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元スレ一方通行「あれから一年か....」美琴「早いもんね....」
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「……」
無言のまま、彼は歩く。
コツコツと、彼の靴による足音が路地裏にこだまする。
歩くに従って変な匂いがし始めた。
煙のような匂いと、血のような匂い。
地面にいくつも落ちている金色の何か。
それらをなるべく無視し、一方通行は歩く。
そして、開けた場所。
ビルに囲まれた空間に着いた。
そこで、見たのは。
「超、電磁砲……?」
まるで何か巨大な物に切り裂かれたかのように体の前面を断ち切られ、そこから大量に出ている紅い“ナニカ”に浸かっている誰か。
学校指定の制服を着て、茶色の髪と茶色の瞳を持つ彼女。
御坂美琴が、死んでいた。
「な、ンだよこりゃ……なンの、冗談だよ……」
ブツブツと、ショックの余り似たようなことを呟き続ける一方通行。
だが思考を回復させ、一気に彼女に駆け寄ろう
「ん?一般人か?」
とした。
第三者の声に一方通行は足を止め、その声のした方に向く。
そこには赤い制服を着た金髪の男が立っていた。
そしてその背には、六枚の白い翼。まるで天使のような、翼。
翼を生やした彼は頭を掻きながら面倒臭そうに言う。
「まったく……警備ちゃんとしとけよ。どうすんだよ『実験』って一般人に知られたらマズイんじゃねぇのか?」
実験という単語が一方通行の頭に引っかかるが、それもすぐに吹き飛んだ。
何故なら、彼が背に生やしたその翼の一つに血が付いているのが見えたから。
そして、一方通行は、
「オ、マエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」
知り合いを殺されて黙っていられる程、大人じゃ無かった。
彼は己の能力を行使し、敵へと飛んだ。
Lv5一方通行とLv4一方通行の相違点について説明頂けると嬉しい
ラビットみたいに、オート反射は原子、素粒子クラスの重さまでしか反射できないとかじゃね?
まぁできなくても十二分に超能力認定だろ?それより大能力なのに一方さんは一方通行なのか?
まぁできなくても十二分に超能力認定だろ?それより大能力なのに一方さんは一方通行なのか?
>>670
それ何冊目?なんかタイトルある?教えてクレアボイアンス
それ何冊目?なんかタイトルある?教えてクレアボイアンス
現スレの130と271じゃね?レベル5達の休日ってやつ
自分も空白の三年希望
自分も空白の三年希望
>>672
ありがとうございまスーパー麦のん
ありがとうございまスーパー麦のん
>>662 http://questionbox.jp.msn.com/qa281359.html
基本的には上のサイトのやり方でOK。
ただしこれはノーマル。ここから個人で色々して行くのがホットケーキの醍醐味。
干しぶどうや、液体チョコレートを生地に混ぜると美味しい。
更に、マヨネーズ。これをいれると外はカリッ、中はフワッなホットケーキが出来上がる。
ただし、入れ過ぎてはダメ。牛乳の量とかも調整するといい。
>>659-665-666
今回の話で明らかになります。
>>664-670
色々書いてます。ただ、やっぱり電磁通行の方を中心に書いてますが。
では、中編行きます!
学園都市、第七学区。
ビルが立ち並ぶことにより出来た路地裏の開けた一角。
夕暮れのオレンジ色の光が僅かに差し込むそこで、
「オ、マエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」
一人の少年の叫び声が響いた。
一方通行は足に力を込め、蹴る。
コンクリートの地面が掛けられた凄まじい力によりビシッとひび割れる。
弾丸のように、一方通行は飛んだ。
「……はっ」
その負の形相を浮かべて迫る一方通行に、金髪の少年は翼を振るう。
長さが十メートルはある巨大なそれが、一方通行に迫った。
「ラアッ!!」
その巨大な翼に、一方通行は左手で応じる。
ただしただの左手では無い。
ベクトル操作により人間の限界を超えた威力を持つ死神の腕。
ゴンッ!とまるで金属同士がぶつかるような鈍い音が鳴る。
(……!?)
衝撃波が吹き荒れる中、手から伝わった物質の情報に一方通行は目を見開いた。
彼はベクトル操作の能力として物体のベクトルを読み取ることにより、その物体の性質や構成物質を把握することが出来る。
だが、
(なンだ、これはァ……!?)
今、受け止めた翼からは未知の情報しか頭に入らなかった。
だから、一方通行はこの翼を破壊することが出来ない。
「考えてる暇なんてあんのか?」
「っ!」
左手を掲げて受け止めていた彼に、横から次の翼が迫る。
「がっ!?」
翼が体に当たって一方通行は悲鳴を思わず上げる。
そしてメキメキと嫌な音が耳に入ったと思った瞬間、吹き飛んだ。
「ぐっ……」
「へぇ、やんじゃねぇか」
路地裏の壁に激突して生まれた衝撃を周りに拡散。
一応、致命傷は無い。一方通行は立つ。
だがズキズキと、鈍い痛みが断続的に体に走る。
そんな一方通行に少年はパンパンと軽く拍手した。
「お前、本当にすげぇよ。学園都市第一位の俺の攻撃を受けて立っていられてるんだから」
「第一位、だと?じゃあ、オマエが……」
「そっ。学園都市第一位『未元物質(ダークマター)』垣根(かきね)帝督(ていとく)だ」
翼を広げながら彼、垣根帝督は名乗った。
一方通行は知っている。
いや、学園都市に居る誰もが知っている。
最強の第一位。常識から逸脱した怪物。それが、彼。
「それにしてもお前誰だよ。実験に乱入しやがって。俺は邪魔する敵には容赦は……んっ?」
そこまで言って、彼は首を傾げる。
まじまじと一方通行を見て、あぁ、と手を叩く。
「お前、“あの”一方通行か」
「っ!?」
あの、と言われて一方通行は息が詰まる。
心当たりは、有った。
「五年ぐらい前か?確か学園都市第一位確定される筈だった能力者のガキが居たんだよな。そいつはある事件の所為で全く能力が使えなくなった」
ギリッ、と一方通行は歯を食いしばる。
顔は怒りに染まっていた。
それを見ながら、垣根は面白そうに続ける。
「特徴は白い髪に赤い目。長点上機学園に一応登録されてるっていう、名前を捨てた人間」
そこで切り、
「十歳で化け物って呼ばれた一方通行くん?」
「黙りやがれェェッ!!」
過去(トラウマ)を刺激された一方通行は怒りを倍増させ、垣根に向かって再度突っ込む。
鬼の形相で迫る彼を見て垣根はニヤッと笑い、翼の一つを振るうった。
豪風が生まれ、一方通行は目の前に生まれたそれに手を伸ばす。
彼は風の向きを操ることが出来る。
だから、この風速百二十キロに達する豪風も防げる筈だった。
だが、
「ガッ……ガァアアアアアアアアアアアアアッ!?」
一方通行は吹き飛んだ。
自動車すらも横転させる豪風をモロに喰らった一方通行は先程と同じ壁に激突。
凄まじい轟音が響き渡る。
ビキビキとコンクリート製の壁にヒビが入った。
ドサッ、と一方通行は地面に倒れこむ。
背中からコンクリートの破片がパラパラと音を立てて落ち、一方通行は指を地面に食い込ませる。
(バカな……今の、風……俺が計算出来ないだと……?)
「一方通行。お前は確かベクトルを操作する能力者だったな?」
起き上がろうとしても体が動かない一方通行に、垣根はゆっくりと近寄る。
垣根の足が動くたびに、背に生えた翼が揺れ動く。
「なるほど、この世界の攻撃は全て何らかのベクトルで構成されているからな。この世の常識を把握していれば確かに、無敵に近い能力だろう」
だけど、と垣根はついに地面に這いくばる一方通行の前に立つ。
上から見下ろしながら、彼は言う。
「だけど、俺の『未元物質』にそれは通用しねぇ。お前の“常識”は俺には通用しないんだよ」
常識が通用、しない。
そんな生き物を人は怪物という。
背中に生えた翼が長く、長大に、鋭利になってゆく。
巨大な凶器となった白い翼は、
「じゃあな。一方通行」
真っ直ぐに、一方通行へと振り下ろされた。
それを首を上げて見上げる一方通行。
防ぐ手だてなど、無かった。
「お待ちください、とミサカは被験者へ停止を呼びかけます」
突然聞こえた声に、垣根は振り下ろそうとした翼をギリギリで止める。
目の前でピタリと止まった翼から目をそらし、一方通行は声の聞こえた方へと目をやる。
そこで見たのは、二十人は居る“御坂美琴”だった。
(な、に……?)
己の目に入った光景に驚愕しながらも、彼は意識を闇に飲まれた。
■
とある所に◯◯ ◯◯◯という少年が居た。
年は十歳。そこまで可笑しい人間では無かった筈だ。
彼は小さい頃に学園都市という科学の街にやって来た。
その街では能力という名の異能の力が有った。
そして、少年には能力の才能が有った。
あっというまに彼はレベルを上げてゆき、ついには第一位に認定される間際まで行った。
だが、事件が起こる。
始まりは、子供同士の喧嘩。
彼は、そこで能力を使ってしまった。
反射と呼ばれる、無敵の盾を。
次は大人、人数を増やしても全て弾いた。
次は拳銃。反射された弾丸は放たれた場所に戻った。
そして、次は戦車。
武装した沢山の人間に、大量のヘリコプター。戦車の砲身が、歩道橋の上に居た彼を狙っていた。
彼は上を見上げ、ビルに映るテレビ画像を見る。
そこには自分の顔が映っており、写真をさしながらアナウンサーは揃って言った。
“化け物”と。
その日少年は◯◯ ◯◯◯という名を捨て、
一方通行(アクセラレータ)と名乗るようになった。
■
「……」
ムクリ、と。
一方通行はベットの上でゆっくり身を起こした。
寝起きの最悪な気分からか、彼の顔は歪んでいる。
「……クソが」
よりにもよって最悪な夢を見てしまった。
その不機嫌さを呟きに出した後、辺りを見渡す。
白。
辺りの物全てが白だった。
壁も天井もカーテンもベットも。
あまり通ったことは無いが知識としてはある。
病院の個室だ。
「……っ!」
そこまで考えて、一方通行は何故こんな所に居るのか疑問に持つが、思い出す。
「……夢、だったのか?」
開かれた窓から見える空は青い。
絶対とは言い切れないが、今は朝の筈だ。
夢で無いなら半日ぐらい経過している。
コンコン
「……?」
ふと、ノックの音が耳に入る。
顔を動かしてドアの方を見ると、ガラッと開いた。
「おーい。大丈夫かぁ?」
そこから出て来たのは、黒い髪をツンツンさせた学生服の少年。
「三下……?」
「うっ、酷い言われようだな……」
「いつものことだろォが」
一方通行は苦笑する少年に呆れながらそう言った。
「で、大丈夫なのか?路地裏に倒れてたのを見た時はビックリしたけど。後これ安もんだけど」
「どうともねェよ。後ンなもンより肉持って来い」
上条が台に置いた果物に文句を付けながら、一方通行は今聞いた情報を反復する。
彼は今路地裏に倒れていたと言った。
だとしたら、彼はあの巫山戯た光景を見たのだろうか?いや、それにしては反応が小さ過ぎる。
「まぁ、無事でなりより。上条さんもホッとしましたよ」
笑顔でそう言ってくる上条から、一方通行は目をそらす。
(……このお人好しが……)
何故一方通行が上条と知り合いなのか?
それは中学一年にまで遡る。
■
一方通行は能力が全く使えなくなった。
理由は心の病気。トラウマの所為だ。
特に反射は完璧に使えなくなり、ベクトル操作も全く出来ない。
今まで反射を無意識のうちに使っていたため、使えなくなってからは酷かった。
まず太陽の下に出ることが出来ない。
紫外線の所為で体が大変なことになってしまう。
彼は夜に行動するようになった。
だが、夜の街で彼みたいな見た目をした人間が絡まれない訳が無く、いつも殴られ、蹴られていた。
「オラッ!」
「……っ!」
バキッ!と生々しい打撃音が響き、白髪の少年は壁に倒れこむ。
そんな彼をニヤニヤしながら三人の男が囲んでいた。
「こいつやっぱいいサンドバックだわ。見た目は怖い癖に中身は雑魚だもんな」
「俺ら能力が肉体強化だからなぁー。こういう奴がいるとありがてぇぜ」
「手加減ミスっても問題ないしな」
「……」
笑いながら会話する男達を一方通行は死んだ目で見ていた。
彼は抵抗しない。いや、出来ない。
抵抗しようとすると、あの時の恐怖心が心の底から湧き上がってくる。
それに、もうどうでもよかった。
能力も使えなくなり、両親もいなくなり、友達なども一人としていない。
彼は、もう人生を捨てていた。
だけど、
「がっ!?」
突然、路地裏の入り口近くに立っていた男が誰かに殴り飛ばされた。
男はへたり込んでいた一方通行の上を通過し、反対側にいた男に激突する。
「ぐえっ!?」
「オイ!どうした!?」
倒れこまれた男は押しつぶされ、もう一人の男が駆け寄る。
唖然としていた一方通行は、
「よし!行くぞ!」
「……あっ?」
その誰かに、しっかりと手を掴まれた。
そして引っ張りあげられ、一気に走らされる。
「っ!?オイ逃げやがったぞ!」
「追え!」
背中に不良達の叫びを聞きながら、一方通行は自分の手を掴んだ人物を見る。
黒い髪に、学生服。
どこにでも居そうな、何の力も無さそうな一人の少年。
同い年くらいの少年に引き摺られながら、一方通行は走る。
十分後。
「はぁ、はぁ……ここまで来りゃ大丈夫だろ……」
「ハァ、ハァ……」
息を整えながら、一方通行は同じく息を荒げる少年を見直す。
やはり、どこからどう見ても普通の少年だ。
とにかく、色々言いたいことはあるが、
「なンで、助け、たンだよ……」
その問いに彼は首を傾げ、戻して笑いながら。
「目の前で不幸な目にあっている人を見捨てれないから、かな?」
これが、二人の、一方通行と上条当麻の出会いだった。
そして、『一方通行』という新たな一個人が誕生した瞬間でもある。
それから一年の歳月を要して彼はレベル1から、レベル4にまで成り上がった。
■
「……」
シャクッ、とお見舞い品のリンゴを囓りながら一方通行は思考を過去から現在に戻す。
お見舞い品を持って来た少年は補習があるらしく、もう居ない。
「……実験」
ポツリ、と呟く。
実験。そう、確かに垣根帝督は言っていた。
問題はどんな実験なのか、ということだ。
恐らく、いや確実に、マトモな物では無い。
「一方通行さーん!」
「あわわっ!佐天さんノックノック!」
突然、ドアがかなりの速度でスライドしたかと思うと女子が一人お見舞い品が入った篭を持ち上げながら入って来た。
その後から頭に大量の花飾りがついた少女が入って来る。
「……オマエら、来たのかよ」
「はい、白井さんから聞いて」
「白井ィ?あの腐れツインテメントがァ?」
花飾りの少女、初春からの言葉に一方通行は露骨に嫌な顔をした。
「折角来て差し上げたのに、酷い言い様ですわね」
「だとしたら空間移動で不意打ちかけンの止めろ」
最後にゆっくりとドアを閉めながら入るツインテールの少女に一方通行はため息を吐きながら言った。
「よかった……大した怪我じゃないんですね」
「怪我ですらねェよ。明日には出れンだろ」
ホッと一息ついた佐天に彼はそう返す。
彼女達とは偶々出会っただけの知り合いだと一方通行は思っていたが、予想以上に好意を持たれていたらしい。
「しかし……お姉様でさえ傷一つ付けられない貴方が、一体どうして倒れてましたの?」
「……別に、ただ喧嘩に負けただけだ」
「だ か ら!誰と戦って負けたのか聞いてますの!」
白井はガーッ!と擬音が付きそうなくらい怒りのポーズを取り、それを横から初春がなだめる。
「でも、実際誰と戦ったんですか?せめてどんな人かだけでも」
「どんな人、ねェ」
一方通行は頭から情報を引き出し、
「ムカつく野郎だな」
一言だけ、言った。
「じゃ!また来ますんで!」
「もう来なくていいつーの」
元気に言ってくる佐天にダルそうに返す。
そしてふと尋ねてみた。
「超電磁砲はどうした?」
「?そういえば、御坂さんどうしたんでしょう?白井さん何か知りませんか?」
病室から出ようとしていた初春は、居ない人物のことを白井に尋ねる。
美琴のことなら、ルームメイトでもある彼女に聞いた方がいいからだ。
だが白井は首を振り、
「貴方(一方通行)が路地裏で倒れていたことを伝えたら、お見舞いには行けないとしか」
「御坂さんが?」
チラッと一方通行の方を見ながら、初春は信じられないという声を出す。
視線を受けた一方通行は、何かを考えていた。
(アイツは俺にしつけェくらいにまとわりついてやがる。なのに……)
太陽が沈みかける頃。
オレンジ色の光が病室にさすのを感じながら一方通行は考える。
恐らく、彼女の不調とこれらは繋がっている。
彼の脳内に浮かぶのは、あの悲しそうな表情と、大量の無表情の美琴達。
考えていた一方通行だが、
ガラッとスライド音が響き。
「邪魔するぜい」
「オマエは……」
一方通行はドアを開けて入って来た人物に疑問を持つ。
入って来たのは金髪にサングラスをかけたアロハシャツの男。
確か、上条の側によくいる男だったはず。
名前は土御門元春。
「おぉう。一方通行、お前白過ぎてベットの布の色と体が同化しかけてるにゃー」
「うるせェ黙れ。用が無いなら帰れ」
自分の白さを指摘された一方通行は、不機嫌そうに手をシッシッと振るう。
その声と行動をにゃーにゃー言いながらスルーした土御門は、ポン、と何かを一方通行のベットに放る。
「ほらよ」
「あン……?」
ボスン、と一方通行の目の前にありしは茶色の封筒。
かなり大きく、分厚い。
恐らく業務用だ。
「じゃ、俺の役目はこれで終わりだから行くぜよ」
「役目、だと?」
クルリ、と土御門は彼に背を向ける。
「アレイスター直々の、な」
そう、告げてから、彼は部屋を出て行った。
「アレイスター、だと?」
開かれたままのドアを見ながら、一方通行は名前を再度紡ぐ。
そして手に感じるずっしりとした重さの封筒を見た。
「……」
べリッ、と封を解き、中から紙の束を取り出す。
『絶対能力者進化計画(レベル6シフトプラン)』
最初に見えたのは、そんな言葉だった。
そして、其処に書かれていたのは、巫山戯た実験の内容。
彼はー
■
「どうして、こうなっちゃったのかな……」
風力発電のプロペラが回るのを見ながら、御坂美琴は苦笑しながら言う。
その顔は、笑っているとは決して言えなかったが。
「やっぱり、レベル5なんかになったのが、悪かったのかな?」
その問いかけに返す者は誰一人として居ない。
時間が時間だ。橋の上には彼女以外誰も居ない。
「ねぇ、一方通行……」
二十日程前。
「ねぇアンタ」
「あン?」
ジージーとセミが鳴く中、一方通行は体の前で腕を組みながら尋ねて来た美琴に、怪訝そうな声で返す。
「いや、アンタの能力って絶対レベル5クラスでしょ。どうしてレベル5じゃないの?」
アンタの名前はどうして能力名なの?
この疑問は口に出さなかった。
絶対に触れてはいけない問題だとハッキリ分かっていたから。
「……欠陥があるからだよ」
「欠陥?」
あァ、と頷いてから彼は理由を言う。
「俺は反射が出来ない。昔は出来てたってのに、だ」
「反射?」
「つまり、ベクトルを正反対方向に変えれねェってことだ」
自分の思った所にベクトル変換するより、反射は簡単な筈だ。
なのに彼は、それが使えない。
まァ無意識の内に紫外線は反射しているらしいが、と一方通行は付け加え、
「それだけじゃねェ。血流操作もダメだし、生体電気も恐らくダメだ。欠陥だらけ。これじゃレベル5にはなれねェよ」
「……」
美琴は一方通行の言葉の意味を考える。
そこでふと気がついた。
自分との初対面の時、もし反射されていたらどうなったかを。
「……もしかして、アンタ」
「大正解だ、クソッタレ」
美琴が全てを言い終える前に、彼は言葉を返す。
彼は、人を傷付けるのがもしかしたらあんまり好きなのでは無いのかも知れない。
そして、恐らく本当は、もっともっと強いのだろう。
だけど、強すぎる力は災いしか呼ばないから、
彼は、レベル4のまま、化け物の領域に踏み込まずにいるのだろう。
缶コーヒーを飲みながら歩く彼の背中を見て、美琴はそう思った。
「なのに、私は……」
手すりにぽたぽたと、何かが垂れる。
その何かは、美琴の目から流れていた。
この世の理不尽さに、自分の愚かしさに、彼女は泣いていた。
下を向きながら、彼女は、心に溜め込んでいた言葉を漏らす。
「誰か、助けて……!」
「ハッ、なァンだ?言えンじゃねェか」
「っ!?」
突然の声に、美琴は飛び退いた。
横を見ると、手すりに寄りかかりながら缶コーヒーを飲む彼が居た。
その左手には、『絶対能力者進化計画(レベル6シフトプラン)』と書かれた書類の束が握られていた。
美琴は気がつく。
もう、全て知られてしまっているのだと。
「……で?」
逆に尋ねられた。
本来なら彼女自身が質問をしたかった。
なんで資料を持っているのか、なんでここにいるのか、なんで見つけられたのか、なんで資料をみても尚自分に話しかけられるのか。
だけど、
「私は、あの子達を、助けたい」
「妹達のことか」
彼にコクン、と頷く。
彼は言った。どうするつもりだと。
彼女は返した。自分が死んで、終わらせると。
なのに、
「なんで、アンタはまだ私の前に居るのよ……?」
自分が死ねば、終わるかも知れないのに。
彼は、橋の上に立つ彼は、
「却下」
いつかのように、否定した。
「死ンで終わらせるってかァ?ンな簡単に終わったらもっと世の中は単純だっつの」
呆然とする彼女に、彼は背を向ける。
カツカツと、振り返らずに。
その背中に、美琴はたまらずに大声で怒鳴った。
「何処に行くのよ!?」
「何処かの親切な誰かさンが教えてくれたンでねェ」
ピラピラと、彼は背を向けたまま紙の一枚を揺らす。
それに書かれているのは、10032回目の実験の座標。
それを見て彼女は漸く理解する。
彼が、今から何処へ行き、誰に何をするつもりなのかを。
「……無理よ!アイツの能力を知らない訳じゃないでしょ!?」
「昨日吹っ飛ばされたしなァ」
「だったら!なんで!?あんな常識から外れた化け物になんでアンタは……!」
「オイオイ、死ぬとか言ってた奴のセリフか、それ?」
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