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元スレ麦野「・・・浜面が入院?」
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保守ありがとうございました。
早速、投下させていただきますが、
念のため「百合注意」とだけ記しておきます。
―――――
時間は少し遡り、午後二時過ぎ。
「・・わざわざ私を付き合わせるなんて、何事かと思ったら。こういうわけねー。」
ここは「アイテム」が複数もつ隠れ家の一つである。
彼女たちがよく居座るファミレスと同じ第七学区にあるものの、少し寂れた灰色地区の一角。
階数が少なく、外見的にも目立たないデザインのマンションなので、暗部の隠れ家には持ってこいの場所だった。
そして、ここはそのマンションの五階のとある一室。
ソファやテレビから、簡単な料理道具から粗末なインテリアまで、必要最低限のものが散らばった部屋。
床には空の缶詰や、読み終わった映画のパンフレットなども散乱している。
浜面のお見舞いに直行した絹旗と滝壺と別れた麦野とフレンダは、その部屋に戻ってきていた。
二人は、普段はほぼ全くといっていいほど使わないキッチンを前にして、話し込んでいる。
「で、結局さ、お菓子作りっていっても何を作るわけ?」
「色々考えたんだけどねー、マフィンを作ろうかと思うのよ。」
「おー、なんだか当たり障りのないものを。」
マフィン。普段はあまり見ないかもしれないが、知らない人は居ないであろう甘菓子の代表格だ。
程よく甘く、手軽に食べることができるため、知人のお見舞いなどにも適している。
「何よ、悪い?」
「いや、ぜんぜん。むしろ私も食べたいし。」
「・・アンタにはあげないわよ?」
え? とフレンダの頭に疑問符が浮かんでいる。
「じゃぁなに。結局、麦野が自分で食べるのを一緒に作らせるために、わざわざ私を呼んだわけ?」
「・・いや、私が食べるわけでもないけど。」
「は? じゃぁ結局、誰へのマフィンを作るのさ。」
なぜか口ごもる麦野。
「・・・・浜面。」
「はま・・づら?」
「何よ、悪い!?」
バン! と手近の棚を叩く麦野。
心なしか顔が赤い。
「む、麦野が浜面に贈り物とか・・。」
だいじょうぶ? とフレンダは自分の手を麦野の額に当てる。
何度確認しても熱っぽさはない、顔は赤いままだが。
「どうしちゃったの麦野、中身が滝壺と入れ替わっちゃった?」
「良いじゃないのよ、たまには。 あのボロ犬にも甘い思いさせてあげようかな、って思ったの。」
ただの気まぐれよ、ポツリ呟く麦野。
その表情は、まんざらでもないように見えたのは気のせいだろうか。
「っていうか、ファミレスで『浜面なんかのお見舞いには行かねーよ』みたいなやさぐれたこと言ってなかったっけ?」
「やさぐれたは余計。 まぁ、 すぐに決心つかなかったし、あんなに張り切ってる絹旗と滝壺を前にしたら、
私も行くー、なんてことすぐには言えなくなっちゃったのよ。」
「ふぅーん、結局、麦野も奥手なんだね。」
「・・こう見えてもね。」
「ま、せっかく麦野が珍しく女の子らしいことするだから、協力するのにやぶさかではないぞよ、ワタクシは。」
「アンタが協力してくれるのはもう確定だから。そのために呼んだんだし。」
そうですかー、とグデるフレンダ。
しかし、ここで一つの問題点。
「そういえば、結局、私、マフィンの作り方知らないんだけど。」
「・・・え?」
「私、そういうの普段、作らないし。」
「・・私も作ったことないんだけど。」
「はひー、このお嬢さんは、作り方も知らないくせに、何も参考にせずに作る気だよ。しかも人の口に入れるものをさー。」
お手上げだ、という風に両手を小さくあげるフレンダ。
むー、と顔をしかめる麦野。
「だって、アンタなら普通に知ってると思ったのよ! アンタそれでも女子高生!?」
「どう見たって麦野の方が経験豊富な年上でしょうが!
大体、学園都市の女子高生が全員マフィン作れると思うなよ!?」
「だ、だってだって! アンタ、欧米っぽいじゃない! こういう洒落たお菓子の作り方の一つや二つ!」
「だから、結局、それが人を見かけで判断してるっつってんのっ!」
いや、作る前からこんな不毛な争いしててどうすんのよ。、と肩を落とす麦野。
同意見なのか、仕方なく口を閉じるフレンダ。
「じゃぁどうする? 別の作る?」
「しょーがないわねー。」
>>275
あの絵だからこそいいんじゃないか
あの絵だからこそいいんじゃないか
麦野はおもむろに携帯を取り出すと、何やらピコピコしている。
「なにしてんの?」
「wikiってる。」
麦野は現代的だなあ・・、でも何かそれ結局ちょっと物寂しいわ。と愚痴るフレンダ。
「っていうかさ、結局、材料あるの?」
「んー、見た感じは冷蔵庫にあるものでまかなえそうかなー。」
「そっか、よーし! 一丁やりますかねっ!」
準備完了。 麦野の愉快なクッキングタイムがスタートした。
ピンクのエプロンを着た麦野は、料理に邪魔な長髪を後ろで畳んで、紐で縛り、ポニーテールに、
一方のフレンダは、チャームポイントである制服帽を取ると、同じく空色のエプロンを着用。
「よーし、準備できたー。」
「結局、最低でも5時には終わらせるよ。」
「そんなかかんないでしょ、たかがお菓子作りに。」
「それなら良いけどさ・・。」
麦野と一緒にやったら、なぜか数時間はかかりそうな気がする・・、そんな予感だった。
頭を切り替えたフレンダは、さきほどの麦野の携帯を目の届くところに置くと、液晶を見ながらブツブツと呟き始める。
「えーと、『1,薄力粉とベーキングパウダーをふるう』。」
「薄力粉って何? 小麦粉とどう違うのそれ?」
「結局、薄力粉は小麦粉と変わらないよ。 ・・えーと、ここにあるので大丈夫っぽい。」
屈んだフレンダが、足元の棚から小麦粉の袋を取り出す。
片手で持つには少し重いくらいの袋だ。
棚の中を漁りながらであったため、フレンダは、麦野を見ないまま、袋を差し出した。
「はいこれ。」
「んー・・ぅわぶッッッッッッ!!!???」
ボフンッッッ、と音を立てて袋が落ちると、勢いよく白煙のように中身が舞い上がった。
麦野の足と、座っていたフレンダの全身が真っ白に染まる。
「けっほけほ、うぇっほ・・・! ちょっと麦野!!」
「わ、私のせいじゃないでしょ!!」
「麦野がしっかり受け取らないからでしょうがッ!!」
「いや、っていうか何でちょっと落としたくらいで、中身が飛び出ちゃってんのよこれ!」
二人の足元に落ちた小麦粉は、無残な状態でとっ散らかっていた。
「・・とりあえず、掃除しましょう。」
「うん。」
「アンタはまずその白ヒゲを洗い流しなさい。」
「んぇッ!?」
>>289
「私は。どうすれば。」
「私は。どうすれば。」
幸いにも、小麦粉はもう一袋あったので、何とか買出しに行かずに済んだ。
麦野が手際よく、薄力粉とベーキングパウダーをふるい終える。
「フレンダー、次はー?」
「『2,オーブンを180度に予熱する』だってさー。」
「オーブン、オーブンっと。」
すぐにオーブンを見つけた麦野は、タイマーを回し、設定を始める。
隠れ家の一つとはいえ、大体の日常生活品は揃っていた。
四人ともほとんど使ったことがないものばかりで、何がどこにあるかさえイマイチ把握できていない状態だが。
「ひゃ、180度って・・。 そんなに熱して爆発しちゃったりしないよね?」
「良いからさっさと言った通りにする。」
なぜか強気な口調。
いつも麦野に虐げられているため、初めての菓子作りに緊張して低姿勢な彼女に、ビシバシ物を言える。
少し快感だなあ、と満足げな表情を浮かべるフレンダ。
この感覚が、後に大惨事を起こすことも知らず。
「やったわよー、次はー?」
「『3,マフィン型に薄紙を敷くか、バターを塗る。』 ちなみにこれは今終わったー。」
「じゃー、次―。」
「『4,マーガリンをクリーム状にし、砂糖を入れて混ぜる。』
とりあえず、冷蔵庫からマーガリン出してー、あと砂糖もそっちの棚にあるだろうから、お願いー。」
「・・・マーガリン、マーガリンっと、うわっ」
冷蔵庫を開けると様々に大量な食材が、麦野の目に飛び込んできた。
隠れ家というのは、他の暗部に襲撃される可能性もあるため、それほど大掛かりな物は置かれていない。
もし、襲撃されても、すぐにそこを捨て、他の隠れ家に身軽に移動するためだ。
しかし、使用期限が限られている食材や調味料に至っては、多く買わざるを得ない上、
最近は四人ともここの隠れ家に居座っているため、かなりの量の食材が買い溜められていた。
「えーと、これね。」
ポイッとフレンダにパスする。
受け取ったフレンダは、ん? と眉をひそめた。
「麦野ー、これバター。」
「え? バターとマーガリンって同じようなもんなんじゃないの!?」
「結局、冷蔵庫の中にマーガリンあるでしょ、それにしてよ。大体、何で代替する必要があんのさ。」
「え、今の、もしかして欧米風の笑えないギャグ?」
「うっさい、早くこれ戻してマーガリン出せ!」
ハイハイ、と愚痴りながら、再び冷蔵庫を漁り始める麦野。
マーガリンを手に取り、再びフレンダにパスする。
今度こそ、と思ってそれを受け取ったフレンダは、あ゛? とグレたような声をあげる。
「麦野―、これチーズ。」
「え? チーズとマーガリンって同じようなもんなんじゃないの!?」
「チーズとマーガリンをどう間違えるんだよ! このド天然!
っていうか、この袋に『チーズ』って書いてあるでしょ! しかもよく見たらこれスライスチーズじゃんこれ!!」
「・・ご、ごめん。」
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