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    元スレ右京「346プロダクション?」

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    201 = 1 :

    紗枝「さっきのお方、親御さんの話題になった途端静かー…になりましたなぁ」

    右京「君のように親御さんを手玉に取ることが出来る方もいれば、そうでもない方もいるということです」

    紗枝「…エリートにはエリートなりの悩みがある言うことどすか?」

    右京「ええ。そういうことです」

    友紀「…」

    右京「…携帯電話の電源を、切っていた可能性があります」

    友紀「え?」

    右京「腕時計はしていませんでした。そしてここの部屋の時計はあの棚に置いてある小さい電波時計のみです」

    友紀「ん…まあ。確かに見にくいけど…」

    右京「ええ、見にくいんですよ。その上彼女が座っていた位置からは死角と言ってもいい程見えない…。しかし彼女はその見にくい時計を目を凝らしてまで見ていた。携帯電話を見れば済む話なんですがねぇ」

    紗枝「…そういえば、あのお方、右京はんの腕時計をやけにチラチラ見てましたなぁ…」

    右京「ええ。それほど時間を気にするのならば尚更、携帯電話を見ればいいだけの話なんですよ」

    友紀「…持ってないとか?」

    右京「あれくらいの年齢の方なら持っておいておかしくはありません。その上彼女はエリートとも呼ばれる学校の生徒。連絡手段の一つとして持っていても不思議ではない…」

    友紀「…時間を気にしてるけど、携帯は見ない…?」

    紗枝「…?」

    右京「分かりませんか?」

    友紀「…うーん…」

    早苗「考えられるのは、塾…もしくは習い事をサボってまで来た…」

    紗枝「!」

    友紀「うわビックリしたぁ!!」

    202 = 1 :

    早苗「暇?」

    友紀「暇?じゃないですよ。どうしたんですかいきなり…」

    早苗「だって見覚えのある子がいたんだもん。気になってしょーがないわ」

    紗枝「…片桐はんどすか?」

    早苗「そうよ。瑞樹ちゃんが余計な事言いまくった早苗ちゃんよ」

    友紀「…あの雑誌見てたんですね…」

    早苗「…で?アタシの推測は正解?」

    右京「正解かどうかは分かりませんが、僕と同じ考えですね」

    早苗「そ」

    紗枝「…つまりは、お嬢様校やから習い事していてもおかしない…。それをサボってここにやって来た、と…」

    右京「そんなところでしょうかねぇ」

    友紀「…え…だったら結構ヤバいんじゃ…」

    早苗「そうね。今頃サボった理由考えてるわよ。あの親からバンバン電話かかってきてただろうし…」

    友紀「あー…だから電源切ってた…」

    早苗「…にしてもよ。今度は何やらかすつもり?」

    右京「はいぃ?」

    早苗「杉下係長はね、何でもかんでも首突っ込み過ぎなのよ。絶対苦情来るわよ」

    右京「おやおや…僕はまだ何かをするとは言ってませんよ?」

    早苗「未来が見えてんのよ。何の理由も無しにあんな事しないでしょ」

    紗枝「あのー…何があったかは置いといて…背景が…」

    友紀「え?…あー…」

    早苗「…」

    203 = 1 :

    幸子「…」


    幸子「…」カチ


    幸子「…!」

    『着信 塾 3件』
    『着信 母 24件』
    『メール 母 37件』

    幸子「…」ガタガタ

    『♪』

    幸子「ひっ………も、もしもし…」ピ

    『幸子!!貴方今何処にいるの!!?』

    幸子「あ、あの…ちょっと…お腹が痛くて…」

    『だからってどうして電話に出ないの!!お母さん先生から連絡が来てビックリしたのよ!!?』

    幸子「は、はい…すいません…」

    『今すぐ先生の所に行って謝ってきなさい!!今日は塾で出来なかった分家庭教師にやっていただきますからね!!』

    幸子「…はい…」

    『そういえば…貴方まさか…アイドルになろうだなんて思って…346プロダクションに行ったんじゃないでしょうね…?』

    幸子「い、いえ…」

    『そうよね。あんな危ない仕事、貴方には相応しくないから』

    幸子「…」

    『聞いてるの!?』

    幸子「は、はいっ!」

    『貴方はちゃんと勉強して、一流企業に勤めて、エリートとしての人生を歩んで…』

    幸子「…はい…」

    204 = 1 :

    紗枝「…そうどすか」

    友紀「まあ、何というか…アタシらには分からない悩みだよね」

    紗枝「ウチも習い事はぎょうさんやっとりましたが、そない強制された覚えもありまへんなぁ…」

    早苗「行き過ぎた教育。…ほら、たまにあるじゃない。頭の良い筈だった子がドローン飛ばすとか…」

    友紀「あー…」

    早苗「やり過ぎは良くないのよ。やらせなさ過ぎも良くないけど」

    友紀「なんでアタシ見て言うんですか…」

    紗枝「…ほんで?右京はんはあの方をここに入れるつもりどすか?」

    右京「出来ることなら…」

    紗枝「ウチは反対どすなぁ」

    友紀「!」

    早苗「…」

    右京「…と、言いますと?」

    紗枝「実の親も納得させられへんような方が他人を納得させられるとは到底思えまへん」

    右京「…」

    紗枝「それにあの態度。ただ強がってる風にしか見えまへん。そんなメッキ…すぐ剥がれますえ?」

    右京「僕は何も、彼女をそのままアイドルにするとは言っていませんよ?」

    紗枝「…?」

    早苗「…まさか…」

    右京「…いずれ、彼女の親にも会うことになるでしょうから」

    早苗「…ハァ…」

    友紀「…でもさ、右京さん」

    右京「どうしましたか?」

    友紀「あの子って、頭良いんでしょ?未成年なら親の許可がいるって分かってる筈じゃ…」

    早苗「…分からない?」

    友紀「え?」

    早苗「…助けを求めてんのよ。誰でもいいから」

    紗枝「助け、言うよりは…安らぎ…そんなところかもしれまへんなぁ」

    右京「その言い方の方が、正しいかもしれませんねぇ」

    早苗「…いずれにしても、あの子にとってアイドル云々はどうでもいいのよ。虐待されてるとかなら児童相談所とかに行くかもしれないけど、そうでもないみたいだし」

    友紀「…藁にもすがる思いって事ですか?」

    早苗「…ま、そんなところね…」

    友紀「…」

    紗枝「…」

    右京「…」

    205 = 1 :

    早苗「…で、よ」

    右京「はいぃ?」

    早苗「トボけんじゃないわよ。杉下係長も見たでしょ?あの母親がはいそうですか分かりましたで済ませる人に見える?」

    右京「見えませんねぇ」

    早苗「アタシらは警察でも公的機関の人間でもないのよ。普通の…まあ普通じゃないけど、会社の、社員と、タレント」

    紗枝「…」

    早苗「そんな人間が何の関係もない人に出来ることなんて何も無いのよ。そもそもあの子に実害でも出てんの?」

    友紀「…むしろ、アタシらのが有害なんじゃ…」

    早苗「そう。世間一般で見ればアタシらのがよっぽど有害。こんな人生棒に振るかもしれない職業なんてそうそうやらせるわけにはいかないのよ」

    紗枝「そうどすなぁ…」

    右京「…そうですねぇ」

    早苗「…でもまあ、その救いたいって優しさは認めてあげたいけどね…」

    右京「お心遣いどうもありがとう。…」

    友紀「…どしたの?何か納得いってないって顔だけど…」

    右京「…ええ。親を恐れてる。果たしてそれだけが塾を無断で休んだ理由になるのか…」

    早苗「…行きたくない理由が、他にもあるってこと?」

    右京「ええ。僕はそう考えています」

    紗枝「…はい!この話はここでやめまひょ!」パン

    早苗「…」

    紗枝「推測するんはええと思います。せやけどもうすぐお仕事の時間どすえ?」

    友紀「…あ」

    右京「…そのようですねぇ」バッ

    友紀「ん…まあ、じゃあ、行こっか。早苗さん。…えっと、何か…ありがとう…ございました…?」

    早苗「何もしてないし変な気ィ使ってんじゃないわよ」

    206 = 1 :

    「…」

    あの時、右京さんが考えてた事って、何だろう。

    幸子ちゃんが塾に行かなかった理由。

    親だけじゃなくて、他にもいる。

    「…」

    アタシとは180°違う人生を歩んでいるあの子。

    あの子にしか分からない悩み。

    「…」

    でも、右京さんは見破ってるのかもしれない。

    「…」

    ただ、それをこの人が教えてくれるだろうか。

    …聞いたら、教えてくれるのかな。

    「…」

    …でも、聞いてどうするの?

    聞いたら、アタシは何とかしようとするの?

    自分の人生すらまだ上手くやっていないアタシが、他の人をどうにか出来るの?

    「…難しいなあ」

    「どうされたんどすか?」

    「ん…なんでもない」

    紗枝ちゃんから逃げるように窓に顔をやる。

    こういう時、アタシはすぐ顔に出るから。

    …だからかな。

    「…!!?」

    この時、アタシは決して見てはいけないものを見てしまった。

    「右京さん!!止めて!!」

    それと同時に、本能的にアタシの口は動いた。

    「…!」

    アタシの言葉を聞いた瞬間、右京さんは急ブレーキをかけた。

    …後ろの車に野次を飛ばされていたけど。

    「…!」ガチャッ

    この時のアタシは、無我夢中だった。

    シートベルトを強引に外し、ドアを開け、「そこ」に向かって一直線に走っていった。

    「何してるの!!やめなさい!!」

    「!」
    「…逃げるよ!」

    これが全く知らない赤の他人だったら、まだ余裕があっただろうけど。

    「そこ」にいたのが赤の他人じゃなかったからか、アタシには逃げる彼女達を追いかける余裕は無かった。

    だって、あの子達が寄ってたかっていじめてたのは…。

    「さ、幸子ちゃん!大丈夫!?」

    …他ならない、さっきまで元気に自分と話してた幸子ちゃんだったから。

    207 = 1 :

    「…」

    急いで時間を確認する。

    …正直、そんなに余裕は無い。

    だけど、この子を一人にしておく事も出来ない。

    「幸子ちゃん!」

    怪我をしている様子は無い。

    けど、彼女の目は虚ろで、アタシの問いかけには返事をしない。

    これだ。

    これが、右京さんの恐れていたことだったんだ。

    この子が塾をサボった理由。

    親への恐怖。

    そして、同じ塾生からの、陰湿ないじめ。

    「輿水さん!返事をして下さい!輿水さん!」

    「…う、右京さん…」

    そして、これまで見たことのない程焦っている右京さん。

    彼女がどれ程マズい状態なのか、それだけで理解出来る。

    「…あ…は、はい。わ、私…でも、お金、ありません…」

    「…!?」

    「…輿水さん!!」

    「…!は、はい!?…あ、杉下さん…」

    208 = 1 :

    …この時のアタシ達の顔は、どれだけ酷かったんだろう。

    「…」

    紗枝ちゃんですら、幸子ちゃんをいじめていたあの子達を嫌悪感をあらわにした目で睨みつけている。

    「ど、どうしたんですか…そんな3人で…」

    そして全く意識の無かった幸子ちゃん。

    アタシ達が来たことでようやく我に返ったようだけど。

    …何なの、これ…。

    「…幸子ちゃん…」

    何なの、これ。

    「そ、そんな泣きそうな顔して…何があったんですか…」

    親に怯え、同級生に怯え。

    いったいこの子が、何をしたっていうの…?

    この子に、いつ安らぎが訪れるっていうの?

    「…!」

    この時のアタシが出来ること。

    「ど、どうしたんですか…姫川さん。全く仕方ないですね!」

    それは精一杯幸子ちゃんを抱き締める事だけだった。

    そして、この時のアタシはまだ気がついていなかった。

    「…」

    瑞樹さんが言っていた、あの言葉。

    『杉下右京の正義は、時に暴走する』

    今からアタシは知ることになる。

    杉下右京という人間の、凄まじいまでの正義感を。

    「…」

    弱者を守るためなら、例え何をしてでも止める、その生き様を。

    「…!!」

    第六話 終

    209 :

    アイマスの方あんま知らんけど右京さんの話し方完璧すぎるんだろ乙

    210 = 196 :

    おつ

    211 :


    んあー次回に続くか、楽しみじゃ

    212 :

    乙、右京さんの再現度高すぎ

    213 :


    これからぷるぷる震える右京さんが見れるのか

    214 :

    おつ
    続きが気になるぅー

    215 :

    右京さんのプルプル期待

    216 :

    乙!
    右京が守るのは弱者じゃなくてルールだと思うがどう転ぶか

    217 :

    たぶんプルプルシーンが来たらプルプルだけのレス(合いの手)がある

    218 :

    輿水ってことを考えると、右京さんが幸子をプロデュースすることは必然だったのかもしれん

    219 :

    早苗さんまさかの角田課長ポジw
    意外としっくりきてるのがまた面白いw

    220 :

    毎回コーヒー…酒を集りに来る早苗さんか

    221 :

    大河内春樹首席監察官ポジは一体誰になるんだろうか
    公式でガチの人だからなぁ…

    222 :

    ラムネポリポリさんか
    パンフゴフゴならいるんだけどなあ

    223 :

    これは「恥を知りなさい!(プルプル)」が来る

    224 :

    早苗「…あー…今日も疲れたわぁ…」

    『♪』

    早苗「?…瑞樹ちゃんかしら……げっ…」

    『杉下係長』

    早苗「…何気に初めて電話が来たわね……もしもし?」pi


    早苗「あー…うん。お疲れ様。そっちはどうだった?」


    早苗「あ、そ。まあ上手くやれたんなら良いわ」


    早苗「で、何よ。そんな事でかけてくるような人間じゃないでしょ」


    早苗「…え、まあ…そういう知り合い?…それならいるけど…」


    早苗「…会いたいって…今何時だと思ってんのよ」


    早苗「…どうせロクでもない事に首突っ込んだんでしょ。嫌よ。巻き込まれたくないし」


    早苗「…それに、杉下係長が何をしようとしてるか、なんとなく分かるわよ」


    早苗「やめときなさい。ホント」


    早苗「…………いや、アタシが言って止まるならもう止まってるわよね」


    早苗「とりあえず何があったのか、話してもらうわよ。そっちの奢りで」


    早苗「ん。はい」pi

    225 = 1 :

    早苗「…あー…ねぇ」

    「はい?」

    早苗「プロデューサー君に伝えといて。今日は直帰だからって」

    「良いですけど…そろそろ連絡先交換しといて下さいよ」

    早苗「だって過保護過ぎるんだもん。目つき悪い癖にアンバランス過ぎでしょあの子」

    「まあ、見た目は確かに怖いですけど…良い人じゃないですか」

    早苗「そうだけどね。あの子前にすると見下げられる感じがしてヤなのよ。背めちゃくちゃ高いし」

    「それで?…あの万年係長からは何て連絡があったんですか?」

    早苗「さあ…ね。聞いてたの?」

    「…ちょっとだけですけど」

    早苗「なら忘れなさい。もし会社の人間に告げ口したら即外してもらうから」

    「…えっ!?シメるとかじゃなくて!?」

    早苗「何か問題でもある?」

    「いや、まあ…言いませんけど…どうしてあんなおじさんに?」

    早苗「変に勘繰るんじゃないわよ。そういう関係でもないし」

    「…まあ、私は早苗さんのスケジュール管理が仕事ですから。その後はどうもしませんけど…」

    早苗「勘繰るなっつの」ペシ

    226 = 1 :

    「…」


    「…あの子ったら…一体何処に…」


    「…」


    「…いえ、そんな筈はないわ。だってあの子はちゃんと成績トップなんだもの」


    「この世は一番頭の良い子こそが一番偉いのよ。だからきっともう…」


    「…そうよ。あんな不良達は幸子に相応しくない」


    「だから、もっと勉強して、偉くなって…そうすればきっと…」


    「…」

    『PM9:00』

    「もう家庭教師が来る時間じゃない…。一体何をやっているのよ…」

    『すいません』ピンポーン

    「…?はーい。今出ますねー…」

    227 = 1 :

    『夜分遅くに申し訳ありません』

    「…?失礼ですが、どなたですか?」

    『ああ、申し遅れました。私特別臨時家庭教師の杉山と申します。こちら輿水さんのお宅で間違いございませんか?』

    「まあ!それはそれは申し訳ありません…はい!今開けますので…あ。でも…今幸子が…」

    『ええ。そのことも兼ねてお話を…』

    「?……あら、幸子!!貴方何処を…!」

    『まあまあ。今回は少しお話をしたいだけですので…』

    「…分かりました。とりあえず上がってください…」ガチャ



    「どうもありがとうございます。それでは輿水さん。参りましょう」

    幸子「…はい」

    228 = 1 :

    「幸子…貴方今日だけでどれだけ迷惑を…」

    「輿水さんのお母さん。実はですねぇ。今回彼女がこうなったのには理由があるんですよ」

    「…?」

    「ええ、僕がここに来る途中、ご老人をお世話している彼女を見ましてねぇ…」

    「…あら。幸子。本当なの?」

    幸子「…は、はい…」

    「そのご老人の方に尋ねたところ、腰を痛めて道端でしゃがんでいたところを彼女に介抱してもらっていたと。その上荷物を持って遠い家まで運んでもらえたと仰っておりました…それはそれはご機嫌な様子で…」

    「…でも、それだけでは塾をサボったり家に帰らない理由にはなりませんね…」

    「ええ。何にしても無断で欠席をするのはよろしくないことですが、ここは一つ、彼女の善行を認め、今日の事は水に流してもらえませんかねぇ?」

    「…幸子」

    幸子「は、はいっ!」

    「本当かしら?」

    幸子「は……は、はい…」

    「そう…そうなの…」

    「勿論僕も今日は勉強を教えに参ったのですが、いかんせん彼女がほとほと疲れていらっしゃるようで…このままでは恐らく勉強も捗りません」

    幸子「…」

    「…」

    「なにしろ半日もの間人助けをしていらっしゃったんですから…ですから今日のところはゆっくり休んでいただいて、また後日連絡を頂ければと思いまして…ええ。勿論お代は頂きません」

    「…そうですか…先生がそう仰るのでしたら…そうですね…」

    「実はですねぇ。あまり短期間で詰め込み過ぎるのは科学的に考えるとよろしくないんですよ」

    幸子「…!」

    「…何ですって?」

    「ああ。気を悪くされたのでしたら申し訳ありません。ですが知識習得の一過性はテスト後折角覚えた知識を忘れてしまう可能性もあるんです。勿論学習方法は貴方にお任せしますが…」

    「…」

    「それに輿水さんは僕が担当している生徒に比べとても聡明な方だとお見受け致しました。これは普段からのお母さんの教育が素晴らしいのでしょうねぇ」

    「…幸子」

    幸子「は、はい…」

    「…今日は早く寝なさい。それと明日はお母さんが教えるわ。いつもと違う環境なら新鮮な気持ちで出来るでしょう?」

    幸子「…はい…」

    「それが良いかもしれません。しかし輿水さん。来週からはちゃんと塾にも行くことですよ?」

    幸子「はい…」

    「それではお邪魔しました。お茶、とても美味しかったですよ」

    「いえ。此方こそ幸子を送って下さってありがとうございました」

    229 = 1 :

    右京「…」バタン

    友紀「…」

    右京「お待たせしました。それでは参りましょう」ガチャ

    友紀「参りましょう、じゃないよ…」

    右京「はいぃ?」

    友紀「よくもまあ、嘘八百並べて帰ってきたね。怒られなかったの?」

    右京「ええ。家庭教師が臨時ということが救いでした」

    友紀「…いくら幸子ちゃんを助けるからって、流石にやり過ぎじゃ…」

    右京「恐らく彼女の母親は、先程の事を話しても信じないでしょう」

    友紀「お婆ちゃん助けたって方が信じないよ…」

    右京「いえ。そういうことではありません」

    友紀「?」

    右京「彼女の母親は、輿水さんの良い部分だけを信じるようです」

    友紀「…都合の悪い話は聞かないって事?」

    右京「そうとっていただいて構いません」

    友紀「…でも、今でも信じられない。あんな事が実際にあるなんて…」

    右京「僕も現場を見たのは初めてですねぇ」

    友紀「…酷いよね。あんな事…」

    右京「ええ。とても」

    友紀「…これから、どうするつもり?」

    右京「どうするとは?」

    友紀「とぼけないでよ。さっき早苗さんに電話してたでしょ」

    右京「そうですねぇ…」

    友紀「…ダメだよ。変な事したら…」

    右京「かといって、このまま彼女を見過ごすのはあまりにも酷です」

    友紀「だって、もしあの親が苦情出したら、今度は…」

    右京「そうならない為に、片桐さんに協力を仰ごうかと」

    友紀「…」

    230 = 1 :

    幸子ちゃんが、いじめの被害にあっていた。

    背景は知らないけど、恐らく同じ塾の人達。

    幸子ちゃんが不意にこぼした台詞から察するに、あの子達は幸子ちゃんからお金の無心をしていたようだった。

    そしてアタシ達が駆けつけ、ようやく元に戻ったかと思うと、今度は親の事で暗くなっていった。

    その時、右京さんがやったこと。

    まず、紗枝ちゃんを女子寮に帰し、幸子ちゃんに家庭教師のキャンセルをさせた。

    その後、自分がその家庭教師になりすますことであの場を収めた。

    …でもこんなの、一時的なもの。

    来週になれば、幸子ちゃんはまたあそこに通わなければならない。

    「…」

    またあの子達が待っているんだろう。

    アタシ達もいつでも駆けつけられるわけじゃないのは当然知っている筈だから。

    「…」

    もし、仮に右京さんが何かしようとしているなら。

    今こそ、アタシは止めなきゃならない。

    「…」

    …でも、止めていいのだろうか。

    もし、ここで止めたとして、あの子はどうなるのか。

    これからも常に怯える生活を送るのか。

    …そう考えると、口が動かなくなる。

    231 = 1 :

    「…」

    分かってる。
    今、右京さんは仕事そっちのけで幸子ちゃんを助けようとしてる。

    …でも、それを止めたくないアタシもいることは確か。

    「…!!」

    ジレンマ、というやつなのか。

    ダブルバインドというやつなのか。

    こんなの、どうしていいか分からない。

    ただ、これだけははっきり言える。

    「…」

    右京さんがやろうとしていることは、正しくない。

    蛇の道は蛇。

    まさにそれだ。

    「…矛盾してるよ…」

    「何か仰いましたか?」

    「…何も」

    …聞こえてるくせに。

    232 = 1 :

    「…」ガラッ

    幸子「zzz…」

    「…幸子…」

    幸子「zzz…」

    「貴方は、立派な人間になるのよ」

    幸子「zzz…」

    「そうして、もっと見返してやるの。あの酷い子達に…」

    幸子「zzz…」

    「大丈夫。貴方は私が守ってあげる」

    幸子「zzz…」

    「あの時も、守ってあげたんだから…」

    幸子「zzz…」

    「貴方に取り付く悪い子は、みんなお母さんが追っ払ってあげる」

    幸子「…」

    「…どんな事を、してもね…」

    幸子「…!」ビクッ

    「…だから、安心して寝なさい。……お休み、幸子」

    幸子「…」

    「…ちゃんと、明日もお勉強するのよ」

    幸子「…」

    233 = 1 :

    PM10:00 某居酒屋

    早苗「…ん!あ、こっちこっち」

    右京「どうも。お疲れ様です」

    早苗「ん。…あれ?杉下係長の娘達は?」

    右京「お二人とも帰りましたよ」

    早苗「…ふーん…人払いはOKってこと…」

    右京「…」

    早苗「…で?なんたっていきなり探偵の知り合い?」

    右京「警察の方に調べてもらうわけにもいきませんから」

    早苗「探偵も同じよ」

    右京「おやおや…」

    早苗「…」

    右京「…」

    早苗「そうやって暴走して、またアイドル達の人生ダメにするつもり?」

    右京「はいぃ?」

    早苗「とぼけてんじゃないわよ。前の事件を忘れたとは言わせないわよ」

    右京「…」

    早苗「折角スカウトした二人を、ダメにするなんて許さないわよ」

    右京「…」

    早苗「アンタの本業はプロデューサー。探偵でも警察でもないの」

    右京「…ええ」

    早苗「だから協力出来ない。分かるでしょ?」

    右京「…」

    早苗「アンタには最後までやり通して欲しいのよ。あの子達の事を…」

    右京「…」

    早苗「だから冷静になって自分の仕事と向き合って。まずあの子達の事に目を向けて」

    右京「…手を伸ばせば、届くかもしれない。その時、伸ばさずにはいれない」

    早苗「…」

    右京「僕は、そういう性分なんですよ」

    早苗「…」

    右京「…」

    早苗「…もう、これっきりにしてよ?」

    右京「ええ。よろしくお願いします」

    234 = 1 :

    3日後

    友紀「…おはよー…」

    右京「おはようございます。寝不足ですか?」

    友紀「ん…」カタン

    右京「…」

    友紀「…」

    右京「…」

    友紀「…で?いい加減何しようとしてるのか教えてくれないの?」

    右京「…何でしょうねぇ」

    友紀「ダメだよ。話さなきゃ」

    右京「おやおや…」

    友紀「アタシだって、もう片棒担いじゃったんだから。聞く権利はあるでしょ」

    右京「…そうですねぇ…」

    友紀「…」

    右京「…全てが終わった後にでも、話しましょうかねぇ」

    友紀「えええ…この空気で断るの…?」

    右京「話せば君は動きますから」

    友紀「…」

    右京「…」

    友紀「…右京さんは、幸子ちゃんの為に人生棒に振るつもり?」

    右京「どうですかねぇ…場合によっては…」

    友紀「…それで、あの子が喜ぶと思うの?」

    右京「僕の考えが正しければ、今彼女の心身は疲弊しきっています」

    友紀「…」

    右京「そうした者が選ぶ最終的な行動。僕は何度か目にした事があります」

    友紀「…あの子は、そんなに弱い……」

    右京「少し関わっただけですが、とても心の弱い方だと思います」

    友紀「…でも、それで右京さんが…」

    右京「残念ながら、この世に人の命より価値のあるものなどありません」

    友紀「…」

    右京「僕は今日、予定が入っています。申し訳ありませんが代行を引き受けてくれた方がいらっしゃいますので…」

    友紀「…ホントに、ちゃんと話してよ…?」

    右京「ええ」

    235 = 1 :

    「…」

    右京さんが、早苗さんと話してから約3日。

    右京さんは相変わらず何も話してはくれない。

    今日も予定があるからと半休を取り、他の人に引き継いでもらっていた。

    「本日は杉下係長が緊急の予定があるとのことですので、よろしくお願いします」

    「あ、うん。そんなかしこまらなくても…」

    「いえ…それと、今日も頑張りましょう」

    …まさか、早苗さんのところのプロデューサーとは思わなかったなあ。

    「えっと…今日の予定は…」

    「○時に○○スタジオにてCM撮影が入っております」

    「あ、ありがと…何か右京さんみたい…」

    「…杉下係長から学べることは、沢山あります。誤解されてる方も多いかもしれませんが…」

    …この人、良い人…なのかな。

    「…あ」

    「はい。何でしょうか?」

    「早苗さんと瑞樹さんは?」

    「お二方は、ご自分の車で移動しているようです。私が着いていると力を発揮出来ないと…」

    「…あー…」

    確かに、あの人達…この人とは合わなそう…。

    首に手をやる仕草をし、ほとほと困っているという顔をする彼を見てそう思った。

    236 = 1 :

    右京「…」

    「…あのー…」カランカラン

    店員「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」

    「いえ、待ち合わせを…あっ」

    右京「すいません。僕と待ち合わせしていたんですよ」スッ

    店員「あ、そうでしたか。…ご注文は…?」

    「ええと…ホットコーヒーを…」

    店員「かしこまりましたー」

    「…」ガタッ

    右京「…」

    「…」

    右京「はじめまして。杉下右京と申します」

    「はじめまして。輿水幸子の父親です」

    右京「ええ。そう聞いております」

    「…話は聞いています。何やら大変な事になっていると…」

    右京「ええ。本当に」

    店員「お待たせしましたー。ホットコーヒーです」

    237 = 1 :

    …。

    「元々、幸子の面倒を見ていたのは私でした」

    右京「…」

    「…少なくともその当時は明るく、普通の子供でしたよ」

    右京「…」

    「しかしその当時から私と妻の幸子の教育方針は対立しており、私に隠れて幸子へ家庭教師をつけたり、習い事をさせたり…」

    右京「…」

    「元々あの子は頭が良かったのでそんな必要は無いと思っていたのですが…妻は常に一番を取らせると…」

    右京「…」

    「おまけにアレはとにかくヒステリック持ちで…見てください。この腕…」

    右京「切り傷ですねぇ。それもとても深い…包丁ですか?」

    「ええ。とにかく自分の思い通りにならなければ暴れる。それを毎日毎日やられていれば…別居したくもなりますよ」

    右京「…」

    「…勿論幸子の事は心配してましたが…まあアレは幸子には手を出しませんから」

    右京「何故、そう思うのですか?」

    「自分の作り上げた作品だからですよ。塾に通わせ、習い事もさせ…そんな手塩にかけて育てた作品を傷つけはしないんです」

    右京「…作品、ですか…」

    「…あ、勿論私はそんな事思っていませんからね!?」

    右京「ええ…」

    「…しかし、私は違う。私に対しては敵意を剥き出しにしてくる。このままじゃいつか殺される。そう思って逃げ出したんです。幸子を置いて…」

    右京「そうですか…」

    「今、私とアレの繋がりは膨大な養育費、ただそれだけ…」

    右京「…」

    「…しかし、今の幸子の様子を聞くと…」

    右京「…」

    「…あの子は…」

    238 = 1 :

    右京「彼女は、とても頭の良い方です」

    「…ええ」

    右京「その中でも特に目を見張るものは、空間認識能力」

    「…」

    右京「彼女は今現時点で何が起こっているのか、そしてそれの原因、それをどうにかする為の措置を瞬時に感じ取れます」

    「…」

    右京「そして彼女は、今自分が出来る最善の選択をした」

    「…それが…」

    右京「…自我を捨てる」

    「…」

    右京「そうすることで、母親の感情の起伏を最低限に抑え、いじめのダメージも抑えた」

    「…」

    右京「しかし、今。ここに来てそれが限界を迎え始めています」

    「…それは…」

    右京「必死にもがいているんです。抜け出そうと。この狭い牢獄から」

    「…だから、助けを求めたんですね」

    右京「恐らく、そうなのかもしれません」

    「…」

    右京「貴方がもし、彼女を大事に思っているのでしたら…」

    「…」

    右京「行動を起こすべきです。直ちに」

    「…」

    右京「彼女はまだ、自分を持っています。しかし一刻の猶予もありません」

    「…私は、出来るでしょうか?」

    右京「…」

    「…今更…父親面など…」

    右京「出来る、出来ないではありません」

    「…」

    右京「やるか、やらないかです」

    「…やるか、やらないか…」

    右京「ええ」

    「…やるか……やらないか…」

    239 = 1 :

    「…」

    今日、一人での仕事が終わった。

    「…」

    …結局、今右京さんは何をやってるんだろう。

    …アタシには、全く分からないことをやってるんだろうなぁ。

    「姫川さん、本日は直帰でしょうか?」

    「ん…いや、とりあえず…事務所で」

    「かしこまりました」

    何だか、アタシだけ置いてけぼりにされてる気がする。

    それはアタシ達を巻き込みたくないという右京さんの意思なのかもしれないけど。

    …でも何だか、面白くない。

    「…」

    初めて会った時は、凄い人だと思った。

    自分よりも背の高い怖そうな人をヒョイとねじ伏せて、捕まえて。

    巧みな話術でアタシを勧誘してきた。

    でも、最近は幸子ちゃんにかかりっきりだ。

    …右京さんにとって、アタシはもう、端に置かれてる人形みたいなものなのかな。

    「…私の意見を、言ってもよろしいでしょうか」

    「え…あ、うん。どうしたの?」

    「本日のお仕事、大変良かったと思います」

    「あ、うん。ありがと…」

    「ですが、あれは貴方の、本当の笑顔…だったのでしょうか?」

    「…え?」

    「…私には、そうは見えませんでした」

    …笑顔。

    そういえば今日、あんまり笑ってなかった気がする。

    「…ごめん。次から気をつける」

    「…もし、何かあったのでしたら、私で良ければお話してみてください」

    「…えー…っと…」

    「杉下係長の、事だと思いますが…違いますか?」

    「…もしかして、アタシって顔に出やすい?」

    「…それもまた、貴方の長所かもしれません」

    …あはは。

    またやられちゃったぁ。

    240 = 1 :

    友紀「…まあ、何と言うかさ…新しい人新しい人ってね、どんどんかかりっきりになっちゃって…」

    「…」

    友紀「…おかしいなあ。嫉妬してるわけじゃないけどさ」

    「…」

    友紀「だってさ、アタシ、右京さんの相棒だって、瑞樹さんも言ってくれたのに…」

    「頼りにされていない、そうお考えですか?」

    友紀「うん。そんな感じ」

    「…そうでしょうか」

    友紀「だって、他の人に任せるって…アタシなんてどうでもいいみたいじゃん」

    「頼りにしているからこそ、1人でも良しと判断したのではないでしょうか」

    友紀「だって…今日だって…」

    「私が頼まれたのは、運転のみです」

    友紀「…」

    「姫川さんは、1人でもちゃんと仕事が出来る方だと、そう仰っていました」

    友紀「…ホント?」

    「ええ。貴方が杉下係長から心から頼りにされている、何よりの証拠です」

    友紀「…もう…」

    「…」

    友紀「…口で言わなきゃ、分かんないよ…」プクー

    「…」

    241 = 1 :

    翌日

    友紀「おはよー!」

    右京「おはようございます。昨日はちゃんとお仕事が出来たようで何よりです」

    友紀「あ、聞いたの?」

    右京「ええ。褒めていらっしゃいましたよ?」

    友紀「…変な気遣っちゃって」ボソ

    右京「どうされましたか?」

    友紀「何でもない!」

    右京「ところで今日、君は午前のレッスンが終わってからのスケジュールは空いていますか?」

    友紀「え?あ、うん。空いてる…けど…?」

    右京「それは良かった。少し君の力を貸して頂きたいのですよ」

    友紀「え?…あ、アタシの力…?」

    右京「ええ。恐らく君が適役かと」

    友紀「…ホント?変にご機嫌取ろうとしてない?」ジロッ

    右京「無理なようでしたら他の方に頼みますが」

    友紀「分かったから!行く!行きます!!」

    右京「助かります」

    …。

    そしてこの後、アタシは今年これ以上のものはないってくらい驚愕した。

    右京さんがアタシを連れていった場所。

    そこはただの喫茶店。

    そう、ただの喫茶店。

    安めのコーヒーに、トースト。

    子供でも通えるくらいの空気感。

    …なのに。

    それは今のアタシには、混乱を招く一手にもなっていた。

    242 = 1 :

    「…」

    そこに座っていたのは、この間幸子ちゃんをいじめていた3人の中のリーダー格の子。

    …右京さんがアタシを呼んだのは、恐らく通報を避ける為。

    つまり、いるだけで良し。

    …。

    …ま、いっか。

    これで大体分かるわけだし…。

    243 = 1 :

    店員「ご注文をどうぞー」

    「…」

    右京「お好きな物を頼んで構いませんよ?」

    「…クリームソーダで…」

    右京「僕はミルクティーを」

    友紀「アタシはコーラで…」

    店員「かしこまりましたー」

    「…」

    右京「本日は来て頂きありがとうございました」

    「…」

    友紀「君って、この間…」

    「…悪いのは、幸子ちゃんだよ…」

    友紀「…!お金を無心してたンムググ…」

    右京「今日はですねぇ。君達と輿水さんの間に何があったのかを聞きたかったんですよ」

    友紀「ンムグググ…」

    「…塾の場所を言ったのは、幸子ちゃんなの?」

    右京「ええ」

    「…そうやって、大人に頼って…」

    友紀「…?」

    「悪いのは幸子ちゃんなんだからね!私らはただ仕返ししただけ!」

    友紀「…えっ…?」

    右京「…」

    244 = 1 :

    右京「仕返しをしただけ。…それと今回の件、関連性は…?」

    「…アンタに言ったって、分かんないよ。どうせ幸子ちゃんの味方なんだから」

    右京「味方かどうかはともかく、こういう時お互いの意見を聞くことは何よりも大事だと思いますがねぇ?」

    「…」

    友紀「自分達が悪くないってなら、弁明しないとダメだよ。悪いって思われたままで終わるよ?」

    「そんな事分かってるよ。だけど…」

    右京「信じる、信じない。それはともかく。まず話してみることが重要です」

    友紀「うん…そうだよ」

    「…」

    右京「輿水さん個人が、あなた方に危害を加えたのでしょうか?」

    「…」フルフル

    右京「でしたら…」

    「…」

    右京「輿水さんの、お母さんですか?」

    「…」

    友紀「え…」

    「…」コク

    友紀「…えっ?」

    245 = 1 :

    店員「お待たせしま…したー…ミルクティーと、コーラと、クリームソーダ…です。ど、どうぞごゆっくりー…」

    「…」

    友紀「う、右京さん。今の…どういうこと?」

    右京「そのままの意味です」

    友紀「…だ、だって…だよ?それ……普通に犯罪…」

    「証明出来ないよ」

    友紀「?」

    「…元々、ウチの塾での一番は、幸子ちゃんじゃなかったんだ」

    友紀「…」

    「幸子ちゃんは二番で、その子が一番。…それでまあ、ウチの塾は毎月一回必ず授業参観もどきみたいなことをやるんだよね」

    友紀「うわー…」

    「…でさ、その授業参観もどきが終わった後にね、その子塾の階段から足を滑らせて落ちちゃってさ。全治2カ月だって」

    右京「…」

    「偶然かなって思った。だけど、おかしいんだよね」

    友紀「?」

    「…階段にさ、ダンボールが落ちてたんだ」

    友紀「…風とかじゃ?」

    「そんな強くなかったよ。よく分かんないけど、何故かその階段に、まさに踏めって感じで落ちてたの」

    右京「誰かが故意に置いた、と?」

    「…うん」

    友紀「それが、幸子ちゃんのお母さん?」

    「うん。…笑ってたんだ」

    友紀「え?」

    「…あの子が滑り落ちて、みんなが心配してる時、一人だけニヤニヤしてた」

    右京「…」

    「みんな噂してる。あの人がやったんだって」

    友紀「…」

    右京「…お金の無心をしたのは…」

    「治療費だってあるんだよ。…でもあの人が認めるわけがないから…証明出来ないし」

    友紀「幸子ちゃんを介せば、何らかの形でってこと?」

    「…うん。…っていうよりも、ただあの子の親のせいでってのもあったから…」

    友紀「だからって…」

    「あの人、いつも凄く高そうな服着てて、化粧も、車とかも…だから…」

    右京「…」

    「…」

    246 = 1 :

    右京「話は分かりました」

    「…」

    友紀「…これって、どうにかなるもんなの?」

    右京「…未必の故意を証明することは、非常に…いえ、無理と言っても良いでしょう」

    友紀「み、みひ…何?」

    右京「友達を大事にしたい君達の気持ちも分からなくはありません」

    「…」

    右京「しかし、君達のやっていることは仕返しではありません」

    「…」

    右京「思春期の一人の女の子の精神を著しく傷つける、ただのいじめですよ」

    「…」

    右京「幸子さんは今、母に怯え、君達にも怯えています」

    「…」

    友紀「…軽い気持ちでやり始めたなら、もうやめてあげて」

    「…」

    友紀「幸子ちゃんは、何も悪くないでしょ?」

    「…うん」

    右京「…ならば、もう彼女を責めることはありませんね?」

    「…うん」

    右京「でしたら、次来た時は暖かく迎え入れてあげてください。それだけでも彼女は救われます」

    「…うん」

    247 :

    どのタイミングでプルプルするか気になるなぁー しかしややこしい事態だ

    248 = 1 :

    その後、もう二度と幸子ちゃんに酷い態度を取らないことを約束させ、店の前で別れた。

    こっちに向かって遠慮がちに手を振るあの子は、本来は優しい子なのかもしれない。

    …だけど。

    「右京さん」

    「なんでしょうか?」

    「…どうするの?あの子達の事は終わったとしてさ…」

    「そうですねぇ…」

    「その、あの人が原因で幸子ちゃんが周りから孤立してったんでしょ?じゃあほっとくわけには…」

    「ええ。放っておくわけにはいきませんねぇ」

    「…でもどうやって?」

    「この数日間、僕は輿水さんと様々な事をやっていました」

    「…あ、ようやく教えてくれるの…」

    「…そうですねぇ…中身も見えたことですし、もう良いでしょう」

    …。

    そして、アタシが聞いた事は。

    これまでにない程、あの母親にダメージを与えることが出来るだろう最初で最後の、最強とも言える一手だった。

    249 :

    もうこれ只の相棒じゃねーかいいぞもっとやれ

    250 = 1 :

    「…」


    「…」


    「…何よ、これ…」

    『離婚届』

    「…何なのよ、これは…」


    「…ふざけるんじゃないわよ!!」ガシャアン


    「あの人…まさか…」

    『すいません』ピンポーン

    「…」

    『少しお話ししたいことがあります』

    「…この声、何処かで…」

    『それと、謝らなければならないことがあります』

    「…今出ますので…」

    『ああ、それはどうも』

    「…」


    「…」ガチャ

    右京「どうも」

    「…貴方は、確か…家庭教師の…」

    右京「いえ。本当は家庭教師ではないんですよ」

    「…え?」

    右京「申し遅れました。僕は346プロダクションでプロデューサー業をさせてもらっている、杉下右京という者です」

    「…何ですって?」

    右京「そして、用があるのは僕だけではないんですよ」

    幸子「…」

    「…」

    「…!…あなた…それに、幸子まで…!?」


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