元スレ美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
251 = 223 :
その夜。
一方通行は自らの隠れ家にて、集めた情報の整理を行っていた。
打ち止めや番外個体に会う気はもうない。
それでも、『第三次製造計画』を潰すという意志に揺らぎはない。
これを放置すればやがては災厄を引き起こすトリガーになりかねない。
事実、旧世代の『妹達』は新世代にとって代わられ廃棄される可能性がある、と番外個体は示唆した。
それだけは絶対に回避しなければならない。
『妹達』の世界を、これ以上血にまみれさせたくはないから。
番外個体の存在から、既に『第三次製造計画』の個体の量産は既に始まっているか、あるいは完了していると考えるべきだ。
彼女が一方通行の前に現れてからおよそ一月半。
仮に番外個体の設定年齢を16歳とすると、その頃から生産に着手しても既に3ロットの育成が終了しているころだ。
そして、その次ロットにも取り掛かられていると見るのが妥当だろう。
ここまで情報を集めても、まだ研究の拠点がつかめない。
いくつかの施設は潰したが、既に逃げられた後だった。
統括理事会レベルでの動きに対し、一方通行一人ではできることにも限界がある。
頼みの綱は、土御門の生体データによってプロテクトがかけられたデータチップ。
しかし土御門からはしばらく連絡はとらないと言い渡されている。
手詰まりに近いものを感じる。
疲れだって溜まっているし、チョーカーだってそろそろ充電しなければいけないころだ。
今日はもう寝ようと考えた時、味気ない着信音が鳴った。
発信者は、冥土帰し。
妹たちに何かあったのかと思い、すぐさま通話ボタンを押した。
『はぁい、一方通行。お元気ー? ヘソ曲げたりしてない?』
「あァ? オマエか、番外個体」
『あったりー☆ さすがに数日じゃミサカの声は忘れないよねぇ、ぎゃは』
「……何の用だ。わざわざ冥土帰しの番号からかけてくるたァ」
『だってミサカは自分の携帯電話もってないし。まあそれはそのうちお姉様におねだりするとして。
用件は、そうだねぇ。お姉様のこと』
252 = 223 :
「……『超電磁砲』がどうしたってンだ」
『ひひひ、あなたが最終信号を助けるために動いたこれまでのこととか、その他色々をね。
最終信号と一緒に何から何まで一切合財もろもろぜーんぶお姉様にバラしちゃった☆』
「なッ……!? 何余計な事してやがるクソガキども!!」
心底愉快そうな笑い声が受話器から流れ、それがいちいち癇に障る。
それがどれだけリスクを孕んでいるか、彼女たちは分かっているのだろうか。
御坂美琴が『妹達』を一方通行から遠ざけ、完全に縁を切らせようとする。それならまだ良い方だ。
『妹達』が一方通行の代理演算を行っている。この事実は、ともすれば御坂美琴への重大な裏切りと捉えられかねない。
『それでね、お姉様からあなたに伝言。
"明日午後3時、冥土帰しの病院の屋上に来い"ってさ。決闘でも申し込むつもりなんじゃないの?』
「……行くわけねェだろ」
『"来ないならその時点で代理演算は即時打ち切り。あとは自分の力で好き勝手に余生を送りなさい"ってさ。手厳しいねぇ。
あ、もしもの時に代理演算打ち切りってのはミサカネットワーク上でコンセンサスが取れてるから、そこんとこ考えてね。
ミサカたちの力を使ってお姉様に危害を加えようとするなんて、一発アウトの極刑でもおかしくなかったんだよ?』
その言葉に、一方通行は凍りつく。
『妹達』を助けるために命を張ることは、彼にとっては辛いことではない。
その結果命を落とそうがそれは自業自得なのだし、生き延びられたのならばその分長く『妹達』を守れると言うことになる。
例えエゴ全開の自己満足でも、独り善がりの自慰行為と思われようとも、それが彼なりの償いになると信じているから。
253 = 223 :
そんな彼にとって、何よりも辛いこと。
それは『力を振るう機会すら与えられず、何もできずにただ見ていることしかできないこと』。
『妹達』が窮地に陥っているのに、自分は何もできない。
それは彼にとっては至上の苦しみとなるだろう。
だから、一方通行は御坂美琴の要求に応じざるを得ない。
「……分かったよ。行きゃあいいンだろ。明日の午後3時だな?」
『さっすが第一位、頭の回転は速いねぇ。ミサカたちが代理演算してるだけのことはある』
「うるせェよアホ。『超電磁砲』に了解って伝えとけ」
『答えは聞かなくていいんだってさ。間接的にでも、あなたの声や言葉を耳に入れるのは最小限にとどめたいみたいよ』
そう言って、番外個体は通話を打ち切った。
声や言葉を聞きたくないのならそもそも接触してこなければいい話ではあるが、そこには向こうもやむをえない事情があるのだろう。
代理演算停止という脅迫をされては、一方通行だって無視するわけにはいかない。
『妹達』と同じ顔を持つ彼女がぶつけてくる敵意は、一方通行の心を深く抉る。
かつて一方通行は、御坂美琴を「誰よりも恐ろしい敵」と評した。
正当な理由を振りかざし、一方通行から全てを奪い、否、奪い返して行こうとする少女。
正直に言えば、彼だって御坂美琴には会いたくない。
それは彼女だってきっと同じ。けれど、彼女はそれをおしてまで一方通行を呼びつけようとした。
ならば、自分にはそれに応える義務があるのではないか。
彼女が何を話すのか。
彼女が何を聞いてくるのか。
全く予想もつかない。
今まで数多の苦難を乗り越えてきた。
けれど今回は、一番大きな試練なのかもしれない。
自分の罪から逃げず、目を背けず、きちんと向き合う。
その時が、今訪れようとしていた。
254 = 223 :
今日はここまでです
いつの間にか8月……だと……?
あと10日足らずで新約二巻ですね
それまでには一方通行編も終わってるのかな……終わってないかもorz
ではまた次回
お休みなさい
255 :
今回もすごく面白かったです。
続きを待ってます。
おやすみなさいです。
256 :
>>1乙です
お待ちしてました!!!!
自分のペースで書いて下さいね
257 :
おつ・・・!
なんていうか惹きこまれるな・・・
色々思う事も考える事も多過ぎて上手く言葉がまとまらないや
258 :
次回は一方通行公開処刑ですねwwwwww
思ってること全部口に出せって恥ずかしいとかそんなレベルじゃないわなww
次回も楽しみにしてます。
259 :
毎回楽しみにまってます
乙です
260 :
相変わらず感動の節が有る
261 :
一方通行編いいね!次も期待
262 :
毎回毎回とんでもないものを投下していく>>1だなww
スーパー乙
263 :
>>1乙
MNWは本当に便利だなー
番外個体をミサカフォローストと呼ばせてもらおう
264 :
ミサカフォロワーストみたいな
やっべ俺めっちゃ上手いこと言ったやっべwwwwwwww
265 :
しかしこんだけ命けずってても
自己満足って言われちゃうんだねえ。キャラにも読者にも。
罪状がドデカいから、最終的に打ち止め守って死んでも
ずーーっと自己満足って言われ続けるんだろうな、一方って。
266 :
一方通行がんがれ!!
267 :
>>265
それが結局一方さんへの罰になるんじゃないの
268 :
>>265
それは一方通行自身が一番自覚してることなんじゃないかな
269 = 265 :
>267,268
一方自身はそう自覚して当然w
ただ守った対象(妹達)にもおそらく
やつは自己満足で死んだって言われ続けるんだろうな~
ってのが、なんかすげえなと思って。
270 :
乙ですwwww
次も楽しみに待ってますwwww
271 :
やっと対話か
二巻とともに楽しみにしておこう
272 :
>>269
被害者や遺族からしてみれば加害者の償いなんて自己満足にしか見えないと思うぞ
273 :
日本って基本的に、罪人や間違った者を決して許してはならないって
潔癖な社会観だと思うのな
しかし毎回、次回が楽しみなスレだわー
274 = 268 :
日本はむしろ寛容過ぎて法律は加害者を守るのためのものだ、なんて揶揄されてるくらいさね
275 :
乙!
まさかいきなり全部ばらされるとは!
やっとご対面か!
引き続き頑張ってください!
276 = 273 :
>>274
その寛容は近代になってよそからきた価値観じゃね?
死刑や切腹や赤穂浪士wとかが、是なメンタリティなんだよ元は。
277 :
一方通行は誰か守って死ぬのが一番幸せだろ
現状厨二台詞吐くし悲劇の主人公振って見苦しくてしょうがない
278 :
はいはい。また変な流れになりそうだからストップなー
この話ではどう扱うかってのは>>1が決めるんだから自分がどうして欲しいかなんて置いておけよ
色々思うところはあるんだろうが、展開と結果を見守ろうぜ
279 = 264 :
せやな
あんまり語り合うとスレチだなんだとかにもなるかもだし
>>1乙、今回も面白かったとだけ言ってみる
280 :
>>1乙!!!
wktkしながらまってるよ
281 :
一方通行が赦される日が来るとは思わないが
妹達の総意と御坂の想いが報われる日は来て欲しい
そしてなにより打ち止めマジ聖母
282 :
やっと追いついた!
ナニこのマジ本編
すごい心理描写ですっ!
帝春以来の感動の予感
283 :
>>1超乙!
予想の斜め上を書いてくれる人ですよ…今回もよかった
次もゆっくりと舞ってるぜ
285 :
おちた?
286 :
上げてはいかんよ
289 :
sage原理主義者とか言ってる奴は以前あった爆撃を知らないのだろうか
291 :
そういえばスレタイ読めない奴はいないよな
292 :
一番くじは今日だったのか、、、
293 :
すまん、漢字読みでいいのかカタカナ読みでいくべきなのかもうずっとながいこと聞けずにいた
教えれ
294 :
>>293
作者がどう読ませたいかだよね。自分は、今まで何も考えず頭の中で「オーロラ」と思いつつ「きょくこう(きょっこう)」と読んでた。
でも、、元ねたが「禁書目録」と書いて「インデックス」とか、「超電磁砲」と書いて「レールガン」って読ませるような作品だから、ここは、黙って「オーロラ」って読むのが正解なのかと今思った。
295 :
一番くじで超電磁砲クッション当たったんだが電車ですんごい恥ずかしかった…
だが後悔はしていない!!(キリッ
296 :
黒子フィギュアがすごい欲しかった
297 :
こんばんは、というよりもうおはようございます……?
どーーしても新刊を読む前に投下しておきたかったので、こんな時間になってしまいました
個人的には「オーロラ」でも「きょっこう」でも好きなほうで呼んでいただければと
個人的には「きょっこう」ですけども。何故なら響きがカッコイイから(キリッ
では投下していきます
298 = 297 :
12月12日。
一方通行は、冥土帰しの病院の階段を上っていた。
杖をついている彼が何故エレベーターではなく階段を選んだのか。
それは彼にしか分からない。
単にエレベーターを待つのが嫌だったのかもしれない。
たまには体を動かしたくなったのかもしれない。
あるいは、目的地に着くのを出来る限り先延ばしにしたかったのかもしれない。
彼が向かう先に待ちうけるのは御坂美琴。
学園都市第三位である彼女は、力そのものは一方通行にははるかに及ばない。
『一方通行』と『未元物質』の間に絶対的な壁が存在するように、彼と彼女の間には更に絶望的な壁が存在する。
だが、彼にとっての御坂美琴の恐ろしさは能力強度にあるのではない。
『妹達』の素体である彼女は、当然のように『妹達』と同じ外見を持つ。
打ち止めでも番外個体でもなく、彼が殺してきた『妹達』そのものの外見をだ。
彼女の口から吐かれる恨み言は、ぶつけられる憎しみは直接一方通行の心の罪悪感を強く深く抉る。
番外個体のように、打ち止めや他の『妹達』を傷つけようとしたのならば、まだ『妹達への脅威』として排除することもできただろう。
だが、彼女は『妹達』を傷つけることはなく、むしろ温かく受け止めようとしている。
彼女にとってしてみれば、一方通行こそが『妹達への脅威』だ。
だからこその、数日前の排除行動。
それは厳粛に受け止めている。
右手を杖に、左手を手すりに預け、一歩一歩着実に階段を上って行く。
ただでさえ体力が無い上に、杖に頼って階段を上がると言うのは実に辛い行為だ。
それを屋上まで続けるというのは、どれだけ体力を奪うのだろうか。
それでも、一方通行は上り続ける。
まるで十三階段を上がっているような心境で。
299 = 297 :
相変わらず、屋上庭園へと続く扉は軋む。
小春日和の陽気が庭園には満ち溢れていた。
その中央に、御坂美琴がこちらに背を向けて立っていた。
状況はあの日とまるで逆。
あの日彼を見るなり攻撃を仕掛けてきた少女は、今は無防備に背を晒している。
否、全くの無警戒ではない。。
電撃使いが無意識に放っている電磁波を応用したレーダー。
既にそれに引っかかっているだろうことは容易に想像できる。
一方通行がどう声をかけるか決めかねていると、美琴がゆっくりと振り返る。
「……遅かったわね」
「…………知ってンだろ」
彼が杖をついていること。
何故そうなったのか。
全て打ち止めと番外個体が彼女に話したはずだ。
「そうね。全部聞いた」
硬いものを含んだ美琴の視線は、しかし一方通行には合わされようとはしない。
少しだけ伏せられたまま、唇からは言葉が紡がれる。
「あんたの、最初の実験も」
一方通行は歯噛みする。
妹たちの一人が見たことは、ある時点までは全ての姉妹に共有されている。
ならば、それが露呈するのも当たり前だ。
「あんたが、打ち止めを助けるために戦ったことも」
打ち止めたちが気を回したと言うのなら、話の焦点がそこになるのも当然だろう。
「そのために、ロシアまで行ったことも」
そう言えば、彼女もあの時ロシアに居たのだったか。
彼女はあの無能力者を助けるために、自分は打ち止めを助けるために。
「そして、あんたが打ち止めを助けるために、"マジュツ"を使ったことも」
300 = 297 :
"マジュツ"。
学園都市にはない、外部に存在する未知の技術。
それが美琴の口から出てきたことに、一方通行は驚きを隠せなかった。
謎の襲撃者が持っていた羊皮紙。
エリザリーナ同盟で知った、"魔術"という既存の常識とは異なるチカラ。
そして、彼は実際にそれを行使してみせた。
それは偶然の産物だと思っていた。
たった一つの命を救うためにもがき続けた結果、ようやく編み出した一つの成果。
「オマエも"魔術"について知ってたのか」
「……私も、ロシアで"マジュツ"師の人たちに会って、教えてもらったから。
アイツを助けるために協力してもらったから。少しは分かる」
美琴が知った"マジュツ"と、一方通行の知った"魔術"は、正確には別物だ。
北欧神話になぞらえた術式を使う『新たなる光』、日常の中に魔術的要素を見出す『天草式』に対し、一方通行が掴んだのはロシア成教の秘中の秘。
『人間』が使う術式に対して、『天使』や『神の右席』の知識を補填する目的のものとでは、性質も用途も全く異なる。
けれど、決して"マジュツ"や"魔術"に明るいとは言えない二人にとっては、それは同種の物と言っても問題はないだろう。
「私が昔知り合った人間が、実は"マジュツ"師だった。ロシアで再会して色々と教えてもらった。
『法則を理解し、自ら術式を作り上げ、そして行使する。 それによって望む結果を手に入れる』だったかしら。
私たちの超能力とは、似てるようでまったく別の技術だってね」
御坂美琴とあの無能力者は互いに命を賭けて救いに来るほどの関係だ。わりと親しい方なのだろうと一方通行は推測した。
ならば、あの無能力者が記した言葉の意味を知っているかもしれない。
「『Index-Librorum-Prohibitorum』。知ってるか?」
「『禁書目録』。"マジュツ"に関わってる、とある女の子の名前」
Index-Librorum-Prohibitorum。
インデックス。
女の子。
脳裏をちらと白い修道服がよぎる。
みんなの評価 : ★★★
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