私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。
元スレ白望 「二者択一……?」
SS スレッド一覧へ / SS とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★★★
レスフィルター : (試験中)
咲 「文字は書けますか?」
エイスリン 「アルファベット!」
咲 「……できれば、日本語で」
エイスリン 「……ヒラガナ?」
咲 「急に自信が無くなりましたね。いいでしょう、必要ならば私が教えます」
自信なさげな態度をとったのは、実は照れ隠しだった。
日本に来てからひらがなの会得に苦心していたが、最近になってメキメキと上達しているのだ。
エイスリン (クルミト、ヒミツノトックン、シテルカラ!)
咲 「それでは、ペンを二本貸してください」
彼女に言われるまま、私は左右の耳に挟んだペンを手渡す。
彼女が二つのペンを軽く撫ぜる。
咲 「これで、大丈夫です」
片方には、「gold」の文字。
もう片方には、「silver」の文字。
咲 「色分けしたのは、選択肢を書き分けるためです」
咲 「二色ですので……二者択一になりますね」
ニシャタクイツ?
私が尋ねると、宮永咲は丁寧に意味を教えてくれた。
二つの選択から、一つを選び出すこと。
なるほど……。また一つ、私は日本語を覚えた。
咲 「では、早速……小瀬川白望が水を欲しがっていましたね」
咲 「ゆっくりでいいです、書いてみましょう」
シロは薄暗い部屋にいた。
ひとしきり部屋を見回した後、扉に手をかけた。
エイスリン (シロ! ミズ! ハヤク、ノマセナイト!)
私は「silver」のペンを手に取り、慌ててホワイトボードにペンをあてる。
咲 「ゆっくりでいいです。ゆっくりでいいですから……」
咲 「まずは、『み』の文字を。書けますか?」
エイスリン 「ウン!」
私はホワイトボードに『み』と書く。
急いで書いたが、自分的に綺麗に書けたことに少し満足する。
咲 「あ、文字の形は反映されないんで、汚くても大丈夫ですよ」
エイスリン 「エ……」
咲 「さあ、続きを書きましょう。『みずを』まで書いてください」
言われるがままに、ペンを走らせる。
もう形など気にしていない。一刻も早く、シロに水を飲ませたい。
咲 「そしたら……そうですね。水を得る、とでもしましょうか?」
私の耳に、彼女の言葉は入ってなかった。
一心不乱に私は文字を書いた。彼女との、初めての会話を思い出しながら。
続き気になるけど寝ないとあかん・・・
朝まで残ってないよなぁさすがに
朝まで残ってないよなぁさすがに
―――――――――――――――――――――――――
エイスリン 『パン、タベル?』
白望 「うん」
―――――――――――――――――――――――――
懐かしい、教室での一場面。シロとの初めての会話。
そしてこの直後に、私はシロに引かれて麻雀部の部室へ行ったのだ。
エイスリン (……シロ!)
そして出来上がった、選択肢は――
『みずをのまない』
水を飲まない?……思い出に影響され、疑問文となっていた。
いや、見方によっては否定文だろうか。
咲 「エイスリンさん……。もしかして、小瀬川白望のこと嫌いなんですか?」
私がこの後、必死に説明したのは言うまでもないだろう。
おちょこちょいなエイちゃん可愛い
ただエイちゃんて書くとどうしても永ちゃんの方が頭に浮かぶ
ただエイちゃんて書くとどうしても永ちゃんの方が頭に浮かぶ
咲 「仕方ないですね。では、次の選択肢で整合性を図りましょう」
咲 「ホワイトボードを裏返してください」
エイスリン 「……Why?」
咲 「両面、描けるようにしておきましたから」
ホワイトボードを裏返すと、確かにそちらも表面と同様の材質になっていた。
宮永咲は、「二色にした意味が無い」や「でも、きっとやらかすから」などと呟いてる。
そして彼女は私に金のペンを手渡すと、しかめっ面でこう言った。
咲 「いいですか、私の言うとおり、一字一句間違わずに書いてくださいね」
エイスリン 「……ハイ」
こうして、初めて私がシロに選択肢を与えた。
『みずをのむ』と『みずをのまない』。
試行錯誤して完成させた二者択一だったため、シロが正しい選択をできるか不安だった。
しかし、シロが迷わず前者を選んだのを見て、私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
>>515
おっちょこちょいなヤザワ
おっちょこちょいなヤザワ
それからとういもの、私はこの不思議な空間で何度も二者択一の提示を行った。
シロが求めれば、私はすぐにホワイトボードにペンを走らせる。
食事をするか、否か。
体を洗うか、否か。
排泄をするか、否か。
水を飲むか、否かの選択については、気を遣って何度も行った。
咲 「小瀬川白望は、現実で起きた火事に無意識でうなされています」
咲 「彼女が頻繁に水を求めるのは、そういったことなんでしょう」
エイスリン 「ワタシ、オナカスカナイ……Why?」
咲 「あなたは99.9%死んでいますから。生に関する欲求が芽生えないんでしょう」
咲 「小瀬川白望はどちらかと言えば生に近い状態ですから」
なるほど。
生に近しい状態のシロは、生の象徴である食欲や睡眠欲を覚えている、ということか。
まだ、死の淵に引きずりこまれないように、必死に闘っているのだろう。
当初、私はシロに選択肢を与えることで、なんとも言えない満足感を得ていた。
私がシロを支えている。いや、シロは私によって支えられている。
……この感情は、背徳感、支配欲といったほうが正しいのかもしれない。
しかし、それらはやがて罪悪感へと変わっていく。
日に日に、シロが死んでいくのだ。
それは、生物としての肉体的な死ではない。
長い孤独の中で理性を徐々に失っていく。いわば、人間としての死だ。
白望 『……あー』
白望 『うぅ……うぁっ……ぁ、あ、あ!』
シロ 「サキ! シロガ、シロガ……ドウシヨウ!?」
シロがおかしくなっていく姿を見る度に、私は慌てふためいてペンを握る。
しかし、その度に彼女は私を諌めるのだ。「まだ、そのときではありません」、と。
どうすればいい? 私に何が出来る?
彼女に必要なものは、一体なんだろう?
私は答えを知っていた。
何故なら、状況は違えど同じ心境に立たされたことがあるから。
孤独から死んだ人間を救い出す方法。それは……。
咲 「……小瀬川白望に会いに行く?」
私の提案に、宮永咲は眉をしかめた。
この表情をするということは、彼女は提案を快く思っていないのだろう。
しかし、それでも私は必死に訴えた。すると、彼女も思慮に耽っていく。
咲 「ふーむ、なるほど、なるほど、なるほど……」
咲 「そうですね。そろそろ、いい頃合いでしょうか」
エイスリン 「ジャア、イッテキマス!」
シロの様子が映る白い液晶のようなものに向かって、私は走り出す。
しかし、首から提げたボードを宮永咲に掴まれると、喉から「グエッ」と音が出た。
咲 「落ち着くことを覚えましょう。あなたが行くのは、得策ではありません」
エイスリン 「ドウシテ……?」
>>529
蛙かなにか?
蛙かなにか?
咲 「今、興奮状態のあなたが向こうに行けば、何をするかわかりません」
咲 「ましてや、向こうの空間は不安定です。精神状態にかなり左右されすい」
咲 「エイスリンさんという刺激が、小瀬川白望にどのような変化をもたらすか予想できません」
「あまりにリスキーです」という言葉で彼女は締めた。
ならば、どうすればいいのか。きっと、私は必死の泣き顔だったのだと思う。
教えを懇願する私に、彼女はとても優しい表情を見せた。
咲 「ここも、あちらも核はイメージです。他の親しい人を、具象化させましょう」
エイスリン 「グショーカ……?」
簡単に言えば、私以外の誰かをイメージとして登場させる、ということらしい。
そんなことが出来るのか、とも思ったが、シロのマヨヒガと私の理想を実現する力は、
この空間においてかなりの支配を発揮するため、可能なことなのだそうだ。
エイスリン 「デモ……」
咲 「どうしました? なにか、問題でもありますか?」
エイスリン 「ズルイ! ワタシモ、シロニアイタイ!!」
咲 「……はぁ」
溜め息をつかれた。私の嫉妬に対する、深い深い失望だろうか。
それでも彼女は、「どうしましょうか……」と私のために思索をしてくれる。
白望 『だ、誰か……話がしたい』
エイスリン 「!」
咲 「話を、ですか……。なるほど、これでいきましょう!」
彼女は笑顔でポンと拳を打った。
彼女の提案はこうだ。
今回提示する二者択一は、「私以外の誰か」と「話だけをする」こと。
やはり、私の登場は危険すぎるとの判断を下したらしい。
ただし、他の人についても、姿は現さず声のみの登場にする。
そうすることで、私の嫉妬をなるべく抑える作戦だ。
エイスリン 「……OK」
私はその提案を了承することにした。
少々不満な点もあったが、何よりこれ以上シロが苦しむ姿を見たくない。
私は銀色のペンを持つ。誰にするべきだろうか。
クルミ? トヨネ? サエ? トシセンセイ? ……決めた。
ボードにゆっくりと文字を書き出す。が、一文字目で宮永咲からストップがかかった。
『く』
咲 「ちょっと、待ってください」
エイスリン 「?」
咲 「……なんと書くつもりですか?」
エイスリン 「クルミト、ハナス!」
私が自信満々に答えると、彼女は何度目かわからない溜め息をついた。
何が不満だったのだろうか。……日本人の言う、「空気を読む」ということは非常に難しい。
咲 「よく考えてみてください」
咲 「鹿倉胡桃を、胡桃と呼ぶ。そんな人は限定されています」
咲 「小瀬川白望は勘が良い。すぐに、近しい誰かが選択肢を用意していると察するでしょう」
咲 「さっき、言いましたよね。向こうの空間はとても不安定だ、行動は慎重にしたい、と」
エイスリン 「モ、モウシワケ、アリマスデス……」
咲 「次から気をつけてくれれば、いいですよ。さて、どうしたものか……」
どうも彼女には頭があがらない。
しかし私の失敗を、その都度彼女にフォローしてもらうのは申し訳ない。
どうにかできないものだろうか。
エイスリン 「ク……ク……」
く……。ク……。
……ク、クマクラ? クマクラトシ!
エイスリン 「ジャア、トシセンセイデイイヤ」
またしても溜め息が聞こえてきたが、私は聞こえないふりをした。
ジャア、トシセンセイデイイヤ…じゃあ、トシ先生でいいや
トシさん泣くで
トシさん泣くで
『くまくらとしとはなす』
『うすざわさえとはなす』
二者択一が完成した。
センセイを選んだのは前述した通りだ。
サエを選んだのは、クルミと並んでシロと付き合いが長いと思ったから。
なんとなくだけれど、彼女らは私とトヨネよりシロを理解している気がした。
咲 「さて、小瀬川白望はどちらを選ぶんでしょうか」
エイスリン 「……ドキドキ」
シロは吸い込まれるように、『うすざわさえとはなす』と書かれた扉の前に進んでいく。
必死に扉を開けようとしているのだが、手が震えているのか、うまく取っ手を掴むことができていない。
エイスリン 「シロ……ガンバッテ……」
そして、やっとのことでシロが取っ手を掴むことに成功する。
ゆっくりと扉を押し、徐々に速度を上げていくと……扉を完全に開け放った。
エイスリン 「ヤッタ! サキ、ヤッタネ!」
喜びのあまり、隣にいた宮永咲に抱きつく私。
「キョーキランブです」と呟きながらも、彼女は頬を掻いてはにかんでいた。
しかし、喜びで膨らんでいた心は徐々に萎んでいった。
何故か。簡単に言えば、嫉妬だ。
塞と楽しげに話すシロの姿を見て、また私の心の汚い部分が姿を現したのだ。
白望 『えーと……塞の好きな食べ物って、なんだっけ』
エイスリン 「マーマイト、タップリノ、パン……」
シロと擬似的に会話をすることを試みるも、空しくなってすぐにやめた。
確かにシロの孤独は辛いと思う。けれど……私だって、孤独なのだ。
心が急速に冷えていく。
エイスリン (シロ……デンワオワラナイカナ)
ぼんやりと、そんなことを考えていた。
いけないとはわかりつつも、心の悪魔はチラチラと自己主張する。
きっと、私はシロと「孤独」を共有することで、自我を保とうとしているのだ。
そして次の瞬間……
白望 『塞、友達になってくれてありがとう。本当に大好きだから……』
私は心の底から、親友であるサエに嫉妬してしまった。
なまじエイスリンの必死さが伝わってくる分、
終末に待ってる悲しみの大きさを思うとどうにも堪らんね
終末に待ってる悲しみの大きさを思うとどうにも堪らんね
「本当に大好きだから」
その言葉が私ではなく、他の人に向けられたことが悲しかった。
もちろん、シロがみんなのことを好きなのはわかっている。
それと同様に、私だってみんなのことが大好きだ。
ただ、死を待つしかない運命、この暗闇での長い孤独。
シロだけではない、気づけば私も狂気の世界へ堕ちているのだ。
エイスリン 「シロ……ヒッグ……エグッ」
涙が止まらない。
シロの名前を呼べば呼ぶほど、涙の量が増えていく。
このとき私は初めて、自分の死に対する運命を呪ったのだった。
咲 「エイスリンさん……」
涙を流し、嗚咽を漏らし、肩を震わせる。
そんな私を、宮永咲はずっと抱きしめてくれていた。
類似してるかもしれないスレッド
- 淡「必殺技……?」 (294) - [50%] - 2012/8/10 3:45 ★★
- 白望「雨かぁ……」 (217) - [47%] - 2012/7/9 7:15 ★
- 悟飯「学園都市……?」 (778) - [46%] - 2012/10/22 3:30 ★★★
- 古泉「学園都市……!」 (554) - [46%] - 2010/2/19 8:30 ★★★
- 番長「ペルソナ……?」 (313) - [46%] - 2012/4/29 5:45 ★
- P「正妻戦争……?」 (865) - [45%] - 2012/10/3 0:45 ★★★×6
- aicezuki「学園都市……?」 (742) - [44%] - 2011/3/4 2:15 ★★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について