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    元スレ上条「麻利ってもう温泉に入っても大丈夫か?」麦野「温泉?」

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    301 = 214 :

    @対局室

    東一局・親:優希

     六巡目

    優希「リーチだじぇっ!!」タァンッ

    シロ(んー、そろそろかなと思ってたけど、やっぱ来ちゃったか……)

    透華(きー! 目立ちやがって、ですわ!! 原村といい嶺上使いといい、清澄の一年は本当に腹立たしいですの!!)

    優希「対抗戦最初のリーチはいただきだじぇ!! そしてこの対抗戦――東二局は来ないッ!
     最後のリーチも私がいただいて、一年が最強であることを世に知らしめてやるじぇ!!」

     優希、トラッシュトークッ! 池田、苦笑ッ!!

    池田「いや……いくらお前が強くても、さすがにそれは不可能だし」

    優希「むっ……? 風越池田、いまさり気なく私のことを『強い』って言ったか?」

    池田「まあな。あたしがこんなことを言うのはアレだけど、お前ら清澄は普通に強いし。そりゃみんな認めてることだ。インターハイはマグレで優勝できるような大会じゃない。
     そんなインターハイの優勝校で先鋒を務めて……チャンピオンとも立派に戦ったお前のことを、強くないなんて思ってるわけないし」

    優希「今日は妙に話がわかるじゃないか、池田! その通りだじょ! 私は強いんだじょ!! もっとちやほやされていいと思うんだじょ!」

    池田「ああ……ま、そうかもな」

    シロ(話してないで早くツモれって。いや、それとも……ツモる必要がない…………とか……?)

    302 = 214 :

    池田「けど悪いな、清澄の! お前の先制リーチはお預けだし! 東二局もすぐに来るし!! だから――今すぐその目障りなリー棒を引っ込めろし!!!」

    優希「は……?」

    池田「ロンッ!! 平和赤一……2000!!」

    優希「じょーーーーーー!!!?」

    シロ(ふーん……風越・池田……知らない選手だったけど、東場の片岡の速さを上回れるのか……長野は魔物の巣窟だなぁ)

    透華(池田華菜……衣相手の情けない姿ばかり見ていましたけれど、こうして戦ってみるとなかなか厄介な相手ですわねぇ……。負けちゃいられませんわ!)

    池田(我ながらダサい和了だなぁ……。いつもなら先制リーチが入っても和了り拒否して高めを狙うんだけど。
     清澄の片岡……こいつにそれは通じないだろう。ここで和了っとかなきゃ……きっと先に和了られてた。それくらい東場のこいつはブレなく強い……けどっ! 華菜ちゃんはもっと強いんだし!!)

    優希(池田ァ!! やってくれるじぇ!! 東場でこのまま負けるわけにはいかない……すぐ巻き返すじょ!!)

    タ:98000透:100000白:100000池:102000

    303 = 214 :

    @実況室

    すばら「決まったああああ!! 学年対抗戦最初の和了りは――混成チーム先鋒・池田選手のダマ平和っ!!」

    「セコくて地味な和了りだな」

    初瀬「池田選手は実は四巡目からテンパイしていましたよね。どうしてリーチをかけなかったんでしょうか?」

    「もっと高めを狙える……そう考えたんでしょう」

    初瀬「あ、いえ、それはわかるんですけど……。でも、あの形から狙える高めって要するに断ヤオですよね?」

     池田手牌:二三四[五]六七45⑦⑧⑨②②:ロン3:ドラ③

    初瀬「この手で六筒を待つくらいだったら、先制リーチを掛けて裏を狙ったほうが無難だと思います。
     確かに断ヤオがつけばリーチツモで満貫に届きますが、今みたいに手替わりを待っている途中に和了り牌が出てきたら、せっかくの満貫もたったの2000点にしかなりません。
     なら、リーチを掛けて3900を確定させておき、満貫は裏ドラ期待……少なくとも、私ならそう打ちます」

    「初瀬さんの意見はもっともだな。筋は通ってるし、かなり現実的だとオレも思う。で、それに白糸台の三年生はなんと答える?」

    「初瀬さんの思う『狙える高目』と、池田選手の思う『狙える高目』が、同じだとは限らない」

    初瀬「えっ……? でも、一通や三色は面子を崩さないとダメだし……一盃口も遠過ぎますよ?」

    「いや、もっと簡単な方法でいいんですよ。手っ取り早く飜数を上げられる方法――例えば、雀頭にドラを重ねるとか、五索を赤ドラに切り替えるとかね」

    初瀬「そ、そんな都合よく引けますか?」

    304 = 214 :

    「さあ、どうでしょう。ま、仮に赤五索、六筒、三筒、三筒と都合よく引いたとしましょう。そうすれば、あの2000の手がたった四巡で断ヤオ平和ドラ二赤二――ダマッパネに化ける」

    初瀬「いや、確かにそうですけど……」

    「で、万が一一発ツモなんてことになれば、あっという間に倍満です。先制リーチで手堅く3900を狙うか、数巡待って最大16000をものにするか……池田選手は恐らく後者を狙っていたんだと思います。
     『裏はめくらないでおいてやる』とか、そんなことを言いそうな顔をしていました」

    初瀬「信じられません……」

    「信じる信じないはまた別の話ですよ。ただ、自分の手がどれくらい高い手になるか、今見えている手にどんな可能性があるか――そういうイメージをどれだけ具体的に描けるかで、実力に大きな差が生まれます。
     池田選手はたぶん、そういうイメージ力に優れた選手なのだと私は思いますね」

    「言い得て妙だな」

    すばら「すばらっ!! たった一度の和了りを見ただけでかなり深いところまで切り込んでくれました!! これが白糸台高校のシャープシューター!! 目の付け所がシャープです!!」

    「初瀬さん、麻雀はより多く点を稼いだ者が勝つ競技です。あんまり早い段階で自分の手を見限っては手牌が可哀想ですよ。狙える高めはどんどん狙ったほうがいい」

    初瀬「勉強になります!!」

    すばら「さあ! そうこうしている間に東二局がじわじわ進行しております!!!」

    305 = 92 :

    咲ss支援

    306 = 214 :

    @対局室

    東二局・親:池田

     七巡目

    優希(タコスチャージもばっちり……配牌も三色確定ドラ二……勢いは削られてない……でもあと一歩テンパイが遠いじょ)タンッ

    池田(清澄はまだ張ってないのか? それともダマで十分な手だとか……。ま、どっちだったとしても押せ押せだしっ!!)タンッ

    シロ(んー……清澄はそろそろ危ないかな……風越さんはまだ……龍門さんは……果たしてどう出るか)タンッ

    透華(さあさあ、いらっしゃいましっ! と……来ましたわねっ!! タンピンテンパイ……しかし、テンパイ即リーはさすがに早計もいいところ。
     状況はまだ動くかもしれませんし、三色への変化も決して無茶ではない……。がっ!! しかし、ですわ!!)

     透華のアホ毛、回転ッ!!

    透華(ここでリーチをしないわけにはいきませんわ。先制リーチにはそれだけの価値がありますの。それに、3900だってわたくしにとっては十分大きいですわ。今は満貫やハネ満は必要ない。
     何より……このままダマで通して……もしなんの変化もなくロンでもしようものなら……さっきの風越とどん被りですわ!! しかも点数まで風越と同じ!
     どうせ解説の純が『セコい』だの『地味』だのこき下ろすに決まってますの!! そんなことになるくらいなら……わたくしが『対抗戦初リーチ』をいただきますわよっ!!)タンッ

     透華、力強く、捨て牌を曲げる!

    透華「リーチですわっ!!」スチャ

    307 = 198 :

    もう速報に来てくれよ…

    308 = 214 :

    優希(じょーー!? 初リーチ盗られたじぇ!? でもこっちだってイーシャンテンだじょ。追っかけリーチしてやるじぇ!!)

    シロ「ポン」タンッ

    透華(一発消されたですわ!!)

    優希(ツモ飛ばされたじぇ!!)

    シロ(これで流れてくれればいいけど……そうはいかないか……?)

     透華、ツモ牌を見て、歯軋り。

    透華(く~~~宮守の! なんだか手の平の上で転がされたような感じがしますわ! けど……まあ、もらえるものはもらっておきますの!)

    透華「ツモですわ。リータンピンツモ、裏は……なし。1300・2600ですの」パラララ

    シロ(うわ、和了られたか……これは一番ダルいパターンになりそうだな)

    優希(じょー……ツモさえ飛ばされなければ……!)

    池田(束の間のトップだったな。ま、清澄がいる以上、東場が安く早く回るんなら、それはそれで悪くない)

    タ:96700 透:105200 白:98700 池:99400

    309 = 214 :

    @実況室

    すばら「二年選抜・龍門渕選手! 手堅く5200の和了りで暫定トップに立ちました!!
     これは先ほどの池田選手とは対照的に、龍門渕選手はテンパイ即リーしてきましたね。井上さんはチームメイトとして、この和了りをどう評価しますか?」

    「ただ目立ちたかっただけだと思うぜ。間違いなく『対抗戦初リーチ』がしたかっただけだな。あと、ダマで和了ったらさっきの池田と被ると思ったとか。
     ま、あそこは先制リーチがデジタル的にも正解だったんじゃねえの? 変化はできるが、現実的には期待値が低過ぎる。5200なら上出来だ」

    すばら「目立ちたい欲求とデジタルを両立した和了りということですね!」

    「透華らしいっちゃらしいな」

    初瀬「あの、見てて一つ気になることがあったんですけど」

    すばら「はいっ、どうぞ!」

    初瀬「今の小瀬川選手のポンなんですが……あれは一発消しにしては少々雑ではなかったですか? あのポンで小瀬川選手はほぼ役がない状態になってしまいました。
     普通、一発消しをするにしても、自分が和了れる形を残すと思うんですが……」

    「役無しでも強引に鳴くことはあるぜ。相手にいい流れがいきそうだったら、オレは鳴く。ただ、これはオレだからできることであって、あんま一般的じゃない。
     小瀬川ってやつも、オレ寄りの人間なのかもな」

    初瀬「流れ……オカルトですか。私は苦手分野ですね。うまくできる気がしません」

    「私もオカルトは苦手ですが、今の小瀬川選手の鳴きなら、理解できなくもないですよ」

    すばら「と、言いますと?」

    310 = 214 :

    「いや、単純な経験則です。今の龍門渕選手の和了り牌――あれは元々片岡選手のツモ牌であり、同時に有効牌でした。
     仮に、小瀬川選手の鳴きがなければ、イーシャンテンだった片岡選手は龍門渕選手の和了り牌を手牌に組み込んで、追っかけリーチに走ったでしょう。
     小瀬川選手はむしろそちらを警戒していたんじゃないでしょうか」

    井上「ありえる話だな。実際、片岡と小瀬川はインターハイで対戦してる。東場の片岡を直に感じたことがあるなら、オカルトに頼らなくても張ってるか張ってないかくらいは経験的にわかる……かもしれねえ」

    初瀬「確かに、対戦しているうちに相手の癖や打ち筋が見えてくる、というのはわかる気がします。じゃあ、さっきの小瀬川選手は、過去の対戦経験から、片岡選手の放つ危険な気配を感じ取っていたんですね?」

    「そんなところだと思います。で、龍門渕選手のリーチが入ったところで、小瀬川選手はそれを利用することにした。
     ツモ番を飛ばして片岡選手を焦らせ、他家のリーチというプレッシャーで以てペースを狂わせ、あわよくば流局に持ち込む。
     流局であれば、役はなくとも形式テンパイさえ作っておけばマイナスにはなりません。ま、鳴いた直後に龍門渕選手が和了ったことについては、小瀬川選手も予想外だったのかもしれませんが」

    「言われてみりゃ、和了った透華を面倒臭そうな顔で見てたっけな」

    初瀬「お二人とも……よく対戦者を観察していらっしゃるんですね」

    「オレは得意だからな、そういうの。場の流れも読めるし」

    「対戦者をよく観察するのは勝負の基本ですよ、初瀬さん。私たちが戦っているのは機械じゃない。生きた人間です」

    (機械みたいな打ち方をする最強のデジタルが一人いるけどな)

    「かく言う私も、先のインターハイでは自分でも気付かないような癖を見抜かれて苦戦しました。
     初瀬さんも、敵の牌譜を見るときは、時間の許す限り映像で確認したほうがいい。得られる情報はただの紙よりずっと多いはずです」

    (映像を見てるほうが逆に混乱を招くステルス女もいたっけな)

    初瀬「勉強になりますっ!!」

    すばら「お三方!! お勉強もすばらですが!! 東三局が開始早々とんでもないことになってますよ!?」

    311 = 214 :

    @対局室

    東三局・親:シロ

     洗牌中。

    シロ(清澄は当然要警戒だけど……長野の二人も気を抜ける相手じゃない……困ったな。アミダで負けたから出てみたものの……下手な全国大会よりよっぽどダルいぞ……これ)

     浮き上がる山牌。回る賽。

    シロ(先鋒戦に出たのだって……さっさと終わらせてあとはのんびり観戦したかったからなのに……裏目裏目だなぁ。いや、それとも、この卓は今日のオーダーの中ではマシなほうなのか……? わからない……)

     配牌、理牌。

    シロ(ただ……一つ言えることは……)

     シロ、視線を手牌から、卓を囲む面子へと向ける。

    池田「龍門渕っ! 初リーチくらいで調子に乗るなし! すぐにトップ奪い返してやるから覚悟しろし!!」

    透華「好きなだけ吠えてるといいですわ、風越。そのまま吠え面かかせて差し上げますわよ!!」

    優希「お前たちっ! もう私に勝った気でいるとはおめでたいやつらだじょ! 東場はまだ終わってないじぇ!! ここから先は、ドンタコス優希の独壇場だじょ!!」

    シロ(この卓の面子が今日トップクラスにウザいのは間違いない…………豊音じゃないけど……ちょーダルい……もう帰りたい)

    312 = 214 :

     シロ、溜息とともに、第一打。

    シロ(別に私が頑張らないでも豊音が適当にやってくれるから先鋒戦は大丈夫だろうし……このままゆるゆる打ってようかな……)

     透華が牌を切り、ツモ番がシロの対面に坐す優希に回る――!

    優希「ふっふっふ……」

    シロ(何笑ってんだ……? って、まさか……)

    優希「お前たちの活躍もここまでだじぇ! 東場の神が私にもっと輝けと囁いているのが聞こえるじょ!!」タァン

     優希、その第一打を――曲げるッ!!

    優希「対抗戦……最初で最後のダブルリーチだじぇ!!」

    シロ(いや、最後のかどうかはわからないだろ……)

     そして、ツモ番がシロに戻ってくる。

    シロ(こんなの振り込んだってただの事故だけど……清澄の場合は振り込まなくてもツモってくるだろうからなぁ。
     一発親っ被りなんて勘弁だし……うーん、せめて被害を最小限に……この辺りで、どっすか……?)タンッ

     シロ、強引に中張牌を切る。ロンの声はかからない。

     同様に、鳴きの声も入らない。

    シロ(……………………あれ?)

    313 = 1 :

    麻利「ん ん」ゴク ゴク

    麦野「よしよし、そんなにおなかへってたか」

    打ち止め「わぁ~~」

    番外個体「あかちゃんがおっぱい飲むのみるとなんかこう・・・」

    打ち止め「あったかくなるね」

    麻利「ん ん」ゴク ゴク

    麦野「見られててもおかまいなしか、私は恥ずかしいというのに」

    番外個体「命を感じるって言っていいのかな?ちょっと恥ずかしいけど」

    打ち止め「ないない、恥ずかしくなんてないよってミサカはミサカは和んでみる」

    麻利「ぷは」

    麦野「もう終わり?全部吸い出されるかと思ったわよ~?」

    麻利「あぁぁぅ」

    番外個体「笑ってるね」

    打ち止め「うん、すごく愛らしい」

    314 = 214 :

    @実況室

    すばら「小瀬川選手っ!!! 片岡選手のダブリーに対していきなりド真ん中から切っていったぁ!! 全く引く気が見られませんっ!!」

    初瀬「これは……でも、ただ強気というにはやっぱり少し違うような」

    「そうだな。小瀬川は今度こそ一発消しをしたかったんだと思うぜ。つーか、第二打であんだけ的確な牌が切れるとか、あいつどこまで見えてんだよ」

    「偶然もあるのでしょうが、小瀬川選手の一打は、確かに他家が鳴けるところを出しました。
     ですが、どうやら他家がその意図を理解していないようですね。ぴくりとも反応しません」

    「ま、あいつらならそうだろうなぁ。小瀬川白望は判断を誤った。龍門渕透華と池田華菜に共闘なんて概念はない。目立ちたがり屋と、自己中バカだからな」

    すばら「さあ!! 小瀬川選手のすばらプレーも不発に終わり、清澄が一発目をツモります!! 果たして本当にここで和了るのかっ!!」

    315 = 214 :

    @対局室

    シロ(もしかして……こいつら……!)

    透華(ダブリーなんてただの運。だからなんだって感じですわ。安牌が増えるのを待ちつつ、いつも通りに和了りを目指しますわよ!!)メラッ

    池田(恐がってばかりじゃ東場の清澄には勝てない! ダブリーなんて華菜ちゃんが和了って蹴散らしてやるし!!)ニャー

    シロ(こいつら……! 自分が和了ることしか考えてない……!?)

     シロの思い、届かず! 優希、ツモ牌を見て、高らかに笑う!

    優希「来たじぇ来たじぇー!! お前たちっ! 反撃の狼煙をその目に焼き付けろ!! タブリー一発ツモドラ一……裏一!! 3000・6000だじょ!!!」

    シロ(ほーらツモったー……親っ被りとか……最悪だ……ダル過ぎる)

     頭を抱えるシロ。

    シロ(こうなったら……どうしよっかな……うーん……なんか変な気がするけど……今よりはマシだ……こっちも本気でいこう……)

     のらりくらりと先鋒戦を終わらせようとしていたシロ。が、あまりに空気が読めない面子に囲まれて、むしろ全力で戦ったほうがダルくないと方針を急転換!!

     あくまで自分のことしか考えていない長野勢、その変化には気付かない!

    シロ(こいつら全員……ヘコませる……!!)ゴゴゴゴゴゴ

     岩手の眠りたがりの獅子が、ここに目覚める!!

    タ:108700 透:102200 白:92700 池:96400

    316 = 214 :

    東四局・親:透華

    透華(さあっ! この親で稼ぎますわよ!)タンッ

    優希(東場でトップを譲るわけにはいかないじょ……この局もいただきだじぇ!)タンッ

    池田(龍門渕も清澄も配牌からよさげな感じだな……けど、実は華菜ちゃんもいい感じなんだし!)タンッ

    シロ(…………)タンッ

    317 = 214 :

    @実況室

    すばら「長野勢っ! 全員が開始早々リャンシャンテンと好配牌に恵まれています! まだ和了りのない小瀬川選手には苦しい展開ですね!」

    初瀬「小瀬川選手はさきほどから防戦一方ですね。どうしたんでしょうか」

    「宮守の小瀬川選手はこの対抗戦に乗り気じゃなかったそうですよ。クジで負けたからここに来た、と姉帯選手が言っていました」

    初瀬「クジって……じゃあ、小瀬川選手はこのまま何もせずに半荘を終えるつもりなんですか?」

    「ああ……だからあんなやる気のねえ打ち方だったんだなぁ。原点で姉帯に回せば十分って感じだったぜ。ま……少なくともさっきまでは」

    初瀬「えっ? さっきまでは?」

    「ハネ満の親っ被り……というよりはその直前の打牌で鳴きが入らなかったこと――あれで小瀬川選手の顔つきが変わりました」

    「長野の面子があまりに空気読めないからキレたんだろ」

    初瀬「はあ……しかし、やる気を出したとしても、現状苦しいことに変わりはないですよね。どうするつもりなんでしょうか?」

    「どうにでもしますよ。ひよっ子三人を黙らせるくらい、小瀬川選手には造作もないことでしょう」

    すばら「おおおおおっと!! 早くも場が動く模様っ!! これはまさに掴み合っての殴り合いとなりそうです!!」

    318 = 214 :

    @対局室

     六巡目

    透華「リーチ、ですわ!!」タンッ

    優希「(龍門渕の親リー……望むところだじぇ! 今度こそ追っかけで粉砕してやるじょ!)こっちもリーチだじぇっ!!」タンッ

    池田「(二人とも仕掛けてきたか。華菜ちゃんもテンパった……ここはダマでは済まされないしっ!)リーチだしっ!!」タンッ

     三家同時リーチッ!!

    シロ(…………)タンッ

     しかし、シロに動揺は見られない!!

     ノータイムで危険牌を手出しッ!!

    透華「(今度こそ一発ツモでしてよ!!)ツモ…………! ならずですわっ!!」タンッ

     透華、一発来ず!

    優希「(二度目の一発いただきだじぇ!!)来るじぇ来るじぇ…………ってなんでそこなんだじょっ!?」タンッ

     優希、一発来ず!!

    池田「はは……お前らじゃ所詮役不足(誤用)なんだし! この華菜ちゃんが一発の見本を見せてやるっ! にゃあ~~~~っ!! …………これじゃないし!!」タンッ

     池田、一発来ず!!!

    319 = 214 :

     三人が三人とも一発を逃し、場につかの間の静寂が訪れるッ!

     それを見計らったように、シロ、盛大に溜息ッ!!

    シロ「はぁぁぁぁ…………」

    透華・優希・池田(溜息!?)

     三人の視線が集まる中、気だるげに山牌へ手を伸ばすシロ。

     ツモを手牌に収め、不要牌を河に置く。

     打ち出された牌は――横向き!!!

    シロ「あのさぁ……熱くなるのは勝手なんだけど……」

     ロンの声は――掛からない!!

    シロ「もう少し静かに打ってくれないかな……ダルいから」

     シロ、点棒ケースから千点棒を取り出して、場に置く。

    シロ「リーチ……誰も和了らないなら、この場はこれで仕切り直しってことで……」

    透華・優希・池田(~~~~!!)

    タ:107700 透:101200 白:91700 池:95400 供託:4000

    320 = 214 :

    @実況室

    すばら「四家立直いいいいいいいい!! 三家同時リーチから、小瀬川選手の機転でまさかの流局ですっ!!」

    初瀬「驚きました……好配牌だった他家の手に追い付くスピードもそうですし、いくら場を流すためとはいえ、あの状況で躊躇なく危険牌を切れる判断力もすごいと思います」

    「さっきまでの小瀬川なら、間違いなくオリて他家が潰し合うのを傍観してただろうな」

    「普通に考えればそれが無難でしょう。打ち合いなら他家で点のやりとりがあるだけで、自分はマイナスにならないですから。
     しかし、小瀬川選手は自分以外の誰かが和了ることをも嫌った。これ以上他家に点を与えるつもりはない、という宣戦布告ですね」

    321 = 214 :

    @三年選抜控え室

    「もう、白望ったらやる気になるのが遅いんだから。困ったもんだわ」

    美穂子(上埜さん……どんどん呼び捨ての人が……私のライバルが……増えていく)

    洋榎「ま、いくらマイナスになろうとうちがなんとかしたるけどなー」

    姫子「私らは反対側のブロックですけん、よう知らんのですけど、宮守の小瀬川さんはどげん強かとですか?」

    初美「うちの姫様相手に区間一位を取ってたですよー。まあ、あくまでただの結果ですけどー」

    「豊音さんにも驚いたけれど、やっぱり宮守のエースと呼ぶべきは彼女じゃないかしら。安定して強いし、結果を残してるものね」

    「なんや、やっぱ強かね。今日の味方はいっぺん打ってみとうやつばっかと」

    セーラ「せやけどなぁ……強い強い言うても清澄の一年は止まらなそうやで。ホンマに大丈夫かいな?」

    「どうでしょうね。初美さんたちが評価してる通り、白望は強いわ。けれど……それで簡単にやられちゃうほど、うちの子たちはヤワな鍛え方はしてないつもりよ」

    洋榎「お前はどっちの味方やねん。……って、おい? 久? どこ行くんやー?」

    「ちょっと野暮用~」

    322 = 214 :

    @対局室

    東四局一本場・親:透華

     八巡目

    シロ(まあ……やる気を出したところで、私は豊音みたいな便利能力を持ってるわけじゃないからなあ……配られた牌と来る牌で戦うしかない)タンッ

    透華「チー、ですわ!」タンッ

    シロ(親の龍門さんがこれで二副露……鳴きを駆使したデジタル打ちか。スピード重視で連荘狙い。この人……天江衣の親類ってわりにはかなり手堅い打ち手なんだな……意外だ)

     シロ、今更ながら、倒すべき他家を観察。

    シロ(天江衣と言えば……こっちのネコっぽいのも縁があるんだったか……県大会の決勝で二度も戦って……二度ともボロ負けしたとか)

    池田「リーチだしっ!!」スチャ

    シロ(けど……このテンパイ率とテンパイ速度……エイスリンほどじゃないけど、十分全国上位レベルじゃないのか……? 火力も高そうだし……こんなやつをトバすとか天江衣ってどんだけ……)ツモッ

     シロ、ツモ牌を手牌の上に置き、長考。

    シロ手牌:三四四五五六七八九九白西西・ツモ二・ドラ一

    シロ(んー……二萬か……ここが分かれ道っぽいなぁ……風越さんのリーチが入ったばかり……なんか引っかかる……ま、じゃあこっちにしてみようか……)タンッ

     シロ、打、四萬ッ!

    323 = 214 :

    @実況室

    すばら「小瀬川選手っ! なんとあの状況から四萬切りいい!! 不可解な打牌ですっ!! 一体彼女には何が見えているんでしょうかっ!!」

    初瀬「池田選手の和了り牌を読んだということでしょうか?」

     池田手牌:①②③一一一三七八九123・ドラ一

    「いや……そういうのとはまた違う気がする。もし池田のリーチを警戒しているなら、まずは池田の安牌である字牌から切ればいい。そうすりゃ清一も見えてくるしな」

    「小瀬川選手はたまにこういうセオリー外の打牌をしますね。急がば回れというか、一見して不合理な打牌を選ぶことで、結果的により高い手で和了ることが彼女の得意技のようです。
     ただ、狙ってやっているというよりは、迷っているうちになぜかそうなってしまう――という感じなのだそうですが」

    「なぜか、ねえ。確かに、小瀬川はなぜか安牌の字牌ではなく四萬から切った……それを今うちの透華がポンしたわけだが、それによって池田の一発は消えた。ツモ順もズレた。結果論だが、随分と流れが変わったような気はする」

    すばら「池田選手はツモならず! そして……注目の小瀬川選手にツモ番が回ってきますが……おおお、これは――!!」

    324 = 214 :

    @対局室

    シロ(さーて……張ったなぁ)

     四萬切りから四巡後、山から五筒、六筒、一萬、赤五萬を引き入れ、シロの手はがらりとその雰囲気を変えていた。

    シロ手牌:一二三四五五六七八九九⑤⑥・ツモ[五]・ドラ一

    シロ(ここは……リーチしたほうがいいもんかな……どうだろ。微妙だな……)タンッ

     シロ、打、九萬ッ!

     リーチ、せずッ!!

    シロ(この巡目……三副露の親に、明らかに高めの手でリーチをかけてる上家……突っ張るのはさすがに無理。この手ならダマで和了っても十分だし。それに……さっきから清澄が静かなのが……気になるな)

     シロ、対面の優希に目をやる。

     優希、ちょうど山から牌を引いたところ。シロの視線に気付き、顔を上げる。

    優希「……なんだじょ?」

    シロ「いや、別に、見てただけ」

    325 = 214 :

    優希「ははーん、わかったじょ。さては貴様……今頃になってやっとテンパったな?」

    シロ「対局中にそういうこと言うのはどうかと思う」

    優希「対局なら――もう終わりだじぇ!」

    シロ「は……?」

     優希、ツモ牌を卓に叩きつけ、手牌を倒すッ!!

    優希「ツモ!! ツモ、東、赤二っ! 2000・3900は2100・4000だじょ!!」

     シロ、晒された優希の手牌を見て、前局とは別種の、感嘆に似た溜息を漏らす。

    シロ(ああ……同じ待ち、か。確かにこりゃ……一歩遅かったなぁ)

     優希手牌:五六六六七[⑤]⑥[5]67東東東・ツモ④・ドラ一

    優希「ほれ見たことかだじぇ。東場の主役たる私が、お前みたいな手抜き眉毛にやられるわけがないんだじょ」

    シロ「私の眉毛は手抜きじゃない」

    優希「眉毛は手抜きじゃなくても麻雀は手抜きだったじぇ。そんなやつに負けるほど、私は安くないんだじょっ!!」

    シロ「ま、それはごもっとも」

     シロ、手牌を伏せて、ふうっと気持ちを切り替えるように息を吐く。

    シロ「けど、清澄の。ここからはこっちも本気だ。そっちの苦手な南場で稼がせてもらうよ。せいぜい、インターハイのときみたいな不用意な振り込みには気をつけるといいさ」

    327 = 214 :

    @実況室

    すばら「これはまさかのおおお!!? ここで南浦選手が片岡選手との交代を要求っ!!! これはルール的には問題ないのでしょうか!!?」

    「『先鋒戦から大将戦までの各対局を、二名で半分ずつ行う』――我々は半分の切れ目を前後半で考えていましたが……例えば二度の東場と二度の南場、これもある意味半分です。
     東南戦中に交代してはいけないというルールは明言されていないので、アリといわざるを得ないでしょう」

    「このルールを作ったのってあの清澄の部長だよな……この状況……あいつの狙い通りなんじゃないか?」

    初瀬「わ、私、ちょっと竹井選手を呼んできます!」

    「もう来てるわよ」

    初瀬「うわっ!!? こ、こんにちは!!」

    「こんにちは」

    328 = 214 :

    すばら「竹井選手っ!! ずばりこれは計画通りですかっ!?」

    「まさか。こんな奇策は想定の範囲外よ。びっくりして飛んできたの」

    (嘘つけ……このタイミング、明らかにこいつ南浦が出てくる前から控え室を出てたろ)

    すばら「そ、それで、どうするんですか!? この選手交代は認められるんでしょうか!?」

    「ルール上は問題ないわけだから、この先鋒戦だけ認めてあげたら?
     ただ、あんまりほいほい対局者が変わるのは気が散っちゃうだろうから、今後は普通に前後半で分けることにしましょう。いかがかしら?」

    すばら「そ……それで他の方が納得できればいいですが……おおっと!! やっぱりというかなんというか、対局室が揉めておりますっ!!」

    「ま、そうなるでしょうね」

    329 = 214 :

    @対局室

    透華「あなたたちっ! 卑怯ですわよ!! そんな……ルールの穴をつくようなこと!!」

    池田「東南戦は東南戦で一つだろ!? 切り離してやっていいわけがないし!!」

    優希「別にそんなことないと思うじょー」

    南浦「途中交代を禁止する、というルールはないわけですし」

    シロ(この南浦って人は知らないけど……まあ清澄は南場が苦手なんだし……こういう交代も作戦的にアリな気がするけど……。
     なんか龍門さんと風越さんの反応を見る限りそれだけじゃない気がするなぁ……さっきの『風』のこともあるし……)

     シロ、騒がしく子供っぽい優希と、落ち着いて大人らしい南浦の、どこか正反対な雰囲気を見て取って、合点がいく。

    シロ(ああ……そういうことか。この南浦さんって人は……本当に清澄と逆なのか……)

     東風戦限定で長野最強の打ち手――片岡優希。

     県大会の個人戦の結果から、それは誰もが認めるところである。

     しかし、そんな優希が、東南戦になった途端に土をつけられた相手。

     それが――南浦数絵。

     彼女の牌譜を見た者なら、一目でその特異性に気付くだろう。

    330 = 214 :

    シロ(彼女は南場に強いのか。話では、長野の個人戦で五位だったってことだけど……もし南風戦なんてものがあれば……たぶん一位になるような選手なんだろうな。
     なるほど。それで龍門さんと風越さんはあんなに突っかかるのか……)

     収集のつきそうにない言い合いを続ける長野勢。

     と、傍観していたシロが、不意に口を開く。

    シロ「私は長野県民じゃないからさ……正直、長野の面子なんて清澄の五人と長野一位の福路さんしかまともに知らない……。
     その、南浦さんって人も、なんかすごいのか知らないけど……全国から見ればまったく無名なわけだ。そんな選手が南場だけ出てきたところで……何かが変わるとは思えないんだけどな……」

     わかりやすいシロの挑発に、優希と南浦は微笑み、透華と池田は絶句するッ!

    シロ「だからさぁ……いくらでも交代すればいいんじゃない? なーんか見ててダルいんだよね。上級生が揃いも揃ってバタバタと……別に騒ぐようなことじゃないでしょ。一年の小細工くらい認めてあげようよ。
     東南戦を二人で戦うなんて……二人で一人前の……一人じゃ半人前の一年のやることだろう? それともあれかな……龍門さんと風越さんは、南場の南浦さんがそんなに恐いわけ?」

     シロの言葉に、いとも簡単に臨界突破する透華と池田。

    透華「上等ですわ!!! やってやろうじゃありませんかっ!!」

    池田「暫定ラスのやつが何を偉そうなこと言ってんだし!! お前に言われなくたってそんなことわかってたんだしっ!!!」

    331 = 214 :

    荒々しく席に戻る透華と池田。

     シロは悠然と背もたれに身体を預けて、正面に立つ優希にだらだらと手を振る。

    シロ「清澄、これで私らは一勝一敗ってことにしとく。続きはまたどっかでやろう」

    優希「ふん、いつでも相手になってやるじぇ!」

     火花を散らすようにぶつかる二人の視線ッ!

     その間に割って入る――南浦数絵ッ!!

    南浦「宮守の三年生……もう次の戦いのことを考えているんですか?」

    シロ「んー。そんなことはないよ? 実は、今けっこう楽しんでる」

    南浦「そうですか……それはよかったです。手抜きの相手に勝っても、私の目的は果たせませんから」

    シロ「へえ……大した自信だなぁ」

    南浦「あなたの言う通り、私はまだまだ全国から見れば無名です。だからこそ、今日は名を上げるためにここに来ました」

     南浦、睨むようにシロを見つめる。

    南浦「宮守の三年生……あなたを倒せば、私の名前はどれだけ上がりますか?」

     先鋒戦前半、南入――ッ!!!

    332 = 214 :

    南一局・親:南浦

     五巡目

    南浦「……リーチ」チャ

    池田(こいつ……いくら南場に強いからって速過ぎだし……!)タンッ

    シロ(速いだけで済めばいいけど……たぶんそうじゃないんだろうなぁ……。なら……試しにちょっと揺さぶってみるか……)

    シロ「……リーチ」スチャ

    透華(宮守もリーチですの!? 親リー含めた二家同時リーチを相手に突っ張るのはいくらわたくしでも厳しいですわ。なのに……なんですの!? この安牌のなさっ!?)タンッ

    南浦「それ、ロンです。リーチ一発……裏二。12000」パララ

    透華「」プスプス

    シロ(あちゃあ……リー棒が無駄になったか。それにしても……本来ならただ速いだけのリーのみが一発と裏で親満かぁ。
     どんな打ち方をしても南の風が味方してくれる……だから強気の打牌ができるって感じかな。呆れるほどの好循環だ……)

    池田(南浦数絵……個人戦ではうちのみはるんがお世話になった……その借りはきっちり返すし!)

    南:133900 透:85200 白:88600 池:92300

    333 = 214 :

    南一局一本場・親:南浦

     八巡目

    南浦(生牌の中……鳴きたければ鳴けばいい)タンッ

    池田「それ、ポンだし!」タンッ

    南浦(これくらいは想定内。こちらも形は悪くない。十分に勝負できる)

    シロ(風越さん……役牌か。点差とこの人の打ち筋を考えれば、役牌のみなんてことはまずないはず。なら……ここは少し働いてもらおうかな)タンッ

    透華(落ち着くのですわ、龍門渕透華! これくらいの劣勢……はねのけて見せますの……!)タンッ

    シロ「ポン」タンッ

    透華(宮守の鳴き……食いタン狙いですの? さすがに食いタンのみとは思えませんが……ドラは九索だから使えない……赤が固まっているとか? なんにせよ、ツモが二連続で回ってくるのは助かりますわ!)ツモッ

    透華(来ましたわ……! 混一ドラ一テンパイ! ただ……捨て牌からして染め手とバレバレ……ここはヤミで通したほうが無難かもしれませんわね……)タンッ

    334 = 214 :

    南浦(龍門渕の手が進んだ……? 宮守の鳴き……あれで多少風が乱れましたか。ここで筒子は切れない……)タンッ

    池田「それロンだし。中ドラ三、8000は8300」パラッ

    南浦(む、安めかと思ったらドラを固めていましたか……)

    池田「注意散漫だな、南浦数絵。名を上げたいなんてほざくなら、まずはこのあたしを倒してからにしろし!」

    シロ(なんかそれっぽいこと言ってカッコつけてるけど……それってつまり自分は三下ですって言ってるようなもんじゃ……?
     あと、注意散漫って、三萬で和了ったっていう駄洒落? まぁ……ツモ順をズラした甲斐はあったかな。予想通りドラを抱えていた……そんなんツモられるのは勘弁だしね)パタッ

    透華(風越・池田……地味に強いですわね。ずっと冗談で大将をやってるんだと思ってましたわ!)

    南:125600 透:85200 白:88600 池:100600

    335 = 214 :

    南二局・親:池田

     十二巡目

    池田「リーチだしっ!」スチャ

    南浦(風越……またですか。東場南場関係なく攻めてきますね)

    透華(これは……今度こそオリですわね)

    シロ(走ってるなぁ……この感じ……放っておくと手がつけられなくなるか……)

     次巡

    シロ「それ、ロン」パラッ

    池田「にゃーー!?」

    シロ「タンピンドラ一……3900」

    シロ(勢いに乗れば強いタイプ……。けど、周囲を見ずに走り過ぎだな。そのへんが付け入る隙ってことで)

    南:125600 透:85200 白:93500 池:95700

    336 = 214 :

    南三局・親:シロ

     五巡目

    シロ(オーラスも近い……今のままじゃ原点回帰も危ういかもなぁ。さすがにマイナスで豊音に回すのは忍びない。できれば連荘したいとこだけど……うーん……これ……何切ろう……)タンッ

     十巡目

    南浦「リーチ……」スチャ

    池田(にゃ……イーシャンテンなのに……! 仕方ない、一旦回るし)タンッ

    シロ(みんな本当に打ち合いが好きだなぁ……リーチした数で競ってるんじゃないんだから……先制リーチに拘らず……慌てず騒がず手を作るのも大事だって言ってやりたい……)タンッ

    透華(く~……ままなりませんわねぇ……去年の全国を思い出しますわ……!)タンッ

     十七巡目

    シロ「っと……これはまた……随分と深いところに埋まってたな」パラララッ

    南・池・透(なっ……宮守……!?)

    シロ「ツモ……三色三暗刻……4000オール」

    南:120600 透:81200 白:106500 池:91700

    337 = 214 :

    @実況室

    すばら「決まったあああ!! 三年選抜・小瀬川選手!! これまでの分を取り戻すような二連荘! ラス親で二位浮上ですっ!! すばらっ!!」

    初瀬「捨て牌がまたわけのわからないことになってます……。序盤、私なら平和三色を狙うかなと思って見てたら……五巡目でいきなり方向を変えました。
     まさか、あの平和手から……三暗刻にシフトするとは」

    「分かれ道はいくつもありました。平和三色に行く道、鳴いて食いタンを狙う道、対々を目指す道……捨て牌を見る限り、そのどれもがよくてイーシャンテン止まりです。
     最悪、溢れた牌で南浦選手に振っていた可能性もありました。小瀬川選手は、数ある道の中から、最も安全で、最も高い手をものにした……拍手を送りたいですね」

    「あの和了りは真似できる気がしねえな。マヨヒガじゃないが……小瀬川だって狙ってやってるとは思えねえ。迷っているうちに宝の山にたどり着いた……そんな打ち方だった」

    すばら「さあ、ここから小瀬川選手の連荘となるのか!! それとも南浦選手がリードを守りきるのか!! 他家の巻き返しはあるのか!! 注目ですっ!!」

    (透華がラスか。この状況……さすがに小瀬川や南浦を出し抜くのはきついか……? いや……それでも透華なら……)

    338 = 1 :

    麦野「それじゃあいつものやつね」トントン

    麻利「げふっ」

    打ち止め「あ、本で読んだやつだ」

    番外個体「げっぷだよねミサカも読んだ」

    麦野「そうよ、あんたたちのとこってそういう本があるの?」

    打ち止め「まりりんと正しく接するためにお勉強してるの! ってミサカはミサカは胸を張ってみる」

    麦野「そりゃ勉強熱心なことで」

    番外個体「まりりんこの後はおねんね?」

    麦野「う~ん、それもあるけどそろそろトイレが近いかもしれないわね」

    打ち止め「ってことはまりりんお風呂タイム終了?」

    麦野「そうなるわね」

    番外個体「ムギノまだお風呂入ってないよね?」

    麦野「そうね、でも体きれいにできたし特にこだわりはないわよ」

    339 = 214 :

    @特別観戦室

    優希「こらー数絵! あんな手抜き眉毛に負けるんじゃないじょっ!! さっさと突き放すじぇ!!」

    豊音「いやー片岡さん、うちのシロはそんな簡単じゃないよー?」

    小走「同感だな。ニワカにはわからんだろうが、あの打牌……ありゃ相当打ってる。あいつを攻略するのは私でも骨が折れそうだ。池田も頑張ってるが、ま、厳しいだろう」

    「お前たちの目は節穴か? これまでの戦いなど、あの場に龍を呼び込むための誘い水でしかなかったというのに……」ゴゴゴゴゴゴ

    小走(こいつ……このプレッシャー……本当に人間か……?)ゾッ

    「お前たちは感じないか? 大河の底に巣食う龍が……水面から顔を出そうとしているのを……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    340 = 214 :

    @対局室

    南三局一本場・親:シロ

    シロ(なんか……今局は場が落ち着いてるな。それに……なんだろう……この背筋が凍りつきそうな悪寒……神代が何かを降ろしたときにも似てるような……)タンッ

    透華(…………)タンッ

    南浦(おかしい……風が凪いでいる? それに……寒い? 身体の震えが止まらない……清澄の嶺上使いと対峙したときも……これほどではなかったはずだが……)タンッ

    池田(みんな急に大人しくなったな……お腹でも壊したか?)タンッ

    シロ(来た……テンパイ。さっきと矛盾するようだけど、ここは素直にリーチかな。これで……トップをまくる……)

     シロ、捨て牌を掴み、リーチと発声しようと、口を開く。 その――刹那ッ!

    シロ(っ――!?)

     鉄砲水にでも飲まれたような衝撃が、シロの身体を突き抜けるッ!

     シロ、思わず、振り返るッ!!

     そのプレッシャーを放つ『主』――龍門渕透華のほうを……ッ!!

    透華()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    シロ(今のは……なんだ……? なんというか……龍に喰われるみたいな……)

     シロ、対面に目を向ける。南浦も異常に気付いた様子。目を見張って透華を見ている。

    341 = 214 :

    シロ(他のやつも気付いてるのか……? 豊音や清澄の宮永咲、永水の石戸も大概化け物だと思うけど……こいつは……或いはあいつら以上かもしれない)

    南浦(冷たい……深い川底に引き込まれたような……芯から凍る冷たさ。静かな水面ほど……深いところは激流になっているというが……ちょうどそんな感じだ。
     この落ち着いた河の底には……龍がひそんでいたというのか……?)

    池田「? おい、なにしてんだし、切るなら早く切れよ」

     池田、鈍感ッ!!

    シロ(こいつ……! このレベルのプレッシャーになんも感じてないのか? 実はけっこう大物なんじゃ……。いや、まぁ冗談はさておき……)

     シロ、透華を横目で観察するも、正体見えず。

    シロ(……ここは……少し様子を見たほうがよさそうだな……)

     シロ、川の温度を指先で確認するように、ゆっくりと河に牌を捨てる。

     その――直後ッ!!!

    透華「ツモ……断ヤオ赤一ツモ……1000・2000は……1100・2100」

    シロ(やっぱり……あのまま普通にリーチを掛けていたら振り込んでいた。にしても不気味なくらい地味な和了りだな。
     とりあえず親っ被りの被害は小さくて助かったけど……それとも……ここからチャンピオンよろしく地獄が始まるとか……?)

    南浦(龍門渕透華……私の支配をまるで受け付けていない。ラス親……連荘はさせない。先に和了って断ち切る……!)

    池田(ん? 二人ともなんで龍門渕のこと見てんだし)

    南:119500 透:85500 白:104400 池:90600

    342 = 214 :

    @実況室

    すばら「小瀬川選手! リーチするかに思えましたが……なぜか面子を崩して放銃を回避しました!!」

    初瀬「最初は普通にリーチって言おうとしてましたよね。それから、龍門渕選手のほうを見て……なにか驚いたような表情をしていました。
     なんにせよ、あそこでテンパイを崩すのは意味不明です」

    「さすがに小瀬川はいいカンしてやがる。しかし……まさかここで目覚めちまうとはな。確かに、今日は強えやつがわんさか集まってるから……ありえるかもとは思っちゃいたが……」

    「目覚めた……というのは龍門渕選手の変化のことですか? なにか心当たりが?」

    「あぁ……オレたちは『アレ』を、便宜的に『冷たい透華』と呼んでいる」

    初瀬「冷たい……?」

    「そうだ。雪解け水が流れる春の川のような……日の当たらない地下を伝わる水無し川のような……触れるものを凍てつかせる冷たさだ」

    すばら「よ、よくわかりませんが!!! 何やら不穏なことになっているようです!! が、場はあくまで穏やか進行していますっ!!!」

    345 = 214 :

    南四局二本場・親:透華

    シロ(そっか……少し……見方が違ったみたいだな……この人は豊音じゃない……条件付きで支配力を発揮するタイプじゃなくて……常時発動型の能力……リーチ宣言牌で和了るとか……そういう発想ではこの場の謎を紐解くことはできない……)タンッ

    シロ(さっきの……私の捨て牌を見逃して……直後にツモ和了……あれで……少しだけど見えた……この人……リーチ宣言牌で和了る能力じゃない……リーチできない場を作る能力なんだ……。
     そう考えると……このやけに静かな河も頷ける……となると……たぶん……リーチだけじゃない……もし……この穏かな河を生み出すことがこの人の力なら……恐らく……)タンッ

    透華()タンッ

    南浦()タンッ

    池田()タンッ

    シロ「チ……」

    透華「ロン……三暗刻……4800は……5400」パラララ

    池田「にゃっ!?」

    シロ(やっぱり……そういうことか……この人が何を支配しているのか……これでおおよそ把握できた……けど……もし私の考えが正解だとして……一体どうやって止めればいいのやら……)

    南浦(これといった特徴のない安手で四連荘……!? わからない……宮永咲のときはカンを封じればいいという対応ができたが……私には……これが能力なのかそうでないのかも区別ができない……どうする……どうすれば……!)

    池田(龍門渕……連荘で巻き返してきたな。それに比べて華菜ちゃんは……一人沈み!? そんなの絶対嫌だし!!)

    南:113500 透:101100 白:102300 池:83100

    346 = 214 :

    @実況室

    すばら「またまた和了りましたあああ!! 龍門渕選手!! オーラスで猛ラッシュです!!」

    「このまま他家が何もできなけりゃ、この対抗戦もこれで終了かもな」

    初瀬「それは……この先も龍門渕選手が和了り続けるってことですか? そんな無茶苦茶な」

    「いや、龍門渕選手はあの天江選手の親族だと聞いています。初瀬さんも、全国で三校を同時にトバすなんてことをやらかした天江選手の無茶苦茶さは知っているでしょう?
     それと似たようなことを、龍門渕選手もできるとしたら?」

    初瀬「……いったい龍門渕選手は何をしているんですか?」

    すばら「井上さん、できれば解説をっ!!」

    「まあ……詳しいことはオレもわからんが……透華のあれは、衣の『場の支配』ってやつと似てるとこがあるな」

    初瀬(天江選手の『場の支配』ってのが私は初耳なんですが……ま、まずは話を聞きますか……)

    「『治水』とでも言えばいいのか。透華は……川を支配してるんだよ」

    「川……『河』ですか」

    「そうだ。なんつーか、きちんと整備された川ってのは、決まってるルートを淡々と海へ向かうだけだろう? 透華はその『流れ』を支配してるんだ。『河』の有り様を決定してるっつーのか。
     たとえその流れに逆らおうとしても、その流れを乱そうとしても、河の主――『龍』の支配がそれを許さない。透華以外の何人も……『河』に『手出し』ができなくなる」

    初瀬「『河』に手が出せないって……鳴けないってことですか?」

    「鳴けないで済めばまだいいんだがな。あの『龍』は……『河』から牌を掬うことすら許さない」

    347 = 214 :

    「ロン和了りができない……と?」

    「そういうことだ。『河』を支配する『龍』は頑固でな。鳴くことも、和了ることも許さない。リーチや暗槓すら、『河』を乱すこととして押さえつける。
     他家は、ただ静かに……河の流れが終着の海に行き着くのを見ていることしかできない」

    初瀬「鳴けないしリーチも無理でロンできないって……。で、龍門渕選手だけは河に出た牌で自由に和了れるんですよね。あまりに一方的な状況……どうやって攻略すればいいんですか?」

    「例えばだが、うちの衣みたく『河』ではなく『海底』から牌を掬えるやつは、あの支配の中でも和了れる。
     あとは……永水の石戸なんかがそうだと思うんだが……『山』を支配できるなら、牌を『河』に流れる前に掘り出せるわけだから、普通に対抗できるはずだぜ。
     と、ま、決して無敵ではないんだよ。透華自身だって無限に和了れるってわけじゃないから、案外プラス五万くらいで『龍』が引っ込むかもしれねえし」

    初瀬「五万って……。というか……今の話だと、なんのオカルトも使わないで和了るのはどうやっても無理ってことになりません?」

    「どうだろな。たとえオカルトに頼らなくても、相当の豪運と、龍の支配を逆手にとるような奇策でもあれば……なんとかなるのかもしれん。
     去年のインターハイでは、透華がロンする一瞬の隙を突いて、強引に頭ハネで他家をトバしてたやつがいたな」

    すばら「聞けば聞くほど大変な状況のようです!! 果たして龍門渕選手は止められるのでしょうか!? 止めるとしたら、それは一体誰なのでしょうか!?
     先鋒戦前半オーラス!! 引き続き目が離せません!!」

    348 = 214 :

    @対局室

    南四局三本場・親:透華

    シロ(まずいな……もし仮に……龍門さんが河を支配する能力を持っていたとすると……こちらはリーチができない……さらには鳴けない……恐らくはロン和了りすらできない。
     ということは……この重たい場で龍門さんを止めるには……龍門さんより早くツモる以外に方法がない……)タンッ

    シロ(けど……河を支配するということは……こちらの捨て牌を支配するということで……捨て牌を支配されてるということは……手牌を支配されているのと同じだ……そんな状況で龍門さんより早く和了れるとは思えない。
     敢えて逆らっても手が遅くなるだけ……無理に崩して誰かに差し込んだり鳴かせたりとかしようとすると……たぶんそれこそ龍門さんの思う壺……さっきの風越さんがそうだったように……その瞬間に出和了りされる。
     参ったな……これはダルいじゃ済まされない……)タンッ

     一方、南浦。

    南浦(く……南場だというのに……! せめて鳴くことができれば……再び風が私に吹くはずなのに……!!)タンッ

    南浦(上家が龍門渕透華だからだろうか……さっきから鳴くこともできない……かといって門前で進めても一向聴から抜け出せない……この場を意図的に作り出しているのか……化け物め……!)

     一方、池田。

    池田(この感じ……もう何度も体験した……あの最悪の地獄だ……さっき……どうにか場を乱そうとして……宮守の手が進みそうなところを出してみたけど……それを狙われた。
     どういう理屈で何が起こってるのかはよくわからないけれど……わかるのは……普通に打ったら……また負ける……!!!)タンッ

     池田、辛酸ッ!

    池田(負けるのか……また負けるのか……あたしは……! 去年も今年も天江に負けて……個人戦では結果を残せなくて……何が風越のナンバーツーだ……! あたしは……弱い……!!)タンッ

    池田(キャプテン……あたし……どうしたらいいんですか……キャプテン……!!)

    349 = 214 :

     ――回想・風越女子麻雀部・インターハイ県予選後――

    久保「ああ……? 今なんつった、池田ァ!」

    池田「ひっ……いや……その……次期キャプテンの話は……光栄なことなんですけど……あたしに務まるか自信がなくて……」

    久保「自信がないだァ……? 何を甘えたこと言ってんだ、池田ァ!!」パァン

    池田「っ……!! すいません……!!」

    久保「テメェがなんと言おうと……次期キャプテンはテメェ以外にありえねえんだよ! 自信がねェ? バカかお前。福路は自信を持ってキャプテンになったとでも思ってんのか?
     テメェはこの一年あいつから何を学んできた!?」

    池田「キャプテンから……学んだこと……」

    久保「いいか? 福路の全国個人戦が終わったら問答無用でテメェが新キャプテンだからな。それまでに……その根性を叩き直してこい。拒否することは許されねえ」

    池田「は……はい……」

     *

    美穂子「あら……華菜……どうしたの?」

    池田「あ……キャプテン……あの……その……」

    美穂子「?」

    池田「えっと……なんでもないです……!」ダッ

     ――――――


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