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    元スレエルシィ「私の神にーさまがコミュニケーション不全なわけない」

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    タグ : - エルシィ + - エルシー + - ベジータ + - 九条月夜 + - 五位堂結 + - 桂木桂馬 + - 桂馬 + - 神のみぞ知るセカイ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    501 = 471 :

     だが、ボクは積みは作らない主義なんだ。

     怪物の異様なフォルム。全ての禍々しさを具現したようなそれは、海岸線を無目的に、ゆっくりと平行して歩いている。

     怪物が市外に向けて動き出せば、どれほどの被害が出るのだろうか。桂馬は冷静に死者を計上しようとして、頭を振った。

     その前に、彼女を止める。

     止めなければならない。

     例え、世界中の誰もが諦めても。

     自分だけは諦めてはいけないのだ。

     駆ける。

     駆ける。

     桂馬の身体はとうに心臓が爆発寸前だ。全身の血液が逆流し、堪えきれない痛みがあちこちを襲った。

    502 = 471 :

     呼びかける度に引き倒され。

     飛び散る小石で眼鏡はひび割れ、視界は判然としない。

     桂馬の額は大きく割れて、とめどなく流れ出る血で、朱に染まった。

    「止まれ! エルシィ!!」

     何度と無く死地を越え。

    「頼む、止まってくれ!! がんばるんだ!!」

     言葉すら意味をもたなくなっても。

    「聞けよ、こ、の」

     呼び掛け続ける。なぜならそれは。

     もう、どれだけ走ったのだろうか。まだ、この古悪魔が処分されないというのなら、それほど時間は経ってないのだろう。

     もう立てない、もう歩けない、もう声が出ないと何度思い返したことか。

     桂馬は、血糊でぐっしょりとぬれた前髪を後ろへ撫で付けると、笑いそうになる両膝を手のひらで押さえつけ無理やり立ち上がった。

     諦めるな。

     諦めるんじゃない。

     声すら届かない怪物とひたすら併走する。策すらない。さぞかし滑稽なことだろう。

     桂馬が自嘲の笑みを浮かべながら、それでも立ち上がると。

    「なんで、そこまでするのよぉ」

     証の鎌を携えた悪魔が、瞳に涙を溜めて立ちすくんでいた。

    「おまえは浅はかなんだよ、ハクア」

    「なによ。もう、エルシィは救えない。だから、せめてあんただけでも助かって欲しかったのに」

     ハクアは鎌を取り落とし、両手で顔を覆った。

     乾いた砂浜へとこぼれた涙が吸い込まれていく。彼女は背中を丸めて子供のように震えていた。

    503 = 471 :

    「首輪を外して、なにもかも忘れてしまえばいいじゃない! 
    桂木はいつだって、そう思ってたんでしょう!! 
    なんで、そんなに一生懸命なのよ!! 
    私たちのことなんてどうでもいいはずなのに!! どうして、どうして!!」

    「どうでも、なんてよくない」

    「桂木」

    「――これが、おまえとエルシィの望んだエンディングなのか!? 
    違うだろうが! 
    エルシィは尊敬した姉のようにみんなに認められたかった! 
    おまえだって、本来の実力を発揮して成功する、
    誰もがうらやむそんな終わりを目指してまがりなりにも今日まで頑張ってきたはずだ!! 
    それが、こんな最期でいいのか! 
    わけのわからん駆け魂に憑依されて、何の意味も無い死を受け入れて!! 
    こんな世界の収束の仕方は、
    ――神として認められないな」

    504 = 471 :

    「かつらぎぃ……」

    「全て女の子を正しいエンディングに導く。それが、ボクに託された運命なんだ。ボクもハクアもエルシィも、――まだここでは終われない」

     桂馬はそこまでいい終えた瞬間、自分の身体がすさまじい勢いで引き上げられるのを感じた。

     はらわたを千切られそうな感覚。脳裏に自分の胴が真っ二つになる瞬間が、無限かつ連続に浮かんだ。

     怪物の右手。桂馬を絞り込むようにして巻き上げている。 

     やがて、視点が定まると、怪物のらんらんと光る赤黒い目が自身を覗き込んでいるの気づいた。

    「やっと、会えたな、エルシィ」

    「桂木、いま助けるからー」

    「待て、ハクア。いま、ボクが話をしている」

    「そんな――」

    505 = 471 :

     ハクアは宙で鎌を振り上げたまま固まると、やがて諦めたかのように得物を下げた。

    「聞こえるんだろ、エルシィ。出てきてくれ」

    『にぃさま』

     怪物の喉仏中央部に突起物らしき何かが浮かび上がる。

     それは、赤黒く見るに耐えない色をしていたが、確かにエルシィの顔だった。

    『私、もうだめみたいです。簡単に駆け魂に憑かれちゃって、気づいたら、もうこんな風に。本当、どうしようもない……』

    「エルシィ! そんなのいいのよ!! 自分を強くもって、そうすればきっと、そこから抜け出される!! 
     私が出来たように、あなただって!!」

    『無理だよ、私ハクアとは違うもの。でも、にーさまは、ひとりでも大丈夫だから』

    「エルシィ、私、私、なにもできないよぉ、ごめん、ごめんね」

    506 = 471 :

    『いろいろ煩わせちゃってごめんね。でも、ハクアのおかげでにーさまだけは助けられてよかった』

    「エルシィ」

    『――にーさま、早く鍵を使って首輪を解除してください。これでよかったんですよ。いままで迷惑たくさんかけてごめんなさい、それと』

     エルシィの顔。くしゃりと歪んだ。

    『また、会えてよかったです』

     桂馬は、無言で鍵を模した短剣の箱を取り出してみせる。

     それは、灰色の空の下で一際流れるように輝き、海の光を集めたように、青く、美しかった。

     箱の中から剣を取り出し、天に掲げる。

     悪魔との契約を絶つ唯一の鍵。

     手を離す。

     それは、灰色の雲間から差す僅かな光量に身を横たえて輝きながら、あっさりと水に溶けいっていった。

    『ど――うして』

    507 = 471 :

     エルシィの顔。信じられないと、驚愕の表情で固着。

    「このゲーム、途中では降りない。駆け魂狩りは、ボクとお前で続けるんだ」

     桂馬は、緩んだ怪物の手の中から抜け出ると、四つんばいのまま腕を伝ってエルシィの声がする位置まで移動した。

    「私は、ドジでへっぽこで、いつだってにーさまの足を引っ張って……」

    「そんなこと折り込み済みだ」

    「しまいにはハクアとにーさまに嫉妬して、駆け魂にとり憑かれちゃって……」

    「誰もが不完全だから、向上しようと努力する。エルシィみたいな半人前ならいわずもがなだ」

    「うー、でも私じゃ、私じゃにーさまに不釣合いで」

    「いいかげんにしろ! このっ!!」

     右腕を声のする位置に突きこむ。溶けたバターのようにそれは簡単に出来た。

     エルシィの細くなめらかな腕。桂馬は渾身の力を混めて、彼女を駆け魂から引きずり出した。

    508 = 471 :

     エルシィの細い肩を両腕で押さえ込む。黒々とした美しい髪と、泣き出しそうに潤んだ瞳。

     全身の血が急激に熱くなる。

     思いのほか不快ではなかった。

    「おまえ以外はいらない。エルシィはボクのパートナーで、最強の相棒だ!!」

    「にーさま」

     唇を近づける。鼓動が弾けそうに高鳴っていく。

     彼女が両目を閉じて、祈るように俯く。

     神々しさすら感じた。

    「これは、おまえとボクの新しい契約だ」

     ――交わした口付けは、今までの誰よりも冷たくて、なめらかだった。

     轟音と共に、古悪魔のカタチが崩壊を始める。

     波頭が黒く打ちあがり、目前に迫った。

     桂馬はエルシィと共に、砂浜に降り立つと敵影を見据える。

     空を圧する巨影。

     ふたりは拘留ビンを互いに支えあうようにして抱きかかえると、真っ直ぐそれに向けた。

     迷いは無い。

    「いくぞ、エルシィ。エンディングは、もう見えた!!」

    「はいっ、にーさま!」

     ふたりは重なりあう、てのひらのあたたかさを感じた時、勝利を確信した。

    509 = 471 :

    CAST

    エリュシア・デ・ルート・イーマ(ジョブ:家事専用悪魔)
    ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム(ジョブ:ドメスティック・ジーニアス)
    桂木 麻里(ジョブ:桂馬の母ちゃん)
    鮎川 天理【ディアナ】(ジョブ:一方通行幼なじみ)【ユピテルの姉妹】
    高原 歩美(ジョブ:陸上女子)
    青山 美生(ジョブ:元セレブ)
    中川 かのん(ジョブ:ローラーコースターアイドル)
    春日 楠(ジョブ:ファンシー拳法家)
    小阪 ちひろ(ジョブ:ふつーの人)
    九条 月夜( ジョブ:美意識過剰天文部員)
    五位堂 結(ジョブ:ドラムスメ)
    ドクロウ・スカール(冥界法治省極東支局亡霊対策室長)
    ノーラ・フロリアン・レオリア(ジョブ:お邪魔女さん)
    ギャブレー・デッラ・モンテ・ドゥミ(冥界法治省逃亡霊特別本部議員)
    ゴロゴロ・ラグラン・ガンホーン(冥界法治省逃亡霊特別本部議員)
    ロードレット・ルウム・レントラント(冥界法治省逃亡霊特別本部議員)
    アノア・ノア・デルフリクト・ニース(冥界法治省逃亡霊特別本部議員)
    二階堂 由梨(私立舞島学園高校2-B担任)
    リョーくん(パセリ)
    (当て馬)
    駆け魂7(ラスボス)

    桂木 桂馬「落とし神」

    510 = 471 :

     あの事件から、数日が過ぎた。

     今回に関しては、地獄の処理能力は完璧だった。

     一連の出来事に関して、覚えている者は誰も居ない。

     つまりは、細かい処理が出来なく、数日さかのぼって、関係者全員の記憶を消去してしまったのだ。

     ま、ボクがキスしてしまったことで、彼女との関係が変わってしまうのも不都合だ。

     その点は極めて評価しているのだが。

    「出来るならさっさとやれって話だよな」

    「何か、いいましたか、にーさま」

    「なんでもないよ」

    「あっ、いま私の顔見てため息つきましたねー。しつれーです」

    「なにを一人前な口を利いてるんだか。はぁ」

    「にーさま、ため息をつくとしあわせが逃げちゃいますよ」

    「悪魔といっしょに居る時点で、既に幸運とは程遠いような気がする」

     やっぱり、失礼です、と憤るエルシィと共に、家路を辿る。

    「今日の夕飯は、地獄風包み焼きハンバーグですよ」

    「包むってのが曲者だな。どうして、普通に作らないんだ、おまえは」

     地獄風っていいたいだけちゃうんか。

    「にーさまに私の故郷の味をたくさん知ってほしーからですよ」

     ね、と目尻を下げるエルシィを見て、思わず視線を逸らしてしまう。

     くそ、どーせならボクの記憶も消しておいて欲しかった。

    「デザートはどうしましょうか、ねぇ、にーさま?」

     屈託無く微笑む彼女を前にして。

    「……甘くないので、おねがいします」

     ボクはこの先も続く、運命を受け入れた。

    お・し・ま・い♪

    511 = 471 :

    これにて完結!
    暇人ども、ご愛読ありがとうございました!!

    512 :

    まさに神はここに居た

    513 :

    神のみぞ知る作者

    514 :

    あとスレが半分残っている・・・つまり・・・

    515 = 471 :

    適当に埋めといてくださいってことさ

    516 :

    もしくは作者がおまけを書く気になるのを全裸で待機しろってことだろ

    517 = 469 :

    俺の感想で後半分くらいは埋められるが勘弁しといてやる

    めちゃくちゃおもしろかった
    最後も熱かったし

    このSSに会えてよかったぜ
    おつかれさん

    518 = 466 :

    本人かと思うほど、いい出来でした。
    全裸で待機ですね

    519 :

    本当にちゃんと年内に終わったな
    おつでした

    520 = 468 :


    俺の予測よりも早く終わらせたのか。さすが>>1、俺の予想など軽々と超越してくれる。
    ありがとう>>1、今年の最後をここで迎えられて良かった。

    521 :

    面白かった

    523 :

    明けました。
    おめでたし。

    524 :

    終わってたか

    525 :

    明けましておめでとうございます

    乙でした

    526 :

    あけおつ

    527 :

    こんなに面白いSSは久しぶりに見た
    ありがとう!乙

    528 :

    残りで何かが起こるのなら
    ぜひ本編出なかったヒロインズにスポットライト頼みます
    みなみとかスミレとか純とか檜やらに出番を
    あと女神入り候補で唯一出番無かった栞にもな

    529 :

    >>528
    栞ちゃんと出るじゃんよ

    530 :

    >>529
    このSSの話だろ

    そういや今日の五時半に神のみの再放送やってたな

    531 :

    単行本11巻までの内容しか知らないんだけど、コレ読んで大丈夫?
    ネタバレしない?

    532 :

    平気、問題ない。さあ、どうぞ

    533 :

    作者がもう書く気ないならここは移転しなくていいのか?SS・小説スレは移転しましたhttp://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobilehttp://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/


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