元スレ勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」
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151 = 1 :
イシス勇者「それはもう……そういえば、勇者君はまだ準備中ですか?」
ホビット「ああ。スー勇者ちゃんとごたごたしているよ」
――――――――――――
勇者「スーちゃん!鍋は持ってかなくていいでしょ!めっ」
スー勇者「でもっ、これっ、おこげが付かなくて!」
勇者「めっ」
――――――――――――
ホビット「しばらくは荷造りだろうね……だから」
ホビット「今のうちに、君らの質問に答えておこう」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……質問、っすか」
ホビット「何か、わしに聞いておきたい事はあるかい?」
イシス僧侶「……ホビット様」
ホビット「なんだい?イシス僧侶さん」
イシス僧侶「御優しいのか、残酷なのか……わかりませんね」
ホビット「ははは……どちらでもありたいものだね」
イシス戦士「ム、ムオル勇者殿は?一緒にエジンベアまで行かれるのですか?」
ホビット「いや、彼はまた国連の任務で今日から別行動だよ」
イシス魔法使い「という事は、私達で勇者くんたちを守らなきゃですね」
ホビット「意気込み有難いが、そうヤワに鍛えてもいない。あまり気負わずに軽く考えておくれ」
ホビット「……他に何か。ないかい」
イシス勇者「……えっと……」
ポルトガ勇者「……ホビットさん」
ホビット「なんだい?」
ポルトガ勇者「俺に、質問させたいんすよね?」
ホビット「……君が、聞きたくないなら質問はせずにしておきなさい」
ホビット「これによって、君らがあの子をどうするかも決まってくるかもしれないしね」
ポルトガ勇者「……人が悪いぜ」
ホビット「ホビットだからね。以前は人間と争った身さ」
スクッ
ポルトガ勇者「んっ……と!」バキボキ
ポルトガ勇者「ふぅ…………じゃあ聞くが、ホビットさん……昨日も同じような問いかけたけど、ちょっと変えるぜ。はいかいいえで答えられるヤツにする」
ポルトガ勇者「あいつは、魔王の手下なんすか?」
ホビット「……」
152 = 1 :
ポルトガ勇者「あいつは、いや。あいつの中のアレは……魔王バラモスによるものなんすか」
ポルトガ勇者「それとも――……」
ホビット「いや……あれは違うよ」
ポルトガ勇者「――……」
ホビット「あの子自身には裏切りや騙りも無いし、あれは魔王バラモスの手下でもない」
ホビット「……詳しくはないが、それは言える」
ポルトガ勇者「……そっすか」
イシス勇者「……良かっ……た」
ホビット「ただ、今の所それくらいしか言えないんだ。何のきっかけであれが暴走するかも分からないしね」
イシス勇者「でもそれだけ知れれば十分」
ポルトガ勇者「まだだ」
イシス勇者「え?」
ポルトガ勇者「まだ質問がある……というか、ホビットさんが聞いて欲しいのはこっちなんだろ?」
ホビット「……――質問をどうぞ」
ポルトガ勇者「えっと……昨日、あいつと一緒に風呂に入ったんだけど」
イシス僧侶「えっ、いきなり何の話しだすのポルトガ勇者様」
イシス勇者「自慢したいのかい?」ギリッ
イシス魔法使い「その会話の流れ第三者からすると怖いわよイシス勇者様」
ポルトガ勇者「いや、びっくりしたのがあいつのチンコの大きさなんだけどよ」
イシス勢「「「本当に何の話だ!!!!」」」
イシス勇者「チッ、チチチチチチ」
イシス戦士「イッ、イシス勇者様っ、お気をっお気をたしかかっ、かにっ」
ポルトガ勇者「いやだって……普通の状態で、えっと……こんくらいだぜ?」
イシス僧侶「えぇっ……本当それ……うそぉっ……?」
イシス魔法使い「あらやだ、やだやだやだ、もう、ちょっと……うそぉ……?」
イシス戦士「お前らはっ!!何の話をしているっ!!!!」
イシス勇者「こ、このくらいひぃっ……!!!!?」
イシス戦士「お気をたしかn、えぇっ……うそぉっ……」
ホビット「ははは……ポルトガ勇者」
ホビット「……――君は、勇者の下半身を見たよね」
ポルトガ勇者「……ああ」
ホビット「……その上で、聞きたい事は?」
ポルトガ勇者「……――本当に酷い人だな、アンタ」
ホビット「人ではないからね」
ポルトガ勇者「じゃあ……単刀直入に聞くっすよ」
153 = 1 :
ポルトガ勇者「あいつの、下半身の左側を覆ってる……黒い痣、あれ。なんすか」
イシス勇者「……――え」
イシス僧侶「……!!!?」
ホビット「……」
ポルトガ勇者「……それと、あいつ昨日。寝る時に言ってました」
ポルトガ勇者「『自分に何かあったらスー勇者の場所へ逃げろ』って」
ポルトガ勇者「…………ホビットさん」
ポルトガ勇者「あいつ、ここで魔物になった事、あるんすね?」
ポルトガ勇者「そしてあの痣……無関係じゃないんでしょ?」
ホビット「……」
イシス僧侶「ホ、ホビット様!本当なんですか!?」
ホビット「……勇者が来て、二ヶ月目の頃だったかな」
ホビット「少し寝苦しい夜でね……多分、そのせいで。あの子も嫌な夢を見たんだろう」
ホビット「急に勇者とスー勇者ちゃんの部屋から轟音がして飛び起きたわしは、急いで二人の部屋に駆けつけた」
ホビット「そこで――……」
――――――――――――――
ホビット『これ……は……』
ごりゅ、ぐちゅっ、ばちゅっ
勇者『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』
ギュゥッ…
スー勇者『……ご主人様』
勇者『あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』
スー勇者『……怖い夢、……見た、ですね』
勇者『あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!』
スー勇者『ほら……もう、だいじょうぶ、だいじょうぶです……』
ナデ…
勇者『あああああああああああっ!!!!!!あああああああああああああ!!!!!!!』
154 = 1 :
スー勇者『…………もう、大丈夫』ボソッ
勇者『あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
スー勇者『……ね?』ギュゥッ
勇者『ああああああああああああああああああ』
ごりゅ
勇者『あああああああああああっ、あああああ』
ぐぎゅ…
勇者『ああああっ、あああああ』
ぐりゅ…
ホビット『……』
ホビット『(勇者の体が、元通りになっていく……)』
スー勇者『……』
勇者『……ス……ちゃん……』
スー勇者『……大丈夫、です……』
スー勇者『ここに……居る、ですよ……』
勇者『……ん……』
ホビット『……』
―――――――――――――
・
…
……
…………
ホビット「……そして、目覚めた時には……あの子の体にはあの痣が浮かんでいたよ」
イシス勇者「…………!!」
イシス戦士「し、しかしそれによる後遺症などは無いのでしょう?」
ホビット「ああ、無いね」
イシス戦士「でしたら、何も問題は」
ホビット「ただ、後遺症がないだけさ」
イシス戦士「……え」
イシス僧侶「…………勇者くんの所の僧侶ちゃんとの話のくだり、覚えてる?イシス戦士」
イシス戦士「……」
ホビット「…………そうだね、これは今の所、勇者のその後の魔族への変貌を総括しての話だから推測ではあるけれど」
155 = 1 :
ホビット「あと3回魔族になると、あの子は死ぬ」
156 = 1 :
今日はおしまいです
157 :
おつ
どんどん先が気になる様になるな
159 :
こうなるとスー勇者は何者なんだろ、ルビス以外に精霊がいたりするんだろうか…乙
161 :
乙でございます
162 :
イシス勇者「……――は……?」
イシス僧侶「……本当、なんですね」
ホビット「恐らくだがね」
イシス勇者「いやいやいや!ちょっと待ってください、そんなっ」
イシス魔法使い「イシス勇者様。……落ち着いて聞きましょう」
イシス僧侶「あと3回……ですか……」
ホビット「うん。色んな文献であの症状を見かけた事があるが、恐らくそれらから推測するに3回だよ」
イシス戦士「ホ、ホビット殿!!なぜそんな落ち着いて話す事ができるのですか!勇者は――」
ホビット「わしが落ち着いて無感動に話していると。そう見えるかい?」
イシス戦士「……あ……」
イシス僧侶「イシス戦士。ダメだよそれは」
ホビット「いや、そう見られても仕方ないかもしれないね。これはわしの悪い癖でもあるし」
ポルトガ勇者「…………あいつの魔物に変化する時の条件ってあるんすか」
ホビット「ああ……これもまたわしの推測でしかないけれど」
ホビット「あの変化は、勇者の精神状態によって引き起こされると思っているんだ」
イシス僧侶「精神状態、というと」
イシス勇者「……仰っていた、怨念……――憎悪によってのもの、という事ですか」
ホビット「理解が早くて助かるよ」
ホビット「君らもさっき見ただろう?あの子が会話の途中に妙になったのを」
イシス魔法使い「あの時の勇者くんも魔物に変化しつつあったのですか?」
ホビット「極々軽微、ではあるけれどね……何かがあの子の中で琴線に触れてしまったんだろう」
ホビット「ああなるとスー勇者ちゃんの力を借りなければ引き戻す事ができなくなるんだ」
イシス戦士「でも、何故今まで生きてきて平気だったのですか……怨念に苛まれる事など、勇者ならば数多く」
ホビット「それはホラ、君らも間近で見たんじゃないかな」
イシス戦士「え?……――あ」
ホビット「“賢者達が魔力を込めた刃”……それが体内に入っていたからね」
ホビット「アリアハンで育ったからか、それまでは不要だったものを……あの子はテドンで、強いられてしまった。緊急的にね」
ホビット「それがどういう事か理解できなくはないだろう?」
イシス勇者「……――あの時、落日の七日間の初日に……勇者くんは強い憎しみに苛まれて」
ポルトガ勇者「それが決壊して、その賢者達が緊急で対応しなけりゃならなくなった……っつう事か」
ホビット「ん……そうだね」
163 = 1 :
ホビット「だから、本来ならばこういった隔離された場所でのびのびさせてやるのが一番良いと思うんだ」
イシス勇者「では何故今回勇者くんに特別授業なんて」
ホビット「……それも、ちょっとわけアリでね」
ホビット「ただ傍にスー勇者ちゃんが居る限りあの子が痣を作ってしまう程完全に魔物への変身を遂げてしまうことはないと思うのさ」
ポルトガ勇者「ちょっと聞いてもいいっすか」
ホビット「ん?」
ポルトガ勇者「そうなるとあいつは、スー勇者はマジで何者なんすか」
イシス魔法使い「お話を聞く限りは……それこそ、遊び人ちゃんのような、そう……賢者様のような」
ホビット「んー……それはちょっとわしでも分からない」
イシス僧侶「そうなんですか?」
ホビット「ああ。あの子から直接話してくれるのを待っているんだが、なかなかだね」
ポルトガ勇者「……そっすか」
ホビット「はは、複雑な顔をしているよポルトガ勇者」
ホビット「スー勇者ちゃんまで殺さなければならない事態になるのが、やはり怖いかい」
ポルトガ勇者「!!!」
イシス勇者「――え」
イシス僧侶「ちょっとちょっと、どういう事ですか」
イシス魔法使い「今何か聞き捨てなら無い事が」
ホビット「……最初から、そのつもりで見定めに来たんだろう?」
ポルトガ勇者「あー……別に隠すつもりは無かったんだがよ」
イシス勇者「ど」
ガシッ!!
イシス勇者「どういう事だ!!!ポルトガ勇者君っ!!!!」
イシス戦士「イシス勇者様!!落ち着きなさってください!!」
イシス勇者「落ち着いていられるもんか!!だって、ポルトガ勇者君は――」
ポルトガ勇者「もし勇者が、魔族の血に身を染められているなら。殺すつもりだったよ」
イシス勇者「っ……――!!!!」
ギリッ…!!
イシス勇者「……君はっ……!!何を言っているのか分かって……!!!!」
ポルトガ勇者「わかってるさ」
イシス勇者「でも勇者くんは!!純粋に君の事を信じて――……」
「知ってたよ」
イシス勇者「!!」
イシス僧侶「……勇者くん」
スタスタ
勇者「知ってたよ。……なんとなく、ポルトガ勇者が何をしに来たのか」
164 = 1 :
ポルトガ勇者「おう。荷造り終わったか」
勇者「うん。皆おまたせ!」
イシス勇者「ゆ、勇者くんっ!何をそんな悠長な」
勇者「イシス勇者くん、ありがとう」
イシス勇者「え?」
勇者「僕の事心配して、ここまで来てくれて……本当に感謝してる」
勇者「そして、ポルトガ勇者も」
ポルトガ勇者「おう」
勇者「……“僕の事”、心配してくれてありがとう」
ポルトガ勇者「……勇者」
勇者「ん?」
ポルトガ勇者「まあ、帰りがてら言うつもりだったんだが、今言うぜ」
勇者「うん」
ポルトガ勇者「お前が完全に魔物になりかけてたら、俺が殺してやるつもりだった」
勇者「うん。知ってた」
ポルトガ勇者「まあ今は大丈夫そうで安心したけど――もしこの先、そうなったら俺がちゃんと被害が出る前に殺してやる」
ポルトガ勇者「俺ができなそうだったら、無理せずに数呼んで、みんなで殺してやる」
ポルトガ勇者「だから安心しろ。……ただ、絶対呑み込まれねえようにしとけ」
勇者「……ポルトガ勇者」
ポルトガ勇者「んだよ」
勇者「ありがとう」
ポルトガ勇者「……ん」
勇者「でも、僕の幼馴染達も同じ約束をしてくれたんだ」
ポルトガ勇者「……――ははっ、じゃあ心強いな」
勇者「ああ」
ポルトガ勇者「………………殺させんなよ。あいつらには」
勇者「頑張るよ。ありがとう」
165 = 1 :
勇者「ただ、スーちゃんは本当に関係ないんだ。手を出したら本気でブチ切れる」
ポルトガ勇者「ああ。わかったよ……俺もスーの字がかわいくないワケじゃないしな」
スタスタ
スー勇者「お、おまたせしましたです」
勇者「スーちゃん。準備できた?」
スー勇者「は、ははい、おっけーです」
勇者「……?どしたのスーちゃん」
スー勇者「なななな何も隠してないです!本当です!」
モコッ
スラお「くるしいっ!」
勇者「……」
スー勇者「ああっ!?だめですスラさん!」
スラお「だってくるしいもん!」
勇者「元の位置に捨ててきなさい」
スー勇者「ひどいです!!」
スラお「ゆーしゃうんこ!ひどい!」
勇者「なにさ、付いてくるつもりなの!!?スラお!ダメ!!絶対ダメ!!」
スラお「なんで!」
勇者「だって街中を歩くんだよ!?スラおが例え害のないスライムだからって目立たないワケ」
スラお「うるひゃいつれてけうんこゆーしゃ!」ガブー
勇者「あだだだだだやっぱりお前害あるわ!!!擁護しきれんわ!!!!」
ぎゃーぎゃー
ポルトガ勇者「……一瞬で毒気が抜かれちまったな」
イシス勇者「ポルトガ勇者君」
ポルトガ勇者「ん?」
イシス勇者「さっきは、掴みかかってごめん」
ポルトガ勇者「いや、当然の反応だろあれは」
イシス勇者「……覚悟が足りないのは、僕だったよ」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「……――ただ」
イシス勇者「僕は、絶対に彼を殺させはしない」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「そうなる前に、絶対。勇者くんを救う方法を探してみせる」
ポルトガ勇者「……ああ。頼むぜ」
イシス勇者「はは……期待してなさそうだね」
ポルトガ勇者「期待は、したいさ」
166 = 1 :
…………
イシス勇者「泊めていただいて、本当にありがとうございました」
イシス僧侶「なにもお返しできないのが心苦しい限りなんですが……」
ホビット「いやいや。楽しかったよ」
イシス魔法使い「でも、いずれ何かでお返しさせて頂くのを約束させて下さい」
イシス戦士「今度は私にも稽古をつけていただけると」
ポルトガ勇者「ちゃっかり何頼んでんのお前」
ホビット「ははは。いや、是非是非」
ザッ!!
勇者「それでは先生!行って参ります!!」
スー勇者「お体、気をつけてくださいです!すぐに戻るです!」
スラお「おじちゃん!またね!」
ホビット「ああ。皆気をつけて行くんだよ……無事にね」
ホビット「いってらっしゃい」
勇者「はい!!」
・
…
……
…………
…………
……
…
・
サァァァァ……
ホビット「……」
テトテト
猫「……にゃーあ」
ホビット「ん?……ああ、君か」
猫「なーご……」
ホビット「皆行ってしまったよ。また以前のように静かになるね」
猫「……大丈夫なんですか?」
ホビット「なにがだい?」
猫「わかっているのでしょう?……何が来るのか」
ホビット「あはは……まあ、病人としては遠慮させてもらいたい事だよね」
ホビット「しかしいいのかい?スー勇者ちゃんを行かせてしまったわしを怒らないのかい?」
猫「かわいい子には旅をさせろ、といいますもの。それに勇者様が付いていますし」
ホビット「ふふ。そうか、そうか」
クルッ
ホビット「さて……それじゃ、中に入ろうか」
ホビット「もうすぐ、一雨来るようだから」
167 = 1 :
今日はおしまいです
168 :
おつ
170 :
相変わらずの面白さ
乙です
172 :
めちゃ乙続き早めに頼むよぉ
173 :
おつ
174 :
おっつー
更新多くてうれしい!
175 :
この猫何者?
177 :
乙でございます
178 :
――――――――――――
…………
ゥゥゥウウウウ
ストッ…
イシス魔法使い「っと……こんな感じね」
スー勇者「わああ……!すごいです!綺麗に着地できたです!」
イシス勇者「イシス魔法使い、お疲れ様。ありがとう」
スー勇者「イシスさん!イシス魔法使いさんのルーラ、すごいです!」
イシス僧侶「そうだろうそうだろう」
イシス魔法使い「なんであなたが得意気なのよ……でも、着いたわね」
勇者「……――はい」
……
勇者「……って、あれ?エジンベアは?」
ポルトガ勇者「もうちょい先だ。ここは只の魔力場だよ」
――エジンベアのちょっと手前――
ガヤガヤ…
スタスタ
勇者「でも布を纏っといて良かったよ。人がだいぶ多いんだね」
イシス戦士「気付かれないようにしていろ……お前はエジンベアに来るのは初めてか?」
勇者「うん。ちょっとドキドキしてる」
イシス僧侶「いつもはもうちょっと人は少ないんだよ?なんか今日多い気がする」
イシス魔法使い「やけに船が多いわね……あら?」
勇者「どうしたんですか?」
イシス魔法使い「ううん。ちょっとね。どれもこれも商船だなあって……契約している商船なら専用の港があるのに」
イシス戦士「売り込みに来た個人商船か、それとも専用港の空き待ちか。何にせよやたらと出入りが激しい様だな」
イシス勇者「とりあえずエジンベアまで歩こう。ほら。ここからでももう見えてきた」
ザッ
勇者「……おおー」
――城塞都市・エジンベア――
勇者「す、すげー……」
179 = 1 :
オオォォォォ……
勇者「え、あれって全部お城?」
イシス勇者「うん。凄いよね。国一つを城で囲んでしまっているんだ」
イシス僧侶「この大陸自体はすっごく小さいからねー。歴史も長い国だしこうやって守りを堅めるのも必然だったんじゃないかな」
勇者「この間先生に座学で習ってはいたけど……うおー、凄い……でっかい」
イシス僧侶「でもよく考えたら先生も……ホビット様も連れてくればよかったんじゃない?」
勇者「え?」
イシス僧侶「ずっとあそこに住んでたんでしょ?だったら旅行がてら一緒にさ」
勇者「あー……ん。それはちょっと無理なんだ」
イシス僧侶「無理?」
勇者「うん。先生は理由があってあそこから離れられなくてね」
イシス僧侶「そうなんだ……どんな理由?」
勇者「体調面での理由」
イシス僧侶「えっ!?ホビット様、病気患ってるの?」
スー勇者「はい……だから安静にしてないと、だめです」
勇者「だから先生には何かお土産を持ってく事にするよ」
ポルトガ勇者「ああ、そうしろそうしろ。美味いもんいっぱい紹介してやるよ」
勇者「ありがとう助かる……って、ちょっと話変わるけどさ」
ポルトガ勇者「ん?」
勇者「どうして皆も布被ってるの?」
「「「?」」」
勇者「軽く僕ら変な集団になっちゃってるんだけど」
イシス勇者「だって、僕らは国連関係者だよ?もし門を通る時顔を認められたら上にすぐ連絡がいく筈だよ」
勇者「あっ、それもそっか」
ポルトガ勇者「お前はお尋ね者だしスーの字は捜索令が布かれてる。とにかく皆コソコソやるしかねえのさ」
勇者「でもさっきの……えっと、門って言ったっけ?それって厳重なのかな」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス戦士「……」
勇者「えっ?どしたの皆いきなり苦虫噛み潰したような顔になって」
ポルトガ勇者「いや……冷静に考えたら今回はあの門を一般人として潜らなけりゃならねえと思うとちょっとな……」
勇者「?」
イシス勇者「まあ行けば分かるよ。ホラ。もう門が見えてきた」
180 = 1 :
――エジンベア・城門(兼関所)――
門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」
男「申請はしてきた。名は○○、居住区はリヴァプルフの235通りの35棟だ」
門番「割り銅は」
男「ここに」
門番「……――よし、通れ」
スタスタ…
勇者「おー、ああやって通るんだ」
ポルトガ勇者「こうやって見る分には普通の門番なんだがなぁ……」
勇者「ん?普通じゃない時もあるの?」
ポルトガ勇者「……気になるか?じゃあ行こうぜ」
勇者「?うん」
スタスタ
勇者「でもいいのかな、さっき見た感じだと銅?みたいなの差し出してなかった?僕ら何も持ってないけど」
イシス勇者「んー、いや。どの道僕らはエジンベアの人間じゃないから関係ないんじゃないかな……」
勇者「そうなの?」
イシス僧侶「ままま、行けば分かるよ」
門番「止まれ!」
ザッ
門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」
勇者「えっと……僕らエジンベアの人間じゃなくて……」
門番「何?」
勇者「少し入国させて頂きたいんですけれど」
門番「ハンッ!!」
勇者「えっ」
門番「……紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書などは」
勇者「あ、いえ。それも持っていなくて」
門番「…………」スゥゥゥゥゥゥゥ
勇者「ん?」
181 = 1 :
門番「ッッブハッッハ――――――――ン!!!!!!」
勇者「……」
門番「という事はなんだ貴様、馬の骨か!!田舎者の!!」
勇者「馬の骨て」
門番「うっす汚い格好して、どうりで田舎者の匂いがプンプンすると思ったわ!!!!」
勇者「……え。……え?」
門番「帰れ帰れ!!貴様のような田舎者が来る所ではない!!」
勇者「いやそんな、横暴な」
勇者「お願いします。なんとか通りたいんですが」
門番「じゃあ聞くが、貴様どこ出身だ」
勇者「僕?僕は……アリアハンですけど」
門番「うわっ、クソ田舎じゃん」
勇者「なっ!?」
門番「あれだろ?便所ってそこらで立ってやるんだろアリアハン」
勇者「しないよ!!」
門番「ルビス祭終わったらみんな急に裸族になるんだろアリアハン」
勇者「ならないよ!!」
門番「家は獣の糞尿で固めて作ってるんだろアリアハン」
勇者「木材だよ!!」
門番「駅馬車も半日に一回とかしか来ないんだろアリアハン」
勇者「えっ、き、馬車っ?」
門番「……え?」
勇者「……」
門番「…………まさか、駅馬車も無いの?」
勇者「……あ、あるし」
門番「……ほんと?」
勇者「……………………………嘘です」
門番「田舎者けって――――――ッッへへへェ――――――イ!!!!」
勇者「ち、ちくしょう!とおしてっ」
門番「ラメェー――――ここは田舎者は通さないシティでェーす」
勇者「くそぉっ……!!田舎が、アリアハンが何したっていうんだよ!!!」
勇者「いい所なんだよ!!!ちくしょう!空気美味しいんだよっ!ちくしょうっ」
門番「空気おいしいからって田舎には変わりありませぇーん」
門番「これだから田舎者は……教育受ける環境も整ってないんじゃないの?」
勇者「整ってるし!!!」
182 = 1 :
クルッ
勇者「はぁ……もういいです……出直します」
スタスタ
勇者(どうしよう……もうこの国嫌いになりそうだ)スタスタ
門番「……」
ダッ
門番「……」タッタッタ
勇者(でもここから入れないならどうしよう……何か皆策あるのかな)
勇者(というか皆なんで離れたところで見守ってるのさ!!……いやまあ門番があれならしかたないか)
門番「シティ浣腸」
ブソン!!!
勇者「ア――――――オ!!!!!!」
勇者「なんてことしやがる!!!!!」
門番「ホホホッ!!」シュタタタ
勇者「ちょっ、こら!!逃げるな!!!!お前ェッ!!!」ダッ
ザッ
門番「はいもうだめでーすここ国境で――――す!!!リアル国境で――――す!!!国境バーリア!!!」
勇者「なっ、ちょっと卑怯だろそれ!!!」
門番「入れるもんなら入ってみーろ!一緒に豚箱に入ることになるけどヌェ――――」
勇者「くっ……あっ、ぎ」プルプル
門番「ねえねえ田舎者」
勇者「なんすか!!!」
門番「ヴェロヴェロ」
門番「……」
勇者「……」
門番「……」
勇者「……」
門番「……ヴゥェア―――!!!!」
勇者「ぶん殴りてえ!!!!」
183 = 1 :
スタスタ
ザッ
勇者「……」
「「「「おかえり」」」」
勇者「おかえりじゃないよ!!!なんで皆来なかったのさ!!!!」
ポルトガ勇者「いやすまん、ちょっとマジで苦手なんだこの国の門番」
イシス僧侶「でもやっぱりダメそうだったねー。なんか尻にイタズラされてたし」
勇者「その言い方やめてもらえるかな」
イシス勇者「とりあえず、分かっただろう?この国の人たちって少し……その、他の国を見下す傾向にあるんだよ」
勇者「そういう問題以前のものもある気がするけど……よくわかったよ」
イシス魔法使い「でも、どうしようかしらね。こうなると門からはやっぱり無理そうよね」
勇者「紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書が要るって言ってたよ」
イシス戦士「むう……どれも簡単には用意はできんか」
イシス僧侶「イシス女王ちゃんに頼めば用意くらいは簡単にできるんだけどそれじゃ私らの身分バレちゃうしなあ」
イシス戦士「……そうだ。良い事を思いついた」
イシス魔法使い「っていうと?」
イシス戦士「エジンベアには契約した商船を迎え入れる専用の港があるだろう。そこから入るというのはどうだ」
イシス戦士「ここにはポルトガ勇者殿も居るし、なんとかポルトガから乗り込めば」
ポルトガ勇者「あー、わり。そりゃ無理だ」
イシス戦士「む……すまないな。少し我侭が過ぎた」
ポルトガ勇者「いやそういうワケじゃねえんだ。いい案だとは思うよ。だがよ……ポルトガは今危険だ」
勇者「ポルトガが?どうして?」
ポルトガ勇者「ホラ、この前のポルトガ領の港を譲渡した時から世界全てのポルトガ領港には国連の監査が常に港に張り付いてやがんだ」
勇者「!」
ポルトガ勇者「今じゃどの船も隅から隅まで調べられる。全員を見つからずにここまで運ぶのは無理だ」
イシス戦士「そうか……」
イシス勇者「でもそうなると…………裏口的なものを探すしかなくなる、かな?」
イシス僧侶「そりゃちょっとリスキーすぎじゃない?侵入が成功したら万々歳だけど、見つかったら全員暴かれるよ?」
イシス魔法使い「割符的な物を誰かから一時的に借りる、なんてどうかしら」
ポルトガ勇者「それもちょっと怖いぜ。一般人から金で借りても洩れる可能性が高いし、裏のそういう商売してる奴のツテもねえ」
「「「…………」」」
ポルトガ勇者「……八方塞がりか」
イシス勇者「でもまだ考えれば何か穴がありそうだよ」
イシス僧侶「とにかく皆でもっと意見を出し合おうか」
スー勇者「はいっ」
勇者「ん?どしたのスーちゃん」
スー勇者「あの、あそこ……あの道通る事、できればいいです?」
勇者「あの道って、さっきの門番の?うん。そうなんだよ。でもね」
スー勇者「だったらできるです」
勇者「……――え?」
スー勇者「あの道、通る事。多分できるです」
184 = 1 :
ポルトガ勇者「……ちなみにあの門番殺すってのはなしだぞスーの字」
スー勇者「んもー!違うです!ポルトガさんはもう!私をすぐからかうです!」プンスコ
ポルトガ勇者「わりいわりい、でもどうやるんだよ?あんなの簡単に」
ゴソッ
ポルトガ勇者「抜けられ――……」
カサ…
スー勇者「これを使えば、多分あそこを通れるです」
イシス戦士「……?」
イシス僧侶「……ねえスー勇者ちゃん」
ポルトガ勇者「なんだ?その葉っぱ」
勇者「ただの葉っぱに見えるけど……」
スー勇者「えっと……もう試した方が、早いと思うですので」
スッ
スー勇者「あむ」
イシス僧侶「え?食べるの?」
フッ……
イシス戦士「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
勇者「……――えっ」
「「「消えた!!!?」」」
勇者「スーちゃん!?スーちゃん!!ス、スーちゃあん!!?」ワタワタワタワタ
イシス僧侶「ちょっと勇者くん取り乱しすぎ!!」
イシス勇者「スー勇者ちゃん!?どこへ――……」
185 = 1 :
「大丈夫です、ここにいるですよ」
「「「!!!」」」
ポルトガ勇者「……マジ?マジかこれ」
イシス勇者「噂には聞いた事あったけど……じゃあ、さっきスー勇者ちゃんが食べたのって」
「はい。“きえさり草”です」
イシス魔法使い「初めて見るけど、こんな綺麗に消えちゃうものなのね……」
勇者「えっと、この、この辺りから声が」
サワッ
「ひぁぅっ……ん」
勇者「ンッ」
「ご、ご主人様……だ、だめです、こんな……」
勇者「アッ、エッ……すみませんでした。すみませんでした……土下座はこっちの方向で合ってる?」
イシス勇者「もっと命乞いするみたいにしなきゃだよね」
勇者「ハイ」
「きえさり草は、私の村の近くでたくさんとれるです……ただ、食べると頭痛がするので、おすすめはできないです」
ポルトガ勇者「いやいや、んなもん何のそのだって。食えばいいのか?」
「はい。噛んで噛んで、そのお汁を飲めば3瞬くらいで、消えるです」
「草の新鮮さにもよるですが、私のカバンの中のきえさり草は、半々刻くらい姿を消せるです」
イシス僧侶「それで全然十分よ!スー勇者ちゃんやりおりますな!」
「私のカバンに、あと10枚くらい入ってると思うです。みなさんどうぞ食べてくださいです」
イシス魔法使い「善は急げね!……それじゃちょっとカバン失礼するわね」
イシス戦士「これは衣服も消えるのか?」
「はい。身に着けてるものは生き物でないかぎり、消えるです」
「ぼくもたべたよ!」
勇者「スラおもいつの間に……よし、それじゃ食べようか皆!」
ぱくり
……フッ……
……。
……。
……。
「「「まずぅっ……」」」
「好き嫌いは、めっ、です」
186 = 1 :
・
…
……
…………
門番「……」
門番「ふぁあ……あふ」
門番「……」
門番「……」
ズムンッ!!
門番「ア――――――オ!!!!!!」
ドサァッ!
門番「け、ケツが……!!くっ!!?……ッ、!!!?」キョロキョロ
シーン…
門番「……!?……!?」
……………
……
…
・
スタスタ
勇者「アリアハンを馬鹿にした報いだ……痔になれ」
ポルトガ勇者「気持ちはわかるがちょっと落ち着け」
イシス僧侶「ってか、これ皆ちゃんと居る?」
イシス魔法使い「私はイシス勇者様とイシス戦士と手を繋いでいるけど……」
イシス戦士「私はスー勇者と手を繋いでいる」
スー勇者「はい!」
イシス勇者「僕もちゃんと居るから……うん。大丈夫みたいだね」
勇者「ん、皆離れないように歩こう」
ポルトガ勇者「……お、ようやく門を抜けるぜ」
ザッ
――エジンベア・内部――
勇者「おおおおお……!」
ガヤガヤ
勇者「すごい……!煌びやかで綺麗な街が……」
イシス僧侶「華やかだよねー。イシスも負けちゃいないけど」
187 = 1 :
ガヤガヤ
勇者「うおお、人多いね?凄く賑やか」
ポルトガ勇者「ああ。はぐれんなよ?スーの字」
スー勇者「もう!子供じゃないです!」
イシス僧侶「きえさり草食べてからどのくらい時間たってるっけ?」
イシス魔法使い「まだ半々刻はいかないと思うけど……少し不安ね」
イシス戦士「それまでこの手繋ぎ状態を確保できていればいいが」
イシス勇者「じゃあ、もし離れ離れになった時の目印の場所でも決めておこうか?」
勇者「そうだね、じゃあ――……」
ザワッ
勇者「ん?」
「なんだなんだ?」
「おい、道あけろ」
「行列が通るぞ、おい、どけって」
ゾロゾロゾロ
勇者「えっ、あっ、ちょっ……あっ!!?」
ドンッ
「ん?今誰か当たったか?」
勇者「やばっ――……!!」
パッ
ポルトガ勇者「ッ!!おい!勇者!」
イシス勇者「勇者くん!!みんなっ!!」
ゾロゾロゾロゾロ
勇者「うわっ、ちょっと!!」
勇者(なんでこんなに急に人が……!!流されっ)
ガシッ
スー勇者「ご主人様!」
勇者「ッ!スーちゃん!」
188 = 1 :
ガヤガヤ…
「なんだこの人だかり」
「なんでも、エジンベア勇者様が直々に……」
「マジかよそりゃ!」
「どっかの軍の行列も通るし、やってられんな……この国に土足で上がりこみおって」
「最近急に兵隊を多く見るようになったわね」
「……世界のどこで何が起きようとしてんだか、考えたくもないな」
…………
……
…
・
――路地裏――
ザワザワ…
スー勇者「はーっ、はーっ……」
勇者「スーちゃん……良かった、はぐれないで」
スー勇者「でも、他の皆さん、はぐれてしまったです」
勇者「うん……」
ヒョコッ
ザワザワ…
勇者「……結局、なんで急にこんな大勢の人が流れて来たんだろ……うっ……!?」
サマンオサ兵「……」ガシャンガシャンッ
シュバッ!!
勇者「~~~~っ……!!!」
スー勇者「…………サマンオサ兵……!!!!」
勇者「なんでエジンベアにこんな大勢……ッ!」
スゥッ…
スー勇者「あっ、効力が」
勇者「ん?あ……本当だ、消えた」
スラお「ばかゆーしゃがいきなりでてきた!」
勇者「るっさい」
スー勇者「……ご主人様」
ギュッ
スー勇者「離れないように、お願いしますです」
勇者「はは、うん。ありがと」
勇者「…………みんな、無事かな……」
スー勇者「皆は、見つかってもどうにかなると思うです。でもご主人様は」
勇者「……だね」
スクッ
勇者「とりあえず、ここをちょっと移動しよう……サマンオサの兵が多くなってきた」
スー勇者「はい……」
189 = 1 :
勇者「まずは、じゃあ……大通りの反対側……この道のあっちの方、行こう」
スー勇者「はいっ」
…………
ゾロゾロ
ピタッ
「……」
エジンベア兵「?どうかされましたか?」
「いえ、ちょっと……気になる事が」
エジンベア兵「気になる事?」
「この先は一体何が?」
エジンベア兵「この先は細い裏通りです。居住区ですので、ちょっと入り組んでいますね」
「ん……そうですか」
ダッ
タッタッタ
「少し離れます!申し訳ありません!」
エジンベア兵「え?あっ!?あの」
「そちらには後で参ります!上の方々にはそうお伝え下さい!」
エジンベア兵「と、申されましても……ぐむ……了解、しました」
「ありがとうございますっ!」
タッタッタ…
エジンベア兵「……まったく」
エジンベア兵2「……行かせていいのか?アレ」
エジンベア兵「ああ、ちょっとくらいならば平気だろう。予定も終わった後だし」
エジンベア兵2「しっかし、なんでこんな所に」
エジンベア兵「……ダーマの神官でもあるんだ。何かルビス様が御導きになったんじゃないのか」
エジンベア兵2「ははっ……本当にダーマ勇者様もルビス様も呑気なもんだ」
――――――――
タッタッタ
ダーマ勇者(うーん……気のせいかな)
ダーマ勇者(こっちから、魔物の気配がする)
190 = 1 :
今日はおしまいです
191 :
おつです
192 :
乙でございます
193 :
―――――――――――
スタスタ…
勇者「……結構歩いたね」
スー勇者「はい。もう大通りから、離れたです」
勇者「人の気配も少なくなってきたし……でも」
――貧困街――
ビュォオォオ……
乞食「……」
娼婦「……」
子供「……」
勇者「……表とは、えらい違いだ」
娼婦「ねえ、そこのアンタ!どう?アタシを買わない?」
勇者「いえ、すみません。大丈夫です……スーちゃん、行こう」
スー勇者「はい」
スタスタ…
勇者「んー……見た感じ警備兵も居ないし店も無さそうだ。少し物騒な輩もいる」
勇者(何人か僕らの後を付けようとしてるのも居るな……)
スー勇者「です。早くどこかに抜けましょうです」
勇者「だね」
ピタ
スー勇者「あれ?」
勇者「どしたの?」
スー勇者「いえ……こっちの空気の流れが、速くて」
スタスタ
スー勇者「多分、開けた場所があるです」
勇者「ほんと?じゃあそっちに行こう」
スタスタ
スラお「んー」モゾッ
スー勇者「あっ、だめですスラさん出てきちゃ」
スラお「……ゆーしゃのばか」
勇者「いきなり何さ」
スラお「だって……あれ?」
勇者「え?どしたの」
スラお「んーん……ちがった」
勇者「??」
194 = 1 :
ピタッ!
勇者「……!スーちゃん!隠れて!」ヒソッ
スー勇者「え?わわっ」
ザッ
スー勇者「どうしたです?」
勇者「あれ。ほら、人がたくさん居る」
スー勇者「……――!!」
――貧困街・広場――
勇者「しかも兵士が何人か混じってる……くそ、こっちもダメか」
スー勇者「でもなんだか様子がおかしいです」
兵士達「「「……」」」
ローブを身に纏った集団「「「……」」」
スー勇者「やけに静かで……」
勇者「ん?――あれ、何だろう。中央にでかい荷物がやたらと積まれてる」
ガラガラガラ
「はやくしろっ!ここに置け!」
勇者「!」
ガラン
「よし、次はあと一台……」
勇者「……あれは」
ギシ…
勇者(……――鉄、だよな。熱加工される前の)
ガラガラガラガラ
勇者「お、もう一台……ンッ!!」
スー勇者「ひうっ!」
スラお「ぐゆっ!」
プーン
勇者(くっっっさ!!!臭いくさい!!何運んでるんだよ!!!)
「ぐっ……早く布で覆え!」
バサァッ
「よし。これで全部だな」
勇者(なんなんだこの集団)
スー勇者「……――――エジンベアの、大臣さん」
勇者「え?」
スー勇者「あの人、エジンベアの大臣さんです」
勇者「!!?」
195 = 1 :
エジンベア大臣「揃ったか?では運べ!」
ガラガラ
勇者「エジンベアの大臣がこんな所で何を運んでるんだ……?」
勇者(ヤバイ取引現場とかじゃないよね、命狙われたりなんか)キョロキョロ
…………――――。
勇者「ん?」
勇者「あれ?……スーちゃん、何か言った?」
スー勇者「いえ、私は何も……でも」
勇者「でも?」
スー勇者「……――なんでも、ないです」
勇者「?」
ザッ
勇者「とりあえずあの集団ももう見えなくなるし、そうしたら動こうか」
スー勇者「はい、ご主人様」
「あの」
勇者・スー勇者「「ハオッ!!!?」」
ザザァッ!!
勇者「いえいえいえいえ僕は何も見てませんよぉ!!?」
「え?何をですか?」
勇者「え?」
「私はちょっとあなた達に用があって」
勇者「な、なんです?」
スー勇者「……――っ!!ダ……」ハッ
「えっと……おほんっ」
ダーマ勇者「私は国連認定勇者資格保有者の一人ダーマ勇者です。少し聴きたい事があります」
スー勇者「ダーマさん……!!」
勇者「 」
勇者「 こ、くれん」
勇者(詰んだ)
196 = 1 :
勇者「ど、どうされました?」
スッ…
勇者(顔見知りの可能性もあるしスーちゃんを隠さないと……)
スー勇者(ご主人様……)
ダーマ勇者「いえ」
ダーマ勇者「……魔物の気配がするのです。貴方達の方から」
勇者(ダイレクトに詰んだよ)だうー
ダーマ勇者「私の家系は代々ダーマに深く繋がっていて、私も魔族の気配に敏感な特異体質を持って生まれました」
ダーマ勇者「その私の血が騒いでいるんです。魔物の気配に」
勇者「それは、えっと」
ジャキン
勇者「!?」
ダーマ勇者「私も手荒な真似はしたくありません。もし貴方が魔物の手先ならば優しく浄化するように手助けします」
勇者(それってどの道滅ぼすんですよね)
ダーマ勇者「なぜ、魔族の気配がするか……教えてくれますか?」
勇者(ど、どうする!?逃げるにも袋小路に迷い込んだらそれこそアウトだ)
勇者(僕が魔族だって事を悟らせない何か上手い言い訳は……!)
もぞっ
スラお「こんにちは!」
ダーマ勇者「えっ」
勇者「!!!」
スラお「こんにちは!おねーさん!」
ダーマ勇者「えっ?えっ」
勇者(ナイスだスラおおおおおおおおおおおおお)
ザッ
勇者「こ、この子は違うんです!!見逃してやってください!」
スー勇者「くださいっ!」
スラお「んー?」
スー勇者「お話、あわせてくださいスラさんっ!」ヒソヒソ
ダーマ勇者「えっ、スライム……喋って、えぇっ?」
勇者「こ、この子は、ええと、その……亡き父が僕らが子供の頃に拾ってきた孤児のスライムで!」
スラお「そうだそうだ」
勇者「僕らは子供の頃から兄弟のように、家族として接し続けてきたんです……!心が通じ合って言葉も覚えてくれた!」
スー勇者「そうですそうです」
勇者「お願いです、勇者様!こいつは……こいつは見逃してください……!!」
スラお・スー勇者「「そうですだそうですだ」」
勇者(合いの手適当すぎりゅう)
197 = 1 :
ダーマ勇者「……」
勇者(……ダメか?)
ブワッ
ダーマ勇者「っ……!なんて、ステキなっ……!」
勇者(大丈夫そうだ)
ダーマ勇者「すいませっ……そうとは知らず、剣なんて抜いてっ……」
勇者「いえいえいえ!勇者の方ですし当然の対応をされたまでです!悪いのは街の中にこいつを入れた僕らですし!」
スラお「みたかったんだもん!」
ダーマ勇者「お願いを叶える為にっ……!」ぶわっ
勇者(この人大丈夫か……いい人すぎないか)
勇者「というわけで、もう二度と立ち入りませんのでこの場は見逃してください!」
ダーマ勇者「どうぞどうぞ、引き止めてしまって申し訳ありませんでした……!」
勇者「ありがとうございます!二人共!行こう!」
スー勇者「はいっ!」
スラお「めーれーするな!」
ガシッ
勇者「それでは失礼しますッ!!」
ドヒュンッ!!
タッタッタ……
ダーマ勇者「はー……なんてステキな話だったのかしら」
クルッ
ダーマ勇者「さて」
スタスタ
ダーマ勇者(早く戻らなきゃ。エジンベア王にまだお話を伺っていないし……)
ピタ
ダーマ勇者「……」
ダーマ勇者(でも、変ね)
クルッ
シーン……
ダーマ勇者(…………スライムが、あんな大きな禍々しい気配を出せるのかしら)
…………
……
…
・
198 = 1 :
・
…
……
…………
勇者「死んだかと思ったわ」
――倉庫棟――
スタスタ
勇者「本当、本当寿命縮んだ」
スー勇者「すみません、ダーマさんに気付かないでした……」
勇者「スーちゃんが謝る事ないじゃないさ。ってかやっぱり顔見知りだったんだね」
スー勇者「はい。凄く良い人です」
勇者「知ってる」
スタスタ
勇者「しっかしもう随分歩いたね。皆とはぐれてから結構経っちゃったけれど」
スー勇者「ここは……なんでしょう」
勇者「倉庫が並んでるね。そういやスーちゃんはエジンベアの道知らないの?」
スー勇者「……ごめんなさい」
勇者「……あっ」
勇者「いや、本当謝らないで。こっちこそ……無神経だった。ごめん」
スー勇者「い、いえ!」
勇者「とにかく……ん?」
ザワザワ…
スー勇者「急に人気が多くなってきたですね」
スラお「なんかへんなにおいするっ」
勇者「…………――港だ」
――契約商船専用港――
ザァン……
ザワザワ
勇者「ほー」
勇者(壁が一部分だけ取っ払われていて、露出した海面に足場がいくつも飛び出してる)
勇者(そこに商船が錨をそれぞれ下ろして……なんだか、外国に来たって感じられる風景だなあ)
勇者「って、あれっ」
スー勇者「え?」
勇者「ほら、港の奥の方」
スー勇者「……あ!」
――エジンベア城・本城――
勇者「あれ本城だよね!?おおー、もうそんな所まで来ちゃったんだ」
199 = 1 :
スー勇者「たくさん歩いたですからね……わあ、大きいです」
勇者「だねえ……豪奢な造りというか、なんというか。でも城に囲まれてる街の中にまた城があるって変な感じだね」
スラお「ねえねえ!ちかくいこうちかく!」
勇者「っし――――!!!!静かにスラお!!結構今人多いんだってば!!」ヒソヒソ!!
スラお「むー」
スー勇者「スラさん、良い子しましょう?」
スラお「はい」ヒソヒソ
勇者「さて……じゃあ、お城の方に行きますかね」
…………
ガヤガヤ…
勇者「……んー」
スー勇者「どうしたです?」
勇者「ううん。正直お城入るのってきえさり草が必要になるかな、って思ったんだけど」
スー勇者「まだ余ってるですよ?」
勇者「や……その必要は。ホラ。なさそうだよ」
ガヤガヤ
スー勇者「です。人がいっぱい行き来してるです」
勇者「門兵も居ないみたいだし……僥倖ってところかなあ」
――エジンベア城・内部――
キラキラキラ……
勇者・スー勇者「「ほわーっ……!」」
勇者「なんだこの、豪奢さは……すげー」
スー勇者「全部がキラキラしてるです……!」
「なんだ、あいつら」
「みすぼらしい格好して、キョロキョロ辺りを見回して……」
勇者「う……進もうかスーちゃん」
スー勇者「はいです」
スタスタ
勇者「んー、でもどうしようか。簡単に城に入れたのはいいけれど何も手がかりが無い状態だし」
スー勇者「そうですね……」
勇者「まずは誰かに聴いてみたいところでもあるけれど」チラッ
「……」ジロジロ
「……」ジロジロ
「……」ジロジロ
勇者「……ちょっと、無理そうかな」
スー勇者「きえさり草、使うです?」
勇者「最終的に頼る事になっちゃいそうかなあ」
200 = 1 :
コロコロ
勇者「……――ん?」
ゴロ…
勇者「なんだこれ、リンゴ?」
ヒョイ
勇者「なんでいきなり」
「あら、ごめんあそばせ」
勇者「え?」
「それあたしのものなの」
勇者「あ、そうですか。すみません」
スッ
勇者「どうぞ」
勇者(なんでリンゴなんかこんな高貴そうな人が……)
「……」
ガシッ
勇者「へっ」
「……やっぱりあなた」
勇者「えっ?えっ」
勇者(え、なんだ?密入国がバレた!?それとも僕が魔族だって――……)
「田舎者ね!」
勇者「……――はい?」
「そこの貴女もそうだわ!田舎者よね貴方達!」
勇者「え、まあ……」
勇者(いきなり何なんだこの人……)
クイクイ
勇者「ん?どしたのスーちゃん」
スー勇者「ま、まわりが……」
勇者「え?……!?」
「「「……」」」
勇者(な、なんだなんだ?皆が僕らを睨みつけてる)
勇者(さっきの視線とは違う、なんていうか……)
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