
脳裏に浮かぶのは、普段からは想像もつかないような、酷薄な笑み。
いつも美琴とじゃれているときの顔は幻想だと言わないばかりの、下卑たモノだった。
歪んだ、彼の唇。
「っ……!」
ゾクリ、と身体が震え、白井は己の身体を両腕で抱え込んだ。瑞々しい唇が、強く噛み締められる。
昨夜、そこに重ねられた感触を思い出してしまったせいだ。
(……本当に、下衆な……)
美琴のため。
そう覚悟を決めた自分をあざ笑うかのように、唇だけが奪われた。
それ以上は、明日だ。
彼の言葉。すなわち、今日である。
勢いというものがある。短慮とも言えるが、決断を下すときや、覚悟を決めるときには、大きな後押しになるものだ。
だがそれも、こうして時間を空けられてしまえば、文字通り勢いを失わせてしまう。
決意は鈍り、覚悟は揺らぐ。
間違いなく、自分がこうして葛藤することを見越してのことだろう。
(……お姉様)
きゅっ、と両手を握る。
敬愛する存在。彼女のためなら、命すら惜しくないほどの。
きっと美琴は、このことを知れば哀しむだろう。いや、それだけでは済まないかもしれない。
心を失い、下手をすれば……
「っっっ」
最悪の想像に行き当たり、白井は今度こそ背筋を凍らせた。
だめだ。
そんなこと、させるわけにはいかない。
彼の本性も、自分の身に今から起こることも、絶対に隠し通してみせる。
しかしその悪寒が、揺れかけていた覚悟を、再び決然と固める要因となった。
お姉様は、わたしくが護ってみせる。
白井はシャワーを止める。
ポタポタと水滴の落ちる前髪の奥で、悲壮な決意の灯った瞳が、ここにはいない彼を睨み付けていた。
約束の時間まで、後、2時間。
きゅっ、と両手を握る。
敬愛する存在。彼女のためなら、命すら惜しくないほどの。
きっと美琴は、このことを知れば哀しむだろう。いや、それだけでは済まないかもしれない。
心を失い、下手をすれば……
「っっっ」
最悪の想像に行き当たり、白井は今度こそ背筋を凍らせた。
だめだ。
そんなこと、させるわけにはいかない。
彼の本性も、自分の身に今から起こることも、絶対に隠し通してみせる。
しかしその悪寒が、揺れかけていた覚悟を、再び決然と固める要因となった。
お姉様は、わたしくが護ってみせる。
白井はシャワーを止める。
ポタポタと水滴の落ちる前髪の奥で、悲壮な決意の灯った瞳が、ここにはいない彼を睨み付けていた。
約束の時間まで、後、2時間。
「大丈夫か?」
「う、うん」
左隣に腰掛けた上条の問いに、美琴は赤い頬のまま頷いた。
基本的に休日に遭遇することがなかったせいで、完璧に油断していた。
その上に今朝の夢である。
(し、静まりなさいって、この・・・)
ドキドキと胸は鳴り止まないが、それを悟られるのも恥ずかしい。
美琴は膝の上に缶ジュースを持った姿勢のまま、静かに深呼吸を繰り返した。
「……」
ちらり、と目だけ動かして上条の方を伺う。
上条は背中をベンチに預けながらもこちらを見ていたらしい。
目があった。
「!」
ひゅぼっ! と美琴の顔が燃え上がり、またも俯いてしまう。
(なななななな、なんでこっち向いてんのよ!)
頭の中では威勢のいい言葉が出るが、口はまったく動いてくれない。
それというのも、唇を意識してしまっているからだ。
「……」
上条が首を傾げる気配がする。
周囲の気配に敏感になってしまう電撃使いの特性。しかも、学園都市最高の敏感さが、いまは物凄く恨めしい。
(な、何か言わないと。何か……)
えーとえーと、と話題を探して頭の中をひっくり返すが、普段は明晰な頭脳もこの時ばかりはうまく動いてくれない。
(話題話題話題……きょ、今日はいい天気ねー……って、そんなの絶対変に思われる! コイツのことだから思わないかもだけど、もおおおおお!)
支離滅裂もいいところの自問自答。いや、混乱と言ってもいい。
「う、うん」
左隣に腰掛けた上条の問いに、美琴は赤い頬のまま頷いた。
基本的に休日に遭遇することがなかったせいで、完璧に油断していた。
その上に今朝の夢である。
(し、静まりなさいって、この・・・)
ドキドキと胸は鳴り止まないが、それを悟られるのも恥ずかしい。
美琴は膝の上に缶ジュースを持った姿勢のまま、静かに深呼吸を繰り返した。
「……」
ちらり、と目だけ動かして上条の方を伺う。
上条は背中をベンチに預けながらもこちらを見ていたらしい。
目があった。
「!」
ひゅぼっ! と美琴の顔が燃え上がり、またも俯いてしまう。
(なななななな、なんでこっち向いてんのよ!)
頭の中では威勢のいい言葉が出るが、口はまったく動いてくれない。
それというのも、唇を意識してしまっているからだ。
「……」
上条が首を傾げる気配がする。
周囲の気配に敏感になってしまう電撃使いの特性。しかも、学園都市最高の敏感さが、いまは物凄く恨めしい。
(な、何か言わないと。何か……)
えーとえーと、と話題を探して頭の中をひっくり返すが、普段は明晰な頭脳もこの時ばかりはうまく動いてくれない。
(話題話題話題……きょ、今日はいい天気ねー……って、そんなの絶対変に思われる! コイツのことだから思わないかもだけど、もおおおおお!)
支離滅裂もいいところの自問自答。いや、混乱と言ってもいい。
「なぁ美琴」
「ひゃい!?」
変な声が出た。
(て、わわわわたし、ひゃいって! ひゃいって何!?)
色々な恥ずかしさが極まり、さらに顔が熱くなる。
普段は平気で睨みつけることのできる彼を、まったく見ることができない。
「な、なんか調子悪そうだけど……ほんとに平気か?」
「わ、私のどこが変だって言うのよ!?」
上条の言葉に噛み付く形で、癖が出た。
反射的に上条に顔を向け――身長差から、彼の唇が目に跳びこんできた。
「――――っ!」
ひゅぼん! と音をさせて再び顔を俯ける。
「いや、そういうところが、なんだけど……」
辛うじて視界の端で捕らえている上条が、頬を掻いている。
「……」
美琴はもう、色々といっぱいいっぱいで言葉を返す余裕もない。
缶を持つ指が小さく震えて、前髪が僅かに漏電しているのがわかった。
プルルルル
「!?」
いきなりの携帯電話の音。
身体がベンチから浮くほど驚く。
「ひゃい!?」
変な声が出た。
(て、わわわわたし、ひゃいって! ひゃいって何!?)
色々な恥ずかしさが極まり、さらに顔が熱くなる。
普段は平気で睨みつけることのできる彼を、まったく見ることができない。
「な、なんか調子悪そうだけど……ほんとに平気か?」
「わ、私のどこが変だって言うのよ!?」
上条の言葉に噛み付く形で、癖が出た。
反射的に上条に顔を向け――身長差から、彼の唇が目に跳びこんできた。
「――――っ!」
ひゅぼん! と音をさせて再び顔を俯ける。
「いや、そういうところが、なんだけど……」
辛うじて視界の端で捕らえている上条が、頬を掻いている。
「……」
美琴はもう、色々といっぱいいっぱいで言葉を返す余裕もない。
缶を持つ指が小さく震えて、前髪が僅かに漏電しているのがわかった。
プルルルル
「!?」
いきなりの携帯電話の音。
身体がベンチから浮くほど驚く。
「わっ、俺か。誰だろ」
原因は上条だった。
彼はポケットからボロボロの携帯を取り出すと、パカッ、と開いた。
ボタン操作をしているところを見ると、メールらしい。
上条が携帯を見ている隙に、深呼吸をこっそりと。
そうこうしているうちに、読み終わったらしい。上条が携帯電話をポケットに戻した。
(よ、よし……落ち着いたわ。普通に、普通にしゃべればいいのよ、御坂美琴)
いつの間にか胸に当てていた右手には未だ激しい動悸を感じるが、無理やり気のせいだと思い込む。
しかし、今こそ美琴が顔を上げようとした瞬間に、
「あ、ごめん美琴。ちょっと俺、行かなくちゃいけなくなった」
上条が立ち上がった。
「え……」
「いやー、なんか友達に呼ばれちゃってさ。土御門と青髪。ほら、お前も前に会っただろ?」
そんなことを言われても、気合一発さぁ会話! という出鼻を挫かれた美琴の耳には、うまく言葉が入ってこない。
上条はそんな美琴の沈黙を肯定と解釈したらしい。
じゃーな。体調、気をつけろよ? とあっさりと背を向け、走っていってしまった。
「あ……」
大混乱から上条さん不意の退場まで、美琴の中ではめまぐるしく変わった状況についていけず、中途半端に手をあげて見送ってしまう。
「……」
そして、そのまま、たっぷり一分。
はー、と美琴が大きくため息をついた。
寂しさと、自分を置いて言った彼への苛立ち。
「しゃべれなかった、な」
ポツリと呟く。
自分が悪いのはわかっている。
一人で盛り上がって、彼の気遣いも無視して、その結果のこったのは、八つ当たりっぽい彼への感情だ。
でも……
「……ばか」
胸からあふれそうになった切なさが、彼への罵倒となって、唇からこぼれた。
原因は上条だった。
彼はポケットからボロボロの携帯を取り出すと、パカッ、と開いた。
ボタン操作をしているところを見ると、メールらしい。
上条が携帯を見ている隙に、深呼吸をこっそりと。
そうこうしているうちに、読み終わったらしい。上条が携帯電話をポケットに戻した。
(よ、よし……落ち着いたわ。普通に、普通にしゃべればいいのよ、御坂美琴)
いつの間にか胸に当てていた右手には未だ激しい動悸を感じるが、無理やり気のせいだと思い込む。
しかし、今こそ美琴が顔を上げようとした瞬間に、
「あ、ごめん美琴。ちょっと俺、行かなくちゃいけなくなった」
上条が立ち上がった。
「え……」
「いやー、なんか友達に呼ばれちゃってさ。土御門と青髪。ほら、お前も前に会っただろ?」
そんなことを言われても、気合一発さぁ会話! という出鼻を挫かれた美琴の耳には、うまく言葉が入ってこない。
上条はそんな美琴の沈黙を肯定と解釈したらしい。
じゃーな。体調、気をつけろよ? とあっさりと背を向け、走っていってしまった。
「あ……」
大混乱から上条さん不意の退場まで、美琴の中ではめまぐるしく変わった状況についていけず、中途半端に手をあげて見送ってしまう。
「……」
そして、そのまま、たっぷり一分。
はー、と美琴が大きくため息をついた。
寂しさと、自分を置いて言った彼への苛立ち。
「しゃべれなかった、な」
ポツリと呟く。
自分が悪いのはわかっている。
一人で盛り上がって、彼の気遣いも無視して、その結果のこったのは、八つ当たりっぽい彼への感情だ。
でも……
「……ばか」
胸からあふれそうになった切なさが、彼への罵倒となって、唇からこぼれた。
指定された部屋に入って15分が経過した。
スキルアウトの溜り場として風紀委員も警戒している区域。そこにあるホテルの一室だ。
ホテル、と言ってもそう上等なところではない。いわゆる、ビジネスホテルよりは少しマシ、というところか。施設も、衛生も、普通レベルといえる。
違うのは、設えられたベッドがやけに大きなことと、壁が高機能防音性を持っていること。そして一度入ると、管理者か借主でなければドアの鍵をあけられないことだ。
よく観察しないとわからないが、そこかしこに巧妙に隠された撮影用の器具と、簡易AIMジャマー。
今は機能していない――どうもいまここを借受けて指定してきた彼はその料金までは払わなかったようだ――それらと、脱出できない部屋。何をする場所なのかは押して知るべきである。
もちろん、ジャマーが機能していない今、部屋に立つ白井には脱出など容易なことだ。
彼は当然、白井の能力を知っている。それでもないジャマーを機能させないのは、こちらが逃げないことを確信しているからだろう。
「……」
そして忌々しいことに、その確信は正しかった。
ふと、視線を動かした白井の目に、ベッドの枕元に置かれた、ラバー製の『器具』たちがとびこんできた。
「――っ!!!」
白井の背筋を、凍るような悪寒が駆け上がる。
小一時間の後には自分の身に起こるだろうことを想像してしまったせいだ。
汚される。
あの男の指で。
あの男の舌で。
そして、あの男の――
「っ!」
叫びだしそうになり、白井は両手で己が口を押さえた。
防音のこの部屋から、悲鳴は出て行かない。しかし、そうすることは彼女の矜持に反していた。
そう、自分は美琴を守る為にここにきた。
何が起こるのかは、とうに覚悟してきたはずだ。
声を飲み込む。動機を抑える。剥がれかけた決意の仮面を、改めて付け直す。
しっかりと、しっかりと、しっかりと。
白井にして、数十秒。
辛うじて平静を取り戻した彼女の背後で、
ガチャ
「!」
音がした。
スキルアウトの溜り場として風紀委員も警戒している区域。そこにあるホテルの一室だ。
ホテル、と言ってもそう上等なところではない。いわゆる、ビジネスホテルよりは少しマシ、というところか。施設も、衛生も、普通レベルといえる。
違うのは、設えられたベッドがやけに大きなことと、壁が高機能防音性を持っていること。そして一度入ると、管理者か借主でなければドアの鍵をあけられないことだ。
よく観察しないとわからないが、そこかしこに巧妙に隠された撮影用の器具と、簡易AIMジャマー。
今は機能していない――どうもいまここを借受けて指定してきた彼はその料金までは払わなかったようだ――それらと、脱出できない部屋。何をする場所なのかは押して知るべきである。
もちろん、ジャマーが機能していない今、部屋に立つ白井には脱出など容易なことだ。
彼は当然、白井の能力を知っている。それでもないジャマーを機能させないのは、こちらが逃げないことを確信しているからだろう。
「……」
そして忌々しいことに、その確信は正しかった。
ふと、視線を動かした白井の目に、ベッドの枕元に置かれた、ラバー製の『器具』たちがとびこんできた。
「――っ!!!」
白井の背筋を、凍るような悪寒が駆け上がる。
小一時間の後には自分の身に起こるだろうことを想像してしまったせいだ。
汚される。
あの男の指で。
あの男の舌で。
そして、あの男の――
「っ!」
叫びだしそうになり、白井は両手で己が口を押さえた。
防音のこの部屋から、悲鳴は出て行かない。しかし、そうすることは彼女の矜持に反していた。
そう、自分は美琴を守る為にここにきた。
何が起こるのかは、とうに覚悟してきたはずだ。
声を飲み込む。動機を抑える。剥がれかけた決意の仮面を、改めて付け直す。
しっかりと、しっかりと、しっかりと。
白井にして、数十秒。
辛うじて平静を取り戻した彼女の背後で、
ガチャ
「!」
音がした。
ガチャガチャ
鍵が開く音。
ギィ、バタン
扉が開く音。
カキン
再び鍵がかかる音。
そして、
「よお。本当に来たんだな。どれだけ美琴が好きなんだよお前」
彼の声と、彼の足音。
白井は一息、呼気の呑む。
それから背を正し、振り向いた。
顔に浮かぶは、いつものような澄ました表情。そのまま、ふぁさっ、と髪を掻き揚げた。
「呼び出しておきながらレディを待たせるなんて……本当に最悪ですのね」
「そうか? むしろ良心的だと思うぜ? ちゃんとここに来て、取引を成立させてやったんだからな」
そう言って、彼が笑った。
彼にとっての宴が、白井にとっての悪夢が、始まろうとしている。
鍵が開く音。
ギィ、バタン
扉が開く音。
カキン
再び鍵がかかる音。
そして、
「よお。本当に来たんだな。どれだけ美琴が好きなんだよお前」
彼の声と、彼の足音。
白井は一息、呼気の呑む。
それから背を正し、振り向いた。
顔に浮かぶは、いつものような澄ました表情。そのまま、ふぁさっ、と髪を掻き揚げた。
「呼び出しておきながらレディを待たせるなんて……本当に最悪ですのね」
「そうか? むしろ良心的だと思うぜ? ちゃんとここに来て、取引を成立させてやったんだからな」
そう言って、彼が笑った。
彼にとっての宴が、白井にとっての悪夢が、始まろうとしている。
寝転がったベッドは、存外に心地よい感触だった。
纏う制服を全て脱ぎ捨てた白井の身体を、やわらかく受け止めるベッド。清潔な白いシーツに、少女を中心とした放射状の皺が刻まれた。
中学生。未発達の肢体。
瑞々しい肌を彩るは、年齢にそぐわない薄い下着と、小さな震えだ。
寒いわけので、もちろんない。
恥ずかしいのだ。
当たり前である。肌を晒しているのだ。それも、男性の前に。
想い人であっても――白井には男性を好きになった経験は無いが――恥ずかしいだろう状況。
しかしいま彼女の身体を見るのは、そういった感情とはほぼ対極の位置にいる相手だ。
恥ずかしさと、さらに言えば、怒り。震えの要因は、その二つだった。
「…………」
んくっ、と唾を飲みこむ。
嘗め回すような彼の視線。まるで物理的な感触を伴っているようだ。
「……へぇ」
彼はひとしきり、少女の肢体を鑑賞してから、声を漏らした。
それは賞賛の響きを帯びた声。
しかし白井にしてみれば、おぞましい感覚を呼び込むだけのものだ。
「……なんですの。おっしゃりたいことがあるなら、きちんと言葉にしてくださいまし」
身体に続いて震えそうになる声を抑えこみ、平静を装う。
「いや、ちょっと驚いたんだよ」
「な、何がですか?」
「白井ってバランスいい身体してるよな、ってさ」
まぁ胸は小さいけど。
「っ」
余計な一言に、思わず噛み付きそうになるが、言葉は口から漏れなかった。
再び彼の視線が、肌を這い回ったからだ。
ふともも、腰まわり、腹、そしてつい今しがた小さいと言われた胸。
ぬるり、ぬるり、とナメクジが這い回るかのような視線は、決意したはずの少女の背筋に悪寒を走らせるには、十分すぎるものだ。
纏う制服を全て脱ぎ捨てた白井の身体を、やわらかく受け止めるベッド。清潔な白いシーツに、少女を中心とした放射状の皺が刻まれた。
中学生。未発達の肢体。
瑞々しい肌を彩るは、年齢にそぐわない薄い下着と、小さな震えだ。
寒いわけので、もちろんない。
恥ずかしいのだ。
当たり前である。肌を晒しているのだ。それも、男性の前に。
想い人であっても――白井には男性を好きになった経験は無いが――恥ずかしいだろう状況。
しかしいま彼女の身体を見るのは、そういった感情とはほぼ対極の位置にいる相手だ。
恥ずかしさと、さらに言えば、怒り。震えの要因は、その二つだった。
「…………」
んくっ、と唾を飲みこむ。
嘗め回すような彼の視線。まるで物理的な感触を伴っているようだ。
「……へぇ」
彼はひとしきり、少女の肢体を鑑賞してから、声を漏らした。
それは賞賛の響きを帯びた声。
しかし白井にしてみれば、おぞましい感覚を呼び込むだけのものだ。
「……なんですの。おっしゃりたいことがあるなら、きちんと言葉にしてくださいまし」
身体に続いて震えそうになる声を抑えこみ、平静を装う。
「いや、ちょっと驚いたんだよ」
「な、何がですか?」
「白井ってバランスいい身体してるよな、ってさ」
まぁ胸は小さいけど。
「っ」
余計な一言に、思わず噛み付きそうになるが、言葉は口から漏れなかった。
再び彼の視線が、肌を這い回ったからだ。
ふともも、腰まわり、腹、そしてつい今しがた小さいと言われた胸。
ぬるり、ぬるり、とナメクジが這い回るかのような視線は、決意したはずの少女の背筋に悪寒を走らせるには、十分すぎるものだ。
「や、約束」
震える唇が言う。
「ん?」
「約束は、本当に、守ってくれますの?」
「ああ、いいぜ。でも白井こそ、本当にいいんだな?」
自分がなんでもするから美琴には手を出すな。
そう持ちかけたときと同じ、そして美琴と接しているときでは考えられそうもないような軽薄そうな顔をして、彼が笑う。
「……好きにすれば、いいですの」
こたえながら、白井は目を閉じた。
彼が、夜の街で幾人もの女性と不適切な関係にある。
風紀委員の仕事で、偶然耳にした情報。
その真偽を問いただした白井に、あっさりとそれを認めた彼。
美琴に近づくな、という要求は、拒否された。
力づくという選択肢は、美琴が哀しむというカードを切られ、封じられた。
風紀委員の権力は、まるで見えない誰かに阻まれたかのように、彼に対して一切、行使できなかった。
残されていたのは彼との個人的な取引だけだった。
「じゃあ、さっそく始めるか」
彼が近づいてくる気配。続いて、ベッドの端が、ギシと音をたてて、僅かに傾いた。
ギリ、と身体が強張るのを、白井はとめることができない。
そして、彼の右手に―――能力を封ずる右手に肩を捕まれ、
「あっ……」
引き寄せられた。
「んっ……ふっ……」
湿った音が、室内に響く。
寝具の上に、半裸の男女。
閉められたカーテンを透かす陽光にシルエットは、両人の頭がある一点をもって重なっていた。
「んんっ!」
ぐっ、と頭を後ろから押さえつけられ、白井は思わず身を硬めた。
口付けが深くなる。
驚きに見開いた目と同様、半ば開いてしまった唇を、彼の舌先がこじ開ける。
今まで唇の表面を這うだけだった舌は、一息に口腔内の、ちょうど歯の裏くらいまで侵入してきた。
「んんっ!? んんんっ! んんんんっ!」
首を振り、顔を離そうとする。己の舌先で、彼の舌を堰き止めようと努力する。
辛うじて歯を立てなかったのは、彼を思いやったのではなく、彼の機嫌を損ねたとき、美琴の身に振るかかることを恐れたからだ。
しかし、唇は離れることなく、舌はとまらない。
「んううっ!?」
逆に口の中で壁を作るようにしていた舌を巧みに絡めとられた。
まるで対極図のように絡んだ舌は、今度はもう外れない。
でたらめに動かし、はずそうと試みるが、その動きすらも逆手にとられ、より強く舌同士が絡み合う
両腕を突っ張り、カッターシャツはおろかインナー代わりにTシャツを脱いだ彼の裸の胸を必死に押すが、そちらもまったく無意味だった。
彼の腕力は強い。
特別鍛えているという風情ではないが、荒事は豊富と聞いていた。おそらく、自然についた筋肉なのだろう。
荒事の経験としなやかな筋肉は、格闘技経験がないにも関わらず、白井が紀委員として修めた格闘の技術も封じてしまっている。
結論として。
空間移動を封じられた今、白井がどんなに抵抗しても、無駄なのだ。
「…………」
いや、そもそも。
自分の身を捧げると決めた時点で、抵抗などする選択肢はなかったのだった。
白井の胸中にある種の諦観が生まれる。
それは彼女から抗う力を奪い、状況を受け入れる隙間へと変化した。
少女の唇が、舌が、抵抗をやめ。
彼を受け入れる。
「んっ……んぅ……んふ……」
うねうねと動く舌が自分のそれを絡み取り、唾液を攪拌するように動く。
粘質な水音が大きくなり、時折角度を変えて重なる唇の端から、とろりと唾液がこぼれた。
そして、つぅっ、と糸をひいた唾液が、ポトリとシーツに染みを作った時。
「っ!」
彼の左手。
頭を抱える右手と逆に、自由に動く彼の左手が。
つつ、と白井の肩に触れ――胸覆う布の、肩紐を、するりと外側にずらした。
湿った音が、室内に響く。
寝具の上に、半裸の男女。
閉められたカーテンを透かす陽光にシルエットは、両人の頭がある一点をもって重なっていた。
「んんっ!」
ぐっ、と頭を後ろから押さえつけられ、白井は思わず身を硬めた。
口付けが深くなる。
驚きに見開いた目と同様、半ば開いてしまった唇を、彼の舌先がこじ開ける。
今まで唇の表面を這うだけだった舌は、一息に口腔内の、ちょうど歯の裏くらいまで侵入してきた。
「んんっ!? んんんっ! んんんんっ!」
首を振り、顔を離そうとする。己の舌先で、彼の舌を堰き止めようと努力する。
辛うじて歯を立てなかったのは、彼を思いやったのではなく、彼の機嫌を損ねたとき、美琴の身に振るかかることを恐れたからだ。
しかし、唇は離れることなく、舌はとまらない。
「んううっ!?」
逆に口の中で壁を作るようにしていた舌を巧みに絡めとられた。
まるで対極図のように絡んだ舌は、今度はもう外れない。
でたらめに動かし、はずそうと試みるが、その動きすらも逆手にとられ、より強く舌同士が絡み合う
両腕を突っ張り、カッターシャツはおろかインナー代わりにTシャツを脱いだ彼の裸の胸を必死に押すが、そちらもまったく無意味だった。
彼の腕力は強い。
特別鍛えているという風情ではないが、荒事は豊富と聞いていた。おそらく、自然についた筋肉なのだろう。
荒事の経験としなやかな筋肉は、格闘技経験がないにも関わらず、白井が紀委員として修めた格闘の技術も封じてしまっている。
結論として。
空間移動を封じられた今、白井がどんなに抵抗しても、無駄なのだ。
「…………」
いや、そもそも。
自分の身を捧げると決めた時点で、抵抗などする選択肢はなかったのだった。
白井の胸中にある種の諦観が生まれる。
それは彼女から抗う力を奪い、状況を受け入れる隙間へと変化した。
少女の唇が、舌が、抵抗をやめ。
彼を受け入れる。
「んっ……んぅ……んふ……」
うねうねと動く舌が自分のそれを絡み取り、唾液を攪拌するように動く。
粘質な水音が大きくなり、時折角度を変えて重なる唇の端から、とろりと唾液がこぼれた。
そして、つぅっ、と糸をひいた唾液が、ポトリとシーツに染みを作った時。
「っ!」
彼の左手。
頭を抱える右手と逆に、自由に動く彼の左手が。
つつ、と白井の肩に触れ――胸覆う布の、肩紐を、するりと外側にずらした。
特に理由はない。
一歩も引かないやつ、とも言われる。
勇敢だ、とも言われる。
向こう見ず、とも言われる。
そうするのは、結局、理由がないからだ。
ただ、そこにいて、そんな状況があって、そうなった、だけだ。
そのときの言葉も嘘じゃない。
逆に、その言葉が信念じゃない。
そう思って、言っている。それだけだ。
きっと、そのときと、その状況が違えば、逆にことを言っていただろう。
図書館を救ったのも、きっとそういうことだ。
誘引物質を助けたのも、そういうことだ。
御坂美琴を護ったのも、そういうことだ。
そのような状況だった、だけだ。
そしていま。
腕の中で、涙を流しながら唇を噛み締める少女がいる。
御坂美琴を、慕うもの。
夜の街で適当な相手を探すのも、生理的な欲求に過ぎなかった。
それが御坂美琴の何かに繋がるかなんて、考えはなかった。
彼女が持ちかけてきた取引に応じたのも、夜にわざわざ街を徘徊する必要がなくなるから、というのが主な理由だ。
だが――。
「っ! ぅうっ! んんっ!」
口から漏れる声を必死に抑える少女を見ていると、興味が湧いてくる。
彼女のは、どう乱れるだろう。
彼女は、どう変わるであろう。
舌を絡める前に、口の中で溶かしておいた媚薬。
嫌悪を伴う相手と同衾するのだ。何をしても『濡れる』わけがない。
そのままでは、とても無理だろう。かといって、潤滑油に頼るのもつまらない。
薬は、用意に生理的反応を助長する。
本来ならば、もう十分だ。
だが、だめだ。興味がわいた。
彼女はどう変わるのか。御坂美琴と、どう接するのか。
少女の背中に舌を這わせ、彼は思う。
そこにいて、そんな状況があって、そうなった。
この娘は、どんなことになるだろう。
一歩も引かないやつ、とも言われる。
勇敢だ、とも言われる。
向こう見ず、とも言われる。
そうするのは、結局、理由がないからだ。
ただ、そこにいて、そんな状況があって、そうなった、だけだ。
そのときの言葉も嘘じゃない。
逆に、その言葉が信念じゃない。
そう思って、言っている。それだけだ。
きっと、そのときと、その状況が違えば、逆にことを言っていただろう。
図書館を救ったのも、きっとそういうことだ。
誘引物質を助けたのも、そういうことだ。
御坂美琴を護ったのも、そういうことだ。
そのような状況だった、だけだ。
そしていま。
腕の中で、涙を流しながら唇を噛み締める少女がいる。
御坂美琴を、慕うもの。
夜の街で適当な相手を探すのも、生理的な欲求に過ぎなかった。
それが御坂美琴の何かに繋がるかなんて、考えはなかった。
彼女が持ちかけてきた取引に応じたのも、夜にわざわざ街を徘徊する必要がなくなるから、というのが主な理由だ。
だが――。
「っ! ぅうっ! んんっ!」
口から漏れる声を必死に抑える少女を見ていると、興味が湧いてくる。
彼女のは、どう乱れるだろう。
彼女は、どう変わるであろう。
舌を絡める前に、口の中で溶かしておいた媚薬。
嫌悪を伴う相手と同衾するのだ。何をしても『濡れる』わけがない。
そのままでは、とても無理だろう。かといって、潤滑油に頼るのもつまらない。
薬は、用意に生理的反応を助長する。
本来ならば、もう十分だ。
だが、だめだ。興味がわいた。
彼女はどう変わるのか。御坂美琴と、どう接するのか。
少女の背中に舌を這わせ、彼は思う。
そこにいて、そんな状況があって、そうなった。
この娘は、どんなことになるだろう。
パァーン、と、破裂音にも似た高い音がコンビニに響いた。
周囲にいた客と、カウンターに立つ店員が何事かと視線を向ける。
雑誌コーナーに立つ、常盤台中学校の制服。
美琴だ。
「・・・・・・」
図らずも注目を集めることになった彼女であるが、そっちの方にはまるっきり意識を払えない。
無論、自分に集まる視線は把握しているが、ちょっとそちらに回す余裕がなかった。
落ち込んだ気分は晴れることなく、ついいつもの習慣で入ったいつものコンビニ。
いつものように立ち読みしようとして、いつもの雑誌を手にとって、いつものように開いた瞬間。
目に飛び込んできたのは、見開き一杯のキスシーンであった。
(ふにゃにゃにゃにゃ……)
妙な声を頭の中で繰り返す。
声に出さないあたりは、辛うじてここがコンビニだという自覚はあるらしい。
それでもタイミングがよすぎた。いや、悪すぎた。
美琴は反射的に閉じた本を、内心で「ふにゃふにゃ」言いながら小脇に抱え、浮き足立った様子でレジに一直線。
その動きにあわせて他の客と店員の視線が動き、結局、会計を済ませて店を出る前、奇妙な空気は継続されることとなった。
結局、元の公園に舞い戻った。
ふにゃふにゃ言う自分に気がつかないまま、再び「ちぇいさー」とミドルキック。
自販機もまさか一日二回もけられるとは思わなかったらしい。ヤシノミサイダーを、3本もはく羽目になった。
(きゃー! きゃー! きゃー!)
一方の美琴は、先ほどからベンチに腰掛け、雑誌を開いてはパーン! 開いてはパーン! を繰り返している。
正直怖いが、怖い人に声をかける者はそうはいない。
何より、違法行為が何もないのだ。通報することはできても、連衡するには無理がある。
その上、彼女は第3位だ。風紀委員もアンチスキルも、うかつに手は出せない。
(えっ!? そ、そこまでするの!? いいの!? これ、普通の雑誌なのに!?)
続きをめくって、美琴の顔はさらに赤くなる。
読んでいるのは、いつも立ち読みしている雑誌でも、お気に入りの漫画だ。
ツンツンした少女と、鈍感だがまっすぐな少年のドタバタラブコメディ。
そんなどこかで聞いたような、というか、思いっきり自分を重ね合わせることのできるストーリー。
先週のラストから、いよいよ主人公とヒロインが心を通わせる山場に突入するのは、美琴にもわかっていた。
しかし実際に、絵としてみると破壊力が違う。何より、自分の心持が違う。
美琴の脳裏に、漫画と連動して、妙な想像――世間様ではそれを妄想と呼ぶ――が浮かぶ。
周囲にいた客と、カウンターに立つ店員が何事かと視線を向ける。
雑誌コーナーに立つ、常盤台中学校の制服。
美琴だ。
「・・・・・・」
図らずも注目を集めることになった彼女であるが、そっちの方にはまるっきり意識を払えない。
無論、自分に集まる視線は把握しているが、ちょっとそちらに回す余裕がなかった。
落ち込んだ気分は晴れることなく、ついいつもの習慣で入ったいつものコンビニ。
いつものように立ち読みしようとして、いつもの雑誌を手にとって、いつものように開いた瞬間。
目に飛び込んできたのは、見開き一杯のキスシーンであった。
(ふにゃにゃにゃにゃ……)
妙な声を頭の中で繰り返す。
声に出さないあたりは、辛うじてここがコンビニだという自覚はあるらしい。
それでもタイミングがよすぎた。いや、悪すぎた。
美琴は反射的に閉じた本を、内心で「ふにゃふにゃ」言いながら小脇に抱え、浮き足立った様子でレジに一直線。
その動きにあわせて他の客と店員の視線が動き、結局、会計を済ませて店を出る前、奇妙な空気は継続されることとなった。
結局、元の公園に舞い戻った。
ふにゃふにゃ言う自分に気がつかないまま、再び「ちぇいさー」とミドルキック。
自販機もまさか一日二回もけられるとは思わなかったらしい。ヤシノミサイダーを、3本もはく羽目になった。
(きゃー! きゃー! きゃー!)
一方の美琴は、先ほどからベンチに腰掛け、雑誌を開いてはパーン! 開いてはパーン! を繰り返している。
正直怖いが、怖い人に声をかける者はそうはいない。
何より、違法行為が何もないのだ。通報することはできても、連衡するには無理がある。
その上、彼女は第3位だ。風紀委員もアンチスキルも、うかつに手は出せない。
(えっ!? そ、そこまでするの!? いいの!? これ、普通の雑誌なのに!?)
続きをめくって、美琴の顔はさらに赤くなる。
読んでいるのは、いつも立ち読みしている雑誌でも、お気に入りの漫画だ。
ツンツンした少女と、鈍感だがまっすぐな少年のドタバタラブコメディ。
そんなどこかで聞いたような、というか、思いっきり自分を重ね合わせることのできるストーリー。
先週のラストから、いよいよ主人公とヒロインが心を通わせる山場に突入するのは、美琴にもわかっていた。
しかし実際に、絵としてみると破壊力が違う。何より、自分の心持が違う。
美琴の脳裏に、漫画と連動して、妙な想像――世間様ではそれを妄想と呼ぶ――が浮かぶ。
――美琴、俺、実はさ
――な、なによ、真剣な顔して
――真剣にもなるさ。一大決心なんだからな
――な、あ、う、な、なによそれは。お金なら貸さないわよ!?
――…真剣なんだ。聞いてくれ。
――う、あ、う、うん。
――ありがとう。……美琴、実は俺、お前のことが……
(だ、だめよだめだめだめ! 私はまだ中学生なのよ!? そ、そりゃアンタは高校生かもしれないけど、そんな、こんなところで……)
妄想の中ですら、一足飛び以上に展開が飛んでいるが、恋する乙女に常識は通用しない。
イヤンイヤン、と首を振る美琴の前髪からは、バリバリと紫電が漏れまくっている。
ベンチの隣に三段重ねで置かれたヤシノミサイダーは、温度差ゆえに汗をかいていたが――美琴にあきれているようにも、見えた。
結局、彼女が正気を取り戻すためには、一時間ほど後に偶然通りがかった彼女の友人である、飾利と涙子の登場を待たねばならないのだった。
「んんんっ!」
ビクッ、と白井が背を仰け反らせた。
彼の指が、尾てい骨から背中中ほどまでを逆になぞったからだ。
シーツを握る手に力が入り、放射状のシワがさらに増える。
「はぁ、はぁ、はぁ」
背中から指が離れ、瞬間的な刺激から解放された白井が頭を枕の上に落とす。
うつ伏せた少女。
下腹部を覆う布はそのままの彼女は、ほんの刹那だけ息を吐いた。
だが、彼はそれで許してはくれない。
「あっ?」
左ひじを彼の右手がつかみ、そのまま、ぐいっ、と背中側に引っ張られた。
抵抗すれば筋を痛めてしまう。いや、それ以前に、どういうわけか力が入らない。
そうなれば、身体は素直だ。
身体を痛めないよう、無意識に、しかし自ら仰向けに転がった。
僅かな稜線しかない膨らみが、ふる、と揺れる。
すぐさま、彼が覆いかぶさってくる。
「うぅんっ!」
胸の先端から、甘く痺れる感覚。
左胸は彼の指で。右胸は彼の舌で。
ゆるりと左右に動く指。親指を除く四本の指の間に間で、ポツポツと飛び石のように刺激される。
対照的に小刻みに動く舌。ソフトクリームでも舐めるかのように、舌の腹が頂を這い回る。
「あっ、んぅっ…ぅあっ、あっ…まって……まってくださいま…あっ」
柔らかな愛撫に晒された頂は、反発するように――否、刺激をねだるように、硬くしこり立っていた。
(な、なぜ、わたくし、こんなにっ)
どうしても漏れそうになる喘ぎを無理やり飲み込みながら、白井は思う。
男性経験は、もちろんない。
だが、一人で慰める経験は、ある。
快楽を知るのが年齢的に早いかと言われれば、そんなことはないだろう。女と言うものは総じて男子よりも成長が早く、耳も早い。
美琴を想っての行為は、回数だけならばむしろ多かったかもしれなかった。
身体は、快楽を知っている。
しかし、いまは状況が異なりすぎるのだ。
悪寒と嫌悪しか感じないはずの、男性との行為。
それなのに、身体は忠実に、快楽を神経に乗せている。心とは裏腹に、欲望の熱を溜めていく。
もともと、空間転移能力者は触感というものに秀でていた。
年齢にそぐわない薄手の下着を身に着けているのも、衣類の感触で演算を狂わせないため。
それほどに、自分は、敏感なのだ。
「ああんっ!」
不意に頂から強い刺激。背が仰け反り、白井の顎が上がる。
彼が唇で桃色の先端を挟み、クニクニと弄んだせいだ。
ビクッ、と白井が背を仰け反らせた。
彼の指が、尾てい骨から背中中ほどまでを逆になぞったからだ。
シーツを握る手に力が入り、放射状のシワがさらに増える。
「はぁ、はぁ、はぁ」
背中から指が離れ、瞬間的な刺激から解放された白井が頭を枕の上に落とす。
うつ伏せた少女。
下腹部を覆う布はそのままの彼女は、ほんの刹那だけ息を吐いた。
だが、彼はそれで許してはくれない。
「あっ?」
左ひじを彼の右手がつかみ、そのまま、ぐいっ、と背中側に引っ張られた。
抵抗すれば筋を痛めてしまう。いや、それ以前に、どういうわけか力が入らない。
そうなれば、身体は素直だ。
身体を痛めないよう、無意識に、しかし自ら仰向けに転がった。
僅かな稜線しかない膨らみが、ふる、と揺れる。
すぐさま、彼が覆いかぶさってくる。
「うぅんっ!」
胸の先端から、甘く痺れる感覚。
左胸は彼の指で。右胸は彼の舌で。
ゆるりと左右に動く指。親指を除く四本の指の間に間で、ポツポツと飛び石のように刺激される。
対照的に小刻みに動く舌。ソフトクリームでも舐めるかのように、舌の腹が頂を這い回る。
「あっ、んぅっ…ぅあっ、あっ…まって……まってくださいま…あっ」
柔らかな愛撫に晒された頂は、反発するように――否、刺激をねだるように、硬くしこり立っていた。
(な、なぜ、わたくし、こんなにっ)
どうしても漏れそうになる喘ぎを無理やり飲み込みながら、白井は思う。
男性経験は、もちろんない。
だが、一人で慰める経験は、ある。
快楽を知るのが年齢的に早いかと言われれば、そんなことはないだろう。女と言うものは総じて男子よりも成長が早く、耳も早い。
美琴を想っての行為は、回数だけならばむしろ多かったかもしれなかった。
身体は、快楽を知っている。
しかし、いまは状況が異なりすぎるのだ。
悪寒と嫌悪しか感じないはずの、男性との行為。
それなのに、身体は忠実に、快楽を神経に乗せている。心とは裏腹に、欲望の熱を溜めていく。
もともと、空間転移能力者は触感というものに秀でていた。
年齢にそぐわない薄手の下着を身に着けているのも、衣類の感触で演算を狂わせないため。
それほどに、自分は、敏感なのだ。
「ああんっ!」
不意に頂から強い刺激。背が仰け反り、白井の顎が上がる。
彼が唇で桃色の先端を挟み、クニクニと弄んだせいだ。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
刺激はそれだけにとどまらない。
彼の口内。唇から僅かに内側に入った部分に顔を出した頂を、彼の舌先が掠めるようにくすぐり続ける。
片や左側の頂では、いままで参加していなかった親指が先端をこね、あるいは、トントン、とノックする。
自己の指だけでは味わえない刺激と、慣れた指での刺激。
交互に、同時に入力される快感が、いよいよ下腹部にとろとろとした火をつけ始めた。
@@@@
「っ、っ、あっ、あ、はぁっ」
頂から稜線をとおり、僅かに浮き出た鎖骨へと。
再び稜線を上り、頂へと。
彼の舌により繰り返される、緩やかな刺激。
唇を噛み締め、漏れようとする声を抑えていた白井だったが、都合7回目の頂への愛撫によって、ついに堤防が決壊した。
「ああっ、ああっ、あっ、ああっ、あうっ! だ、だめですのっ。それ以上は、だめですのぉっ」
薄い厚みの上にある、桃色の乳首。
ツン、とごまかせないほどにしこり立ったその根元を、くるりくるりと彼の舌先がくすぐり、そうかと思えば、上下の唇が挟み、ふにふにと甘く噛む。
その度に白井の背筋を蕩けるような小波が駆け上り、耐えようとする理性を揺さぶっていく。
「あんっ! ああぁんっ! あうんっ! ああぅっ!」
彼の舌と唇と指が動くたび、細い白井の肢体が小刻みに跳ねる。
その様は活きのよい魚が自ずから暴れているようにも、料理人にその鮮度を確かめるために暴れさせられているようにも、見えた。
「我慢せずに、声を聞かせてくれよ白井。どうせここには、誰も来ないんだからよ」
「ふ、ふざけ……んんんっ!」
抗弁しようとした唇が、彼の唇に塞がれる。
ぬめぬめとした舌が即座に進入し、白井の口内で粘度を増した唾液を絡めり、吸い上げる。
「んー?! んんー?!」
吸い取られていく唾液。それは彼は己の物とブレンドしてから、再度白井の中に絡め戻してくる。
ほぼ反射的に彼の両肩を押しのけようとするが、快楽に火照っている身体は、嘘のように力が入らない。
唯一動く首だけをイヤイヤと振るものの、結局は、舌の絡み合いを助長するだけだった。
「んっ、んっ、んっ、んんんっ」
(こんな……こんな……)
頬の裏、歯茎、口の上側、舌の裏。
無遠慮に、しかし的確な彼の口内愛撫。想定外の刺激に、徐々に白井の目が霞がかり始めた。
「んふっ……んんん……はぁぁ、んんっ……んむぅ……」
(わた……くし……)
阻害された呼吸がさらにそれを後押しし、やがて白井の両腕からは力が、瞳からは意思が消え去っていく。
「……」
至近距離も至近距離でそれを覗き込む彼の目が、笑みの形に変わる。
そして。
「んんぁ、はあっ、はあっ、はあっ……」
つつっ、と糸を引きながら、二人の唇が離れた。
解放された白井が、くたりとベッドに横たわる。
刺激はそれだけにとどまらない。
彼の口内。唇から僅かに内側に入った部分に顔を出した頂を、彼の舌先が掠めるようにくすぐり続ける。
片や左側の頂では、いままで参加していなかった親指が先端をこね、あるいは、トントン、とノックする。
自己の指だけでは味わえない刺激と、慣れた指での刺激。
交互に、同時に入力される快感が、いよいよ下腹部にとろとろとした火をつけ始めた。
@@@@
「っ、っ、あっ、あ、はぁっ」
頂から稜線をとおり、僅かに浮き出た鎖骨へと。
再び稜線を上り、頂へと。
彼の舌により繰り返される、緩やかな刺激。
唇を噛み締め、漏れようとする声を抑えていた白井だったが、都合7回目の頂への愛撫によって、ついに堤防が決壊した。
「ああっ、ああっ、あっ、ああっ、あうっ! だ、だめですのっ。それ以上は、だめですのぉっ」
薄い厚みの上にある、桃色の乳首。
ツン、とごまかせないほどにしこり立ったその根元を、くるりくるりと彼の舌先がくすぐり、そうかと思えば、上下の唇が挟み、ふにふにと甘く噛む。
その度に白井の背筋を蕩けるような小波が駆け上り、耐えようとする理性を揺さぶっていく。
「あんっ! ああぁんっ! あうんっ! ああぅっ!」
彼の舌と唇と指が動くたび、細い白井の肢体が小刻みに跳ねる。
その様は活きのよい魚が自ずから暴れているようにも、料理人にその鮮度を確かめるために暴れさせられているようにも、見えた。
「我慢せずに、声を聞かせてくれよ白井。どうせここには、誰も来ないんだからよ」
「ふ、ふざけ……んんんっ!」
抗弁しようとした唇が、彼の唇に塞がれる。
ぬめぬめとした舌が即座に進入し、白井の口内で粘度を増した唾液を絡めり、吸い上げる。
「んー?! んんー?!」
吸い取られていく唾液。それは彼は己の物とブレンドしてから、再度白井の中に絡め戻してくる。
ほぼ反射的に彼の両肩を押しのけようとするが、快楽に火照っている身体は、嘘のように力が入らない。
唯一動く首だけをイヤイヤと振るものの、結局は、舌の絡み合いを助長するだけだった。
「んっ、んっ、んっ、んんんっ」
(こんな……こんな……)
頬の裏、歯茎、口の上側、舌の裏。
無遠慮に、しかし的確な彼の口内愛撫。想定外の刺激に、徐々に白井の目が霞がかり始めた。
「んふっ……んんん……はぁぁ、んんっ……んむぅ……」
(わた……くし……)
阻害された呼吸がさらにそれを後押しし、やがて白井の両腕からは力が、瞳からは意思が消え去っていく。
「……」
至近距離も至近距離でそれを覗き込む彼の目が、笑みの形に変わる。
そして。
「んんぁ、はあっ、はあっ、はあっ……」
つつっ、と糸を引きながら、二人の唇が離れた。
解放された白井が、くたりとベッドに横たわる。
「はぁぁ……あ……」
しかしもう、白井は動こうとしない。
ぼんやりとした眼差しを、中空に這わせているだけだった。
「……」
彼が、ずっと少女の右胸を愛撫していた左手で、少女の頬を撫でた。
「あ……ぁ……あぁ……」
白井が熱く、甘い吐息を漏らす。
抵抗らしい抵抗も、瞳に浮かぶ意思も、ない。
「……回ったな」
薬。
彼が、今度は確実に笑みを浮かべ、少女の肌に右手を伸ばした。
着地する場所は、先ほどまでの、上半身では、ない。
薄い布に人差し指が触れる。
十分に水気を吸った下着が湿り気のある音を返した。
「くぅんっ」
同時に白井が顎をあげ、背筋を逸らした。
「あっ、はぁ…」
とろん、とした表情で彼を見上げる。
薄く浮かぶ笑みは、いまの感覚を悦んでいる証だ。
ニヤリと笑う彼は、ただ触れただけの指先を、上下に。
「あぁ……」
張り付き、その向こうにある肉の割れ目をなぞる動きに、意思の大半を眠らされた少女は素直に反応を返した。
鼻にかかる吐息と喘ぎを漏らしながら、投げ出された両手はシーツを握り、細い腰は指にあわせて緩やかに揺れる。
「んっ……んんっ……ん……ん……」
繰り返される桃色の呼吸音の間で水音が大きくなっていく。
零れていくような音ではない。
ちょうど粘土に多量の水を混ぜこんだような、柔らかな粘りの音。
「はぁ……はあぁ……ぅあんっ……あぁん……あんっ……あんっ……」
指先が上に向かう。
なぞる動きの中で戯れるようにくるりと円を描き、さらに上へ。
「んんん……」
布地の向こうで、僅かだけ顔を出した肉芽が、刺激を予想して震える。
だが、
「……」
そこに到達するより先に、彼は指にかける圧力を緩めた。
触れるか触れないか。
ギリギリの空間を持って――さきほど乳房の頂をくすぐった時のように――肉芽の直近で円を描かせた。
しかしもう、白井は動こうとしない。
ぼんやりとした眼差しを、中空に這わせているだけだった。
「……」
彼が、ずっと少女の右胸を愛撫していた左手で、少女の頬を撫でた。
「あ……ぁ……あぁ……」
白井が熱く、甘い吐息を漏らす。
抵抗らしい抵抗も、瞳に浮かぶ意思も、ない。
「……回ったな」
薬。
彼が、今度は確実に笑みを浮かべ、少女の肌に右手を伸ばした。
着地する場所は、先ほどまでの、上半身では、ない。
薄い布に人差し指が触れる。
十分に水気を吸った下着が湿り気のある音を返した。
「くぅんっ」
同時に白井が顎をあげ、背筋を逸らした。
「あっ、はぁ…」
とろん、とした表情で彼を見上げる。
薄く浮かぶ笑みは、いまの感覚を悦んでいる証だ。
ニヤリと笑う彼は、ただ触れただけの指先を、上下に。
「あぁ……」
張り付き、その向こうにある肉の割れ目をなぞる動きに、意思の大半を眠らされた少女は素直に反応を返した。
鼻にかかる吐息と喘ぎを漏らしながら、投げ出された両手はシーツを握り、細い腰は指にあわせて緩やかに揺れる。
「んっ……んんっ……ん……ん……」
繰り返される桃色の呼吸音の間で水音が大きくなっていく。
零れていくような音ではない。
ちょうど粘土に多量の水を混ぜこんだような、柔らかな粘りの音。
「はぁ……はあぁ……ぅあんっ……あぁん……あんっ……あんっ……」
指先が上に向かう。
なぞる動きの中で戯れるようにくるりと円を描き、さらに上へ。
「んんん……」
布地の向こうで、僅かだけ顔を出した肉芽が、刺激を予想して震える。
だが、
「……」
そこに到達するより先に、彼は指にかける圧力を緩めた。
触れるか触れないか。
ギリギリの空間を持って――さきほど乳房の頂をくすぐった時のように――肉芽の直近で円を描かせた。
「ぅうん…やぁん……」
小さくなった快楽と、与えられると予想した快楽。
原始の欲望を求めて腰が指を追う。
だが彼はそれを与えない。
むしろ白井の動きにあわせ、ギリギリの触感をキープしながら、指を運び続けた。
「やぁ……やぁ……」
むずかる声と、強くなるシーツを握る力。
子供のような仕草に、彼が苦笑する。
しかし彼の所作に変化はない。
指はゆっくりと円を描き、白井の腰もまた、ゆっくりと円を描く。
「あぅ……だめです……やぁ……あ……だめ、ですのぉ……ああぁん……あっ、あっ、あっ!」
刺激は一定。
だが入力される快楽は、長い時間をかけて川の底に泥が溜まるように、白井の未成熟な身体に蓄積され続けていく。
「あぁ……もう、もう……」
「どうしたんだ、白井」
彼が、わかりきった問いを放つ。
白井は答えるしかなかった。
「もう、もう許して……許してくださいまし……もうわたくし……我慢できませんのぉ……」
無意識に出たであろう言葉。無意識にでた、懇願の言葉。
しかしそれを聞いた彼の指は、
「だめだぜ、白井」
すっ、と湿地から離された。
「ああぁぁ…」
哀願の声が響く。
自分で触れようとするだけの思考も停止しているのか、ただ腰だけが、独立した生物であるかのように、クネクネと動いていた。
「もっとしてほしいか?」と、彼が瞳を覗き込んだ。
「は……」
唐突な問いに、一瞬だけ白井の返事が遅れ――しかしすぐに白痴のような笑みを浮かべた。
「はい……してほしい、ですのぉ」
トロリ、と、白井の口の端から、涎が零れる。
「……」
「してください……もっと、気持ちよく……」
はぁはぁと、犬のように軽く舌を出し、荒い呼吸が重なる。
「それじゃあ、」
彼が白井の耳元に口を寄せた。
「四つん這いになるんだ」
ふっ、と白井の耳に息を吹き掛け、続けた。
「犬みたいにな。そうすれば、続けてやるよ」
小さくなった快楽と、与えられると予想した快楽。
原始の欲望を求めて腰が指を追う。
だが彼はそれを与えない。
むしろ白井の動きにあわせ、ギリギリの触感をキープしながら、指を運び続けた。
「やぁ……やぁ……」
むずかる声と、強くなるシーツを握る力。
子供のような仕草に、彼が苦笑する。
しかし彼の所作に変化はない。
指はゆっくりと円を描き、白井の腰もまた、ゆっくりと円を描く。
「あぅ……だめです……やぁ……あ……だめ、ですのぉ……ああぁん……あっ、あっ、あっ!」
刺激は一定。
だが入力される快楽は、長い時間をかけて川の底に泥が溜まるように、白井の未成熟な身体に蓄積され続けていく。
「あぁ……もう、もう……」
「どうしたんだ、白井」
彼が、わかりきった問いを放つ。
白井は答えるしかなかった。
「もう、もう許して……許してくださいまし……もうわたくし……我慢できませんのぉ……」
無意識に出たであろう言葉。無意識にでた、懇願の言葉。
しかしそれを聞いた彼の指は、
「だめだぜ、白井」
すっ、と湿地から離された。
「ああぁぁ…」
哀願の声が響く。
自分で触れようとするだけの思考も停止しているのか、ただ腰だけが、独立した生物であるかのように、クネクネと動いていた。
「もっとしてほしいか?」と、彼が瞳を覗き込んだ。
「は……」
唐突な問いに、一瞬だけ白井の返事が遅れ――しかしすぐに白痴のような笑みを浮かべた。
「はい……してほしい、ですのぉ」
トロリ、と、白井の口の端から、涎が零れる。
「……」
「してください……もっと、気持ちよく……」
はぁはぁと、犬のように軽く舌を出し、荒い呼吸が重なる。
「それじゃあ、」
彼が白井の耳元に口を寄せた。
「四つん這いになるんだ」
ふっ、と白井の耳に息を吹き掛け、続けた。
「犬みたいにな。そうすれば、続けてやるよ」
「はぁ、夢見が悪かった、ですか」
「そ、そうそうそうなの! ちょっと、とんでもない夢みちゃって!」
公園。
美琴から渡されたヤシノミサイダーを手に、飾利がオウム返しに言った。
「それって、どんな夢だったんです?」
問うたのは涙子。彼女の手にも飾利と同じ経緯で、サイダーがある。
「ふえっ!?」
ピリッ、と稲光が漏れた。
「ちょ、ちょっと佐天さん」と、飾利。
「えー、でも気になるじゃん。第3位すらも動揺させる夢! どーんな内容なのかなーって」
歌うように言いながら、横目で美琴を見る。
件の電気娘は、「ふにゃふにゃ」と赤くなり始めた。
これは恋話だ。ゴシップだ。からかいのネタだ。
そういう話が大好物の涙子が、見逃す手はない。
「そ、それはその…」
飾利としても気にならないわけではないが、美琴はさっきまでベンチを中心として同心円状5メートルに無差別落雷をさせていたのである。命をかけてまで聞きたいとは思わない。
「御坂さーん」
「にゃにゃにゃにゃに!?」
「好きな人の夢ですよね?」
初太刀からおもいっきりいった。正に単刀直入。
「に”ゃ!?」と美琴。前髪で電撃が弾ける。
「ひゃ!」と飾利。頭上で花が一輪焦げた。
「あのいつも一緒にいる、黒ツンツン髪の高校生さんですよね?」
さらに斬りこんだ。これぞ一刀両断。
「ふぎゃ!?」と美琴。襟首がパリッと鳴った。
「ひょえ!」と飾利。今度は三輪まとめて焦げた。
「しょ、しょれは、しょの……」
美琴は完璧に真っ赤。ほんの数時間前と同じように、サイダーを持ちながらツンツンと指先をあわせる。
「そ、そうそうそうなの! ちょっと、とんでもない夢みちゃって!」
公園。
美琴から渡されたヤシノミサイダーを手に、飾利がオウム返しに言った。
「それって、どんな夢だったんです?」
問うたのは涙子。彼女の手にも飾利と同じ経緯で、サイダーがある。
「ふえっ!?」
ピリッ、と稲光が漏れた。
「ちょ、ちょっと佐天さん」と、飾利。
「えー、でも気になるじゃん。第3位すらも動揺させる夢! どーんな内容なのかなーって」
歌うように言いながら、横目で美琴を見る。
件の電気娘は、「ふにゃふにゃ」と赤くなり始めた。
これは恋話だ。ゴシップだ。からかいのネタだ。
そういう話が大好物の涙子が、見逃す手はない。
「そ、それはその…」
飾利としても気にならないわけではないが、美琴はさっきまでベンチを中心として同心円状5メートルに無差別落雷をさせていたのである。命をかけてまで聞きたいとは思わない。
「御坂さーん」
「にゃにゃにゃにゃに!?」
「好きな人の夢ですよね?」
初太刀からおもいっきりいった。正に単刀直入。
「に”ゃ!?」と美琴。前髪で電撃が弾ける。
「ひゃ!」と飾利。頭上で花が一輪焦げた。
「あのいつも一緒にいる、黒ツンツン髪の高校生さんですよね?」
さらに斬りこんだ。これぞ一刀両断。
「ふぎゃ!?」と美琴。襟首がパリッと鳴った。
「ひょえ!」と飾利。今度は三輪まとめて焦げた。
「しょ、しょれは、しょの……」
美琴は完璧に真っ赤。ほんの数時間前と同じように、サイダーを持ちながらツンツンと指先をあわせる。
「さ、佐天さんその辺で……」
対象的に真っ青になった飾利が、サイダーを持っていない方の手でクイクイと涙子の袖を引っ張る。
しかしそれは、あまりにも控えめすぎる行為だ。
調子に乗りすぎて周りが見えていない涙子が、美琴の顔を覗き込む。
「にっひっひー。御坂さぁ~ん、もしかして、夢でキスとかしちゃったんですか?」
「!」
ヒュボッ! と音をたてて美琴の耳はおろか、首筋までが染まった。
「!」
ヒュボッ! と音をたてて、飾利の花飾りがすべて焦げた。
そこまで来ても、涙子は気がつかない。
「そ・れ・と・も」
まだ何か言うのか!?
あせりに満ちた飾利が次の言葉をつむぐ前に、
「エッチなこと、だったりします?」
「!!!!」
半径10メートルに落雷が発生した。
対象的に真っ青になった飾利が、サイダーを持っていない方の手でクイクイと涙子の袖を引っ張る。
しかしそれは、あまりにも控えめすぎる行為だ。
調子に乗りすぎて周りが見えていない涙子が、美琴の顔を覗き込む。
「にっひっひー。御坂さぁ~ん、もしかして、夢でキスとかしちゃったんですか?」
「!」
ヒュボッ! と音をたてて美琴の耳はおろか、首筋までが染まった。
「!」
ヒュボッ! と音をたてて、飾利の花飾りがすべて焦げた。
そこまで来ても、涙子は気がつかない。
「そ・れ・と・も」
まだ何か言うのか!?
あせりに満ちた飾利が次の言葉をつむぐ前に、
「エッチなこと、だったりします?」
「!!!!」
半径10メートルに落雷が発生した。
「んあっ! あっ、はっ、あっ、ああんっ!」
白井が身をよじる度、シーツに皺と水滴が刻まれていく。
俯せた姿勢から、たてた両膝。
高く上げられた下半身とは裏腹に、力抜けた両腕は上半身をささえきれない。
結果的に白井は、桃のような尻を、彼に突き出した姿勢になっていた。
「ああぁっ! あんっ! あっ、あーっ!」
喘ぎの他で部屋に響くは、粘質の高い液の音。
ベッドの下端、ギリギリに位置する白井の膝。その内側から両腕を差し入れ、そのまま外側から腰を掴む。
ベッドに接するほど近づけた部屋備え付けの椅子に座り、そのまま引き寄せれば、顔が埋まる場所は決まっていた。
薬によって敏感になった秘裂を、彼の舌が上下になぞる。
左側の陰唇を舌先が左右に動きながらゆっくりと下り、陰核の傍まで達する。
かたくしこりたったソコを、ツン、と刺激してから、今度は舌を押し付けるようにして、右側の陰唇を舐め上げた。
速度は速くない。ゆっくりと、じっくりと、ねっとりと上下する彼の顔は、白井の分泌した蜜によって、口元といわず鼻といわず、べっとりと濡れていた。
彼の舌が陰唇を嬲るたびに、ピチャピチャと音がする。彼の鼻が秘孔を掠めるたびに、クチュリクチュリと音がたつ。
それは白井が、もう隠しようもないほど濡れていることを、誰でもない彼女自身に知らしめていた。
「すげぇな白井。洪水だぜ」
「あんっ、やあんっ!」
彼の言葉に白井が強く首を振る。しかしそれは否定ではない。
もどかしかったからだ。話しかけるために離れた彼の舌が。
彼女はさらに尻を後ろに突き出し、小刻みに左右に振った。
思考を奪われた少女は、羞恥心も、自制心も何もない。ただ与えられる快楽を逃したくないという衝動だけで動いている。
彼は、やれやれ、と苦笑。薄く唇を開けると、やや顔を下側にずらした。
顔の中で前に突き出た鼻が、じゅくじゅくと白濁の蜜を溢れさせる膣口に埋まる。そして、
「んひぃんっ!」
がくんと、と白井が背を仰け反らせた。
「あ、あぁんっ! あっ! ああっ! あっ! あーっ! あーっ!」
口の端から涎を零しながら、さきほど口腔愛撫をねだったとき以上に首を振る。
彼が目だけで笑った。
包皮から顔を出し、十分に硬くしこりたった陰核。それが唇で挟まれ、あまつさえ、ふにふにと甘噛みされている。
形態としては乳首にされていたことと変わらないが、身体を貫く悦楽は、その比ではなかった。
「あぁんっ! あっ、あああっ! 駄目ですのっ! そんなの、駄目ですのぉ!」
普段は理知的な瞳は完全に熱に浮かされ、凛とした表情は溶ろけてしまい、見る影もない。
唇から漏れる否定の言葉。しかし、彼女の腰は、もっともっととねだるように、さらに彼の顔に尻を押し付けた。
「んぷっ」
ソレを咥えている口は元より、鼻までがスライムのように柔らかくなった淫肉に埋もれた。
呼吸ができない。しかし、彼はまったくとまらなかった。
陰核を咥えたまま、唇を小さく左右に動かす。顔を小刻みに上下させ、埋もれた鼻先で白井の入り口を刺激する。腰をつかんでいた両手は、やや位置を後ろにさげ、あまやかな丸い曲線を、やわやわと揉みしだいた。
白井が身をよじる度、シーツに皺と水滴が刻まれていく。
俯せた姿勢から、たてた両膝。
高く上げられた下半身とは裏腹に、力抜けた両腕は上半身をささえきれない。
結果的に白井は、桃のような尻を、彼に突き出した姿勢になっていた。
「ああぁっ! あんっ! あっ、あーっ!」
喘ぎの他で部屋に響くは、粘質の高い液の音。
ベッドの下端、ギリギリに位置する白井の膝。その内側から両腕を差し入れ、そのまま外側から腰を掴む。
ベッドに接するほど近づけた部屋備え付けの椅子に座り、そのまま引き寄せれば、顔が埋まる場所は決まっていた。
薬によって敏感になった秘裂を、彼の舌が上下になぞる。
左側の陰唇を舌先が左右に動きながらゆっくりと下り、陰核の傍まで達する。
かたくしこりたったソコを、ツン、と刺激してから、今度は舌を押し付けるようにして、右側の陰唇を舐め上げた。
速度は速くない。ゆっくりと、じっくりと、ねっとりと上下する彼の顔は、白井の分泌した蜜によって、口元といわず鼻といわず、べっとりと濡れていた。
彼の舌が陰唇を嬲るたびに、ピチャピチャと音がする。彼の鼻が秘孔を掠めるたびに、クチュリクチュリと音がたつ。
それは白井が、もう隠しようもないほど濡れていることを、誰でもない彼女自身に知らしめていた。
「すげぇな白井。洪水だぜ」
「あんっ、やあんっ!」
彼の言葉に白井が強く首を振る。しかしそれは否定ではない。
もどかしかったからだ。話しかけるために離れた彼の舌が。
彼女はさらに尻を後ろに突き出し、小刻みに左右に振った。
思考を奪われた少女は、羞恥心も、自制心も何もない。ただ与えられる快楽を逃したくないという衝動だけで動いている。
彼は、やれやれ、と苦笑。薄く唇を開けると、やや顔を下側にずらした。
顔の中で前に突き出た鼻が、じゅくじゅくと白濁の蜜を溢れさせる膣口に埋まる。そして、
「んひぃんっ!」
がくんと、と白井が背を仰け反らせた。
「あ、あぁんっ! あっ! ああっ! あっ! あーっ! あーっ!」
口の端から涎を零しながら、さきほど口腔愛撫をねだったとき以上に首を振る。
彼が目だけで笑った。
包皮から顔を出し、十分に硬くしこりたった陰核。それが唇で挟まれ、あまつさえ、ふにふにと甘噛みされている。
形態としては乳首にされていたことと変わらないが、身体を貫く悦楽は、その比ではなかった。
「あぁんっ! あっ、あああっ! 駄目ですのっ! そんなの、駄目ですのぉ!」
普段は理知的な瞳は完全に熱に浮かされ、凛とした表情は溶ろけてしまい、見る影もない。
唇から漏れる否定の言葉。しかし、彼女の腰は、もっともっととねだるように、さらに彼の顔に尻を押し付けた。
「んぷっ」
ソレを咥えている口は元より、鼻までがスライムのように柔らかくなった淫肉に埋もれた。
呼吸ができない。しかし、彼はまったくとまらなかった。
陰核を咥えたまま、唇を小さく左右に動かす。顔を小刻みに上下させ、埋もれた鼻先で白井の入り口を刺激する。腰をつかんでいた両手は、やや位置を後ろにさげ、あまやかな丸い曲線を、やわやわと揉みしだいた。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
白井の声が、単音に、高音に変わっていく。
快楽の頂きが、見えてくる。
背筋は仰け反ったまま、力が入らないはずの両腕は、シーツを強く掴み、ピン、と伸ばされた。
首が強く振られ、ツインテールを留めていたリボンが解けた。軽くウェーブのかかった髪が、彼女の背中に広がっていく。
その髪の感触すら刺激になったのか、尻の動きが左右から、円を描くものに変化する。
口元から、粘度の高い唾液が、つつっ、とこぼれ、糸を引いてシーツに垂れた。秘裂から溢れた蜜が、彼の顎をとおり、白い水滴として、糸を残してシーツに染みを残す。
そして、その瞬間がやってくる。
「あっ! あっ! あっ! あはあっ! もうっ! もうっ!」
白井の瞳から、ポロリ、と涙が零れ、同時に、じゅるりと彼の唇が、蜜ごと強く陰核を吸った。
「!」
理性のない意識が、完璧な白で染め上げられ、
「んあああっ! イクっ! イキますのっ! あああああっ! イクーっ!」
ビクビクッ、と全身を痙攣させ、白井が絶頂に達する。
「っ! っ! っ! っ!」
背骨が折れるのではないかと言うほど身体を仰け反らせ、大きな痙攣を、四度。
その度に、彼が鼻を埋めた膣口から、ぴゅっ、ぴゅっ、と蜜が噴出していく。
酸素を求めるように舌を突き出した彼女は、最後の身震いの後、半秒だけストップモーション。
「あ、ああぁ、あああぁぁぁぁぁ……ああぁぁぁぁ…………」
直後、かくりと力を失い、投げ出すようにベッドに突っ伏す。
そのまま彼女は、白い闇の中に、意識を投げ出していった。
白井の声が、単音に、高音に変わっていく。
快楽の頂きが、見えてくる。
背筋は仰け反ったまま、力が入らないはずの両腕は、シーツを強く掴み、ピン、と伸ばされた。
首が強く振られ、ツインテールを留めていたリボンが解けた。軽くウェーブのかかった髪が、彼女の背中に広がっていく。
その髪の感触すら刺激になったのか、尻の動きが左右から、円を描くものに変化する。
口元から、粘度の高い唾液が、つつっ、とこぼれ、糸を引いてシーツに垂れた。秘裂から溢れた蜜が、彼の顎をとおり、白い水滴として、糸を残してシーツに染みを残す。
そして、その瞬間がやってくる。
「あっ! あっ! あっ! あはあっ! もうっ! もうっ!」
白井の瞳から、ポロリ、と涙が零れ、同時に、じゅるりと彼の唇が、蜜ごと強く陰核を吸った。
「!」
理性のない意識が、完璧な白で染め上げられ、
「んあああっ! イクっ! イキますのっ! あああああっ! イクーっ!」
ビクビクッ、と全身を痙攣させ、白井が絶頂に達する。
「っ! っ! っ! っ!」
背骨が折れるのではないかと言うほど身体を仰け反らせ、大きな痙攣を、四度。
その度に、彼が鼻を埋めた膣口から、ぴゅっ、ぴゅっ、と蜜が噴出していく。
酸素を求めるように舌を突き出した彼女は、最後の身震いの後、半秒だけストップモーション。
「あ、ああぁ、あああぁぁぁぁぁ……ああぁぁぁぁ…………」
直後、かくりと力を失い、投げ出すようにベッドに突っ伏す。
そのまま彼女は、白い闇の中に、意識を投げ出していった。
「……」
常盤台中学、寮。
出かけた時には持っていなかった手提げ袋を右手に、白井が自分の部屋のドアを開けた。
美琴の姿はない。
普段であれば門限の時刻は過ぎているが、休日はそれもやや緩くなる。美琴が帰ってくるのは、一時間後、と言うところだろうか。
「……」
白井は、室内に美琴がいないことに、安堵の吐息を漏らした。
いまもし、自分が敬愛する彼女の顔を見たら――――もしかしたら、泣いてしまったかもしれないからだ。
右手の荷物。
薬で狂わされ、快楽に屈し、気を失い、目が覚めた後。
結局、それ以上は何もしなかった彼から手渡された、一式の器具が、納められてる。
「……」
彼は、次に呼び出す日はいつがいいか、と問うてきた。
「貴方の好きにすればいい」と伝えたら、「怪しまれないほうがいいだろ?」などと、言ってきた。
休日を彼のために空けるのは屈辱だ。しかし美琴に感づかれるわけにはいかない。
結局、週に一回はある非番の日の、さらにそのひとつ向こう。二週間後の非番日を伝えることとなった。
毎週じゃ男が出来たと思われるだろう、とは彼の弁だ。
その主張は正しいと思うし、そう言った気遣いをしたことに、陵辱に恨みを置いておけば、感謝すべきことなのかもしれなかった。
そう。
帰り際に手提げ袋に詰まった、肛姦の準備をするための道具を手渡されなければ、だが。
「……」
震える身体をそのままに、己のベッドに腰掛け、手提げ袋を開けた。
カテーテル。
注入する液体容積を量ることのできる、ビニール袋。
カテーテルを肛門に挿入するため際に使う、また、洗浄の後にソコをいじる時に塗りこむ、媚薬入りのローション。
快楽を導くための、アナルビーズ細身のアナルバイブ。
何よりも屈辱なのは、それらをどう使えばよいのかと言う、彼手製の説明書だ。
別れ際。
この一式を渡してきた時の彼の声がよみがえる。
彼は今日、奪わなかった。
唇は、彼の唇で蹂躙された。
身体は、彼の指と舌で汚された。
しかし、もっとも奪われたくないものは、奪われなかった。
「……」
それはただの気まぐれか、それとも、いまのこの葛藤を見越してのことか。
ポケットから、携帯電話を取り出す。
待ち受けには、メールが一件。
美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。
約一時間後だ。
常盤台中学、寮。
出かけた時には持っていなかった手提げ袋を右手に、白井が自分の部屋のドアを開けた。
美琴の姿はない。
普段であれば門限の時刻は過ぎているが、休日はそれもやや緩くなる。美琴が帰ってくるのは、一時間後、と言うところだろうか。
「……」
白井は、室内に美琴がいないことに、安堵の吐息を漏らした。
いまもし、自分が敬愛する彼女の顔を見たら――――もしかしたら、泣いてしまったかもしれないからだ。
右手の荷物。
薬で狂わされ、快楽に屈し、気を失い、目が覚めた後。
結局、それ以上は何もしなかった彼から手渡された、一式の器具が、納められてる。
「……」
彼は、次に呼び出す日はいつがいいか、と問うてきた。
「貴方の好きにすればいい」と伝えたら、「怪しまれないほうがいいだろ?」などと、言ってきた。
休日を彼のために空けるのは屈辱だ。しかし美琴に感づかれるわけにはいかない。
結局、週に一回はある非番の日の、さらにそのひとつ向こう。二週間後の非番日を伝えることとなった。
毎週じゃ男が出来たと思われるだろう、とは彼の弁だ。
その主張は正しいと思うし、そう言った気遣いをしたことに、陵辱に恨みを置いておけば、感謝すべきことなのかもしれなかった。
そう。
帰り際に手提げ袋に詰まった、肛姦の準備をするための道具を手渡されなければ、だが。
「……」
震える身体をそのままに、己のベッドに腰掛け、手提げ袋を開けた。
カテーテル。
注入する液体容積を量ることのできる、ビニール袋。
カテーテルを肛門に挿入するため際に使う、また、洗浄の後にソコをいじる時に塗りこむ、媚薬入りのローション。
快楽を導くための、アナルビーズ細身のアナルバイブ。
何よりも屈辱なのは、それらをどう使えばよいのかと言う、彼手製の説明書だ。
別れ際。
この一式を渡してきた時の彼の声がよみがえる。
彼は今日、奪わなかった。
唇は、彼の唇で蹂躙された。
身体は、彼の指と舌で汚された。
しかし、もっとも奪われたくないものは、奪われなかった。
「……」
それはただの気まぐれか、それとも、いまのこの葛藤を見越してのことか。
ポケットから、携帯電話を取り出す。
待ち受けには、メールが一件。
美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。
約一時間後だ。
「……」
白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。
脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。
ポケットから、携帯電話を取り出す。
待ち受けには、メールが一件。
美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。
約一時間後だ。
「……」
白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。
脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。
本当は、いやだ。
知識としては知っているが、そんなところでスルと思うと、怖気で脚が竦む。
しかし。
(……お姉さま)
その想いが、彼の言葉を無視することを、許さない。
(わたくしがいくら汚されそうとも。わたくしがどんなに辱められようとも)
美琴だけは。
先に待つのがなんであろうと、白井はその想いだけを胸に、破滅に進む。
美琴が帰ってくるまで、あと一時間。
白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。
脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。
ポケットから、携帯電話を取り出す。
待ち受けには、メールが一件。
美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。
約一時間後だ。
「……」
白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。
脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。
本当は、いやだ。
知識としては知っているが、そんなところでスルと思うと、怖気で脚が竦む。
しかし。
(……お姉さま)
その想いが、彼の言葉を無視することを、許さない。
(わたくしがいくら汚されそうとも。わたくしがどんなに辱められようとも)
美琴だけは。
先に待つのがなんであろうと、白井はその想いだけを胸に、破滅に進む。
美琴が帰ってくるまで、あと一時間。
涙子ともども飾利に連れて行かれた風紀委員の詰め所(公園放電でたいそう叱られた)からの帰り道。
「あれ、こんなところで何してるんだよ、美琴」
「ひゃ!?」
背後からかけられた、数時間前と同じ台詞と同じ声に、ビクリと美琴は背筋を震わせ、振り向いた。
立っていたのは、会いたくて会いたくない、件のツンツン頭だ。
「ああああああああ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ!?」
上条の寮は、ここからかなり離れている。
今日はもう会うことはないのだろうな、と一抹の寂寥感を味わいながら歩いていたところなのである。
幸い、さきほど思いっきり注意を受けたところなので、辛うじて自制心が働いてくれたらしく、放電まではしていない。
それでも、頬が赤く熱くなるのを止められなかった。
「ん? ああ、俺は土御門たちと遊んで、今から帰るところだけど?」
対照的にフラットな表情で返答する上条。
ガリガリ、と後ろ頭を掻く仕草に、動揺の色は一切ない。
思わず反射的に「私もよ! なんか文句あるの!?」と言い返しかけた美琴だったが、その直前に、ピタリ、と動きが止まった。
「アンタ、どうしたのよそれ」
「へ?」
「その、肘。引っかき傷なの、それ」
頭を掻く上条の右手。その右手首の内側辺りに、赤い三本の線が走っている。
いや、それははっきりと、引っかき傷だった。それも自分で掻いたような軽いものではない。皮膚は削れ、まだ血も滲んでいる状態だ。
「ああ、これ? いや、さっきちょっと」
「……アンタ、またなんかに巻き込まれてるんじゃないでしょうね」
美琴の瞳に、心配と不安が浮かんだ。
彼は記憶を失うまで、幾度も戦いに赴いている。
それを知る美琴にとって、彼が怪我をしているという事実は、大きな不安の種となる。
「んな、たいしたことじゃねえよ。さっき土御門たちと、ちょっと取っ組み合いをしたんだ」
いつものじゃれあいだ、と上条。
「……ほんとに?」
「こんなことでお前に嘘なんかつかねえって」
「っ」
その言いように、美琴の頬が再度熱くなる。
(こ、コイツ、相変わらず……)
そういうことを、簡単に言う。
その癖、本人にはそのつもりはまるっきりないのだ。
「……」
それが悔しくて、美琴は僅かに俯いて、唇を噛んだ。
「あれ、こんなところで何してるんだよ、美琴」
「ひゃ!?」
背後からかけられた、数時間前と同じ台詞と同じ声に、ビクリと美琴は背筋を震わせ、振り向いた。
立っていたのは、会いたくて会いたくない、件のツンツン頭だ。
「ああああああああ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ!?」
上条の寮は、ここからかなり離れている。
今日はもう会うことはないのだろうな、と一抹の寂寥感を味わいながら歩いていたところなのである。
幸い、さきほど思いっきり注意を受けたところなので、辛うじて自制心が働いてくれたらしく、放電まではしていない。
それでも、頬が赤く熱くなるのを止められなかった。
「ん? ああ、俺は土御門たちと遊んで、今から帰るところだけど?」
対照的にフラットな表情で返答する上条。
ガリガリ、と後ろ頭を掻く仕草に、動揺の色は一切ない。
思わず反射的に「私もよ! なんか文句あるの!?」と言い返しかけた美琴だったが、その直前に、ピタリ、と動きが止まった。
「アンタ、どうしたのよそれ」
「へ?」
「その、肘。引っかき傷なの、それ」
頭を掻く上条の右手。その右手首の内側辺りに、赤い三本の線が走っている。
いや、それははっきりと、引っかき傷だった。それも自分で掻いたような軽いものではない。皮膚は削れ、まだ血も滲んでいる状態だ。
「ああ、これ? いや、さっきちょっと」
「……アンタ、またなんかに巻き込まれてるんじゃないでしょうね」
美琴の瞳に、心配と不安が浮かんだ。
彼は記憶を失うまで、幾度も戦いに赴いている。
それを知る美琴にとって、彼が怪我をしているという事実は、大きな不安の種となる。
「んな、たいしたことじゃねえよ。さっき土御門たちと、ちょっと取っ組み合いをしたんだ」
いつものじゃれあいだ、と上条。
「……ほんとに?」
「こんなことでお前に嘘なんかつかねえって」
「っ」
その言いように、美琴の頬が再度熱くなる。
(こ、コイツ、相変わらず……)
そういうことを、簡単に言う。
その癖、本人にはそのつもりはまるっきりないのだ。
「……」
それが悔しくて、美琴は僅かに俯いて、唇を噛んだ。
「……ね、ちょっと」
「?」
「ちょっと、手、出しなさい」
「あ、ああ」
「違う。左じゃなくて、こっち」
ぐい、と美琴は上条の右手を引っ張った。もちろん、引っかき傷のところには触らずに。
「美琴?」
「いいから。じっとしてなさい。どうせ消毒もしてないんでしょ?」
「いやそりゃしてないけど、そんな大げさな傷じゃあ……」
「馬鹿。引っかき傷を甘く見ると、ひどいことになるわよ」
近くで見ると、その傷はずいぶんと深いものだった。遊びで引っかくと言うレベルではなく、それこそ思いっきり爪を立てないとできないような傷跡だ。
そう、まるで。
意識を失うような刺激を受けた人物が、苦し紛れに握り締めた時に、できるかのような。
「消毒っても、コンビニくらいしか、今は開いてないぜ? それにこう言っちゃなんだけど、上条さんにはコンビニで買い物する余裕なんかありませんですよ?」
「んなことわかってるわよ。だ、だから……」
言葉を切ると同時に、美琴は上条の手首――その傷に、唇を寄せた。
「しょ、消毒、したげるわ」
「ただいまー……」
門限ギリギリで寮に戻った美琴が、己の部屋のドアをあけた。
中に入り、閉めたドアに内側からもたれかかって、大きく息を吐く。
(や、やっちゃった……)
頬に両手を当てる。
手のひらに伝わる体温は、熱く、熱い。
(アイツ、変に思わなかったかな……い、いやじゃ、なかったかな……)
右手がすべり、唇に。
瑞々しい唇は、小さく小さく震えている。それは触れた指先も同じこと。
思い出すのは、面食らったような彼の顔。
遠慮して(というか大慌てで)手を引こうとしたが、絶対にやめるつもりはなかった。
(いやじゃなかった、よね? だって、最後にはさせてくれたんだし……)
何度かの引っ張り合いの後、結局彼は好きなようにさせてくれた。
その上、舐め終わったあと、照れくさそうに頬を掻きながら、
「さんきゅ、美琴」
と言ってくれたのである。
「えへ、えへへへへ」
いささか気味の悪い笑い声が口から漏れるが、美琴は、イヤンイヤン、と顔を振るだけで、自分の声に気がつかない。
そして一しきり「きゃーきゃー」言った後で、ふと、気がついた。
いつもならイの一番に「何があったんですのどうされたんですの何を赤くなってらっしゃるんですのあの類人猿ですの!?」と挑みかかってくる白井が、何も言ってこない。
「?」
「ちょっと、手、出しなさい」
「あ、ああ」
「違う。左じゃなくて、こっち」
ぐい、と美琴は上条の右手を引っ張った。もちろん、引っかき傷のところには触らずに。
「美琴?」
「いいから。じっとしてなさい。どうせ消毒もしてないんでしょ?」
「いやそりゃしてないけど、そんな大げさな傷じゃあ……」
「馬鹿。引っかき傷を甘く見ると、ひどいことになるわよ」
近くで見ると、その傷はずいぶんと深いものだった。遊びで引っかくと言うレベルではなく、それこそ思いっきり爪を立てないとできないような傷跡だ。
そう、まるで。
意識を失うような刺激を受けた人物が、苦し紛れに握り締めた時に、できるかのような。
「消毒っても、コンビニくらいしか、今は開いてないぜ? それにこう言っちゃなんだけど、上条さんにはコンビニで買い物する余裕なんかありませんですよ?」
「んなことわかってるわよ。だ、だから……」
言葉を切ると同時に、美琴は上条の手首――その傷に、唇を寄せた。
「しょ、消毒、したげるわ」
「ただいまー……」
門限ギリギリで寮に戻った美琴が、己の部屋のドアをあけた。
中に入り、閉めたドアに内側からもたれかかって、大きく息を吐く。
(や、やっちゃった……)
頬に両手を当てる。
手のひらに伝わる体温は、熱く、熱い。
(アイツ、変に思わなかったかな……い、いやじゃ、なかったかな……)
右手がすべり、唇に。
瑞々しい唇は、小さく小さく震えている。それは触れた指先も同じこと。
思い出すのは、面食らったような彼の顔。
遠慮して(というか大慌てで)手を引こうとしたが、絶対にやめるつもりはなかった。
(いやじゃなかった、よね? だって、最後にはさせてくれたんだし……)
何度かの引っ張り合いの後、結局彼は好きなようにさせてくれた。
その上、舐め終わったあと、照れくさそうに頬を掻きながら、
「さんきゅ、美琴」
と言ってくれたのである。
「えへ、えへへへへ」
いささか気味の悪い笑い声が口から漏れるが、美琴は、イヤンイヤン、と顔を振るだけで、自分の声に気がつかない。
そして一しきり「きゃーきゃー」言った後で、ふと、気がついた。
いつもならイの一番に「何があったんですのどうされたんですの何を赤くなってらっしゃるんですのあの類人猿ですの!?」と挑みかかってくる白井が、何も言ってこない。
パタン、と美琴がバスルームに入った音がした。
しばらくしてから、水の音と、微かな鼻歌が聞こえてくる。
「ぁ……ぅん……んぅ……」
それに隠れるように、吐息と、くちゅりくちゅり、と言うシャワーではない水の音が響き始める。
洗浄と、拡張。そのための、媚薬入りのローション。
疼き、塗りこんだ薬のせい。
塗りこんだのは、美琴のため。
だが身体を弄る指と快楽は、すべて自分のせいで、自分のためだ。
最初は指から。
そう書いてあった、彼のメモ。
前に回った白井の右手。
後ろに回った白井の左手。
「こんな……あぁ……いや……うぅん……ですのぉ……」
右手は、秘裂を掻き。
左手は、肛門をくすぐる。
口から漏れるは拒絶の言葉と、確実に甘い吐息。
シャワーの音が響く。
美琴の鼻歌が響く。
粘質の音が、響く。
そして白井の泣き声と。
「あっ、あっ、あああぁ……」
喘ぎが、響く。
しばらくしてから、水の音と、微かな鼻歌が聞こえてくる。
「ぁ……ぅん……んぅ……」
それに隠れるように、吐息と、くちゅりくちゅり、と言うシャワーではない水の音が響き始める。
洗浄と、拡張。そのための、媚薬入りのローション。
疼き、塗りこんだ薬のせい。
塗りこんだのは、美琴のため。
だが身体を弄る指と快楽は、すべて自分のせいで、自分のためだ。
最初は指から。
そう書いてあった、彼のメモ。
前に回った白井の右手。
後ろに回った白井の左手。
「こんな……あぁ……いや……うぅん……ですのぉ……」
右手は、秘裂を掻き。
左手は、肛門をくすぐる。
口から漏れるは拒絶の言葉と、確実に甘い吐息。
シャワーの音が響く。
美琴の鼻歌が響く。
粘質の音が、響く。
そして白井の泣き声と。
「あっ、あっ、あああぁ……」
喘ぎが、響く。
途中であげた。不覚。
今後は適当に、適度に、気が向いたら書き進める所存。
とりあえず今までの分と、ちょこっとした続きを書いたところで力尽きたので寝る。
今後は適当に、適度に、気が向いたら書き進める所存。
とりあえず今までの分と、ちょこっとした続きを書いたところで力尽きたので寝る。
あ、いかん、33と34の間が抜けてた。以下、挿入。
もう寮の門限は過ぎているし、風紀委員は非番のはず。
大きな事件でもあれば別だが、寮監は特に何も言っていなかった。
部屋にいないはずが……。
そう思って視線を走らせると、並んだベッドの片方――白井のベッドが膨らんでいるのが見えた。
「あ……」
もう寝てたのか。
抜き足差し足で歩を進めれば、白井はこちらに背中を向ける形で、横になっていた。
解いた髪は幾分しっとりとしており、シャワーを浴びたであろうことを思わせる。朝から寝続けているわけでは、なさそうだ。
(んー……)
美琴は音をたてないように注意しつつ、ベッドの反対側に回り込み、白井の顔を覗き込んだ。
半ば頭まで被るようにしている掛け布団から覗く彼女の耳と首筋は、妙に赤く色づいている。また、静かな部屋の中に響く彼女の呼吸音は、まるで何かを我慢しているかのように、少しだけ荒い。
(風邪、かな? そういえば、朝もちょっと体調悪そうだったし……)
どこか苦しげだった寝姿を思い出す。
「……」
ぼふっ、と美琴の顔がまたも赤くなった。
朝に見た白井を思い出し、そして、白井よりも早く起きることとなった原因に思考が行き着いたせいだ。
(お、お風呂。私も、お風呂に入ろっと)
美琴は顔を振り、なるべく音をたてないように、バスルームに急いだ。
熱い頬に、浮き立つ胸。
その熱をシャワーで洗い流さなければ、恋心とはまた別の、身体の火照りとなるような、そんな気がしたせいだった。
もう寮の門限は過ぎているし、風紀委員は非番のはず。
大きな事件でもあれば別だが、寮監は特に何も言っていなかった。
部屋にいないはずが……。
そう思って視線を走らせると、並んだベッドの片方――白井のベッドが膨らんでいるのが見えた。
「あ……」
もう寝てたのか。
抜き足差し足で歩を進めれば、白井はこちらに背中を向ける形で、横になっていた。
解いた髪は幾分しっとりとしており、シャワーを浴びたであろうことを思わせる。朝から寝続けているわけでは、なさそうだ。
(んー……)
美琴は音をたてないように注意しつつ、ベッドの反対側に回り込み、白井の顔を覗き込んだ。
半ば頭まで被るようにしている掛け布団から覗く彼女の耳と首筋は、妙に赤く色づいている。また、静かな部屋の中に響く彼女の呼吸音は、まるで何かを我慢しているかのように、少しだけ荒い。
(風邪、かな? そういえば、朝もちょっと体調悪そうだったし……)
どこか苦しげだった寝姿を思い出す。
「……」
ぼふっ、と美琴の顔がまたも赤くなった。
朝に見た白井を思い出し、そして、白井よりも早く起きることとなった原因に思考が行き着いたせいだ。
(お、お風呂。私も、お風呂に入ろっと)
美琴は顔を振り、なるべく音をたてないように、バスルームに急いだ。
熱い頬に、浮き立つ胸。
その熱をシャワーで洗い流さなければ、恋心とはまた別の、身体の火照りとなるような、そんな気がしたせいだった。
この上条さんはインデックスも性奴隷にし、ぶち切れて襲ってきたステイルも調教済みとみた
夕刻。
最終下校時刻が近づき、学園都市から人通りが少なくなりはじめる時間帯に、白井は第四学区からやや外れた公衆トイレの個室にいた。
風紀委員も、常時稼働しているわけではない。
緊急事態があれば別だが、時間を区切って休憩時間はある。そしてその休憩中をどのように過ごすかは、各々に委ねられていた。ハメを外しすぎるのは駄目が、食事や多少の娯楽程度は問題ない。
だから白井がここ数日、自分の受け持ち学区から外れた公衆トイレに、わざわざ目立たない私服に着替え、トレードマークのツインテールも解いた上で篭っていようとも、何か言われるわけでもなかった。
「・・・・・・」
個室に入り、確実に施錠の上、白井は右手に持っていた手提げ鞄を、ドア内側上部の上着かけに引っ掛けた。
そしてしばらく耳を澄ませる。
一応、他のすべての個室に人がいないことを確認しているものの、こうして密室に入ってしまうと、どうしても確認したくなるのだ。
約十秒。
それだけ待ってから、ようやく白井は閉じていた目を開く。
その瞳に浮かぶのは、嫌悪と、悔しさと、使命感だ。
最終下校時刻が近づき、学園都市から人通りが少なくなりはじめる時間帯に、白井は第四学区からやや外れた公衆トイレの個室にいた。
風紀委員も、常時稼働しているわけではない。
緊急事態があれば別だが、時間を区切って休憩時間はある。そしてその休憩中をどのように過ごすかは、各々に委ねられていた。ハメを外しすぎるのは駄目が、食事や多少の娯楽程度は問題ない。
だから白井がここ数日、自分の受け持ち学区から外れた公衆トイレに、わざわざ目立たない私服に着替え、トレードマークのツインテールも解いた上で篭っていようとも、何か言われるわけでもなかった。
「・・・・・・」
個室に入り、確実に施錠の上、白井は右手に持っていた手提げ鞄を、ドア内側上部の上着かけに引っ掛けた。
そしてしばらく耳を澄ませる。
一応、他のすべての個室に人がいないことを確認しているものの、こうして密室に入ってしまうと、どうしても確認したくなるのだ。
約十秒。
それだけ待ってから、ようやく白井は閉じていた目を開く。
その瞳に浮かぶのは、嫌悪と、悔しさと、使命感だ。
すうっ、と息を吸い込む。
悪臭はしない。
学園都市の公衆トイレは、公衆といえども機械による掃除が行き届いている。その上、この場所はつい先程、機械が通ったところ。場所柄を考えれば衛生的と言えるだろう。
白井は故意に事務的な動きで、胸の前ほどの高さにある手提げ鞄を開いた。
―――中に入っているのは、あの日、彼に渡された、洗浄器具一式だ。
それらをひとつひとつ取り出し、便座の蓋の上に、落ちないように置いていく。
ウェーブのかかった黒髪と、淡い青色のブラウスと、白いスカート。そんな清潔感のある私服とはまるで似合わない器具たち。
だが白井にとっては、これらの器具も、この校則違反である服装も、結局は同じ忌々しさしかない。解いた黒髪は、ある種自慢のひとつではあるが、「なぜ解いているのか」を考えれば、とても気分のよいものではなかった。
何しろこれから、洗浄器具を使い、自分自身で不浄の穴を拡張しなければならないのだ。
あの、初めて呼び出された日の、次の日。
彼に強制的に教えることとなったアドレスに、入っていたメール。
『今日から一日一回は必ず拡張して、その様子を動画でこのアドレスに送ってくれ。お前の携帯だって動画撮影くらいできるだろ? ああ、『出してる』ところは映さなくていいぜ? 洗ってるところはいるけどな』
その文面を思い出しながら、洗浄の器具を組む白井の手に、力が篭った。
それでも、もうここでこうするのも5回目だ。自室で行った一回を含めれば、6回目の作業。手馴れてしまっている。
洗浄液の粉末をカップにいれ、魔法瓶からほどほどに冷めた湯を注ぐ。人肌程度までさらに冷ましてから、コックつきのスリムエネマに注ぎ込んだ。
スリムエネマは水道に引っ掛け、チューブの先端が地面につかないように保持する。
そこまで準備を整えてから、白井は己のスカートに手をかけた。
悪臭はしない。
学園都市の公衆トイレは、公衆といえども機械による掃除が行き届いている。その上、この場所はつい先程、機械が通ったところ。場所柄を考えれば衛生的と言えるだろう。
白井は故意に事務的な動きで、胸の前ほどの高さにある手提げ鞄を開いた。
―――中に入っているのは、あの日、彼に渡された、洗浄器具一式だ。
それらをひとつひとつ取り出し、便座の蓋の上に、落ちないように置いていく。
ウェーブのかかった黒髪と、淡い青色のブラウスと、白いスカート。そんな清潔感のある私服とはまるで似合わない器具たち。
だが白井にとっては、これらの器具も、この校則違反である服装も、結局は同じ忌々しさしかない。解いた黒髪は、ある種自慢のひとつではあるが、「なぜ解いているのか」を考えれば、とても気分のよいものではなかった。
何しろこれから、洗浄器具を使い、自分自身で不浄の穴を拡張しなければならないのだ。
あの、初めて呼び出された日の、次の日。
彼に強制的に教えることとなったアドレスに、入っていたメール。
『今日から一日一回は必ず拡張して、その様子を動画でこのアドレスに送ってくれ。お前の携帯だって動画撮影くらいできるだろ? ああ、『出してる』ところは映さなくていいぜ? 洗ってるところはいるけどな』
その文面を思い出しながら、洗浄の器具を組む白井の手に、力が篭った。
それでも、もうここでこうするのも5回目だ。自室で行った一回を含めれば、6回目の作業。手馴れてしまっている。
洗浄液の粉末をカップにいれ、魔法瓶からほどほどに冷めた湯を注ぐ。人肌程度までさらに冷ましてから、コックつきのスリムエネマに注ぎ込んだ。
スリムエネマは水道に引っ掛け、チューブの先端が地面につかないように保持する。
そこまで準備を整えてから、白井は己のスカートに手をかけた。
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- 榛名「榛名だってイチャイチャしたい」 (449) - [46%] - 2016/4/20 16:15 ☆
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