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    元スレほむら「巴マミがいない世界」

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    301 = 1 :

    杏子が舌打ちをした。

    杏子「……てめえに関係あんのかよ。ワルプルギスの夜と戦うのに、あいつは必要ないんだろ?」

    ほむら「いろいろと事情があるのよ。その様子だと、やはり心当たりがあるのね」

    杏子「……」

    杏子の機嫌が、みるみる悪くなっていく。

    これ以上踏み込むのはまずいだろうか。
    しかし、できればさやかの状態は細かく把握しておきたいのだが……

    そんなことを考えていると、杏子がため息を吐いた。

    杏子「……もういいだろ。あいつのことは放っておいてやれ」

    ほむら「……どういう意味?」

    杏子「あいつはあたしらみたいな、魔法少女になるべくしてなったような人間じゃねーんだよ。いや、あんたのことは知らないけどよ……」

    ほむら「……」

    これは、わかりにくいが……さやかのことを評価しているのだろうか。
    自分とは違い、真っ当な道を歩める人間という評価は、彼女にとっての称賛に値するはずだ。

    しかし、それにしては投げやりな態度というか……どこか、諦めたような印象を受けるのは気のせいだろうか。

    302 = 1 :

    ほむら「美樹さやかのこと、ずいぶん気に入っているのね。いつの間にそんなに仲良くなったのかしら」

    杏子「……誰がそんなこと言ったよ。身の程をわきまえずに契約したことに、あきれてるって言ってんだ」

    ほむら「……?」

    ……だからこそ馬が合わず、ああして争っていたのでは?

    ほむら「話が見えてこないわね。それでなぜ、彼女を放っておこうなんて結論になるのかしら。あなたは、そんな気に入らない人間を無視していられるような性格ではないでしょう?」

    杏子「……勝手に人のことを決めつけてんじゃねーよ」

    ほむら「あら、違っていたかしら」

    杏子「……」

    どうも杏子の様子がおかしい。
    ここまで言われれば、普段の彼女なら必ず反発してくるはずだ。

    一体、さやかと何があったのか──

    303 = 1 :

    ほむらが黙って杏子を観察していると、観念したかのように、杏子が口を開いた。

    杏子「……あいつは、どこまでも真っ直ぐなんだよ。本来なら、あたしなんかと道が交わることはなかったはずだ」

    ほむら「美樹さやかがそんな性格だったからこそ、あなたと衝突したのではなかったの?」

    杏子「そうじゃねえ。そもそもの話、あいつは魔法少女なんかになるべきじゃなかったって言ってんだ」

    ……そんなことを言い出したら、魔法少女になるべき人間なんて存在しないと思うが。
    まぁ杏子としては、自分がそういう人間であり、さやかはそうではなかったと言いたいのだろう。

    確かに、大抵の時間軸でさやかが魔女化してしまうことを考えれば、杏子の言うことも、一理はあるように思える。

    ほむら(もし、さやかに魔法少女としての素質がなかったら……)

    もしさやかに魔法少女の素質がなかったら、それこそ杏子と知り合うことすらなかっただろう。
    魔女の存在も知らず、杏子の言うように真っ直ぐ、明るい日々を過ごしていたはずだ。

    いや、さやかだけではない。
    これまで魔法少女になった少女たちは、なまじ素質があったせいで、運命をねじ曲げられてしまったのだ。
    もちろん元凶はキュゥべえだが、もし素質が備わっていなかったらと考えると、やはり運が悪かったとしか言いようがない。

    304 = 1 :

    ひとつだけ訂正するとすれば、素質があったことが悲劇かどうかは、当人が決めることだということか。
    いうまでもなくほむらは、自身に素質があったことを悲劇だとは思っていないし、契約したことも後悔していない。
    むしろ、あの場でまどかを救う手立てを有していた幸運に、感謝していたくらいだ。

    ほむら「……」

    杏子「もうあいつには、何を言っても無駄さ。あたしは諦めたよ。気の済むまで、好きにやらせておくつもりだ」

    ほむら「好きに、とは?」

    杏子「正義の魔法少女さ」

    ほむら「……なるほどね」

    これまでの時間軸で、さやかが素直に正義を目指せていたことは少ない。
    この時間軸でも、何も起こらなければ、さやかはそうなっていた可能性が高いはずだった。

    つまり、杏子が行動を起こしたのだ。

    自分は関与せず、さやかの好きにさせるという言い方をしているが、実際は逆だろう。
    恐らく、杏子がさやかの背中を押したのだ。

    別に、そこをつつこうという気はない。
    重要なのは過程ではなく結果だ。

    考えるべきは、この影響で、どういった状況が生まれるかということだ。

    305 :

    元はさやかに素質なんかなくて(アニメ1・2周目で契約が確認できない)
    ほむループで因果が重なって魔法少女になったって説があったような

    大概まどかの隣にいるわけだから

    306 :

    >>305
    だったら終盤であんな弱いはずないでしょ

    307 :

    >>305
    いくらさやかとまどかが近しいとはいえ、さやかだけが特別強化されるってのは納得いかんな。
    初期のさやかが契約して無いのは、さやかを魔法少女にするメリットがないからじゃね?
    QBにとって、さやかを魔法少女にするのはまどかを魔法少女にする手段みたいなところがあるし。

    308 :

    メリットならあるじゃろ
    QBとしちゃ誰であれ思春期の少女が絶望してエネルギーをくれるなら、それに越した事はないんだから
    まどかの因果が重なったから、餌に使うさやかの優先順位が上がったってのは確実にありそうだけど

    あと、あんな弱いって言うけど初戦で死ぬ方が多いクソみたいなシステムの中じゃさやかは強い部類じゃね
    周りが女神まどかと、ループを重ねたほむらと、ベテランのあんことそのお師匠のマミさんだから相対的には最弱だけど

    309 :

    QBは大した素質もない候補と無理に契約しようとはしないぞ。
    エネルギーが取れるのは「絶望して魔女化した時」だけだから、素質のない魔法少女じゃ魔女に殺されて
    エネルギーを回収できない恐れがある。
    奇跡は先払いだから、収支はマイナスになっちゃうんだから。

    あと、さやかは魔法少女として見たら間違いなく弱い。
    初戦で死ななかったのは不意を打てたからだし、その後も戦えたのはベテランのフォローがあったから。
    さやかの能力でソロだったら、すぐに魔翌力が切れて再生できずに死ぬのがオチだ。

    310 :

    その理論で行くと、めがほむは契約してもらえるはずないでしょうよ
    元は時間停止でリソース使い果たしてゴルフクラブ持ち出す子だったんだから
    少なくともさやか>めがほむなんだから契約しない理由はない

    なぜ契約しなかったかといえば、1周目や2周目ではまだ素質がなかったから
    ……という説は、別におかしくは思えないけどな

    311 :

    精神的な脆さとそこから来る寿命の短さが致命的レベルではあるけど短期的な戦闘力ではさやかはそう弱くは無いと思う
    ほむらの場合特殊能力に全振りしちゃっただけでくるみ割りとか魔獣編見る感じ元々の素質は割とでかそうに見える
    魔獣編とくるみ割り(と不意打ちとはいえ概念から力を一部もぎ取ったこととそこから宇宙改編まで出来たこと)しか根拠が無いから周回ブーストや改編の影響がほむらの素質を後付けで強めた可能性はあるけど

    312 :

    >>309
    魔女にならないと得しないのに、そうやって厳選採用していても
    まだ初戦で死ぬ魔法少女の方が多いんならシステムとして破綻してるな

    313 :

    まあさやかは致命的に魔法少女に向いていない性格はしているな
    正義感は強いくせにまどかを結界に連れ込むし(ついていきたいといっても断るのが本来正解マミさんみたいに結界を張って守る発想も持ってない)
    一方でスペック面はバランスが取れていてのびしろもあるから宝の持ち腐れという

    314 :

    まどかの性格で、危ないからついてきちゃダメって言ってはいそうですかって引き下がるかと言われると
    さやかが失踪した時は夜通し探していたし、そもほむらに契約を止められても何度も何度も誰かのためにしようとしていたし

    315 :

    >>314
    この場合論点はまどかが引き下がるか下がらないかじゃなく『魔女から人を守る』を目的としているさやかが一般人を魔女退治に同行させていることが問題ってとこだろう
    ただでさえ実力不足だしマジカルバット装備させているわけでもないし使い魔や魔女の攻撃の流れ弾でまどかが死んだら十分な保護をしていなかったさやかの責任になるんだし
    内心一人で戦うのが不安だったんだろうがマミさんの一件あった後だしもっと危機感もって強く同行拒否すべきだろう『正義の味方』ならね

    316 :

    ほむら(正義の魔法少女、か……)


    これで、今後のさやかの行動パターンはほぼ確定した。

    使い魔を発見すれば、確実に撃破しようとするだろう。
    また、どれほど強い魔女が相手でも、決して逃げることはないだろう。

    自身のソウルジェムの濁りなど、何の躊躇いにもならないはずだ。

    ほむら「……」

    それはもはや、本来の魔法少女の生き方から大きく外れていると言っていい。

    そもそも、大抵の魔法少女は自分が生き抜くことを最優先に行動している。
    それでも、彼女たちが生き残る確率は、そう高くない。

    それがキュゥべえにとっての、都合のいいバランスなのだろう。
    しかしそれも、さやかのような生き方は考慮していないはずだ。

    先は長くない。
    魔女に敗れるのが先か、ソウルジェムが限界に達するのが先か──

    いずれにせよこのままだと、そう遠くないうちにさやかは破滅を迎えるだろう。

    317 = 1 :

    できれば避けたいところではあるが……

    ほむら(……無理ね。恐らく、この結末は変えられない)

    他ならぬ杏子がさやかの生き方を認めてしまったのだ。
    もはや、さやかが揺らぐことはないだろう。
    どう考えても、ほむらの言葉で説得できるとは思えない。

    さやかの未来は確定したものとして、計算に入れるしかない。

    ほむら(……となると、問題はひとつ)

    考えるべきは、さやかの破滅のタイミング。

    つまり、ワルプルギスの夜が到来するまで、さやかが保つかどうかだ。

    ──あと、約2週間。

    巴マミがいない以上、ワルプルギスの夜を倒すためには杏子の力が必要不可欠だ。
    少なくともそれまでは、さやかの魔女化は防がなければならない。

    しかし──

    318 = 1 :

    ほむら(……わからない)

    これからの魔女の出現頻度。
    その強さ。
    それに対してさやかが使用する魔法。
    その使用に伴い蓄積される穢れ。

    いくらほむらにこれまでの経験があるとはいえ、さすがに不確定要素が多すぎる。
    容易に計算できるものではない。

    それでも、経験から感覚的に判断するとすれば……

    ほむら「……」

    ……ギリギリ、だろうか。

    予想外の事態が起こらない限りは、ワルプルギスの夜が到来するまでは耐えられるように思える。

    勝算は、これからのさやかが、精神的な理由から穢れを溜めることはほとんどないと予想できるからだ。
    悩みを吹っ切って前向きに戦闘に取り組める現状なら、さやかも後ろ向きな思考に陥ることはそうないはずだ。

    もちろん、ワルプルギスの夜との戦闘は間違いなく不可能だろう。
    どれだけいい状況が続いても、さやかのソウルジェムはそこで限界に達するはずだ。
    しかし、その日を無事に迎えることさえできれば、いくらでも手の打ちようはある。

    さやかを言いくるめるか、あるいはワルプルギスの夜を倒すまで杏子をごまかすか……

    とにかく、ワルプルギスの夜を倒すことだ。
    そこさえクリアできれば、あとは誰がどうなっても構わない。

    319 :

    こんなこと考える女子中学生なんておるんかね・・・
    素直に「最強クラスの魔女がもうすぐ見滝原に来るから、それまで死なないでくれ」と言えばいいような気がするけど

    320 :

    ほむほむはもうただの女子中学生じゃないからな……
    親友が死んだり、心を通わせられなくなったりって場面をループする度に何回も繰り返してる
    まどか以外の死に対する感受性がすり減ってしまっていてもおかしくない

    アニメ本編でもさやかの遺体は荷物扱いだし、杏子にお前も人間じゃねえよって煽り入れてるし

    321 :

    ほむらのループがたった1ヶ月とはいえ、何十周、下手すりゃ何百周もしてる。
    少なめに見積もって百数十周としても、もう20代後半よ?
    しかも常に最前線にいる20代とか、その思考パターンは想像もできんわ。

    ケリィとかエクストラの赤チャに近い生き方してるし、ワルプル倒してまどかの魔女化を防ぐ目的以外、
    全部摩耗しきってるだろ。

    322 :

    煽りに関しては、ほむらに限らず……というかまどマギに限らず
    虚淵の作品の大半で登場人物が煽り合って対立するからな

    お前そこもうちょっと対話できるだろ、の積み重なりで全員不幸になるの繰り返し

    324 :

    さやかにとっても、絶望して魔女になるよりは、最後まで彼女のままでいられる方がいいはずだ。
    さやか自身が納得しているのなら、これ以上ほむらが口を出すべきではないだろう。

    ほむら「……悪くないアドバイスかもしれないわね。少なくとも、美樹さやかのような人間が魔法少女になってしまった時点で、希望なんてほとんどないのだから」

    半ば本心から、ほむらは杏子に同意した。

    だが、ほむらの言葉に杏子の様子が一変する。

    杏子「……てめえ、わかってやがったのか?」

    ほむら「……何が?」

    ほむらがキョトンとして聞き返すと、杏子はほむらに怒鳴りつけた。

    杏子「とぼけんな! あいつが……さやかが、とても魔法少女としては生きていけないような奴だって……わかってやがったんだな!?」

    ……あぁ、そういうことか。

    ほむら「まぁ、そうね」

    杏子「だったら、だったらなぜ……!」

    ほむら「……」

    325 = 1 :

    『なぜ、契約を止めなかったのか』

    そう言いたかったのだろうが、その先の言葉は出てこなかった。
    当然だ、杏子もわかっているのだろう。

    しかし、ほむらはあえて指摘した。

    ほむら「言っておくけれど、彼女が契約した要因の大部分は、あなたが占めているわよ」

    杏子「……っ!」

    だから、言えない。
    最も責めるべきは、杏子自身なのだから。

    杏子「わかってるよ……くそっ!」

    そう言い捨て、うなだれる杏子。

    後悔しているのだろうか。
    だが、ほむらはそんな杏子を見ても、もはや何も思わなかった。

    ──どうせ、次の時間軸では忘れている。

    326 = 1 :

    ほむら「……!」

    無意識にそんなことを思っていたことに気付き、ほむらは軽く首を振った。

    この思考はダメだ。
    やり直すことが当たり前になってはいけない。
    まだこの時間軸でも希望はある。
    諦めて次に託すのは、本当に打つ手がなくなり、どうしようもなくなったときだけだ。
    それまでは、どんなにわずかな光であろうと、手を伸ばし続けなければならない。

    ほむら「……」

    杏子の後ろ向きの思考に当てられたか。
    そうでなくても、いつまでも杏子に悩まれていてはほむらの計画の支障になる。
    とりあえず、フォローのひとつくらいはしておいてやるべきだろう。

    ほむら「あまり気にしないことね。あなたの存在がさやかの契約の原因のひとつになったことは確かだけど、それだけじゃない。彼女も叶えたい願いがあったからこそ、契約したのよ」

    杏子「……」

    返事はなかった。
    ほむら自身、フォローになっていたかどうか怪しく思ったくらいなので、仕方がない。

    まぁ杏子なら、さやかと違って精神的に激しく落ち込むことはないだろう。
    そのうち切り替えられるはずだ。

    しかし──

    ほむら(……良くない兆候ね)

    杏子の中で、さやかの占める割合がかなり大きくなっている。
    もしさやかが魔女化すれば、今の杏子なら間違いなく何らかの行動を起こすだろう。
    その結果、ほむらの不利益に繋がるであろうことは、想像に難くない。

    やはり、さやかの魔女化は絶対に避けなければならないのだ。

    327 :


    相変わらず面白いわ

    328 :

    ***

    それから一週間。

    さやかのソウルジェムは、ほむらの予測に近い経過で穢れを溜めつつあった。

    しかし、さやかは学校では、極力そのような気配を見せなかった。

    ほむらも、さやかと接触することはなく、静観を貫いていた。

    表面上は、何事も起こっていないかのように、日々は過ぎていった───

    329 = 1 :

    ***

    QB「まどか、願いは決まったかい?」

    まどか「……」

    さやかが魔法少女の活動で忙しくなり、最近はまどかとキュゥべえが行動を共にすることも多くなっていた。
    キュゥべえとしては好都合であり、それとなくまどかに契約を催促していたのだが……

    まどか「ごめんね、今は特に叶えたい願いはないかな」

    QB「そうかい」

    未だにいい反応は得られずにいた。

    QB(……手強いな。この年頃の少女なら、魔法少女というだけで喜んで契約することも珍しくないんだけど)

    警戒されている、というほどではないが、安易には契約しないであろう意志が伺える。

    ほむらやさやかに何か吹き込まれたのだろうか。

    その可能性は高い。
    特にほむらは、明確にまどかを契約させない目的で動いている。
    その理由は不明だが、キュゥべえに対する強い敵意すら感じた。
    まどかに何を話していてもおかしくはない。

    330 = 1 :

    QB「焦って決める必要はないよ。一度きりの願いなんだから、後悔しないようにじっくり考えるといい」

    まどか「うん、ありがとう」

    QB「ただし、手遅れにはならないようにね。まどかがどんな願いを叶えるかはわからないけど、考えすぎてタイミングを逸してしまっては仕方がない」

    まどか「……そうだね」

    QB「……」

    まどかの魔法少女としての素質は、本当に凄まじい。
    これまでに契約した中で最も素質のあった少女ですら、比較にならないくらいだ。

    これをみすみす逃す手はない。

    簡単な話だ。
    まどかにこれといった願いがないのなら、願いを必要とする状況を作ってやればいい。

    ワルプルギスの夜がこの町に訪れたときが、絶好の機会となるだろう。
    自分の町が破壊されているのを見れば、まどかも契約する気になるはずだ。

    QB(……しかし、あまりいい状況とは言えないな)

    そのためには、ほむらたちにワルプルギスの夜を倒されるわけにはいかないのだが……

    正直今のままでは、その可能性もなくはない。

    331 = 1 :

    QB「……」

    一番の想定外は、未だにさやかが魔法少女として生き残っていることだ。
    もし3人の魔法少女が協力するようなら、ワルプルギスの夜ともそれなりに戦えはするだろう。

    まさか、倒せまでするとは思えないが……

    QB(……いや、万全を期すべきだ。万が一すらあってはならない。まどかの素質には、そこまでする価値がある)

    常識では考えられないほどの素質。
    どういう経緯でまどかにそれほどの素質が備わったのかは不明だが、研究次第では再現も可能かもしれない。
    しかし、まどかを魔法少女にできなければ、全ての可能性は霧散してしまう。

    多少強引でも、ここは確実性を重視するべきだ。

    QB(仕方がない。本来なら、あまりこういう小細工は好ましくないんだが……)

    基本的に、キュゥべえが自ら状況に手を加えることは少ない。
    魔法少女を絶望させるためには、自分自身が原因で破滅したのだと思わせることが大きな要因のひとつになるからだ。
    あのとき状況が変わっていなければ……などと、言い訳させる余地を作らせてはならない。

    しかし、どうしても放置しておくことができない場合は、容赦はしない。

    特に今回は鹿目まどかだ。
    間違っても、失敗は許されない。

    QB(──少し、手を打っておくかな)

    332 = 1 :

    ***

    ──実際、ほむらの予想は当たっていた。

    このまま何も起こらなければ、さやかが、ワルプルギスの夜が到来する日まで生き残る可能性は高かった。

    だが、仮定の話をしても仕方がない。
    何もないはずがなかったのだ。

    あの悪魔を相手に、待ちの姿勢で構えたことがそもそもの間違いだったのか。

    いずれにせよ、結果的にはほむらの考えは甘かったとしか、言いようがなかった──

    334 :


    べえさんがやるとしたら、さやかを誘導してまどかの同情を引くとかかな?

    それはともかく次話マダー?

    335 :

    ***

    ほむら「……」

    そのとき、ほむらはパトロール中であった。
    魔力の反応を探りながら、街を塗りつぶすように効率よく歩いていく。

    もちろんグリーフシードのためでもあるが、ほむらが魔女を倒すことで、間接的にさやかの負担を減らすという目的が大きい。

    ほむら(今のところ、さやかの様子は概ね予想通り。このままのペースなら、なんとか……)

    このまま現状を維持できれば、杏子とふたりでワルプルギスの夜に挑むことができる。

    結局、この時間軸ではそれがベストであり、逆に言えば、それ以上の状況を作り上げることは不可能だった。

    もし、ほむらと杏子のふたりでワルプルギスの夜と戦ってみて、それでとても勝ち目がないようなら、この時間軸は始めから詰んでいたということになる。

    しかしそうなったときは、ほむらが満たさなければならない条件を知ることができたという意味で、前進と言えるだろう。

    いずれにせよ、試してみるしかないのだ。

    336 = 1 :

    ほむら(これだけ繰り返しても、まだ手探りの段階……一体私は、何度繰り返すことになるのでしょうね)

    別に途方に暮れているわけではない。
    まどかを救うまでは、何度でも時間を巻き戻し続ける。
    既にその覚悟はできている。

    ほむらも、自分がうまく立ち回れているとは思っていない。
    行動にかなり無駄もあるのもわかっている。

    それでも、数えるのを諦めるくらいには繰り返してきて、その成果は間違いなくほむらの中に蓄積している。
    始めの頃に比べれば、感情に振り回されることもほとんどなくなり、かなり冷静に動けるようになったと自分でも思う。

    しかしそんなほむらを嘲笑うかのように、どの時間軸でも、ほむらが予想もしないことが起こり続けるのだ。

    それだけ世界に無数の可能性が存在する……ということなのだろうか。

    先は長い。
    まだまだ終わりは見えない。
    だが、そんな途方もない可能性は、逆にほむらの希望でもある。

    それほど可能性が無数に存在するのなら、ワルプルギスの夜を倒せる可能性も、きっとどこかに存在するからだ。

    いつか、ほむらが全ての可能性を埋め尽くし、その全てを把握することができれば──

    そのときこそ、まどかを救うことができるだろう。

    337 = 1 :

    ほむら「!」

    不意に、ソウルジェムが反応した。
    魔力の反応だ。

    ほむら(さっさと片付けてしまいましょう)

    そんなことを思いながら、ほむらは足早に反応があった方向へと向かっていく。

    ほむら「……ここね」

    結界を見つける。
    できれば、さやかや杏子が来る前に終わらせたい。

    迷わず中に入ろうとして──足が止まった。

    ほむら「……」

    違和感を覚える。
    しかし、その正体がわからない。

    ほむら(何かが、引っ掛かる……?)

    単なる直感ではない。
    基本的にほむらは、直感、第六感といった、曖昧なものは信用していない。

    理由があるはずだ。
    恐らく、これまでの時間軸での経験が警鐘を鳴らしているのだろうが、それが何なのか、わからない。

    危険な魔女?

    思い出せない──いや……

    ほむら「まさか……」

    思わず、魔女がいるであろう方向を睨み付ける。

    一応見当は付いたが、魔女の姿を見てみないことには確信が持てない。

    ほむらは警戒しつつ、結界の中心部へと歩を進めていった。

    339 :

    使い魔に同様の違和感を覚えつつも、危なげなく凪ぎ払い、ほむらは魔女の下に辿り着いた。

    ほむら「……やっぱり」

    その姿を見て、疑惑が確信に変わる。

    ほむら(やはりそうだ……私はこの魔女を、『知らない』)

    それは、これまでの時間軸を通して、ほむらが初めて目にする魔女であった。

    基本的に、どの時間軸でも同じ魔女が出現するというわけではない。
    ほぼ毎回出現する魔女もいれば、ほとんど出現しない魔女もいる。
    あるいは、何らかの条件を満たさないと出現しない魔女もいるかもしれない。

    だが、ほむらは何度も同じ時間を繰り返す中で、低確率で出現する魔女ですら、既に数えきれないほど目にしている。
    最後に初めて見る魔女と戦ったのがいつだったのか、思い出せないくらいだ。

    だからこそ、今のほむらが魔女と戦うときは、もはや意識せずとも的確に弱点を突き、効率よく作業のように倒すことができていた。

    もっとも、つい最近お菓子の魔女に辛酸を舐めさせられたばかりではあるのだが……

    まさか、ここにきて初めて見る魔女と遭遇しようとは、思ってもみなかったのだ。

    ほむら「……」

    単に、非常に低い確率をここで引き当てただけのことなのか。

    あるいは──

    ほむら(……警戒する必要があるわね)

    340 = 1 :

    ほむらも魔法少女である以上、綱渡りで生きているようなものだ。
    そのことを忘れてはならない。

    魔女との戦いに絶対はない。
    何かひとつでも間違えれば、それであっけなく終わってしまう。

    いつ死んでもおかしくはない。
    あくまで、たまたま今日まで生き残っているだけなのだ。
    その意識を持っていなければ、魔法少女としては致命的だ。
    ただ漫然と生きることなど、魔法少女には許されていない。

    そして、ほむらに失敗は許されない。
    万が一すらあってはならない。

    ほむらが死ねば、まどかの破滅が確定する。

    だからこそ、ほむらは万全を尽くすのだ。

    341 :


    炉路さんとは顔見知りなのかな?

    342 :

    ***

    さやかには、ひとつの予感があった。

    さやか「……」

    自身のソウルジェムを見つめる。
    もはや、明確に色が変わってしまっていた。

    毎日、着実に穢れが溜まっていく一方だ。

    しかしだからこそ、ソウルジェムがどれほどまでの穢れを許容できるのか、さやかはまだ知らない。

    そのはずだった。

    本来なら、見えないゴールに怯えていたのだろう。
    しかし、なぜだかさやかにはわかっていた。

    さやか(……まだ、ほんの少しだけ、余裕がある)

    限界は近い。

    それでも、まだ、まだ戦える──

    343 :

    ***

    激しい爆発が起こる。
    直後に、グリーフシードが現れた。

    ほむら「……」

    決して弱かったわけではない。
    ほむらも普段より多くの武器を使用し、確実に魔女の息の根を止めにいった。

    だからこれは、当然の結果とも言えるかもしれない、が……

    ほむら(杞憂だったのかしら。いや、しかし……)

    どうしても、釈然としない部分は残る。

    偶然ならいい。
    可能性は低いが、あり得ない話ではない。

    しかし、これが何らかの異変の前兆だとしたら──

    345 :

    ほむらがそこまで考えたときだった。

    ほむら「……!」

    またしても、ソウルジェムが反応した。

    一瞬、倒しきれていなかった可能性を考えたが、即座に排除する。
    明らかに、先程とは異なるパターンの反応だった。

    ほむら(別の魔女の出現……これも偶然?)

    複数の魔女が局地的に活動を行うことは少ない。
    獲物や結界などの理由から、大抵はそれぞれの縄張りがあるからだ。

    実際、ほむらが1体の魔女を倒したあと、すぐにこのように他の魔女の存在を感知したことは、あまり記憶にない。

    ほむら「……」

    不穏なものを感じながらも、ほむらに取れる選択肢は限られている。

    武器を携え、ほむらは反応元へと向かい始めた。

    346 = 1 :

    ***

    同時刻、杏子も異変を感じていた。

    杏子(……何かが、おかしい)

    街の空気が違う、とでも表現すべきなのだろうか。

    理屈ではない。
    ほむらとは違い、野性的な勘から正解にたどり着きつつあった。

    杏子「……」

    ズバアッ

    眼前に迫る魔女を一撃で屠りながらも、杏子の表情は険しかった。

    杏子(くそっ、嫌な予感がする)

    脳裏にさやかの姿がよぎる。
    道を違えたとはいえ、放ってはおけなかった。

    杏子「……チッ」

    グリーフシードを回収し、杏子は街中へと駆け出していった。

    347 = 1 :

    ***

    魔女の断末魔が響く中、ほむらはひとつの仮説に思い至っていた。

    ほむら(まさか……)

    ソウルジェムをかざし、限界まで索敵範囲を広げてみる。
    距離が離れるほど精度は落ちるが、反応の有無くらいは判別できる。

    ほむら「……そういうことね」

    もはや間違いない。
    明らかに、普段よりも多くの魔女が出現している。

    ほむらの知らない魔女との邂逅は、魔女の出現数自体が増えたことによる必然だったのだ。

    ほむら(これは、まずい……!)

    本来なら、倒しきれないほどでない限り、魔女の増加は魔法少女にとって悪いことではない。
    それだけグリーフシードを手に入れるチャンスが増えるということだからだ。

    ──だが、例外はある。

    348 = 1 :

    ほむらが倒した2体の魔女は、どちらも比較的手強い相手だった。
    これは偶然ではないだろう。

    恐らく、新たに出現している魔女は、どいつもそれなりの強さを有しているはずだ。

    そう、ちょうど、さやかが魔力を大量に消費して、なんとか倒せるであろう程度の強さを──

    ほむら「……っ」

    どう考えても意図的なものだ。
    仕掛けたのが誰かなど、考えるまでもない。

    狙いはさやかだ。
    そして悔しいことに、その効果はてきめんだ。

    元々が、ぎりぎり持ちこたえられるかどうかという予想だったのだ。
    もちろん1日に複数の魔女と戦うことなど想定していない。

    ──間に合わない。

    それどころか、今日だけで限界を迎えてもおかしくない。

    あるいは、既に──

    ほむら「……」

    さやかを探さなければならない。

    349 = 1 :

    ほむらは街中を駆け回っていた。

    手がかりは魔女の魔力の反応だ。
    この魔女の出現数なら、さやかが戦闘を行っている可能性は高い。
    しらみ潰しに魔女を倒し続けていれば、そのうち見つかるはずだ。

    魔女を倒さず、囮に使うことでさやかをおびき寄せるという案も考えたが、この魔女の出現率ではリスクが高い。
    1体の魔女を見張っているうちに他の魔女との戦闘で魔女化していたなんてことになっては、目も当てられない。

    それならばむしろ、さやかの負担を減らす意味でも、少しでも多く魔女を倒しておくべきだ。

    ほむらは凄まじい勢いで魔女を倒し続けた。

    魔力の反応があれば直行し、結界に入るなり能力を使用。
    使い魔を無視し、そのまま魔女本体までたどり着き、即撃破。

    当然ながら、そのような能力の使い方をしていれば魔力は減っていく一方だ。
    だが今は、何よりも時間のロスが惜しかった。

    ここでしくじれば、この時間軸での失敗がほぼ確定してしまう。
    だからこそ、ほむらは必死だった。

    早く、早くさやかを見つけなければ──

    350 :

    ──何体目のことだっただろうか。

    魔女の結界内で、ようやくほむらはさやかを発見した。
    それはちょうど、さやかが魔女を切り捨てる瞬間であった。

    ほむら「……見つけたわ」

    さやかがほむらに振り向く。

    さやか「転校生か」

    その姿はぼろぼろだった。
    しかし、それよりも──

    ほむら「……!」

    さやかのソウルジェムを見て、ほむらは衝撃を受けた。
    穢れが溜まり過ぎている。

    予想以上に早いペースだ。
    このままでは確実に、ワルプルギスの夜が到来する前に彼女は限界を迎えるだろう。

    さやかが、たった今倒した魔女のグリーフシードでソウルジェムを浄化したが、もはや焼け石に水だった。

    ほむら「……」

    ほむらは、さやかにグリーフシードを差し出した。

    ほむら「使いなさい」


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