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    元スレ武内P「あだ名を考えてきました」

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    351 = 313 :

    ちひろ「ち、智絵里ちゃん……?」


    智絵里「おはようございます、ちひろさん」デップリ


    ちひろ「お……おはよう、ございます」

    智絵里「えへへ、階段を登るの、すっごく大変でした」デップリ

    ちひろ「そ、そう……頑張ったのね」

    智絵里「はいっ♪」デップリ


    智絵里「大変だったんですよ……プロデューサーさん?」デップリ


    武内P「……」

    352 = 313 :

    智絵里「えへへ、智絵里は、太りにくいけど――」デップリ

    武内P「……」

    智絵里「――痩せにくい体質だったみたいです♪」デップリ

    智絵里「あの……どうしたら良いと思いますか?」デップリ

    武内P「……頑張ってください」

    智絵里「このまま、痩せなかったら、どうしますか?」デップリ

    武内P「それ、は……」

    智絵里「見捨てないで……くださいね?」デップリ

    智絵里「だけど、もし、アイドルが続けられなくなったら……えへへ♪」デップリ


    智絵里「責任、とってくださいね♪」デップリ


    武内P「……自己責任で、お願いします」



    おわり

    353 :


    痩せなかったら結婚とか言ったら痩せる努力しなくなっちゃうじゃないですかー!
    そういえばcv杉田なまゆPは今の知絵里見てどう思うんだろう
    さすがに太すぎだと思うのかそれともナイスと思うのか

    354 :

    最後の智絵里は普段のかな子くらいかな?

    355 :

    大丈夫だ智絵里よ。カロリー代謝効率は筋肉より脂肪の方がずっと大きい。
    またオーバーカロリーは筋肉を育てるから、前よりもっとデカくなるぜ

    356 :

    >>281
    書きます

    357 = 356 :


    「~♪」


     フラ~リフラリ、街をブラブラと歩く。
     たまにすれ違う人が、あたしをチラリと見てくるけれど、気にしなーい。
     観察するのは、あくまでもあたし。
     見られたからって、そこに何の変化も有りはしないのです。


    「んー」


     日本に戻って、初めて歩いてみる街。
     何か新鮮な発見や驚きがあれば良いなと思ったけど、やっぱり何も見つからない。
     でもまぁ、何もしなければ、何も起こらないからね。
     見つからないっていうのがわかっただけで、良い実験になったかな。


    「ふんふ~ん♪」


     つまんない。


     ヒトの平均寿命を考えると、あたしはこの先何十年も生きる。
     あ、不規則な生活をしてるから、それよりはもうちょっと短いかな。
     だけど、それでも長い長~い期間に変わりはない。
     それをこんなにも、退屈で、つまんない時間で埋め尽くされて過ごすなんて、
    考えただけでも辟易するから、考えるのはやめまーす!


    「~♪」


     つまんない。
     つまんない、つまんない、つまんない、つまんなーい!


     何時でも良い。
     何処でも良い。
     誰でも良い。
     何でも良い。


     あたしのこの退屈な人生に、ほんの少しでも、化学変化をもたらす何か!
     一滴垂らすだけで、あたしの色がまるきり変わってしまう程の、そんな刺激!
     ……そんな、あるかどうかもわからないモノを探して、歩く。


    「……ふぅ」


     だけど、それももう飽きてきちゃったなー。
     そもそもさ、あたしって体力がある方じゃないしー、
    可能性に賭けるのは研究者としての性ではあるけど、もうそろそろ良いかな。


     あたしの、つまんない人生を壊すような何かは、存在しない。


     それが、あたしの出した結論、ってことでよろしくー。


    「……んー?」


     実験結果が出たと思ったけど、ふんふん、何やら面白そうな匂いを感じる。
     向こうからは見えないけれど、あたしからは全てが見えてる。


    「……」


     背の高い、怖~い顔をした男の人が、複数人の警官に囲まれ、職務質問されてる姿が。

    358 = 356 :


    「……」


     あの人は、一体何をしたんだろう。
     見た目通りの、凶悪な犯罪者だったりするのかな?
     でも、人って見た目だけで判断出来る程、そんなにシンプルじゃないんだよね。
     怖~い顔したおじさんが、ホットドッグをオマケしてくれた事もあるしねん♪


    「……」


     あの人は、一体どんな人なんだろう。
     上下の黒いスーツだけど、こんな昼間に手ぶらで街を歩く?


     とっても怪しい匂いがする。


     その匂いを嗅ぎつけられて、やってきました!
     バウバウ、犬のおまわりさーん!
     っとと、いけないいけない、日本の警官だから、ワンワン、だよねぇ。


    「……」


     あの人は、一体どうして焦ってるんだろう。
     やっぱり、凶悪な犯罪者だから、すぐにあそこを離れたいのかな?
     頭の中で渦巻いてるのは、焦り?
     うーん、表情がわかりにくいから、イマイチハッキリしないなー。


    「よ~し!」


     わからないから、直接聞いてみよーう!


     ゆっくりと、忍び寄る……んー! ジャパニーズ、ニンジャ!
     見つかったら、あっちへ行きなさい、出会え出会えされちゃうかもしれないしねん♪
     だからあたしは、息を殺して、気配を消して近づく。
     この場面から提供される、より、強い刺激を求めて。



    「あーっ! Pチャン、こんな所にいたにゃ!?」



     そんなあたしの実験は、またもや予想外の中断を余儀なくされる。


     乱入者は、一人の女の子。
     華やかな衣装を身に纏い、周囲の視線を集めながらも、それを堂々と受け止める。
     あまりにも自由で、奔放で、あたしすらも観察を忘れて一瞬見入ってしまった、一匹の猫。



     つまんない人生の、暇つぶしの一つ。


     この時のあたしは、そうとだけしか考えてなかった。
     ジーニアスだからって、何でもわかるとは限らないんだよねー。
     そんな当たり前だって?
     ピンポンピンポーン、正解、その通ーり!


     だからこそ、人生は――

    359 = 356 :


    「もーっ! 早くしないと、LIVEが始まっちゃうよ!」


     乱入してきたその猫は、呆気にとられる大人達の視線を集めながら、
    何やらブツクサと文句を言いながら携帯を取り出した。
     それを聞かされてるスーツの人は、右手を首筋に当てて謝ってる。
     ワンちゃん達も、ネコちゃんと彼のやり取りを見て、苦笑している。


     空気が――匂いが、変化した。


     怪しげで、扱いを間違えれば爆発間違い無しの、危険な薬品。
     それが、一瞬の内に、一匹の猫がもたらした化学反応によって、
    誰でも……それこそ子供でも扱えるような、無害なものに。


    「……」


     あの子は、一体何だろう。
     警官の人達の視線から察するに、あの子、あの人達に知られてる?
     容姿や言動に特徴があるからだけじゃなく、もっと、違う何か。
     その何かが、彼らの向ける視線に劇的な変化を及ぼして、あの匂いを発生させている。


     おもしろそう。


     アンバランスな、一人と一匹。
     その奇妙な組み合わせは、ペコリと一つお辞儀をすると、小走りで駆け出した。


     何時もの事のような、慣れた対応。
     何処かへ向かっている、あの走り。
     誰なんだろう、彼らは何者なんだろう。
     何をしようとしてるんだろう。


    「……」


     知りたい。
     知りたい、知りたい、知りたい、知りたーい!


     あたしって、なんてラッキーなんだろう!
     あんなにもおもしろそうで、解き明かしたい謎の存在に出会えるなんて!
     LIVEって言ってたから、あの子はシンガーなのかな?
     だけど、あの格好、それに――


    「笑ってた」


     急いでるはずなのに、とっても楽しそうに
     強がりでも、仕方なしでもない、只々純粋に、混じりっけ無く!
     あの笑顔の謎を解き明かさないで、他に何をする?


     知らずには、いられない!
     解き明かさずには、いられない!


    「よ~っし!」


     走り出す。
     走るのなんて、本当に久しぶりだけど、それもまたおもしろい。
     あたしをそうさせるだけの何かがあると、そんな匂いがしたのは初めてだから。


     ……でも、走るのってやっぱりつーかーれーるー!

    360 = 356 :

      ・  ・  ・

    「……ひぃ……はふぅ……!」


     二人を追って走ってみたものの、すぐに引き離された。
     あたしって、やっぱり運動不足だよねー。
     ま、わかってるから気にしないのが、あたしなのですよ、ふっふっふ!
     前向き前向き、見つけた楽しみを探す楽しみが増えたと思いましょーう!


    「……うーん、そんなにうまい話はないかー」


     すぐに、見つけちゃった。
     会話から、あの人が関係者だって言うのはわかってたしね。
     それに、特徴的な顔に、日本人にしては頭一つ分高い、あの身長。
     探す楽しみ、しゅーりょー、ぶーぶー!


    「……」


     乱れた呼吸を整え、心臓の鼓動を落ち着かせていく。
     ドキドキ、ワクワクも悪くないけど、これは実験だから。
     余計な感情が混じって、結果が違うものになったら大変だよー。
     こんなチャンス、二度と無いかも知れないんだから、慎重にいかないと。



    「――ねえ、そこのキミ!」



     慎重に――大胆に。
     大胆な発想が出来ないようじゃ、新しい発見は無い。


     あたしは知りたい、見つけたい。


     つまんない人生に、劇的な化学反応をもたらす、何かを。


    「……はい? 私……ですか?」


     突然声をかけられたからか、ちょっと戸惑ってるみたいだね。
     だけど、そこに隙がある、入り込む余地が生まれる。
     そうだよ、キミだよキミ! 周りを見ても、誰も居ないでしょ?
     大丈夫、安心して良いよ~♪


     危険な事は、するつもりは無いから。


    「私に、何か御用ですか?」


     チラリと時計を確認して、話しやすいようにあたしに近づいてきた。
     額には、走ったせいで上がった体温を調整するため、汗が見られる。
     一歩踏み出せば、手が届く距離。
     と・り・あ・え・ず! んー、どれどれ?


    「スー……ハー……スー……ハー……」


     思った通り、良い汗かいてるかいてるぅー!


    「キミ! イイ匂いするねー!」


     おっとと、大胆になりすぎちゃったかな?

    361 = 356 :


    「……すみません。御用が、無いようでしたら」


     匂いに言及されたからか、一歩引いて言われた。
     だけど、キミはこう思ってるはずだよ。


    「キミ、ナニモノ?」


     あたしの言葉を聞いて、困った様子で右手を首筋に。
     んふふ! こういうのって、先に聞いたもの勝ちだよん♪
     ほらほら、早く教えてよー!


    「ツン、ツン♪」


     人差し指で、スーツの上から左の胸――心臓の位置をつっつく。
     そんな事をされると思ってなかったのか、体をビクリと震わせた。
     そして、逃げるように、また一歩下がられた。
     離れた分の距離を埋めるために、あたしも、同じだけの距離を踏み込む。


    「……プロデューサーです」


     此処に着くまでの途中で、あの女の子が何者かはわかった。
     同じところを目指して歩く人混みの中で、あたしの中に入ってきた情報の数々。
     それらを照らし合わせれば、聞かなくても答えは出る。


     アイドル。


     男子の視覚に一過性の刺激を与えて、充足させるヤツ。
     あの子がアイドルってヤツなんだ、とは思ったけど、わからなかったのは――


    「ふーん、プロデューサーってのやってるの?」


     ――キミ。
     キミが、何者かわからなかったんだよねー。


     アイドルの子が、一生懸命走りながらも、笑ってるのはわかるよ?
     お仕事を楽しんでるんだろうなー、ってね!
     だけど、キミまで一緒になって走ってるのは、プロデューサーだからかー。


    「おもしろそーだね!」


     どれだけ必死にやっても、決して舞台に上がることは無い。
     それなのに、良い汗をかいて、あのアイドルの子と同じ様に……楽しんでる。


     そこに、何の意味があるのか、わからない。


     だってさ、主役はキミじゃないのに。


     キョーミ深い観察対象を見ながら、あたしの耳は歓声を捉えた。
     きっと、アイドルの子がステージに上がったんだろう。
     だけど、目の前に、こんなにも面白そうな観察対象が居るのに――



    「ニャ――――――ッ!!」



     ――って思ってたのに、また、あたしの実験は中断させられた。

    362 = 356 :

      ・  ・  ・

    「ねえ、あたしにも、アイドルって出来ると思う?」


     脳細胞が、まだパチパチと音を立てて電気を帯びているのがわかる。
     そのせいか、わかりきってるはずの答えが、出てこない。


     出来ない。


     アレが、アイドルだとするならば、あたしには不可能だ。
     やってみたら、多分、似たようなモノにはなれると思う。
     だけど、それはあくまでもフェイクでしかなくて、別物だから。
     それなのに……。


     ああ、それなのに……あたしは、あたしが出した答えに満足出来ない!


     出来ない! 出来ない!


     なんで? どうして?


     知りたい……知りたい、知りたい、知りたい!


    「……!」


     楽しい気持ちが、我慢できない!
     言葉に出来ない衝動が、あたしの中を駆け巡ってる!
     爆発しそう! 壊れそう!
     こんな化学反応、あたしは知らない!



    「――わかりません」



     わからない?
     キミ、プロデューサーなんだよね?
     アイドルを見るのがお仕事のキミが、わからない?


     ……――最高の答えだよ、ソレ。


    「ですが……良い、笑顔です」


     そう言いながら、目の前の――プロデューサーは、名刺を差し出してきた。



     それが、きっかけ。


     あたしは、謎を解き明かしたい。
     にゃはは、たまーに失踪したりもするけどね♪
     だけど、そのまま逃げ出すつもりも無いし、逃がすつもりは無いからだいじょーぶ!


     あたしは、あたしと言う実験対象を逃がす気は、無い。


     だってさ、つまんないでしょ?
     わからないことをそのままにしておく人生なんて。
     ふっふっふ、だから、あたしは神様に感謝してるのでーす!


     つまらない人生を面白くする謎解き――そんな、ギフテッドに。



    おわり

    363 :

    またギャグ担当が一人増えた

    364 :

    おつ 真昼間からとはありがたい どうせなら、目が合うといつも笑顔が返ってくるフレちゃんとの絡みもみたいです

    365 :

    >>363
    ギャグもマッドドクターもヤンデレもできる万能ネギみたいなキャラだから…

    366 = 363 :

    いつもの三人に三船さんが加わったらどうなるか読んでみたい
    三船さんって出たことあるっけ?

    367 :

    武シキを読むとどうも腹部が卯づく

    368 :

    しきにゃんの独占する為なら手段を選ばなさそうな危うさすき

    369 :


     なんじゃ、次はうちか? 何、時計回り?
     まあええか、こういうのはスパッと終わらせるに限る。
     あぁ!? じょ、情熱を込めてじゃと!?
     こっ、こら、化け猫! つっつくなワレ!



    「――村上巴。広島出身の十三歳じゃ」


     うちがあん人に最初に出会ったんは、オーディションの時じゃった。
     部屋ぁに入ったら、うちの若い衆にも劣らん男が居る思ったな。
     何が劣らんか、じゃと?
     そりゃまぁ……見た目、じゃな。


    「……」


     何じゃ、コイツ。
     右手を首筋にやって、何にも喋りゃせん。
     親父に聞いとったが、このプロダクションは、かなりの大手ゆう話じゃったはず。
     なのに、うちが喋っただけで黙りこくるとは、どういう了見じゃ?


    「……一つ、お聞きしても宜しいですか?」


     ドスの効いた、低ぅい声。
     それに、ちぃとばかし目を細め、真っ直ぐに目ぇを見る。
     ……ふん、ただ地声が低いだけ、か。
     見た目に惑わされるとは、うちもまだまだじゃのう。


    「何じゃ? 聞きたいことがあるんだったら、遠慮はいらん」


     じゃが、ここで弱みを見せるゆうんはあり得ん。
     親父がどうしても受けてこいゆうけぇ、顔を立ててやるためにうちは来た。
     だのに、先にうちが動くゆうんは、親父の顔に泥を塗るも同じじゃ。
     どっしり構えて、女じゃからと、なめられんようせにゃならん。



    「……後ろの方達は、一体?」



     そう言いながら、後ろに控える若い衆らに目ぇを向ける。
     何じゃ、見た目の割に、ちぃさい事を気にする奴じゃな。
     じゃが、まぁ、そうゆう男でも無い限り、
    アイドルなんてチャラチャラしたもんのプロデュースをしよう思いはせんか。


    「あぁ、気にせんでえぇ。家の若い衆じゃ」


     うちは要らんゆうたのに、親父が心配性で東京までついてこさせたモン達。
     コイツらも、親父の影響か知らんが、妙に心配性での。
     お嬢お嬢と、要らん世話まで焼きたがる……面倒で、有り難い奴らじゃ。
     フリフリやヒラヒラを着せたがるのだけは、心の底から面倒じゃがの!


    「……」


     うちの言葉を聞いて、また、右手を首筋にやって黙りこくる。
     部屋には、何とも言えん空気が流れとったわ。

    370 = 369 :


    「……」


     右手を降ろした思うたら、そんまま立ち上がり、ドアの方へ。
     じゃが、うちは何もする気ぃは無かったし、
    正直な話、家の若い衆に怖気づいて逃げ出すようなモンに、
    プロデュースを任せる気ぃは微塵も無かったからの。


     ――じゃが、あん人は、


    「今は、村上……巴さんの面接をする時間です」


     ドアを開けて、真っ直ぐに、


    「外で、待っていていただけますか?」


     ゆうたんじゃ。


    「っ……!」


     うちや、何を言われるかと身構えとった若い衆は、まぁ驚かされた!
     見た目ぇだけかと思いきや、見上げた胆力の持ち主じゃ、とな!
     色めきだつ若い衆の視線を一身に浴びても、微動だにせん佇まい。
     無表情に見えるゆうのに、うちは、怒った親父の顔を思い出した。


    「……外で待っとれ」


     最初は、見た目で虎と思った。
     次に、張り子の虎で、中身は虎に食われる鯉だと思った。
     じゃが、あれは龍じゃ。
     迂闊に逆鱗に触れようものなら、どうなるにせよ、たたじゃ済まん。


    「……」


     若い衆が不安気にうちを見るのがわかったが、構っとる暇は無い。
     目ぇ離したら、何をするかわからんのじゃ。
     プロデューサー……そして、アイドル。
     舐めてかかったら、知らん間に首を食いちぎられそうじゃのぉ。


    「……」


     バタリとドアが閉められ、部屋にはうちと奴だけじゃ。
     後ろに控えとった若い衆には、うちが思っとった以上に助けられてたゆう事か。
     緊張。
     まさか、一人の男を前にして、こんな気持ちを抱く時が来るとは思わんかった。


    「――それでは、面接を再開したいと思います」


     部屋に響く、低い声。
     それが、嫌にでっかく聞こえたもんじゃ。

    371 = 369 :


    「……その前に、一つだけ、聞かせてもらえるか?」


     コイツ……いや、こん人は、何を考えとるのか。
     家の若い衆を前にして、ちぃーとも表情を変えんかった。
     うちは……それが、不思議でならんのじゃ。


    「はい。遠慮なさらず、仰ってください」


     手元の資料から目ぇを離し、うちを見る。
     その目から、何も伝わってこんのじゃ。
     だから、知りたい。
     アンタは――


    「怖いとは、思わんかったんか?」


     芸能界ゆうんは、アンタみたいに肝が座っとるモン達ばっかりなんか?
     そうじゃとしたら、とんだ魔窟じゃ。
     プロデューサーでさえこうなら、アイドルはどこまでの……。


     そんなうちの質問に、あん人は、右手を首筋にやって、


    「……申し訳、ありません」


     姿勢を正し、頭を下げて、


    「ご家族の方だったのでしょうが……とても怖いと、思ってしまいました」


     謝ってきおったんじゃ!
     あの顔で!
     あんな、若頭とも呼ばれててもおかしくない顔でじゃぞ!
     怖い……とても怖い、て!


    「……ぷっ」


     あん時は、笑った……いやぁ、笑ったなぁ。
     あそこまで笑わされたんは、初めてだったかも知れん。
     ワイシャツの背中が汗で……じゃぞ?
     耐えろゆうんは、うちには無理な話じゃったわ!


    「あ、あはっはっは! そ、そうか! 怖……あっははは!」


     土手っ腹に鉛玉を貰った時は、こんな感じじゃろうなと思うた。
     抑えよう思ってないのに、手ぇが勝手に抑えとるんじゃ。
     中々どうして、とんだ鉄砲玉じゃ。
     ものの見事に、うちのタマを取っていったんじゃからな。


    「……良い、笑顔です」


     言われた時、うちはあん人に惚れた。
     惚れ込んでしまったんじゃ……わかるじゃろ?


     ばっ……!? そ、そっちの意味じゃのうて!
     ん? 『LIVE』の『I』に、穴が開いて……『O』になる?
     『L』、『O』、『V』……しばくぞ化け猫ー!

    372 :

    女難の相、ですか

    373 = 369 :

      ・  ・  ・

    「――ま、ハッキリ言えば、親父に言われたから、じゃな」


     こん人の前で、下手な強がりは意味が無い。
     強い、弱いの関係無しに、うちを見てくる。
     きばった所で、こっちが疲れるだけじゃ。


    「……なるほど」


     うちの笑い声を聞いて、若い衆が殴り込もうとしてきた時は、焦った。
     いくらなんでも、うちが涙流してたら何するかわからんからのぅ。
     ……笑いすぎて涙を流したのは、不覚じゃったわ。


    「貴女自身は、そこまでやる気があるわけではない、と?」


     そうじゃな……ついさっきまでは、ああ、そうじゃった。
     手ぇを抜く気は毛頭無かったが、うちの全部を賭けるつもりも無かった。


     ――でも、気ぃが変わった。



    「そう、見えるか?」



     両腕を組んで、目の前の――プロデューサーを真っ直ぐに見る。
     女だからと、この村上巴をナメて貰っちゃあ困る。
     アンタも、わかっとるんじゃろ。
     うちの魂が、熱く、溶岩の様に煮えたぎってるのが!


    「いえ、私には、そうは見えません」


     そうじゃろそうじゃろ、なぁ! つまらん事を聞いてくれるな!
     じゃが、チャラチャラしたアイドルには、うちはならんぞ!
     うちはうちのまま、大和魂を感じさせるアイドルに、なる!
     ……アンタとならそれが目指せる気がするんじゃ。


    「それでは、村上さん」


     村上さん……のう。


    「――待った」


     これから同じ花道を歩くゆうのに、他人行儀が過ぎる。


    「うちの事は巴と。アンタは、うちの右腕になるんじゃからな」


     親父がよく言っとったな。
     人は見た目じゃない、と。
     見た目に反して、おとなしい奴のようじゃが……うちは認める。
     アンタなら――


    「……待った無しで、お願いします」


     ――安心して……って――


    「あぁ?」

    374 :


     今、何て?


    「アンタ……断るゆうんか?」


     うちの右腕になるのが、嫌じゃと?
     おう、おどれ! 何を今さら言うとんのじゃ!
     それが、うちをアイドルの道に引っ張り込もうとする奴の言葉か!?
     仁義を通さんかい、ワレコラァ!


    「その……アイドルの方を名前で呼ぶのは、はい」


     そうゆうて、また、右手を首筋にやりおった。
     ……な、何じゃ、うちの右腕になるのが、嫌ゆう意味じゃなかったか。
     ええい! これからうちの面倒見ようゆうモンが、そんな情けない事でどうする!


    「うちは気にせん! じゃけぇ、巴と呼べ!」


     待ったは、聞き入れさせる!
     将棋じゃったら「待った」は無いが、今は違うけぇの!


    「ほら! 巴と呼べ!」


     プロデューサーの机の前まで詰めより……いや、殴り込みじゃ!
     なんとしてでも、うちの「待った」は通させる!


    「ま、待ってください! 村上さん!」


     何を言っとるんじゃ!
     待ったをかけてるのはうちじゃぞ!
     逃げ場なんか与えるつもりは無い、詰みじゃ! 詰み!


    「あ……た――」


     げに、往生際の悪い奴じゃのぉ。


    「助けてください! ご家族の方、助けてくださーい!」



     これが、きっかけじゃ。


     あれからずうっと名前で呼ばせよう思っとるんじゃが。
     ふん、アイドルの天下を獲るまでには、呼ばせてみせる。
     ……天下を獲る方が、むしろ楽かも知れんがのぅ。


     うちは、アイドル道を歩み続ける。


     皆となら、もっと、その先の景色も見られる気がするんじゃ。
     大人しく手を引かれるだけじゃ、女が廃るってもんじゃろ?


     あぁ? 引かれるだけじゃなく、右腕だから隣に居る……?


     はっはっは!


     ……そこになおれ、化け猫! もう許さんけぇの!



    おわり

    375 = 374 :

    なんちゃって広島弁+東方不敗になっちゃってますね、これ
    寝ます
    おやすみなさい

    376 :


    まさかの武内Pからご家族へのヘルプ要請吹いた

    377 :

    面接する側がいきなり右腕になれと言われるって怖すぎませんか

    378 :

    名刺を取り出す動作をハジキを取り出す動作と間違える村上組若い衆

    379 :

    おつー 武内Pが強いんだか弱いんだか 

    380 :

    ここのPなら銃口と指の動きを見て避けるくらいは余裕

    381 :

    パンクラチオン極めてるPが弱い筈がない

    382 :

    化け猫って誰や?

    383 :

    奈緒が可愛いかった…
    園児服の三船さんここではどういうもてなされ方をするが気になります

    384 :

    シンデレラプロジェクト二期生がちゃくちゃくと集まってるみたいだ
    次は飛鳥あたりか

    385 :

    独白形式というか、インタビュー形式みたいな語るやつ好きだわ…ええわぁ…

    〇〇の朝は早い
    から始まる情●大陸風とか

    のちに〇〇氏はこう語る
    みたいなバキの後日インタビュー的なのもあれば見たいね

    386 = 376 :

    なんでだろう
    清掃業者の朝は早いというのが一番最初に脳裏に浮かんだ

    387 = 380 :

    暗殺者の朝は早い

    388 :

    新田美波の朝は早い

    389 = 374 :

    >>384
    アニデレ未登場がレギュレーションだと思っています
    なので個別に書きます


    武内P「エクステ、ですか」

    390 = 374 :

    飛鳥「ああ、キミはシンデレラプロジェクトの」

    武内P「……二宮さん」

    飛鳥「ボクに、一体何の用があるのかな?」

    武内P「……」


    武内P「何故、女性用下着を頭からぶら下げているのでしょうか?」


    飛鳥「何故か、って? ふむ、キミはおかしな事を気にするね」

    武内P「それは私の台詞だと、そう、思います」

    391 = 374 :

    飛鳥「キミがおかしな質問をしたというのは、ボク自身の言葉さ」

    飛鳥「それは誰にも譲れはしないし、また、誰にでも言える事」

    武内P「何故、貴女のモミアゲは、ブラジャーなのでしょうか」

    飛鳥「ボクのエクステが、そう見えると?」

    武内P「はい」

    飛鳥「……ふぅ、セカイの選択は、ボクにもわからない事だらけさ」


    飛鳥「――さあ、行こうか」


    武内P「待ってください! その格好で歩き回らないでください!」

    392 = 374 :

    飛鳥「ボクの前に、こうも現実というのは立ちはだかるのか」

    飛鳥「……やれやれ、なんとも生きにくいね」

    武内P「その様な格好をしていては、当然の結果です」

    飛鳥「これは、ささやかな抵抗さ」

    武内P「……抵抗というより、テロに近いかと」


    飛鳥「蘭子……キミの存在が、ボクのチカラになる」

    ぎゅっ!


    武内P「……」

    武内P「待ってください! それは、神崎さんのものなのですか!?」

    393 = 374 :

    飛鳥「彼女の言う所の……そうだね、黒い魔力さ」

    武内P「……いえ、黒い下着です」

    飛鳥「とても美しい刺繍が施された、黒い羽だろう?」

    武内P「……いえ、黒いブラジャーです」

    飛鳥「キミも強情だね。あぁ、だからこそ、人を導こうと足掻くのか」

    武内P「……」


    飛鳥「――さぁ、行こうか」


    武内P「待ってください! 話は、まだ終わっていません!」

    394 = 379 :

    今日は初っ端から飛ばしてるなー

    395 = 374 :

    武内P「二宮さん……神崎さんは、この事をご存知で?」

    飛鳥「逆に聞こうじゃないか。蘭子が、それを許すとキミは思うのかい?」

    武内P「いえ、思いません」

    飛鳥「即答とは、驚いたね。キミは、彼女をよく知っているようだ」

    武内P「……」


    飛鳥「しかし、それについてはボクも同じ意見さ」


    武内P「……」

    武内P「……下着泥棒、ですか……!?」

    396 = 374 :

    飛鳥「盗まれたのは、むしろボクの方さ」

    武内P「……貴女が、盗まれた側だと?」

    飛鳥「それも、ボクがボクである上で、重要なモノをね」

    武内P「それは……一体、何でしょうか?」

    飛鳥「セカイには、様々な思惑が入り乱れている」


    飛鳥「その、思考の海を渡るのを躊躇う、そんな感情さ」

    飛鳥「言い換えれば、ボクは、踏み出す勇気を貰った」


    武内P「それは……理性や、常識とも、言えるのでは?」


    飛鳥「そうとも言う」


    武内P「……」

    397 = 374 :

    武内P「つまり貴女は……我慢が出来ずに」

    飛鳥「そう、ボクは、抑圧から開放された。解き放たれたんだ」

    武内P「……神崎さんの下着を盗み」

    飛鳥「このセカイと、真っ向から向き合う、その時が来た」

    武内P「……エクステとして、装着している、と」

    飛鳥「ふふ、彼女の存在を近くに感じるのは、心地いいと表現しても良い」

    武内P「……彼女に気づかれない内に、返却を」


    飛鳥「――さあ、行こうか」


    武内P「待ってください! 帰ろうとしないでください!」

    398 = 374 :

    飛鳥「……ふぅん、キミは、まだボクの前に立ちはだかる、と?」

    武内P「神崎さんは、私の大切な担当アイドルですから」

    飛鳥「そうだね。そして、ボクの親しい友人でもある」

    武内P「……」

    飛鳥「友人が普段身につけているモノを所持していたい」

    飛鳥「そうする事すら罪ならば、間違っているのは、どちらだろうね」


    飛鳥「ボクか――それとも、このセカイの方か」


    武内P「今回は、貴女です」


    飛鳥「……」

    武内P「……」


    飛鳥「――さあ、行こうか」


    武内P「待ってください! あまりに強引すぎます!」

    399 = 374 :

    武内P「この事を知ったら、神崎さんが悲しみます!」

    飛鳥「その心配は無用さ」

    武内P「……はい?」

    飛鳥「ボクも、蘭子を悲しませたいとは思わない」

    武内P「ならば……何故、心配する必要が無い、と?」


    飛鳥「同じモノ、未使用だけれどすり替えておいたんだよ」

    飛鳥「フェイクには違いないが、限りなく、ホンモノに近い存在だ」

    飛鳥「ならば、ホンモノとの違いとは?」

    飛鳥「……そう、違わないのさ。彼女が、そうと気づかない限りはね」


    武内P「偽物とすり替えておいたのですか!?」

    武内P「二宮さん、あまりにも計画的な犯行過ぎます!」

    400 = 374 :

    飛鳥「キミは、フェイクがホンモノを超える事は無いと思うかい?」

    飛鳥「ボクはね、抗い続ければ、それは叶うと思っている」

    飛鳥「その方法の一つとして、ボクの下着も一緒に置いてきたんだ」

    武内P「……はい?」

    飛鳥「双翼と呼ぶには、ボクのそれは彼女に及ばない」

    飛鳥「ならば、羽ばたきを増やさなければ、上手く翔べやしないんだ」

    武内P「その……複数、置いてきた、と?」


    飛鳥「ギッシリ、パンパンになる程ね」


    武内P「……!?」


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