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    元スレ右京「346プロダクション?」

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    51 :

    いつプルプルするのか楽しみ

    52 :

    モバマス詳しくは知らないから部長の名前わざとだと思ってたわ……

    53 :

    右京さんがPだと何故こんなに心踊るのか

    54 :

    >>48
    奇跡の一致だよな
    あと角田課長じゃなかったっけ?

    55 :

    >>54
    警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策五課の課長だね
    ノンキャリア出身で警視かつ警察庁の課長というとんでもなく有能な人だわ

    56 :

    乙、面白い!

    今西部長の間違いだったのね
    相棒詳しくないからそういう人がいるのかと思って、適当な部長顔を想像してた

    57 :

    ミスだったのか
    普通に山西さんで想像してたわ

    58 :

    そういやこないだ相棒でSF回やったんだよな

    59 :

    …。

    「えーい!」バシッ

    …。

    「やー!」バシッ

    …。

    「こら!ちょっかい出したらダメ!!」

    …。

    「すいません…うちの子、本当にヤンチャで…ほら!謝りなさい!」

    「ごめんなさーい…」

    …。

    「ほら!今度はあっちのお店に行ってみようね!」

    「はーい!」

    …。

    「…」クルッ



    「…」ベー

    …。

    61 = 1 :

    友紀「ああああああああああ!!!!」

    右京「どうかされましたか?」ペラ

    友紀「どうかじゃないよ!これって本当にアイドルの仕事なの!?」

    右京「ええ。れっきとしたお仕事ですよぉ…」ペラ

    友紀「だってさ、こういうのってたまにインターネットサイトとかでバイト募集してるじゃん!」

    右京「それはあくまで一般のイベントのみなんですよ。こういったアイドル関係のイベントにおいては、身内を使った方が信頼出来ますからねぇ…」ペラ

    友紀「へー…じゃなくてさ!」

    右京「どうしましたか?」

    友紀「いや、これってさ!どこのプロジェクトの人達もやりたがらなくて断った仕事なんでしょ!?」

    右京「ええ。屋外とはいえ人混みの多い中でのイベント。そのような密閉された着ぐるみに身を包めば、体調を崩すかもしれません」

    友紀「…それをアタシに回すの…?」

    右京「貴方は新人。僕は煙たがられる社員。これだけでも十分理由になると思いますがねぇ?」

    友紀「…じゃあさ、いつになったら本格的に活動出来るの?」

    右京「そうですねぇ…」

    友紀「…」

    右京「…それは、これから探すとしましょう」

    友紀「…えええ…?」

    右京「とにかく、水分補給は大事ですが、あまり摂り過ぎないよう注意して下さい。次の休憩は2時間後らしいですからねぇ」

    友紀「汗で消えるよ…。…あー、確かに現実と理想って違うなー…」

    右京「そうですかねぇ…」

    友紀「だってほら、アイドルってさ、こう…歌ったり踊ったり、司会やったりさ?」

    右京「誰しも初めからそんな大役を任されるわけではありませんよ」

    友紀「そうなんだけどさぁ…」

    右京「君は足し算を飛ばして割り算を学びますか?」

    友紀「…これって、足し算かなぁ…」

    右京「少なくとも、何の経験も無い君が休憩中こうして愚痴を吐きながらでも見逃してもらえる簡単なお仕事だと思いますがねぇ?」

    友紀「うっ…もしかしてスタッフの人に聞かれてた?」

    右京「ええ。とても」

    友紀「…あー…何かやらかしちゃったなぁ…」

    右京「そう思うなら、これから一生懸命やることです」

    友紀「…例えば…どうやって?」

    右京「そうですねぇ…例えば、先程の子供」

    友紀「?」

    62 = 1 :

    右京「彼は貴方が無抵抗であるのを確信し、蹴るという行動に移りました」

    友紀「その堅苦しい言い方辞めてよ…」

    右京「本来イベントの潤滑油でなければならない着ぐるみ達が、ただ棒のように立ち尽くしていてはそうなるのも当然だと思いますがねぇ」

    友紀「でもさ、着ぐるみなんて誰が見たりするの?」

    右京「見ていたからこそ、君の所へやってきたんじゃありませんか?」

    友紀「うーん…」

    右京「ただ仕事をすれば良いというものではありません。常にベストを尽くし、出せる知恵は全て出してやりきりましょう」

    友紀「大袈裟じゃないかなあ…」

    右京「塵も積もれば山となる…。小さな仕事でも、やり続ければそれは大きな財産となります」

    友紀「でもほら、こんな塵じゃ風に吹かれて終わりだよ…」

    右京「今はともかく、与えられた仕事をこなすのみです。そうでなくてはあのような舞台にはいつまでも立てませんよ?」

    友紀「?」

    『悪い子はタイホしちゃうぞー!バキューン☆』

    友紀「…はーい…」カポッ

    右京「ああ、それと」

    友紀「?」

    右京「昼休憩の時間が少し短くなったそうですから、弁当は僕が持ってきましょう。少しでも休憩時間を長くしなければなりませんから」

    友紀「…はぁぃ…」

    63 = 1 :

    アタシがアイドルになって、はや2週間が経過した。

    初めの1週間は、宣材写真を撮ったり、いろんな説明を聞いたりした。

    そしてそこからは、トレーナーについてもらって、アイドルの基本的な動きを学んだ。

    ダンスや、歌。

    表情や、表現。

    最初は物珍しさから、何でも楽しかった。

    怒られることも、苦じゃなかった。

    だけど、人間3日も過ぎると環境にいい加減慣れてくる。

    そして、怒られるのが辛くなりだした時、アタシに初めての仕事が舞い込んできた。

    初めての仕事は、新発売のジュースの店頭販売。

    何の興味もないそれを褒めちぎるのは演技力の無いアタシにとっては至難の技で、勿論後でスタッフから直々にお叱りを受けた。

    右京さんはアタシと一緒に頭を下げ、そして何事も無かったかのように終わる。

    …参ったなあ…。

    アイドルって、もっと簡単になれるって思ってた。

    「…」

    こうやって細々と小さい仕事やって、ただ延々と日々が過ぎてくのかな…。

    「…」

    右京さんは、アタシをどうする気なんだろう。

    …上手いこと言って、上手いこと利用する…。

    「…!」ブンブンブンブン

    違う。

    それは違う。

    右京さんだってギリギリなんだ。

    社会経験が少ないアタシにだって分かる。

    「…」

    あれはどう見たって、そういう部屋だ。

    いらない社員を追い出すような、そんな部屋だ。

    そんな所にいる人が、最後まで足掻こうとしてるんだ。

    一緒に足掻こうとしてるアタシがこんなんじゃ、右京さんに迷惑をかけることになる。

    「…ねーねー」

    「?」

    その時、誰かがアタシの手を引いた。
    耳には子供らしき声が聞こえる。

    …これって、さっきのちょっかい出してきた子供?

    …あれ?何で前が見えないんだろ…?

    「…首が後ろ向いてるよ?」

    「え?」

    64 = 1 :

    「ちょっとさ…いくらなんでもあんな風に仕事されちゃこっちも堪らないよ」

    「すいません…」

    「申し訳ありません」

    また、やっちゃった。

    思いっきり首を振った時に顔部分が後ろ向いちゃったんだなあ。

    「…」

    隣で深々と頭を下げる右京さんを見ていると、本当に心苦しくなる。

    自分よりも年下だろうはずの人に、何の迷いもなく頭を下げてる。

    しかもそれは、アタシのせい。

    そしてそれは、アタシの為。

    もっとちゃんとやらなきゃ、というのはちょっと遅かったみたいで、現場リーダーの説教を小一時間聞かされた。

    「…まあ、その子反省しているみたいだしさ、午後からはちゃんとやってよ?こんなんでも仕事なんだから…」

    「はい…」

    「申し訳ありませんでした」

    …ホントこの半日で、アタシはどれだけ迷惑かけたんだろう。

    65 = 1 :

    友紀「ごめんなさーい…」モグモグ

    右京「過ぎてしまったことをとやかく言うつもりはありません。君も反省しているようですからねぇ」

    友紀「…その、これからどうなるんだろって不安が多過ぎて…」モグモグ

    右京「それで今の仕事を台無しにしていれば、いつかその不安は本当の事になりますよ」

    友紀「う…」モグ…

    右京「今からさあ頑張ろうとしている君にこんなことを言うのは酷かもしれませんが、嫌ならいつでも辞めて頂いて構いません」

    友紀「…」

    右京「君が限界を感じたなら、一刻も早く辞表を提出すべきです」

    友紀「…」

    右京「ただ、限界というのを決めるのは自分です」

    友紀「…んー…」

    右京「僕は限界というものは無いと思っています。もし限界があるとするならば…」

    友紀「…」

    右京「それは、諦めた瞬間でしょう」

    友紀「…」

    右京「君は、諦めましたか?」

    友紀「…まだ」

    右京「なら、また始めましよう。歩き続ければ、必ず光は見えてきます」

    友紀「…ん…」

    右京「おやおや…相当疲れたようですねぇ」

    友紀「疲れたっていうか、堪えたっていうか…」

    右京「ああ、なるほどなるほど…」

    友紀「体力は結構自信あるんだよ。けどさっきや今みたいに淡々と怒られるのは慣れてないよー…」モグモグ

    右京「君らしいですねぇ…」

    友紀「…そういえばさ、朝何の本見てたの?」

    右京「ああ、そのことですか…。…これです」

    友紀「?…これ…346の…?」

    右京「ええ。346プロダクションで研修時に使われる教科書のようなものです」

    友紀「なんたってそんなの今更…?」

    右京「新人アイドルをデビューさせるんです。僕も今一度新人のような気持ちで仕事をしたいと思いましてねぇ」

    友紀「へー…」

    『おーい』コンコン

    友紀「?」

    右京「どうぞ」

    66 = 1 :

    アタシが昼休憩を取っている時、不意に休憩室の扉がノックされた。

    さっきの現場を仕切っているリーダーさんかなと思ったけど、この声は女の人だ。

    …誰だろ?

    「どーもー。杉下係長ー」ガチャ

    …あれ?

    この人さっき、舞台に立ってた…。

    「ああ、片桐さん。これはこれは…」

    「ん…まあ、噂には聞いてたけど…本当にデビューさせたのね」

    …片桐…。

    何処かで聞いたことあるような…。

    「…あ!」

    「何よ。挨拶も無し?」

    「…あ、す、すいません!えっと…は、はず…初めまして!」

    「…」

    「…」

    「…」

    …うわー…噛んだー…。

    67 = 1 :

    友紀「あの、今後ともよろしくお願いします…」

    早苗「分かった、分かったわよ。…それにアタシだってまだデビューしてそんな長いわけじゃないから」

    友紀「えっ…」

    右京「彼女がデビューしたのがおよそ6ヶ月前ですねぇ」

    早苗「ほー。にしてもよく覚えてるわね…」

    右京「ええ。情報や物は一度見たら忘れられないものでして…」

    早苗「…警察やった方が向いてると思うわよ?」

    右京「…どうですかねぇ…」

    友紀「そ、そうなんですね…で、でもアタシより先輩…」

    早苗「そりゃそうだけどさ。それならもうちょっと気張りなさいよ。スタッフに連れて行かれる着ぐるみなんて聞いたことないわよ」

    友紀「あ…す、すいませんでした!」

    早苗「あーいいわよもう。どうせここの責任者に怒鳴られたんでしょ?」

    右京「怒鳴られたというよりは、窘められたという方が正解ですかねぇ」

    早苗「余計な事言わなくていーの」

    右京「おやおや…」

    早苗「…ん、まー…ね?それでさ、アタシ午前で仕事終わりなのよ」

    友紀「あ…え、えっと、お疲れ様でした…」

    早苗「あー違う違う!そうじゃなくってさ…」

    右京「?」

    早苗「ほら、午後になってまたアンタがやらかしたらアレだから」

    友紀「え…」

    早苗「だからねー…んー…」

    右京「…」

    早苗「アタシが一緒にやったげる」

    友紀「…え…」

    右京「…!」

    68 = 1 :

    初めはただの軽い冗談かなと思った。

    けど早苗さんは新たに用意された着ぐるみに何の躊躇もなく着替えていきなりアタシはの手を引いて走り出した。

    何をするつもりなのか、というのを聞くのは野暮かなと思ってやめておいたけど。

    「わー!クマと犬が走ってるー!」

    「追いかけろー!」

    …この様子を見ると、何となく分かる。

    きっと、早苗さんもこういった仕事をしてきたんだなって。

    だから、アタシに見本を見せたかったんだなって。

    自分も同じ体験をしたんだぞって、行動で表してる。

    そりゃ、さっきのやり取りでこの人が右京さんみたいに言葉で表すよりは、こうした方が得意ってのは分かるよ。

    …だけど…。

    「わー!」

    「捕まえろー!」

    これが、イベントの潤滑油になるのかな…?

    『おやー?ワンちゃんとクマさんが会場を闊歩してますよー!?』

    「待てー!」

    「わーい!」

    …。

    …この追いかけっこ、いつまでやるの?

    69 = 1 :

    早苗「ゼーッ…ハーッ…」

    友紀「そんなになるくらいならどうしてあんなこと…」

    早苗「これくらいやってりゃあの口うるさそうな責任者も嫌でもまたアンタ使おうかなってなるでしょうよ」

    友紀「あ…」

    早苗「いーい?芸能人の仕事ってのは棚から牡丹餅みたいなもんじゃないの。自分で手に入れなきゃ始まらないのよ」

    友紀「…」

    早苗「とにかく与えられた仕事を「一所懸命」こなしてね。…あ、これアタシの好きなタレントの造語だけど」

    友紀「あー…はい」

    早苗「そうやってやり続ければ、「ああこいつ頑張ってんな」って、また新しい仕事くれるようになんのよ」

    友紀「…ありがとうございます」

    早苗「分かったなら良いわよ。アタシもアンタに質問あったし」

    友紀「え…アタシなんかに?」

    早苗「そ。アンタなんかに」

    友紀「でも…特には…」

    早苗「何言ってんのよ。あの杉下右京が初めてご指名したアイドルなのよ。絶対なんかあるわ」

    友紀「…?」

    早苗「あら…その様子だと杉下係長がなんて呼ばれてるかも知らない?」

    友紀「…そんなの、知りません」フイ

    早苗「えー、そんな怒んないでよ。ちょっと興味があるだけなんだって」

    友紀「…別に、何も特別なことは…」

    早苗「そお?…あ、まだ杉下係長の本質までは知らないか…」

    友紀「…どうして、みんなそうやって杉下係長を悪く言うんですか?」

    早苗「え?」

    友紀「あの人がどんな人間かも知らないくせに。変な噂だけは信じて…」

    早苗「ほー…」

    友紀「…何ですか?」

    早苗「随分買ってるみたいじゃない」

    友紀「そりゃ、アタシの半生預けてんですから…」

    早苗「ふーん…まあ、大事よね。そういう信頼も」

    友紀「…だから、正直嫌です。右京さんの悪口聞くのは」

    早苗「悪口だなんて言わないわよ。ただ本当のことを…」

    友紀「そろそろ子供達に気づかれますね。行きましょう!」グイッ

    早苗「オウッ!?まだ無理!横っ腹痛い!!」

    70 = 1 :

    「…いやー…午前とは打って変わって違うねー…」

    右京「恐らく先輩アイドルに発破をかけてもらったのでしょう」

    「彼女、元警察官だからね。後輩の面倒を見たくなったんじゃないかな…」

    右京「そうでしょうか?」

    「?」

    右京「犬に引っ張られる熊というのは、いかがなものですかねぇ」

    「あー…」

    右京「…しかし、元警察官の方ですか…」

    「うん?もしかして…知らなかった?」

    右京「いえいえ。改めて彼女の行動力に感嘆したんですよ」

    「そうだねぇ。とにかく明るくて、場を盛り上げようと頑張ってくれるからねぇ」

    右京「…成る程」

    「あれは間違いなく近い将来大物になるよ」

    右京「ええ。僕もそう思います。…ああ、それと」

    「ん?何?」

    右京「先程姫川君には言って聞かせました。まだ現実に向き合えてはいないようですが…」

    「まあ、そりゃそうだよ。ただああやってさ、がむしゃらにやっていけばみんなの見る目も変わるんじゃないかな」

    右京「でしたら、また彼女に目を向けていただけると助かります」

    「あっはっは!そんな言い方されたら断れないなー…」

    右京「今の僕は、プロデューサーですからねぇ…」

    「そうだねぇ…今度、地下の小さいイベントだけど、それの司会やらせてみようか?」

    右京「おやおや…それはありがたい限りです」

    「今度は顔も出すし、台本があるにしても舞台の上では全部自分でやらなきゃならない。小さいけど責任重大だよー…?」

    右京「ええ。覚悟しています」

    「じゃあ、僕向こうのブース行ってくるから、彼女達はよろしくね」

    右京「ええ。僕でよろしければ」

    「何かあったら係員に伝えておいてねー」

    右京「ええ」

    71 = 1 :

    右京「…」


    右京「…」


    右京「…」

    「…あのー…」

    右京「はい?」

    「あのー…ここに中学生くらいの、薄紫の髪の毛した子が来ませんでしたか?」

    右京「はいぃ?」

    「あれ?も、もしかして責任者の方では…?」

    右京「いえ。関係者ではありますが、スタッフではありません」

    「あ、そ、そうですか…えっと…」

    右京「特徴を教えていただければ、伝えておきますよ」

    「あ、はい…えっとですね…こう、横がハネてて…眼鏡をかけた大人しい感じの女の子です」

    右京「薄紫で、横がハネていて眼鏡をかけた女の子ですね?」

    「ええ。娘なんですけど…ちょっとはぐれちゃったみたいで…」

    右京「了解しました。スタッフの方に伝えておきますので、ここを真っ直ぐ行ったブースでお待ちください」

    「はい!ありがとうございます…」

    右京「それでは」

    「はい!」

    右京「…」


    右京「…」


    右京「…はて、中学生、ですか…」

    72 = 1 :

    友紀「え?薄紫の髪の毛の子?」

    早苗「見てないわよ、そんな子」

    右京「そうですか…」

    友紀「普通に迷子アナウンスしてもらえばいいんじゃないの?」

    早苗「まあ、そうよね」

    友紀「スタッフに言ってないの?」

    右京「ええ」

    早苗「えっ!?何仕事放棄してんのよ!!」

    友紀「今すぐ言わなきゃ!親御さん待ってるんでしょ!?」

    右京「…まだ30分も経ってませんよ?」バッ

    友紀「十分すぎるでしょ!!苦情来るよ!!」

    右京「そうなんですがねぇ…僕にはどうも、迷子とは思えないんですよ…」

    早苗「…迷子と思えないって…」

    右京「ええ。中学生といえばもう一人で電車にも乗るような年齢です。親と一緒に来たとはいえ迷子になるとは考えにくい…」

    早苗「考え過ぎよ。今の子なんてそんなもんでしょ」

    右京「そうですかねぇ…だとしたら何故その子供の方はスタッフに声を掛けないのでしょう…」

    友紀「スタッフが分からないとか?」

    右京「それは考えにくいというものです。ええ、何故かと言いますとスタッフの方々は皆共通のベストを羽織っている。その上一つのブースに3人以上のスタッフが常駐している徹底ぶりです」

    早苗「ただ単に恥ずかしいだけでしょ。中学生にもなって迷子って…あれ?」

    右京「?」

    友紀「?」

    早苗「あれじゃない?」

    友紀「んー…?」

    「はいお待たせ!焼きそば一つ!」

    「ありがとうございます!一度で良いからやってみたかったんです!こういうこと!」

    「そうなの?じゃあ楽しんできなよ!ここら一帯色んなもん売ってるからさ!」

    「はい!」

    友紀「いやー…あれは…」

    早苗「薄紫よ。でも」

    友紀「だって全然おとなしくないじゃないですか。眼鏡もかけてないし」

    早苗「…うーん…でもどう見ても特徴と合致するわよ…?」

    右京「…妙ですねぇ」

    早苗「…ん!まあでもほら、見つかったかも分かんないんだからさ!ほら親御さんのとこ行った行った!あの子はアタシが捕まえとくから!」

    右京「そうですねぇ…」

    早苗「アンタらの仕事は着ぐるみと迷子探し!探偵ごっこは家でやんなさい!」

    友紀「は、はーい…」

    73 = 1 :

    「あ、そうでしたか…良かったあ……でもちょっと遅いんじゃないですか?」

    右京「ええ。なにぶん迷子の方が多いようでして。手間取っていたようです」

    友紀「…」

    「でも見つかったみたいで良かったです。あの子は私が見てないと不安で不安で…」

    右京「そうでしたか…それは申し訳ありませんでした」

    「ええ、大丈夫です。…全く、旦那が見てくれないから、私が見ててあげないと…」

    右京「…」

    友紀「…」

    「あの子、誰かにいじめられたりしてませんか?ちょっかいかけられたりしてませんか?」

    右京「ええ。僕の見た限りではそんな事はありませんでしたよ?」

    友紀「そうですねー…凄い笑顔dムグッ…」

    右京「案内しますので、どうぞこちらへ…」

    友紀「んぐぐ…んん?」

    74 = 1 :

    「…」

    「本当に申し訳ありませんでした…この子がご迷惑をおかけしたようで…」

    早苗「大丈夫ですよー」

    「…」

    「この子は私が見てないとダメなんですよ。とても一人にはしていられません」

    「…」

    友紀「…」

    右京「…」

    「ほら貴方も謝りなさい」

    「…」

    「…幸子?」

    「!」

    「幸子」

    友紀「お、お母さん…そんなことしなくても大丈夫ですから…」

    「いえ!この子には謝ってもらわないと!悪いことしたんですから!」

    「…」

    友紀「え、えっと…」

    「…ごめんなさい…」

    「ごめんなさいじゃないでしょ?幸子。言った通りにしなさい」

    早苗「…」

    「…ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした…」

    「そう!それでいいの。ちゃんとお行儀良く出来る子は将来も安泰なんだから…」

    友紀「…」

    右京「…」

    75 = 1 :

    「それではこれで。どうもありがとうございました…」

    右京「ええ」

    早苗「…」

    「…あっ…」ポト

    「あ、幸子!貴方また財布をお尻のポケットに入れたりして…」

    「ご、ごめ…すいません…」

    「こんな持ち方は不良になりますよ!…全く…」

    「は、はい………あっ」

    右京「…」ヒョイ

    友紀「!」

    早苗「!」

    「…!」

    右京「落としましたよ?」

    「は、はい…あ、ありがとうございます…」

    「まあ!ちゃんとお礼が言えたわね!」

    「…」

    右京「お礼はともかく、財布をお尻のポケットに入れていると体の重心が左右非対称になり、骨盤が歪んでしまう可能性があります」

    早苗「それにスリにあうかもしれないわよ」

    「…どうも、ありがとうございました…」ペコ

    「本当にありがとうございました。さ、行くわよ幸子」

    「…はい…」

    友紀「…」

    早苗「…」

    右京「…」

    76 = 1 :

    早苗「ちょいちょい」

    友紀「?」

    早苗「これ、見て」スッ

    友紀「え?…うわっ!血出てますよ!」

    右京「…先程の彼女ですか?」

    早苗「ん。そう」

    友紀「そうって…何でそんなこと…」

    早苗「声掛けたら逃げようとしたのよ。そんで捕まえたら暴れられてその時引っかかれちゃった」

    右京「おやおや…」

    友紀「その…何か…アレな感じとか?」

    早苗「いや、別にどこかおかしいってわけじゃないのよ。あの子。むしろ頭はかなり良い方に見えるわ。…でしょ?」

    右京「ええ。とても聡明な方だと思いますよ」

    友紀「なら、そんな子がなんで…」

    早苗「さあ…ねぇ?」

    友紀「そもそもさっきだって右京さん、どうしてアタシが喋ってるの止めたの?」

    右京「…考えられることは一つです」

    友紀「?」

    早苗「…あの子、親に飼われてるわね」

    友紀「…あっ…」

    右京「ですが、それならそれで疑問が浮かびます」

    早苗「何?」

    右京「飼う、という表現は少し気に入りませんが、まあ良しとしましょう」

    早苗「…何よ。もったいぶってないで…」

    右京「飼っているということは、大事にしているということです。しかしそれなら何故この人混みの中に、それも迷子になりそうな空間に彼女を連れてきたのでしょう?」

    早苗「…そういえば、そうね…」

    友紀「…でもほら、アタシ達じゃどうしようも…」

    早苗「さあ?どうかしらね?」

    友紀「え?」

    早苗「杉下係長?アンタあの子の財布に名刺…入れたでしょ?」

    友紀「えっ…」

    右京「おやおや。見破られていましたか」

    早苗「元警官舐めんじゃないわよ。何?まさか同情であの子をスカウトするつもり?」

    右京「どうでしょうねぇ…」

    友紀「…」

    早苗「…相変わらず何考えてるか分かんないわねぇ」

    友紀「…でも、考えれば考えるほど…あの親子…」

    右京「…妙ですねぇ」

    友紀「妙だねぇ…」

    早苗「妙ねぇ…」

    77 = 1 :

    右京「…ああ!それと」パン

    友紀「?」

    右京「君、来週に行なわれるイベントで司会をやらせてもらえるそうですよ」

    友紀「えっ!?」

    早苗「あら、良かったじゃない」

    右京「片桐さんの手助けのおかげですねぇ」

    友紀「!…あ、ありがとうございます!」

    早苗「あーいいのいいの。こういうのって持ちつ持たれつだから」

    右京「勿論簡単なお仕事ではありませんよ」

    友紀「う、うん!頑張る!」

    早苗「…でもアンタ、どうすんのよ。あの子は」

    右京「それはまた別の話です」

    早苗「…まあ、名刺渡したところで来るかどうかも分かんないからね…」

    右京「そうですねぇ…」

    早苗「…何よその顔。まるでもう来るみたいな…」

    右京「…ンフフ」

    早苗「…やっぱアンタ苦手だわ、アタシ」

    右京「そう思われているようですねぇ」

    友紀「さ、早苗さん!」

    早苗「あーはいはい。もう言わないから」

    右京「…」

    早苗「良い相棒が出来たみたいじゃない。今度は大事にしなさいよ」

    右京「…ええ」

    友紀「…?」

    78 = 1 :

    「それじゃ!お疲れ様ー!」

    「「お疲れ様でしたー!」」

    「お、お疲れ様でしたー!」

    早苗さんの掛け声に始まり、会場の一室でアルコールの無い小さい打ち上げが始まった。

    アタシみたいな小さな役柄の人間にもその場を与えてくれて、少しでも盛り上がりを分かち合えるよう尽力してくれたんだろうなぁ。

    …。

    それでも…。

    「…」

    右京さんは出された物は口にせず、ただ笑顔でみんなと談笑していた。

    …まあ、確かにあの人が変わった人だっていうことはなんとなく理解出来る。

    けれど、別にそんな事で煙たがれる人には見えない。

    …それでも、やっぱり気になる。

    さっき、早苗さんが言った言葉。

    「今度は」大事にしろ。

    「…」

    …あれって、どういうことなんだろう。

    …右京さんは、アイドルを大事にしない人?

    …いや、それは考えにくい。

    アタシの為にどれほどプライドを削っていると思ってるの?

    …本当は、知ってる。

    さっきの仕事の件だって、責任者の人が頼み込まれたって言ってたから。

    「…」

    なら、一体何がどうなって、右京さんは今みたいな地位になったんだろう。

    …。

    ……。

    そして、そのアタシの疑問は。

    …意外な形で解消されることになったんだ。

    …ただ、アタシはこの時その疑問を遥かに上回る事を思い出したんだ。

    そう。

    「…………え?イベント…来週?」

    第二話 終

    79 = 1 :

    また書けたら続き投下します

    80 :


    右京さんとしゃべってたスタッフさんが官房長で脳内再生された

    82 :

    相棒とかいうアイマスとのクロスSSが多い刑事ドラマ

    83 :

    あまり関係無い話かも知れないが、相棒で名刺交換の隙に相手の指紋持ち帰った回が昔あったな
    わざと自分の名刺の代わりに花の里(だったか?)の名刺を渡す奴

    85 :


    右京節最初から炸裂しまくってんな
    個人的に亀山君時代が一番好き
    次点で陣川君

    86 :

    続ききてたのか、乙

    >>69
    造語どころか、一所懸命から派生して一生懸命が生まれたのに…
    早苗さんェ…

    87 :

    おつおつ

    88 :

    面白いです、乙乙
    相棒はまともに1話視聴したことすらないが、右京の声、話し方が脳内再生されるなぁ

    89 :

    ぷるぷるするのが見れそう

    90 :

    「あの!と、ととと突然呼び出してす、すま…、ごめん!」

    「ええんどすえ。ウチもこれから暇やったから…」

    「あ、そ、そうなんだ!…えっと…」

    「どうされたんどすか?」

    「えっと…んー…」

    「…」

    「…ああああ…ど、どうしよう…」

    「どないしました?はっきりしておくんなはれ」

    「え、は、はい…えっと…」

    「…」

    「こ、これ!…これ!受け取ってください!」

    「…これは?」

    「あ、あの!か、帰ってからでも良いので!よ、読んでいただければ…」

    「…」ポイ

    「えっ…」

    「…そのやり方、気に入りまへんなあ」

    「あ、え…」

    「男やったら、どっしり構えとくんなはれ。帰ったら読めだとか…いいえ。むしろ手紙自体ウチの好みじゃありまへん」

    「…」

    「そんな女々しい態度、ウチは気に入りまへんなあ」

    「…ン゛ン゛!…わ、分かった!それなら、俺も覚悟き、決めるわ!」

    「どうぞ」

    「……お、俺…」

    「…」

    「俺、不器用で、こういう経験も少なくて…」

    「…」

    「そんなに頭も良くない。運動神経がええわけでもないし、イケメンでもない…」

    「…」

    「それでも、俺、紗枝ちゃんと…つ、付き合い思うとる…」


    「ここ、覚えとるか?は、初めて俺が紗枝ちゃんと会うた場所や…」


    「こ、こんな俺で良かったら!付き合うてくれへ…ん………か……」


    「…あれ?紗枝ちゃん…?」

    91 = 1 :

    友紀「zzz…」

    『えー、間もなくー、京都ー。京都でござい…ます』

    友紀「zzz…」

    右京「…」ペラ

    『出入り口はー、右側ー。右側…です』

    右京「おや、着いたようですねぇ。それでは、行きましょう」

    友紀「zzz…」

    右京「姫川君」

    友紀「…紅茶が…紅茶が服にかかる…」

    右京「姫川君」

    友紀「!う、ヴぇ!?」

    右京「おやおや。先程までの緊張はどうしたんでしょうねぇ」

    友紀「え……えっと…あ、着いた?」

    右京「ええ。もうすぐ止まります」

    友紀「…あー…また来た…緊張が…」

    右京「おやおや…。随分と気持ち良く寝ていたようですから、随分な鉄の心臓を持ってらっしゃると思ったのですがねぇ」

    友紀「だって…朝の5時おきだよ?緊張してても睡魔には勝てないよぉ」

    右京「夜更かしは体にも肌にも良くありませんよ。君はもっと規則正しい生活を心掛けるべきです」

    友紀「でも…流石に本番3日後とか言われても困るよぉ。こういうのってほら、もっと入念な練習とかさ…」

    右京「仕方ありません。本日出演される方が怪我をしてしまったらしいですからねぇ」

    友紀「ピンチヒッターってこと?」

    右京「ええ。それでも掴んだチャンスです。モノにしない手はない…」

    『京都ー。京都で、ござい…ます』プシュー

    右京「さて行きますよ。愚痴は歩きながらでも吐けます」

    友紀「ふぁぁ…い」

    右京「あ、それともう一つ」

    友紀「何ー?」

    右京「君、顔を洗った方がよろしいですよ?」

    友紀「え?…あ、涎出てた…」

    92 = 1 :

    右京「しかし君、随分荷物が多いようですねぇ」

    友紀「だってほら、やっぱりテレビ越しでも応援したいもん」

    右京「ああ、キャッツの応援グッズですね?」

    友紀「うん!今日は張り切って応援するつもり!」

    右京「そうですねぇ…そうなれば僕も助かるのですがねぇ…」

    友紀「?」

    右京「君がこの仕事を難なくこなせる方なら、それも出来るでしょう」

    友紀「え?」

    右京「予想集客数は最高1000人と大きなイベントに比べればさほどながらも、君はその人数の前でイベントを進めなければならないのですよ?」

    友紀「え…それってまさか…野球観れないってこと…?」

    右京「ですから、君次第です」

    友紀「無理って顔してるじゃーん!!」

    右京「欲望に身を任せ仕事を捨てるか、多少の欲は我慢し、仕事を全うして次に繋げるか」

    友紀「ぅ…」

    右京「納得いきませんか?」

    友紀「納得はしてるよ…でもついてないなぁって…」

    右京「でしたらこう考えてみてはどうでしょう」

    友紀「?」

    右京「君が仕事を頑張り続けたかいあって、やがてキャッツから何らかの形でオファーが来る…」

    友紀「…そっか…」

    右京「それもまず今回の仕事をやり遂げてからですがねぇ?」

    友紀「う…ヤバい…お腹痛くなってきた…」

    右京「…無理もありませんかねぇ」

    友紀「…もし右京さんならこんな時どうするの?」

    右京「そうですねぇ…」

    友紀「…でも右京さんって、こういう時でも平然としてそうなんだよねぇ…」

    右京「僕も人の子ですよ。人並みに緊張はします」

    友紀「絶対嘘だー!右京さんこそ鉄の心臓だよー!」

    右京「おやおや…」

    93 = 1 :

    本当にびっくりした。

    先週の着ぐるみ仕事の後、アタシは何かの間違いかと思って右京さんに再度、いや何度も聞き直した。

    けど、やっぱり日にちは来週。

    それは決定。

    何でも当日の主役が骨折しちゃったとかでイベントには出れなくなり、急遽空きのタレントを探していたそう。

    そこにたまたま右京さんが頼み込み、早苗さんの発破のおかげもあってアタシが滑り込めた、という事。

    …だけど。

    「あまりにも急じゃないかなあ…はむっ」

    「そうですねぇ…少し、僕も急ぎ過ぎたかもしれません」チュー

    今の時刻は朝の9時前。

    かなり都会の京都といえど、流石にこの時間に開いている定食屋などあるわけもなく、仕方なくアタシ達は早朝からやっているファーストフード店で朝用のメニューを注文した。

    「マフィンってやっぱ手につくね…」ペロ

    「君が頼んだんですよぉ…」

    ふと、思う。

    「ねえ右京さん」

    「何でしょうか?」

    「…右京さんって、コーヒー飲むんだね」

    「頼まざるを得ない状況になりましたからねぇ」

    「ご、ごめんって…お腹空いてたから…」

    でも、コーヒー飲んでる姿とか似合いそうだなあ…。

    …相変わらず事務所では紅茶をバチャバチャやってるけどね…。

    94 = 1 :

    友紀「それで…今日からみっちりやるってこと?」

    右京「ええ。僕はそのつもりです」

    友紀「…うぇぇ…」

    右京「どうかされましたか?」

    友紀「だってぇ…久し振りの京都だよぉ?小学校以来だよぉ…?ゆっくりもしてみたかったり…」

    右京「まず、僕らがここに何をしに来たのか。それを君は考えるべきですね」

    友紀「分かってるよー…」

    右京「僕らのような身分の人間は、交通費、宿泊費を出してもらえただけでもありがたいと思わなければなりません」

    友紀「…米沢さんに頼み込んだんだって?」

    右京「流石にぶっつけ本番というわけにはいきませんからねぇ」

    友紀「…交遊費なんてものは…?」

    右京「君のお小遣いから捻出していただければ幸いです。最も、その時間があるなら、ですが…」

    友紀「…時間無い?」

    右京「ええ。本来こうして座っている時間すら惜しいというものです。食べる事は歩きながらでも出来ますからねぇ」

    友紀「アタシも右京さんみたいに見たもの聞いたもの全部覚えられる頭があればなー…」

    右京「そんなものを言い訳にしていれば、いずれ困るのは君ですよ」

    友紀「ぁーぃ…」

    右京「とはいえ朝ぐっすりと寝てしまったせいで活動が遅れている脳には丁度良い栄養分が補給出来たかもしれません」

    友紀「…ん!まあね!じゃあ…行く?」グググ…

    右京「ええ。そうするとしましょう」

    友紀「…あのさ」

    右京「何でしょう?」

    友紀「駅で何か買う分にはアリ?」

    右京「帰りに買うのでしたら結構です。僕も、そうするつもりですからねぇ」

    友紀「え!?右京さんお土産買う人いるの!?…あ、ご、ごめん…」

    右京「お気になさらず。しかしこれがいるんですよ…」

    友紀「…米沢さんだよね?」

    右京「ええ。米沢さんも…」

    友紀「…「も」…?」

    右京「ええ。とはいえ僕も彼には色んな借りがありますからねぇ。昔も、今も…」

    友紀「へー…付き合い長いんだ」

    右京「そのようですねぇ」

    友紀「えー…完璧他人事じゃん…」

    95 = 1 :

    友紀「狭い道だねぇ」

    右京「そうですねぇ」

    友紀「あ、見て見て。向こうのゲーセン凄い人混み。子供達がたくさん…」

    右京「春休みですかねぇ。この快晴に最近穏やかになってきた気候。外に出たくなるのも分かります」

    友紀「アタシも外好きだよ。球場はもっと…」チラッ

    右京「君もしつこいですねぇ」

    友紀「分かってるよ!いつか来るキャッツの為に!」

    右京「ええ、その意気です。ですがあまり愚痴が多いとスタッフに聞かれてしまうかもしれませんねぇ」

    友紀「うぐっ…わ、分かってるって…」

    右京「おや、どうやら心当たりがあるようですねぇ。ならばそれは改めるべきでしょう」

    友紀「…右京さんって絶対腹黒だよね…」

    右京「そのようなことも言われたことがありますねぇ」

    友紀「だってさ、まず逃げ道無くしてから言ってくるでしょ?ちょっとは油断させてよ」

    右京「僕はごく普通の事を言っているだけなんですがねぇ…おや」ドン

    「…きゃっ」

    友紀「あ…ご、ごめん!大丈夫?もー…右京さん!前見て歩きなよー…」

    右京「おやこれは僕としたことが…申し訳ありません。大丈夫ですか?」

    「…え、ええ。大丈夫どすえ」

    右京「お怪我はされていませんか?」

    「ええ。気にせんといて下さい。ウチも前見んと走ってしもたんどす」

    右京「そうでしたか…」

    「…お二方は、ご旅行どすか?」

    友紀「えっ!?ち、違うよー!仕事だよー!」

    右京「ええ。彼女はまだ新人とはいえ、アイドルなんですよ」

    「それはそれは…ウチてっきり親子かと思てしまいましたわ」

    友紀「親ッッ…!?子ッ……!!?」

    右京「おやおや。確かにそれくらい歳が離れてはいますがねぇ」

    友紀「こ、この人はアタシのプロデューサー!アタシはアイドル!!」

    「そないに怒らんといておくれやす。軽いてんごどすえ」

    友紀「て、てんご?」

    右京「京都弁で、冗談。ですね」

    「ふふ。よく知っとりますなあ。お二方、東京の方どすか?」

    友紀「ん、うん…」

    「それはそれは…京都はええ所どすえ。どうか楽しんで下さい」

    右京「ええ。お心遣い、感謝します」

    「ほなウチはこれで…」

    右京「ええ。それでは…」

    友紀「じゃーねー」

    96 = 1 :

    友紀「えーっと…ホテルはこの道を真っ直ぐ…2つ目の信号を左…」

    右京「3つ目ですよ。覚えていないなら常に僕が用意したプログラムを手に持っておくべきです」

    友紀「うー…昨日ちょっとDVD観てたから…」

    右京「DVDを観る前にでも暗記出来たはずですがねぇ。道のりくらいは」

    友紀「…あー言えばこー言う…」ボソッ

    右京「何かおっしゃいましたか?」

    友紀「な、何でもない!」

    右京「そうですか」

    友紀「…あ。ねえ右京さん?」

    右京「どうかされましたか?」

    友紀「ん…あのさ、さっきの子、めちゃくちゃ可愛くなかった?」

    右京「そうですねぇ。確かに、とても綺麗な顔立ちをしていらっしゃいました」

    友紀「だよね!それにおっとりしててさー…」

    右京「それが、どうかしましたか?」

    友紀「ん?いや…ほら、スカウトとか…」

    右京「そうですねぇ…」

    友紀「あ、この間みたいに気づかれないように名刺を仕込んだとか?」

    右京「僕は何の理由も無しにそんな事はしませんよ?」

    友紀「?…じゃあ、スカウトしないの?」

    右京「そうですねぇ…今のところは、考えていません」

    友紀「え!?もったいないなー…」

    右京「僕が君をスカウトした時、何と言ったか覚えていますか?」

    友紀「?…んー………」

    右京「君、すぐに忘れますねぇ…」

    友紀「てへへ…ごめんごめん」

    右京「顔が良いだけならば、僕はスカウトはしません」

    友紀「?」

    97 = 1 :

    右京「…僕の勘が正しければ、彼女は恐らく何らかの意思を持って僕にぶつかってきました」

    友紀「…え?…わざとってこと?」

    右京「ええ。ですから避けるにも避けられなかったんですよ。この狭い路地ですから。それに凶器のような物も持っていなかったようですし…」

    友紀「考えすぎだよ…。それにわざとだとしたら何でそんなこと…」

    右京「理由は分かりませんが、彼女は恐らく君が思っている人間とは大幅に違う方だと思いますよ?」

    友紀「えー…?何かぶつかられたからって根に持ってない?」

    右京「おやおや…」

    友紀「考えすぎだって。あるわけないじゃん」

    右京「ええ。普通はそうでしょう。ですが見て下さい。この狭い路地を」

    友紀「狭いけど…何?」

    右京「ええ、狭いというのに、路地にまで出ている店の看板や石像。果ては回収されていないゴミ袋の山。前を見ずに歩いていれば僕にぶつかる前に何度ぶつかる羽目になるのでしょう?ええ、あのような角のある物にぶつかればタダでは済まないと思いますよ?」

    友紀「あー…確かに人にぶつかるよりも危ないね」

    右京「ですが彼女はこう言いました。「前を見ていなかった」と…」

    友紀「確かに、怪我してた様子もなかったけど…でもほら、携帯いじってたとか…あ、だったら携帯落とすよね」

    右京「ええ。そう思います」

    友紀「ん…んー…」

    右京「そして何故かは分かりませんし、名刺を仕込んだりもしていませんが、逆はあるようですよ?」

    友紀「ん?あれ?…それ、ハンカチ?」

    右京「ええ。そのようですねぇ」

    友紀「さっきの子?」

    右京「ええ。まるで気づいてくれと言わんばかりに僕の足元に落ちていました」

    友紀「ふーん…何で?」

    右京「何ででしょうねぇ…」

    友紀「んー…でもほら、それに関しては本当に落としたとか…」

    右京「彼女の服装、何でしたか?」

    友紀「え?…普通に、ズボンと…長袖の…」

    右京「そうですねぇ。しかし彼女の上着にはポケットが無かった。だとしたらハンカチが入っているのはズボン。それに身体にフィットするようなものです。そのフィットしたズボンのポケットからハンカチがそんな簡単に落ちますかねぇ?」

    友紀「細かいなぁ…」

    右京「ええ。細かい所がいちいち気になってしまう。僕の、悪い癖…」

    友紀「まあいいじゃん。会ったら会ったで返せばいいし、会わないなら会わないで交番にでも届ければいいし…」

    右京「そうしますかねぇ」

    友紀「…ん、何かそれ良い香り…」

    右京「お香を焚いてあるのでしょうねぇ」

    友紀「ふーん…それに結構高そう…」

    右京「ならば尚更、返さないわけにはいきませんねぇ」

    友紀「そりゃあねぇ…そんな綺麗に使ってる物…あれ?」

    右京「ええ。そうなんですよ」

    友紀「…そういえば、引き返してこないね」

    右京「ええ。それほど大事に使っているのであれば失くしたことにすぐに気がつくはず…」

    友紀「…」

    右京「…」

    友紀「…ま、考えるのやめよ?」

    右京「そうしましょう」

    98 = 1 :

    …ああ。

    この感じ、ほんまに久しぶりやわぁ…。
    歩き方、話し方、接し方、立ち振る舞い全て…。

    あれこそ、ウチが求めていた男…。

    …ああ、アカン…。

    これは、ほんまにアカンわぁ。

    『お、俺…』

    あないないちびったモンとは違う。

    年齢…そんなものどうでもええ。
    ウチは、ウチの好きなモンがええ。

    ああ、まさか友達との遊びの行きしにこないな出逢いがあるとは…。

    「駅から後を追って正解やったわぁ…」

    …普通、親子があないな格好で旅行に来るわけがない。

    …アンタらの関係がどんなもんかなんて、どうでもええ。

    ウチは、欲しいモンはとにかく手に入れたい主義なんどす。

    その為なら、思い入れのあるもんなんて捨て駒にしてもええ。

    「…」カチッ

    『こちらが今日泊まるホテルですねぇ…』

    『あ、ここ?…あ、ちゃんと別々の部屋だよね?』

    『君、そこも覚えてないんですか?』

    『え?あ…待って…あ、うん。別々…』

    『…』フゥー

    『あ、ちょ!右京さん!失望しないで!こっから!こっから巻き返すから!』

    『ちなみに君、何時に何処に行くかは覚えてますか?』

    『そ、それくらい覚えてるよ!○時に○○の○○…ってもう無いじゃん!!』

    『ええ。急ぎましょう』

    …。

    「…フフッ…」

    あのお方、右京はん言うんやなあ。

    ああ、右京…。

    ええ名前やわぁ…。

    しかし、右京はんは無理でも。

    …。

    『ほなウチはこれで…』ポイ

    『ええ。それでは…』

    『じゃーねー』ポスッ

    …。

    …あのキャップ被ったとぼけた方やったら、分からんやろなぁ。

    …鞄の中に、盗聴器放り込まれたなんて…。

    99 = 1 :

    友紀「あー!つ、着いたー!」

    右京「ええ…。本来なら…ここまで息を荒くすることはないんですがねぇ」

    友紀「…お腹空いてたんだもん…」

    右京「君は睡魔にも空腹にも、滅法弱いようですねぇ」

    友紀「しょうがないでしょー。人間の三大欲求!食べる!眠る!………あっ…」

    右京「…」

    友紀「…」

    右京「さ、行きますよ」

    友紀「…ぁぃ」

    100 = 1 :

    右京「お待たせしました」

    「あー!待ってたよー!いやー…本当に申し訳ないね!」

    右京「いえ。むしろこのような素晴らしい仕事を下さったことに感謝しなければなりません」

    「大袈裟だよー!まあ、ある程度はさ、台本あるから。それと僕らも全力でフォローするからさ!」

    友紀「み、346プロダクション所属、姫川友紀です!よ、よろしくお願いします!」

    「ん!よろしく頼むよ!…まー…ここだけの話さ、杉下プロデューサーには話したけど…」

    友紀「あ、その…休んじゃったって…」

    「そう!そうなんだよー…。実はその子も新人でさ。何だか可哀想でねぇ」

    右京「本来ここにいらっしゃるはずの方がまさか体調不良とは…いやはや、しかも身内である為、いささか複雑な心境でもあるというのが本音です」

    「本当だねぇ。でもほら、この間みたいにさ、早苗ちゃんを引っ張るくらいの度量見せちゃおうよ!」

    友紀「え?」

    「もうね、僕は確信したね。君はいつか大物になるって!」

    友紀「ほ、本当ですか?え、えへへ…」

    「だから頼むよ!1000人規模なんだからさ!」

    友紀「…それ、思い出させないで…」

    右京「大丈夫ですよ」

    友紀「え?」

    右京「人間、追い込まれれば本来の力を発揮出来るものです」

    友紀「うわー!ライオンの親みたいなことやってるー!!」

    右京「ンフフ」

    「大丈夫大丈夫!…って言えないのがね…」


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