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    元スレ武内P「あだ名を考えてきました」

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    551 :

    やっぱりパッションは可愛いですね
    蒼には強く生きて欲しい

    552 = 499 :

    書きます


    武内P「見方を変えて欲しい、ですか」

    553 = 499 :

    「ええ、お願いできるかしら?」

    武内P「しかし……具体的には、どのようにでしょうか?」

    「ほら、私って、年齢よりも上に見られる事が多いでしょう?」

    武内P「そう、ですね」

    「だからたまには――」


    「17歳の女の子として見て欲しいな、って」


    武内P「……」


    卯月・美嘉「うんうん!」コクコク


    武内P「……」

    554 = 499 :

    武内P「……速水さんのおっしゃる事は、わかりました」

    武内P「ですが、その……」


    卯月・美嘉「?」


    武内P「……」

    「とりあえず、今日一日だけでも試してみるのも良いんじゃない?」

    武内P「……そう、ですね」


    卯月「本当ですか!」

    美嘉「アンタにしてはサービス良いじゃん★」


    武内P「……」

    555 = 499 :

    武内P「速水さんは……はい、わかります」

    「ええ、話が早くて助かるわ」

    武内P「ですが……その、ですね……」


    卯月・美嘉「?」


    武内P「……」

    武内P「何故、お二人も喜んでいるのでしょうか?」


    卯月・美嘉「えっ?」


    武内P「えっ?」

    卯月・美嘉「……えっ?」

    武内P「……」

    556 = 499 :

    美嘉「待って? 話が見えないんだケド?」

    武内P「いえ、その……はい」

    卯月「だって、プロデューサーさんって……」

    武内P「私が、何でしょうか?」


    美嘉「アタシ達のコトをさ」

    卯月「物凄く、大人扱いしてくれてますよね?」


    武内P「……」

    武内P「えっ?」


    美嘉・卯月「えっ?」


    「……ちょっと、皆してこっちを見ないでくれない?」

    557 = 499 :

    美嘉「ホラ! だって、アタシってめっちゃ頼れるキャラじゃん?」

    武内P「それは、その……は、はい」

    卯月「私も、ニュージェネでは一番のお姉さんですし!」

    武内P「そう、ですね……その通り、です」


    美嘉「だけどさ……あんまり大人として扱われるのも、ね」

    卯月「……ちょっとだけ、寂しいなぁ、って思う時があるんです」


    武内P「……」

    武内P「えっ?」


    卯月・美嘉「えっ?」


    「……ねえ、やめて。頼らないで」

    558 = 499 :

    美嘉「とにかくさ、アタシ達も17歳扱いすれば良いんだって★」

    卯月「美嘉ちゃんの言う通りですっ♪ お願いします、プロデューサーさんっ!」

    武内P「それ、は……えっと、ですね……」

    卯月・美嘉「……!」

    武内P「……」


    武内P「……はい。努力、してみます」


    美嘉「イエーイ★ 一日だけなら、ワガママ言っちゃおうかなー★」

    卯月「あっ、美嘉ちゃんズルいです! だけど私も……えへへ♪」


    武内P「……」


    「……なんだか、妙な事になったわね」

    559 = 499 :

    武内P「……私は、皆さんの年齢に見合った対応をしてきたつもりです」

    武内P「なので、どういった対応をすれば良いのか、よく……」

    「年齢相応? 本当にそうかしら」

    武内P「そうは、感じられませんでしたか?」

    「私、27歳くらいの対応をされてるな、って思ってたわよ」

    武内P「……そう、でしょうか」


    卯月・美嘉「うんうん!」コクコク


    武内P「えっ?」


    卯月・美嘉「えっ?」


    「……ほら、こういう時とか」

    560 = 499 :

    美嘉「だからさ、アタシ達が10歳若いと思って対応すれば良いんだって★」

    卯月「そうすれば、17歳ピッタリの対応になります!」

    武内P「いえ、ですがお二人は……その、ですね!」

    卯月・美嘉「……?」

    武内P「……」


    武内P「……はい。努力、してみます」


    卯月「はいっ♪ 今日は、17歳として甘えちゃます♪」

    美嘉「奏はどうする? 子供っぽくって、いざやると困るよねー★」

    「困ってる様には見えないわよ。むしろ、楽しそうだけど」


    武内P「……」

    561 = 499 :

    武内P「そう……ですね。10歳若く、ですか」

    卯月・美嘉・奏「……」

    武内P「……では、一つ、お願いをしても良いでしょうか?」

    卯月・美嘉・奏「お願い?」

    武内P「……ボールペンのインクが切れてしまいそうなので」

    ゴソゴソ…スッ


    卯月・美嘉・奏「……1000円?」


    武内P「三人で、買ってきて頂けますか?」


    卯月・美嘉・奏「三人で……おつかい?」


    武内P「お釣りでアイスを買っても良いので……どうでしょうか?」


    卯月・美嘉・奏「……」

    卯月・美嘉・奏「!?」

    562 = 499 :

    卯月「あ、あの……17歳というか、7歳扱いになってませんか!?」ボソボソ

    美嘉「10歳若いと思って対応って言ったのに、どういうコト!?」ボソボソ

    「いや、私はなんとなくこうなるかと思ってたわよ」ボソボソ


    武内P「……皆さん?」


    卯月「ここで違うって言ったら、やめちゃうかもしれませんよ!」ボソボソ

    美嘉「どうする!? とりあえず、7歳扱いでいっとく!?」ボソボソ

    「それはそれで、ちょっと面白そうじゃない?」ボソボソ


    卯月・美嘉・奏「……」


    卯月「はいっ! 島村卯月、おつかい頑張りますっ♪」

    美嘉「アタシ達に任せといて★ チョー書きやすいの選んでくるから★」

    「おつかいのご褒美がアイスっていうのも、悪くないわね」


    武内P「はい。頑張ってください」


    卯月・美嘉・奏「……」

    563 = 499 :

      ・  ・  ・

    ガチャッ!

    卯月「――買ってきました、プロデューサーさんっ!」

    美嘉「ゴメンゴメン★ アイス選んでたら、時間かかっちゃった★」

    「だけど安心して。アイス、貴方の分も買ってきたから」


    武内P「それは……はい、ありがとうございます」


    卯月「プロデューサーさんのは……はいっ、チョコ味です♪」

    美嘉「何が良いかわからなかったからねー。テキトー選んじゃった」

    「ほら、貴方っていつも黒いスーツのイメージが強いから、黒系のにしたの」


    武内P「それは……はい、ありがとうございます」

    武内P「それで、あの……ボールペンは……?」


    卯月・美嘉・奏「……」

    卯月・美嘉・奏「!?」

    564 :

    武内P「……皆さん?」


    卯月・美嘉・奏「――タイム!」


    武内P「はい? あの……タイム、ですか?」

    卯月・美嘉・奏「……!」コクコク

    武内P「わ、かりました……タイム、ですね」

    卯月・美嘉・奏「……」


    卯月「どっ、どうしましょう!? ボールペン、買ってませんよ!?」ボソボソ

    美嘉「アタシ達、7歳扱いに応えられないってヤバくない!?」ボソボソ

    「逆に考えましょう。7歳だったら、忘れちゃうのもしょうがないわ」ボソボソ


    武内P「あの……買ってくるのを忘れてしまいましたか?」


    卯月・美嘉・奏「いや!?」ブンブン


    武内P「それなら、安心ですね」


    卯月・美嘉・奏「……」

    565 = 564 :

    卯月「とっさに嘘ついちゃって、どうするんですか~!?」ボソボソ

    美嘉「そもそも、奏が変なコト言い出すから忘れたんじゃない!?」ボソボソ

    「キスしたらアイスの味が混じって、ってやつ? えっ、私のせいなの!?」ボソボソ

    美嘉「あれが無ければなー★ おつかい、カンペキだったのになー★」ボソボソ

    「待って、それはズルくない? そういうのって良くないわよ?」ボソボソ

    卯月「ふ、二人共! ケンカしてる場合じゃないですよ!」ボソボソ


    武内P「あの……そろそろタイムを終わらせ……」


    卯月・美嘉・奏「――作戦タイム!」


    武内P「っ!? 作戦タイム、ですか!?」


    卯月・美嘉・奏「……!」コクコク


    武内P「……はい、わかりました」

    566 = 564 :

    卯月「素直に謝れば……きっと、許してくれます!」ボソボソ

    美嘉「だけど、今後アタシ達への見方が変わる……よね」ボソボソ

    「おつかい一つ出来ないと思われるのは、屈辱だわ」ボソボソ

    卯月・美嘉・奏「……」

    卯月「……誰かが、代表して謝れば」ボソッ

    美嘉「……その人の印象が強く残って」ボソッ

    「……他の二人は助かる、ってわけね」ボソッ

    卯月・美嘉・奏「……」


    武内P「皆さん? そろそろ……」


    卯月・美嘉・奏「ジャーンケーン!」


    武内P「!?」

    567 = 564 :

    卯月・美嘉・奏「ポンッ!……ふーっ」

    武内P「何故、ジャンケンを……!?」

    卯月・美嘉・奏「アーイコーで……しょっ!」

    武内P「一体、何を決めて――」


    卯月「――プロデューサーさんっ! お話があるんです!」

    美嘉「悪いんだケドさ! ちょっと、聞いてあげてくれない!?」


    武内P「は……はい?」

    卯月・美嘉「ねっ!」


    「……!」プルプル


    武内P「速水さんが……お話がある、と?」

    568 = 564 :

    武内P「お話……とは?」

    「そ……れは……」プルプル


    卯月「やっぱり勝利のブイですね、美嘉ちゃんっ♪」

    美嘉「ホント、マジでそれ!★ せーのっ――」

    卯月・美嘉「ぶいっ♪」

    卯月・美嘉「……か~ら~の~」

    卯月・美嘉「いえーいっ♪」ニコッ

    パンッ!


    武内P「良い、笑顔です」

    武内P「それで、速水さん? 話とは、一体?」


    「……!」プルプル

    569 = 564 :

    「その……ね? 悪気があったわけじゃないの」

    武内P「……? はい」

    「忘れるつもりなんて無かったのよ? わかるでしょ?」

    武内P「……はあ」

    「でも、その……アイスを選んでる内に、楽しくなってきて……」

    武内P「……」

    「チョコは喜ぶかな、とか、考えてたら……その……」

    武内P「……」

    「……待って、少しだけ時間をちょうだい」

    武内P「……」


    卯月「ファイトです! 頑張って!」

    美嘉「アタシ達がついてるよ、奏!」

    570 = 564 :

    「……ふぅ、続けるわね」

    武内P「はい」

    「アイスを選んでる内に……あぁ、これは言ったわよね」

    「ごめんなさい……ええと、どこまで話したかしら」

    「……そう、アイスを選んでたら……選んでる内に……」

    武内P「はい」

    「このアイスを食べたら、どんな顔をするかな……は、関係なくて」

    「だから……その、おつかいの、ね……ボールペン」

    「ボールペンを買ってくるのが、おつかいで……その」

    「なのに、アイスを……アイスが……!」

    武内P「……」


    卯月・美嘉「頑張って!」

    571 = 564 :

    武内P「チョコ味のアイスを真剣に選んでくれたのですね」

    「そう……そうなの! 貴方、チョコ味は好き?」

    武内P「はい、とても」

    「そう……それは、良かったわ」

    「でも、だけど……ね、頼まれてたボールペン、は……」

    「おつかいなのに……それが、目的なのに……ぐすっ!」ポロッ

    武内P「っ!? 速水さん……!?」

    「アイスを選ぶのに、うっく、夢中になっちゃって……ひっ」ポロポロッ

    「貴方に頼まれ、ったボールペン……わすっ、忘れて……!」ポロポロッ

    武内P「……はい」

    「……ごめ゙んなさい゙」ポロポロッ

    武内P「……」


    卯月「うええっ……! ずみまぜん゙!」ポロポロッ

    美嘉「なんで泣くのよ゙ぉ! ふうっ、ひっ、ひっく!」ポロポロッ

    572 = 564 :

      ・  ・  ・

    武内P「――なるほど。それで、あそこまで緊張されていたのですね」

    卯月「はい……怒られるのが怖いというか」

    美嘉「小さい子以下だと思われるのが、嫌だったんだよねー」

    「……お願いだから、さっきのは忘れて。後生だから」


    武内P「いえ、それは出来ません」


    卯月・美嘉・奏「えっ?」

    武内P「貴女達が私のアイスを選んでくれた、その想い」

    武内P「それを知っているから……はい、このアイスは格別です」

    卯月・美嘉・奏「……」

    武内P「今回の件で、多少、貴女達への見方は変わりましたが……」

    武内P「私が貴方達の味方である事に、変わりはありません」

    卯月・美嘉・奏「! はいっ!」ニコッ

    武内P「良い、笑顔です」

    武内P「それと……アイスを食べ終わったらいいので」


    武内P「おつかいをお願い出来ますか?」



    おわり

    573 :

    武内pのキャラってやっぱ難しそうだね

    574 :

    奏チャン頑張れ!

    575 :

    もみやでちゃんななちゃいかわいすぎ

    576 :


    決して怒らない武内Pは保護者の鑑

    577 :

    難しいな。ミカねぇの扱いは「姉」属性によるものだし、卯月は崇拝の枠だし。
    それはそうと奏酸が可愛かったです

    578 :

    もみやでってなんぞ?

    579 :

    もみやでさんのサインはもみやでとしか読めないダルォ?
    17歳って難しいね

    580 = 564 :


    「……」


     早朝。
     いくつものビルが立ち並ぶ、見慣れたオフィス街を歩く。
     目的地は、当然、346プロダクションだ。
     カツカツと、革靴が立てる音と、時折通り過ぎていく車の排気音が耳に届く。


    「……」


     今日の午前中は、オーディションがある。
     既に、そのための準備は終わらせてあるのだが、直前に、もう一度だけ確認を。
     オーディションには、アイドルを志す、夢と希望を持った少女達が集う。
     それに際し、万が一にも、不備などがあってはならない。


    「……」


     東京の、都会の只中とは言え、やはり、朝の空気は気持ちいが良い。
     昨夜に降った雨のおかげか、いつもよりも空気が澄んでいる。
     地方に比べると良いとは言えないのだろうが、それでも、私にとっては素晴らしいものだ。
     オーディションに来る方達にとって、少しでもプラスになる要素足り得るのだから。


    「……」


     そう、考えている内に、大きな建物が――城が見えてきた。
     あの城は、果たして、誰を受け入れる事になるのだろうか。
     頭の中に、今日オーディションを受けに来る方達のプロフィールを思い浮かべる。
     ……やはり、彼女がメンバーの第一候補だろうか。


    「……」


     一人の少女の顔を思い浮かべた時――風が吹いた。
     春のものとも、夏のものとも、どちらとも言えるその風は、私を予感させた。


     ――新しい出会い。


    「……異臭?」


     そして――トラブルを。


    「……」


     人差し指を少し舐めて湿らせ、風向きを確認する。
     風上を向いた私の視線の先には、敷地内の外周にある、
    小さな林の様になっている植え込みがあった。


    「……」


     異臭の原因が、敷地外からにあるのならば、まあ、問題は無い。
     しかし、もしも、その原因が内側にあるのだとしたら、無視は出来ない。
     プロダクションに所属するアイドルの方達の中には、好奇心旺盛な方も多く、
    あの異臭の原因を突き止めようとしてしまうかもしれないからだ。


    「……」


     アイドルを守るのは、プロデューサーの役目。
     ……そんな使命感と、何もないだろうが一応、という、楽観的な想いを胸に、私は歩を進めた。

    581 = 564 :


    「……」


     舗装されている歩道から外れ、芝生に脚を踏み入れる。
     雨水を吸っている、その、ふかふかとした感触が靴の裏側から伝わってくる。
     後で……靴の手入れをする必要がありますね。
     クライアントが最初に会うのは私なのだから、身だしなみにはきをつけろと、
    常務――今は専務――に言われたのも、記憶に新しい。


    「……」


     特に今日は、オーディションで、面接をする。
     足元を疎かにするような人間にプロデュースされたいと思う方が居るだろうか。
     それでも構わないと、そう、思うかもしれない。
     だが、それに甘えるのは、誠実さに欠けるというものだ。


    「……」


     茂みの、水滴のついた葉に当たらないように、進んでいく。
     手入れのしやすいように、そして、年少のアイドルの方達が悪戯をしないようにと、
    茂みに当たらずにどうなっているかの確認が出来るよう、計算された配置。
     尤も、悪戯をしないように、ではなく、悪戯をした場合すぐに見つけられるように、となってしまったが。
     今回も、もし異臭の原因が敷地内にあった場合……悪戯で済めば良い。


    「……」


     だが、もしも第三者による悪意だとしたら――


    「っ!?」


     異臭の原因を見つけた……見つけてしまった。


     そして……目が、合った。



    「あっ、あのっ! これは、違……違うんですっ!」



     脳が、情報を処理しきれていない。
     想像の斜め上をいく展開に、頭がついていかない。
     だが、果たして何人の人間が、この状況に即座に対応出来るだろうか。
     残念なことに、私は口をきつく引き結ぶという、第一手を選択してしまった。


    「……っ」


     口を閉じた事で、自然と、鼻でしか呼吸出来なくなる。


     そして――風が吹いた。


     春でも夏でも、正直、どうでも良い。
     彼女の方から私に向かって吹く風は、私に、届け物をした。


     異臭と……ぷりぷりという、異臭の原因が産み落とされている音を。


     草木のざわめきが、まるで、この状況を見ている悪魔の笑い声に感じられた。

    582 = 574 :

    あー 今日はこっちだったかー

    583 = 564 :


    「……」


     偶然が積み重なり、それが、やがて一つの大きな流れとなる。
     人は、それを運命と呼ぶが……私は、あまりその言葉が好きではない。
     何故ならば、彼女達が――アイドルの方達が輝いたのは、
    運命などという、そのような不確かなものの結果ではないからだ。
     彼女達自身の努力、そして、友情が折り重なり、一つの物語を作り上げた。


    「……」


     それは、運命などでは、無い。
     彼女達の、意思によって生まれた、輝きなのだから。


    「……」


     ……しかし、私はこの状況を……あえて、運命という言葉を使おうと思います。
     無表情でいるしかない私にとっても、泣き顔とも笑い顔とも区別がつかない彼女にとっても。
     その、どちらにとっても悲劇でしかないこの状況は……運命だ、と。


     はい……運命などクソくらえ、と叫び出したい気分です。


    「……貴女は――」


     そんな衝動に駆られながら、彼女に背を向け、言う。


    「――オーディションに、来られた方ですね?」


     ――メンバーの第一候補として、思い浮かべていた方だったのだから。


     予め調べておいた、ジュニアモデル時代の仕事ぶり。
     年齢にしては高い、その身長。
     記憶していた数々の情報が浮かび、泡沫の夢のように、消えていく。


    「は、はいっ!」


     彼女は……もう、オーディションを受けに来ないだろう。
     この様な姿を見られ、平然と会場に来られるような神経の持ち主は、居ない。


     ――また、アイドルを目指す少女の想いを駄目にしてしまった。


     そんな後悔が、胸の奥から湧き上がり、拳を震えさせる。


     ……しかし、


    「私、アイドルになりたいんですっ!」



     ぷぅっ、という空砲の音と共に、


    「陸上部に所属してて、ハードルが得意ですっ!」


     地獄のオーディションが、スタートした。

    584 = 564 :


    「そ、う……ですか」


     簡単な相槌を打つことしか、出来ない。
     既に走り出した彼女に、待ってください、と声をかけるのは簡単だ。
     こんな状況で、自己PRを開始するなど、前代未聞。
     まずは落ち着いて話せる環境を整えようとするのが、当然の考えだろう。


    「それから……それからっ」


     ぷりぷり……ぷりぷりっ。


    「……」


     彼女の、アイドルへの溢れ出るような想いに呼応し、便も出る。
     思わず右手を首筋にやり、心を落ち着かせようと、足掻く。


     笑っては、いけない。


     彼女は、必死に走り、この困難を乗り越えようとしているのだ。
     その、前を向く姿勢を笑う事は、決して許されない。


    「えっとっ、周りに勧められて、ジュニアモデルをやった経験が――」


     ぽぷぅっ!


    「――すこしだけありますっ」


     ――PRの最中に、放屁を挟まないでください!


    「……」


     ……とは、言えない。
     私が、今の彼女の状態を責め立てるような真似をすれば、どうなるだろう。
     真っ直ぐに走っている状態で、横から突き飛ばされる。
     ……きっと、今よりも残酷な事態に陥るに、違いありませんから。


    「あ、でも、それはただ背が高いからで……」


     背後から、視線を感じる。
     プロフィールにあった身長も高かったが、私の身長も成人男性の平均よりもかなり高い。
     しゃがんでいる今の体勢からだと、余計に大きく見えるだろう。
     早くその体勢を……コトを終わらせて欲しいと、そう、思います。


    「背、高いですねっ!」


     ぽぅ~っ!


    「プッ――」


     ――駄目だ、笑うな!


    「――プロデューサー……ですから!」


     これで、誤魔化せると良いのだが。

    585 :


    「どうして、アイドルに?」


     彼女が違和感を感じる前に、質問する。
     その試みは……成功した。


    「私、自分の背の高さがずっと、苦手だったんですっ」


     今までの人生で最大の危機に位置付けられてもおかしくない、この場面。
     そんな状況に於いても、彼女はハキハキと、PRを続けている。
     身長へのコンプレックス、そして、それを乗り越えるアイドルへの憧れ。


     彼女は、諦めずに、前を向いて、夢を掴もうと走り続けている。


     ――それを支えていくのが、プロデューサーの務めだと、そう、思います。


     彼女がどう答えるかは、予想がつく。
     ……しかし、あえて、問いかけよう。


     オーディションの結果を出すに相応しいかの、最終確認として――



    「アイドルは、簡単ではありませんよ?」



     ――ぷっ!



     逆に、屁を出された。




     アイドルになるのは、とても難しい。
     しかし、彼女はとても大きなハードルを乗り越えた。
     あのハードルを飛び越えた彼女なら、きっと、この先幾多の困難が待ち受けようと、
    それを飛び越え、夢を掴んで見せるだろう。


    「……」


     彼女のプロフィールのページを手で軽くさすり、ファイルを閉じる。
     他のメンバー達も一緒ならば、もう、二度とあんな事態には陥らないだろう。
     もしもそんな事態に陥った場合の事は考えない……考えたくは、ありません。


    「……」


     ファイルをデスクの引き出しにしまい、閉じる。


    「……笑顔です」


     目を閉じ、自分に言い聞かせるように、言う。
     笑顔の力――パワー・オブ・スマイルで、私も乗り越えなければならない。
     運命の悪戯を飛び越えていかなければ、彼女達を導くことは出来ない。


     そのハードルは高く、常に向かい風が吹いている気がするが。



    おわり

    586 = 585 :

    間違って危うく他所でウンコする所でした
    寝ます
    おやすみなさい

    587 :

    おつー よそでウンコってどういう事なの 乙倉くんまでもかー

    589 :

    乙倉君初登場でこれはあんまりすぎるやろw

    590 :


    ウン命の出会いしてしまいましたか……

    591 :

    乙倉ちゃん下半身丸出しで自己PRとかえっちですね

    592 :

    ここまで凄まじい脱糞率を見てるとトイレとトップアイドルの案内看板が逆に付けられてると思わざるを得ないな

    593 :

    ひどすぎる

    594 :

    >>587
    雑談スレに誤爆しかけたんだと思われる
    見たいっていう言葉に反応する作者の鑑だよ

    595 :

    常務と武内Pで釣りバカ日誌パロとかどうでしょうか

    596 :

    浜ちゃん役は多分常務の方やな

    597 :

    みりやちゃんが武内pにアタックし始めて本気で慌てるカリスマとか面白そう

    598 = 585 :

    >>597
    書きます


    武内P「スキンシップは、程々に」

    599 = 585 :

    みりあ「え~っ!? なんでなんで!?」

    武内P「アイドルの方と、プロデューサーが、あまりそういった事は……はい」

    みりあ「ダメなの? ねえねえ?」

    武内P「……ファンの方には、嫌がられる方も居ますから」

    みりあ「大丈夫だよー! みりあのファンの人なら、気にしないよ!」

    みりあ「ねっ、美嘉ちゃん!」


    美嘉「えっ!? アタシ!?」

    美嘉「そ、そう……なのかな?」

    600 = 585 :

    みりあ「もしかして、プロデューサーは嫌なの……?」

    武内P「いっ、いえ! そういう事では、決して!」

    みりあ「えへへ、それなら良かった!」

    武内P「……しかし、やめておくべきかと、私は思います」

    みりあ「む~っ! プロデューサー、頑固なんだから!」

    みりあ「お願い! 美嘉ちゃんからも何か言ってよー!」


    美嘉「なっ、何かって!?」

    美嘉「そ……そこまで気にする必要は、無い、んじゃ……ない?」


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