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    元スレ白望 「二者択一……?」

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    みんなの評価 : ★★★
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    701 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:23:35.72 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    702 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:24:02.70 ID:scGisn770 (-24,-9,-1)
    支援
    703 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:26:06.34 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-117)

    だが、シロはそれらを振り切った。
    甘い誘惑を断ち切って――私のほうを振り返った。

    白望 「……エイスリン」

    彼女は私の瞳をまっすぐに捉える。

    白望 「エイスリンの気持ち、教えて」

    彼女の瞳からは強い意志を感じる。
    それでいて……とても、優しい。
    そこにいるのは、私の知っている、いつものシロだった。

    だから、私は正直な気持ちを吐露した。

    エイスリン 「ワタシハ……」

    エイスリン 「シロ、シンデホシクナイ」

    目尻に涙が溜まっていった。
    704 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:26:34.39 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    705 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:27:31.48 ID:0scBp9pjO (-19,-9,-1)
    支援
    706 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:29:17.85 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-159)

    白望 「……ちょい、タンマ」



    長い、沈黙。



    白望 「……お待たせ」

    そこからの、シロは凄かった。
    塞と豊音の立直、胡桃の闇聴に臆することなく牌を切っていく。
    まるで、その先が見えているかのように。
    序盤に見せた、守りを重視した麻雀はもうそこには無い。

    「ちょい、タンマ」
    この口癖は、彼女が逡巡に陥る合図だ。
    そして、今迷うことなく手を進めていく彼女を見ればわかる。
    シロは「迷い」、そして「答え」を出したのだ。

    やがて、シロが聴牌する。
    平和・一盃口・ドラ1、高めで純チャン。

    そして二巡後、彼女は引いてきた牌をなぞると呟いた。

    白望 「みんな……」
    707 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:30:16.46 ID:OvDQdd3v0 (+2,+14,-12)
    しえん
    708 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:31:50.12 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    709 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:33:29.85 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-130)

    この瞬間、私は彼女の意志を完全に理解した。
    ならば、私には急いで用意しなければならないものがある。

    彼女が前に進むための、二者択一を。

    ホワイトボードに金色のペンで文字を書く。
    ……できた。

    『げんじつのせかいをいきる』

    続いて、ボードを裏返して銀色のペンを握る。
    が、手が止まる。
    選択は決まっているのだ。書く必要があるのだろうか。

    エイスリン 「……」

    最後のわがままだった。
    シロはきっと選ばないだろう。
    いや、この選択肢を見ることすら、ないかもしれない。

    エイスリン (シロ……ゴメンナサイデシタッ……)

    それでも、書かずにはいられなかった。
    710 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:33:55.53 ID:OvDQdd3v0 (+2,+14,-12)
    しえん
    711 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:34:49.44 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    712 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:35:01.82 ID:ABsq+tHLO (-21,-9,-1)
    支援
    713 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:35:06.94 ID:0scBp9pjO (+19,+29,-1)
    繋がるねえ
    714 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:37:13.99 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-76)

    『りそうのせかいをいきる』

    ――理想の世界。
    それは私にとっての、理想が描かれた場所。

    シロと一緒に。ずっと一緒に。
    絵を描いたり、お話をしたり、手を繋いだり。
    それだけでいい。二人で仲良く、ただただゆっくりと……。

    エイスリン 「ウッ……ウッ……」

    涙が止まらなかった。
    私の恋が、人生が終わろうとしていた。

    白望 「……私は、前へ進む」

    白望 「辛い現実を、生きていく」

    白望 「それが……私の選択だから」





    白望 「……ツモ。6400オール」

    その時が、きた。
    715 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:38:00.47 ID:T8298DIC0 (+19,+29,-4)
    辛いわ…
    716 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:39:00.40 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    717 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:39:28.36 ID:wz5pGD1Z0 (-21,-9,-1)
    支援
    718 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:41:55.42 ID:0scBp9pjO (+12,+22,+0)
    泣いた
    719 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:42:13.65 ID:dgiksT+u0 (+17,+29,-2)
    エイちゃん…
    720 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:42:49.26 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-112)

    トシ 「これで、終わりだね」

    センセイがパンと手を叩く。
    ……とても暖かな笑みを浮かべている。

    胡桃 「あーあ、負けちゃったかー」

    豊音 「最後の和了りは、全く迷いが無かったねー」

    「やっぱり、シロはそっちを選んだかー」

    三人もシロに笑顔を向けている。
    優しさに溢れた微笑みだ。

    どうやら弱い私は、最後の最後に折れてくれたようだ。

    白望 「エイスリン」

    エイスリン 「シロ……ヨカッタ」

    言葉は本心だった。ただ、涙が止まることは無かった。
    だけど、シロのために、強い私でいたい。
    だから私も、精一杯の笑顔をシロに向けた。
    721 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:45:50.89 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    722 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:46:34.43 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    723 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:46:57.34 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-132)

    白望 「それじゃあ、私はそろそろ行くから」

    シロが席を立つ。前だけを向いて進んでいく。
    決して後ろを振り返ることなく、トヨネの背後にある扉の前へと進んだ。

    『げんじつのせかいをいきる』

    その瞬間、私は幸福に包まれていた。

    不思議な能力も、道具もいらない。
    私の言葉で、シロを間接的に彼女を導くことができた。
    私の気持ちで、シロを助けることができたのだ。

    トシ 「シロ、これからきっと辛いことがたくさんあると思う」

    「でも……私達も力になるから」

    胡桃 「そうそう、現実の私たちが助けるよ」
    724 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:50:32.83 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-77)

    シロを送り出す言葉。
    「力になる」、「助ける」
    現実の彼女達に、これからがあるからこその言葉。

    でも、私にはこれからが無い。
    シロと、クルミと、サエと、トヨネと、センセイと生きるこれからが無い。

    だから、私はこう言うしかなかった。

    エイスリン 「シロ、……ガンバッテ」



    視界が霞む。意識が薄れていく。

    エイスリン (ミンナ、バイバイ……)

    必ず、みんなで現実を一緒に生きぬいてください。
    どうか……シロを支えてあげてください。
    725 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:51:07.89 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    726 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:53:10.84 ID:D2mkPFnf0 (+40,+30,-18)











    白望 「みんな……ありがとう」









    薄れゆく意識の中。
    最後に私が聞いたのは、大切な人の感謝の言葉だった。
    727 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:53:14.39 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    728 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:56:48.07 ID:D2mkPFnf0 (+47,+30,-94)

    見知らぬ、白い天井。
    焦点は定まらず、頭はぼんやりとしている。

    エイスリン (……テンゴク、カナ)

    死の実感が無い。
    意識が朦朧としていると、空間もあやふやだ。
    本当に、私は死んでしまったのだろうか。

    手を動かしてみる。問題なし。
    膝を曲げてみる。こちらも問題なし。

    首を傾けてみる。
    左。何やらよくわからない機器だらけだ。
    右。ミギ……。

    胡桃 「エイちゃん……」

    大泣きしたクルミが抱きついてきたのは、その直後だった。
    729 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:58:19.27 ID:48v4ZXHA0 (+12,+27,-4)
    え…
    730 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:58:37.72 ID:20A+zACnO (-27,-15,-1)
    731 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:58:59.24 ID:evox9x0X0 (+12,+27,+0)
    えっ
    732 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:59:07.59 ID:TG9A1bYIO (+4,+16,-1)
    ほう
    733 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:59:12.35 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    734 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 13:59:51.39 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-100)

    胡桃 「良かった……。良かったっ……!」

    ボロボロと涙を流しながら、抱きしめる力は徐々に強くなる。
    その圧力が、暖かさが、私に生きていることを実感させる。

    エイスリン (ワタシハ、イキテル……?)

    ズキン。
    激しい頭痛が私を襲う。
    それと同時に、胸が痛む。呼吸が荒くなる。目が霞む。

    エイスリン 「ウッ……ウゥ……」

    胡桃 「エイちゃん、どうしたの!?」

    あまりの痛みに呻く。体が捩れる。
    細めた視界の隙間から、泣き叫ぶクルミが見える。

    どうやら、これは神様が……。
    いや、“the god of death”が与えてくれた、僅かな時間のようだ。
    735 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:02:21.58 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-95)

    ならば、この残された時間をどう使うか。

    エイスリン 「ク、ルミ……。シ、ロ…… シロハ……」

    胡桃 「エイちゃん……シロは、まだ意識を取り戻してないの」

    エイスリン 「ソ……ナン……ダ……」

    胡桃 「エイちゃん! 大丈夫!? 苦しいの!?」

    エイスリン 「キイテ、クルミ……」

    私は力を振り絞って、クルミの目元に手を添える。
    そして震える人差し指で、そっと涙を拭った。

    胡桃 「エイちゃん……」

    エイスリン 「ホワイト……ボード……ペ、ン」
    736 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:02:58.99 ID:T8298DIC0 (+11,+21,-1)
    さる
    737 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:03:10.52 ID:dgiksT+u0 (+2,+14,-12)
    しえん
    738 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:07:40.40 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-221)

    胡桃 「ホワイトボードとペンだね!?」

    クルミが慌てて、辺りを見回す。すぐに見つかったようだ。
    手渡された愛用のボードは、少し黒く焦げていた。

    死神が私に時間を与えてくれたというのなら、
    私はここに記そう。シロへのメッセージを。

    全身全霊の力を込めて、私は右腕を動かしていく。
    一字、一字、ゆっくりと。震える右手で。だが、なかなかうまく書けない。

    胡桃 「エイちゃん、頑張って」

    クルミが目を瞑ったまま、手を添えてくれる。
    震えが止まる。……いつも、クルミには助けられる。

    たった十一文字が、とても遠かった。
    やっとの思いで完成させたそれを、クルミに渡す。

    エイスリン 「クルミ……コレヲ、シロニ……」

    クルミが頷きながら、ボードに視線を落とす。
    すると、クルミは私をキッと見据えてこう言った。

    胡桃 「エイちゃん、一番伝えたい気持ちを書かなきゃだめだよ」

    強気な瞳は、濡れていた。
    739 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:08:36.55 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    740 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:11:34.42 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-153)

    エイスリン (……フフッ)

    やはり、クルミには敵わない。
    必死に書いたにも関わらず、あっさりと本心を見抜かれた。

    『しろ だいすき』

    本当はこの六文字が書きたかった。
    だが、私はそれを書かなかった。いや、書けなかったのだ。
    これから死んでいく私の気持ちを押し付けたら、シロを困らせてしまうことになる。

    エイスリン 「マエニ、イッタヨネ……」

    胡桃 「……エイちゃん?」

    エイスリン 「クル……ミナ……ラ、シ……ロ、アゲル、ッテ……」

    胡桃 「嫌だ。嫌だよ、エイちゃん、約束したじゃない……」

    ああ、どうやら、クルミとの約束は破棄したほうが良さそうだ。
    告白するときは、二人一緒に……。でも、もう私には時間が無い。

    大丈夫、クルミ。
    私のことは気にしないで、シロに気持ちを伝えて。

    エイスリン 「ク、ルミ………シ……ロ…ヨ……シ……ク…」

    胡桃 「エイちゃん! エイちゃん!!」
    741 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:11:48.82 ID:0scBp9pjO (-19,-9,-1)
    支援
    742 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:13:12.11 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    743 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:14:43.39 ID:D2mkPFnf0 (+39,+29,-4)



    シロ。



    散々迷わせて、ごめんなさい。



    そして。








    前に進んでくれて、ありがとう。



    744 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:15:02.01 ID:dgiksT+u0 (-2,+9,-15)
    しえん?
    745 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:17:09.38 ID:of4LjBTZ0 (+3,+15,-1)
    きてた
    746 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:17:09.84 ID:7RzPCHKv0 (-21,-9,-1)
    支援
    747 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:18:20.04 ID:D2mkPFnf0 (+45,+30,-106)

    私は一人、病室のベッドでホワイトボードを抱えて震えていた。
    さんざん泣き腫らした顔は、きっとひどいことになっているだろう。

    胡桃 (エイちゃんを助けられなかった……)

    後悔の波が押し寄せる。自責の念に苛まれる。

    シロと、エイちゃん。
    二人が一緒になれるように、色々と画策をしてきた。
    だが、それも全て泡に帰した。

    やはり、あのときに選ばれるべきだった。
    悔やんでも仕方が無い。だが、それでも……。




    胡桃 (あのとき、私が死ぬべきだったんだ)
    748 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:18:22.11 ID:0scBp9pjO (-9,+0,-4)
    乙?
    749 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:18:52.20 ID:T8298DIC0 (-19,-9,-1)
    支援
    750 : 以下、名無しにか - 2012/09/02(日) 14:21:20.72 ID:D2mkPFnf0 (+47,+30,-91)

    三日の意識不明の間、私は不思議な体験をしていた。
    まるで幽霊のように、現実と、暗い世界をいったりきたり。

    ベッドで機器に繋がれている自分の姿も見た。
    お医者さんと、熊倉先生が話している声も聞いた。

    お医者さんは言っていた。
    エイちゃんは、助かる可能性がほぼない、と。

    それを聞き、私は絶望した。
    助けることはできないのだろうか。

    その直後、エイちゃんの世界が出来上がった。
    何故か私もそこにいた。

    そして、私はエイちゃんに近づいた。
    芽生えた能力、「自分を隠す力」を利用して。
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