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    元スレ勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」

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    301 = 1 :

    …………


    見張り番「んっ……~~っと!札遊びも少し休憩すっか」

    勇者「すんません弱くて……」

    見張り番「ちっと休んだら運も上がってくるかもしんねえぜ?へへっ」


    ギシッ


    勇者「ふう……」

    勇者(疲れた……目がしぱしぱする)

    勇者「……」チラッ


    <……


    勇者(……窓から入ってた陽がもう見えない)

    勇者(昼過ぎちゃったか……スーちゃんなにしてるかな)

    勇者(…………それに、商人……国連の勇者達と何を話すんだろう)

    勇者(あの壷の話なのかな……骨董品を買ったのが商人ならあるいは……でも商人はなんの為に)


    スタスタ


    勇者「ん?」

    見張り番「お?」


    スー勇者「ご主人様!」

    大爺「……」


    勇者「スーちゃん!と、副町長さん?」

    見張り番「どうしたんすか副町長?」

    302 = 1 :

    大爺「もう、この男、出す」

    見張り番「え?こいつを?」

    勇者「え!?」

    大爺「この檻、あける、しなさい」

    見張り番「へ、でも……」

    大爺「はやく」

    見張り番「わ、わかりやした」


    ガチャッ


    見張り番「ほれ。出な」

    勇者「え……い、いいんですかね」

    見張り番「まあ副町長がこう言ってるし……」


    ダッ ダキッ!


    勇者「わわっ!?ス、スーちゃん!?」

    スー勇者「ご主人様っ!よかったです!」ギューッ

    勇者「う、うんありがとう。でも一回離れよ?」

    大爺「……」

    勇者「あ、副町長さん……ありがとうございます。でもなんで」

    クルッ

    スタスタ

    大爺「ついてくる、いい」

    勇者「……?」


    ――――――――――――


    ――ガルナバーク・牢場の表――


    あらくれ「お?出てきたか」

    勇者「出てきました……。ちょっとなんでか分かんないんですけど」

    勇者「もしかして商人が出してくれたんですか?」

    あらくれ「いーや、副町長の独断だ」

    大爺「……」

    勇者「あれ、そうだったんですか……副町長さん。何で僕を」

    大爺「……お願い、ある」

    勇者「お願い……ですか?」

    303 = 1 :

    クルッ

    大爺「ちょっと、ついてくる」

    勇者「えっ?あ、はい……」



    ………………


    ――ガルナバーク・裏通り――


    スタスタ…


    大爺「……」

    スー勇者「……」

    あらくれ「……」

    勇者「……」

    勇者「……」チラッ


    オォォォォ…

    「……んだ、副町長……が……」ボソボソ

    「……ソ者…………何を……」ヒソヒソ


    勇者(……なんていうか、怖い連中も多いな)



    ―――――――――


    見張り番『“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる』


    見張り番『「俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから」とか、なんじゃねえかってな』


    ―――――――――


    勇者「……」

    大爺「どう、思う。この街」

    勇者「えっ!?、あっ、えっと」

    あらくれ「まあ、この辺りには暗ぇ奴らがたむろしてやがるからな。良い印象もクソもねえか」

    勇者「あの、僕を一体どこに」


    ザッ


    勇者「ん?」

    大爺「……ここ」


    ――立派な建物――

    304 = 1 :

    勇者「なんです?ここ」

    大爺「……入って、みる、いい」

    勇者「入るんですか?」

    スー勇者「なんかでっかい所です……キラキラ、してるです」

    勇者「ちょっと行ってみようか」

    スー勇者「はい!」

    スタスタ…

    あらくれ「……副町長、いいんすか?」

    大爺「……」


    ―――――――


    勇者「ん、なんか暗いなここ……」

    スー勇者「壁に黒い幕が張ってるです」


    ~♪


    勇者「……なんか音楽が聞こえるね」

    スタスタ

    蝶ネクタイ男「いらっしゃいませ」

    勇者「えっ?あ、どうも」

    蝶ネクタイ男「たった今開店したところです。御早い来店で」

    蝶ネクタイ男「さあ、こちらでございます」

    グイグイ

    勇者「えっ、ちょっとちょっと……」

    スー勇者「わわ」

    ザッ

    勇者「あれ?なんだか開けた場所に出たね」

    スー勇者「……」

    勇者「ん?どったのスーちゃん……ん?」


    ~~♪



    勇者(なんだ?ちっさいけどステージみたいなのが……)

    勇者(……ちょっと待ってあの鼓笛隊の横で踊ってるのって)


    ―――――――


    ダダダダダダダダダダダダ!!!!!


    蝶ネクタイ男「おや?もうお帰りで?」

    勇者「はーっ!はーっ!!」

    蝶ネクタイ男「どうでした?うちの踊り子は」



    勇者「ス ト リ ッ プ 劇 場 じ ゃ ね ー か !!!!!!」



    蝶ネクタイ男「そうですけど?」

    305 = 1 :

    勇者「か、帰りますすみません!!スーちゃん!いこ!」

    スー勇者「くねくねって……お股を……手で、あんな……」プシュゥゥゥゥ

    勇者「スーちゃんしっかりして!!忘れて!忘れようっ!」

    ザッ

    蝶ネクタイ男「それでは……ガルナバークの住民票は?」

    勇者「えっ?住民票?」

    蝶ネクタイ男「あら、お持ちで無い?でしたら……」

    ニコッ



    蝶ネクタイ男「しめて50000ゴールド。はらっていただけますね?



    勇者「    」



    蝶ネクタイ男「おや?どうされました?」

    勇者「ちょ、ちょっと待って、待ってください」

    勇者「あの、聞き間違いですかね?今50000ゴールドって」

    蝶ネクタイ男「言いましたけど?」

    勇者「はいいいぃぃ!?」

    勇者(いやいやいや!いくらストリップだからって桁がおかしい!!)

    勇者「あの、ちょっとした間違いで入っちゃったというか」

    蝶ネクタイ男「……払えないんですか?」

    勇者「待ってください。とにかく話を聞いて下さい」

    蝶ネクタイ男「聞きましょう。ではまず出身国と現在の所持ゴールドを」

    スー勇者「っ……ご主人様……!」

    勇者(……やばい、ここ)


    蝶ネクタイ男「……教えていただけますね?」


    勇者(ぼったくりのアカンところだ)


    スタスタ


    大爺「……その男、ちがう」


    勇者・スー勇者「「!!」」

    蝶ネクタイ男「……副町長?」

    大爺「わたし、この男、入れ、言った。金、いらない」

    蝶ネクタイ男「はあ……そうですか。副町長のお知り合いで」

    306 = 1 :

    勇者「副町長さん!!?何でこんなとこ入らせたんですか!!!スーちゃんいるんですよ!!!過激すぎます!!!!」

    大爺「……出る。ついてくる」

    スタスタ

    蝶ネクタイ男「はあ……副町長。ちょっといいですか?」

    ピタ

    大爺「……」

    蝶ネクタイ男「何を企んでるか知らないんですけどねぇ……これは町長の命令なんですよ」

    勇者「……え?」

    勇者(商人の、命令……?)

    蝶ネクタイ男「反感持ってるのかなんなのか知らないですけどね」

    蝶ネクタイ男「余計な事しないでもらえますか……?はっきり言って邪魔です」

    大爺「……出る」

    勇者「え?は、はい」

    スタスタ……

    蝶ネクタイ男「……」


    ――劇場の外――


    ザッ

    大爺「……」

    勇者「……あの、副町長さん」

    勇者「今あの人が言ってたのって」

    大爺「……まだ、見せる、場所、ある」


    スタスタ


    勇者「……」

    スー勇者「……ご主人様……」

    勇者「……行こうか、スーちゃん」

    307 = 1 :

    ………………………………



    ………………………………



    ………………………………


    ガヤガヤ


    スタスタ…


    大爺「……一通り、裏の道、見せる、した」


    勇者「……」

    スー勇者「……」

    あらくれ「……どうだったよ」

    勇者「えっと……なんていうか」

    あらくれ「あんまり、褒められたもんじゃねえだろ?」

    あらくれ「表通りの、他の国の客がうろついてねえ所は、まあ……ジメジメしたもんさ」

    勇者「……はい……」

    大爺【“……町長は、この町造りが進むごとに変になっていった”】

    勇者「え?あ、えっと、スーの言葉かな」

    スー勇者「はい……私、訳すです」


    【“私は一年前、ここに街を作りたくてスーの村を出て1人ここに居を構えていた”】

    【“ある日船で仲間と一緒にやって来た町長に会い、街づくりの助けを願い、町長としてこの街を任せた”】

    【“最初は普通の街づくりだった。だが町長は変わっていった”】

    【“住民を優先させるために住民票を発行し、それをさきほどの様な店で利用させたり”】

    【“あらゆる犯罪者を優先して受け入れたり、街の金で骨董品を買ったり”】


    勇者「……」


    【“おかげで、表向きは華やか、裏は灰暗い街になってしまった”】

    【“それにこの頃、エジンベアの大臣とよからぬ取り引きをしている気がある”】


    勇者「……?よからぬ、取り引き……?」


    大爺【“……ついてきて欲しい”】


    スタスタ…

    勇者「……」

    あらくれ「……ほら、なにぼさっとしてんだ」

    勇者「……はい。行こう。スーちゃん」

    スーちゃん「はい……」

    308 = 1 :

    ………………………………



    スタスタ



    ガヤガヤ…


    勇者「……本当に、表通りは賑やかですね……」

    あらくれ「ああ。宿も店も多いしな。住人も表にはほとんど住んでねえ」

    あらくれ「店を出してるのは大抵船で来て宿に短期滞在してる奴らだ。エジンベアのな」

    あらくれ「ショバ代だけもらって短期間契約ってのが多いんだよ」

    勇者「……」

    あらくれ「……さっきのは」ボソ

    勇者「え?」

    あらくれ「さっきのは、多分、根も葉もねえ噂話さ。骨董品がどうとか」ボソボソ

    あらくれ「副町長もボケがきてるだけさ。気にすんな」ボソボソ

    大爺【“……あまり表通りに出ないでくれ。国連の奴らに見つからないように道を選んでいるのだ”】

    大爺【“今は港の方に集中しているから、隠れながらこの道を行けば見つからないだろう”】

    勇者「……あの、どこに行くんですか」

    大爺「……ここ」

    勇者「え?」


    ザッ


    ――大聖堂横・大倉庫――


    勇者「ここ、ですか?ここって」

    あらくれ「お前らが不法侵入してた場所だ。そして俺の職場」

    勇者「あれは違いますって……!!!あれ?違わないか……?違わないですね……」

    大爺「……入る」

    スタスタ

    あらくれ「今は国連のやつらもいねえ。急げ」

    勇者「は、はい」

    スタスタ…


    スー勇者「……」


    ゴソッ


    スラお「……スーちゃん?どしたの?」ボソボソ

    スー勇者「……あっち」

    スラお「あっち?」ボソ

    スー勇者「港の方……何か」


    あらくれ「おい嬢ちゃん?どうした?」


    スー勇者「あっ、な、なんでもないです」


    スタスタ…

    309 = 1 :




    ガコォン……



    スタスタ

    勇者「しかし……改めて見ると本当に大きな倉庫ですね……天井が高い」

    スー勇者「こんなに、なんの荷物があるです?」

    あらくれ「輸入した商品やら……でも大半はスーの特産品やらだな」

    勇者「スーの特産品?」

    あらくれ「ああ。スーが近いから、そこいらで取れる果物やら野草やら、肉やらを輸出しようって考えてるんだよ。町長は」

    あらくれ「で、やっと取り引き先が見つかってな、これが一番最初のスー特産物の普及になるぜぇ」

    勇者「それ、肉って日持ちとか大丈夫ですか?」

    あらくれ「安心しろ。干し肉が大半だ」

    スー勇者「スーは、干し肉料理多いです。ご主人様にも食べさせたです」

    勇者「あー、あれか。あれ凄く美味しかったよ」

    大爺「……」

    勇者「で……ここに一体何が」


    プゥン…


    勇者「……うぇ……?」

    勇者(なんだこれ、さっきここに来た時こんな匂いしてたっけ?)

    勇者(ってかこの匂い、どっかで嗅いだ気が……)


    大爺【“……お前さん方が乗って来た船とは違う船の積荷だ”】

    大爺【“輸入品ではない……ここを中継地点として、他の国の商船に積ませる予定の積荷だ”】


    スタスタ……

    ザッ

    大爺【“……それが、この一角だ”】

    勇者「この辺り、ですか?」

    大爺【“この木箱を開けてみるといい”】

    勇者「……?」

    あらくれ「おいおいおい、勝手に開けていいのかよ?いくら副町長さんでもちょっと度が過ぎてんじゃねえか?」

    大爺【“……開けてみるといい”】

    勇者「…………分かりました」

    ゴトッ

    勇者「よい、しょっと……んぐぇっ!!?なんだこの匂っ……」

    勇者「……」

    勇者「……」

    スー勇者「?どうしましたです?」

    大爺【“お前さん……町長と馴染みのある人間なのだろう?”】

    大爺【“なんとかお前さんから、町長の本心を聞きだしてくれないだろうか”】

    大爺【“そして、町長を……正してやってくれないだろうか”】

    勇者「…………」

    勇者「なんだ……これ」

    310 = 1 :





    「鉄と土ですよ」




    大爺・スー勇者・あらくれ「「「!!!?」」」


    勇者「……っ、商人……!」


    スタスタ


    商人「…………国連の連中の会合の合間に急いで牢に行ったら、もぬけの殻でちょっと焦りましたよ」


    商人「ま、副町長が出したって見張り番さんも仰ってたんで、行き先の検討はつきましたけどね」


    勇者「……これは、一体なんなのさ」

    商人「さあ?知りませんよ。ただ輸送の中継地点として荷物を預かってるだけですし」

    勇者「だとしても、これは……鉄は、いいとして、土、この木箱」

    勇者「これは、おかしくないか」

    勇者「だって、この土」




    勇者「人の、骨が……死体が、混じってる」




    スー勇者「!!!?」

    あらくれ「……は?」

    勇者「糞尿と一緒に、屍が混じってるよ」

    勇者「これおかしいと思わないのかよ……?」


    商人「……」


    スタスタ


    商人「……ねえ勇くん」

    商人「勇くんに、何の関係があるんです?」


    勇者「…………商人……?」


    商人「ここは。私が作った街です。私の街なんですよ」


    商人「なんでお前なんかに口出されなきゃならないんです?」


    勇者「……」


    商人「……お前」



    ニコッ…



    商人「もう、私と……何の関係もないでしょう?」


    311 = 1 :

    今日はおしまいです

    312 :

    乙です!商人ちゃん何があったの…

    313 :

    今追いついたが、結局エジンベア勇者は覚醒フラグへし折って現実逃避に走ったか。

    314 :


    死体の混じった鉄と土をどうするつもりなのか・・・

    315 :

    死体と糞尿が混じった土と硫黄で火薬を作るってのを最近某アニメでやってたけど
    鉄については前の会議で指摘されてた部分だよね、次回が待ち遠しい

    316 :

    勇者「……商人、何、言ってんのさ」

    商人「言葉もろくにわからなくなりました?本当に愚図ですね」

    スタスタ

    ザッ

    ガシッ!

    勇者「!」

    商人「……もう私に関わるなって言ってるんですよ。迷惑です」

    あらくれ「お、おいおい町長!」

    商人「あらくれさん、ちょっとだけ待っていただけますか?こいつと話をしなきゃいけないんですよ」

    勇者「お前、冗談でもキツいってそれは」

    商人「はあ?どこがです?」

    商人「というか冗談でもなんでもないんですよ?お前が居るだけでこっちは迷惑なんです」

    商人「自己満足の為か何なのか知りませんが、仲間達を皆放って勝手に単独行動になるぅ~とか馬鹿みたいな事言い出しますし」

    商人「国連に追われてる身なのに国連の人間が大勢居るこの街にのこのこ現れるし」

    商人「腐れ縁の恩情で国連から見つからないように牢に隔離しておけば副町長に誘われてのこのこと抜け出すし……」

    勇者「……」

    商人「あげくの果てには、やーっとこさ軌道にのったこの街の動かし方にまで口挟むんですか?」

    商人「いい加減、本当にうざいんですよね……」


    商人「いつまで幼馴染の仲良しごっこ続けるつもりなんです?」


    勇者「……ッ!!!!」


    ガシィッ!!

    商人「……なんです?肩、痛いんですけど」

    勇者「今のは、マジでやめろ」

    勇者「僕の事は、確かにその通りだからいくらでも言っていい、けどさ」

    勇者「“幼馴染の、仲良しごっこ”とか……そういう事言うのやめろよっ……!!」

    勇者「あいつらまで、あいつらの事までお前がっ」

    バシッ

    商人「だーかーらー」

    商人「いちいち偉そうに私に口をきくなって言ってるのがわからないんですかねえッ」

    勇者「……っ」

    317 = 1 :

    商人「とにかく。これはちゃーんとしたビジネスです。部外者は黙っていてください」

    あらくれ「で、でも町長さんよ。その木箱、土の中に人の骨入ってんだぜ!?」

    あらくれ「いくらなんでもちょっと穏やかじゃねえよ……!なんの目的があってそんなもの」

    商人「まあ、各国からこういった糞尿と屍混じりの土を仕入れてますが……私が知った事ではありませんよ」

    商人「貿易の橋渡しをするだけで色んな恩も売れますし、船の出入りが多くなって街の資金も巡ります。良い事です」

    商人「この土の木箱の隣に区分けされてる鉄の山も、同じくエジンベアの大臣様が取り仕切って動かしている品です」

    商人「あの方とサマンオサの方々は良いお得意様ですからね……なんとか機嫌を損ねないようにしないと」

    スー勇者「っ……」

    商人「……なんです?その目」

    スー勇者「あなた、嫌いですっ……」

    商人「おやおや、嫌われちゃいましたね」

    スー勇者「そんな、怪しい取り引き、して……あんな、お店も作って……!」

    商人「あんな店?……あー、ストリップ劇場の事ですか?あれのどこに問題が?」

    大爺「問題、ある!風紀が、乱れ、取る金も、おかしい!」

    商人「……はぁ……では、ああいった店を全部無くした方が良いと、風紀が乱れないと。本当に思うんですか?」

    あらくれ「……どういう……?」

    商人「この街に定住している人間の多くが大工の人間です。優先的に誘致しましたし、だからこそ一年でここまで街の見栄えが整いました」

    商人「そういった方々は、例外なく屈強な男性達です。体力を持て余した、血の気の多い、ね」

    あらくれ「……」

    商人「その方々が黙々と町を造り続けて不満が出ないワケないでしょう?何か欲求を満たすものが必要になります」

    商人「幸い食品には恵まれていますから食欲は大丈夫として……では性欲は?」

    商人「開拓地などによくあるお話では、労働夫達がその性衝動に任せて女を攫ってきて監禁、仕事場で隠し飼いにして犯し続けたり」

    商人「あるいは見境もなしに来国した女性を強姦したり……とにかく明るいお話は聞きませんね」

    商人「その事態を避ける捌け口として、ああいった店は必要なんですよ。近々売春宿を設置する事も考えています」

    商人「そういう目的ですから、この街の住民でない方々にはお金を余分に頂いているだけですよ」

    大爺「なっ……!あ、あの男達、貴女の事、尊敬、している!そんな犯罪、彼ら、しない!」

    大爺「彼らの事、信じる、大事――……」

    商人「そーれーだーかーら副町長。あなたを町の経営の第一線から降ろしたんですよ前にも言ったでしょうが」

    商人「人を信じるだけで万事上手くいったら世話はいらないんですよ馬鹿馬鹿しい。言葉の美しさだけで生きていられりゃそりゃいいですがね」

    商人「そんな事で生きていけるのは頭のイってしまった詩人くらいなもんなんですよ」

    商人「人を疑う事の方が色んな計算ができて視野が広がるんです。そしてそれが私達の仕事です」

    大爺「っ」

    商人「ここは、私の街です。口出ししないで下さい」

    318 = 1 :

    あらくれ「……町長……」

    大爺「……それでも」

    大爺「街の金で……骨董品、買う……宝石、買う……」

    大爺「それは、違いない……貴女、悪い」

    商人「…………へえ、知ってたんですか?」

    大爺「取り引きの、現場、見た者、居た!」

    商人「バレてたんですね……まあ想定はしてましたけど。ですがそれの何が悪いんです?」

    商人「私のお給料で私の買い物をしてなーにが悪いんです?ねえ」

    あらくれ「町長……?あんた、まさか」

    商人「全く、質素に暮らしていれば聖人になれますか?本当になんなんですかアンタらは」

    商人「私の勝手でしょう?そんなの」


    商人「私の街で、私が好きにやるのは当たり前の事じゃないですか」


    商人「……いいですか?もう一度言います」


    商人「ここは、私の街です。何も考えずに口出ししないで下さいね」



    勇者「………………」


    スー勇者「……」

    あらくれ「……」

    大爺「っ……間違って、いた」

    大爺「あの時、貴女に、全て任せた、間違っていた……!!」

    商人「それはどうも」ニコッ

    スタスタ

    商人「さて。申し訳ありませんが勇くん。そろそろ消えてくれませんかね?動くなら今しか無いですよ?」

    商人「国連の方々は現在宿で荷解きをしているんです。待機している兵達も船と港に集中しています」

    商人「まあなんだかんだで知らない仲ではないですし。国連に突き出すのは勘弁してあげますよ」

    勇者「……商人」

    商人「なんです?」

    勇者「…………いや」

    スタスタ

    勇者「なんでもない……行こう、スーちゃん」

    スー勇者「ご、ご主人様っ……」

    クルッ

    スー勇者「……っ!べーっ!」

    商人「ホントに嫌われちゃいましたね」

    319 = 1 :

    商人「ああ、そうです。ちょっと待ってもらえます?」

    勇者「え?」ピタ

    スタスタ

    商人「忘れちゃうところでした……。どうせここから何処へ行くかも考えてないんでしょう?」

    商人「でしたら……そこのお嬢さん、スーの方ですよね?」

    スー勇者「……そうです、けど」

    商人「なら丁度良い。中央広場の東口の方に私と取り引きしてる方がいらっしゃるんですけど、その方に会ってくれます?」

    スー勇者「なんでですかっ……」

    商人「その方、スーの方なんですよ」

    スー勇者「!」

    商人「恐らくそのまま彼はスーに戻ると思いますので、それに同行でもさせてもらえばいいんじゃないですか?……よっと」

    ドサッ

    スー勇者「……この、大きな袋は……?」

    商人「秋種と本です。その彼に頼まれてたんです。彼に渡してくださいな」

    商人「さあさあ、国連の方々が動き始める前にとっとと消えてください?ちょっとこれから私は儲け話をしてこにゃならんので」

    勇者「……商人」

    商人「ん?なんです?私の寛大な処置にお礼でも言ってくれます?」


    勇者「ありがとう」


    商人「……はい?」

    勇者「いや……それじゃ、また来るよ」

    スタスタ

    勇者「行こう、スーちゃん」

    スー勇者「は、はいっ」タッ

    大爺「……町長、また、あとで、話す」スタスタ


    スタスタ


    あらくれ「……町長」

    商人「……」

    あらくれ「嘘だよな……?さっき言ってた事」

    あらくれ「なあ……?じゃなきゃ……俺らみたいな、『下層』の奴らをアンタは!」

    商人「……あなたに話す事はありません」

    あらくれ「……!!」

    あらくれ「…………そう、かよ」

    スタスタ

    商人「……」


    シーン……


    商人「……」

    …………
    ……

    320 = 1 :

    ――ガルナバーク・裏通り――


    スタスタ


    勇者「とりあえず、そのスーの人に会ってスーまで同行させてもらおうか」

    スー勇者「ご、ご主人様」

    勇者「どしたのスーちゃん?」

    スー勇者「いえ……その……」

    大爺「やはり……もう町長は、昔のような、人、なくなった……」

    あらくれ「……あの噂も、本当だったのかよ……」

    ギリッ…

    あらくれ「…………ああ、くそ……」

    勇者「いや、どうでしょうね」

    あらくれ「は?」

    大爺「……何?」

    勇者「多分ですけど、あいつはそこまで変わって無い気がするんですよ」

    あらくれ「な、なんでわかるんだ?」

    勇者「えっと……幼馴染の感。ですかね」

    あらくれ「……けっ、そうかよ。聞いた俺が馬鹿だったよ」

    勇者「まあ何にせよ、今僕がここにいるとまずいってのは本当なので早いところ移動しよう。スーちゃん」

    スー勇者「…………ご主人様」

    勇者「ん?」


    ギュッ


    勇者「ふぇっ」

    あらくれ「おおっ?」


    スー勇者「……寂しそうな顔……してるです……」ギュゥ


    勇者「……スーちゃん……」

    ドゴォッ

    勇者「ティムン!!!!」

    大爺・あらくれ「「!!!?」」

    あらくれ「今嬢ちゃんのバッグが勝手に動かなかったか!!!?」

    スー勇者「き、気のせいです!!!」

    勇者「お、お気になさらず!あはははは」

    勇者(スラおォ……後で覚えとけよぉ……)


    …………
    ……



    ――港付近・高級宿――


    スタスタ

    コンコン

    ダーマ勇者「ソクラス様、よろしいでしょうか」

    321 = 1 :


    シーン…

    ダーマ勇者「……?ソクラス様?」

    ガチャッ


    ……


    ダーマ勇者「…………いない……?」


    ――――――――――――


    ――中央広場――


    ザワザワ…


    ヒョコッ

    勇者「……国連の、兵は……居ないみたいだ」

    スタ

    勇者「ここが中央広場……ふあー、本当に立派だ」

    スー勇者「……綺麗なところ、です」

    勇者「じゃあとりあえず……よいしょ、と」

    ドサッ

    勇者「この、商人に頼まれた荷物をそのスーの人に渡さないとね」

    勇者「その後にスーに一緒に行きたいところなんだけれど……都合はどうなのかな」

    スー勇者「でも、いいです?」

    勇者「ん?何が?」

    スー勇者「スーに来てもらって……本当にいいです?」

    勇者「いやいや、逆に僕がお邪魔していいかな?って話だよ?」

    スー勇者「それは勿論、大歓迎です……でも」



    「スー勇者!!?」



    勇者「え?」

    スー勇者「……!!スー戦士さん!」


    スタスタ

    スー戦士【“スー勇者!!無事だったか!!”】


    スー勇者【“心配かけて本当にごめんなさい!でもちゃんと大丈夫でした!”】

    勇者(うおお……屈強そうなスー人の男の人が来た……この人が商人の言ってた人か)

    スー勇者「ご主人様!この方、スー戦士いいます!村で一番、腕のたつ戦士でした!」

    スー戦士【“……スー勇者?こちらは?”】

    スー勇者【“えっと……話せば長くなるんですけども……”】

    勇者(なんか挨拶した方がいいかな……言葉はどのくらい通じるんだろ)

    勇者「え、えっと……こ、こんにちは、えっと……は、ハジメ。マシテ」

    スー戦士「どうもこんにちは。はじめまして。俺はスー戦士って言うんだ。よろしくな」

    勇者「ペラペラですね!!?」

    スー勇者「スー戦士さんは、村で一番、共通語が上手いです!」

    322 = 1 :

    スー戦士「そういうスー勇者も共通語がだいぶ上達したじゃないか!偉い偉い!」

    スー勇者「えへへ……ご主人様が、教えてくれるです!」

    スー戦士「ご主人様?女王様かい?」

    勇者(女王様?)

    スー戦士「いいえ!お師匠様ではなくて、この方です!」

    スー戦士「君……が?えっと、うちのスー勇者が世話になってるね」

    勇者「いえいえいえいえ、本当にこっちが世話になりっぱなしで」

    ガシッ…

    スー戦士「でも……その……こんな子供にご主人様呼びを強制させるのは正直……」

    勇者「ちげーんですけど!!!?強制じゃないんですけど!?……まあ、とにかく。勇者です。よろしく」

    スー戦士「ああ。よろしくな」

    勇者「あ、スー戦士さん。早速ですがこれ……頼まれた荷物です」

    スー戦士「ん?頼まれたって誰に……おおお!町長さんからか!ありがとう!!」

    勇者「秋種と本だそうです。間違いないですか?」

    スー戦士「ああ。間違いないよ。全く仕事が早くて助かるね」

    スー勇者「でも、スー戦士さんが、取り引きです?本と、種を?」

    スー戦士「ん?あー、そうか。この街ができてからはお前はスーに帰ってなかったからな」

    スー戦士「今俺はな。商売をしているんだよ」

    スー勇者「えっ!?スー戦士さんが!?」

    スー戦士「はは。意外か?でも本当だよ。だから本を読んだり異国の植物について勉強するために町長にこれを頼んだのさ」

    スー戦士「正直俺は昔から思ってたんだ。スーはもうちょっと暮らしを豊かにできるんじゃないか、ってね」

    スー戦士「で、ここに街ができたんでこれはチャンスだ!と思ってな。いろいろなアプローチをしているんだ」

    勇者「ああ、だから大倉庫にもあんなにスーの特産品が……」

    スー戦士「見たのか?ああ。あれも俺の計画だよ」

    スー戦士「ここの町長さんに頼んで色んなところと取り引きの契約を結んで貰ってるんだ」

    勇者「……」

    スー勇者「……」

    スー戦士「?どうした?」

    スー勇者「いえ……その」

    勇者「なんでもないですよ。それで、なんですが……ちょっとこの後スーに少しお邪魔させて貰おうかな、と思ってて」

    スー戦士「おお!そうなのか!是非来てもらえるかい?喜んで歓迎するよ!」

    勇者「そう言っていただけると嬉しいです」

    スー戦士「じゃあ村まで案内するよ。と、その前に……ちょっと俺の仕事が終わるまで待っていてもらえるかな?半陽刻くらいで終わるから」

    スー勇者「お仕事です?」

    スー戦士「ああ。この町の店にも商品を卸しているからな。その話し合いやらさ」

    勇者「でしたら、お待ちしてますね。この広場に居るんでもし終わったら声をかけてもらえれば」

    スー戦士「了解だ。ちょっと待っててくれよな」

    スー勇者「お仕事、頑張ってください!」

    スー戦士「ありがとう!行ってくる」

    スタスタ

    323 = 1 :

    勇者「いい人だね。しっかし共通語が本当にペラペラだなあ」

    スー勇者「……はい」

    勇者「さて、と……半陽刻か。少し暇になったね」

    スー勇者「です」


    グゥゥゥゥ


    勇者・スー勇者「「……」」

    勇者「スーちゃんお腹すいたよね、ごめんね」

    スー勇者「い、今の私違うです!違うですー!」

    もそっ

    スラお「おなかすいた!」ボソッ!

    勇者「ああ、スラおか。まあなんにせよお腹すいたね……えっちょっと待ってスライムってお腹鳴るんだ」

    スー勇者「はい……本当はぺこぺこです」

    勇者「ちょっとお店入ろうか。まだ時間もある事だし」

    スー勇者「はい!」


    スタスタ


    勇者「と、なると……どこがいいだろうね。結構広場に面した食堂もあるみたいだ」

    スー勇者「ご主人様のお好きなところへ!」

    勇者「スーちゃんが好きなところでいいのよ?んー……適当にあそこにしよっか」

    スー勇者「はい!行きますです!」

    グイグイ

    勇者「おうおうスーちゃんちょっと引っ張っちゃダメだって」

    スー勇者「ふふっ」

    勇者「ん?どうしたの?」

    スー勇者「いえ……」

    ニコッ!

    スー勇者「ご主人様と、こうやって街歩くの、嬉しいです!」

    勇者「あああああああああスーちゃんああああああああああ!!!!!!!!」ナデナデナデナデナデナデ

    スー勇者「いああああ髪がぐしゃぐしゃになるですー!!!」


    バタン


    「……どうする?」

    「店に入ったか……まあいい。出てきたら話を聞こう」

    「だな」

    …………
    ……

    324 = 1 :

    ―――――――――――


    ――パブ――


    カランカラン


    店主「いらっしゃい」

    勇者「ども。えっと……」


    ガヤガヤ


    勇者「結構混んでるなあ……」

    スー勇者「あ!あそこあいてるです!」


    ガヤ…  ピタ


    スー勇者「あそこ行きましょうです!」

    勇者「そうだね」

    スタスタ

    ガタッ

    勇者「ふぅ……とりあえずどうしようかな」

    スー勇者「もうお腹くっつきそうです。えへへ」

    勇者「僕もだよ。えっと」


    「んだよ。へらへら笑いやがって」


    勇者「……ん?」チラッ


    「「「…………」」」


    勇者(……?……なんで皆こっち見てるんだ)

    325 = 1 :

    スタスタ

    ザッ

    店主「……ちょっといいかい」

    勇者「え?ああ、えっと注文は」

    店主「そっちの嬢ちゃん」

    勇者「え?」

    スー勇者「わたし、ですか?」

    店主「あんた、その髪飾り……スー人か何かだろ」

    スー勇者「え……?そ、そう。です」


    「なんで当然のようにテーブルに座ってんだよ……」


    スー勇者「……え」


    「また最近調子に乗り始めてるよな、スーの奴ら……」

    「見ろよ。状況が分かってないんだあのスーの子供」

    「まあ子供だからわからないんでしょ……許してあげましょうよ」


    スー勇者「…………あ……」


    店主「……帰ってもらえるかい。まだ幼いお前さんにゃ分からないかも知らんがね」

    店主「そこに座るのはダメなんだよ。あんた」


    スー勇者「……」

    勇者「……?は?何で?」

    店主「なんでって……ねえお客さん」


    店主「お客さんも奴隷を扱う時の作法くらい覚えておいてよ」


    勇者「…………」


    店主「お客さんだけならいいんだけどさ……嬢ちゃんはちょっと外で待ってもらうとかしてくれる?」

    スー勇者「す、すみません、でしたっ」

    ガタッ

    スー勇者「……っ」

    ニコッ

    スー勇者「ご主人さま!私!外でお待ちしてますです!」

    326 = 1 :



    勇者「スーちゃっ」


    タッタッタ

    バタン


    勇者「……」


    「うるさいな……ドアの開閉もろくにできんのか」

    「無理ねえって。まだ子供だったろ」

    「あんなかわいい奴隷だったら俺も1人くらいほしいな、ははっ!」


    店主「悪いね。だけど作法ってもんがある。わきまえてくれよな」

    勇者「……」

    店主「で?何を頼む?」

    ガタッ

    勇者「……あー」

    店主「んお?どうした?」

    ガリガリ

    勇者「あー。あー」

    ガリガリガリガリ

    勇者「クソ、あー、もう」

    店主「……なんだ?帰るのか?冷やかし」



    ぞっ



    店主「うくぁっ?」

    327 = 1 :

    勇者「お前ら、今度あんな事言ったら殺してやるからな」


    勇者「もう、今殺してえけど、くそ、殺してえなあ」


    ガリガリガリガリ


    勇者「糞どもが、クソ、殺し、今、今殺すか?」


    勇者「あー、今、殺し。ああ、クソが」


    キィィィィ……ン


    「うっ……?おぶっ」

    「おえっ!?おえぇぇぇぇぇ」

    バチャバチャバチャ

    「ひっ?な、なんだっ。なんだっ」


    店主「っ。っ」パクパク


    スタスタ

    勇者「殺し、くそ、どうやって、殺……ああああ、クソどもが、あー……どうやって……」

    ブツブツ


    バタン


    シーン


    店主「……!!!?な、なんだったんだ……!!!?」

    328 = 1 :

    ――広場・パブの前――


    スー勇者「……」

    モゾッ

    スラお「スーちゃん……」

    スー勇者「スラさん……」

    ペロペロ

    スラお「かなしいかおしてるよ」

    スー勇者「ん……ふふ、んーん。ありがとうです」

    スー勇者「でも、大丈夫です。たまにあることですからっ――」


    ぞっ


    スー勇者「っ」

    カランカラン

    スー勇者「ご」クルッ


    勇者「……殺……て」ブツブツ


    スー勇者「ご主人様!」ダッ

    ザッ ガシッ

    スー勇者「ご主人様!しっかりしてください!だめです!しっかりです!」

    ペシペシ

    勇者「……――ん、え?スーちゃん……?」

    スー勇者「……ほっ……良かったです」

    勇者「あれ……?僕、出て……?」

    勇者「……ごめん、ちょっとあまりにも頭に来たもんだから、血が頭に上りすぎちゃって…………ぼーっとしてた」

    スー勇者「……ご飯、食べてこなかったです?」

    勇者「え?なんでさ!スーちゃんと食べられないなら意味ないでしょ」

    スー勇者「でも、わたし、その……スー人なので」

    スー勇者「多分、エジンベアの方が多い、この町は、どこも同じだと思うです……だから」

    勇者「スーちゃんを除け者にするような所でご飯食べるくらいなら飢え死にした方がマシだって」

    スー勇者「……」

    ナデ

    勇者「ごめんね、なんか、嫌な思いさせちゃって」

    スー勇者「っ……!!」

    ギュゥゥゥ

    勇者「うおおスーちゃん!?どしたのっ」

    スー勇者「ご主人様だいすき……っ!」ギゥゥゥゥゥゥ

    勇者「スーちゃんくるしいしやわらかいしちょっと離れてまずいです!!!!」

    スラお「ぼくはゆーしゃきらい。ほんときらい」

    勇者「お前それしか言えないの?僕が傷付かないとでも思ってんの?」

    スラお「せいりてきにむり」

    勇者「なんで追い討ちかけた?畜生かお前?畜生だったな?」

    スー勇者「喧嘩だめです!」

    329 = 1 :



    ……
    …………


    ――広場のベンチ――


    スタスタ

    勇者「お待たせスーちゃん」

    スー勇者「おかえりなさいです!」

    ドサッ

    勇者「何か見た事の無い果物が多かったからすぐ食べられるものを見繕ってもらったよ」

    スー勇者「わぁ!ありがとうございますです!」


    ペリペリ


    勇者「こういう剥き方でいいのかな」

    スー勇者「それはこうやって剥くです」ペリリ

    勇者「おお、なるほど……あむ。ん!おいしい!」

    スー勇者「んふぁー……ほっぺが落ちそうです……♪」

    スラお「まむまむ」

    勇者「もうちょっと隠れて食べてスラお」

    スラお「もっとよこせ」

    勇者「自分で剥けないのを良い事に……ムカツクゥ」

    ペリペリ

    勇者「……さっきみたいなのって、結構あるの?」

    スー勇者「……たまに、です」

    スー勇者「エジンベアの人たちは、まだ心の中に、奴隷制度が残ってるです」

    スー勇者「だから、たまに、ああいう事あるです」

    330 = 1 :

    勇者「……そっか」

    スー勇者「でも、差別しない人もたまにいるですから、へいきです!」ニコ

    勇者「……ん。そっか」

    勇者(……以前の、エジンベア城に居たときの目線……あれ、スーちゃんの髪飾りを見た奴らがさっきみたいな事思って向けてたんだろうな……)


    ザッ


    勇者「んぁ?」


    細目の「ちょっと、よろしいですかね?」


    勇者「へ?僕ですか?」

    勇者(なんだこの人たち……)

    細目の「はい。ちょっと話があるんです」

    太った「お前さん、さっき町長と話してたよな?」

    ノッポの「町長とはどんな関係だ?」


    勇者・スー勇者「「!!!!」」


    勇者(……つけられてたのか?)

    勇者「いえ、特に……?なんでですか?」

    細目の「しらばっくれてないですよね?本当はどんな関係で?」

    勇者「ただの昔の知り合いだから挨拶しただけですよ。本当に」

    細目の「ふうん……昔の知り合い、ねえ」

    勇者(……まずいな)

    331 = 1 :

    ノッポの「なあ、正直に話したほうがいいぜ」

    太った「なんかの取り引きの話だったんだろ?」

    勇者「違いますけど……それを僕に聞いてどうするつもりなんです?」

    細目の「……」

    勇者「本当に挨拶した程度なんですけど、もし僕が変な取り引きしてたら一体何を」


    細目の「リコール」


    勇者・スー勇者「「!!!」」


    細目の「今の町長の行いはちょっと看過できない事が多すぎましてね……」

    細目の「ですから、新しい町長を選びなおす。その機会がほしいのです。この私達は」

    細目の「ただ、上手いこと手を回すものですから証拠、というか決定打にかけていまして」

    ザッ

    細目の「……悩んでいたところ、なにやら貴方達が怪しい動きをしていたのでね」


    勇者「……」

    スー勇者「……っ」


    細目の「どうです?何かお話していただけませんか?」

    勇者「まず本当に何も知らないです。協力はできません。と言ったら?」

    細目の「そうですね……ちょうど、国連の方々がいらっしゃってる事です」


    細目の「あなた方御二人を国連の方々に突き出して、調査をご協力願うしかなくなりますね」


    勇者「……」


    細目の「……知ってること、教えていただけますね?」


    勇者「……」


    ポロッ


    勇者「……ああ」


    スッ…


    勇者「果物が落ちちゃったじゃないですか――……」




    ドカッ!!




    勇者・スー勇者・細目の男「「「へ?」」」



    「んー……青い空。快晴と言うヤツですなあ」

    「おやおや、お隣にいきなり申し訳ないね。丁度いいベンチがなかったもので」


    ニコッ


    ソクラス「少しだけ話し相手になってもらえるかね?」

    332 = 1 :

    勇者(…………なんだこのおじさん……)

    細目の「ちょっ……いきなりなんです?」


    ソクラス「まあまあ、ちょっとだけ話し相手になってもらえんかね?」

    ソクラス「どうだね、そこの少年」

    勇者「……僕、ですか?」

    ソクラス「ああ。君は今のような快晴は好きかね?」

    勇者「快晴、ですか?晴れ?」

    ソクラス「うむ。そうだね」

    勇者「や、まあ……好きですけど」

    ソクラス「そうかそうか。そこのお嬢さんは?」

    スー勇者「えっ!?えっと、好きです!」

    ソクラス「そうかそうか。そちらは?」

    細目の「え?まあ、好き、ですが」

    ソクラス「そうかねそうかね!結構な事でありますなあ!」


    (((……なんだこの人)))


    太った(なんかめんどくせえヤツにからまれちまったな)

    ノッポの(酔っ払いかなんかか?くそ、なんだってこんなタイミングで)

    ソクラス「では、雨は?どうかね?少年」

    勇者「雨、ですか?……うーん、雨もいい所あったりしますけど、晴れのほうが好きかなあ」

    ソクラス「ほうほう」

    勇者「えっと、これなんの質問なんですかね」

    ソクラス「君は実に、結構な事だね」

    勇者「え?ん?」

    ソクラス「君はどうやら貪欲ではないようだ。そんな顔をしている」

    ソクラス「君は貪欲ではない。貪欲では決して無い」

    勇者「え……はい、えっと?」



    ソクラス「君は実に、つまらない」



    勇者「……ンッ!?」

    スー勇者「なっ……!」かちーん

    太った(いきなりのdis)

    ノッポの(ちょっと気の毒だな)

    ガタッ

    スー勇者「ご主人様に何を言うですかぁっ!!!!!」

    勇者「ス、スーちゃん落ち着いてっ?」


    ペリッ


    勇者「……え?」

    333 = 1 :

    ソクラス「つまらない、つまらない」


    ペリッ ペリッ


    勇者「……」

    勇者(いつの間に……僕が持ってた果実を)


    ソクラス「ああ、そっくりであるなあ」


    ムシャッ…



    ソクラス「あの男に……実にね」



    勇者「……あの、男?」

    スー勇者「あっ!ご主人様!」

    勇者「え?」


    スタ…スタ…


    スー戦士「……」


    勇者「スー戦士さん。もう終わったんだ」

    ソクラス「おや?もう行かれるのかな?」

    勇者「は、はい。僕はこれで」

    チャリッ

    勇者「……」

    勇者(……僕のポケットから貨幣の音が)



    ソクラス「この果実の代金。それで、足りると思うのだがね」



    勇者「っ」ゾッ

    ソクラス「話し相手になってくれて感謝しよう少年。さ、お行きなさい」

    勇者「スーちゃん。行こう」

    スー勇者「あっ、は、はい!」

    タッ

    細目の「あっ、ちょっとま……」ダッ

    ザッ

    ソクラス「君たちはもう少し私の話し相手になってもらえるかね?」

    細目の「ちょっ……!!あっ」

    タッタッタ

    太った「……いっちまった」

    334 = 1 :

    ノッポの「何をしやがる!」

    細目の「邪魔をしないでください!」

    ソクラス「ふふん、少しは感謝してもらいたいものですなあ」

    太った「あぁ!?何言って」


    ソクラス「私があそこで割り入らなければ、君たちの足の腱はスッパリやられて、地べたを這いずり回っていたでしょうな」


    細目の「……は?」

    ソクラス「これを見たまえよ」

    ザッ

    ソクラス「ベンチの下のこの跡……彼はベンチに座った瞬間からこの場所に剣を抜きやすいように設置していたのだよ」

    ソクラス「彼がしゃがんだのを君たちも見ただろう?」


    「「「……」」」


    ソクラス「彼は恐らく逃げるつもりだったんでしょうなあ。それなら相手が追手にならぬように足の腱を切るのが一番容易い」

    ソクラス「迷いはなさそうに見えたね、私には」

    細目の「だ、だったら……!!やっぱりあの男、やましい事が!」

    太った「なおさら追わねえと!!」

    ソクラス「まあまあ待ちたまえよ」

    細目の「何ですか!!一体――……」


    ソクラス「……君たちには君たちで。お話があるのだよ」



    ………………


    スー戦士「……」

    タッタッタ

    勇者「スー戦士さん!」

    スー戦士「ん?ああっ、ふたりとも」

    スー勇者「もうお仕事終わったです?」

    スー戦士「……」

    勇者・スー勇者「「?」」

    スー勇者「どうされたです?」

    スー戦士「いや……少し、手違いがあったみたいなんだ」

    スー戦士「取り引きの事でちょっとね……妙な事が、あって」

    勇者「妙な事……?」

    スー戦士「いや、きっと大丈夫、だとは思うんだ。ただ予定が大幅に狂った」

    スー戦士「悪いが二人は先にスーに行ってもらえるか?俺は少し遅くなりそうなんだ」

    勇者「そうだったんですか……お仕事忙しそうですね」

    スー勇者「でしたら、先に帰ってるです!」

    スー戦士「ああ……村長やエドによろしく言っておいてくれ」

    スー勇者「はい!」

    勇者「ではまたスーでお会いしましょう。失礼しますね」

    スー戦士「ああ。気をつけてな」

    335 = 1 :

    スタスタ…


    ……


    スー戦士「……」

    クルッ

    スー戦士「……っ……嘘であってくれよ」

    スー戦士(町長さん……貴女は俺達スー人を騙すような事なんて……してないよな……?)

    スタスタ…


    ――――――――――――――


    ムシャ…

    モグモグ

    ソクラス「うん……見事な快晴である事よ」

    スクッ…

    ソクラス「…………じつにつまらない」

    ポイッ

    ゴロッ… コロン コロン


    ブチャァッ


    ソクラス「飽きた」


    タッタッタ

    ソクラス「おや?」


    ダーマ勇者「ソクラス様――!!!」


    ソクラス「おやおや、ダーマの」

    ズザァッ

    ダーマ勇者「よかった……はぁっ、ここに、いらっしゃったんですね」

    ダーマ勇者「宿でお姿がみえなかったので……いったいどうされたんですか?兵もつけずに」

    ソクラス「それはですね……」

    ソクラス(……)


    ガクッ


    ソクラス「うっ……」


    ダーマ勇者「!!!?」

    ダッ

    ダーマ勇者「ソクラス様!!?お気を確かに!!……どうされたんですか!!?」


    ソクラス「……すま、ないね……実は……――」


    …………
    ……

    336 = 1 :



    ……
    …………



    ――ガルナバーク・町の外――



    スタスタ


    勇者「んー……風がきもちいいー」

    スー勇者「ですー……大地って、いいものです」

    勇者「ずっと船の上だったからね……」

    勇者「さてと。こっからスーってどのくらいかかるの?」

    スー勇者「えっと、普通の道を行くと一日くらいです」

    勇者「あー、やっぱりかかっちゃうか」

    スー勇者「でも、近道もあるです。岩山の道、スー人しか知らない道あります」

    スー勇者「そこだと、半々日で行けるです」

    勇者「おお?凄く近道になるね」

    スー勇者「……一応ルーラもあるです」

    勇者「あ、そっか!そういえばスーちゃんルーラが……」

    勇者「使え…………」


    ―――――――――――――



    ヒュウウウウウ!!!!

    スー勇者『やああああ――――!!!!』


    武道家『えぇぇ!!!!?何!?女の子が落ちてきてる!!?』

    勇者『うわああああ危ない危ないいいいいい!!!!!オーライオーライ!!!!!』アワアワ

    武道家『え!?ちょ、勇者受け止める気!!?だったら私が』


    ゴッシャァ!!!!


    勇者『ブエナッ!!』ビスタッ


    ―――――――――――――


    勇者「…………使え、る?」

    スー勇者「……落下するの、ご主人様を、巻き込むわけには……」

    勇者「や、僕は大丈夫だけど……一応その岩山ルートで行こうか?」

    スー勇者「すみません……」

    勇者「なんで謝るのさ。散歩にもなるしいいもんだよ。のんびり行こう」

    スー勇者「はい!」

    337 = 1 :

    スタスタ


    勇者「一応道も踏み固められてるんだね……できたばかりの町なのにほんと凄いな」

    スー勇者「この道の両脇、見てください」

    勇者「うん?」


    サァァァァ


    勇者「でかい林、ってか森があるけど……どうしたの?」

    スー勇者「ほんとは、この道の場所も森だったです。一塊になってたです」

    勇者「あ、そうなんだ!じゃあここを切り開いてその木材使ってたのか」

    スー勇者「すごく丈夫な木です。たぶんそうです」

    勇者「なるほどねえ、開拓と木材調達を同時にって感じだったのか」

    スー勇者「とりあえず、あそこに見える丘まで行っていいです?」

    勇者「ん?あそこ?わかった」


    ……

    スタスタ


    勇者「……おお」



    ――ガルナバーク・南西の丘――


    サァァァァァ……


    勇者「うおおお……ここすごく、なんか、いい……!」

    スー勇者「えへへ、ここ、私のお気に入りの場所です」

    スラお「おはないっぱい!」

    スー勇者「お花も綺麗ですし。それに、夕焼けと朝焼けがすごく綺麗です」

    勇者「おお、いいね。まだ夕焼けにはちょっと早いなあ」

    スー勇者「ですので、また朝焼けを、一緒に見に来てくれますです?」

    勇者「来よう来よう!是非見たいよ!やー……綺麗だなあ」


    サァァァァ…


    勇者「……ガルナバークも一望できるし、町を出てからここまでの道も見える――……」

    勇者「…………ん?」

    スー勇者「?どうしたです?ご主人様」

    スラお「うんこ?」

    勇者「ちげえよなんでお前いつもうんこ方面なんだよ……スーちゃん、あれ見える?」

    スー勇者「え?…………えう?」



    ……ドドド……



    スー勇者「……何かが、全速力で」


    勇者「こっちに、走ってきてる、よね」

    338 = 1 :


    ドドドドドドドド


    勇者「っていうか」

    スー勇者「もう、そこまで、来て……」


    ドドドドドドドドドドド!!!!


    ズザァ――――――!!!!


    勇者「 」

    スー勇者「 」

    スラお「あっ!」


    「はぁっ、はぁっ……見つけましたよ……!!」


    勇者「……あ、貴女は」

    スー勇者「ダ……」

    スラお「おねいさん!」


    ジャキィッ!!!


    ダーマ勇者「よくも私を騙してくれましたね!!!!」

    ダーマ勇者「ルビス様に代わって……!!!」

    ザッ!!



    ダーマ勇者「お仕置きです!!!!!!」



    スー勇者「ダーマさん……!!」


    ――――――――――――


    スタスタ

    ソクラス(さてさて……少年はどうやって彼女をいなしますかな)


    ソクラス(あの程度の障害で潰れるならそこで潰れておしまいなさい)


    ソクラス(それとも、保身の為に、彼女を力尽くで)


    ソクラス(…………殺してでも、乗り越えるか)


    ソクラス「クハハっ」


    ソクラス(少しだけ、楽しみですなあ)




    ソクラス(どうかね?忌み子の勇者君)



    339 = 1 :

    今日はおしまいです

    340 :

    乙!
    続き気になりすぎる

    341 :


    ――――――――――――


    勇者「だ、騙した?何を……」

    ダーマ勇者「しらばっくれないで下さい!!」

    ダーマ勇者「先ほど話を聞きました……!その髪の色!癖っ毛!青い目!銅の剣!!」

    ダーマ勇者「あなたがあのガルナの塔の変で賢者様を攫った容疑者勇者なんですね!!」

    勇者(あー、今度は騙せそうにないっぽいな)

    勇者(同じ船に乗ってここまで一緒に来てたのか……まずったな……。しかしなんで僕の素性にいきなり気付いたんだこの人)

    勇者「……」

    勇者(もしかして……さっきのおじさんか?)


    ヒュンッ


    勇者「!?」


    スー勇者「っ!ご主人sっ――……」


    ダーマ勇者「隙ありっ!!!!」



    ガキィィン!!


    ダーマ勇者「……!」


    勇者「……っ」

    勇者(いきなり斬りかかってくるとは思ってなかった。意外と好戦的なのか)

    ダーマ勇者(受け流された?今の剣が?)

    ギリッ ザッ!

    ダーマ勇者(次はそういかせません!……このダーマ聖騎士団の剣術で)


    ヒュンッ


    勇者「!!」


    ダーマ勇者「成敗してくれますッ!!!!」


    ガキィン!!


    ダーマ勇者「!?」


    勇者「……」

    勇者(でも、この人剣術が型に嵌りすぎてる)

    勇者(ムオル勇者さんが前に言ってた聖騎士がよく使う剣筋だ)

    342 = 1 :



    ガキィン! ガキィン!!


    ダーマ勇者「っ!? っ!!」ヒュンッ ヒュンッ


    勇者「っ、っく、ふっ」


    勇者(やっぱりだ。この人相当な優等生だったんだろうな。出てくる動きが全部本当に型通りだ)

    勇者(だとしたら……なんとか、往なせる)


    ヒュンッ!!


    ダーマ勇者「ぅぁ!?」

    ダーマ勇者(す、素手で剣をいなされたっ!!?)


    勇者(ただ、こういう聖騎士達は剣術を手放さなければならない時)


    ダーマ勇者(それならっ……!!!!)

    ダーマ勇者「その……風に……せよ!!」


    ゴォォッ


    勇者(詠唱が極端に短い神風魔法を連撃の一つとして放ってくる、から!!!)

    勇者(横に思い切り逸れてやり過ごす!!!)

    ダッ


    ダーマ勇者「バギ!!!……ふぇ!!?」


    ゴォオオオオッ!!!!


    パラパラ……


    勇者(うおおお、あっぶな……!!)

    ダーマ勇者「なっ、よ、避けないで下さい!!!」

    勇者「無茶を言いなさる」


    勇者(でも単なるバギで凄い速度だった。やっぱり国連の勇者なだけあって強い)


    ダーマ勇者(攻撃が全部読まれてるみたいに悉くかわされた……)


    スー勇者(……ふ、二人の動きが速すぎて何をやってるか全然わからなかった……)

    スー勇者(でもそうだよね……。ご主人様はもっと速いムオルさんといつも一緒に戦ってたんだもん)

    343 = 1 :

    勇者(このままじゃまずいし……仕方ない)


    ダーマ勇者(やっぱり、相手はあの落日の七日間を引き起こした最悪の魔族……簡単に折れてはくれませんか)

    ダーマ勇者(じゃあもう一体の方を先に退治――……)


    ガシッ


    ダーマ勇者「……しひ?」



    勇者「動くなよ……こいつの首」


    ジャキッ


    勇者「…………刎ねるぞ」



    スー勇者「っ……!!……なんで仲間割れを……って、ええ!!!!?」



    ダーマ勇者「スッ……スー勇者様!!!!?」



    勇者(……スーちゃん、今は合わせて)ボソボソ

    スー勇者(でもっ……)ボソボソ

    勇者(……でもじゃない。言う事を聞くんだ)ボソボソ

    スー勇者(……!!)


    ダーマ勇者「スー勇者様!!!貴女は行方不明になっていた筈……!!ご無事だったんですね!!!」

    ジャキッ!!

    ダーマ勇者「!!」


    勇者「だから騒ぐなよ。今は無事だけど、お前が騒いだら無事じゃなくしてやるぞ?」


    スー勇者「っ……」


    ダーマ勇者「っ……の……!!!卑怯なっ……!!!!」


    勇者「お前ら用の人質としてこの女の子を攫っておいてよかったよ」

    勇者「脅せば僕の言う事をなんでもきいてくれるからコマにもしやすかったし……これからもいい人質になりそうだ」


    スー勇者「ダーマさん……!た、たすけて……」


    ダーマ勇者「……っ、っ」

    ギリィッ……!!

    ダーマ勇者「この……!!!!外道っッ……!!!」

    344 = 1 :

    勇者「外道で結構だよ。僕には最高の褒め言葉だよそれ」

    勇者「ま、とにかく僕にあと一歩でも近づいてみなよ?この子殺すから」

    ダーマ勇者「……ッッ!!!!」

    勇者「それでもこっちに来れる?……来れないよねぇ~?心優しい勇者だもんね?貴女様は」

    勇者(スーちゃんごめん、合図したらルーラでスーまで飛んで)ボソッ

    スー勇者「っ……」キュッ

    ジリ…ジリ…

    勇者「とにかく。この大陸に僕の欲しい情報は無かったからもう僕はお暇させてもらうね」

    ダーマ勇者「なっ!!ま、待ちなさ――……」

    勇者「殺すって。言ったろ?」

    ダーマ勇者「あ、くっ……!!」

    勇者「……いいね?」

    ダーマ勇者「……」

    勇者「……」

    ダーマ勇者「……」

    勇者(……よし、行けるか)

    勇者「それじゃ……」


    ダーマ勇者「恥をっ……恥を知りなさいっ!!!!」


    勇者「……」


    ダーマ勇者「あなたは、最低です……!!!最低の、最悪な、ゲスです!!!」

    ダーマ勇者「アリアハンの優しい住民達を騙してっ……!!!オルテガ様を殺害する手助けをしてっ」


    勇者「……」


    ダーマ勇者「挙句の果てには!!アープ様も、ガルナ様も!シャンパーニ様も……殺して!!」


    ダーマ勇者「テドンの人たちを、罪の無い人たちを皆殺しにした!!!!」




    勇者「……」




    ダーマ勇者「あなたには、心がないんですか……!!!!」


    ダーマ勇者「そうやって、人間と同じように喋ることができるのに!!」


    ダーマ勇者「あなた、心が!!!!痛まないんですかっ!!!!!!!」

    345 = 1 :






    勇者「……――無かったら、本当に、良かったのに」





    ダーマ勇者「……え?」


    勇者「…………スーちゃん。行こう」

    スー勇者「っ!!」


    ゴオオォォッ


    ダーマ勇者「きゃっ!!?ちょっ、待っ……」




    バシュゥゥゥゥゥゥゥゥンン!!!!!!!




    ゴォォォォォ……


    オォォォ…


    オォ…








    パラパラ…


    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者(……何、あの)


    ―――――――――――――



    勇者『……』



    ―――――――――――――



    ダーマ勇者「……哀しそうな、目…………」


    346 = 1 :

    ―――――――――――――



    バシュゥゥゥゥゥゥ


    スー勇者「っ……!!」

    スー勇者(良かった、今回はなんだか成功しそうっ……あ!)

    スラお「なんかみえたよ!」

    スー勇者(スーの村!よしっ!あそこまでいけば……!!)



    バフォッ



    スー勇者「あっ?」


    スラお「お?」



    ヒュゥゥゥゥゥ……!!!



    スラお「わわわっ!!?おちるよ!!?」


    スー勇者【“高度がっ、下げ、あ、勢いが足りなっ……!!だめだめだめっ!!落ちるっ”】


    スー勇者・スラお「「いやあああ―――――!!!!」」



    ドゴォッ!!!!


    ズザァ――――ッ


    ゴロゴロゴロゴロッ

    ゴロ…




    パラパラ…


    スー勇者「ん……?」

    スー勇者(あれ?なんともない……?……――って)


    勇者「……大丈夫だった?スーちゃん」


    スー勇者「ご主人様!!!」

    347 = 1 :

    ガバッ

    スー勇者「ご、ごめんなさいです!!庇ってもらっ……――!!!!」

    スー勇者(私を抱きしめたまま着地して転がったから、体中が傷だらけに!!)

    スー勇者「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ……!!今、治すですっ!!」


    ポワッ……


    勇者「……ごめんね」

    スー勇者「なんで謝るですかっ……!私が、だめなのに」

    スラお「スーちゃんはわるくないもんっ!ゆーしゃがわるいもん!」

    スー勇者「スラさん!!!やめてください!!!私、いいかげんに怒るでs」


    ギュッ


    スー勇者「……ふぇ?」

    勇者「……………………ごめん」

    スー勇者「まわわ!!!?ごご、ご、ご主人さま!!!?」

    スー勇者(そんな、起きてるご主人様からぎゅってされるなんて――……)


    グッ……


    スー勇者「…………」


    勇者「……ごめん」


    スー勇者「…………ご主人様……?」



    ギュゥゥ……



    勇者「ごめんね……ごめん」



    ぎゅぅぅぅ



    勇者「……っ、ごめん……っ……」


    スー勇者「……」

    ギュッ

    スー勇者「…………わたしは、わかってるです」

    スー勇者「ご主人様のお傍、いるです……」

    スー勇者「………………安心、してください」


    …………
    ……

    348 = 1 :



    ……
    …………


    スタスタ



    勇者「……あとどのくらいで着きそう?」

    スー勇者「このあたりからなら、すぐに着くです!」

    勇者「そっか。もう陽も沈んできたし、夜が来る前になんとか到着したいね」

    スー勇者「でも、あとほんの少しです!歌を一曲、歌うのが終わるころ、もう着くです!」

    勇者「本当?じゃあなんか歌ってよスーちゃん」

    スー勇者「はずかしいです……」

    勇者「あはは」

    スー勇者(……もう大丈夫そう、かな)

    スー勇者(仕方ないよね……あんな事言われたんだから……)


    スタスタ


    勇者「でもいきなり行って大丈夫かな?」

    スー勇者「大丈夫です!みんな優しい人ばかりです!!歓迎するです!」

    スー勇者「えへへっ!ご主人様に会わせたい人、いっぱいいるです!」

    勇者「そんなに居るの?はは、楽しみだなあ」

    スー勇者「とくに、エドさんに会わせたいです!」

    勇者「えどさん?」

    スー勇者「はい!私のだいすきなエドさんです!」

    勇者「ご家族の方?」

    スー勇者「いいえ!でも家族も同然です!」

    スー勇者「えっとですね……えへへ。実は、エドさんとご主人様、なんだか似てるです」

    勇者「え?僕に似てるの?」

    スー勇者「はいっ!」

    勇者「そっかあ、それは余計に会ってみたいなあ」

    スー勇者「是非です!ふふ……エドさんはよくペロペロしてくれるです。久しぶりにしてほしいです」

    勇者「ん?ペロペロ?」

    スー勇者「はい」

    勇者「ペロペロって、何?え?ベロで?」

    スー勇者「はい!」

    勇者「…………」

    勇者「……ん、あ?そっか。エドさんって女性?」

    スー勇者「いいえ?」

    勇者「………………そう、ああ、へーぇ」

    349 = 1 :

    勇者(え?それっていいのか?それ絵面的にやばいんじゃないのか)

    勇者(あ、でもよく考えたらそれがスーでの交流方法だったりするのかな)


    スー勇者「それにエドさんは私の事、なんでも知ってるです!」

    スー勇者「多分、私の事で、エドさんが知らない事はないです!」


    勇者(んー?なんかだんだんやばくなっていくんですけど?)

    勇者(大丈夫なんですかエドさん信じて良いんですかエドさん)


    スー勇者「私が村に帰るときも、なぜかすぐに気付いてお迎えしてくれるです!」


    勇者(ちょっとまてそれスーちゃんのストーk……)

    スー勇者「前に帰ってきた時も、あの木陰に――……あっ!!」

    勇者「ん?」

    スラお「なんかいる」


    スー勇者「エドさん!!!」


    勇者「!!?」

    勇者(さ、早速の御対面!?まだちゃんと心の準備が)


    パカラッ パカラッ…


    勇者「………………――――うん?」





    白い馬「ヒヒーン」パカラッ パカラッ





    勇者「……ねえスーちゃん」

    スー勇者「はい?」

    勇者「なんだか綺麗な白い馬がこっちに駆けてくるんだけど……エドさんは」

    スー勇者「はい!エドさんです!!」

    勇者「えっ」


    スー勇者「あれがエドさんです!!」


    勇者「エドさん」


    パカラッ パカラッ

    白い馬「……」


    勇者「……エドさん。ん。んん」

    勇者(僕……馬に似てるかい……?スーちゃんさん……?)


    スー勇者「エドさーん!!!!たーだーいーまー!!!」

    350 :











    エド「おかえり――――――――――――!!!!!スー勇者――――――――――!!!!!」






    勇者「キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア喋ったアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」











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