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元スレ一方通行「あれから一年か....」美琴「早いもんね....」
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翼はゆっくりと消えて行く。
まるで空気に溶けるように消えてゆき、消え去ってから垣根は漸く正気に戻った。
「テメェ……今のは!それに何で生きてッ!?」
問いかけの途中で、垣根は驚きの余り目を見開く。
自分の目の前に立つ少年の傷口からは血が流れていなかった。
「ま、さか、血流操作……?」
「えっ……?」
垣根の呟きに、美琴も驚いて少年の横顔を見る。
横からなので目は見えないが、口元はギリギリ見えた。
「美琴」
彼は言う。
今まで一度として呼ばなかった彼女の名前を。
「三下どもと一緒に下がってろ。終わらせてやる」
「……うん」
素直に頷き、美琴は少し後ろに下がる。
視界がぼやけて、彼の背中がよく見えない。
あぁ、これが嬉し涙なんだなと、美琴は思った。
「さァ、いい加減こンな巫山戯た舞台は終わらせっちまおうぜ、格下ァ!!」
彼、一方通行は目の前の『元最強』にそう叫んだ。
■
「大丈夫?」
「はい、問題ありませんとミサカは体を確認し報告します」
「……一方通行」
コンテナに寄りかかっているミサカと上条。
美琴だけが立っている。
ニー、と黒猫がミサカに擦り寄りながら小さく鳴いた。
「大丈夫、なのか……?」
上条は空を見上げながら心配を告げる。
空では二人が戦っていた。
戦いは余りにもレベルが違い過ぎて、彼等が介入など到底無理な話だった。
空中で二人が激突する度に衝撃波が撒き散らされる。
白い羽が散らされ、暴風により高く積まれているコンテナが崩れた。
大地がズズンッ、と揺れ、黒猫が不安そうに震える。
「きっと……」
震える黒い子猫をミサカが優しく抱き抱えるのを横目に見ながら、美琴は、
「大丈夫」
そう、言った。
その茶色の瞳に篭っているのは、信頼。
あの少年への、絶大なる信頼。
「……いい気になってんじゃねぇぞ一方通行ァァッ!!」
翼の少年は吠えた。
そして自分と対峙する一方通行に向かって垣根は翼を振るった。
翼から放たれた白い羽が、幾百も放たれ一方通行に迫った。
だが、
一方通行は躊躇無くその羽の弾幕に突っ込む。
そして、羽は一方通行に触れた瞬間真逆へと弾かれた。
「なに!?ぐっ!」
自分へと返ってきた羽を防ぐために翼を壁にする。
その壁に当たって羽は弾かれるが、一方通行の手は防げない。
白い死の腕が、羽の層を貫き垣根の眼前に迫る。
翼を慌てて拡散させ、羽を撒き散らして衝撃を無くす。
そして後ろへと飛んで距離を取った。
(どうなって、やがる!?何でコイツは俺の羽を防いで、しかも翼を簡単に貫いた!?そして何よりもーーッ!)
ーーなんで反射が使える!?
「未元物質、か」
「!?」
空を飛び、放たれた風の槍を防ぎながら垣根は一方通行のセリフを聞いた。
「確かにオマエの力は凄いもンだ。未元物質っていう“異常”をこの現実に入れることで常識を変えっちまう」
風を操作しながら、彼は言った。
「だったら、暴けばイイ。この世界には未元物質があると仮定して、その世界での公式を暴けばチェックメイトだ」
「な……」
垣根は絶句する。
彼の言ったことは“非常識”を“常識”に変えるということ。
つまりだ。
彼の能力のアドバンテージを、殆ど無くすということ。
「んなことが……!」
「できンだよ。“今の”俺ならなァ」
ニヤッと、笑いながら一方通行は宣言する。
その姿は闇と重なって死神に見えた。
「う……おおおおおおおっ!!」
垣根は叫び、六枚の翼を一方通行に向ける。
だが、何時の間にか自分より上空に移動した彼の右手にある物を見て驚愕する。
「学園都市中の風の流れを集めりゃ、プラズマぐらい出来ンよなァ?」
光り輝く、丸い物体。
直径十メートル程のプラズマ体。
灼熱のそれが、
「喰らっとけ」
垣根に叩きつけられた。
プラズマ体は下に居た垣根に接触した瞬間形を変え、まるで光線のように大地に突き刺さる。
その大気の急激な温度変化により、暴風が操車場全域に吹き荒れた。
「うわっ!」
「くっ!」
「……!」
それは戦いを見ていた三人も例外では無く、顔の前に腕を出して耐える。
美琴だけが、爆心地とも言える地点を見ていた。
爆心地は砂利やレールが溶けており、砂煙が凄く、何も見えない。
その砂煙のカーテンはゆっくりと、風に乗って消えて行く。
爆心地の中心にあるのは、白い塊。
「!」
「あれは……!」
白い塊がピクッと動いたかと思うと、一気に解き放たれた。
白い何かは幾重にも重ねられていた翼。
「はぁ、はぁ……」
その翼を生やしている少年、垣根は息を荒くしながら地面に片膝を付く。
咄嗟に能力を全開にして防いだものの、かなり疲労した。
そして、
「いいか」
「っ!?」
自分の後ろから声が聞こえ、垣根は反射的に後ろを向きながら翼を振るう。
だが、翼は誰かに当たった瞬間、衝撃で崩壊。
ただの羽となって空間を舞う。
「なっ……!」
何故か?
答えは簡単。衝撃を『逆のベクトル』に変更されたから。
その絶対的な防御の力を、
反射と言う。
そして、反射を使える、いや、使える様になったのはこの学園都市にたった一人。
名前は『一方通行』
彼は白い羽が舞う空間にて、拳を振りかぶる。
「これが、『化け物』だ」
一方通行が操作出来るありとあらゆるベクトルによって強化された拳は、垣根の顔面に叩き込まれた。
バキィ!と肉と肉がぶつかる生々しい音が短く鳴り、垣根は吹き飛ぶ。
ゴロゴロと、先程のプラズマのせいで平になった地面を転がって十メートル程で漸く止まる。
「っ……」
垣根は起き上がろうと指を動かすが、一ミリ程しか動かなかった。
そのまま彼は意識を飛ばす。
「……終わった」
気絶した垣根を見て、一方通行はそう言った。
瞬間、体に張っていた力が抜け、ふらっとよろける。
「もう、限界だァ……」
ドサッ、と同じように地面に倒れこみ、気絶した。
こうして、夜の世界を舞台にした戦いは、終わりを告げる。
後編終了です。
駄文でごめんなさい!
でもやっぱり超人どうしの戦いは色々ぶっ飛んでるから難しいよ!
殴り合いなら普通に書けるのに……
では!
乙
てかこんなに仕事速くて大丈夫かwwwwww
過労死すんじゃないかと逆に心配になってくるわwwww
てかこんなに仕事速くて大丈夫かwwwwww
過労死すんじゃないかと逆に心配になってくるわwwww
乙。
上条さん弱ッと思ったけど、よく考えたら原作がチートなだけだった。
右手だけしか使えない一般人ならこんなもんだよな。
上条さん弱ッと思ったけど、よく考えたら原作がチートなだけだった。
右手だけしか使えない一般人ならこんなもんだよな。
皆さん、すみません。
エピローグ(+補足説明集)は少し遅くなりそうです。
後シリアス要素が一割ぐらいしか無いかも……
暇つぶしと言ってはあれですが、『Still Waiting』って言う曲を聴きながらだと更に面白い……かも。
後この曲は自分の中では『とある科学の電磁通行(エレキックロード)』のOPみたな感じで聴きながら書いてます。
感想レスなどくれると嬉しいです。
というより最近の異常な執筆速度はレスが多いからだと気がついた。
夏が……ssの舞台と同じ夏が来る……
PS「最近、電磁通行好きが増えたの絶対六割がたお前のせいだわwwwwwwww」と友達に言われた。えっ?マジなの?自分を励ますための冗談だよね?
エピローグ(+補足説明集)は少し遅くなりそうです。
後シリアス要素が一割ぐらいしか無いかも……
暇つぶしと言ってはあれですが、『Still Waiting』って言う曲を聴きながらだと更に面白い……かも。
後この曲は自分の中では『とある科学の電磁通行(エレキックロード)』のOPみたな感じで聴きながら書いてます。
感想レスなどくれると嬉しいです。
というより最近の異常な執筆速度はレスが多いからだと気がついた。
夏が……ssの舞台と同じ夏が来る……
PS「最近、電磁通行好きが増えたの絶対六割がたお前のせいだわwwwwwwww」と友達に言われた。えっ?マジなの?自分を励ますための冗談だよね?
待ってるし、ほのぼのやギャグも好きだ!
そーいえば前どっかのスレで電磁通行推奨委員会なる奴がいたな。
そーいえば前どっかのスレで電磁通行推奨委員会なる奴がいたな。
電磁通行は元々好きだったがこのスレのおかげでさらに好きになったなwwww
>>773んんん!
電磁通行推奨委員会名誉会員の俺を呼ぶ声が聞こえたと思ったらあああ!
いつの間にこんなに物語が進んでいたんだあああ!
もう来ないのかと思ってたぞおおお!
あとMISSARってなんなんだあああ!?
電磁通行推奨委員会名誉会員の俺を呼ぶ声が聞こえたと思ったらあああ!
いつの間にこんなに物語が進んでいたんだあああ!
もう来ないのかと思ってたぞおおお!
あとMISSARってなんなんだあああ!?
あぁ・・・確かにこのスレのおかげで好きになったのかも
思い出せないww
思い出せないww
長編で電磁通行は少ないからな
>>1に影響されたってやつは少なくないんじゃないか?
>>1に影響されたってやつは少なくないんじゃないか?
>>764
別に気にしなくていいっすよ!
>>765
大丈夫。勉強したく無いがためだからwwwwww。というより英語難しいです。
数学は結構行けるのに……
>>769
翼の一つ防げても他のに打っ叩かれて終了、みたいな?
上条さんこの時点じゃ戦闘経験あんまり無いですし……
>>771
……えっ?駄文じゃありませんでした?
>>772
いいですよね、あの曲!
>>775
すみません!携帯がぶっ壊れたのです!
後電磁通行(ryってマジすか?
>>774-776-777
そうですか……ありがとうございます!自信湧いて来ました!
>>778
んー……一回あれですね、上条さんは絶望のどん底に叩き落とされるべき。
二巻の時みたいな覚醒?が見たいですね。
後上条さんそろそろ負けなきゃ。ヒーローが勝ち続けってのもなぁ……
>>780
ゲーム好きの普通の学生です。
ただ噂好きなだけで。
今日投下するんで待っていて下さい!
別に気にしなくていいっすよ!
>>765
大丈夫。勉強したく無いがためだからwwwwww。というより英語難しいです。
数学は結構行けるのに……
>>769
翼の一つ防げても他のに打っ叩かれて終了、みたいな?
上条さんこの時点じゃ戦闘経験あんまり無いですし……
>>771
……えっ?駄文じゃありませんでした?
>>772
いいですよね、あの曲!
>>775
すみません!携帯がぶっ壊れたのです!
後電磁通行(ryってマジすか?
>>774-776-777
そうですか……ありがとうございます!自信湧いて来ました!
>>778
んー……一回あれですね、上条さんは絶望のどん底に叩き落とされるべき。
二巻の時みたいな覚醒?が見たいですね。
後上条さんそろそろ負けなきゃ。ヒーローが勝ち続けってのもなぁ……
>>780
ゲーム好きの普通の学生です。
ただ噂好きなだけで。
今日投下するんで待っていて下さい!
ヒーローが負けるとか、新キャラか新技(技術)のフラグでしかないだろ
なんにせよ待ってるぜええええええ
なんにせよ待ってるぜええええええ
エピローグ
「……」
無言。
八月二十一日。朝、一方通行が起きてから一番最初にしている行為がそれだ。
別に毎日という訳では無い。
彼だってあくびくらいするし、何か言ったりする。
少なくとも一分以上呼吸音すら小さくすることは無い。
では何故今は無言なのか?
それは、
「……?どうかしましたか?とミサカは貴方が何も喋らないため尋ね」
「オマエの手が問題なンですよォォォォォォォッ!!」
何故なら、自分の右手がミサカ10032号の慎ましい胸に服の上から押し当てられていたから。
怪我をしているというのを感じさせない一方通行の叫び声が、早朝の病室に響いた。
「で?俺の体は大丈夫なンだな?」
「はい、手術も成功したため、一ヶ月弱で退院出来るそうですとミサカは貴方の手を離します」
先程の胸の感覚を頭から削除しながら、一方通行はベットの横に座るミサカの言葉を聞く。
ちなみに、あの胸に押し当てる行為は能力を利用して体調を調べるためだった。
どうやらあの戦いの後、自分は病院に直行されたらしい。
まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。
能力が無ければ確実に死んでいたであろう怪我だったのだから。
「……実験はどォなった?中止になったのかァ?」
「はい」
短い返事に、一方通行は少し驚く。
まさか、これだけで終わるとは思わなかった。
研究員共は揃ってバカだから実験をまた再度行うと思ったのに。
「……理由は?」
「不明です。ミサカはその情報を与えられていません、とミサカは自分の知っていることのみを伝えます」
「ふーン……」
一方通行は考える。
何故、実験が中止になったのか。
だが、分からない。
少なくとも、今回の出来事が関係しているのは確かだが……
「あぁ、それと。もう一つ伝えることがあります、とミサカは姿勢を正します」
言葉通り椅子の上で背筋をピシッと伸ばすミサカ。
「伝えること……研究員からかァ?」
「はい。
貴方は超能力者(レベル5)第一位に認定されることになりました、とミサカは報告します」
「……そうか」
フゥ、と息を吐き、目を閉じる。
分かっていたことだった。
自分は、守りたいものを守るために“化け物”の力を使った。
なら、それ相応の代償が付いて来る。それが、このクソッタレな世の中の真理だ。
「……では、ミサカはこれで失礼します、とミサカは立ち上がりながら言います」
「あァ。まっ、精々死なねェよォ頑張れ」
ベットに横になったまま、立ち上がったミサカに一方通行は言葉を飛ばす。
それを聞いてミサカは立ち止まり、
「……有難う、ございました」
そう言って、病室から退出した。
白いドアがゆっくりと閉まり、カタンと小さな音を立てる。
「……礼なンざ要らねェっての。バカが」
呟いた一方通行の顔は、笑っていた。
嬉しさで、笑っていた。
コンコン。
「ンっ……?」
小さく笑っていた一方通行は、ドアから聞こえたノックの音に首を傾げる。
先程ミサカが出て行ってから一分も立っていないからだ。
もしかして忘れ物でもして戻って来たのかも知れない。
そう思い、一方通行は身を起こす。
「……どうぞォ」
身に走った痛みに顔が少し歪むが、無視。
なるべく普段と変わらない声を発した。
一方通行の許可の言葉に反応し、ゆっくりとドアがスライドしてゆく。
現れたのは、
「……体は、大丈夫?」
「大丈夫に決まってンだろォが」
茶色の髪に茶色の瞳を持つ少女。
今回の事件の中心人物である、御坂美琴だった。
■
シャリシャリ。
そんな効果音が病室にて鳴る。
音源はベット脇の椅子に座る少女の手元。
そこにあるリンゴの皮をナイフでむく音だ。
スルスルと、ナイフにより赤い皮が果実から離れてゆく。
ベットの上の一方通行はそれを視界の隅に入れつつ、窓の外を見る。
あれから美琴は殆ど無言で、お見舞いに持って来たリンゴをむき始めてからは一言たりとも喋ってはいない。
表情が暗いことから大体何が言いたいのか一方通行には分かる。
だから黙って待っていた。
「……」
「……」
ピタッと美琴の手が止まり、ナイフとリンゴの動きも止まる。
「……レベル5に、なったみたいね」
やっと言葉が出た。
「第一位ブッ倒したしなァ。正式発表は夏休みが終わってからみたいだけどよ」
「……」
一方通行の愉快そうな声に、美琴は更に表情を暗くした。
それに一方通行は自分の白い髪をガシガシとかき、どう言ったものかと悩む。
「……ご……ん」
「あァ?」
だが、彼が何か言う前に、
「ご、めん……!」
ポロポロと、涙を流しながら彼女は彼に謝罪した。
大粒の涙が頬を通過し、手元へと落ちる。
「ごめん……!本当に、ごめんっ……!」
口から出てくるのは、謝罪のセリフばかり。
彼女は知っていた。
彼が自分を“化け物”にしたく無いことを。
名前のことも、それが関わっているのだろうと。
だけど、自分のせいで、彼は“化け物”の領域に入った。
学園都市での、最強の“化け物”になった。
自分が居なければ、彼は普通の“人間”として暮らせたかも知れないのに。
泣いたって許してもらえないだろう。
いくら謝ったって許してもらえないだろう。
だけど、謝らずにはいられなかった。
「ごめん……ごめん……」
彼女は謝り続ける。
許されなくても、ずっと彼に。
だが、
「謝ってンじゃねェよ。俺は借金取りか何かですかァ?」
ポン、と彼は白い手を美琴の頭に乗せた。
「あっ……」
その感触に、美琴は泣くのを止め、前を見る。
そこにはベットから身を起こし、笑っている彼が居た。
「オマエが謝る必要性なンざこれっぽっちもねェだろ。オレが勝手にやって、勝手に“化け物”になった。そンだけで充分だろうが」
「っ!そんなこと「そうしとけ」へぅっ!?」
美琴は一方通行の言葉に抗議しようとするが、頭を乱暴にガシガシと撫でられ遮られる。
「それで、いいンだよ。オレがイイって言ってンだ。ガキは従っとけ」
「……アンタも、ガキじゃない……」
「少なくともオマエよりは年上だなァ」
二ィ、と意地悪な笑みを浮かべる彼の顔を美琴はまだ涙が流れる顔で見る。
そして、ポツリと一言。
「あり、がとう……」
その言葉に答える様に、一方通行は頭を撫でる腕に力を加えた。
「……ってちょ!痛い!髪の毛痛い!」
「オォワリィワリィ」
「謝る気無いでしょアンタ!?」
が、強過ぎたようで手が振り払われる。
一方通行はカタコトで謝りつつ手をぷらぷらさせた。
その姿に美琴は更に怒りの炎を燃やすが、
「オマエの髪がライオンみたいになってもいいから、サッサとリンゴ寄越してくれませンかァ?此方とら腹減ってンだよ」
「いやよくないし!……全くアンタ、本当に自己中なのね」
「オマエだけには言われたかァねェ」
一方通行の文句をスルーし、ハァ、とため息を吐く。
彼女は皮を剥いてカットし終わったリンゴを差し、
「!」
出す前に言い事を思いついた。
そしてリンゴを差し出す。
あの定番のセリフとともに。
「はい、あーん」
「……ハッ?」
「だから、あーん」
一方通行は差し出されたリンゴを凝視して固まった。
彼女はリンゴを右手の指で摘んで自分の口に向かって差し出していたのだ。
そして「あーん」というセリフ。
つまり、これが指すところは。
「オマエバカですかァ!?」
んな恥ずかしい行為出来るかと一方通行は怒鳴る。
が、
「あーん」
「しかも聞いてねェ!やっぱオマエに自己中って言われたかねェよ!」
無視しているのか聞いて無いのか分からないが、美琴は一方通行にリンゴを出し続ける。
満面の笑みで。
(……はァ、全く手の掛かるガキだ……)
その面倒さを楽しむ自分が居る事に、彼は心の中で苦笑する。
だって、ずっとずっとこの笑顔を見たかったのだから。
「……ン」
差し出されているリンゴに対して、不機嫌さを装いながら彼は口を開く。
それを見て美琴はリンゴを前に、一方通行の口に入れようとする。
だが、
ガラッ!
「おーい一方通行。お見舞いに来た、ぞ……?」
閉められていたドアが開き、入って来たのはツンツン髪の少年。
少年は「あーん」する直前の二人を見て氷の様に固まった。
勿論、それは二人も同じで、
「……まてまて三下。誤解してンじゃねェぞ?」
「……ハッ!?そ、そそそう!こここれ誤解だから!」
一方通行は普段から白い顔を更に白くして冷や汗を垂らしながら言い、美琴は意識を現実に引き戻して顔を真っ赤にしながら弁解した。
そして、その二人の言い分を聞き終わった少年、上条は、
「お邪魔しました~……」
ピシャ!っとドアを閉めた。
三秒後、一方通行の叫び声が病院中に響き渡ったのは言うまでも無い。
■
「アレイスター」
「プランは順調だ。なんの問題も無い」
とある窓の無いビルで、巨大なビーカーのような得体の知れない容器の中の人物と、土御門は話していた。
その者の名はアレイスター。
学園都市のトップ。
魔術を捨てし者。
通気口すら無い、締め切ったビルの中。
彼は口を開く。
「……全て計算通りということか」
「そういうことだ」
目の前の、男なのか女なのか子供なのか老人なのか分からない不思議な逆さまの人間の言葉に彼は苛立つ。
そう、全てはプラン通り。
垣根帝督は一方通行を覚醒させるためのコマだった。
一方通行はアレイスターのプランに必要な人間の一人。
だが、トラウマのせいで能力の一部を封印してしまっていた彼では役に立たなかった。
だから、あえて実験のことを教え中止させることで彼を超能力者(レベル5)にしようとした。
そして、それは成功した。
彼が、大事な者を守るために“化け物”の道に踏み込んだことで。
「……もし一方通行が動かなかったらどうするつもりだった?」
「彼が動く確率は99パーセントだったのだがな。その場合は幻想殺しの少年に実験を止めさせるまでだった」
「……?」
そのセリフに土御門は少し違和感を覚える。
垣根がレベル6になれるというのはアレイスターによる“嘘”なのかもしれないが、態々実験を止める必要性は無い筈だ。
だとしたら、
そこに、何か自分が知らない事情(裏)があるのではないか……?
「ただ、イレギュラーとして起きたことがあるとすれば」
「……?」
実験を止めるための理由を考えていた土御門は、アレイスターの言葉を聞き首を傾げる。
プランは順調では無かったのか?
そう思う彼の前にブンッ、と周りの機器から投写された立体映像によるモニターが映る。
そして喜怒哀楽、全てを内包した様なアレイスターの声が紡がれた。
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