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元スレ白望 「二者択一……?」
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>>450
このスレ今年一番のスレになる予感がするよ!
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白望 「二者択一……?」 episode of side-A
エイスリン 「ニシャタクイツ……?」
おかえり>>1さん
>>451
いや大丈夫大丈夫だからなんだかんだ仲良くしてくれたシロとかトシさんに感謝して
同じ被害者の皆を気遣ったり葬式の後に小さい頃の話とか麻雀部のこととか話してくれて
ありがとうと言いつつやっぱり泣いちゃうぐらいだからそんなドロドロ昼2時展開とか無いから
いや大丈夫大丈夫だからなんだかんだ仲良くしてくれたシロとかトシさんに感謝して
同じ被害者の皆を気遣ったり葬式の後に小さい頃の話とか麻雀部のこととか話してくれて
ありがとうと言いつつやっぱり泣いちゃうぐらいだからそんなドロドロ昼2時展開とか無いから
私は暗闇の中で目を覚ました。
エイスリン (……ココ、ドコ?)
電気が点いていないだけだと思ったが、どうも様子がおかしい。
気配が無いのだ。物も、音も、そして一緒にいるはずのシロも。
昨晩はシロが先に寝てしまったので、胡桃と夜遅くまで話していた。
色々な話をした。大会の話。学校生活の話。……恋の話。
部屋に戻ったのは、12時を回った頃だろうか。
シロは穏かな寝息を立てていた。幸せそうな寝顔だった。
エイスリン 「……マックラ」
だが、周りは見渡す限りの闇。
何もない。音もない。シロがいない。
有るのは、私がいつも携帯しているペンとホワイトボードだけだ。
エイスリン 「シロー……?」
シロの名前を呼ぶ。
しかし、返事はない。
エイスリン 「シロ! ドコ!?」
声を張り上げる。
やはり、返事はない。
急速に、体の芯から不安に蝕まれていく。
私にとってシロが傍にいる、という安心感は絶対だった。
エイスリン 「コワイヨ……」
両膝を腕で抱える。所謂、体育座りの形になった。
体を寄せ抱えていないと、自分が闇に消え行きそうで怖いのだ。
すると、闇の奥から馴染みの無い声が聞こえてきた。
「小瀬川さんは、ここにはいないですよ」
エイスリン 「ダレ……?」
他に人がいる、という安心感。
得たいの知れない何かがいる、という恐怖感。
私の声が震えていたことから察するに、後者の感情が上回ったようだ。
咲 「こんにちは、エイスリンさん。いや、こんばんは、ですかね?」
エイスリン 「アナタハ……」
見たことのある顔だった。いや、忘れるはずが無い。
彼女は私たちを二回戦で負かし、豊音を泣かせた高校の大将だ。
咲 「ここには時間の概念が無いんですよ……。まあいいや、うん」
咲 「宮永咲っていいます。よろしくお願いしますね」
咲 「当然名前は知ってるはずですよね?」
宮永咲は、一人でどんどん言葉を紡いでいく。
それに対して日本語が不自由な私は、言葉が喉に閊えてうまく喋ることができない。
そんな私の様子を見て、宮永咲は笑顔を見せる。
咲 「落ち着いて、エイスリンさん。ゆっくり話しましょう?」
……思ったより、優しい人なのだろうか。
私は口の中に溜まった唾を飲み下すと、少し落ち着いた。
エイスリン 「ココハドコ?」
咲 「うーん、なんて言えばいいんでしょう……」
私の質問に対して、宮永咲は握った手を顎にあてて難しい表情をする。
なんだがその動作が演技臭くて、滑稽な印象を受けた。
咲 「まず、ここは現実じゃない。それは、なんとなくわかりますよね?」
私はコクンと首を下げる。
言葉には形容できないが、雰囲気でそれは察することができた。
咲 「まあ、単刀直入に言うと……」
咲 「エイスリンさんは、現実の世界で死ぬ寸前なんですよ」
エイスリン 「……シヌ?」
咲 「そう、死ぬ。あなたの状態は、死に限りなく近い生」
咲 「ちょっと難しいかな、うーん……」
死ぬ。もちろん、私はその意味を理解している。
だが死の宣告はあまりに唐突で、あまり現実感が湧いてこなかった。
咲 「えっと、エイスリンさんはどこまで現実の記憶がありますか?」
現実の記憶……。
掘り起こすまでも無い、ホテルに戻って眠りにつくまでだ。
エイスリン 「ホテルデ、ネタ」
咲 「なるほど……。じゃあ、状況を一から説明しましょう」
親切な物腰の彼女に対して私がお礼を述べると、
宮永咲は「これも私の役目ですから」と、笑顔で返してきた。
宮永咲は淡々と説明をしてくれた。
丁寧な喋り口調で、ときおり私のために易しい言い回しを用いる。
内容がかなり衝撃的なのだが、彼女はそれを気にする様子は無い。
彼女の説明が終わると、私は現実の状況とこの世界についてほぼ把握することができた。
日本語が苦手な私に、この不可思議な現状を理解させる。彼女は説明力に長けているようだ。
私が所属する宮守女子麻雀部は、就寝後にホテル火災に巻き込まれた。
私たちは病院に運ばれ、現在治療中。
トシ先生は既に目を覚ましており、後の五人は私を含めて未だ意識不明の状態。
どうやら、私はその中でも特に重体らしく、死ぬことは確定事項らしい。
エイスリン (ワタシハ、シヌ……)
そしてこの空間は、死後の世界に近いものだと言っていた。
”近い”と彼女が表現したのは、私がまだ死んでいないからだ。
日本的表現を使うと、ここは「サンズノカワ」と呼ばれるものに似ているらしい。
咲 「まあ、エイスリンさんは、向こう岸に上半身が乗り上げている状態なんですけどね」
彼女の言っていることは理解できなかったが、
きっと愉快なことを言っているわけではないのだろうと思った。
宮永咲は、自分のことを「シシャ」と表現した。
これから私がなるであろう、「死者」とは違うものらしい。
死の世界へ導く役割を担う、それが彼女の言う「シシャ」なのだ。
咲 「なんか格好つけた表現ですけど、多分これが一番適切な表現なんですよ」
私は彼女に、「あなたは“the god of death”か?」と尋ねた。
“the god of death”とは、死を司る神を指す。いわゆる、死神のことだ。
このとき、彼女は表情を渋くした。
咲 「死神はちょっと心外ですね……。まあ、でもあながち間違っていないのかも」
咲 「私の本来の姿は、あなたが見ている姿とは違うんです」
咲 「では何故、私が宮永咲の姿をしているのか。それは、あなたのイメージです」
咲 「闇から現れた私を、あなたは恐怖の対象とみなしました」
咲 「そして、あなたにとっての恐怖の対象……宮永咲が、私の外見に複写されたんでしょう」
咲 「もちろん、中身は違います。なので、口調に違和感があるかもしれませんが、ご承知おきください」
そこまで言うと、彼女の眉間の皺は更に深くなる。
相手が本物の宮永咲ではないと知りながらも、すごく申し訳ない気持ちになった。
エイスリン 「ゴメンナサイ、デシタ……」
咲 「あ、いえいえ。どうぞ、お気になさらずに」
咲 「それに……」
彼女はそこで言葉を遮る。
そして、小さな声で「あっちよりはマシか……」と呟いた。
エイスリン (ワタシノ、コワイヒト……)
宮永咲は私にとって……確かに、恐怖の対象である。
嶺上開花による超人的な和了、圧倒的な場の支配。
モニター越しに感じたのだがら、卓を囲んだトヨネは辛かっただろう。
ちなみに、私を惑わせた清澄の眼鏡さんは、恐怖の対象ではない。
究極的な表現を用いるとしたら……憎悪の対象だろうか。
エイスリン (……ゴメンナサイデシタ)
私は心の悪魔をコツンと叩くと、二度目の謝罪をした。
エイスリン (ワタシ、シヌ……)
自分の死に対しては、何故か冷静でいられた。
ニュージーランドから岩手に留学したとき、私は長らく一人だった。
母国の両親、友達はいない。ホームステイ先の家族とも馴染めない。
見知らぬ土地で、一人ぼっち。
それは生きていながらも、死に等しい状態だったから。
しかし、友達の死に対しては、ひどく動揺した。
エイスリン (クルミ、トヨネ、サエ)
私にとって、日本の初めての友達。
彼女達に出会ってからは、毎日が楽しかった。
そして……。
エイスリン (シロ……)
最も大切な人。
ある日、私を孤独な世界から連れ出してくれた。
彼女に出会ってからは、毎日が幸せだった。
同性でありながら、異国の人がありながら、
私は彼女に恋をしてしまっていた。
みんなは私に、生きることの楽しさを教えてくれた。
だからこそ、みんなが死んでしまうかもしれないと考える度に涙が止まらなかった。
シロが、クルミが、サエが、トヨネが、生死の世界をさ迷っている。
どうか、死なないで。生きていてほしい。
私は深く、強く、願った。
咲 「エイスリンさん」
どのくらいの時間を過ごした頃だろう。
一度闇に姿を消した宮永咲が、再び私の前に姿を現した。
一人で退屈していた私は、寝転がってホワイトボードにペンを走らせて飽きをしのいでいた。
みんなの似顔絵を描くのはとても楽しかったけれど、反面寂しさも感じていた。
咲 「久しぶりですね。って言っても、どのくらいかはわからないけど」
彼女が言ったとおり、この空間には時間の概念が無い。
お腹が空くことも無ければ、喉が渇くことも無い。
彼女は「用件があります」と言った。
――小瀬川白望が、死の淵に辿りつきました、と。
エイスリン 「シロッ……!」
私はひどく狼狽した。
流しきったと思った涙は、すぐに溢れ出てきた。
咲 「エイスリンさん、落ち着いて」
咲 「小瀬川白望は、まだ死んだわけじゃないんです」
彼女は私の震える肩をを抱き寄せ、両腕で包んでくれた。
暖かい。彼女は自分を「シシャ」と言ったけど、そこには人間に近い暖かみがあった。
私が泣き止み、体の震えも止まった頃、彼女はシロの現状について教えてくれた。
シロは私に次ぐ重体で、生きるか死ぬかの瀬戸際であること。
そんなシロもやはり、イメージの中で戸惑っていること。
そして……私がシロを助けることができるかもしれない、ということ。
咲 「これを見てください」
彼女はそこに小さなボールがあるかのように、両手で闇の一部を包み込む。
すると小さな白い光が芽生え、それは徐々に丸く膨らんでいく。
やがて40インチのテレビ画面ほどのサイズになると、膨張を止めた。
そこに映る景色は、真っ白だった。
完全なる純白。私の世界とは対照的だった。
その空間に、ポツンと寝転がるシロの姿があった。
エイスリン 「シロ!」
エイスリン 「サキ! シロガイルヨ!」
咲 「わかってます。わかってますから、肩を揺らさないで……」
私は慌てて、彼女の肩から手を離す。
しかし、これがどうして落ち着いていられるだろうか。
シロがすぐそこにいるのだ。私の大好きな、シロが。
そのときだった。
寝返りをうったシロが、ポツリと呟いた。
白望 『……水』
エイスリン 「シロ! ミズガホシイ!?」
シロが喋った! シロが生きている!
私は興奮を抑えきれず、無意識に宮永咲の肩に手をかけた。
咲 「ちょっと……、揺らさないで……」
エイスリン 「アッ……、ゴメンナサイ」
咲 「別に大丈夫ですけど……」
咲 「エイスリンさんは、小瀬川白望のことになると、感情的になるきらいがありますね」
身体に平穏が戻った彼女は、「ふぅー」と大きく息を吐いた。
私は顔が熱くなるのを感じ、ホワイトボードで顔を隠した。
恐らく、ひどく赤面しているに違いない。
白望 『水が飲みたい……』
エイスリン 「シロ!? ノドガカワイタノ?」
声に反応して、ホワイトボードを顔から外す。
顔に汗が浮かんだ、ひどくダルそうな顔をしたシロ。
エイスリン 「サキ! シロ、ツラソウ!」
エイスリン 「ナニカシテアゲナイト! カワイソウ!」
私は宮永咲に必死に訴えた。
彼女は感情を表に隠したまま、何も言葉を発さない。
エイスリン 「ワタシ、シロヲ、タスケタイ!」
エイスリン 「サキ、イッタ! ワタシ、シロタスケルッテ!」
それでも、彼女は動こうとしない。ただ、私を見つめてくるだけ。
私にはあなたが何を言っているのかわかりません、まるでその瞳はそう言っているようだった。
とても歯がゆかった。目の前の人に、気持ちを伝えることができない。
日本の地に降り立ったときから、ずっとそうだった。
そんなとき、言葉が伝わらないとき、私はどうしたか――
私は思わず、ホワイトボードにペンを走らせようとした。
>>1キテター
しえん
しえん
咲 「それです」
エイスリン 「……エ?」
私の動きが止まる。
さきほどまで微塵も動く気配を見せなかった、宮永咲が指を指している。
その先は、恐らく私のホワイトボードとペンだ。
咲 「それが、小瀬川白望を助ける鍵です」
エイスリン 「……What?」
咲 「あなたは、麻雀において特別な能力をお持ちのようですね」
咲 「理想の牌譜を卓上に描き出す、ですよね」
同意を求められたので、私はコクコクと頷いた。
いや、相槌を打ったのは、先を急かすためだろう。
咲 「同じことです、この世界でも」
咲 「あなたはそのホワイトボードにペンを走らせて」
咲 「小瀬川白望の世界に、理想を描き出せばいいんです」
言っていることは難しかったが、重要なことはわかった。
とにかく、このホワイトボードとペンを使えばいいのだ。
咲 「ただ、理想を描き出すといっても、そう上手くはいきません」
咲 「必ずしも、自由にあなたの世界が反映されるわけではない」
咲 「ほら、見てください」
宮永咲に促されて、私は再びシロの世界に視線を戻した。
すると、そこにはさっきまで無かった森林が広がっている。
咲 「エイスリンさんに不思議な力があるように」
咲 「小瀬川白望もまた、不思議な力を持っています」
咲 「それが……マヨヒガ」
その言葉と、シロが森林の中に消えていったのは、ほぼ同時だった。
咲 「迷う家、と書いて迷い家(マヨヒガ)と呼びます」
咲 「マヨイガ、と呼ぶほうが一般的でしょうか。遠野物語に記されている奇談ですね」
咲 「山の奥に迷い込んだ男が、黒く立派な門を構えた屋敷にたどり着く」
咲 「そこの庭には、紅白の花が綺麗に咲いていて……」
彼女の語りは、ほとんど頭に入っていなかった。
私はただシロの姿を追っている。
息を切らせながら、険しい森林の小道を進んでいくシロ。
咲 「……というお話なんです」
咲 「エイスリンさん……。ちゃんと、聞いてました?」
エイスリン 「エッ? ……アッ」
もう何度目になるかわからないが、私は頭を下げるしかなかった。
この場合ハッピーエンドに代わるトゥルーエンドに期待するしかない
宮永咲は、シロの能力について詳しく説明してくれた。
――マヨヒガ。
麻雀においては、悩むことで手が高くなる傾向がある。
ここで注意するのは、手を高くするために逡巡したのではなく、
悩んだら手が高くなった、ように見えることだそうだ。
そういえば、確かにシロが「ちょいタンマ」と言った後は、高確率で高い手を和了っていた。
そのときばかりは、私が理想の牌譜を描き出そうとしても、及ぶことはできなかった。
そして、あそこの空間では、その能力がどのように反映されるのか。
突如現れた森林、そして最終的にシロが辿りついたお屋敷。
これらはいわば、シロの「迷い」を生み出すための舞台、ということらしい。
シロは、無意識で迷っている。
自分が生きるべきか、死ぬべきか。
そこで生まれたのが、あの森林とお屋敷だ。
お屋敷の中で、シロはさまざまな「迷い」に対する「答え」を出す。
そうすることで、自分を正しい方向へと導こうとしているらしい。
その「答え」が、果たして生か死はわからないが。
咲 「あの屋敷の中は、かなり小瀬川白望の能力に縛られている」
咲 「だから、エイスリンさんの理想をそのまま描き出すことはできません」
エイスリン 「ジャア、ドウスレバイイノ……?」
咲 「あの空間の本質を変えることなく、あなたの能力で干渉しましょう」
咲 「狙うのは、迷いの肝となる選択肢です」
彼女の説明は、簡単なことだった。
私が直接、シロの思考を変えることはできない。
ただ、選択肢を与えることはできる。シロを悩ませることはできる。
咲 「それはつまり、間接的に彼女を導くことができる、ということです」
咲 「それがエイスリンさんの、小瀬川白望を助けることができる力です」
その言葉は、私の胸に深く響いた。
紐を通して首から提げてあるホワイトボードを、ギュッと力強く抱いた。
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