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元スレ一方通行「あれから一年か....」美琴「早いもんね....」
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彼は振り返り、知らず知らずの内に涙を零している彼女を見る。
彼女は目から流れる涙を隠そうとしない。もう、するだけの余裕も無い。
「いいじゃない!私が死んでそれで終わり!誰も悲しまないし、アンタだって命をかける必要なんて「ある」……っ!」
途中で遮られた。
美琴は一方通行を見る。
その顔は、笑っていた。今から戦場に行くと言っているのに、笑っていた。
「あるンだよ、これが」
愉快そうに、楽しそうに、ニヤニヤしながら彼は言う。
「オマエが死ンだらあのツインテールも佐天って奴も、初春って奴も悲しむぜ?オマエは自分を下に見すぎなンだよ」
らしく無い、そう一方通行は思う。
こんなのは自分が言うようなセリフでは無い。
けれど、いや、だからこそ。
「勿論、俺もだ」
「……えっ?」
美琴は耳を疑う。
彼は、一方通行は今なんと言った。
クルッと前に向き直り、彼は、
「じゃ、行ってくるわ。ガキは家に帰って寝てろ」
「まっ」
ダンッ!と脚力のベクトルを操作し、高く飛んだ。
高く、高く。
そして美琴は一人残された。いや、最初から二人しか居なかったのだが。
「……」
下へ俯き、彼女は唇を噛み締める。
自分が死ぬつもりだったのに、彼はこの問題に関わらせたく無かったのに。
確かに常識内では一方通行は美琴が知る誰よりも強い。だが、相手はその常識を壊す能力者だ。
相性が、悪過ぎる。
「っ!」
顔を勢いよく上げ、美琴は前を見る。
一方通行が向かった方向を。
「行かなきゃ……」
そして一歩を踏み出そうとした所で、
「ニャー」
「……?」
子猫の鳴き声が聞こえた。
美琴は其方を振り替える。
其処にいたのは黒猫。
其処にいたのは、あの白い少年の、親友。
■
「これより、第10032回目の実験を開始します」
「……ちょっと待て」
「?」
とある操車場で、コンテナの上に寝転がっていた垣根はゆっくりと起き上がる。
それに、コンテナの下に立っていたミサカ10032号は首を傾げた。
「どうかしましたか?とミサカは警戒を続けたまま問いかけます」
「……いや、どうやら実験の前にブチ殺さなきゃならねぇ奴が居るみてぇだ」
「?」
瞬間、
ズシンッ!と何かがミサカの前に高速で落下した。
「なっ……!?」
「オマエが妹達か。なるほど、確かにそっくりだなァオイ」
小石をはね上げながら着地したのは、白い髪の少年。
彼は上を見上げる。
そこには翼を広げ、臨戦態勢の第一位が居た。
「やっぱ来やがったか。実験に支障が出るだのなんだの言われて殺せなかったからな。ここでブチ殺してやるよ」
「ハッ、オマエの方こそ愉快に華麗にスクラップにしてやンよ」
嫌味の言い合い。
そこに込められた殺気は、普通の人間には決して出せない領域の物。
彼らだからこその、殺気。
「貴方、は……?」
「別にオマエを助けに来た訳じゃねェンだがな。成り行きで助けることになるンだよ。……オマエが死ぬと、悲しむ女が居るからなァ」
「女……?ミ、ミサカは単価十八万円で幾らでも製造できるクローン体で」
代わりは幾らでも居るのだから、貴方の行動に意味は無い。そう伝えようとしたのだが、
「一つ、教えてやンよ」
「!?」
襟首を瞬時に捕まれ、後ろに投げ飛ばされる。
後ろに十メートルは飛ばされ、ミサカは地面に滑り込む。
そちらを見ずに、彼は前を、上を、翼を広げた最強と呼ばれし者を見る。
「そう簡単になンでも割り切れねェから、人間なンだよ」
例え、周りがどれだけ美琴を人間扱いしなくても、一方通行は彼女を人間として見る。
そして彼女のような人間は、ここでくたばっていいような人間では、決して無い。
決して、無い。
「下がってろ」
それで終わりとばかりに一方通行は意識を後ろにいるミサカから外す。
狙いは、敵の殲滅。実験の、停止。
「なぁ、一つ聞かせろ」
「あァ?」
「どうしてお前は、他人のために其処までする?」
上から投げかけられた質問に、一方通行はハッ、と呆れたように息を吐いてから、
「目の前で不幸な目にあっている人を見捨てれないから、だよ。クソッタレ」
最後の言葉は、誰に言ったものなのか。
そのセリフを聞いて「そうか」と少し笑いながら垣根は返す。
「オマエこそ、なンで絶対を求めてンだよ」
「つまんねぇ過去のせいだよ。この学園都市に幾らでもある、な」
「そうかい」
そこまで言って、彼等は、
「終わらせてやンよ『未元物質』」
「終わるのはテメェだ『一方通行』」
大地を足で蹴り、鋼の箱を吹き飛ばし、
二人は、激突した。
終わりです。
後編もお楽しみに!
沢山のレス、ありがとうございます!
これからも、よろしくお願いします!
乙!
完全に上条さんポジなのに一通さんの言動に違和感がないのが凄いな
後編も楽しみにしてます!
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仕事が速いなwwww
こんな文章を早く作れる>>1が羨ましいわwwww
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乙うううううううううう
うわああああああああああ後半が待ち遠しいいいいいいい
いつだあああああああ
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一方通行かっけぇぇぇぇぇぇぇええええええ
一方通行が大能力者の理由付けがすごい納得できるものだった!
確かにあれは、トラウマか原作みたいなひねくれ者になるよな普通に
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確かにあれは、トラウマか原作みたいなひねくれ者になるよな普通に
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おぉ!復活した!
いやー、一瞬焦ってまた携帯壊れたのかと……
後編の投下は今日の夜十時までか、明日になりそうです。
では。
いやー、一瞬焦ってまた携帯壊れたのかと……
後編の投下は今日の夜十時までか、明日になりそうです。
では。
楽しみにしてるよ
一方さんメインの話で上条さん出ると
その後の展開が怖くなるな
一方さんメインの話で上条さん出ると
その後の展開が怖くなるな
夜の学園都市。
暗い暗い闇の世界。
その世界で、
「アアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」
喧嘩を超えた『戦闘』が、起こっていた。
舞台はボンヤリと街灯の光が照らす操車場。
戦いし戦士は、白き翼を持つ者と、白き髪を持つ者。
人間の限界を超えた者同士の、戦い。
夜の学園都市。
暗い暗い闇の世界。
その世界で、
「アアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」
喧嘩を超えた『戦闘』が、起こっていた。
舞台はボンヤリと街灯の光が照らす操車場。
戦いし戦士は、白き翼を持つ者と、白き髪を持つ者。
人間の限界を超えた者同士の、戦い。
ブオッ!と何かが空気を裂き、空を飛ぶ垣根に飛来する。
垣根はそれを翼の一振りで薙ぎ払った。
そして巨大な何かは大地に轟音を立てて墜落する。
それは周りに幾らでもあるコンテナの一つ。
重さがトン単位の物体だが、彼等にとっては単なる武器の一つに過ぎない。
「チッ!」
垣根は舌打ちを一つ。
今投げられたコンテナの影に隠れるように、
「ラアアアアアッ!!」
一方通行は接近していた。
しっかりと拳を握り、振りかぶる。
その拳は放たれるが、翼の壁に防がれた。
「ウォォォォォォォッ!!」
「うぜぇんだよ!」
防がれるのもお構いなしに、彼は拳を放ち続ける。
徐々に翼の羽が取れてゆき垣根の姿が見えてくるが、
「あめぇ!」
垣根もただ殴られ続けるだけでは無い。
他の翼を刃の様にし、一方通行の周りを囲う様に襲わせる。
その翼の檻に閉じ込められる前に、一方通行は重力のベクトルを操作。
空中であり得ない動きを見せ、後ろに移動する。
「ーっ!」
そして大地に着地。
だが一方通行はすぐ横に飛んだ。
何故なら、無数の白い羽の嵐が迫っているのが見えたから。
ズダダダダダッ!!とまるで紙を貫くダーツのように白い羽が地面に突き刺さって行く。
ソレだけでは無い。
突き刺さった大地がどんな『非常識』を受けたのか、熱によりとけてゆく。
「かわしてんじゃねぇよ!」
「オラァ!」
上空からの文句を無視し、一方通行は大地に足を叩きつける。
その瞬間、地面にしかれている砂利が一斉に真上へと浮かぶ。
大量に舞い上がった砂利達へと一方通行は回し蹴りを繰り出した。
足の動きにより出来た暴風が、石を纏って上空へと突き進む。
その石と風の壁に、垣根も翼による風と鉄よりも硬い羽で応戦する。
空中で石と羽が、暴風と暴風がぶつかり合い、凄まじい音を立ててバラバラに拡散した。
ソレによって石と羽の雨という世にも奇妙な光景が展開されるのだが、その頃には二人は五十メートルは離れた空中に移動しており、戦っていた。
「グッ、ガッ……!」
「おっ、ちっ……!」
六枚の翼が一方通行を切り裂こうとするが、一方通行はそれを躱しながら拳を放つ。
ガッ!ギガッ!ブアッ!と、翼と拳の打ち合いがまるで漫画のように、辺り一帯に衝撃波を撒き散らしながら何合も続いていく。
「やるなぁ一方通行!反射が使えないってのに、よく突っ込めるもんだ!」
「オマエ、なンでソレを……!?」
「リベンジして来そうだったからな!気晴らしにテメェの資料を見てたんだよ!」
「!」
垣根は蹴りを放ち、一方通行は目の前で腕をクロスさせて防いだ。
だが吹き飛び、地面へと落とされる。
「反射も使えねぇ欠陥能力者が俺に勝とうなんざ、到底無理なんだよ!」
「ハッ!分かンねェだろォが!」
地面に着地した一方通行は風のベクトルを操作し、竜巻を作り上げる。
そして垣根に向かって飛ばし、自分は近くのコンテナの山の頂上に一っ飛び。
垣根はまたもや舌打ちしてから、翼を振るう。
瞬間、空気が何故か弾け、大爆発が起きた。
当然、垣根に近付いていた竜巻はそれに打ち消される。
「……」
コンテナの頂上に立ち、目の前に広がる黒煙を見ながら一方通行は警戒を続けた。
一方通行の『未元物質』への作戦。
それは躱す、もしくは打ち消し合うという物。
一方通行の力では垣根の能力による『非常識』の法則による攻撃を防ぐことが出来ない。
ならば、躱し続けるか、相殺してやればいい。
事実、それで一方通行は渡り合っているのだが、
(……このままだと)
一方通行の、戦闘者としての勘が告げる。
(……負ける)
ボッ!と黒煙のカーテンを縦に裂き、全長百メートルはある翼の刃が振り下ろされる。
それを右に飛んで躱す。
誰も居ないコンテナの山を中腹まで一気に翼が切り裂いた。
「一方通行ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「未元物質ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
片方は風のベクトルを操作。
片方は翼を一つに束ねて振るう。
何度目か分からない轟音が、夜の戦場に響き渡った。
■
「アンタ!」
「お、姉様……?それに、貴方は……」
「御坂妹!一方通行は!?」
一方、操車場の入り口付近で三人はあっていた。
一人は化け物の領域に踏み入れし少女。
もう一人はその少女の複製(クローン)たる少女。
そして、もう一人はーー
「一方通行……白い髪の少年なら、あちらで」
ドゴオォォォォォォォォォンッ!!
「っ!?」
ミサカが指差した先から爆発音が轟く。
それによる地面の揺れを感じながら、
「ッ!」
彼女、御坂美琴は走り出した。
何が出来るのか分からないし、足手纏いになる姿しか思い浮かばない。
だけど、行かなければ、いや、行きたい!
「あっバカッ!クソ!子猫を頼む!」
「えっ?」
走り出した美琴を追うべく、彼は何かを呆然としていた少女に放り投げた。
それは黒い生き物。黒猫。
慌てて少女はそれを抱き抱える。
無事に掴めたことにホッと息を吐き前を見る。
生き物を投げるなどという動物愛護団体に殴られそうな行為をした少年は既に遠くへと行っている。
自分の親友を、助けるために。
「……全く、子猫を投げないで下さい、とミサカは呆れながら呟きます」
自分の電磁波のせいで少し震えている子猫を地面に下ろし、
「少し待っていて下さいね、とミサカは子猫に謝罪してから走り出します」
彼女もまた、戦場へと走り出した。
「ハァッ、ハァッ……!」
美琴は走る。
足がもつれかけるが、なんとか堪えて走り続ける。
息は荒く、その表情は焦燥に染まっていた。
彼女は、走る。
(私の、せいだ……!)
心の中で、彼女は自分を責める。
本来、彼女は死ぬつもりだった。
『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の計算結果が“間違っているかもしれない”と思わせるために垣根帝督に挑み、無様に一手か二手で殺されるつもりだった。
だけど、怖かった。
覚悟を決めたなんて言っても、怖かった。
死ぬのなんて、嫌だった。
皆に会えなくなるのも、綺麗な景色が見れなくなるのも。
死ぬのなんて、怖かった。
だけど、胸の内にその思いを閉じこめた。
自分は救われてはならない。
妹達が生まれたのは、自分の責任だからだと。
誰にも頼ってはいけない。“化け物”の問題に、関わらせてはならない。
なのに
“彼”の前だと、隠せなかった。
胸に閉じこめた思いが勝手に溢れ出て来て、叫んでいた。
助けてと。
そして、何故か彼は実験のことを知り、
自分のために、命を賭けている。
自分なんて、“化け物”のために。
「……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
レベル5とか、お嬢様とか、そんなのを無視して普通に接してくれた彼。
自分をいつも子供扱いして、バカにして、一人の御坂美琴という“人間”として接してくれた。
そんな彼を、失いたく無い。
絶対に、失いたく無い。
「……オイ!」
後ろから声が聞こえるが無視。
コンテナとコンテナの間の通路を走り抜け、彼女は線路がある空間へと飛び出した。
彼が居るはずの空間へと。
そこで、見たのは。
■
「ラアァッ!」
爆発の所為で舞い上がった白い砂煙を、一方通行は右腕を振るうことで一気に吹き飛ばす。
「ッ!?」
そしてしゃがみ、前へと地面と並行になりながらも飛ぶ。
飛んだ瞬間、先程一方通行が立っていた場所を横切るように烈風が通過した。
「おいおい……本当にやるじゃねぇか、一方通行」
「オマエもな」
地面を手でついて反動で立ち上がる。
一方通行の目に映ったのは、此方を向いて余裕の笑みを浮かべる垣根。
対する一方通行には余裕など欠片も存在しない。
戦況は拮抗しているように見えて、片一方に傾いていた。
「でもさぁ、
もう終わらせるわ」
瞬間、一方通行を“何か”が襲った。
「ギッ!?」
ズシン!と体にかかる力に一方通行は立ったまま身動きが取れなくなる。
一方通行だけでは無く、垣根を含む半径二十メートル程の大地が陥没した。
“何か”の正体、それは重力。
だが、只の重力では無い。
『未元物質』による、おかしな重力。
「んじゃ、死ねよ一方通行」
「ーッ!」
恐らく自らの未元物質で重力を相殺しているのだろう。
重力を感じさせない動きで右手を振るう。
それに連なるように翼が動きーーーー
ザシュッ!!
身動きが取れない一方通行の体を、いとも簡単に切り裂いた。
「ん?体を空気のベクトルを操作して少し後ろにやったか?だけど致命傷だろ、それ」
切った翼から伝わった感触に、垣根はそう言う。
だが、一方通行の耳には入らない。
一方通行は視界がブレるのを感じ、体から力が抜けて行く感覚を覚えながらゆっくりと、膝を付く。
膝を付いた地面は、何故か紅かった。
(?……あァ、そうかァ)
それに疑問を持つが、朦朧とした頭で一方通行は答えを弾き出す。
(これ……俺の血じゃねェか……)
そこまで考えて思考が停止し、彼は前へと、自分の傷口から溢れる血に染まった大地へと倒れこむ。
「い、いやぁあああああああああああああああああっ!!」
意識が闇に呑まれる前に、あの少女の声が聞こえた気がした。
悲しい、悲しい、悲鳴が、聞こえた気がした。
■
(嘘だ、嘘だ嘘だうそだうそだうそだ。これは夢、夢なんだ)
彼女は顔から表情を消す。
美琴の脳内は早々に現実を否定していた。
だけど、現実は確かにそこにある。
彼女は見たのだ。しっかりと。
彼が、天使のような白い翼に体を切り裂かれるのを。
多分、彼女は心のどこかで期待していたのだろう。
彼は負けない。彼は勝つと。
だがそんな幻想は粉々に打ち砕かれ、彼女の心も砕けちった。
「一応ほっといても死ぬとは思うが……止め刺しとくか」
「!」
何気なく、切り裂いた男が発した言葉に美琴は現実に戻ってくる。
砕けた心をかき集め、必死になって走る。
だけど、男に、垣根に攻撃したのは、
「テ、メェエエエエエエエエエエエエッ!!」
白い髪の少年の親友だった。
彼はその右拳を垣根に向かって放つ。
「あん?また新しい部外者か?」
垣根は自分に迫るそれをなんら脅威に思わず、翼を間に挟むが、
バキィ!と一方通行でも中々貫けなかった翼の壁を簡単に貫かれ、垣根は殴り飛ばされた。
「な、があっ!?」
地面に滑り込むように倒れ、改めて垣根は己の『未元物質』による翼を突き破った相手を見る。
「テメェ……誰だ?」
「オマエが傷付けやがった奴の、友達だぁあああああああああああっ!!」
起き上がる垣根に再度彼、上条当麻は己の右腕を振るう。
全ての異能を打ち消す、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を。
「嫌だ……なんで……なんで止まらないの……」
上条が垣根と戦っている間、美琴は一方通行を仰向けにし、傷口を抑えていた。
だがどうやっても、彼の体からは血が溢れ続ける。
彼の白い肌が、更に白く、青くなってゆく。
目は、閉じられたまま。
「早く……早く病院に……!」
美琴は一方通行を運ぶべく、周りを見渡す。
彼女一人では一方通行を運べない。
妹達か、上条に頼る必要があった。
しかし、世界は甘く無い。
「ガハッ!?」
「ぐぅっ!?」
「後で幾らでも相手してやるから大人しくしてろ」
あの、一方通行を切り裂いた翼が上条を吹き飛ばし、その斜線場に居たミサカとぶつかり一緒に吹き飛ぶ。
そしてコンテナの壁にかなりのスピードで叩きつけられた。
それを横目に見ながら垣根はジャリ、ジャリ、と地面の小石を踏みしめ一方通行を抱える美琴へと近付く。
「さて……超電磁砲、どけ」
未知の物質、非常識で構成された翼を見せつけながら、彼は美琴に言う。
「……」
美琴は、無言。
彼女は自分が憎かった。
問題ばかり起こしておいて、それに他人を巻き込んで、そして、“化け物”と呼ばれながらも何も出来ない自分が憎かった。
自分は、死にそうな一方通行を助けることも、目の前の“化け物”を倒すことも出来ない。
だから、
「……おい、なんの真似だそりゃ?」
「……」
彼女は一方通行を横たえ、垣根の前に両手を広げて立った。
その制服や体は所々一方通行の血によって濡れている。
「盾のつもりかよ?そんなの無駄なのは知ってんだろうが」
呆れたような垣根の声に、美琴の恐怖心が同意する。
前に戦った際、垣根の白い翼に電撃も砂鉄の剣も、超電磁砲(レールガン)さえ、いとも簡単に防がれた。
だけど、
「……」
キッ、と美琴は垣根を睨み続け、垣根の前に立ち塞がり続ける。
その姿に、
「ハァ……」
垣根はため息を吐いた。
彼にとっては美琴の行動は全く無意味な物だ。
彼女一人の力で止められるような最強では無い。
「なぁ、最後にもう一度だけ聞く。どく気は無いんだな?」
「……」
美琴は無言。
だが、その垣根を睨む表情が全てを語っている。
「そうか……」
垣根はその返答に、
「じゃあ一緒に死ねよ」
巨大な翼で答えた。
一気に頭上に伸び、曲がって白い鋭利な翼の先が美琴を、その後ろに横たわる一方通行を貫かんと超高速で迫る。
迫るそれを見て、美琴はせめてもの抵抗をしようと、能力を行使した。
世界に轟音が鳴り響き、大地が揺れ、何かが飛び散った。
■
意識が、朦朧とする。
誰かの、声が聞こえる。
「じゃあ一緒に死ねよ」
何か、大きな物が彼女に迫るのがぼやけて見える。
「……ッ」
一瞬、彼女の顔に恐怖が浮かぶが彼女は立ち塞がり続ける。
能力を使おうとしているのだろうか。前髪から電気が散る。
彼女は、立ち塞がり続ける。
目の前に、明確な死が待っているのに。
ーー待てよ……
ーーまだ……
力を込める。
自分だけの現実から、能力を引き出そうと演算を行う。
ふと、何かとっかかり、いや、鍵を見つけた気がした。
イメージは、ボロボロで今にも壊れてしまいそうな軟禁錠。
ーーここだ……
確信する。
この先に、今もっとも己が求める物がある。
だから、手を掛けた。
そしたら、
(待て、そこから先に行けば引き返せなくなるぞ)
本能の声、とでも言えばいいのだろうか?
忠告が聞こえる。
考える。
考えて浮かんだのは、彼女の笑顔。
だから、“彼”は
ーーーーそれがどうした、クソッタレ
鍵を、叩き壊した。
「な、に?」
垣根は呆然と、目の前の現実を見て呟く。
彼の背に生えていた筈の白い翼は、全て轟音とともに消し去られていた。
辺りには残骸たる白い羽が飛び散っている。
消し去ったのは、少女を守るように立つ、白い髪に紅い瞳を持つ少年。
その背中から生えし、黒き翼。
それは垣根が持つ翼とは決定的に違っていた。
まるで岩から削り出されたような、刺々しい姿。
まるで煙のように実態が無いように感じる雰囲気。
その翼を生やした背中を後ろから見る美琴は、不思議と恐怖しなかった。
何故なら。そこから感じられる雰囲気が、暖かったから。
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