元スレ右京「346プロダクション?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
151 :
腹黒なだけで病んではいないみたいだな
しかし始まり方がどっかのSSに似てる気がする、なんだっけ?
152 :
乙
この楽しげな雰囲気大好き
153 :
この世界の亀山くんは多分L.M.B.Gのメンバーとして活躍してるな…
154 :
ファン「薫ちゃー……なんだあのオッサン!?」
155 :
久しぶりに更新が待ち遠しいスレだ
次回も楽しみにしてます
156 :
コミュニケーション能力生かして仕事を取ってくるけど事務仕事はからきしな亀山Pとかいそう
158 :
「みんなー!準備できてるー!?」
『『ワアアアアアアア!!!』』
アタシと右京さん。
それにもう一人、紗枝ちゃん。
3人での仕事が、遂に本格的にスタートをきった。
「アタシのサイリウムの色はー!?」
『『オレンジー!!』』
まだ売れっ子アイドルだ、なんてこれっぽっちも言えないけど。
「それじゃーみんなー!いっくよー!!」
『『ワアアアアアアア!!!』』
アタシは、この現状に満足している。
…勿論、目指すところはトップアイドルだけど。
「気持ちいいよねー!?」
『『一等賞ー!!!』』
こんな幸せな日々が、いつまでも続くといいなあ。
※参考動画
http://youtu.be/CTl1BDngldc
159 = 1 :
右京「とても良かったですよ。君のファンもとても楽しそうでした」
友紀「うん!ねえ次のお仕事は何?」
右京「そうですねぇ…2時から○○ビル内にて雑誌のインタビュー、5時からは○○スタジオで番組の撮影ですかねぇ」
友紀「うん!分かった!」
右京「君、とても楽しそうですねぇ…」
友紀「当たり前だよ!こんな楽しい事無いって!」
右京「そうですか。君が楽しそうで何よりです」
友紀「えー…もっとこう…ないの?一緒に盛り上がるとか…」
紗枝「右京はんがそないな事すると思いますか?」
友紀「だって、いつも何考えてるのか分かんないし…右京さんがこう…めちゃくちゃ楽しい時って、何なの?」
右京「楽しい時、ですか…」
友紀「うん」
右京「僕も毎日が楽しいですよ?」
友紀「えー…本当に?」
右京「ええ。中でも、君達が喜んでいる時が一番ですかねぇ」
友紀「ングッ…!!またそうやって恥ずかしいことをー!」
紗枝「いややわぁ。ウチが喜んどる時が一番だなんて…」
友紀「…アタシも入ってるぞー…」
紗枝「…ほな右京はん。ウチも行ってきますわ。ウチのこと、ちゃんと見といて下さいな?」
右京「ええ。勿論見ていますよ。ですから…」
紗枝「頑張って下さい。もう右京はんが次に何言うかなんて分かっとりますえ?」
右京「それは何よりです」
紗枝「ウチも右京はんのこと、よう見とりますからなぁ…」
友紀「ほーら!早く行かないと遅れちゃうよ!」
紗枝「そんな急かさんと…もしかして友紀はん…」
友紀「ほら早く早く!見ててあげるから!」
紗枝「うふふ…」
160 = 1 :
今日アタシ達が来たのは、都内にある公会堂。
そこでは新人のデビューシングルを歌わせてもらえるイベントが定期的に行われていた。
これでアタシ達もまた、歌手としてようやく本格的にデビューすることが出来たってことなんだよね。
勿論、ここでのお客さんやスタッフの印象が悪ければ、その後の仕事に響くということもあり、それなりにプレッシャーは感じていた。
でも、アタシや紗枝ちゃんは他の人に比べたら大分幸運なのかもしれない。
右京さんが色んな所に頭を下げに行って、そのおかげでラジオや音楽専門番組で取り上げてもらう事が出来たから。
だから、ちゃんとした前情報があって。
お客さん達も、みんなアタシの特徴とか、曲名とか、知っててくれた。
「…初めて人前で歌った気分はどうでしたか?」
「え?」
「まだ、余韻が残っていらっしゃるようでしたから。少しクールダウンというものをしてみては如何でしょう?」
「あ…」
難しい言い方だけど、一言にするならこうだ。
『はしゃぎ過ぎ』
「…ご、ごめん。あんまり嬉しくて」
「ええ。そのお気持ちは良く分かります。僕としても君の元気な姿を見ることほど助かる事はありませんからねぇ」
ほら。
そうやって、まるで孫でも見るかのような目でアタシを見る。
「おじいちゃんみたいだね。なんか」
「おやおや。…僕ももう、そんな年齢でしたかねぇ」
…でも、その気持ちが、アタシにとっては心地良くなってきているのも確か。
「あ、準備出来たみたい。…あ、あれって…傘?」
「蛇の目傘ですね。舞妓さんが日常生活で愛用している和傘です」
「あー…それで着物…」
右京さんって本当、何でも知ってるんだなあ…。
「でも、本当に似合ってるよね」
「ええ。ちなみにあれらは全て彼女の私物だそうですよ?」
「…えっ!?」
…さすが、京都生まれのアイドル。
※参考動画
http://youtu.be/kpiYajeu7-s
161 = 1 :
ピンク色のサイリウムが、会場内を照らす。
さっきのアタシとは違って、妖艶な雰囲気を漂わせつつも華やかに踊る紗枝ちゃんが、随分大人びて見える。
…確かに、はしゃぎ過ぎちゃったかなあ。
「…」パシャ
隣で事務的に写真を撮っている右京さんを見ると、改めて自分が舞い上がっていたという気持ちになる。
…それでも。
「…」
アタシ達を撮ったカメラの中の写真を見ている右京さんは、今までにないくらい上機嫌そうに見えた。
「…やっぱり、嬉しいんだ?」
「ええ。仲間がここまで有名になるというのは、こんなにも嬉しいものだったんですねぇ。…改めて思いました」
「…改めて?」
「ええ。…こちらの話ですが」
改めて…。
それって、昔もこんな感じでアイドルをデビューさせてたってことなのかな…。
「…!」
ふと、少し前の早苗さんの言葉が頭をよぎった。
『今度は、大事にしなさいよ?』
…あれ、結局なんだったんだろ。
今になってもよく分かんないし…。
「…」
この右京さんが、アイドルを大事にしないだなんて考えられない。
自分を犠牲にしてでも、アタシを守ろうとしたこの人が、そんな酷い人だなんて。
…無い。
少なくとも、アタシはそんな右京さんは知らない。
今、ここにいる右京さんこそがアタシの知ってる右京さんなんだから。
だから、そんな事知らない。
もし、そういう人間だったとしても、今の右京さんは違う。
だって、ずっと一緒にやってきたんだから。
「…そろそろ準備をしておいた方がよろしいと思いますよ?」
「え?」
「小早川君の曲が終わったらすぐに移動ですからねぇ。準備を早めに済ましておいて損は無い筈です」
「あ、うん!着替えてくるね!」
…ちょっと細かいところはあるけど、ね。
162 = 1 :
右京さんは、社用車をあんまり使わない。
自分の車の方が乗り心地が良いから、らしい。
「…」
だけど、紗枝ちゃんがウチにやってきて三人組になったから右京さんの二人乗りの車では移動出来なくなった。
そこだけはちょっと不満そうな顔をしてたけど、社用車でも難なく乗りこなしているところを見ると、やっぱりこの人って凄いなあって思う。
…ただ。
「右京さんってさ、壊滅的に白ワゴン似合わないよね…」
「あまり好んで乗る事はありませんねぇ」
「友紀はん、何言うてますの。ウチは右京はんが運転してくれるなら補助輪付きの自転車でも喜んで乗りますえ?」
「そんな右京さん見たらアタシ泣くよ…?」
「僕も、それは勘弁してもらいたいものですねぇ」
「例えどすえ」
別に取り合いになったわけじゃないけど、当たり前のように助手席に乗り込んだ紗枝ちゃんを見てると、本当に右京さんが好きなんだなあって改めて思う。
そりゃ、確かに頼りになるし、色々知ってるけど…。
「…」
バックミラーを見ると、結構シワのある見慣れた顔が映る。
…冷静になって考えると、結構異常だよね。
だって、例えば紗枝ちゃんが26になったら右京さんってもう定年退職してるくらいの…。
…あれ?
「…ねえ、右京さん」
「どうかされましたか?」
「…右京さんってさ、何歳なの?」
「…」
…アタシ、右京さんの年齢も、誕生日も知らない…?
163 = 1 :
「ウチも気になりますわぁ」
紗枝ちゃんが食い気味に右京さんに詰め寄る。
そういえば、右京さんってアタシに対して一度も自分の個人情報を話したこと、ない…よね。
「…」
アタシ達の質問に、右京さんはただひたすら黙っている。
今更隠すような仲でもないのに。
…っていうか隠すような事でもないのに。
「ほら、右京さんの誕生日とか祝ってあげたいから!」
「そうどすえ。ウチなんてもうそれはそれは盛大に祝いたいと思っとります」
「あとはね、右京さんの好きな物とか…」
「どんな京都の若い女子が好みか…」
「あ!行きたい所とか!」
「ウチは右京はんと一緒なら…」
「ちょっと紗枝ちゃん静かにして」
「あら、いけず…」
「…」
…あれ?
もしかして、話したくないのかな…。
…祝われるのが、嫌い…とかってわけじゃないみたいだけど。
「…」
多分、この質問には一生答えてくれなさそうだなあ。
「…もしかして、こういうの苦手?」
「苦手ではありませんが、特に答える事でもありませんからねぇ」
「えー!?そんなの寂しいじゃん…」
「でしたらこういうのはどうでしょう?」
「?」
「僕と君が初めて出会った日が、誕生日ということで」
「…えええ…そんな拾った犬みたいな…」
「その程度の認識で構わない、ということですよ」
…なんだか、複雑だなあ。
誕生日も、年齢も、家も、過去も、知らないのに、こうやってほぼ毎日顔を合わすのって。
「せやけど、連絡先は教えてくれましたやんか」
「連絡先が分からなければいざという時に困りますからねぇ」
「んー…」
…やっぱり、教えてくれなさそうだなあ。
164 = 1 :
友紀「…」モグモグ
紗枝「…」ハムハム
右京「すみませんねぇ。先程の渋滞が無ければ、何処かの店に入って少しゆっくりと昼食を取る予定だったんですが」
友紀「ん、でも忙しいって証拠だよ!気にしない気にしない!」
紗枝「ウチ、昼食にコンビニのパンなんて初めてやわぁ…はむっ」
右京「おや。やはり、あまりお気に召しませんでしたか?」
紗枝「いいえぇ。今までこういう時は必ずお弁当を持たされとったんどす。せやから何だか新鮮で…」
友紀「あー…もしかして箱入り娘ってやつ?」
紗枝「…せやなぁ。そうかもしれまへんなぁ」
友紀「あ、ご、ごめん…ちょっと軽い気持ちで…」
紗枝「ええんどす。来る日も来る日も電話がかかってくるさかい、なんて過保護な親なんやろかと思いましてなあ…」
右京「それだけ君を大事にしている証拠ですよ。悪い方向ばかりでなく、良い方向にも目を向けてみるべきです」
紗枝「…それでも、実家での暮らしはほんまに息が詰まりそうでしたわ」
友紀「…よく説得出来たね。アイドルになるって…」
紗枝「うふふ。それはまあ、簡単でしたわ」
友紀「え?」
紗枝「ウチ、ほんまは説得なんてしてまへんの」
友紀「…な、何をしたの?」
紗枝「父親の不貞をちょこっとネタに使うただけですわ」
友紀「うわー…腹黒…」
紗枝「不貞をやらかすあの人が悪いんどす。浮気する男は女の敵やさかい…」
右京「君、意外と探偵向きかもしれませんねぇ」
紗枝「ほな一緒にどうどすか?トップアイドルになった後は2人でゆっくりと…」
右京「…約束は出来ませんねぇ」
紗枝「あら…冷たいお返し…」
右京「君がそうなっている時は、僕はもう動けなくなっているかもしれませんから」
友紀「ブフッ」
紗枝「そんなんウチが何でもしますさかい。気にせんといて下さいな」
右京「君が気にしなくても、僕が気にするんですよ」
友紀「…でもさ、現実問題右京さんって結構ムリしてない?」
右京「ムリ、というのは君達も変わりませんよ」
友紀「でも、アタシ達は…何と言うか…」
右京「お心遣い、どうもありがとう」
友紀「…何かごめん」
165 = 1 :
右京「しかし君達にムリをさせているのは間違いないんですよ」
紗枝「ウチらが?」
右京「ええ。あれ程の大人数やカメラの前で何かをするというのはかなりのプレッシャーがあるというものです」
友紀「確かに今はまだちょっと緊張したりするけど、でもやってけば楽しみも分かるんでしょ?」
右京「おやおや…」
友紀「右京さんがそう言ってくれたからさ。だからとにかくやり続けることにしたんだ。そしたらきっとそのうち慣れてくはずだし」
右京「そうですか…でしたら、次のお仕事のような時も、慣れていっていただけたら幸いです」
友紀「?」
紗枝「次は…雑誌のインタビューどすなぁ」
友紀「アタシで、紗枝ちゃんで…」
右京「ええ。それと対談もあるんですよ」
友紀「対談?アタシと紗枝ちゃんの?」
右京「いえ」
友紀「…?」
166 = 1 :
『さて、今回先輩アイドルと、新人アイドル。お互いがお互いをどう思っているのかを率直に聞かせていただきたいのですが…』
瑞樹「そうですねぇ…まだまだ出てきたばかりとはいえ、色んな所に引っ張りだこで、瑞樹も負けてられない!って思っちゃいますね!」
『姫川さんと、小早川さんは?』
友紀「え!?えー…」
紗枝「そう…どすなぁ…」
『川島さんという同じ事務所の先輩アイドルに対し、どのような思いを持ってらっしゃいますか?』
友紀「そ、それは勿論、尊敬してます!はい!」
紗枝「ウチも川島はんのようにハキハキと喋る余裕が欲しいどすわぁ」
瑞樹「あらまぁ…瑞樹照れちゃう!」
友紀「は、ははは…」
紗枝「うふふ…」
友紀「(慣れてくって、こういうアレ…?)」
167 = 1 :
とにかく驚いた。
車を出る瞬間、ああ。と言い忘れていたかのように告げられた対談の相手。
その人は、同じ事務所の先輩、川島瑞樹さん。
早苗さんと同時期にデビューして、メキメキと頭角を現している実力派アイドル。
「何かのサプライズでも狙ってたのか知らないけど、そんなサプライズ、嬉しくないよ…」
「おやおや。いつ何時も真剣に取り組むべきだとも言ったはずですよ?」
「えー…」
「その、川島はんって方はお優しい方なんどすか?」
「分かりませんねぇ。一緒にお仕事をしたことがないものですから」
瑞樹さんがどういう人なのか。
怖い人なのか、優しい人なのか。
早苗さんみたいに豪快な人なのか、右京さんみたいに細かい人なのか。
どういう人かは分からないけど。
…その答えは、割とすぐに分かった。
「あら心外ですね。顔くらいなら何度も合わせてるじゃないですか」
「はいぃ?」
「あっ!……は、初めまして!姫川友紀です!」
「こ、小早川紗枝どす」
「川島瑞樹です。ちゃんと教育出来てるみたいですね。杉下係長?」
「そうですねぇ…恐らく彼女らの順応が早いのでしょう」
「あらあら…相変わらず謙虚なんですから」
…この人が、川島瑞樹さん…。
まさか、現場に一人で来るなんて。
…あ、そういえば早苗さんも一人で来てたっけ…?
「まだ新人ということで至らない点もあるかもしれませんが、どうかこの2人をよろしくお願いします」
「そんな…上司がそんな簡単に頭を下げたらダメですよ?」
「今日は、お世話になる立場ですから。そこに上司も部下もありません」
…でもなんだろう。
この人は、早苗さんに比べて、凄い柔らかい接し方だなぁ。
「ではこちらからもよろしくお願いします」
「ええ。今後とも…」
早苗さん…個人的に何かされたのかな…?
168 = 1 :
『先輩として、何か伝えておきたいことなどはありますか?』
瑞樹「そうですねぇ…やっぱり、若さはいつまでも持ってて欲しいということですね!」
友紀「若さ…」
『若さ、ですか?』
瑞樹「ええ。それは肌とか、顔とか、身体とか。色々あるかもしれませんけど、一番は気持ち!若いウチはとかじゃなくて、いつまでも若い気持ちでいること!…それが大事なのよ?」
紗枝「勿論川島はんも、若い気持ちで?」
瑞樹「そうね。学ぶ事は常にあるから。だからいつまでも初心を忘れずに、常に一年生という気持ちでいたいのよ」
友紀「へー…立派だなあ…」
瑞樹「そう思うなら、貴方もそうならなくちゃダメよ?」
友紀「あ、は、はいっ!」
『…では、今の川島さんの意見も踏まえた上で何か質問したいことなどはありますか?』
友紀「質問したいこと…?」
瑞樹「何でも良いわよ?答えられる範囲なら…」
友紀「答えられる範囲…あ!」
瑞樹「何かしら?」
友紀「…えーと…でも、ここだと聞けない…かも…?」
瑞樹「あら、もう伝説を作る気?」
友紀「い、いえ!そういうアレじゃなくてですね!」
紗枝「…そうどすなぁ…ほな、同期の片桐はんについては…」
瑞樹「あ、早苗ちゃん?」
紗枝「ええ。やっぱり親しいんどすか?」
瑞樹「そうねぇ…最近になって、割と話すようにはなったわね…」
友紀「え?同期なのに?」
瑞樹「ええ。つい最近。2人で特番やって、その収録の前に一回お酒を飲み交わしたことが交流の始まりね」
紗枝「大人の方々はやっぱりお酒なんどすなぁ…うふふ」
瑞樹「まあ、そこで大喧嘩したのだけれど…」
友紀「えっ?」
瑞樹「私達、喧嘩から始まったのよ?」
紗枝「…ほー…」
瑞樹「…ま、そこからは普通に仲良くなったけどね」
友紀「なんか、漫画みたいですね」
瑞樹「そうねぇ…確かにそうかも。…ふふっ。変なの…」
169 = 1 :
瑞樹さんと話して1時間程。
その時間は割とすぐにやってきて、アタシ達の今日2本目の仕事が終わった。
瑞樹さんは意外とあっけらかんとしていて、アタシ達の質問にもポンポンと答えていってくれた。
…元アナウンサーともいうこともあり、結構厳しい事を言われるかと思ったけど、違うんだなあ…。
全く…右京さんめ。
「…全部分かってて言わなかったんだね?」
「はて、どういうことですかねぇ…」
「あー!ごましてるー!」
「ンフフ…」
けど初めて知ったことがもう一つあった。
この人、見た目に反して結構お茶目なところもあるんだ。
…仲良くなれた証拠なのかな。
だとしたら、なんか嬉しく感じる。
「…まだ時間には余裕があるようです。10分程ここで休憩するとしましょう」バッ
「あ、うん!じゃあちょっとトイレ行ってくるねー!」
「あらまぁ…女子がトイレだなんて、はしたないどすえ」
「あはは。ごめんごめん!ちょっと待っててねー!」
170 = 1 :
…。
友紀「…次は番組撮影かー…」ジャー
瑞樹「緊張するかしら?」
友紀「緊張、しますね…」
瑞樹「変に力み過ぎちゃダメよ。ロクな事にならないから」
友紀「あはは。右京さんにも言われました…はしゃぎ過ぎるなよって」
瑞樹「誰でも言うわよ。こういうのは適度に力を抜くって事も覚えなきゃ」
友紀「は、はい…」
瑞樹「…」
友紀「…」
瑞樹「…で?」
友紀「え?」
瑞樹「聞きたいことって、何かしら?」
友紀「え…」
瑞樹「あるんでしょう?聞きたいこと」
友紀「…」
瑞樹「まあ、何が聞きたいかなんて分かってるけれど」
友紀「…えっと」
瑞樹「右京さんの、過去の話よね?」
友紀「…」
瑞樹「…違うかしら?」
友紀「…いえ、その事です」
瑞樹「前に早苗ちゃんと仕事したって聞いたけれど、その時は聞かなかったのかしら?」
友紀「…んー…アタシが結局途中で聞くのやめちゃったというか…」
瑞樹「あら、そんな嫌がるようななこと言ってたの?」
友紀「…その…」
171 = 1 :
…。
瑞樹「ふーん…そんなこと言ってたのね?…あの子らしいわ」
友紀「はい…何だか右京さんを煙たがってるみたいで…全員ってわけじゃないんですけど…」
瑞樹「そうね…総務部の米沢さん、今西部長………辺りかしら」
友紀「…あんな優秀なのに」
瑞樹「そうね。杉下係長は本当に優秀よ。…本当に」
友紀「なら、どうして…」
瑞樹「だからこそよ」
友紀「…だからこそ?」
瑞樹「ええ。優秀だからこそ」
友紀「それの何処が…」
瑞樹「優秀だから、色んなところに目がいくの」
友紀「…?」
瑞樹「それこそ、決して目をつけてはいけないものにも…」
友紀「…どういう…」
瑞樹「杉下係長はね、罪といつものは見逃せない主義なのよ」
友紀「…」
瑞樹「それが例え、自分の上司の不正であったとしても」
友紀「…まさか…」
瑞樹「…そういうことよ」
友紀「…」
瑞樹「彼のプロジェクトは解体。アイドルも他の事務所へ移籍。そして彼自身は…」
友紀「…あの…狭い部屋に…?」
瑞樹「ええ。けど安心したわ。今度はちゃんと上手くやっているようだから」
友紀「…でも、だからって…あんなに煙たがらなくても…」
瑞樹「…実はね」
友紀「…?」
172 = 1 :
瑞樹「彼、オーディションとか開かないでしょ?」
友紀「…そういえば…」
瑞樹「…見抜いちゃうのよ。嘘とか、本当の性格とか」
友紀「…落とすってことですか?」
瑞樹「ええ。それも数十人単位で」
友紀「え!?そんなに!?」
瑞樹「それはもう、みんな喚いて、泣いて帰ったって聞いているわ」
友紀「…えええ…?」
瑞樹「それに、彼といて思わない?ちょっと頭が良過ぎって」
友紀「…まあ、はい」
瑞樹「例えば台本一つにしても、アイドルが苦労して、数日かけてまで覚えたものを1、2分。たった一度の流し読みで覚えちゃうのよ?」
友紀「…確かに、そうですね…」
瑞樹「…オーディションで見事合格したアイドルもたまたま彼の下に入った社員も彼のそういう能力に圧倒されてね。どんどん自信を失くしていって、辞めていっちゃうのよ」
友紀「アタシはそんなこと…」
瑞樹「…まあ、貴方はね…そういうの全く感じなさそうだし…」
友紀「あ、今バカにしましたねー…」
瑞樹「ごめんごめん。…ま、そういう悪い偶然が重なってね。ついたあだ名があるのよ」
友紀「…右京さんに?」
瑞樹「ええ」
友紀「…ちなみに、何ですか?」
瑞樹「…人材の墓場」
友紀「…ッッ!!」
173 = 1 :
瑞樹「酷いあだ名でしょ?」
友紀「そんな…酷過ぎですよ!悪いのは右京さんじゃないでしょ!?」
瑞樹「ええ。でも内情を知らない人はただの変わり者としてしか見ていないのよ」
友紀「そんなっ…じゃあ、なんで早苗さんは…」
瑞樹「あの子、不器用だからね…けど嫌ってるわけじゃないのよ?」
友紀「…」
瑞樹「あの子なりに気を遣ってるのよ。これ以上余計なことをするなって」
友紀「…早苗さんが…」
瑞樹「…杉下係長だけの問題じゃないものね」
友紀「…でも、それならどうして右京さんの無実を…」
瑞樹「…私やあの子が言ったところで、変わりはしないわ。それに常に目を光らせてるみたいだからね」
友紀「…」
瑞樹「さっきのスタッフの中に、女性カメラマンがいたでしょ?」
友紀「は、はい…」
瑞樹「あれはね、役員の息のかかった監視役よ。もう何度も見てるからいい加減覚えたわ」
友紀「え…」
瑞樹「だから私も早苗ちゃんも大仰な事は出来ないの。こうやってトイレの片隅で話したり、言葉を濁して伝えることしか…」
友紀「…」
瑞樹「だからこそ、貴方達には彼の力になって欲しいのよ。あの人のお目にかかった貴方達に」
友紀「…」
瑞樹「貴方達の笑顔が、どれだけ杉下係長の心の支えになっているか、よく考えて」
友紀「…」
瑞樹「…そして、もう一つ」
友紀「…」
瑞樹「彼はまた再び同じ事をやるかもしれないわ」
友紀「…」
瑞樹「だからお願い。そうなる前に彼を止めて」
友紀「…瑞樹さん…」
瑞樹「杉下右京の正義は、時に暴走してしまうから」
友紀「…」
瑞樹「だから、止めてあげて。…相棒として」
友紀「…」
瑞樹「分かった?」
友紀「…はい」
174 = 1 :
「お待たせー!ごめんね!ちょっと瑞樹さんと話しちゃってて…」
「おやおや。確かに忙しい先輩とお話しする機会はそうありませんからねぇ」
「あんまり遅いとウチと右京はんで行ってしまいますえ?」
「あはは。ゴメンゴメン」
…。
初めて知った、右京さんの話。
やっぱり右京さんは悪い人じゃなかった、という思い。
…でも、決して良い人だけってわけでもないという思い。
「…」
時に右京さんの正義感は暴走し、自分以外も巻き込んでしまう。
完璧な人間なんて、いやしない。
右京さんにもまた、人間らしい部分があった。
…聞いたのはアタシ。
ただの自業自得。
それは勿論分かってる。
だけど、今では聞くんじゃなかったという思いが頭の中を占めている。
「…」
尊敬すらしている人の、危険な部分。
「どうかされましたか?」
「え!?い、いや、なんでもないよ…」
「そうですか。では参りましょう」
「う、うん…」
右京さんに嘘は通じない。
それは、もう分かってる。
だから今もきっと、アタシに何かしらあったということはバレてる。
「…」
ただ単にアタシが嘘を言うのが下手なだけということもあるけど。
「姫川君。早く乗って下さい」
「あ、うん…」
右京さんは、あえてそれを聞こうとはしない。
175 = 1 :
「…ほんで?」バタン
「え?」
「…瑞樹はんに、何言われたんどすか?」
「…な、何も…」
「…いじめられたんどすか?」
「そ、そんなことないよ!凄く優しい人だったよ!」
「…そうどすか。まあ、それはホンマみたいどすなぁ…」
聞いてくるのは、紗枝ちゃんだけ。
…紗枝ちゃん。腹黒な割にはアタシの事それなりに気遣ってくれてるんだなあ。
「…」
相変わらず運転席で無表情のまま車を走らせる右京さんに目をやる。
「…」
もしもこの人が、また会社を敵に回したとして。
「…」
…アタシは、止めることが出来るのかな…。
紗枝ちゃんなら、止められるのかな…。
「右京はん。ウチ、女子寮で早速友達が出来たんどすえ?」
「それは喜ばしいことです。大事にしてください」
…止めるどころか、着いていきそう…。
176 = 1 :
「…」
窓から外を眺めると、生憎の曇り空。
今のアタシの心中を物語っているかのような、そんなイメージ。
「…」
人材の墓場、杉下右京。
アタシがいるここは、果たして墓場なのか、それとも光差す花道なのか。
もし前者なら、アタシはどうするのか。
墓場から抜け出そうともがくのか。
はたまた毒を食らわば皿まで、なのか。
「…」
たまらず頭をガリガリと掻く。
その動作を訝しげに見つめる紗枝ちゃんと、何を考えているのか分からないウチさんと目が合う。
アタシには出来ない。
この2人を足場にするなんて。
…でも、一緒に引き摺り込まれる気はない。
…だから、止めなきゃ。
もし、右京さんがそうなったなら。
「…」
…。
……。
……この人を…どうやって?
第五話 終
177 :
乙
紗枝はんと右京さんの関係って神戸君と右京さんみたいな関係だな
178 :
乙。
なんかこの紗枝はんまゆっぽい…
キューティーカルテットがキューティークインテットになってしまう
179 :
これは並行世界の右京さんが346でプロデューサーやってて相棒世界とスワップってことでいいんだよね?
180 :
世界が変わってもkwsmさんとktgrさんはケンカするのねw
181 :
え?これ例の五人組の世界観でユッキのデビュー時の話でしょ?
182 = 180 :
>>181
ユッキが紗枝と幸子(予定)に深く関わりすぎてるから
パラレルワールドだろ。確か5人組の世界ではユッキは
仕事なくてヒマしてたんだから
183 :
乙
並行世界(?)でも川島さんと早苗さんは同じように仲良しなのに安心
184 :
おっつおっつ。
>>177
じゃあ消去法でダーkもといカイト枠は幸子?
185 :
幸子が悪徳記者たちをボコボコにするのか……想像できんな……
186 :
川島さんは官房長ポジションか…
187 :
そう考えるとイタミンがいないな
188 :
>>186
刺されるのか…
189 :
とりあえず幸子Pさんごめんなさい
190 = 1 :
春。
桜が咲いて、花見シーズンも訪れた。
しばらく見なかった虫も目覚め、陽気な日が続いている。
「…」
…はずなのに。
「…あー…寒い…」
朝のニュースを見ると、今日の最低気温は2℃。
放射冷却で寒い朝方は越えたからそこまではないだろうけど、まだ朝早いし、気温は多分5℃くらいなんじゃないかと思う。
「…こんなんじゃ、咲いたもんも閉じちゃうよ…」
ただでさえ寒いのが苦手なアタシにとっては、かなり嫌な温度。
早く事務所に行って、暖房の効いた部屋で休みたい。
「…」
右京さんの部屋は、狭いし、ロッカーも無いしで不便だけど、狭いからこそすぐに暖房が効く。
そこだけが唯一の利点ともいえる。
それに右京さんはアタシ達よりもかなり早く来てる様子で、入ったら既に暖房が入ってる状態だし。
…ん?
「…ちゃんと、家に帰ってるよね?」
…うん。
まあ、それは無いか。
普通に帰ってるし…。
191 = 1 :
「…」
アタシ達の一日の始まり。
一番乗りで右京さんがやってきて、エアコンのスイッチを入れて紅茶の準備をする。
その30分後くらいにアタシが来て、もう10分後に紗枝ちゃんが来る。
そして入口の横に設置してあるタイムカード代わりの木札を表にして、そこから一日が始まる。
紗枝ちゃんは平日なら学校に行って、その他の日はレッスンに。
アタシはまあ、大体レッスン…。
「…」
…でもあの木札、右京さんが自分で作ったって言ってたから驚いたなあ。
…紗枝ちゃんのは、お手製だったけど。
…。
『あ、紗枝ちゃんそれどうしたの?』
『ウチも作ってたんどす。どうどすか?』
『はー…達筆だなあ…』
『書道は日本女子の嗜み…友紀はんもやってみたらどうどす?』
『えー…苦手だなあ、そういうの…』
『…』ヒョイ
『?』
『…そうですか…』ガリガリ
『あら?右京はん…気に入りまへんでしたか…?』
『気に入らないというよりは、気になりますねぇ…縦が5mm、横が3mm大きいです』ガリガリ
『まあ、そんなに!』
『…えええ…そのくらい良いじゃん…』
『どうにもこういうのは気になって…仕方ありません』ガリガリ
192 = 1 :
…。
あの性格は、絶対直らないんだろうなあ。
「細かい事が気になるのが、僕の悪い、癖…なんちゃって……ん?」
…正門で、警備員のお爺さんと誰かが言い合いしてる…。
「いやだからね?関係者以外は…」
「何を言ってるんですか!ボクはスカウトされたんですよ!」
「いや…ならさ、名刺とか…」
「うぐっ…め、名刺は失くしました!」
「…じゃあ、ダメかなあ…」
「何故ですか!」
「…うーん…」
…あの子、何処かで見覚えがあるなあ。
薄紫の、横がハネた髪の毛に、中学くらいの姿。
「…あ!」
193 = 1 :
「いやー…助かりました!感謝してあげますよ!」
「あ、あはは…」
アタシの知ってる範囲の事を警備員さんに話すと、意外とすんなり通してくれた。
勿論、聞いたらマズそうな話は言わずに。
…でも、こんな簡単にアタシの頼み聞いてくれるってことは、それだけ、アタシは顔馴染みになったってことなのかな…。
だけど、正門を抜け、エレベーターに乗るまでの間だけでもこの子はとにかく喋る。
アタシもお喋りな方だけど、この子は、ちょっと違う気がする。
だって、アタシが初めて見たこの子は…。
「全く、ボクの可愛さを見ればアイドルだとすぐに感づく筈でしょう!そう思いませんか?」
「いや…許可無しで入れるとあの人が怒られるから…」
…こんな感じではなかった。
アタシの知ってるこの子は、もっと。
…いや。
そういえば、静かになってたのは親の前だけだったっけ?
一人でいた時は、凄く楽しそうで、こんな感じだった。
「…」
『あの子、親に飼われてるわね』
早苗さんが言ったあの言葉。
それがどういう意味なのか、流石にアタシでも理解出来る。
だけど、そうしたら疑問は残る。
それを言ったのは右京さんだけど…。
「…」
どうしてそれ程大事にしている子を、あんな所に連れていったのか。
…分かんないや。
194 = 1 :
「ここの階ですね!ここにボクが来てあげる事務所があるんですね!」
「うん。きっとすぐ馴染めるよ」
「当たり前です!ボクの可愛さでメロメロにしてあげますよ!…で?」
「ん?」
「何処に行くんですか?そっちはトイレですよ?」
「…あー…トイレの、もっと向こう…」
「え?あそこは物置部屋でしょう?倉庫って書いてありますよ!」
「……ま、とりあえず来て」
「?」
「…」
「…あ、あの…ちゃ、ちゃんと部屋はあるんですよね…?」
「あるよ。…ちょっと狭いけど…」
「狭い?…まあ狭いというのは我慢出来なくはないですが。倉庫の近くというのは……え、ここッッ!!?」
195 = 1 :
友紀「そうだよ。ここ」
「ここって…倉庫…」
友紀「ううん。見なよ、ここ」
「プロジェクト(仮)…室長、杉下右京…」
友紀「ここが、アタシ達のお城!慣れたら良いとこだよ!」
「…あの…あの人って、係長…なんですよね?」
友紀「ん…うん…」
「係長の部屋が、倉庫ですか?」
友紀「…うん」
「そしてトイレの近くですか?」
友紀「うん…良いでしょ?」
「そこだけでしょ!!しかも大して羨ましくない!!」
友紀「まあ、住めば都だから…話だけでも聞いてってよ」グイグイ
「あ、ちょ!押さないで!まだ入るとは…!」
友紀「右京さーん!紗枝ちゃーん!新しいメンバーだよー!」ガチャ
「あっ…」
196 :
3人揃ったか
197 = 1 :
右京「…」
紗枝「…」
「…あ、あはは…」
友紀「これからこっちでやってみたいって!」
右京「おやおや。貴方でしたか。お待ちしておりましたよ?」
紗枝「?…この方、どなたどすか?」
右京「説明すれば長くなります」
紗枝「一言でどうぞ?」
右京「僕がスカウトしたんですよ」
紗枝「まあ…こないちっこい子を…」
「ち、ちっこくないです!!ボクはこれでも中学生ですよ!!」
紗枝「そうどすか?それはそれは…」ケラケラ
「ぬぐっ……初対面の人になんて失礼な…!!」
友紀「あー…とりあえずさ、自己紹介とか…ね?」
「あ…ええ!いいでしょう!可愛い可愛いボクの名前、今ここで発表してあげますよ!!…ゴホン!」
右京「おやおや。気になりますねぇ」
紗枝「こないな所で大声出さんといてくださいな。響いてしゃあないんどす」
幸子「輿水幸子!!それが可愛いボクの、可愛い名前ですよ!」
右京「杉下右京と申します。こちらの着物の女性は小早川紗枝さん。そちらの貴方を連れてきた方は…」
幸子「姫川友紀さんですよね!先程教えてもらいましたから!」
右京「そうでしたか。ではまず、貴方に色々お話を伺いたいもので…」
幸子「む…何でしょう?」
右京「ええ。色々と…」
幸子「む…」
198 = 1 :
輿水幸子、14歳。
何だか気圧されるような話し方だけど、何処か遠慮がちな雰囲気があるような、そんな気がする。
「…私立○○学校…」
「あれ?その学校名って何処かで聞いたことある…」
「ええ。都内にある中・高・大学とエスカレーター式になっている学校ですねぇ」
「え!あそこって…超エリート校じゃないの!?」
「フフーン!ボクは頭脳も完璧ですからね!」
あー…そういえば早苗さんも右京さんも絶対頭良いって言ってたなあ…。
「せやけどそない頭の良え学校の方がようこないなお仕事する気になりましたなぁ」
「完璧なボクはこの程度の事、造作もありませんよ!」
…確かに、エリート学校の人って聞くと、常に勉強勉強みたいな感じがするなあ。
…意外とそうでもないのかな?
「そしてボクを完璧なまでのアイドルにする、杉下さん!」
「完璧かどうかは別として、どうかされましたか?」
「まずこの部屋はなんですか!一人一つ物を置くスペースは用意して下さい!ギュウギュウ詰めじゃないですか!!」
「本来は倉庫ですからねぇ。2人もいれば満員だったんですが…」
「ならばスペースの広い場所を確保するべきです!係長ともあればもう少し広い…場所を…」
「…」
「あー…幸子ちゃん。あのね?」
「…いえ、まあこの部屋でもやりようはありますからね!許してあげましょう!」
「え?」
「…さ、ボクに聞きたいことがまだまだあるんでしょう!どうぞ聞いてください!」
199 = 1 :
「…」
…まるでアタシの言葉を遮るように被せてきた。
…きっと気づいたんだ。
隔離された狭い部屋。
直されない部屋の名前。
与えられたそれなりの役職。
アタシが数日かかってようやく理解した事を、この数分で。
そしてそれに関して何も言わない。
それは取るに足らないことだという優しさなのか、ただの現実逃避なのか。
…この時のアタシには、まだ分からなかった。
200 = 1 :
右京「成る程。貴方がとても聡明な方だということがよく分かりました」
幸子「そうでしょうそうでしょう!もっと褒めて下さい!」
右京「僕としては今すぐにでも貴方を採用したいところなんですがねぇ…」
幸子「どうしました?」
右京「ええ。未成年者を採用するには、親御さんの許可が必要なんですよ」
幸子「…」
右京「ですので、親御さんの許可を頂ければと思いまして…」
幸子「…そ、それって…どうしても必要ですか…?」
右京「ええ。これはルールですので。…勿論父親母親、どちらでも構いませんので」
幸子「…」
右京「いつでも構いません。僕はいつまでも待っていますので」
幸子「…は、はい…」
友紀「…」
紗枝「…」
右京「…」
幸子「…分かり…ました…」
右京「…それでは、お待ちしております」
幸子「はい…」
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