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元スレ黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」
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男「あー」
黒髪娘「きょろきょろするな」
男「うん」
黒髪娘「やれやれ。茶はどうだ?」
男「いただき、ます。はい」
黒髪娘「しばしまて」
ことん
男「……熱ッ」
黒髪娘「猫舌なのか。ふふふっ」
男「悪いですかよ」
黒髪娘「いいや。似ているな、と」
黒髪娘「きょろきょろするな」
男「うん」
黒髪娘「やれやれ。茶はどうだ?」
男「いただき、ます。はい」
黒髪娘「しばしまて」
ことん
男「……熱ッ」
黒髪娘「猫舌なのか。ふふふっ」
男「悪いですかよ」
黒髪娘「いいや。似ているな、と」
さらさらさらさら……
男「……」
黒髪娘「ずいぶん落ち着いているのだな」
男「いや、結構一杯一杯」
黒髪娘「そうか」
男「質問は可?」
黒髪娘「もちろん」
男「ここはどこで、あなたは誰?」
黒髪娘「ここは温明殿(うんめいでん)と梨壺の間の
あたりにある小さな東屋の一つだ。
おおむねわたしの住処と云って良いだろうな。
と、云っても質問の答えには不十分か。
おそらく、質問の正答は、こうだ。
――ここは平安時代とよばれている」
男「……マジすか」
男「……」
黒髪娘「ずいぶん落ち着いているのだな」
男「いや、結構一杯一杯」
黒髪娘「そうか」
男「質問は可?」
黒髪娘「もちろん」
男「ここはどこで、あなたは誰?」
黒髪娘「ここは温明殿(うんめいでん)と梨壺の間の
あたりにある小さな東屋の一つだ。
おおむねわたしの住処と云って良いだろうな。
と、云っても質問の答えには不十分か。
おそらく、質問の正答は、こうだ。
――ここは平安時代とよばれている」
男「……マジすか」
黒髪娘「私は尚侍(ないしのかみ)だ。
内侍司(ないしのつかさ)を掌握する役目を
承っている。従三位となるな」
男「……なにそれ?」
黒髪娘「判らなければ、そのままでよいと思う。
まぁ、政どころの女性の役人だ」
男(官僚なのか……)
黒髪娘「そちらの方は……」
男「あー。男です。多分、助けてくれたんでしょ?
ありがとうね。これも」
黒髪娘「ああ、その塗り薬は……。うむ。
傷によく効く生薬なのだ」
男「もう平気。かすり傷だし」
黒髪娘「ずいぶんと、落ち着いているのだな」
男「まぁねー」
内侍司(ないしのつかさ)を掌握する役目を
承っている。従三位となるな」
男「……なにそれ?」
黒髪娘「判らなければ、そのままでよいと思う。
まぁ、政どころの女性の役人だ」
男(官僚なのか……)
黒髪娘「そちらの方は……」
男「あー。男です。多分、助けてくれたんでしょ?
ありがとうね。これも」
黒髪娘「ああ、その塗り薬は……。うむ。
傷によく効く生薬なのだ」
男「もう平気。かすり傷だし」
黒髪娘「ずいぶんと、落ち着いているのだな」
男「まぁねー」
黒髪娘「聞いて良ければ、なぜ?」
男「あー。ないしのかみ……さん? が」
黒髪娘「黒髪でよい」
男「ああ、んじゃ。黒髪が、さっき『似ている』って。
云ったじゃね? だから、もうちょっと詳しい事情も
知っているんだろうな、と。
その説明を聞くまでは仕方ないじゃん?」
黒髪娘「察しも良いのだな。敬服する」
男「そんなことは、ないけど」
黒髪娘「わたしは、その。……その方の」
男「俺も同じだ。男でいいよ」
黒髪娘「感謝する。男殿の、祖父君とは知己であってな」
男「爺ちゃん?」
黒髪娘「うむ、茶飲み友達というか。生徒というか」
男「……あ。ああっ!」
男「あー。ないしのかみ……さん? が」
黒髪娘「黒髪でよい」
男「ああ、んじゃ。黒髪が、さっき『似ている』って。
云ったじゃね? だから、もうちょっと詳しい事情も
知っているんだろうな、と。
その説明を聞くまでは仕方ないじゃん?」
黒髪娘「察しも良いのだな。敬服する」
男「そんなことは、ないけど」
黒髪娘「わたしは、その。……その方の」
男「俺も同じだ。男でいいよ」
黒髪娘「感謝する。男殿の、祖父君とは知己であってな」
男「爺ちゃん?」
黒髪娘「うむ、茶飲み友達というか。生徒というか」
男「……あ。ああっ!」
黒髪娘「?」
男(あな。そうだ。俺、爺ちゃんの家、掃除してた
納戸の奥の長びつのうち側が真っ黒で、
俺はその中に“落ち”て……)
黒髪娘「……我が東屋に唐突に現われたので、
祖父君との知り合いか親族だと考えていたのだ。
幸い祖父君から男殿の容姿は聞き及んでいた」
男「そっか……」
黒髪娘「祖父君は何度もこの東屋を訪れてくれた。
わたしに色々と教えてくれたのだ」
男「爺ちゃんは、小学校の先生だったんだよ。
引退した後もちゃんと先生だったんだな……」
黒髪娘「尊敬申し上げている」
男「……」
黒髪娘「祖父君は……」
男「うん」
男(あな。そうだ。俺、爺ちゃんの家、掃除してた
納戸の奥の長びつのうち側が真っ黒で、
俺はその中に“落ち”て……)
黒髪娘「……我が東屋に唐突に現われたので、
祖父君との知り合いか親族だと考えていたのだ。
幸い祖父君から男殿の容姿は聞き及んでいた」
男「そっか……」
黒髪娘「祖父君は何度もこの東屋を訪れてくれた。
わたしに色々と教えてくれたのだ」
男「爺ちゃんは、小学校の先生だったんだよ。
引退した後もちゃんと先生だったんだな……」
黒髪娘「尊敬申し上げている」
男「……」
黒髪娘「祖父君は……」
男「うん」
黒髪娘「やはり……身罷られたのか」
男「……うん。癌」
黒髪娘「病か」
男「うん」
黒髪娘「何とはなしにそんな気がしていた。
痩せていったし、疲れやすくなっていた。
返せそうもないほどの恩を受けている。
最期の様子を聞いても良いだろうか?
男「病院で、家族に囲まれて。最期まで冗談言ってたよ。
俺には優しくてさ。おれ、ほら。
名前の一文字は、爺ちゃんからもらったから。
二束三文だろうけれど、爺ちゃんの家も俺がもらった。
山の麓だし、古い平屋だけど。庭が綺麗だからって。
その二話で、小さい頃は良く爺ちゃんに遊んでもらった」
黒髪娘「祖父君は磊落な方だった」
男「うん。あんなシモネタばっかり
小学校で云ってたのかよってな」
黒髪娘「ははははっ」 くすっ
男「……うん。癌」
黒髪娘「病か」
男「うん」
黒髪娘「何とはなしにそんな気がしていた。
痩せていったし、疲れやすくなっていた。
返せそうもないほどの恩を受けている。
最期の様子を聞いても良いだろうか?
男「病院で、家族に囲まれて。最期まで冗談言ってたよ。
俺には優しくてさ。おれ、ほら。
名前の一文字は、爺ちゃんからもらったから。
二束三文だろうけれど、爺ちゃんの家も俺がもらった。
山の麓だし、古い平屋だけど。庭が綺麗だからって。
その二話で、小さい頃は良く爺ちゃんに遊んでもらった」
黒髪娘「祖父君は磊落な方だった」
男「うん。あんなシモネタばっかり
小学校で云ってたのかよってな」
黒髪娘「ははははっ」 くすっ
男「納戸の掃除をしていて、あの長びつに……」
黒髪娘「判っている。それと対になるのが、
あちらの奥部屋に置いてある長びつなのだ。
唐渡りのものらしいが」
男「そっか。帰れるんだな」
黒髪娘「もちろんだ」
男「よかったぜー。ほっとしたよ。
大学だってバイトだってあるって云うのにさぁ」
黒髪娘「ふふふっ」
すっ
男「うわぅ」
黒髪娘「何を頓狂な声を」きょとん
男「急に触ろうとするから」
黒髪娘「なんだ。別に私は怪物じゃないぞ」
男(つか、近くで見るとすげぇ美人じゃんかよ。
人形みたいっていうか、すげぇ美少女って云うか。
いきなりひんやりした指で触わるな。慌てるだろがっ)
男「び、びっくりしただけ」
黒髪娘「ふむ。――まぁ、礼を逸していたか。すまぬ」
黒髪娘「判っている。それと対になるのが、
あちらの奥部屋に置いてある長びつなのだ。
唐渡りのものらしいが」
男「そっか。帰れるんだな」
黒髪娘「もちろんだ」
男「よかったぜー。ほっとしたよ。
大学だってバイトだってあるって云うのにさぁ」
黒髪娘「ふふふっ」
すっ
男「うわぅ」
黒髪娘「何を頓狂な声を」きょとん
男「急に触ろうとするから」
黒髪娘「なんだ。別に私は怪物じゃないぞ」
男(つか、近くで見るとすげぇ美人じゃんかよ。
人形みたいっていうか、すげぇ美少女って云うか。
いきなりひんやりした指で触わるな。慌てるだろがっ)
男「び、びっくりしただけ」
黒髪娘「ふむ。――まぁ、礼を逸していたか。すまぬ」
男「いや、そのっ」
黒髪娘「?」
男「ご、豪華で綺麗だからっ。びっくりした」
黒髪娘「? ああ。これか」
さらり
男「つか、すごい格好なんですけれど」
黒髪娘「萌葱の襲だ。普段着だな」
男「ハイスペック過ぎでしょ。
それ、和服……なの? めちゃくちゃ刺繍はいって
あれ、刺繍じゃないの?」
黒髪娘「こういう浮織なのだ」
男「すげぇなぁ」
黒髪娘「まぁ。尚侍ともなればな。これくらいは」
男「それに、その髪、すごいな!
真っ黒で、サラサラで、ろうそくの光できらきらで。
滝みたいに豪華だよなぁ!」
黒髪娘「?」
男「ご、豪華で綺麗だからっ。びっくりした」
黒髪娘「? ああ。これか」
さらり
男「つか、すごい格好なんですけれど」
黒髪娘「萌葱の襲だ。普段着だな」
男「ハイスペック過ぎでしょ。
それ、和服……なの? めちゃくちゃ刺繍はいって
あれ、刺繍じゃないの?」
黒髪娘「こういう浮織なのだ」
男「すげぇなぁ」
黒髪娘「まぁ。尚侍ともなればな。これくらいは」
男「それに、その髪、すごいな!
真っ黒で、サラサラで、ろうそくの光できらきらで。
滝みたいに豪華だよなぁ!」
黒髪娘「それはっ……。褒めて頂いたのか? そうなのか?」
男「そうだけど?」
黒髪娘「そうか。ありがとう。――そうか」
男「なんか悪い事言った?」
黒髪娘「いや、嬉しかっただけだ。
そう言ってくれる人は、多くはないから」
男「そうなのか? ものすごく豪華なのに」
黒髪娘「ふふふっ。わたしは変わり者で……。
ああ、そうだな。ヒキコモリなのだ」
男「引きこもり?」
黒髪娘「そうだ。祖父君に聞いたのだが。
家に籠もって読書三昧の日々を過ごす
放蕩者を言うらしいではないか」
男「えー、っと。まぁ……間違ってはいないか」
黒髪娘「それゆえ、女房以外、余り人と会うこともなくてな」
男「そか(……美人なのに、もったいない話だなぁ)」
黒髪娘「しかし、夜も更けた」
男「あぁ、そうかも」
男「そうだけど?」
黒髪娘「そうか。ありがとう。――そうか」
男「なんか悪い事言った?」
黒髪娘「いや、嬉しかっただけだ。
そう言ってくれる人は、多くはないから」
男「そうなのか? ものすごく豪華なのに」
黒髪娘「ふふふっ。わたしは変わり者で……。
ああ、そうだな。ヒキコモリなのだ」
男「引きこもり?」
黒髪娘「そうだ。祖父君に聞いたのだが。
家に籠もって読書三昧の日々を過ごす
放蕩者を言うらしいではないか」
男「えー、っと。まぁ……間違ってはいないか」
黒髪娘「それゆえ、女房以外、余り人と会うこともなくてな」
男「そか(……美人なのに、もったいない話だなぁ)」
黒髪娘「しかし、夜も更けた」
男「あぁ、そうかも」
黒髪娘「男殿のお陰で、祖父君の最期を聞くことも出来た」
男「ん? そだな」
黒髪娘「感謝に堪えない」 ふかぶか
男「そんなに頭下げることないじゃん。
正座とか、土下座っぽくて怖いよっ」
黒髪娘「いや、気にかかっていたのだ。
お見舞いに行くことも出来ないゆえ。
物忌みはしていたのだが……」
男「いいっていいって。爺ちゃんの生徒さんじゃん」
黒髪娘「……あの長びつに入れば戻れる。
酒でも飲んで忘れてしまうと良い」
男「?」
黒髪娘「こんな気持ち悪い話は、
一夜の夢として忘れてしまった方が良い。
手間を取らせて本当に申し訳なかった」
男「へ?」
黒髪娘「時を超えて漂流するなど、出来の悪い戯作の
ような物語だろう? 祖父君は哀れみ深くわたしの
我が儘に付き合ってくださったが、普通に考えて
気持ちの悪い話だ」
男「ん? そだな」
黒髪娘「感謝に堪えない」 ふかぶか
男「そんなに頭下げることないじゃん。
正座とか、土下座っぽくて怖いよっ」
黒髪娘「いや、気にかかっていたのだ。
お見舞いに行くことも出来ないゆえ。
物忌みはしていたのだが……」
男「いいっていいって。爺ちゃんの生徒さんじゃん」
黒髪娘「……あの長びつに入れば戻れる。
酒でも飲んで忘れてしまうと良い」
男「?」
黒髪娘「こんな気持ち悪い話は、
一夜の夢として忘れてしまった方が良い。
手間を取らせて本当に申し訳なかった」
男「へ?」
黒髪娘「時を超えて漂流するなど、出来の悪い戯作の
ような物語だろう? 祖父君は哀れみ深くわたしの
我が儘に付き合ってくださったが、普通に考えて
気持ちの悪い話だ」
男「それは……そなのかな」
黒髪娘「男殿には、大きな感謝を」
男「あのさ」
黒髪娘「なんだろう?」
男「黒髪は、いくつ?」
黒髪娘「歳か? 15になった」
男「中学生じゃんよっ!」
黒髪娘「はぅわっ」びくっ
男「なんでそんなに落ち着いちゃっているわけ?」
黒髪娘「びっくりするではないか。
――ごく普通かと思うが」
男「……」
黒髪娘「何か、まずかったのだろうか?」
男「……なんでもないけど」
黒髪娘「男殿には、大きな感謝を」
男「あのさ」
黒髪娘「なんだろう?」
男「黒髪は、いくつ?」
黒髪娘「歳か? 15になった」
男「中学生じゃんよっ!」
黒髪娘「はぅわっ」びくっ
男「なんでそんなに落ち着いちゃっているわけ?」
黒髪娘「びっくりするではないか。
――ごく普通かと思うが」
男「……」
黒髪娘「何か、まずかったのだろうか?」
男「……なんでもないけど」
黒髪娘「礼節を失うのは人として恥ずべきだ」
男「そりゃそうだけど」
黒髪娘「恩人の孫でもあり、また恩人の消息を伝えてくれた
この上なき恩人でもある。その男殿の平安を祈念したいのだ」
男「それはもう判ったけどよ」
黒髪娘「そうか」 ほっ
男「なんで、爺さんが何度も来たのかも判る気がするな」
黒髪娘「?」
男「俺も、また来るから」
黒髪娘「……良いのか? 気持ち悪くないのか?」
男「爺さんが出来たんだし、俺に出来ないわけがねぇ。
それに、爺さんが『あの家を頼む』って云った意味が
これじゃないかって云う気もする」
黒髪娘「よく判らないが」
男「また来っから」
黒髪娘「あの、それはっ」
男「また来っからな!」
ざくっ、ばたんっ
男「そりゃそうだけど」
黒髪娘「恩人の孫でもあり、また恩人の消息を伝えてくれた
この上なき恩人でもある。その男殿の平安を祈念したいのだ」
男「それはもう判ったけどよ」
黒髪娘「そうか」 ほっ
男「なんで、爺さんが何度も来たのかも判る気がするな」
黒髪娘「?」
男「俺も、また来るから」
黒髪娘「……良いのか? 気持ち悪くないのか?」
男「爺さんが出来たんだし、俺に出来ないわけがねぇ。
それに、爺さんが『あの家を頼む』って云った意味が
これじゃないかって云う気もする」
黒髪娘「よく判らないが」
男「また来っから」
黒髪娘「あの、それはっ」
男「また来っからな!」
ざくっ、ばたんっ
――祖父の平屋。納戸
どてっ。ごろっ
男「……って、ってって。脚! 小指! ぶっけたっ!!」
男「くはぁ痛ってぇ……。って」
男「どうやら」
男(戻れたか。……してみると、最初のは、
頭から落ちたせいで気絶したのか。
普通に足から入れば、ちょっと飛び降りるような
感覚なのかね……)
男「ま、いっか。安全に往復できるって判れば」
……良いのか? 気持ち悪くないのか?
男「なんか、物わかりの云い中学生とか気持ちわりぃっつの」
男「ったく。ヒッキーなめんな」
どてっ。ごろっ
男「……って、ってって。脚! 小指! ぶっけたっ!!」
男「くはぁ痛ってぇ……。って」
男「どうやら」
男(戻れたか。……してみると、最初のは、
頭から落ちたせいで気絶したのか。
普通に足から入れば、ちょっと飛び降りるような
感覚なのかね……)
男「ま、いっか。安全に往復できるって判れば」
……良いのか? 気持ち悪くないのか?
男「なんか、物わかりの云い中学生とか気持ちわりぃっつの」
男「ったく。ヒッキーなめんな」
――数日後、典侍の東屋
ぼて。がたっ
男「おーい! 黒髪~」
からから
黒髪娘「男殿ではないか。本当に来てくれたんだなっ」
男「ちゃんとそう言ったじゃねぇか」
黒髪娘「いや、あれは。その……。
社交辞令というか、虚ろ言かと」
男「なんでそう思うかなぁ」
黒髪娘「それは、女房達がそういう風に」
男「女房ってなに?」
黒髪娘「ああ。それは、ん……。侍女? 召使い?
そのような存在だ。生活を補佐してくれる」
男「ああ。うん(そか、こいつかなり偉いんだもんな)」
黒髪娘「男性の去り際の言葉は信じるものではない、と」
男「なんだかなぁ。すげぇ耳年増な」
黒髪娘「そ、そうか? すまない」 しゅん
ぼて。がたっ
男「おーい! 黒髪~」
からから
黒髪娘「男殿ではないか。本当に来てくれたんだなっ」
男「ちゃんとそう言ったじゃねぇか」
黒髪娘「いや、あれは。その……。
社交辞令というか、虚ろ言かと」
男「なんでそう思うかなぁ」
黒髪娘「それは、女房達がそういう風に」
男「女房ってなに?」
黒髪娘「ああ。それは、ん……。侍女? 召使い?
そのような存在だ。生活を補佐してくれる」
男「ああ。うん(そか、こいつかなり偉いんだもんな)」
黒髪娘「男性の去り際の言葉は信じるものではない、と」
男「なんだかなぁ。すげぇ耳年増な」
黒髪娘「そ、そうか? すまない」 しゅん
男「まぁ、いいや。黒髪はヒッキーなんだろう?」
黒髪娘「うむ、ヒキコモリだぞ」
男「まぁ、そんなわけで色々もってきたわけだ」
黒髪娘「?」
男「まずはー。びゃーん。シュークリームっ!」
黒髪娘「お、おおっ!!」
男「お、すげぇ反応」
黒髪娘「それは知っている!!」
男「なんと!」
黒髪娘「祖父君に頂いたことがあるっ」
男(熱い視線だ。ふふんっ。やはりな。作戦成功だ)
黒髪娘「頂けるのか」
男「うむ」
黒髪娘「感謝する」 ふかぶか、ぺとり
男「だからいきなり土下座はやめれっ」
黒髪娘「うむ、ヒキコモリだぞ」
男「まぁ、そんなわけで色々もってきたわけだ」
黒髪娘「?」
男「まずはー。びゃーん。シュークリームっ!」
黒髪娘「お、おおっ!!」
男「お、すげぇ反応」
黒髪娘「それは知っている!!」
男「なんと!」
黒髪娘「祖父君に頂いたことがあるっ」
男(熱い視線だ。ふふんっ。やはりな。作戦成功だ)
黒髪娘「頂けるのか」
男「うむ」
黒髪娘「感謝する」 ふかぶか、ぺとり
男「だからいきなり土下座はやめれっ」
黒髪娘「そう言うことならば、一席設けよう」
男「一席って?」
黒髪娘「飲むものくらい欲しいのではないか?」
男「ああ、うん」
黒髪娘「茶を入れる」
男「ああ。そう言えば前ももらったっけ。茶、あるんだ」
黒髪娘「うむ、飲むのは貴族だけだが。
祖父君も好きだったゆえこの庵でも沸かすことが出来る」
男「そかそか」
黒髪娘「ぬるめがよいのであろう?」 にこっ
男「あ。……うん」
黒髪娘「?」
男(不意打ちで笑われるとびっくりするな。
やべぇやべぇ。こっちも引きこもり同然だと見破られちまう)
黒髪娘「しばし待っていてくれ」
男「おーけー。この部屋にいればいいのか?」
黒髪娘「うむ、準備をしてくる」
男「一席って?」
黒髪娘「飲むものくらい欲しいのではないか?」
男「ああ、うん」
黒髪娘「茶を入れる」
男「ああ。そう言えば前ももらったっけ。茶、あるんだ」
黒髪娘「うむ、飲むのは貴族だけだが。
祖父君も好きだったゆえこの庵でも沸かすことが出来る」
男「そかそか」
黒髪娘「ぬるめがよいのであろう?」 にこっ
男「あ。……うん」
黒髪娘「?」
男(不意打ちで笑われるとびっくりするな。
やべぇやべぇ。こっちも引きこもり同然だと見破られちまう)
黒髪娘「しばし待っていてくれ」
男「おーけー。この部屋にいればいいのか?」
黒髪娘「うむ、準備をしてくる」
男「ふぅむ。なんか、すかすかした部屋の作りだなぁ」
男(これは……箱? ああ、本か。和綴じの)
ぺらぺら
男「うへぇ。古典だ。あいつ古文読めるのか?
ってあたりまえか。これがあいつらの現代語か。
……これは植物か、薬草かな?
こっちのは、なんだろう。
オカルトか? こっちは漢文か
毎日本を読んでいるとか云ったもんな。
結構あるなぁ」
ぺらぺら
男「ってか、多いな。おいおい。こっちのは天文に見えるな」
男「……よく分かんないけど、平安の中学生って
こんなに勉強するのか? どんだけやってんだ?」
からん
男「お」
黒髪娘「待たせたな」
男「いやいや」
男(これは……箱? ああ、本か。和綴じの)
ぺらぺら
男「うへぇ。古典だ。あいつ古文読めるのか?
ってあたりまえか。これがあいつらの現代語か。
……これは植物か、薬草かな?
こっちのは、なんだろう。
オカルトか? こっちは漢文か
毎日本を読んでいるとか云ったもんな。
結構あるなぁ」
ぺらぺら
男「ってか、多いな。おいおい。こっちのは天文に見えるな」
男「……よく分かんないけど、平安の中学生って
こんなに勉強するのか? どんだけやってんだ?」
からん
男「お」
黒髪娘「待たせたな」
男「いやいや」
黒髪娘「冷ましてある」
男「ありがとう。ほら、これ、シュークリームだろ」
黒髪娘「わぁ」
男「で。これが堅焼ポテチ。
こっちは俺の好きなサラダせんべい。
で、カントリーマァムと、
抹茶ポッキーと、羊羹と……」
黒髪娘「なんだ、それらは」
男「おやつだよ」
黒髪娘「菓子……なのか?」
男「そうだね」
黒髪娘「こんなにか?」
男「うん、何が気に入るか判らなかったしさ」
黒髪娘「……」そわそわ
男「もしかして、結構気になっている?」
黒髪娘「そんなに不作法ではない」
男「ありがとう。ほら、これ、シュークリームだろ」
黒髪娘「わぁ」
男「で。これが堅焼ポテチ。
こっちは俺の好きなサラダせんべい。
で、カントリーマァムと、
抹茶ポッキーと、羊羹と……」
黒髪娘「なんだ、それらは」
男「おやつだよ」
黒髪娘「菓子……なのか?」
男「そうだね」
黒髪娘「こんなにか?」
男「うん、何が気に入るか判らなかったしさ」
黒髪娘「……」そわそわ
男「もしかして、結構気になっている?」
黒髪娘「そんなに不作法ではない」
男「これ、ちょと開けてみ?」
黒髪娘「?」
男「これは包装って云って、まぁ、包む紙みたいなもの」
黒髪娘「うむ」
男「ここを引っ張って」
ぺりぺり
黒髪娘「良い香りが」
男「で、あとはこの内側の小さな包装も」 ペリペリ
黒髪娘「! このように愛らしい菓子が出てきたぞ」
男「食べて」
黒髪娘「頂く……」ちらっ
男「いいよ、どうぞどうぞ」
黒髪娘「甘いっ! これは美味しい」 にこっ
男「そうかそうか」
黒髪娘「?」
男「これは包装って云って、まぁ、包む紙みたいなもの」
黒髪娘「うむ」
男「ここを引っ張って」
ぺりぺり
黒髪娘「良い香りが」
男「で、あとはこの内側の小さな包装も」 ペリペリ
黒髪娘「! このように愛らしい菓子が出てきたぞ」
男「食べて」
黒髪娘「頂く……」ちらっ
男「いいよ、どうぞどうぞ」
黒髪娘「甘いっ! これは美味しい」 にこっ
男「そうかそうか」
黒髪娘「こちらも美味しいな」
男「うん。……爺ちゃんはあんまりもってこなかったの?」
黒髪娘「うむ。あ、いや。理屈は判っているのだ。
このような物は、本来手に入るはずもないわけで。
もし何らかの手違いでこの時代に残しては
大問題になってしまう、と」
男(ああ、そうか。……プラスチックやビニールが
遺跡から出土したら大変だもんな)
黒髪娘「そう考えれば、これらも……」
男「ああ、いいよ。そんなにしょんぼりしないで。
要するにばれなきゃ良いんだろう?
俺は爺ちゃんとはちょっと考えも違うしさ。
食い終わったら、残った包装紙とかは
全部きれいにこのコンビニ袋に入れてさ。
俺が持って帰れば、問題なしって訳だ」
黒髪娘「そうしてもらえるか?」
男「ああ。もちろんだ」
黒髪娘「しかし、このように高価な土産を頂いても
わたしには返せる物が余りにもないのだが……」
男「うん。……爺ちゃんはあんまりもってこなかったの?」
黒髪娘「うむ。あ、いや。理屈は判っているのだ。
このような物は、本来手に入るはずもないわけで。
もし何らかの手違いでこの時代に残しては
大問題になってしまう、と」
男(ああ、そうか。……プラスチックやビニールが
遺跡から出土したら大変だもんな)
黒髪娘「そう考えれば、これらも……」
男「ああ、いいよ。そんなにしょんぼりしないで。
要するにばれなきゃ良いんだろう?
俺は爺ちゃんとはちょっと考えも違うしさ。
食い終わったら、残った包装紙とかは
全部きれいにこのコンビニ袋に入れてさ。
俺が持って帰れば、問題なしって訳だ」
黒髪娘「そうしてもらえるか?」
男「ああ。もちろんだ」
黒髪娘「しかし、このように高価な土産を頂いても
わたしには返せる物が余りにもないのだが……」
男「いやいや。構わないよ。
こっちって俺から見たら知らない国だからさ。
来てみると、どきどきして楽しいし」
黒髪娘「はははっ。祖父君も、あれは何か、これは何かと
いくつもいくつも問いを重ねてきたなぁ」
男「俺も聞いちゃうと思うけれど、ごめんな」
黒髪娘「かまわない。……その、男殿は、先生?
……それとも卜筮官や陰陽師なのか?」
男「へ?」
黒髪娘「いや、だから。祖父君は、子弟に学問全般を
指南する事を生業にしていたと聞く。
で、あるから、家系的に男殿もそうなのかと」
男「いや、俺は違うよ。まだ学生だよ。
教育いこうかどうかは、悩んでるなー」
黒髪娘「学生とは? 祖父君の言う生徒とは違うのか?」
男「あー。似たようなもの。ちょっと年が上になって
専門的なことを学んだり研究したり……」
黒髪娘「ふむ」
こっちって俺から見たら知らない国だからさ。
来てみると、どきどきして楽しいし」
黒髪娘「はははっ。祖父君も、あれは何か、これは何かと
いくつもいくつも問いを重ねてきたなぁ」
男「俺も聞いちゃうと思うけれど、ごめんな」
黒髪娘「かまわない。……その、男殿は、先生?
……それとも卜筮官や陰陽師なのか?」
男「へ?」
黒髪娘「いや、だから。祖父君は、子弟に学問全般を
指南する事を生業にしていたと聞く。
で、あるから、家系的に男殿もそうなのかと」
男「いや、俺は違うよ。まだ学生だよ。
教育いこうかどうかは、悩んでるなー」
黒髪娘「学生とは? 祖父君の言う生徒とは違うのか?」
男「あー。似たようなもの。ちょっと年が上になって
専門的なことを学んだり研究したり……」
黒髪娘「ふむ」
黒髪娘「よければ……」
男「?」
黒髪娘「わたしに祖父君に続いて、
学問の手ほどきをしてくれないか?」
男「えーっ。俺はそこまでの学識はねぇよ」
黒髪娘「そうなのか? 先ほどから話していても
知恵深く、賢者を感じるのだが」
男(そりゃ時代による格差だよ)
黒髪娘「……」
男「そんなにしょんぼりしないでくれ」
黒髪娘「していない」
男(表情に出ないけど、なんか判っちまうんだよな)
黒髪娘「していないのだぞ?」
男「何を勉強しているんだ?」
黒髪娘「それは、色々と」
男「ふむ。どんな?」
男「?」
黒髪娘「わたしに祖父君に続いて、
学問の手ほどきをしてくれないか?」
男「えーっ。俺はそこまでの学識はねぇよ」
黒髪娘「そうなのか? 先ほどから話していても
知恵深く、賢者を感じるのだが」
男(そりゃ時代による格差だよ)
黒髪娘「……」
男「そんなにしょんぼりしないでくれ」
黒髪娘「していない」
男(表情に出ないけど、なんか判っちまうんだよな)
黒髪娘「していないのだぞ?」
男「何を勉強しているんだ?」
黒髪娘「それは、色々と」
男「ふむ。どんな?」
黒髪娘「大きく、文章、明経、明法、算だな。
他にも本草、天文、暦法なども調べている」
男「ちょっと聞きたいな」
黒髪娘「まず、文章(もんじょう)は、唐の歴史と漢文だ。
唐は我が国から見ても隣国だし文化も花開いている。
我が国は唐を手本にして居るから、それを知るのは重要だ」
男(歴史と漢文って事ね。この場合漢文ってのは
大学の一般教養で英語やるくらい必須って訳だ)
黒髪娘「明経は儒学を教える。この世の理と礼節についてだな。
明法は律令についてだ。法……律というのか? あれだ。
この辺は実学なので、位をえるためにはどうしたって必要だ。
算は算術だ。えっと、祖父君によれば、算数? だそうだ」
男「ああ、うん。だいたいは判った。
えっと、学ぶとどうなるんだ?」
黒髪娘「学ぶと?」
男「ほら。位がどうとか」
黒髪娘「ああ。大学寮というのがあって」
男「大学あるのか!?」
黒髪娘「もちろんあるぞ? 大学寮は式部省の一部なんだ。
ここは将来の有力な文官や武官を育てるところで、
陰陽寮とともに、この国の学問の頂点だ。
例えば明経道を教える大学博士ともなると正六位下
という非常に高い位階をえることが出来る」
男「そうなのかぁ。結構きっちりとした機構なんだな」
他にも本草、天文、暦法なども調べている」
男「ちょっと聞きたいな」
黒髪娘「まず、文章(もんじょう)は、唐の歴史と漢文だ。
唐は我が国から見ても隣国だし文化も花開いている。
我が国は唐を手本にして居るから、それを知るのは重要だ」
男(歴史と漢文って事ね。この場合漢文ってのは
大学の一般教養で英語やるくらい必須って訳だ)
黒髪娘「明経は儒学を教える。この世の理と礼節についてだな。
明法は律令についてだ。法……律というのか? あれだ。
この辺は実学なので、位をえるためにはどうしたって必要だ。
算は算術だ。えっと、祖父君によれば、算数? だそうだ」
男「ああ、うん。だいたいは判った。
えっと、学ぶとどうなるんだ?」
黒髪娘「学ぶと?」
男「ほら。位がどうとか」
黒髪娘「ああ。大学寮というのがあって」
男「大学あるのか!?」
黒髪娘「もちろんあるぞ? 大学寮は式部省の一部なんだ。
ここは将来の有力な文官や武官を育てるところで、
陰陽寮とともに、この国の学問の頂点だ。
例えば明経道を教える大学博士ともなると正六位下
という非常に高い位階をえることが出来る」
男「そうなのかぁ。結構きっちりとした機構なんだな」
黒髪娘「殿上人にとって学識は、とても重要なんだ」
男「あれ?」
黒髪娘「?」
男「でもさ。黒髪ってさ」
黒髪娘「うむ」
男「なんだっけ、その。典侍(ないしのすけ)だっけ?」
黒髪娘「そうだ、従四位となる」
男「数字が小さい方が偉いんだろう?」
黒髪娘「そうだな」
男「じゃ、もうすでに偉いんじゃないか」
黒髪娘「……そうかもしれない」
男「じゃぁ、勉強する必要なくないか?」
黒髪娘「ああ。……うん。そうかもしれない。
でも……わたしは女だからな。
そもそも、この従四位も
学識で手に入れたものでもなければ、
自分で手に入れたものでもないのだ」
男「?」
男「あれ?」
黒髪娘「?」
男「でもさ。黒髪ってさ」
黒髪娘「うむ」
男「なんだっけ、その。典侍(ないしのすけ)だっけ?」
黒髪娘「そうだ、従四位となる」
男「数字が小さい方が偉いんだろう?」
黒髪娘「そうだな」
男「じゃ、もうすでに偉いんじゃないか」
黒髪娘「……そうかもしれない」
男「じゃぁ、勉強する必要なくないか?」
黒髪娘「ああ。……うん。そうかもしれない。
でも……わたしは女だからな。
そもそも、この従四位も
学識で手に入れたものでもなければ、
自分で手に入れたものでもないのだ」
男「?」
黒髪娘「いや、よそ事をいった」
男「う、うん」
ことことこと
黒髪娘「もう一杯いかがだろうか?」
男「お、もらう」
黒髪娘「煎れよう」
男「えっとさ」
黒髪娘「ん?」
男「次は、サラダせんべい行っておくか?」
黒髪娘「開けさせてくれるのか?」 にこっ
男「ああ、いいぞっ」
黒髪娘「嬉しいぞ。かたじけない、男殿」
男(なんだか、中学生なのになぁ……。
年相応なんだか、大人びちゃってるんだかわからねぇ)
黒髪娘「~♪」
男(あんな表情も出来るのになぁ……)
男「う、うん」
ことことこと
黒髪娘「もう一杯いかがだろうか?」
男「お、もらう」
黒髪娘「煎れよう」
男「えっとさ」
黒髪娘「ん?」
男「次は、サラダせんべい行っておくか?」
黒髪娘「開けさせてくれるのか?」 にこっ
男「ああ、いいぞっ」
黒髪娘「嬉しいぞ。かたじけない、男殿」
男(なんだか、中学生なのになぁ……。
年相応なんだか、大人びちゃってるんだかわからねぇ)
黒髪娘「~♪」
男(あんな表情も出来るのになぁ……)
――男の実家
姉「あら、あんたどこ行ってたの?」
男「あ? 爺ちゃんの家」
姉「ああ。あそこ、どう?」
男「んー。荒れ果ててないよ。何日か掃除したけどさ。
わりと良いな、あそこ。
俺バイクあるし、あそこ済もうかな」
姉「そうねぇ。人がいないと荒れ果てるって云うしねぇ」
男「なんか、結構愛着あるかも。俺」
姉「あんた子供の時はあそこの庭で
相当やんちゃだったからね」
男「そう?」
姉「まったくよぉ。心配で心配で母さん育児放棄よ」
男「心配してねぇじゃん」
姉「まぁ、お爺ちゃんも、すぐ取り壊したり
売られちゃったりしたら寂しいだろうしねぇ」
男「そうだなー」
姉「あら、あんたどこ行ってたの?」
男「あ? 爺ちゃんの家」
姉「ああ。あそこ、どう?」
男「んー。荒れ果ててないよ。何日か掃除したけどさ。
わりと良いな、あそこ。
俺バイクあるし、あそこ済もうかな」
姉「そうねぇ。人がいないと荒れ果てるって云うしねぇ」
男「なんか、結構愛着あるかも。俺」
姉「あんた子供の時はあそこの庭で
相当やんちゃだったからね」
男「そう?」
姉「まったくよぉ。心配で心配で母さん育児放棄よ」
男「心配してねぇじゃん」
姉「まぁ、お爺ちゃんも、すぐ取り壊したり
売られちゃったりしたら寂しいだろうしねぇ」
男「そうだなー」
姉「夜は?」
男「もちろん食うよ」
姉「父さんも母さんも遅いみたいだか、先食べちゃおっか」
男「うん。何食うの?」
姉「メンチと煮物」
男「む。良いね。庶民って物がわかってるね」
姉「あったり前よ。わたしクラスになるとね。
足の爪先から黄金の庶民オーラが出て
髪の毛金色で逆立つわけ」
男「すげぇな」
姉「サイバイマンくらいなら鼻歌交じりで倒せるのよ。
んっ。ほら、運んで」
男「へいへーい」
姉「あんたちゃんとやってんの?」
男「やってる」 こくこく
姉「ならいいけど」
男「さすがに、中学生に後ろから煽られると
勉強する気に多少なるわ」
男「もちろん食うよ」
姉「父さんも母さんも遅いみたいだか、先食べちゃおっか」
男「うん。何食うの?」
姉「メンチと煮物」
男「む。良いね。庶民って物がわかってるね」
姉「あったり前よ。わたしクラスになるとね。
足の爪先から黄金の庶民オーラが出て
髪の毛金色で逆立つわけ」
男「すげぇな」
姉「サイバイマンくらいなら鼻歌交じりで倒せるのよ。
んっ。ほら、運んで」
男「へいへーい」
姉「あんたちゃんとやってんの?」
男「やってる」 こくこく
姉「ならいいけど」
男「さすがに、中学生に後ろから煽られると
勉強する気に多少なるわ」
――黒髪の四阿
がつんっ。すたっ
男 きょろきょろ
しーん
男「おーい、黒髪? いるかー?」
男「いないのかな。おーい?」
ぱたぱたぱたっ
友女房「お、男様っ」
男「!?」
友女房「男様でございますね。ほ、本日はっ。
はぁ、はぁっ」
男「いや、一つ落ち着いて」
友女房「は、はいっ」
男(なんか面白い女の人だな)
がつんっ。すたっ
男 きょろきょろ
しーん
男「おーい、黒髪? いるかー?」
男「いないのかな。おーい?」
ぱたぱたぱたっ
友女房「お、男様っ」
男「!?」
友女房「男様でございますね。ほ、本日はっ。
はぁ、はぁっ」
男「いや、一つ落ち着いて」
友女房「は、はいっ」
男(なんか面白い女の人だな)
友女房「済みません。取り乱しました。
……黒髪の姫はご実家の方に向かっておられまして。
本日のところは、この友っ。
黒髪姫の腹心の女房、友女房がお相手いたします」
男「はぁ」
友女房「お疑いですか? 男様の件は姫より聞いています。
祖父君とも面識がありますし、そのぅ……」
男「あの、爺ちゃんさ。もしかして失礼なコトしなかった?」
友女房「……」
男「その、えーっと。ね?」
友女房「そ、それは……その。
めいどおっぱいとか云いまして」 ごにょごにょ
男「良し、合格。面識があるのは判った」
友女房「ほっといたしました」
男「苦労してるんだね」 ほろり
友女房「そう言ってくださると幸いです」
男「そっか、黒髪、居ないのか」
友女房「ええ。申し訳ありません」
……黒髪の姫はご実家の方に向かっておられまして。
本日のところは、この友っ。
黒髪姫の腹心の女房、友女房がお相手いたします」
男「はぁ」
友女房「お疑いですか? 男様の件は姫より聞いています。
祖父君とも面識がありますし、そのぅ……」
男「あの、爺ちゃんさ。もしかして失礼なコトしなかった?」
友女房「……」
男「その、えーっと。ね?」
友女房「そ、それは……その。
めいどおっぱいとか云いまして」 ごにょごにょ
男「良し、合格。面識があるのは判った」
友女房「ほっといたしました」
男「苦労してるんだね」 ほろり
友女房「そう言ってくださると幸いです」
男「そっか、黒髪、居ないのか」
友女房「ええ。申し訳ありません」
男「まぁ、それはしかたないよ。
ケイタイで様子聞いてから来るわけにも行かないし」
友女房「ケイタイ?」
男「いや、こっちの話」
友女房「姫より、もし男様が来られるようならば
お相手をしてくつろいでいただけと
仰せつかっております」
男「そっか、どうしようかな」
友女房「?」
男「……。ん、いいや、 んじゃしばらく
お邪魔させてもらう。ってか、俺ここにしばらく居て良いの?」
友女房「ええ、ここは姫の引きこもりの砦ですから。
滅多に客人も来ません。少なくとも奥までは。
安心してくださって大丈夫ですよ」
男「ありがとう。ああ、女房さん、だっけ?」
友女房「友女とお呼びください」
男「友女さん。女房さんって結構人数居るんでしょ?」
友女房「この四阿には数人ですね」
男「じゃ、このお菓子、みんなで分けて食べてよ」
ケイタイで様子聞いてから来るわけにも行かないし」
友女房「ケイタイ?」
男「いや、こっちの話」
友女房「姫より、もし男様が来られるようならば
お相手をしてくつろいでいただけと
仰せつかっております」
男「そっか、どうしようかな」
友女房「?」
男「……。ん、いいや、 んじゃしばらく
お邪魔させてもらう。ってか、俺ここにしばらく居て良いの?」
友女房「ええ、ここは姫の引きこもりの砦ですから。
滅多に客人も来ません。少なくとも奥までは。
安心してくださって大丈夫ですよ」
男「ありがとう。ああ、女房さん、だっけ?」
友女房「友女とお呼びください」
男「友女さん。女房さんって結構人数居るんでしょ?」
友女房「この四阿には数人ですね」
男「じゃ、このお菓子、みんなで分けて食べてよ」
――四阿の一室
友女房「お茶を……あら、書ですか?」
男「ああ、うん。俺も勉強しようと思って」
友女房「そちらの書ですか? ずいぶん厚いですね」
男「面倒なんだわ、それ」
友女房「どうぞ」 ことり
男「ありがとう」
友女房「……」
男「……」
カリカリカリ
友女房「えーっと、その。男様」
男「ん?」
友女房「宜しければ、お召し替えをなさいませんか?」
男「なんで?」
友女房「実は前回いらっしゃった時も思ったのですが
男様は見た目はわたし達とたいして変わりませんから
狩衣でも着て頂ければ、もし誰かに見かけられた場合も」
男「ああ。あんまり不審に思われないで済む、と」
友女房「お茶を……あら、書ですか?」
男「ああ、うん。俺も勉強しようと思って」
友女房「そちらの書ですか? ずいぶん厚いですね」
男「面倒なんだわ、それ」
友女房「どうぞ」 ことり
男「ありがとう」
友女房「……」
男「……」
カリカリカリ
友女房「えーっと、その。男様」
男「ん?」
友女房「宜しければ、お召し替えをなさいませんか?」
男「なんで?」
友女房「実は前回いらっしゃった時も思ったのですが
男様は見た目はわたし達とたいして変わりませんから
狩衣でも着て頂ければ、もし誰かに見かけられた場合も」
男「ああ。あんまり不審に思われないで済む、と」
友女房「ええ、そうです」
男「いいですけど。そういう服ってあるんですか?」
友女房「ございますよ。僭越ながら用意させて頂きました」
男「申し訳ないです。じゃ、着ちゃった方がいいかな」
――着替え中
友女房「いえ、それは後ろ前が逆です」
男「え? え?」
友女房「紐を先に締めてから」
男「こうです?」
友女房「あら。意外に……」
男「うわぁぁん。見るなぁ!!」
友女房「ご立派ですよ? 男様」
男「生温かい励ましは要りません。
でも結構温かいですね。見た目よりは」
友女房「外歩き用の衣装ですからね」
男「はぁ」
友女房「太刀でも佩けばご立派な公達でございますよ」
男「いいですけど。そういう服ってあるんですか?」
友女房「ございますよ。僭越ながら用意させて頂きました」
男「申し訳ないです。じゃ、着ちゃった方がいいかな」
――着替え中
友女房「いえ、それは後ろ前が逆です」
男「え? え?」
友女房「紐を先に締めてから」
男「こうです?」
友女房「あら。意外に……」
男「うわぁぁん。見るなぁ!!」
友女房「ご立派ですよ? 男様」
男「生温かい励ましは要りません。
でも結構温かいですね。見た目よりは」
友女房「外歩き用の衣装ですからね」
男「はぁ」
友女房「太刀でも佩けばご立派な公達でございますよ」
そよそよそそよ
友女房「良い風でございますねぇ」
男「静かだなぁ。こんなに静かなの?」
友女房「もう夕暮れでございますから」
男「?」
友女房「内裏に出仕……勤めにいらっしゃる方は、
夜明け前にはいらっしゃいます。
昼には勤務を終えて帰られるのが普通ですよ」
男「そうなの?」
友女房「ええ、灯りがありませんから。
祖父君も驚いていらっしゃいましたが」
男「そっか」
そよそよそそよ
友女房「ささでもお持ちしましょうか?」
男「ささ?」
友女房「お酒ですよ」
男「え。あ。いや……。きゅるる」
友女房「むしろお食事ですね」くすっ
男「面目ない」
友女房「良い風でございますねぇ」
男「静かだなぁ。こんなに静かなの?」
友女房「もう夕暮れでございますから」
男「?」
友女房「内裏に出仕……勤めにいらっしゃる方は、
夜明け前にはいらっしゃいます。
昼には勤務を終えて帰られるのが普通ですよ」
男「そうなの?」
友女房「ええ、灯りがありませんから。
祖父君も驚いていらっしゃいましたが」
男「そっか」
そよそよそそよ
友女房「ささでもお持ちしましょうか?」
男「ささ?」
友女房「お酒ですよ」
男「え。あ。いや……。きゅるる」
友女房「むしろお食事ですね」くすっ
男「面目ない」
――四阿の一室
友女房「たいしたお持てなしも出来ませんが」
男「いえいえ。温かい匂いします。ご馳走の雰囲気!」
ことん、かちん
友女房「こちらは瓜の漬け、ササゲ豆の煮物、
赤魚の醤付けの干物です。あとは豆飯と
酒(ささ)を――」
男「あ、どうも」
とぷとぷとぷ
友女房「どうぞ」
男「頂きます」
友女房「……」にこっ
男「友さんは飲みませんか?」
友女房「わたしは女房ですからね」
男「……んー。頂きます」
友女房「召上がれ」
男「あ。美味いです! 魚すげー美味いっ!」
友女房「それは良かった」
男「いや、ほんと……ん。美味いです」
友女房「たいしたお持てなしも出来ませんが」
男「いえいえ。温かい匂いします。ご馳走の雰囲気!」
ことん、かちん
友女房「こちらは瓜の漬け、ササゲ豆の煮物、
赤魚の醤付けの干物です。あとは豆飯と
酒(ささ)を――」
男「あ、どうも」
とぷとぷとぷ
友女房「どうぞ」
男「頂きます」
友女房「……」にこっ
男「友さんは飲みませんか?」
友女房「わたしは女房ですからね」
男「……んー。頂きます」
友女房「召上がれ」
男「あ。美味いです! 魚すげー美味いっ!」
友女房「それは良かった」
男「いや、ほんと……ん。美味いです」
友女房「……男様は、姫様を普通に扱ってくださいますね」
男「へ? 普通って?」
友女房「いえ」
男「んー。俺は爺ちゃんと違って学が足りてないんで、
まだ色々と判って無いんですよね。多分」
友女房「ええ、まぁ……」
男「?」
友女房「我が姫にこんなことを言うのも何ですが、
姫は皆からは……
妖憑きのキチガイ姫だと云われておりまして」
男「なんでまた?」
友女房「まぁ、もう14ですし?」
男「――?」
友女房「14ですし」
男「よく判らないです」
友女房「14でまだ嫁いでも居ないわけでして。
もう時間の問題で15です。完全な嫁き遅れです。
それなのに宴にも出ず引きこもりで、お恥ずかしい」
男「!?」
男「へ? 普通って?」
友女房「いえ」
男「んー。俺は爺ちゃんと違って学が足りてないんで、
まだ色々と判って無いんですよね。多分」
友女房「ええ、まぁ……」
男「?」
友女房「我が姫にこんなことを言うのも何ですが、
姫は皆からは……
妖憑きのキチガイ姫だと云われておりまして」
男「なんでまた?」
友女房「まぁ、もう14ですし?」
男「――?」
友女房「14ですし」
男「よく判らないです」
友女房「14でまだ嫁いでも居ないわけでして。
もう時間の問題で15です。完全な嫁き遅れです。
それなのに宴にも出ず引きこもりで、お恥ずかしい」
男「!?」
友女房「なんですか、うちの姫は」
男(目が座ってる……)
友女房「幼い頃はそれはそれは清らかな心優しく
学問に優れた、それはそれは聡明な姫だったのですが」
男(いまでも勉強好きなのじゃないか?)
友女房「そのうち勉学にどっぷりつかってしまい
時間さえあれば、やれ漢詩がどうのこうの、
天文が巡ってどうのこうのと」
男(あー)
友女房「私どもがお世話をしない限り
碌に髪もとかさぬような出不精のダメ人間に」
男(あー)
友女房「届かれる恋文にも、漢詩で返事を……
しかも痛烈なのを送りつける始末。
和歌ならばともかく、あんなに堅い漢詩で
議論をふっかけられてしまっては返答できるのは、
いまは亡き道真様くらいにちがいなく」
男(あー)
男(目が座ってる……)
友女房「幼い頃はそれはそれは清らかな心優しく
学問に優れた、それはそれは聡明な姫だったのですが」
男(いまでも勉強好きなのじゃないか?)
友女房「そのうち勉学にどっぷりつかってしまい
時間さえあれば、やれ漢詩がどうのこうの、
天文が巡ってどうのこうのと」
男(あー)
友女房「私どもがお世話をしない限り
碌に髪もとかさぬような出不精のダメ人間に」
男(あー)
友女房「届かれる恋文にも、漢詩で返事を……
しかも痛烈なのを送りつける始末。
和歌ならばともかく、あんなに堅い漢詩で
議論をふっかけられてしまっては返答できるのは、
いまは亡き道真様くらいにちがいなく」
男(あー)
友女房「わたし達も頑張ったんですけれどね。
すごく頑張って色々可愛い襲(衣服)を集めたり
年頃の女性の好む絵巻物をみせたり。
そんなものにはまったく興味もなく、
それでも身分だけは高いものですから
内侍司(ないしのつかさ)入りが決まって
これでなんとか普通になるかと思えば……」
男「?」
友女房「こんな秘密の離れを造って引きこもり三昧」がくり
男「はぁ……。もぐもぐ」
友女房「いえ、姫は悪い訳じゃないんですよ。
悪い姫じゃないんです。
……下々に至るまで優しいですし」
男「はぁ」
友女房「それにしたって、学問に操を捧げるとは
あんまりにもお労しいと……」
男「だってまだ14でしょ?」
友女房「もうすでに残念なことに14なんです」
男「はぁ」
すごく頑張って色々可愛い襲(衣服)を集めたり
年頃の女性の好む絵巻物をみせたり。
そんなものにはまったく興味もなく、
それでも身分だけは高いものですから
内侍司(ないしのつかさ)入りが決まって
これでなんとか普通になるかと思えば……」
男「?」
友女房「こんな秘密の離れを造って引きこもり三昧」がくり
男「はぁ……。もぐもぐ」
友女房「いえ、姫は悪い訳じゃないんですよ。
悪い姫じゃないんです。
……下々に至るまで優しいですし」
男「はぁ」
友女房「それにしたって、学問に操を捧げるとは
あんまりにもお労しいと……」
男「だってまだ14でしょ?」
友女房「もうすでに残念なことに14なんです」
男「はぁ」
>>1
俺がおとといやったエロゲのキャラ設定まんま
俺がおとといやったエロゲのキャラ設定まんま
友女房「ですから、せめて男様には姫のお心を
こう、軽やかに、出来れば浮き立った感じに
して頂きたいとか思うんですが」
男「それは本人のつもりがないとあんまり意味がないかと」
友女房「ダメですか」
男「ダメでしょ……もぐもぐ」
友女房「……」 がくり
男(つか、嫁き遅れなのか……)
友女房「なぁ、運も色々なかったんですが」
男「そうなんです?」
友女房「右大臣家のご息女ともなりますと。
お相手にも不足いたしますし……。
当代の東宮はまだ八つにしかなりませんしね。
本来であれば尚侍として後宮に権勢を振るうことも
いえ、我が姫には、似合いもしませんが……」
男「よく判らないけど。身分の高い姫が学問没頭で
婿捜しも放り出して恋愛音痴で婚期を逃したと。
そんな感じ?」
友女房「そうです」 こくり
男(つまり婚活放置で賞味期限間近の腐女子?)
友女房「どこでこうなっちゃったんでしょうか」
男「それは俺に聞かれてもなぁ」
こう、軽やかに、出来れば浮き立った感じに
して頂きたいとか思うんですが」
男「それは本人のつもりがないとあんまり意味がないかと」
友女房「ダメですか」
男「ダメでしょ……もぐもぐ」
友女房「……」 がくり
男(つか、嫁き遅れなのか……)
友女房「なぁ、運も色々なかったんですが」
男「そうなんです?」
友女房「右大臣家のご息女ともなりますと。
お相手にも不足いたしますし……。
当代の東宮はまだ八つにしかなりませんしね。
本来であれば尚侍として後宮に権勢を振るうことも
いえ、我が姫には、似合いもしませんが……」
男「よく判らないけど。身分の高い姫が学問没頭で
婿捜しも放り出して恋愛音痴で婚期を逃したと。
そんな感じ?」
友女房「そうです」 こくり
男(つまり婚活放置で賞味期限間近の腐女子?)
友女房「どこでこうなっちゃったんでしょうか」
男「それは俺に聞かれてもなぁ」
さらさらさらさら
男「ごちそうさまでした」
友女房「お粗末様でした。ささは?」
男「いえ、もう結構です」
友女房「はい。では灯明はこちらに」
男「はい。もう少しレポートを薦めます」
友女房「レポート……勉学ですね?」
男「ええ、なぁ。こっちでやると捗るんで」
友女房「さようですか。姫からくれぐれも粗相の
無いようにと申し使っております。ご存分に」
男「ありがとうございます」
友女房「では……」
男「ふぅ」
男(まぁ、こっちの方が時間の流れが遅いみたいだし。
こっちで三日くらい勉強して帰っても
向こうでは数時間だしな。レポートあげるには都合がいいや)
男「ごちそうさまでした」
友女房「お粗末様でした。ささは?」
男「いえ、もう結構です」
友女房「はい。では灯明はこちらに」
男「はい。もう少しレポートを薦めます」
友女房「レポート……勉学ですね?」
男「ええ、なぁ。こっちでやると捗るんで」
友女房「さようですか。姫からくれぐれも粗相の
無いようにと申し使っております。ご存分に」
男「ありがとうございます」
友女房「では……」
男「ふぅ」
男(まぁ、こっちの方が時間の流れが遅いみたいだし。
こっちで三日くらい勉強して帰っても
向こうでは数時間だしな。レポートあげるには都合がいいや)
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- ほむら「もういやだわまどかなんてどうでもい」 (710) - [50%] - 2012/4/18 7:30 ★★★×4
- 佐々木「キョン。せめてゴムをつけてくれないか」 (336) - [49%] - 2012/2/18 10:00 ★★★×4
- 伊織「そしてふたなりしかいなくなった」 (536) - [49%] - 2012/12/6 4:30 ☆
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