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元スレ岡部「みんな俺から離れていく……」
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買ったばかりの携帯から──
ピリリリリ
着信音。見覚えのない番号──
ピリリリリ
底知れぬ不安が思考を支配する。
出たくない。
ピリリリリ
だがそれが止まる気配はない。
意を決して指に力を込める──
ピッ
その瞬間、周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
女性「ちょ、ちょっと!? 大丈夫!? しっかりして!」
ごめん……なさい……。
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』
ピリリリリ
着信音。見覚えのない番号──
ピリリリリ
底知れぬ不安が思考を支配する。
出たくない。
ピリリリリ
だがそれが止まる気配はない。
意を決して指に力を込める──
ピッ
その瞬間、周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
女性「ちょ、ちょっと!? 大丈夫!? しっかりして!」
ごめん……なさい……。
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』
……熱い。
からだが──
あたまが──
煮えたぎる熱湯の中にいるみたい。
ボコボコと湧き上がる泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
見覚えのない記憶の泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
永遠にも感じられる時間。
まゆり……。
たすけられない?
このまましぬ?
熱はやがて引いていく。
今、深く暗い海の底にいる。
無意識に息が漏れる。また泡。
くりす……。
くりす?
くりすってだれ?
からだが──
あたまが──
煮えたぎる熱湯の中にいるみたい。
ボコボコと湧き上がる泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
見覚えのない記憶の泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
永遠にも感じられる時間。
まゆり……。
たすけられない?
このまましぬ?
熱はやがて引いていく。
今、深く暗い海の底にいる。
無意識に息が漏れる。また泡。
くりす……。
くりす?
くりすってだれ?
2000年 1月14日
岡部「……ぁ」
女性「あっ!」
岡部「あれ……」
女性「良かった。目を覚ましたのね、倫太郎くん」
岡部「……あ、叔母……さん? あれ……ぼくは……」
叔母「あなた一ヶ月も熱にうかされてて……もう大変だったのよ」
叔母「でも、もう大丈夫だからね」
岡部「ねえねえそんなことより聞いてよ!」
叔母「?」
岡部「夢を見たんだ、すごく長い夢」
岡部「ぼくが大人になるまでの夢!」
岡部「それでね? けんきゅうじょをつくって、色んな仲間もいて!」
岡部「それで……あれ?」
岡部「……ぁ」
女性「あっ!」
岡部「あれ……」
女性「良かった。目を覚ましたのね、倫太郎くん」
岡部「……あ、叔母……さん? あれ……ぼくは……」
叔母「あなた一ヶ月も熱にうかされてて……もう大変だったのよ」
叔母「でも、もう大丈夫だからね」
岡部「ねえねえそんなことより聞いてよ!」
叔母「?」
岡部「夢を見たんだ、すごく長い夢」
岡部「ぼくが大人になるまでの夢!」
岡部「それでね? けんきゅうじょをつくって、色んな仲間もいて!」
岡部「それで……あれ?」
岡部「ぼく……なんで泣いてるんだろう……。おかしいな、夢の話なのに……」
叔母「……大丈夫、叔母さんが付いてるから……」
岡部「ねえ……まゆりは? まゆりに会いたい」
叔母「まゆ……り? 誰かしら」
義叔父「友だちかなんかだろう」
叔母「でも、2000年クラッシュの直後だし……今は東京中が混乱してて……とてもお友達と連絡なんて……」
義叔父「日本──いや世界中も大混乱だ。そのせいで義兄さんたちの葬儀もいつになるか──」
岡部(そう……ぎ……?)
叔母「ちょっとあなた!」
義叔父「まだ8歳だ、葬儀の意味なんて分からんさ」
叔母「……大丈夫、叔母さんが付いてるから……」
岡部「ねえ……まゆりは? まゆりに会いたい」
叔母「まゆ……り? 誰かしら」
義叔父「友だちかなんかだろう」
叔母「でも、2000年クラッシュの直後だし……今は東京中が混乱してて……とてもお友達と連絡なんて……」
義叔父「日本──いや世界中も大混乱だ。そのせいで義兄さんたちの葬儀もいつになるか──」
岡部(そう……ぎ……?)
叔母「ちょっとあなた!」
義叔父「まだ8歳だ、葬儀の意味なんて分からんさ」
岡部「ねえ、お父さんとお母さん死んじゃったの?」
叔母「え、え!? す、少し遠くに行っちゃっただけよ」
岡部「今、そうぎって……」
義叔父「……っ」
岡部「うそだ、夢の中では二人ともずっと生きてて……」
岡部「うそだうそだうそだ……」
叔母「倫太郎くん……」
岡部「なんだよこれ……なんだよこれぇぇぇ!」
叔母「倫太郎くん……大丈夫、大丈夫だから……!」
叔母「え、え!? す、少し遠くに行っちゃっただけよ」
岡部「今、そうぎって……」
義叔父「……っ」
岡部「うそだ、夢の中では二人ともずっと生きてて……」
岡部「うそだうそだうそだ……」
叔母「倫太郎くん……」
岡部「なんだよこれ……なんだよこれぇぇぇ!」
叔母「倫太郎くん……大丈夫、大丈夫だから……!」
2001年
~小学校~
少年「おかべって頭いいよなー」
岡部「そんなことないと思う」
少年「親がすぱるたなのか?」
岡部「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。なんとなく解き方が閃くっていうか、覚えてるっていうか」
少年「またまたー、ガリ勉してんじゃねーのー?」
岡部「はは……」
~小学校~
少年「おかべって頭いいよなー」
岡部「そんなことないと思う」
少年「親がすぱるたなのか?」
岡部「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。なんとなく解き方が閃くっていうか、覚えてるっていうか」
少年「またまたー、ガリ勉してんじゃねーのー?」
岡部「はは……」
青年「なあ……母さん、俺、あいつ苦手だよ」
叔母「あいつって誰よ」
青年「倫太郎。年下のくせに妙に落ち着いてるっていうかさ、なんか生意気」
叔母「あんたが子供すぎるの、中学生でしょ?」
青年「そうだけどさー……」
叔母「でも、もうちょっと子供らしくしてもいいのにねぇ……」
叔母「まだ私達に遠慮してるのかしら、もう随分経つのに」
叔母「少し可愛げないわよね」
岡部「……」
岡部(聞かなかったことに……)
ギッ
青年・叔母「!?」
岡部「……あ」
叔母「あ、や、やだ……いたの? あはは……」
岡部「……す、すみません」
叔母「あいつって誰よ」
青年「倫太郎。年下のくせに妙に落ち着いてるっていうかさ、なんか生意気」
叔母「あんたが子供すぎるの、中学生でしょ?」
青年「そうだけどさー……」
叔母「でも、もうちょっと子供らしくしてもいいのにねぇ……」
叔母「まだ私達に遠慮してるのかしら、もう随分経つのに」
叔母「少し可愛げないわよね」
岡部「……」
岡部(聞かなかったことに……)
ギッ
青年・叔母「!?」
岡部「……あ」
叔母「あ、や、やだ……いたの? あはは……」
岡部「……す、すみません」
2004年
~中学校~
少年A「なあ、数学の宿題見せてくれよー」
岡部「またか、いい加減自分でやってこいよ」
少年A「いいだろー? 岡部なら宿題なんてちょちょいのちょいだろ!」
岡部「……たく、仕方ないな」
少年A「へへっ、サンキュー!」
~中学校~
少年A「なあ、数学の宿題見せてくれよー」
岡部「またか、いい加減自分でやってこいよ」
少年A「いいだろー? 岡部なら宿題なんてちょちょいのちょいだろ!」
岡部「……たく、仕方ないな」
少年A「へへっ、サンキュー!」
~トイレ~
少年A「ったくよー。岡部の奴、また宿題ガチでやってやがった」
少年B「空気読めってんだよな、全問正解とか怪しまれるっつーの」
少年C「つか、ズルでもしてんじゃね?」
少年A「なくはねーよなぁ」
少年B「それで調子乗ってるとしたら痛すぎだろ」
少年C「たまに予言じみたこと言うのも痛いよなー」
少年B「そうそう、あいつの口癖、”なんか見覚えがある”だからな」
少年A「いてーいてー! はははっ」
岡部「……っ」
少年A「ったくよー。岡部の奴、また宿題ガチでやってやがった」
少年B「空気読めってんだよな、全問正解とか怪しまれるっつーの」
少年C「つか、ズルでもしてんじゃね?」
少年A「なくはねーよなぁ」
少年B「それで調子乗ってるとしたら痛すぎだろ」
少年C「たまに予言じみたこと言うのも痛いよなー」
少年B「そうそう、あいつの口癖、”なんか見覚えがある”だからな」
少年A「いてーいてー! はははっ」
岡部「……っ」
TV「連れてなど行かせぬぞ! 貴様はこの私の人質なのだからな!」
青年「はははっ!」
岡部「……っ」
岡部「くだらない……ただの厨二病じゃないか」 ボソッ
青年「は?」
岡部「……何がマッドサイエンティストだ!」
青年「……なにTVにケチつけてんだよ」
叔母「ちょ、ちょっと……」
岡部「あ……いや……」
青年「意味分かんね」
義叔父「おいおい、食事中だぞ、二人とも」
岡部「……すみません」
青年「……」
TV「フゥーハハハ!」
青年「はははっ!」
岡部「……っ」
岡部「くだらない……ただの厨二病じゃないか」 ボソッ
青年「は?」
岡部「……何がマッドサイエンティストだ!」
青年「……なにTVにケチつけてんだよ」
叔母「ちょ、ちょっと……」
岡部「あ……いや……」
青年「意味分かんね」
義叔父「おいおい、食事中だぞ、二人とも」
岡部「……すみません」
青年「……」
TV「フゥーハハハ!」
岡部(なんだよ……何なんだよコレ)
岡部(デジャブってやつなのか?)
岡部(まゆり……まゆりは今どこで何をしてるんだ)
岡部「……」
岡部(眠れないな、トイレにでも行こう)
岡部(デジャブってやつなのか?)
岡部(まゆり……まゆりは今どこで何をしてるんだ)
岡部「……」
岡部(眠れないな、トイレにでも行こう)
『もう限界だっつの』
岡部「……?」
『でもねぇ……』
『俺だって我慢してんの、でもあいつはいつまで経っても塞ぎこんだままだし、暗いし笑わねーし』
『今日の晩飯んときだって聞いたろ? 事あるごとにわけわかんねーことばっか言ってさ』
『そう言うな、倫太郎も両親を無くして辛い思いをしてきているんだよ』
『2000年を境に色々と変わってしまって、混乱してるのよ……』
『でももう4年だぜ!? 俺だって友達亡くしてたりなぁ!』
『最近は言わなくなったけど、最初の頃はまゆりがどーとかこーとか煩かったよな!』
『俺だって、あの頃は辛かったんだぞ!?』
『論点がずれてきている、ともかく倫太郎はまだ中学生だ、追い出すなんてとてもじゃないができない』
『そうよ、少なくとも中学卒業までは……ねぇ』
岡部「……っ」
岡部(俺の居場所は……ここじゃない)
岡部(学校にも……家にもないんだ)
岡部「……?」
『でもねぇ……』
『俺だって我慢してんの、でもあいつはいつまで経っても塞ぎこんだままだし、暗いし笑わねーし』
『今日の晩飯んときだって聞いたろ? 事あるごとにわけわかんねーことばっか言ってさ』
『そう言うな、倫太郎も両親を無くして辛い思いをしてきているんだよ』
『2000年を境に色々と変わってしまって、混乱してるのよ……』
『でももう4年だぜ!? 俺だって友達亡くしてたりなぁ!』
『最近は言わなくなったけど、最初の頃はまゆりがどーとかこーとか煩かったよな!』
『俺だって、あの頃は辛かったんだぞ!?』
『論点がずれてきている、ともかく倫太郎はまだ中学生だ、追い出すなんてとてもじゃないができない』
『そうよ、少なくとも中学卒業までは……ねぇ』
岡部「……っ」
岡部(俺の居場所は……ここじゃない)
岡部(学校にも……家にもないんだ)
2005年春
岡部「記憶を頼りに来てみたが……本当にあったんだな。来たことなんてないはずなのに……」
岡部「大檜山ビル二階……」
岡部「……空き部屋……か」
岡部「……ははっ、ははは」
岡部(ここに来ればまゆりに会えるんじゃないか、そう思ったんだけどな)
岡部(会えるわけがない。当たり前だよな……)
岡部(俺にはもう居場所もないし、家族も、幼馴染もいないんだ……)
男「おい、何してんだ店の前で。客か?」
岡部「え? あ、いや……俺は……」
男「んだよ、ガキか。客って訳じゃあなさそうだな」
岡部「俺はガキじゃ……」
男「ガキだろ、高校生……ってとこか?」
岡部「……中学生です」
岡部「記憶を頼りに来てみたが……本当にあったんだな。来たことなんてないはずなのに……」
岡部「大檜山ビル二階……」
岡部「……空き部屋……か」
岡部「……ははっ、ははは」
岡部(ここに来ればまゆりに会えるんじゃないか、そう思ったんだけどな)
岡部(会えるわけがない。当たり前だよな……)
岡部(俺にはもう居場所もないし、家族も、幼馴染もいないんだ……)
男「おい、何してんだ店の前で。客か?」
岡部「え? あ、いや……俺は……」
男「んだよ、ガキか。客って訳じゃあなさそうだな」
岡部「俺はガキじゃ……」
男「ガキだろ、高校生……ってとこか?」
岡部「……中学生です」
男「マジかよ、にしては大人しいな。最近の中坊っつったらギャーギャーと騒がしいのによ」
岡部「……」
男「で? ここらじゃ見ない顔だし、うちの客でもないみてーだけどよ、なんの用だ?」
岡部「……ここの二階って、ずっと空き部屋なんですか?」
男「あん? そうだけどよ」
岡部「なんだかここ、すごく懐かしくて……俺の居場所だった……そんな感じがするんです」
男「居場所? 変なこと言うじゃねーか」
岡部「……俺には居場所がないんです、家にも学校にも」
男「なんだよ、家にも学校にもいたくねえってか?」
男「……なぁ、真冬のマンホールの中──いや、ガキにする話じゃねーな」
岡部「……」
男「……おめーどっから来たんだ? 家は?」
岡部「中野……いや、池袋」
男「池袋っていやー、2000年クラッシュで特に被害がでかかった……」
岡部「……」
男「で? ここらじゃ見ない顔だし、うちの客でもないみてーだけどよ、なんの用だ?」
岡部「……ここの二階って、ずっと空き部屋なんですか?」
男「あん? そうだけどよ」
岡部「なんだかここ、すごく懐かしくて……俺の居場所だった……そんな感じがするんです」
男「居場所? 変なこと言うじゃねーか」
岡部「……俺には居場所がないんです、家にも学校にも」
男「なんだよ、家にも学校にもいたくねえってか?」
男「……なぁ、真冬のマンホールの中──いや、ガキにする話じゃねーな」
岡部「……」
男「……おめーどっから来たんだ? 家は?」
岡部「中野……いや、池袋」
男「池袋っていやー、2000年クラッシュで特に被害がでかかった……」
| │ 〈 !
| |/ノ二__‐──ァ ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
/⌒!| =彳o。ト ̄ヽ '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ !
! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
_______∧,、_| | /ヽ! | |ヽ i !_ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ヽ { | ! |ノ /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ | _ ,、 ! , ′
\ ! '-゙ ‐ ゙ レ'
`! /
ヽ ゙  ̄  ̄ ` / |
|\ ー ─‐ , ′ !
| |/ノ二__‐──ァ ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
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! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
_______∧,、_| | /ヽ! | |ヽ i !_ ______
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ヽ | _ ,、 ! , ′
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ヽ ゙  ̄  ̄ ` / |
|\ ー ─‐ , ′ !
男「悪かったよ……」
男「……おめーみてーなガキにも色々あるってわけだな」
岡部「……」
男「俺は天王寺裕吾。おめー、名前は?」
岡部(てん……のうじ……)
岡部「岡部」 ボソッ
天王寺「あん?」
岡部「岡部……倫太郎」
天王寺「なんだと? 岡部倫太郎?」
岡部「……はい」
男「……おめーみてーなガキにも色々あるってわけだな」
岡部「……」
男「俺は天王寺裕吾。おめー、名前は?」
岡部(てん……のうじ……)
岡部「岡部」 ボソッ
天王寺「あん?」
岡部「岡部……倫太郎」
天王寺「なんだと? 岡部倫太郎?」
岡部「……はい」
天王寺「なぁおめぇ、鈴さん……橋田鈴って知ってるか?」
岡部(はしだ……はしだ……すず……?)
岡部「聞いたことは……あるような」
天王寺「……そりゃそうだよな、仮に会ったことあるっつっても覚えてるわきゃねーよな……」
岡部「……?」
天王寺「いや、こっちの話だ」
天王寺「なあ岡部、おめー今日からうちでバイトしねーか」
岡部「え? バイト?」
天王寺「っつっても、まだ中坊だからよ、実質手伝いみてーなもんだ」
天王寺「もちろん謝礼もそれなりに出してやる。そんで、おめーが中学卒業したら、ここの二階、格安で貸してやるよ」
岡部「え……?」
岡部(はしだ……はしだ……すず……?)
岡部「聞いたことは……あるような」
天王寺「……そりゃそうだよな、仮に会ったことあるっつっても覚えてるわきゃねーよな……」
岡部「……?」
天王寺「いや、こっちの話だ」
天王寺「なあ岡部、おめー今日からうちでバイトしねーか」
岡部「え? バイト?」
天王寺「っつっても、まだ中坊だからよ、実質手伝いみてーなもんだ」
天王寺「もちろん謝礼もそれなりに出してやる。そんで、おめーが中学卒業したら、ここの二階、格安で貸してやるよ」
岡部「え……?」
天王寺「そうだな、家賃1000円でどうだ?」
岡部「……中学生の俺でも分かるくらい安いですよねそれ……。いや、それとも、一日1000円とかですか?」
天王寺「んなわけねーだろ、月だよ月」
天王寺「あぁ、後、ブラウン管ちゃんを壊したら、家賃アップな」
岡部「……」
天王寺「どうする? 自信なかったら断ってもいいんだがな。欲しいんだろ? 居場所ってやつが」
岡部「いえ、やります、やらせてください」
天王寺「へへっ」
チャリンチャリンチャリン ガコン
岡部「……?」
天王寺「ほらよ」
岡部「これって……」
天王寺「マウンテンジュー、ガキは好きだろ? こういうの」
岡部「……中学生の俺でも分かるくらい安いですよねそれ……。いや、それとも、一日1000円とかですか?」
天王寺「んなわけねーだろ、月だよ月」
天王寺「あぁ、後、ブラウン管ちゃんを壊したら、家賃アップな」
岡部「……」
天王寺「どうする? 自信なかったら断ってもいいんだがな。欲しいんだろ? 居場所ってやつが」
岡部「いえ、やります、やらせてください」
天王寺「へへっ」
チャリンチャリンチャリン ガコン
岡部「……?」
天王寺「ほらよ」
岡部「これって……」
天王寺「マウンテンジュー、ガキは好きだろ? こういうの」
岡部「だから俺はガキじゃ……」
天王寺「いいから飲んどけって」
岡部「……」
カチッ プシュ
岡部「……美味い」
天王寺「そうか、そりゃ良かった」
こうして俺は、手伝いとしてブラウン管工房に出入りすることなった。
とは言え、時代はブラウン管テレビよりも液晶テレビ。
工房の手伝いは忙しさとは無縁だった。
たまに来る貧乏そうなお客の接客の他は、店内の掃除、店長の娘である綯の世話ばかり。
それでも俺は、中野にある叔母の家に帰らない日もあるほど、この場所に入り浸った。
居場所を求めて。
記憶の奥底にある、この場所を──
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』END
天王寺「いいから飲んどけって」
岡部「……」
カチッ プシュ
岡部「……美味い」
天王寺「そうか、そりゃ良かった」
こうして俺は、手伝いとしてブラウン管工房に出入りすることなった。
とは言え、時代はブラウン管テレビよりも液晶テレビ。
工房の手伝いは忙しさとは無縁だった。
たまに来る貧乏そうなお客の接客の他は、店内の掃除、店長の娘である綯の世話ばかり。
それでも俺は、中野にある叔母の家に帰らない日もあるほど、この場所に入り浸った。
居場所を求めて。
記憶の奥底にある、この場所を──
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』END
Chapter 2 『焦躁のサクリファイス』
2006年 12月
天王寺「んじゃ俺はちょっと遠出するからよ、綯の世話と店番、頼んだぞ」
岡部「いってらっしゃい、店長」
天王寺「あ、言っとくが綯に手ぇ出したら殺す」
岡部「だ、出しませんよ……」
2006年 12月
天王寺「んじゃ俺はちょっと遠出するからよ、綯の世話と店番、頼んだぞ」
岡部「いってらっしゃい、店長」
天王寺「あ、言っとくが綯に手ぇ出したら殺す」
岡部「だ、出しませんよ……」
綯「ねーねー、バイトのお兄ちゃん、今日は何して遊ぶの?」
岡部「ごめんな綯、今日は店内の掃除しときたいから……」
綯「そっかー……じゃあ私、一人で遊んでるね」
岡部「ホントにごめんな」
岡部(物分りの良い子で助かる)
岡部「さて、と……」
岡部「よっ……」
岡部(TV重っ……)
岡部「ごめんな綯、今日は店内の掃除しときたいから……」
綯「そっかー……じゃあ私、一人で遊んでるね」
岡部「ホントにごめんな」
岡部(物分りの良い子で助かる)
岡部「さて、と……」
岡部「よっ……」
岡部(TV重っ……)
天王寺「帰ったぞー」
綯「あ、お父さ~ん!」
天王寺「おー、よしよし、いい子にしてたか綯~?」
綯「うん!」
岡部「お帰りなさい、店長」
天王寺「おう、どうだ? 客は来たか?」
岡部「いえ、今日は一人も……」
天王寺「……かー、世知辛ぇなぁ」
岡部「それじゃあ俺、帰りますんで」
天王寺「おい、今日はうちで飯食って行けよ」
岡部「え、でも……」
天王寺「遠慮すんなって、シュークリームも買ってきてるしよ」
綯「わーい! ありがとうお父さ~ん!」
岡部「じゃあ、お言葉に甘えて……」
天王寺「んじゃ車用意してるから、店閉めといてくれや」
綯「あ、お父さ~ん!」
天王寺「おー、よしよし、いい子にしてたか綯~?」
綯「うん!」
岡部「お帰りなさい、店長」
天王寺「おう、どうだ? 客は来たか?」
岡部「いえ、今日は一人も……」
天王寺「……かー、世知辛ぇなぁ」
岡部「それじゃあ俺、帰りますんで」
天王寺「おい、今日はうちで飯食って行けよ」
岡部「え、でも……」
天王寺「遠慮すんなって、シュークリームも買ってきてるしよ」
綯「わーい! ありがとうお父さ~ん!」
岡部「じゃあ、お言葉に甘えて……」
天王寺「んじゃ車用意してるから、店閉めといてくれや」
天王寺「しっかしおめーもたくましくなったな」
岡部「そうですかね」
天王寺「会った頃なんて、ひょろっひょろしてやがってよ。あー、おい、肉食え肉」
岡部「はい、頂きます」
綯「お父さん、シュークリーム!」
天王寺「おいおい、だめだぞ綯~、デザートは食後って決まってんだよ」
綯「え~」
岡部「はは……」
岡部「そうですかね」
天王寺「会った頃なんて、ひょろっひょろしてやがってよ。あー、おい、肉食え肉」
岡部「はい、頂きます」
綯「お父さん、シュークリーム!」
天王寺「おいおい、だめだぞ綯~、デザートは食後って決まってんだよ」
綯「え~」
岡部「はは……」
岡部「それじゃあ俺はそろそろ帰りますね、ごちそうさまでした」
天王寺「送ってってやるよ」
岡部「でも、そこまでして頂くわけには……」
天王寺「おめーの老け顔なら夜道歩いてても大丈夫だろうが、まだ中学生だろ? いらねぇ遠慮すんなって」
岡部「……はは、酷いですよ、それ」
天王寺「うるっせぇ、男はなぁ、ちょっとくれー老けてたほうが貫禄あんだよ!」
岡部(なるほど、そう自分に言い聞かせてるんですね)
天王寺「送ってってやるよ」
岡部「でも、そこまでして頂くわけには……」
天王寺「おめーの老け顔なら夜道歩いてても大丈夫だろうが、まだ中学生だろ? いらねぇ遠慮すんなって」
岡部「……はは、酷いですよ、それ」
天王寺「うるっせぇ、男はなぁ、ちょっとくれー老けてたほうが貫禄あんだよ!」
岡部(なるほど、そう自分に言い聞かせてるんですね)
~車の中~
天王寺「ったく、また信号まちかよ……」
岡部「……」
天王寺「……もうすぐ高校受験だな、勉強はしてんのか」
岡部「いえ、あんまり」
天王寺「おいおい、高校浪人とかシャレになんねーからな、やっとけよ?」
岡部「大丈夫です、学校の授業はちゃんと受けてますし」
天王寺「ったく、また信号まちかよ……」
岡部「……」
天王寺「……もうすぐ高校受験だな、勉強はしてんのか」
岡部「いえ、あんまり」
天王寺「おいおい、高校浪人とかシャレになんねーからな、やっとけよ?」
岡部「大丈夫です、学校の授業はちゃんと受けてますし」
天王寺「まあ、落ちたときは正式にうちのバイトとして雇ってやるからよ、ははっ」
フラッ……
岡部「……っ」
天王寺「おい、冗談だよ、本気にすんなって」
岡部(あの……女……!?)
岡部「店長! ここまでで結構です!」
天王寺「あ、おい!」
ガチャ バタン
天王寺「おい、岡部! おめーどこに──」
フラッ……
岡部「……っ」
天王寺「おい、冗談だよ、本気にすんなって」
岡部(あの……女……!?)
岡部「店長! ここまでで結構です!」
天王寺「あ、おい!」
ガチャ バタン
天王寺「おい、岡部! おめーどこに──」
岡部(さっき道を歩いてた女……どこかで……!)
岡部(どこだ、どこへ行った!)
岡部「はぁっ……はぁっ……」
岡部「くそ……どこに……」
岡部(見たことあるんだ……どこかで! 気になる……会って話がしたい……)
岡部(どこだ、どこへ行った!)
岡部「はぁっ……はぁっ……」
岡部「くそ……どこに……」
岡部(見たことあるんだ……どこかで! 気になる……会って話がしたい……)
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- 岡部「まゆりがグレてしまった……」 (165) - [62%] - 2011/11/7 9:15 ★
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- ジャン「なんで俺がクリスタと……」 (147) - [56%] - 2013/5/16 16:00 ☆
- マミ「なんだか気だるいわ……」 (257) - [56%] - 2012/2/19 20:30 ★
- 岡部「どうして助手が子供に……」 (375) - [55%] - 2011/9/17 7:00 ★★★
- 岡部「フェイリスで抜いてしまった……」 (136) - [55%] - 2012/9/1 22:30 ★
- 岡部「フェイリスが二人もいるだと……」 (184) - [55%] - 2011/9/24 11:45 ★
- 岡部「ラボから追い出された……」 (269) - [55%] - 2011/10/1 15:45 ★★
- 咲「部長のことが頭から離れない…」 (168) - [54%] - 2012/11/18 11:30 ★
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