元スレエルシィ「私の神にーさまがコミュニケーション不全なわけない」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
401 = 361 :
桂馬「別に責める必要は無い。むしろ、あいつらには感謝してるんだ」
桂馬「どうやら、攻略の糸口がつかめた」
ハクア「……」
ハクア「あ、」
桂馬「あ?」
ハクア「アホか!! あんたね、もうちょっと、自分のこと、……大切にしなさいよね」
ハクア「桂木のこと、心配なんだから」
ハクア「って、私じゃないからね、私じゃ! ホラ!」
桂馬「ハクア――」
桂馬「すまない、助かったよ。礼をいう」
ハクア「――桂木」
ハクア「な、なんか変な気分ね。おまえが私に、礼をいうなんて」
桂馬「いや、感謝してる」
402 = 361 :
ハクア「なによ、なによ。調子狂うじゃない」
そっとドアが軋み開く音が聞こえた。エルシィだ。
エルシィ「にーさま! 怪我、したんですか!」
エルシィ「!! ……ハクア」
桂馬「おまえなー、電話したんだぞ。着歴くらい確認しろよな」
エルシィ「け、怪我のほうは」
ハクア「ああ。エルシィ、私が簡易的な治癒魔術を掛けておいたから、大丈夫よ」
ハクア「もっとも、完治するまでには数日かかるけど」
ハクア「でも、桂木も運がよかったわねー。私が居て。ホントなら縫う切り傷よ」
ハクア「エルシィはこの術まだ、使えないものねー」
桂馬「……おい、エルシィ?」
403 = 361 :
エルシィ「――そうですね、ハクアがいれば。すいません、神様、以後気をつけます」
ギィ、バタン。
ハクア「エルシィ、ちょっと、ねえ! どうしたのよ!!」
エルシィを追って、ハクアが出て行く。
桂馬「なに、あいつ一丁前に落ち込んでるんだ。たく」
この後、美生から携帯に連絡があった(※ボクは教えてないぞ!)が適当にお茶を濁しておいた。
桂馬「動くのは、明日か」
たぶん、残された時間はもう、あまりない。
404 = 361 :
『翌日・舞島学園』
桂馬「エルシィのやつズル休みかよ」
桂馬「まったく、問題のあるやつばっかだよな」
桂馬「さてと、結の様子でも見ておくとしようか」
A組に向かう。
――珍しい、今日は誰も邪魔をしてこないぞ。
桂馬「いつもこれくらいならラクなのにな。さて」
A組の教室に立つと、なにやら教室内がざわついているのが見て取れた。
なんだ。
男A「――五位堂がさ」
405 = 361 :
男B「ああ、すげえな」
桂馬「ちょっと、いいか。なにかあったのか」
男A「いや、五位堂のやつ久しぶりに女子の制服で登校してきたんだよ」
男B「オレも気づかなかったけど。あいつ、あんなイイ女だったか?」
桂馬「はあ?」
目を凝らすと、人の群れが密集しているところから、妖気が黒く立ち込めている。
406 = 361 :
掛け魂の邪気は、悪魔かバディにしか認知出来ないのが幸いだった。
桂馬「これは、相当進行してるな」
男C「なんつーかさ、色っぽさが半端じゃないよな」
男D「見てるだけでムラムラしてくる」
男E「やべぇっス。やべぇっスよ! なんとか挨拶だけでも」
男F「おい、結さまに話しかけるな。穢れる」
男G「おれ、犯罪に走りそう。彼女なら人生間違えてもいーわ」
男H「結たんのおっぱいにちゅっちゅっしたいよぉ」
桂馬「――危険すぎるぞ」
主に彼女の貞操が。
桂馬「おい、すまないが五位堂結を呼んでくれないか」
男A「あーん、他のクラスのやつは用ねーんだよ!」
男B「帰れ、帰れ!!」
桂馬「わ、わわわわ」
ボクはところてんが押し出されるようにして、クラスから弾き出された。
――時間がない。
桂馬「結! ボクだ!! 桂馬だ!! 話がある!!」
モーゼがエジプト脱出の時、海を割ったように、人垣が左右へと均等に別れた。
結「桂馬様」
――息を呑む美しさだった。
間違いない、掛け魂の効果だ。そうは判っていても、抗えない異様な魅力があった。
あ、ありえない。このボクがゲーム女子以外に心を動かされるなど。
たっぷりとした黒髪が、うねるようにして波打っている。
大きな瞳は、濡れた黒曜石のように輝き、ねっとりとした熱を孕んでいた。
407 = 361 :
ぷっくりとした唇が震えるたびに、視点が定まらなくなっていく。
桂馬「結」
結「……っ」
桂馬「ってなんで逃げるーっ!!」
結「きゃっ」
急に走り出した彼女を押しとどめようとした時、袖が指に絡んで、机ごと彼女を押し倒すかたちになった。
桂馬「ってて、て」
結「ん、やぁっ」
ふにょん。
桂馬「え? なんだ、この感触」
ふにょん、ふにょん。
結「あ、はぁっ……桂馬様」
408 = 361 :
男A「――この野郎」
男B「人のクラスの女に!」
男C「[ピーーー]っ、[ピーーー]!!」
男D「最期に言い残すことは」
桂馬「――ああ」
桂馬「意外と大きいんだな」
襲い掛かる男たち。
ボクは、絶え間なく降りかかる鉄拳の雨に身を晒しながら。
走り去る結の姿を見続けていた。
……。
…。
409 = 361 :
『2B教室』
桂馬「……」
チャラチャラ~チャ~
クラス女子A「オタメガのやつ、他のクラスに押しかけて、女の子襲ったんだって」
クラス女子B「とうとう現実とゲームの境がなくなったのかな」
クラス女子C「怖いわ」
ちひろ「……」
桂馬「なんだよ、なにかいいたいことでもあるのか」
ちひろ「べ、べつにないわよっ。話しかけるな、このゴキブリ男!!」
桂馬「……ふん」
チャラチャラ~チャ~
ちひろ「ね、ねえ。桂木って結狙いだったの? だったらやめときなって」
ちひろ「彼女が桂木みたいな、カースト最下層相手にするわけない」
ちひろ「……傷つくだけだよ、本当」
桂馬「――ボクは!!」
ちひろ「っ!!」ビクッ
桂馬「現実ごときで傷ついたりしないっ!!」
桂馬「ボクの理想は、それほどヤワに構築されていない。リアルなど」
桂馬「――楽勝だ」
ちひろ「ふーん、すごい自信ね」
ちひろ「振られて、泣き暮らすがいいわ。べーっ!」
チャラチャラ~チャ~
桂馬「……」
クラス女子D「ねぇ、聞いた」
410 = 361 :
クラス女子E「A組の――が、五位堂さんに告白するんだって」
クラス女子D「見に行くー?」
クラス女子E「悪いよー、やめときなって」
ちひろ「うぷぷ。こりゃ、桂木くんの大ピンチだ」
ちひろ「てか、戦う前から負け決定だわ」
桂馬「うるさいな」
PFP『メールだよ!』
桂馬「……」
ちひろ「あららーどしたのかなー、ショック? ねえショックで死ぬの?」
ちひろ「おーい、もしもーし」
エルシィが役に立たない今、無理やりハクアに見張らせといてよかったな。
――代償は高くつきそうだが。
411 = 361 :
男装の意味。
過剰なまでの反応と自意識。
彼女は真の意味で解放されていたわけじゃなかったんだ。
なら、最後の一押しが必要だ。
今度は、ボクが結を助ける番だ。
桂馬「――来た。エンディングが、見えた」
412 :
LCにかけたま入ってそう
413 :
かのんちゃんマジ女神
415 :
相変わらずおもしれえ
416 :
おもしろい
でもふいんき壊れるからメ欄にsagaって入れてくれw
417 = 361 :
……。
…。
二階堂「おい、桂木。おめでとう、ついに性犯罪者にノミネートされたぞ」
二階堂「職員室まで来い」
二階堂「全身全霊を掛けて弁護してやる」
ちひろ「うわ、すごい笑顔」
桂馬「……」
418 = 361 :
桂馬「――嵐になるな」
桂馬「あ、これメモリ預かっといて」
ちひろ「あ、うん」
ダッ!!
二階堂「あっ、コラ!! 逃げるな!!」
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
419 = 361 :
「五位堂、前から好きだったんだ。オレと付き合ってくれ」
私はどうしてここに居るんだろう。
言葉でない。
目の前の方の顔が理解できない。視線では確かに捉えている。
けれども、頭の中に浮かんでくるのは昨日の桂馬様の、苦しげな表情だけだった。
今日もわざわざ。会いに来てくれたのに、恥ずかしくて、怖くて逃げ出してしまった。
こんな場所で、こんな時間を割いている場合じゃないのに。
逃避なのだろうか。
「聞いてるのか!! なぁ!!」
「いたっ、やめて」
「なあ、いいだろう。なぁ」
飢えた犬のように喘いでいる。
私の目の前で真っ赤に開いた男の口腔は酷く下卑て映った。
420 = 361 :
純粋な恐怖。
足がすくんでいうことを聞かない。
「お前、すげえよ。なんかさ、見てるだけで、こう。へへ、わかってるだろ」
「し、知りませんっ、はなして、下さい」
男装をやめた。元に戻してみれば素直になれるかもしれないと思ったのだ。
421 = 361 :
ううん。
それはウソだ。
私は美生に嫉妬していた。
自分を偽ることなく、桂馬様に接する彼女を見ていて、酷く嫌な気持ちなった。
だから、殊更男にこだわったのかもしれない。
男性のスッキリした、何事にもこだわらない、プラスの部分。
そんなもの、そうあって欲しいと、私が望んだ幻想なのに。
「お前、けっこう胸でかいな。へへ、あのオタク野郎に触らせてただろっ!」
やめて。
やめて。
「な、いいだろ、いいだろぅ! なぁ!!」
こんなの私の望んでいた男らしさじゃない。
私、
わたしは――!!
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
422 = 361 :
桂馬「待てーっ!! 結からはなれろっ!!」
ボクは、結に抱きついていた男へとPFPを投げつけた。
もっててよかった! PFP!
男「があっ!! この、テメー、オタメガっ!!」
結「桂馬様っ!」
渾身の体当たりだった。二度は出来ない。
やっぱり、こいつ。憑かれてる。真昼間、人気のない校舎裏とはいえ、
ここまでの行動に出るなんて。正気を失っていなければ出来るものじゃない。
結「桂馬様、私、私」
男「オタメガ、なにのこのこ出てきちゃってンの? 結はオレと付き合うんだ、なぁ!!」
423 = 361 :
結「ひ」
結はボクの後ろに隠れると、涙目のまま背中にすがりつき震えている。
結「桂馬様が来てくれた。もう大丈夫、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
桂馬「……」
親鳥から離れたひな鳥が再び庇護を得た。
世界中にここより他安全な場所はない。
けれども、いつかは。
もういちど、暖かい羽から解き放たれて。
自分の風切り羽を振るわせられるか。
424 = 361 :
桂馬「結」
結「けいま、さま」
桂馬「君の口から、直接断るんだ」
――信じている。
結「で、も」
――あの時、ボクを救い出したヒーローを、もういちど。
桂馬「君がなりたかったのは男か? 違うだろ!! ソフトが優れていればパッケージは関係ない!!」
桂馬「男だとか、女だとか、そんな次元にこだわるのはもうおしまいにするんだ!!」
桂馬「真の自由を手に入れるんだ!」
うつむいたまま、彼女は男に向かって歩き出す。
彼女はしっかり相手の目を見つめたまま。
結「私、あなたとはお付き合いできません」
自分の意思をカタチにした。
男「があああああああっ!!」
桂馬「うわっ、……まったく」
425 = 361 :
無理ゲー、勝てるわけないだろ、こんなの。
だけど、結は勇気を示したんだ。
逃げるわけにはいかない。
男の突き出してくる拳。目を逸らさない。まっすぐ見つめる。
楠の言葉を思い出す。
しっかり大地に踏み込んで、正しい姿勢の拳が一番強い。
それでも、激突の瞬間。なぜかボクの上体は揺らいだ。
426 = 361 :
男「があああああっ!?」
桂馬「わあっ」
勝負は一瞬でついた。ボクの拳がカウンター気味で男の顔面突き刺さった。
桂馬「なにか、踏んだ気が」
桂馬「……これか」
偶然にも踏み込んだ位置にPFPが落ちていたのだ。
さすが、相棒だ。頼りになる、どっかの悪魔とちがって。
結「桂馬様」
桂馬「結、よくやったな」
結「ずっと謝りたかった。ごめんなさい、ごめ――」
桂馬「これだけは覚えておいて欲しい。真の自由にはリスクがつきものだ」
桂馬「選び取ったルートの先に何があるかなんてわからない」
桂馬「どんな格好をしていても、君は君。五位堂結だ」
結「でも、いつもくじけそうになるの。不安でしかたない、私弱いから」
桂馬「精一杯頑張るんだ、どんな時でも」
桂馬「現実はいつも無常だ。あがいてもあがいても先が見えない時もある」
桂馬「そんな時にはボクを呼べ」
427 = 361 :
桂馬「――いつだって、駆けつけてやる。白馬に乗った騎士のようにね」
結「お慕い申しております、桂馬様」
彼女の細いおとがいを上げて、口付けを交わす。
結の瞳は、もう輝きを失わないだろう。
二度と。
桂馬「エルシィ、居るんだろ、頼むぞ!!」
エルシィ「えっ、えっ」
エルシィの動きに精彩がない。開放された駆け魂は、彼女の拘留ビンに捕らえられたかと思いきや、
あっさりとビンを破壊し、虚空に舞う。
ハクア「あー、もう見てられんないわ! どいてなさい!!」
ハクアは証の鎌を素早く投げつけ、駆け魂を宙に縫い付けるとビンを懐から取り出し狙いを定めた。
ハクア「こンのーっ!!」
霊力が奔流となって、ビンに吸い込まれていく。
抵抗をほとんど見せず、悪意の塊は存在を固着させた。
ハクア「駆け魂、拘留!!」
満面の笑みを浮かべた悪魔が、蒼穹を疾駆して勝どきをあげた。
428 :
これは原作でやってほしい話だな
429 :
というよりも、これは原作で使う可能性のあったネタを、若木自ら書いているとしか思えん出来
430 = 429 :
というよりも、これは原作で使う可能性のあったネタを、若木自ら書いているとしか思えん
432 :
面白すぎるな
すごいクオリティーだぜ
433 :
こりゃすげえ。面白かったぜ。
しかしどうやらまだひと波乱あるらしい。楽しみにしてます。
434 :
エルシィマジで駆け魂入ってそうだな
435 :
展開予想って結構迷惑だよな
436 :
今日も続きが来たり……するといいな
437 :
桂馬「ふう、なんとか今回も無事に終わった」
ハクア「感謝しなさいよねー、桂木♪」
桂馬「おい、エルシィ。どうしたんだ、いったい!」
エルシィ「……」
スィ~
ハクア「え、あれっ! ちょっと、エルシィ!! どうしたのよ、ちょっと」
桂馬「……あいつ」
…………。
………。
……。
…。
438 = 437 :
エルシィ「私、何も出来なかった……」
エルシィ「一人前だなんていって、何も出来てない」
エルシィ「にーさまも、ハクアがバディだったらって思ってるよ」
エルシィ「からっぽだ」
エルシィ「私、カラッポだよ……」
――ビュッ!!
440 = 437 :
桂馬「おい、ハクア。エルシィを追ってくれ」
ハクア「う、うん。あれっ?」
ビーッ、ビーッ!!
桂馬「なんだ」
ハクア「ごめん、本部から緊急連絡よ、え――はい、わかりました」
桂馬「いったい、何があったんだ」
442 = 437 :
ハクア「本部から連絡。この地域に、古悪魔の邪気を確認したらしいわ」
ハクア「――魂強度(レベル)は、測定不能」
ハクア「追っ付け、地獄から殲滅部隊が出撃する」
灰色の顔を俯かせ、ハクアがか細い声で呟いた。
桂馬「それだけじゃないだろ」
ハクア「……」
443 = 437 :
桂馬「いえよ」
ハクア「このレベルの駆け魂は到底、今の部隊じゃ鎮圧出来ない」
ハクア「捕獲は不要。私たちに出来るのは時間稼ぎくらい」
ハクア「……宿主は、有無を言わせず駆け魂もろとも破壊される」
桂馬「それでも、この前の時は少しは余裕があったじゃないか」
ハクア「いちばん上からの命令なの、誰も逆らえない」
ハクア「――例え、室長でも」
444 :
キテルー
445 = 437 :
ハクア「……」
桂馬「途中で黙るな、最後まで教えてくれ」
桂馬「宿主は誰なんだよっ!!」
つめ寄った時には、気づくべきだった。
彼女は、泣き出すのをこらえながら無理やり喋っていたんだ。
そして、ボクのやっているのはただの確認作業。
唇を振るわせた彼女は、もう崩壊していた。
446 = 437 :
ハクア「宿主は、エルシィ。冥界法治省は彼女を駆除対象に決定した」
ハクア「――かつらぎぃ、わ、わ私ぃ」
ハクア「エルシィを殺せないっ!!」
桂馬「――は」
ハクア「それにぃ、エルシィが[ピーーー]ばっ、アンタだって助からないのよっ!!」
全身から力が抜ける。大地が崩れ去った気がした。
447 = 437 :
FLAG.XXX 【神のみぞ知るセカイ】
1
同日、冥界法治省特別幕僚本部にて、臨時の会議が開かれていた。
世界各地にて、平行して業務を遂行する傍ら、今回のようなオンライン会議が行われるのは極めて異例である。
――が、全ての予定を変更して勧めなければならない、理由があった。
即ち、極東支部におけるイレギュラー、推定レベル7対策だ。
会議に名を連ねるのは、そうそうたる顔ぶれ、北米伐魂隊司令ギャブレー・デッラ・モンテ・ドゥミ、
中部アフリカ分隊将軍ゴロゴロ・ラグラン・ガンホーン、
欧州捜索隊隊長ロードレット・ルウム・レントラント、
南部極地室長アノア・ノア・デルフリクト・ニース、その他諸々である。
448 = 437 :
「それでは、意見も出揃ったところで最後に決だけとるが異論はないな」
議長のギャブレーが厳かに告げると、いずれの幹部も忙しいのか、時間を気にしだした。
「ま、本来なら、極東で処理してもらう案件でしょう。いちいち上まで挙げられてもねぇ」
「互いに忙しい身の上。このような無益な召集はほどほどにして欲しいですな」
音声のみで、個々の表情は窺い知れぬが、それぞれに安堵の空気が流れ始める。
「それでは、決を採る。宿主諸共駆け魂を破壊。殲滅一個中隊の派遣に賛成のものは挙手を願う」
満場一致で、議題が決まり掛けた、丁度その時。
449 = 437 :
スクリーンに、割り込み映像が入るのを、極めて冷徹に彼らは見た。
「極東支部のドクロウか。もうお前の稟議書はとっくに却下されている。いちいち三等公務魔ごときの命を斟酌している暇はないのだよ」
ギャブレーは舌打ちをして、回線を強制切断する為に、音声認識コードを発令しようとするが、
悲鳴じみたドクロウの声がそれを押しとどめる。
「無理をいっているのはわかります! しかし、彼女の今までの功績を考えれば、
もういちどご再考の余地はあるかと存じますっ。この、ドクロウ、伏して伏しての願いです。なにとぞ、皆様も、なにとぞっ」
「確かにこの短い期間で十二匹はたいした成果だけど、ねぇ」
アノアに賛同するよう、ゴロゴロも言葉を続けた。
450 = 437 :
プラスよりマイナスがはるかに大きい。上に立つものは、時には非常な選択も必要なのだよ」
「――だが、推定レベルとはいえ7は珍しい。捕獲できれば、今後の研究の進捗状況はかなり改善される」
ロードレットの声に気おされたかのように、一同押し黙る。
なにしろ新地獄は建国されてまだ新しい、サンプルはどの部署もどれだけあっても不足を訴えている。
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