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元スレほむら「巴マミがいない世界」

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202 :

>>199
いろんな意味でお前は何も分かってない

203 :

他人のSSのスレで 感想以外の長文を書く人の感覚がわかんない

204 :

上条の性格とかが全く見えないというのは大きいかと
それが感情移入を阻んでるのもあるんじゃないか?

205 :

とりあえずさやかや仁美が期待するような関係をバイオリン馬鹿の上条に求める限り幸せにはなれんだろう
そこらへんをうまく割り切って彼を支えるなり、あきらめてまた別のいい人探すなりして青春の一ページにしちゃえればいいんだが、そううまくできないのがこの年の女の子なんだろう。めんどくさい事に。

206 = 204 :

そうは言うけど女の子って割とドライな一面あるぞ?
今はそうでも時間が経てば、好きだった相手が自分に好意を寄せてきても、あの時と同じ感情を抱けはしないケースがあるみたいだし
人にもよるんだろうけどさ

207 :

女の子は年齢を重ねる度に
男性に求めるハードルが跳ね上がっていくから仕方ない

208 :

***

さやかは、パトロールをしながら仁美と話したことについて考えていた。

仁美には『ちゃんと考えて後悔しない道を選ぶ』なんて言ったが、答えは出ているようなものだった。

さやか(あたしは、恭介のことが好きだ)

自覚はある。
となれば、もはや選択肢はない。

さやか(……明日、恭介に告白しよう)

受け入れてもらえるかどうかはわからない。
正直、恭介があたしのことを異性として意識しているかどうかすら疑わしい。

そもそもあのバイオリン馬鹿は、そういったことに興味はあるのだろうか。
彼女ができても、バイオリンに没頭し過ぎて愛想を尽かされる姿が容易に想像できる。

だから……というわけではないが、今まで、恭介とその類いの話をしたことはない。
好きな人がいたことがあるかどうかすらわからない。

あるいは、さやかとではなく男子生徒同士では、そういった話をしているのだろうか。

その場合は、一応はさやかを異性として扱ってくれているという意味では、喜ぶべきことなのかもしれないが……

さやか(……ないだろうなぁ)

こう言ってはなんだが、恭介はまだ良くも悪くも子どもだ。
恋愛面についてはほとんど経験がないだろう。
中学生くらいだと、やはりこういったことに関しては、女子の方が進んでいるのだと思う。

209 = 1 :

もちろん、恭介のバイオリンに打ち込む姿を好きになったのだから、そこに対して不満があるわけではない。

問題は、恭介が恋愛に免疫がないであろうことだ。

あたしが告白しても、そもそも恋愛そのものに対して拒否反応を示すかもしれない。
あるいは、仁美のような可愛い娘に好きだと言われたら、舞い上がってよく考えずに付き合ってしまうかもしれない……

さやか「……はぁ」

思考が迷子になっている自覚はある。
明日告白するだなんて、急な展開に頭がついていかないのだ。

本来なら、すると決めたのだから、どう告白するかを考えるべきだ。

だが、どうしても現実感がない。

自分が恭介と付き合えるのか、あるいはフラれてしまうのか。
それが明日決まるということが、とても信じられなかった。

さやか(……仁美はすごいな)

自分にはあんな勇気はなかった。
仁美には『気持ちを大切にしている』などと言われたが、実際は、女友達という心地いい関係に甘んじていただけだ。
気持ちを打ち明けることもできず、異性として見られていないなどと言い訳を重ね、その結果がこれだ。
今日のようなことがなければ、告白なんて考えもしなかったかもしれない。

まどかも仁美も、自分にはない強さを持っている。

親友としては誇らしい限りだが、ふとした拍子に、どうしても引け目を感じてしまうことはある。

さやか(だけど……!)

ここだけは譲れない。

ずっと好きだったのだ。
口にすることはできなかったが、その思いは、仁美のそれに負けているとは思わない。

しかし、だからこそ怖い。
フラれたときのことは、正直考えたくない。

……結局あたしは、まだ覚悟ができていなかったのだ。

210 :

さやか(……魔力の反応!)

ソウルジェムが反応を見せた。
上の空だった状態から、急激に現実に引き戻される。

恭介のことはひとまずおいておこう。
今は魔女を倒すことが先決だ。
さやかは、反応があった地点へ向かった。

結界に入り、使い魔を倒しつつ奥へ進んでいく。

さやか(大丈夫、いける……)

痛覚遮断を使うまでもない。
油断は禁物だが、使い魔の強さからしてそれほど強い魔女ではないはずだ。

魔女のもとにたどり着く。
しかし、魔女が捕らえている少女を見て、さやかに戦慄が走った。

さやか(まどか……!?)

心が揺れる。
だが、さやかは逸る気持ちを押さえつけ、自分に言い聞かせた。

さやか(……焦っちゃダメだ。冷静に、確実に魔女を倒すんだ)

今までと同じだ。
捕らえられている人間が誰だろうと、必ず救い出す。
それだけだ。

さやか(……よし)

自分が落ち着いたことを確認する。
辺りを見渡すと、先程より視界が広がっているのを感じた。

やはり、動揺していたのだろう。
しかし、もう大丈夫だ。

さやか「待ってて、まどか。今助ける」

さやかは、魔女に襲いかかった。

211 :

落ち着きさえすれば、こっちのものだ。

さやかの予想通り、魔女の強さは大したことはなかった。
契約したての頃ならともかく、今のさやかなら問題なく倒せるレベルだ。

さやか「これで……終わりよ!」

さやかの斬撃が直撃し、魔女はふたつに切り裂かれた。
ほぼ間違いなく、これでとどめを刺せたはずだ。。

しかし、まだ警戒は解かない。
確実に倒したとわかるまでは、魔女を相手に気を緩めてはならない。

結界の崩壊を確認し、ようやくさやかはわずかに息を吐いた。
やはり、普段に比べれば張り詰めていた部分はあったのだろう。
しかし、それでこれだけ冷静に動けたのだから、上出来だ。

さやかは、これまでの戦闘経験により、未熟ながらも安定した強さを身に付けつつあった。

212 :

さやか「まどかっ!」

さやかは、倒れているまどかに駆け寄った。

まどか「……さやか、ちゃん?」

反応があったことに、思わず胸を撫で下ろす。
外傷もないし、まず大丈夫だろう。

さやか「無理しないで。あんた、魔女に襲われたのよ。もう倒したから安心して」

まどか「……」

どうやら少し混乱しているようだ。
無理もない。

さやかも、自分が魔法少女じゃなければ魔女を見ただけで逃げ出すだろう。
魔法少女として戦った経験がある今だからこそ、魔女の恐ろしさがわかる。

以前、魔女の口づけを付けられた人を追いかけようとしたことがあったが、それがどれだけ危険なことだったか。
改めて思い出すと、背筋が冷たくなる。

さやかとは違い、まどかは今日初めて魔女の恐ろしさを目の当たりにしたのだ。
ショックがあって当然だろう。

しばらくすると、まどかはどうやら現状を把握したようだった。

さやか「まどか、大丈夫?」

まどか「うん、助けてくれたんだね。ありがとう」

さやか「どういたしまして」

助けられてよかった。
もし間に合っていなかったらと思うと、ゾッとする。

213 = 1 :

さやかが胸を撫で下ろしていると、ふとまどかが何かを思い出したかのように口を開いた。

まどか「あ、そうだ。仁美ちゃんもここにいたんだ。魔女の口づけで、おかしくされちゃってて」

さやか「え……仁美が?」

仁美の名前を聞き、さやかは思わず今日のことを思い出した。

まどか「そうなの。他にもたくさんの人が操られて、一緒に死のうとしてて……」

さやか「……」

まどかの声が遠くに聞こえるようだった。
妙に現実感が薄れていく。

さやか(そうか、仁美が……)

思考が、途切れる。

魔が差した、としか言えないのかもしれない。

さやか「……」

しかし、そのとき確かにさやかの心に、ひとつの考えが浮かんでしまった。

214 = 1 :




───だったら、助けなければよかった?


215 :

さやか「ッ!?」

ゾクリ、と体が震えた。
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

さやか(あたし、今……)

足元が崩れたかのような錯覚を覚えた。
視界が揺れる。

さやか(……何を、考えた?)

理性は否定しようとした。
そんなはずがない、そんなことを考えるはずがない、と。

しかし、他の誰でもない自分の心情だ。
誤魔化せるはずがない。

さやか「あ……」

さやかは、自分が何を思ったのか、改めて知ってしまった。
自分で自分が信じられなかった。

さやか(あたし、は……)

216 = 1 :

まどか「……さやかちゃん?」

さやか「!」

まどかに声をかけられ、ハッとする。
さやかの様子が変わったことを不審に思ったのだろう。

さやか(まずい、今は……)

顔を合わせられなかった。
今まどかに顔を見られたら、全てを見透かされてしまう気がした。

まどかには、こんな自分の汚い部分、卑怯な部分を知られたくなかった。

さやか「……ごめん、魔力の反応があった。あたし、もう行かなきゃ」

顔を背けたまま、早口で伝える。
幸いにも、まどかはそれを緊迫した状況故のことだと受け取ったようだった。

まどか「えっ? あっうん、わかった。頑張ってね」

さやか「ッ……」

まどかの優しさが、今のさやかにはつらかった。
言葉が胸に刺さる。

さやか「……ありがとう。仁美のこと、よろしくね」

まどか「うん、任せて!」

返事を聞くや否や、さやかは駆け出した。

魔力の反応などありはしない。
ただ、1秒でも早くこの場所を離れたかった。

217 :

よく上条が叩かれてるのを見るがさやかが可愛く見えるのは視聴者視点であって設定的には普通若しくはブスの可能性だってあるんだからな
ブスにはどんなに親しくても優しくされても惚れないだろ

218 :

例え相手がドブスだろうと、親切にされたらまずはありがとうだろ
その上で恋愛が成就しないのはしゃーないが

ちゃんと告白した上でふられたならさやかはあんなに堕ちなかっただろうとも思うけどね
こうして箱の魔女と戦う前なら、仁美を助けなければ……と思う事もなかっただろうし
だって仁美が生きてても死んでても自分がふられた事実に変わりはないから

219 :

嫌な考えがへばりついたときって、ホント最悪。乙です

220 :


まあまどぽの各ルートとか見るにさやかが告白できない意気地無しで、(しかも自分でもわかっているのにどうしようもできない)言い方は悪いが潔癖のいいかっこしいの部分がある所為で自分で自分を追い詰めてるんだよな・・・
高すぎる理想と現実の差で絶望したわけだし。本当に不器用で馬鹿な奴だよ、良くも悪くも。

221 :

さやかは、全力で走り続けた。
まるで、見えない何かから逃げるように。

しかし、その声がやむことはなかった。

──仁美さえいなければ、こんなことにはならなかったのに。

さやか(……違う)

──仁美さえいなければ、こんなふうに悩まされることもなかったのに。

さやか(……違う!)

──仁美さえいなければ……

さやか「違う!!」

大きく叫んで、さやかはようやく立ち止まった。
呼吸が荒い。
いつの間にか、見たこともないような場所に来てしまっていた。

さやか「……っ」

さやかは、無理やり呼吸を押さえ付けた。
自分の心と向き合う覚悟を決めようとした。

だが、できない。

息が整っても、まだ心が鎮まらない。
魔女と戦っていたときの方が、まだ平静を保てていた。

さやか(……あたし、一体どうしちゃったんだろう)

本気で、仁美を助けなければよかったと思ったわけではない。
だが、少しでもそんな気持ちがなかったかと言われれば、否定はできなかった。

さやか(どうして……)

さやかは、自分の本心がわからなかった。

222 = 1 :

仁美が恋敵だから、思わずそんなことを思ってしまったのだろうか。

もちろんそれは原因の大部分ではあるだろうが、さやかはそこに引っ掛かりを感じていた。

さやか自身、『恋愛は早い者勝ちみたいなもの』とも言ったし、そう思っていたことも嘘ではない。

もし、さやかの知らないうちに仁美が恭介と付き合っていたとしても、さやかは恋心を隠して笑えたはずだ。

……ひとつの要素さえ、そこになければ。

さやか(何か、が……)

納得できない何かが、そこにある気がする。

仁美が言っていたように、自分の方が長く恭介を想っていたから?

……違う。

もっと、わかりやすい何かが。

仁美が恭介と付き合うことが許せないと、理不尽だと思ってしまう、何かが……

さやか「………………」

そして、さやかは気づいてしまう。

さやか(あぁ、そうか……)

自分の本心に。

さやか(つまり、あたしは……)

223 = 1 :



──恭介の腕を治したのはあたしなのに、他の誰かが恭介と付き合うなんて、許せない。

224 = 1 :

さやか「……あはは」

自分でも驚くほどに空虚な笑い声だった。

始めから狂っていたのだ。

正義の魔法少女?
なんて笑い話だろう。

あたしが魔法少女になったのは、自分のためでしかなかったっていうのに。

さやか(あたしは、何をしていたんだろう)

今までの自分が揺らいでいく。
こんな自分が正義を語っていたことが、茶番にしか思えなかった。

さやか(……もう、どうでもいいや)

これ以上は考えたくなかった。
心が沈む一方だ。

さやかは、フラフラと歩き始めた。

ソウルジェムに、穢れが溜まりつつあった。

225 :

自分をごまかしてはいけない。

同時に、欠点を見つけても、

自信を喪失させたり、

自尊心を傷つけるまで

自分を責めてはいけない。


くさるなさやかちゃん、乙乙

226 :


『最初から間違えてるモノ』は、
第三者がどう横槍を入れても最終的には必ず破綻しちゃうよね

繰り返す時間の中で僅かな違いこそあれど、運命の車輪は冷徹に回る。

227 :

しばらく歩いたところで、ソウルジェムが反応した。

魔力の反応だ。

さやか(魔女? 使い魔? どっちでもいいか……)

さやかは、もはや無視しようかとも思った。

今の自分に、正義の真似事をする資格などあるはずがない。

さやか「……」

しかし、さやかはしばらくの逡巡の後に、反応があった地点へ歩き始めた。

他の誰かのためじゃない。

戦闘に没頭すれば全てを忘れられるかもしれないという、歪んだ考えからの行動だった。

228 = 1 :

***

そのとき、杏子はパトロールの最中だった。
最近は気分が優れないことが多いが、魔法少女である以上、魔女を狩らないわけにはいかない。

魔力の反応がありその地点へ向かうと、そこには杏子を悩ませる原因の人物がいた。

杏子(……さやかか)

杏子は、隠れて様子をうかがった。

さやかとの二度目の戦闘から数日間、杏子はさやかのことを避け続けていた。

ああいう結果になった以上、杏子にはもうごちゃごちゃ言う気はなかった。

正義の魔法少女なんていつまでも続けていられるとも思わなかったが、いけるところまでいってほしいという思いがなかったと言えば嘘になる。

同時に、かつての自分と重なりを感じるところもあり、似たような挫折を味わえば杏子の気持ちをわかってもらえるのではないかという期待も多少あった。

いずれにせよ、杏子からさやかに対して直接行動を起こす気はもうなくなっていた。

だが……

杏子は、さやかの様子がおかしいことに気づく。

杏子(……なんだ? さやかの奴、いつもと違う……?)

229 = 1 :

その要因はいくつかあったが、杏子が一番違和感を覚えたのは、さやかの戦闘方法であった。

さやかは、相手の強さによっては、痛覚を遮断して多少の傷を負うことをいとわない。
だが、当然それは必要最小限のダメージで済ませており、決して、受ける必要のない攻撃をむざむざ受けていたわけではない。

また、痛覚遮断はあくまでも戦術のひとつであり、さやかも好んで使っていたわけではないはずだった。

しかし──

杏子(あいつ、何してやがんだ……!?)

今のさやかは、そんな取捨選択を行っているようには見えなかった。

明らかに、避けられるはずの攻撃を避けていない。
防げるはずの攻撃を防いでいない。

魔女の攻撃に対し、そもそも反応すらしていなかった。
その姿は、わざと全ての攻撃を受けているようにすら見えた。

さやか「……」

防御を一切行わず、攻撃に意識の全てを向ける今のさやかは、凄まじかった。

「ガァ……ッ」

一方的に攻撃され続けているようなものだ。
敵うはずがない。
魔女は為す術もなく、あっという間に倒されてしまった。

だが、その代償は大きい。
さやかは全身傷だらけで、ボロボロだった。

回復魔法を使い、服も新品同様になり、見かけ上は完璧に元に戻る。

だが、それを見た杏子は鳥肌が立った。

その姿は、人として何かが狂っているようだった。

233 :

乙。イラついたら戦闘に没頭するしかないよな

234 :


まあ助けたっていう事実と誰を好きになるか、助けたからって好きになってもらえるかはまったく別問題だしな

それに正義の魔法少女って言っても具体的にさやかはどうしたかったんだろうか。魔女より悪い人間がいるなら戦う。例え魔法少女でもといっているが杏子をどうする気だったんだろう。叩きのめしたからって変わるとは限らないし、殺したらただの人殺しだし、仮に弾みでも殺してしまえばきっと壊れてただろうし・・・そしてこうやって人間がみんな当たり前に醜さを受け入れることもできず・・・馬鹿な奴だな。

236 :

***

次の日、さやかは学校を休んだ。
気分が悪い、頭痛がするなどと親に伝えると、あっさり納得してくれた。
仮病だが、あながち嘘というわけでもない。

さやかは、ベッドの上でぼんやりと天井を眺めていた。

今日の放課後、仁美は恭介に告白する。
恐らく、ふたりは付き合うことになるだろう。

恭介が断れば話は別だが、たぶんそれはない。
女のあたしから見ても、仁美は魅力的だ。
告白されて戸惑いはするかもしれないが、最終的には受け入れるはずだ。

……そのことを、あたしはどう思うんだろう。

さやか「……」

嫌に決まっている。
たとえ仁美であろうと、恭介が自分以外の女子と付き合うなんて、想像したくもなかった。

しかし、それならば学校を休むべきではない。
受け入れてもらえるかどうかはともかく、さやかには告白する以外の選択肢はないはずだ。

なのに、さやかはベッドから起き上がる気にもならなかった。

自分の本心を知ってしまったからだ。
こんな自分が恭介と付き合うなんて、許されるはずがない。
そう思ってしまった。

かと言って、そう簡単に諦められるはずもない。
堂々と仁美に『あたしは恭介のことを好きではない』などと言えれば格好も付くだろうが、それもできなかった。

結果、相反する感情がさやかの中で攻めぎ合い、どちらの行動もとれなくなっていたのだ。

結局さやかは、学校を欠席することを選んだ。

もう、自分の手の届かないところで物事を勝手に進めてもらって、自分ではどうにもならない状況にしてほしかった。

具体的には、さっさと仁美に告白してもらって、恭介と付き合ってほしい、なんてことを薄々考えていたのだ。

さやか(……あたし、最低だな。結局あたしは、自分の本当の気持ちと向き合えなかったんだ)

さやかは、こんな選択しかできなかった自分を、嫌悪していた。

237 = 1 :

『おい、聞こえるか?』

さやか「!」

不意に、テレパシーで呼び掛けられた。
この声は……

杏子『ちょっと話がある。出てこいよ』

さやか「……」

なんであたしの家を知っているのかとか、学校はどうしたのかとか……いろいろと思うところはあったが、今のさやかに噛み付く気力はなかった。

さやか『……何の用?』

杏子『そろそろ、正義の魔法少女だなんて言っていたことを後悔してるんじゃないかと思ってな』

さやか『……』

一気に出ていく気が失せた。
さやかは返事をするのも面倒になり、布団をかけ直そうとする。
反応がないことにあわてたのか、杏子が再度テレパシーで呼び掛けてきた。

杏子『おい無視すんなよ、悪かったって。こんな時間に家にいるってことは、今日は学校には行かないんだろ? 魔法少女が体調不良ってこともないだろうし、暇なら付き合えよ』

さやか『……あたしに文句があるんなら、別の日にしてくれない? そんな気分じゃないの』

杏子『喧嘩を売りに来たわけじゃねーよ。言ったろ、話があるって』

……本当だろうか。
しかし、暇を持て余していたのも事実だ。

杏子『いいから出てこいよ。危害を加える気はないからさ』

さやか『……ちょっと待ってて』

しばらく迷ったが、さやかは杏子に付き合うことにした。
親は夕方まで帰ってこないし、少しくらいなら大丈夫だろう。



着替えてから外に出ると、私服姿の杏子が立っていた。
そういえば、魔法少女以外の姿を見るのは初めてだ。

杏子「ついてこい」

そう言って、杏子は歩き出した。

238 = 1 :

***

杏子がさやかを訪れたのは、昨日のさやかの様子が気になったからだった。
まるで鬱憤を晴らすかのような戦い方であり、これまでの彼女とは明らかに違っていた。

なぜそうなったのかはわからないが、大体の想像はつく。
自分に失望したか、願いを否定してしまったか、あるいは信念が折れるような出来事があったのか……

かつての杏子と同じなら、そんなところだろう。
だからこそ、放ってはおけなかった。

さやか「……」

さやかは、すたすたと杏子の後を歩いている。

杏子(こいつ……)

やはりおかしい。
確定的だ。

普段と様子が違い過ぎる。
行き先も話さず歩いてるのに文句ひとつ言わず付いてくるなんて、これまでのさやかではあり得ない。
相手が杏子ならなおさらだ。

杏子「どうしたんだよ、元気ねーな。何かあったのか?」

さやか「……別に」

杏子「ったく」

聞いてはみたものの、その内容に興味があるわけではない。
重要なのは、さやかが正義の魔法少女として戦い続ける気があるかどうかだ。

杏子(もし、そうでなくなったのなら、もしかすると……)

うまく言いくるめることができれば、杏子の仲間にできるかもしれない。
そうすれば、これまでのような無茶もしなくなるだろう。

……と、まるでさやかのために行動を起こしたかのような言い方だが、杏子は、自分の本心に薄々気がついていた。

あまり認めたくはないが、どうやら自分は仲間を欲しているらしい。
あえて目を逸らしてはいたが、やはりどこかに寂しいという感情が残っていたようだ。

自分から別れたものの、マミと一緒に過ごした時間を忘れたわけではない。

杏子(……お前なら、こんなときどうしたんだろうな)

その答えは、もはや知りようがなかった。

239 :

ここもまた今のところ同じだが心情描写が味よね、乙

240 :

杏子「……着いたぜ」

さやか「……」

さやかは、ぼんやりとその建物を見上げた。

さやか「……教会?」

杏子「あぁ」

杏子がこの場所を訪れるのは久しぶりだ。
いろいろと思い出してしまうということもあり、当時は近寄り難かった場所だが、今はもう懐かしいという感情の方が強い。

杏子「ちょっと長い話になるぜ。ほら、食えよ」

そう言って、杏子はさやかにリンゴをひとつ投げて渡した。

さやか「……」

受け止めはしたものの、食べ始める気配はなかった。
ぼんやりとリンゴを眺めるさやかからは、何の感慨も読み取れない。

杏子(……さやかは今揺れている。このまま赤の他人のために戦い続けることに疑問を持ちつつある。ここで、あたしというもうひとりの例を知れば……)

……わかってもらえるはずだ。

241 = 1 :

杏子「……」

杏子は、一旦心を落ち着かせた。

こうして誰かに話すのは初めてだが、自分の中で既に整理は済んでいる。
今更当時を思い出して涙ぐむなんてことはないだろう。

杏子(……よし)

杏子は、静かに話し始めた。

杏子「……ここは、あたしの親父の教会だ。いや、正確には、教会だった、というべきなんだろうな……」

さやか「……」

そして、杏子はかつて自分に起こったことを全て話した。

自分がどうして魔法少女になったのか。
何を思って魔法少女になったのか。

その結果、何が起こったのか。
何を失ってしまったのか。

……何を、わかっていなかったのか。

242 = 1 :

……

杏子「……とまぁ、そんなわけで……あたしのせいで、家族はメチャクチャになっちまったのさ」

さやか「……」

杏子「そのとき決めたんだよ、二度と、他人のために魔法を使わないって。自分のためだけに使い切るってね」

杏子はそこで、一度間を置いた。
さやかの反応をうかがう。

さやか「……ごめん。あんたのこと、誤解してたよ。そんなことがあったなんて、想像もしてなかった」

杏子「……」

悪くない反応だ。
以前の彼女ならあり得ない。
これまで魔法少女として生きてきて、多かれ少なかれ共感する部分があるのだろう。

杏子は、言葉を続ける。

杏子「もうあんたもわかってんだろ? 他人のために魔法を使うのは間違いなんだ。奇跡を祈れば、その分絶望を撒き散らしちまう。そういう風にできてんだよ」

さやか「……」

この世界そのものがそのようにできている。
だから、どうしようもない。
抗いようがない。

そう、印象付ける。

243 = 1 :

さやかが、杏子に問いかけた。

さやか「……どうして、あたしにこんな話をしてくれたの?」

杏子「見ちゃいられねーからだよ。あたしもあんたも、同じ間違いから始まった。あたしはそれなりにわきまえちゃいるが、あんたは違う。現に、苦しんでるじゃねーか」

さやか「……同じ間違い?」

杏子「そうだろ、他人のためなんかに魔法を使っちまって、そのことを後悔してるんだろ?」

一歩、踏み込む。
さやかの口から、自分が間違っていたと認めさせる。
そうすれば……

さやか「……」

さやかは、しばらく考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開いた。



さやか「違うよ。あたしとあんたは違う」

244 = 1 :

さやかが、杏子に問いかけた。

さやか「……どうして、あたしにこんな話をしてくれたの?」

杏子「見ちゃいられねーからだよ。あたしもあんたも、同じ間違いから始まった。あたしはそれなりにわきまえちゃいるが、あんたは違う。現に、苦しんでるじゃねーか」

さやか「……同じ間違い?」

杏子「そうだろ、他人のためなんかに魔法を使っちまって、そのことを後悔してるんだろ?」

一歩、踏み込む。
さやかの口から、自分が間違っていたと認めさせる。
そうすれば……

さやか「……」

さやかは、しばらく考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開いた。



さやか「違うよ。あたしとあんたは違う」

245 = 1 :

あちゃ、二重投稿失礼

246 :

自分は杏子のように他人のためにではなく、自分自身のための契約だったと・・・

247 :

完璧に利己的な理由で助ける人間を選抜しようとしちゃったわけだからな、もうごまかしようもないくらい
自分のための奇跡だったって気付いてるだろ。
自分を痛めつけるような戦い方も、案外罰でも受けてるつもりなんじゃないか?

248 :

やっと追いついたと思ったら安定のバッドルーテナント
ハーベイのオリジナルじゃなくてニコラスリメイク版みたいに上手くいかねぇもんかな乙乙

249 :

杏子「……っ」

さやかの言葉に、杏子は少なからずショックを受けた。

わかってもらえなかったのだろうか。
杏子は自分の全てをさらけ出した。
さやかに仲間になってほしいという打算があったことは否定しきれないが、それでも正直な思いを吐き出したつもりだ。

これでダメなら、もう……

杏子(さやか……)

……しかし、そうではなかった。

さやか「……あんたは、紛れもなく自分以外の誰かのために魔法を使ったんだ。だからこそ、今はその反動で、自分のためにしか魔法を使っていない」

杏子「……?」

さやか「立派だよ。結果がどうであろうと、その行為自体は称賛されるべきだと思う」

杏子「……何が言いたい」

そんな言葉がほしいわけではない。
むしろ、杏子の話を聞いた上でそんなことを言うなど、馬鹿にしているようにしか受け取れない。

さやかは、わずかに笑って、一言呟いた。

さやか「……あたしとは、違う」

250 = 1 :

杏子「……」

さやか「あたしは結局、自分のために恭介の腕を治したんだ。他人のために魔法を使ったあんたとは、根本的に違ったのよ」

さやかは、自嘲気味な笑顔を浮かべていた。

……そういうことか。
杏子は内心ほっとした。

杏子「いいじゃねーか、それで。そっちの方が正しかったんだよ。これからは、そうやって生きていけばいい」

さやか「……」

杏子の言葉に、さやかはわずかな逡巡を見せ、やがて口を開いた。

さやか「……そうね。あんたと一緒にそうして生きていくってのも、悪くないかもね」

杏子「……!」

さやかの言葉を聞き、杏子は歓喜に打ち震えた。

杏子(やった……!)

やっと、わかってもらえた。
同じ境遇の仲間ができる。

その事実は、杏子にとって非常に喜ばしいものだった。

さやかの手前、なんとか平静を装う。
顔を背けて表情を隠し、感情を抑えて言葉を返す。

杏子「あぁ、そうしろよ。悪いようにはしないからさ」


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