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元スレ麦野「・・・浜面が入院?」
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/( ) 思い通りに出来るってなら
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(/o^) < \ 三
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/ く まずはそのふざけた
幻想をぶち殺す
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/ く まずはそのふざけた
幻想をぶち殺す
おばんです。
昨日より少し早まりましたが、投下させていただきます。
「いまどき流行ってるっていう肉食系女子っていうのは、滝壺みたいな奴を言うんだろうな・・。」
時刻は午後七時を少し回り、浜面は夕食を食べ終え、一息ついたところであった。
お皿とお盆を取りに来たナースに、にこやかな(気持ち悪い)表情を振りまき、
部屋から出る彼女の美尻を堪能したあとに。
ちなみに、ハリケーンそのものであった絹旗と滝壺は、二時間以上も前に帰宅している。
恐らく、複数ある「アイテム」の隠れ家のいずれかに戻ったのだろう。
窓の外を見ると、日が暮れ、辺りが真っ暗になっていることが、カーテン越しでも確認できた。
面会時間は午後八時までと決められており、病院内もやがて静けさを帯びてくる頃だろう。
「しっかし、病院食ってのは、やっぱりあんまり美味しくないモンだな・・。」
一般の病院とはいえ、なかなかの設備が整っていることから、食事の質にもほのかな期待を持ったが、噂通り、
病院食というものはどこの病院でも同じことで、患者の栄養面を第一に考えられた味だった。
彼は、朝も昼も同じような食事をとったが、やはり味の薄さには慣れておらず、
今になって思わず不満が口に出てしまったらしい。
「何か・・・、たまには身体に悪いものが・・、甘いものが食べたい・・。」
考えてみれば、最近、ろくなものを食べていないことに気がついた。
「アイテム」の四人は、どこから出ているのか分からない、ほくほくの給料を豪快に使っているため、
衣食住には困っていない様子だったが、下部組織、下っ端、パシリ、超雑用、愛玩奴隷という風に、
ロイヤルストレートフラッシュで駄犬属性が揃っている浜面に、金銭的余裕はそれほどなかったし、
無論、「アイテム」の四人が浜面に食を恵んでくれることなど、ほぼ皆無であった。
ときどき、滝壺が気まぐれなのか、食べ物を分けてくれるが、それだけと言えばそれだけである。
育ち盛りは若干過ぎたとはいえ、成人にほど近い健全な男子が、
経済的不安から、思う存分食事を取れないというのは何とも不憫極まりない状況といえる。
「・・滝壺が持ってきてくれたこの花、実は食えたりしねぇかな、はは。」
滝壺自身が買ってきてくれたであろう可愛らしい黄色の花は、今もなお、生気十分、可憐に咲き誇っている。
ボーッとその花を見つめていると、脳裏に滝壺の愛らしい微笑みが浮かぶ。
やがて、それはうっすらと変形し、バニーガールの滝壺の全体像が浮かんできた。
「・・あふッ・・、とりあえず、あの映像は保護アンドロックしておこう・・。
それにしても良かったな・・滝壺のバニーさん。あ、やべ・・鼻血出た。」
傍らに置いてあったティッシュ箱に手を伸ばし、一、二枚取ると、鼻血の応急処置をし、頭も冷やす。
そんな哀れな状態に陥っているときだった。
コンコン、とドアのノック音。
もちろん、食事はつい先ほど終えたばかりで、診察があるとも聞いていない。
「(え、何コレ、デジャヴ?)」
自分のお見舞いに来てくれる可能性が一番高かったであろう滝壺(と絹旗)は既に来た。
親類は居ないはずだし、スキルアウト時代の馴染みが来るとも思えない。そもそも浜面の入院すら知らないはずだ。
と、なるとやはりナースか・・? と口元に手を当て、考えこむ浜面。
つい数秒前までバニーガールを考えていたにも関わらず、彼の頭の中は、一瞬でナース一色に切り替わっていた。
「(っていうか、中からの返答なんか気にせず、入ってくれば良いのにな、絹旗にしろ、そこの人にしろ。
とりあえず、訪問者をドアの前に待たせたままだと、紳士(自称)たる浜面仕上の名折れだ。)」
コンコンコン、と再びノック音。
「あ、はい。どうぞ、起きてます。」
結局、凡庸な応答をせざるを得なかったが、念のため、キリッとした表情をする浜面。
血を抑えるためのティッシュが片方の鼻に突っ込まれたまま。
「よーす、浜面クン。 調子はどうだー。」
ガラッとドアを開け、入ってきたのは、完全に彼の予想の遥か外の外。
巷の女性が羨むような綺麗に手入れされた茶のロングヘア、モデルのようなスラリとしたスタイル。
薄いメイクを施すだけで十分な、人の多い街を歩けばすぐにナンパされるであろう、整った顔立ち。
冬でないにも関わらず、どちらかというと地味な灰色の薄いコートのような服に身を包んでいるが、
それでいて、ごく一部の最上級の美人が醸し出すようなオーラは失われていない。
間違いなく、それは浜面がよく知る、麦野沈利その人であった。
「む、麦野ッ・・・!?」
麦野は、ドアを静かに閉めると、ファッションショーのモデルのようにツカツカと歩き、
二つ置いてあった椅子のうちの一つに腰を下ろした。
「・・やっぱり、絹旗と滝壺来てたみたいね。」
椅子の数と飾られている花から判断したのか、麦野が平坦な表情で言う。
その手には何やら可愛らしいピンクの花柄のビニール袋が握られていた。
しかし、最も意外な来訪者に驚く浜面は、そんなところまで目がいかなかったようである。
「あ、あぁ、昼過ぎにな。 でもどうしたんだ、急に・・。」
「んー。アンタがヘマして入院したって絹旗から聞いたからさー。」
「いや、そりゃ見舞いに来てくれたんだから、そうだろうけどよ。
っていうか滝壺たちの話じゃ、麦野とフレンダは来れない、って言ってたような・・。」
「たまたま用事がなくなったのよ。 用事があるのにアンタなんかのお見舞いに来るわけないでしょ。」
「そ、そうか。そうだよな。あー、びっくりした。」
「・・なに、私がお見舞いに来たらおかしいっての?」
麦野の無機質な表情が、一瞬で強張った。
それを見た浜面は、全身を存分に使い勢いよく否定。
下手に彼女の気分を損ねると、この病室どころか、病院そのものが原子レベルで崩壊する。
「そんなことはどうでも良いとして・・。はい、これ。」
麦野がスッと差し出したのは、先ほどの可愛らしい花柄の袋。
それを見た浜面の顔は、なぜか険しくなった。
「・・あのさ、麦野。 ただの袋なんかもらっても嬉しくないんですけど。」
「何処に目ェつけてんのよ、このバカ面。 中身に決まってんでしょうが。」
麦野がその袋を投げ捨てるように、浜面の膝元に置く。
感触から、何か固いものが袋の中に入っていることが確認できた。
いや、冗談だって。と左手で麦野を制し、右手で中身を漁ると、中から出てきたのは、白い長方形の箱。
重要なのは、袋でも箱でもない、その中身だ。
「箱の中身は、なんじゃろな・・。」
浜面は、その箱を(心中、恐る恐る)開け、箱の中身を確認。
箱の中にあったのは、なんてことのない、丸い形をした茶色っぽい焼き菓子。
いわゆる、マフィンという奴である。それが六個。
「・・・・・、これは?」
「アンタ、まさか食べたことないのそれ?」
「いや、マフィンだろ? それくらい知ってるけどさ・・・・・。」
なぜか言葉に詰まり、俯く浜面。
それを見て、理解に苦しむ麦野。
「・・・ぅ・・ぅぅっ・・。」
浜面は、マフィンの箱を手にしたまま、いきなりポロポロ泣き出した。
「え? ちょ、ちょっと何で泣いてんの!?」
「い、いや・・。日頃、ボロ雑巾みたいな扱い受けてるからさ・・ぇぐ、
まさか、麦野がこんなもの買ってきてくれるなんて、夢にも思わなかったからよ・・。」
「いや、つーか、買ってきたっていうか・・、作ってきたっていうか。」
「・・え?」
「な、何でもないわよ。 空耳よ、空耳ケーキ。いや、空耳マフィンよ!」
意味不明なことを言って誤魔化す麦野。
浜面には、どうして麦野が焦っているのかは分からなかった。
可愛いいいいぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい
ぎょええええええええええええ
ぎょええええええええええええ
こんな可愛いのにがあんなのになってしまうのか…鯖缶に裏切られたのがショックだったんだろうなあ
「でも悪かったわね、もう少し早く来れば、夕食より前にそれをあげられたのに。もう夕ご飯食べちゃったでしょ?」
麦野が仕切りなおすように、自慢の長髪を撫で上げて言う。
それのせいか、香水と思われる麦野の良い匂いが、浜面の鼻腔まで届いた。
そんな何気ない小さなことではあるが、浜面は不覚にも少しドキッとしていた。
ぶんぶん、と首を横に振り、平静を保つ。
ちょっと、聞いてんの? と眉をひそめる麦野。
「いや、病院食っていうのは味気なくってな。あんまり腹の足しにもならなかったから関係ねぇよ。
それに、ちょうど甘いもの食べてーなって思ってたから、良いタイミングだ。ありがとな、麦野。」
「・・別に良いわよ、たまにはね。」
なぜかそっぽを向く麦野。
そんな彼女を尻目に、浜面は、マフィンの一つを早速取り出すと、麦野に差し出した。
「麦野も食うだろ、ほら。」
「あ・・、うん。ありがと。」
マフィンを受け取るも、彼が口を開けて食べようとするのを見たまま、麦野は静止していた。
彼女の熱視線に気づいた浜面は、瞬きしながら、ぎこちなく目を合わせる。
浜面のことを見てはいるのだが、心ココに在らず、そんな表情だ。
「・・ど、どうした。食べないのか?」
「え・・。いや、なんでもない!」
麦野は下を向き、慌ててマフィンを頬張った。
「!? ・・ケホッ、ケホ! ぅ゛~っ・・。」
「おいおい、そんなにがっついて食うから・・。
ほら、これ飲めよ。あ、ちなみにまだ開けてないから安心しろ?」
置いてあったペットボトル水を持ち、息苦しそうに腰を折る麦野に、キャップを開けてから手渡す。
口をつけると、彼女は水さえも勢い良くガブ飲みし、やがて、落ち着きを取り戻した。
うぁ゛~・・、と嘆息する麦野。
そんな彼女をどこか不思議そうに見つめる浜面。
どうも今日の麦野は様子がおかしい、そう感じていた。
「(まさか、毒とか入ってないだろうな・・これ。)」
「(・・・・まぁ、初めて作った割に、なかなか美味しくできたわねこれ。)」
「(まぁ、麦野も美味しそうに食べてるし、問題ないか。今は腹を満たすのが先だな。)」
麦野の乙女な想いを他所に、浜面は食欲のまま、マフィンにかじりつく。
「(いつ死んでもいいように、よく味わっておこう。
なんせ珍しく麦野が買ってきてくれたものだしな・・、保存とかきかないのかなコレ。)」
パサパサした食感ではあるが、口内にふわりと広がる甘味。
子供の頃に食べたことはあったものの、しばらくご無沙汰だった甘菓子だ。
「っていうか、アンタさ。そのティッシュは何よ。」
ツッコまれて当然だった。
荒々しく彼の鼻に突っ込まれたそれは、少し血が滲んでいるのが、麦野から見てもよく分かる。
「あ! いや、これはちょっとな・・。」
食べかけのマフィン片手に、必死に弁解する浜面。
とても、滝壺のバニーガール姿を想像して、鼻血を出していたなんて言える状況ではない。
「・・どうせ、またヤラしいことでも考えてたんでしょ。超浜面って感じよねー。」
聞き覚えのある口癖で、浜面をなじる麦野。
こういうときの彼をからかう小悪魔のような顔は、絹旗と共通するものがある。
ただし、麦野の場合は、妙な色っぽさが垣間見えるので、ある意味、絹旗よりも厄介だ。
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