私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。
元スレ白望 「二者択一……?」
SS スレッド一覧へ / SS とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★★★
レスフィルター : (試験中)
それから私は死んだように過ごした。
何をするわけでもない。ただ、シロの様子を眺めているだけ。
シロの様子を定期的に確認する。。
必要に応じて、私は生理的欲求に関する二者択一を示す。
それに対して、シロが選択をする。
単純な作業だ。
気づけば、私は言葉を発することをやめた。
塞との会話の直後から、私たちと会うことを望み続けたシロも、
宮永咲の指示に応じて無視し続けていたら、やがて言葉を話さなくなった。
やがてシロも、私が提示した二者択一に対して拒絶を示すようになった。
食事の拒否。入浴の拒否。……度重なる、拒否。
宮永咲は「生に対する執着が減少しています」と言っていたが、
私は、私自身そのものがシロに拒絶されているようで、とても悲しくなった。
確かに、私はシロと「孤独」を共有することとなった。
しかし、私と彼女の心はとても離れた位置にあると感じていた。
現状に変化をもたらしたのは、現実における変化だった。
咲 「エイスリンさん、報告があります」
エイスリン 「……」
咲 「臼沢塞が、現実で意識を取り戻したそうです」
エイスリン 「サエ……」
咲 「鹿倉胡桃がほぼ死の淵から脱し、生きることになりそうです」
エイスリン 「クルミ……」
サエが助かり、クルミがほぼ助かることが確定した。
嬉しい報告には違いない。だが、渦巻く感情は喜びだけでは表現できなかった。
エイスリン 「ワタシ、ヒトリボッチ、ナルノカナ……」
寂しさ。
死が確定している私に対して、センセイ、サエ、クルミは現実で生き残る。
トヨネはわからない。シロは……まだ、わからない。
みんなから取り残されていく。
私だけ死の世界に飲み込まれていく。
寂寥、恐怖、嫉妬、諦念。
犇くのは、暗い感情。
そのとき、「シシャ」が私に囁いた。
咲 「……不公平ですよね」
エイスリン 「……?」
咲 「エイスリンさんは、こうやって死ぬのを孤独に待っている」
咲 「なのに、友人達は生きることを選ぶ、いや、選ばれている」
エイスリン 「……サキ?」
咲 「これで姉帯豊音と……小瀬川白望が生きることになったら」
咲 「……あなたは、どうなるんでしょうか」
私が感じていた恐怖を口に出されると、背筋が凍った。
他人に可能性を突きつけられることで、恐怖が現実感をもって迫ってくる。
独白めいた「シシャ」の囁きは続く。
咲 「彼女達は、きっと力をあわせて困難を乗り越えていくでしょう」
咲 「あなたの死、という困難すら」
エイスリン 「……ッ!」
思わず身体が震える。
咲 「まあ、それも些細なことです……」
些細なこと? 私がみんなに置いて行かれることが?
「シシャ」の自分勝手な言い方に怒りを示そうとするも、続く言葉に身体が凍った。
咲 「鹿倉胡桃、でしたっけ?」
咲 「あの子もエイスリンさんと同様に……」
咲 「……小瀬川白望に恋愛感情を抱いているんですよね」
宮永咲が、なぜそれを知っているのか。
私とクルミだけの秘密。二人で交わした約束。
咲 「……不公平ですよね」
咲 「もし、鹿倉胡桃と小瀬川白望が生きることになったら」
咲 「無抵抗で、鹿倉胡桃に大好きなシロを取られちゃうンダカラ……」
エイスリン 「アッ……アッ……」
私は彼女の表情に足を振るわせた。
これまで見せることの無かった、その残忍な笑顔に。
エイスリン 「クルミナラ、イイモン……」
捻り出した言葉は、弱々しいものだった。
そんなガラクタの言葉の壁は、いとも簡単に破壊される。
咲 「それ、嘘ですよね。だって、気づいているんでしょう?」
咲 「あなたが望んだことによって、小瀬川白望があの空間に閉じ込められていることに」
心の鎧が破壊されていく。
私の本心が丸裸にされていく。
咲 「取られたくなかったんでしょうね……彼女を」
咲 「あなたは小瀬川白望を飼い殺しにすることを選んだんですよ」
咲 「考えても見てください、臼沢塞との会話を」
咲 「姉帯豊音の話のくだり。小瀬川白望は知らなかった」
咲 「イメージは知らない事実を具現化することはできません」
咲 「小瀬川白望は関係ない」
咲 「あそこに現れるイメージは、全てあなたが描き出したものなんですよ」
咲 「さあ、そろそろ気づいてくださいよ」
私はホワイトボードを両手に抱えて、顔を隠して蹲る。
彼女から逃れたい。「シシャ」から逃れたい。宮永咲から逃れたい。
咲 「あなたの願望に」
でも、それは無理だと悟っていた。
咲 「私の正体に」
「シシャ」と名乗った宮永咲の正体、私が恐れていたものとは――
咲 「じゃあ、次の二者択一を提ジシマショウ」
悪魔が囁く。
「 「……シロガ、クルミヲエラブカ、ワタシヲエラブカ」」
――心の中に棲む、どす黒く汚れた私だった。
考えた選択肢は、「どちらが死ぬか」をシロに選ばせることだった。
死ぬことが確定している私を蘇らせることは、能力を超えた選択肢だったから。
咲 「この二者択一、あなたにはデメリットがありません」
咲 「まず、鹿倉胡桃が死ぬことを選択した場合」
咲 「まだ、生きることが確定しているわけではない鹿倉胡桃は死にます」
咲 「そうすると、もう現実で小瀬川白望を奪われることはありません」
咲 「そしたら、死の世界で、彼女と仲良くいきていきましょうか」
そこで彼女が皮肉めいた笑い声をあげる。
汚い。汚い。汚い。……汚いのは、私。
咲 「そして、悲しいですがエイスリンさんが死ぬことを選んだ場合……」
エイスリン 「……」
ゴクリと唾を飲み下す。
ホワイトボードを握った手が汗で湿る。
咲 「小瀬川白望を殺して、長い時を二人で過ごしましょう」
――シロを殺す。
私にとって最も有り得ない選択肢は、最も魅力的な光を放っていた。
エイスリン 「デモ、ドウヤッテ……?」
咲 「簡単です。彼女が、現実に失望するように仕向ければいいんですよ」
咲 「あの空間に留まりたい、そう思わせてから、選択させればいいんです」
エイスリン 「……ウン」
こうした話し合いを経て、私は残酷な二者択一を提示した。
私は死ぬことが確定している。現実では、もはやシロに選んでもらうことはできない。
ならば、この空間で選んでもらうしかないだろう。
『かくらくるみがしぬ』
『えいすりんうぃっしゅあーとがしぬ』
その選択に対して、シロはひどく混乱していた。
それも仕方が無いだろう。
孤独の中に救いの糸が垂らされたと思ったら、それは地獄からの釣り糸だったのだ。
でも、大丈夫。
ワタシガ、タスケテアゲルカラ。
白望 『ふざけるな……っ!!』
地面を拳で叩き、怒りを吐くシロ。
私が初めて見るその姿に、一抹の不安を覚える。
咲 「大丈夫。大丈夫ですよ」
安心させようと思ったのか、宮永咲が私の肩に手を置く。
しかし、その彼女の手からも震えが伝わってきた。
白望 『うああああああああああああああああああああっ!!』
エイスリン 「ウッ……ウッ……。シロ、ゴメンナサイッ……」
両手で頭を掻き毟り、意味不明な叫び声をあげる。
唾液を口から垂れ流し、理性を失っていく彼女の姿を見るのは辛かった。
長い時間が経った。
その間、シロは金魚のように口をパクパクさせるだけで、
それ以外は、まるで死んでいるかのように動きを見せなかった。
しかし、微妙な変化が現れる。
白望 『……』
何かをブツブツと呟いている。
さきほどまで死んでいた瞳には、微かな光が宿っているように見える。
その瞳を見たとき、私の心が微かに揺れるのを感じた。
白望 『……ちょいタンマ』
私と宮永咲の間に沈黙が訪れる。
今のは悩んだときにでる、シロの口癖だ。
ということは、「答え」を出す時が近づいている、ということだ。
白望 『……決めた』
咲 「……小瀬川白望」
エイスリン 「……シロ」
白望 『私は……』
咲 「ワタシヲ、ワタシトノジカンヲ、エランデ!!」
エイスリン 「ドウカ、クルミヲ、コロサナイデ……」
二人の私は、同時に強く願った。
白望 『私は、どちらも選ばない……』
白望 『私の選択肢は一つ』
白望 『小瀬川白望が死ぬ』
白望 『ただ、それだけだ』
そこには私のよく知る、人に優しいシロの姿があった。
とても、力強い言葉だった。
私たちに向かって言ったように見えたのは、果たして気のせいだろうか。
咲 「そんな……どうして……」
エイスリン 「シロ……」
座り込んだシロは、「ありがとう」と呟くと目を閉じた。
透き通った白い肌。その綺麗な顔は、どこか笑っているようにも見えた。
咲 「……」
エイスリン 「シロ……」
私たちが提示した悪魔の二者択一。
彼女は、自分が犠牲になることによってそれを拒絶したのだった。
エイスリン 「クルミ……ヨカッタ」
過程は違えど、結果的にクルミの死を選択しなかったこと。
直前になって正気を取り戻した私は、それに心から感謝していた。
――ポツッ。
ホワイトボードに、穢れの無い涙の粒が落ちる。
さきほどまでいた、悪魔の面をした私は霞んでいく。
咲 「……でも、小瀬川白望はここから長い孤独に苦しむことになりますよ」
エイスリン 「……ダイジョーブ。ワタシ、タスケルチカラ、アル」
咲 「それは、どういう……」
以前とは立場が変わっていることに、私は思わず苦笑を漏らす。
強い私が戻ってきた証拠だ。そしてこれからは、私がシロを導くのだ。
そのためには……。
まずは、シロにも現実を知ってもらわなければいけないだろう。
それでも、シロには最大限の配慮をする必要がある。
シロが前へ進むことを選ぶのならば、もちろん現実を伝えるべきだ。
ただ、シロだって強くあり続けるわけではない。前に進むことを、強制してはいけない。
涙で悪魔の選択が消えていた。
そこに私は、新たな二者択一を書き込んだ。
『つらいげんじつをしる』
『しらなくてもいいげんじつからめをつむる』
――シロは前へ進むことを選んだ。
私の知っている以上に、シロは強い人間だった。
エイスリン 「ソレジャア、ワタシモイクネ」
私も行かなければならない。そう思った。
現実を知ったとき、きっとシロは辛い気持ちになるだろう。
そのとき、私は彼女を助けてあげなければならない。
さるさんは違うスレにも適当に書き込みがあればなりにくいんじゃなかったかな
咲 「……本当に、これで良かったと思いますか?」
エイスリン 「……ウン」
咲 「……何故ですか?」
エイスリン 「ダッテ、シロガ、エランダカラ!」
咲 「本当に大好きなんですね……いや、大好きですよね」
「私はそこまで、強く信じることができなかった」と、宮永咲は呟いた。
弱い彼女を、いや、弱い私を、私は強い心で抱きしめた。
エイスリン 「……アリガトウ」
さあ、私はシロの元へと向かわなければならない。
しえん 前すごい勢いの連レスをみたけどそういうことだったのか
な世界を進んでいく。
この空間は、かつて私が孤独だったときのように寒い。
でも、もう少しで会える。シロに。
私を外の世界に連れ出してくれた、大好きなシロ。
今度は、私が連れ出してあげるから。
エイスリン 「……」
それでも、決心は常に恐怖と隣り合わせで闘っている。
取り残される恐怖。死を待つ恐怖。みんながいない恐怖。
みんなは、私のいない世界を憂いてくれるだろうか。
……私は、宮守女子麻雀部のみんなを信じている。
クルミが、サエが、トヨネが、シロが、トシセンセイが。
きっとお互いに支えあって、辛い現実を生き抜いていけるはずだ。
エイスリン (クルミ……)
特に、シロのことはクルミが支えてくれるだろう。
何故なら、彼女と私は秘密を共有し、約束を交わした仲だから。
私のシロに対する気持ちを知っているのはクルミだけだ。
麻雀部の面子が揃い、全国大会の予選に挑む直前のこと。
エイスリン 「ワタシ、シロガスキ……」
必死の覚悟で、私の秘密を打ち明けた。
同性というタブーを犯していることで、彼女から忌避されるかもしれない。
それでも、私はこの素晴らしい気持ちを、苦しい心を誰かに開放してほしかった。
そんな私の告白に対し、彼女は一瞬驚いた表情をした。
そして――頬を赤く染めて、幸せそうに笑った。
胡桃 「……エイちゃんもなんだ!」
そのときから、私とクルミは秘密を共有する仲になった。
恋敵ではない。お互い、大切に思うものが一緒の仲間だ。
二人でシロの好きなところを語り合うこともあった。
胡桃 「エイちゃん、ひらがなの練習しよ!」
エイスリン 「Why?」
胡桃 「だって、エイちゃん恥ずかしがりだし」
胡桃 「気持ちを伝えるとき、手紙も書けたほうがいいよ!」
そしてクルミは自分の気持ちを顧みず、私を最大限にサポートしてくれた。
約束を交わす仲となったのは、あの悲劇が起きた晩だった。
三人が早々に寝てしまったので、私はクルミといつものように話をしていた。
切り出したのは、やはり強い心を持ったクルミからだった。
胡桃 「ねえ、エイちゃん。いつ、シロに気持ちを伝えるの?」
エイスリン 「……」
気持ちを伝える。それは即ち、今までの関係が崩れる恐れがあるということ。
それに仮にうまくいったとしたら、目の前にいるクルミは深く傷つくだろう。
その行為に対して、良い結果があるとは思わなかった。
胡桃 「私ねー、エイちゃんならシロを取られてもいいかな、って思ってるんだ」
エイスリン 「……エ?」
胡桃 「それに、高校卒業したらニュージーランドに戻っちゃうんでしょ?」
彼女の言わんとしていることはわかっている。
帰国したら、次はいつ会えるかわからない。いや、一生会えないかもしれない。
そしたら、きっと私は後悔する。でも……。
エイスリン 「ワタシモ……」
エイスリン 「クルミナラ、シロ、アゲル!」
胡桃 「……エイちゃん」
それは正直な気持ちだった。大好きな二人が、さらに仲良くなる。
そこに私が入れなくても、きっと幸せな気持ちになれるだろう。
胡桃 「じゃあさ、こうしよう?」
エイスリン 「……What?」
胡桃 「もし、どっちかが気持ちを伝えようと決めたときは」
胡桃 「……二人で一緒に伝えよう?」
エイスリン 「……ウン!」
いわゆる、抜け駆け禁止の約束だった。
あくまで平等に、どちらが選ばれても、相手の幸せを喜ぶ。
これが私とクルミが交わした約束だった。
今思えば、選ばされるシロからしてみれば、たまったもんじゃないかもしれない。
第一、シロが同性を好きかもわからない。そしたら、単なる気持ちの押し付けだ。
だから私達は、なかなか動こうとしなかった。
あまつさえ、この現状のままで良いのではないかとも考えていた。
そして、突如最期の夜が訪れた。
この「咲さん」が日本語ぺらぺーらすらすーらな理由はなんだろう
エイスリン (クルミ……)
クルミはほぼ生きることが確定しているらしい。
そうなると、私は現実の世界で彼女と会うことはできないだろう。
やがて、長い長い暗闇の先に、小さな白い粒が現れた。
歩みを進める度に、粒は点へ、点は空間へ、肥大していく。
そして、白い光は私の暗闇の世界を包み込んだ。
エイスリン (マブシイ……)
目が眩む。瞼を閉じざるをえない。
……光が徐々に収束していく。よし、もう大丈夫だ。
目を開く。
そこには、慣れしたんだ麻雀部の部室が描き出されていた。
胡桃 「やっほー、エイちゃん」
塞 「これで役者が揃ったね」
豊音 「ウキウキしてきたよー」
トシ 「さ、シロが来るまでに色々と決めないとね」
類似してるかもしれないスレッド
- 淡「必殺技……?」 (294) - [50%] - 2012/8/10 3:45 ★★
- 白望「雨かぁ……」 (217) - [47%] - 2012/7/9 7:15 ★
- 悟飯「学園都市……?」 (778) - [46%] - 2012/10/22 3:30 ★★★
- 古泉「学園都市……!」 (554) - [46%] - 2010/2/19 8:30 ★★★
- 番長「ペルソナ……?」 (313) - [46%] - 2012/4/29 5:45 ★
- P「正妻戦争……?」 (865) - [45%] - 2012/10/3 0:45 ★★★×6
- aicezuki「学園都市……?」 (742) - [44%] - 2011/3/4 2:15 ★★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について