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元スレ提督「臆病で愚図」
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羽黒「司令官さんがいないことに気づいて、部屋を探しました」
羽黒「トイレもお風呂も台所も居間もベランダもタンスも棚も全部」
羽黒「どこにも居ませんでした、どこにも、どこ、にも」
羽黒「わ、わ、私、捨てられてしまったんじゃないかって、置いていかれたんじゃないかって」
羽黒「足柄姉さんは大丈夫だって、戻ってくるって言ったけど、私、怖くて、怖くて」
羽黒「昨日、私、何か悪いことを、ヒッ、して、ひぐっ、悪いこと、してしまったんじゃ、ないかって」
羽黒「悪い娘になったから、しれ、しれいかんざんに、すでられてしまったって、そう、おもって、そうおもっで」
羽黒「……妙高姉さんも居ないことに気づきました」
羽黒「妙高姉さんが司令官さんを奪ったんだ。早く後を追って始末しなきゃいけない」
羽黒「でも、足柄姉さんは、司令官さんが悲しむからって、お仕置きのために待っていようって言いました。『そのほうが確実で、効くから』って」
羽黒「夕張さんから貰ったスタンガンを持って、扉の前で待っていました」
羽黒「ずっと、ずっとずっと、ずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっと」
羽黒「妙高姉さんが入ってきたとき、苦しめ、痛がれ、って思いました」
羽黒「だけど失敗しました」
羽黒「妙高ねえさんったら『今回だけですよ』って、ふふっ、何様のつもりなんですかね」
羽黒「でも、悪い娘は妙高姉さんだけではありませんでした」
羽黒「那智姉さん」
羽黒「おかしかったんですよね、最初から。でも、メモのことを知って納得しました」
羽黒「しかも、それだけじゃなくて、司令官さんに、迷惑まで掛けて……!」
羽黒「……司令官さんに群がる害虫はちゃんと駆除しなきゃいけません。司令官さんのために」
羽黒「司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため」
羽黒「なのに……なのに!」
羽黒は、泣きながら、怒りと苦しさを綯い交ぜにした表情を向けてくる。
羽黒の両手が、胸を千切らんばかりに掴んでくる。
羽黒「司令官さんは、那智姉さんを庇いました。まるで恋人を守るみたいに」
羽黒「司令官さんは、妙高姉さんを抱きました。二人から、二人の匂いがするほどに」
羽黒「司令官さんは、足柄姉さんと通い合いました。まるで夫婦みたいに」
今の羽黒は、崩れる、砂のお城。
羽黒「司令官さん、私、私には、何が残っていますか? 私は司令官さんの何になれますか? 私は司令官さんの何ですか?」
羽黒「司令官さん……」
くだらねえ。
提督「━━━━━『死が二人を分かつまで』」
羽黒が涙目で、私を見る。
提督「何の言葉かわかるか、羽黒?」
鼻水を啜って、羽黒は答える。
羽黒「結婚の……誓いの言葉です」
提督「そうだ。愛し合う二人であっても、死でその繋がりは絶たれる」
羽黒の冷えた身体を温めるように、ゆっくり抱きしめる。
提督「だが、羽黒、お前は私が死んだら、その後を追うと言ったな」
羽黒「はい、どこまでも付いていきます」
暗く濁った瞳で、はっきりと言う。
提督「なら、あっちは全部、お前にやろう。死を超えて愛してくれるお前に。それでは駄目か」
羽黒は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに表情に影が宿り、俯く。
羽黒「他の娘が……すぐに来ます」
提督「全員追い出す」
羽黒「私が先に……沈むかもしれません」
提督「すぐに追いつく」
羽黒「あっちで、司令官さんに、会えないかも、しれません」
提督「会えるまで探す」
顔を上げた羽黒の瞳を真直ぐに見る。
提督「地獄にいれば、鬼を殺し。天国にいれば、蜘蛛の糸をよじ登る。この世に未練を残したならば、閻魔を殴って這いずり回る。来世に行ったというならば、六道を踏み抜き会いに行く」
提督「お前に会いに行く」
まだ顔に幼さを残した、しかし強い娘を真直ぐ見る。
羽黒「司令官さん」
提督「ごめんな、羽黒」
強く抱き締める。やはり私にはこれしかない。
提督「理解できていなかったのは、私のほうだ。もし、今、耐えられないというならば、今、ここで、あっちの世界へ行こうか」
抱きしめる腕を解き、体を離し、羽黒の肩を掴む。
羽黒は右手を膝の上に乗せ、左手を胸の前に置く。
どちらの手も、強く握られている。
羽黒は望むような、怖れるような、嬉しいような、悲しいような、そんな顔をしている。
提督「お前が、決めなさい」
羽黒は、膝から震えた右手を離し、中空に手を伸ばすと、艤装を部分的に展開する。妖精の技術は相変わらず素晴らしい。
羽黒は、右手の指を、さ迷うように動かす。
握って、開いて、捻って、回して、右へ左へ上へ下へ。
艤装が、消える。
羽黒「……できません」
提督「羽黒」
羽黒は私の胸板を掴む。目に光が宿って、涙が灯る。
羽黒「できません、できないです! もっと司令官を見ていたいです! もっと司令官さんの声を聞きたいです! もっと司令官さんの匂いを感じて、もっと司令官さんと触れ合っていたいです!」
羽黒「もっと、司令官さんと……生きていたいです」
羽黒は、震えながら、俯いた。
提督「そうか」
抱きしめる。
提督「なら……そうするか」
羽黒は「はい」と答えた。
足柄「ただいま~」
羽黒と静かにソファーで過ごしてから、少しして、足柄たちが戻ってきた。
羽黒「妙高姉さん、那智姉さん、足柄姉さん、お帰りなさい」
提督「お帰り」
まだ涙の跡を顔に残している羽黒と共に、彼女たちを迎える。
妙高「はい、いま戻りました」
妙高は人数分のコップを乗せたお盆を持ち、那智はプリンを乗せたお盆を、足柄は大きめのバスケットを持っている。
妙高と足柄がテーブルにお盆とバスケットを置き、向かいのソファーに座る。
羽黒「那智姉さん……?」
お盆をテーブルに置いた那智が羽黒の顔をじっと見ている。
那智「貴様、羽黒を泣かせたのか?」
鋭い視線と、強い語気が私に向かってきた。
コップを並べていた妙高と、バスケットからサンドウィッチを小皿に取り分けていた足柄の視線が私に集まる。
提督「……」
那智「……」
しばしの沈黙。
羽黒が口を開こうとする。
提督「……ああ、その通りだ」
羽黒が口を開くのを遮るように、那智に答える。
言い訳も、言い返す気もない。泣かせたのは事実だ。
那智「……」
またしばしの沈黙。
那智は私の目をずっと見ている。
那智「ふむ」
那智が立ち上がる。
羽黒「あの、那智姉さん」
那智「わかっている」
羽黒「……あ」
那智が腰を屈めて羽黒の頭を優しく撫でる。羽黒がくすぐったそうな顔をする。
それを見て、妙高は肩の力を抜いて笑みを浮かべ、足柄は再び、取り分け作業を再開する。
羽黒「あの、那智姉さん」
那智「ん? なんだ、羽黒?」
羽黒は穏やかに俯いて、静かに口を開く。
羽黒「さっきは、ごめんなさい」
何に対して謝っているのだろうか。
那智「気にしてはいないさ」
何に対して許しているのだろうか。
私にはわからないが、姉妹にだけ通じる何かがあるのだろう。
那智「それにだ」
那智は部屋を周って、私の左隣に座る。
那智「大方、この節操なしが原因だろうからな」
那智がおちょくるような視線を私に送る。
那智の言葉で妙高と羽黒は困り顔になり、サンドウィッチを配り終わった足柄が、小さく笑い声をもらす。
提督「……悪かったな」
那智「悪いさ」
左頬に息が掛かるくらいにまで、那智の顔が近づく。綺麗な顔だ。
那智「私たちをこんな風にしたんだ。しっかり責任を取ってもらわないとな」
勘弁してくれ。
足柄「提督、変な顔」
足柄が失笑する。そんなに変か?
助けを求めるように妙高に視線を送る。妙高は微笑むと胸の前で手を合わせる。
妙高「さっ、朝食にしましょう」
妙高の合図で全員が手を合わせる。
提督・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「いただきます」」」」」
・本日 ここまで
・ぐだぐだ orz
・艦これ 何級向けの ss なのだろう これは
>>149
Q.目の前にトラックが迫っています。どうしますか?
A.提督「爆弾で吹き飛ばす」
・妙高型編 ほぼ終了 しました
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・ぐだぐだ orz
・艦これ 何級向けの ss なのだろう これは
>>149
Q.目の前にトラックが迫っています。どうしますか?
A.提督「爆弾で吹き飛ばす」
・妙高型編 ほぼ終了 しました
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乙
妙高型編が終了ってことは青葉型とか最上型とか姉妹艦ごとに話が進む感じかな
妙高型編が終了ってことは青葉型とか最上型とか姉妹艦ごとに話が進む感じかな
足柄さんがあまり目立ってないような……
比較的まともだから仕方ないんやろうなぁ
比較的まともだから仕方ないんやろうなぁ
非常に面白かった。
次は何型が来るか楽しみ、空母や駆逐艦も出てくるのかね。
次は何型が来るか楽しみ、空母や駆逐艦も出てくるのかね。
食事が終わった後、諸々の準備を整え、妙高たちと共に執務室に向かう。
執務室で秘書艦の引き継ぎを行い、その後、朝の点呼を終えれば、勤務開始となる。
時間が迫っている。引き継ぎにはそれほど時間は掛からないが、少し急ごう。
雑談に相槌を打ちながら、歩を進める。
提督(……ん?)
「……」
医務室前の廊下を誰かが歩いている。
だが、様子がおかしい。おぼつかない足取りで右へ左へと、傷ついた蝶のように歩いている。
おぼつかない足取りのまま廊下の窓側に寄ると、そのまま身体を預け、へたり込んでしまった。
すぐに傍まで移動する。
妙高「提督?」
「……あ」
妙高の声に気づき、こちらに振り向く。
豊穣な麦畑を思わせる髪色に、イヌ科の動物のような癖毛を持つ娘。
提督「夕立、どうした」
夕立「提督さん!」
夕立は私を認めると、立ち上がるのと同時に飛び付いた。
胸元に飛び付くと、夕立は顔を私の体に擦りつけ、背部に腕を回し抱きつく。
私が夕立に抱きつかれたのを見て、那智が夕立の首根っこを掴もうとする。
左手で那智を制する。
那智「……」
那智に睨まれる。
提督「少しだけだ」
那智が手を引っ込める。
足柄「どうしたの、夕立? どこか悪いの?」
私の右側から、中腰で夕立と同じ視線に立った足柄が声を掛ける。
夕立は顔を少し左に動かして足柄を一瞥すると、再び顔を私の胸元に埋める。
夕立「……」
足柄が眉をひそめて私を見上げる。そんな顔を向けられても困る。那智は那智で眉間にしわを寄せて夕立を睨んでいるし。
妙高「提督……そろそろお時間が」
耳元で妙高に囁かれ、時間が迫っていることを思い出す。
提督「……ああ、ん?」
妙高「どうしました?」
提督「いや、なんでもない」
妙高が近づいた瞬間、夕立の抱き締める力が強くなった気がしたが、気のせいか?
提督(しかしどうしたも、の……ッ)
羽黒が汚物を見るような眼差しで夕立を見ていた。
羽黒は口を開くと小声で呟く。
羽黒「……野良犬」
お、おう……
羽黒は無視して、夕立を何とかしよう。
提督「夕立、何か言ってくれないと困る。そろそろ点呼の時間だろう」
夕立「……ないの」
いつもの明るさも、変な語尾も、彼女らしさもなく、夕立の口から言葉が現れる。
夕立「朝起きたら提督さんが感じられなかったのっ! いつもだったら『ある』のにっ! どこにもいないのっ!」
夕立の指が、私の背中を掻き毟る。
夕立「こわい。こわいよ、提督さん……」
夕立は再び私の胸元に顔を埋める。
夕立の言葉を聞き、妙高、那智、足柄は私に「またお前か……」とでも言いたげな目線を送る。否定できんが、その目はやめてくれ。
それにしても、あれだけ襟巻きに匂い付けをしたのに、もう切れたのか。今度は匂い袋でも作ってみるか?
……兎にも角にも、このままでは動けん。
提督「……夕立、大丈夫だ」
夕立の頭を撫でる。
夕立「……ぽい」
夕立の力が少し弱くなる。
提督「怖かったろう……顔を見たい。少し手を離してくれるか?」
夕立の両肩を優しく掴む。
夕立は拒絶の唸り声を上げる。
提督「……いい子だから、なっ」
右手で耳の付け根を指で撫でながら、左手で腰近くの背中を揉み回す。
夕立「んっ♡」
妙高「……提督」
わかっているから、その眼をやめてくれ。
夕立に触れ続ける。
夕立「あうぅぅ、あっ♡」
妙高「て い と く」
提督「そう睨むな、妙高。那智、お前もだ」
那智は顔の左側をしかめていた。
那智「……面白くないな」
私だってやりたくてやっているわけじゃない。
夕立「ていとく、さん……♡」
息を弾ませながら、夕立が私を見上げる。
甘い瞳に、半開きになった口から、唾液の糸を引く八重歯が見える。
提督「夕立、顔をよく見せてくれ」
夕立の頬を両手で包む。
夕立は抱きしめていた腕を解くと、私の両手首を掴む。
屈み、夕立を引き寄せるように両手を引く。
引いた手に釣られて、夕立の両手が私の首に回る。
すかさず私は左手を夕立の背中に、右手を夕立の膝窩に回す。
提督「夕立、しっかり掴まれ」
夕立「あ」
夕立を横抱きし、立ち上がる。くっ、腰が!
足柄「まぁ」
夕立「提督さん、これっ」
夕立が驚いた表情を私に向ける。
提督「ん? ああ、すまん。嫌だったか?」
漣にこの抱き方をしたら「キタコレ! ……ぐへへへへへ」とか言って喜んで……喜んでいたんだよな? 早まったか?
夕立「い、嫌じゃないっぽい! 嬉しいっぽい!」
提督「そうか」
良かった。
しかし、腰が……! あと腕も……! くそっ、意外と重いな、夕立!
那智「……ちっ」
舌打ちとはらしくないな、那智。
提督「行くぞ」
妙高「えっ? あっ、はい」
呆気に取られていた妙高に声を掛け、夕立を抱きかかえたまま執務室へ向かう。足柄、ニヤニヤするんじゃない。
夕立「……ぽい♪」
羽黒「……」
羽黒「……駆除しなきゃ」
羽黒の沸点、低過ぎぃ……
夕立を横抱きし、冷えた空気を後ろから感じながら、執務室の前に到着する。
廊下に娘たちがいないところを見ると、部屋に居るのだろう。
提督「妙高」
妙高「……はい」
両手が塞がっているため、妙高に扉を開くのを頼む。
妙高が扉をノックする。
「Come in,Please」
「どうぞ~」
この声は……今日はやかましい上に、ややこしい奴が秘書艦のようだ。
妙高が扉を開き、那智、私の順に入る。
「Good Morning! 提督ぅー。待ちくたびれ……た……」
「ぱんぱかぱーんっ! 今日は愛宕が秘書か……ん……」
夕立を見た瞬間、二人は能面のような表情になる。
金剛「……」
愛宕「なにそれ」
・本日 ここまで
・申し訳ありません 姉妹艦ごとに 話が進むわけでは ございません
・点呼前のシーン = 妙高型がメインになる という 考えだったため 誤解を産む 書き込みを してしまいました 申し訳ありません
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うっひょー、おつ
いっちの妙高型が素晴らしすぎてつい姉妹艦で進めるものかと思ってたけど、これはこれでいいね
いっちの妙高型が素晴らしすぎてつい姉妹艦で進めるものかと思ってたけど、これはこれでいいね
愛宕「ねえ、提督、それはなに? なんなの? なんでそんなものが提督にくっついているの? ねえ?」
愛宕は目を見開き、夕立を指で差しながら、私に詰め寄ってくる。
金剛「……テートクぅ」
金剛は泥と油を混ぜたような眼をしている。
夕立は私に抱きついたまま、金剛たちから顔を背けている。
提督「夕立が体調を崩したから保護した。それだけだ」
実際は違うが、敢えてそう返す。
二人を押しのけ、那智と共に正面の執務机に向かう。
「明石はどうしたんだよ?」
「医務室にいらっしゃらなかったのですか?」
提督「そんなところだ……それとおはよう、摩耶、榛名」
部屋の右側に置かれている応接用のソファー、その近くに立っていた摩耶と榛名に返答する。
榛名「はい、おはようございます」
榛名は挨拶を終えると共に会釈をする。
摩耶「っす」
摩耶は左手を上げて、大雑把に挨拶を返す。お前はもう少し真面目に挨拶しなさい。
執務机の椅子の前に着く。しかし両手が塞がっているため、椅子を引くことができない。
足で椅子を引こうとしたところで、榛名が椅子を引いてくれた。
榛名「どうぞ、提督」
提督「ありがとう」
榛名「いえ……」
椅子に座り、夕立を膝の上に座らせる。
夕立から両手を離した瞬間、金剛が机を叩いた。
金剛「納得できないネ」
愛宕「そうよ。今日は私たちが秘書艦でしょ? なんでそんなものに構うのよ」
眉間に皺を寄せた二人から再び詰め寄られる。
秘書艦であることと、病人、ということにしている夕立、の世話をすることは関係ないはずだが、こいつらには同じことらしい。
夕立「……」
提督「放っておけないからだ」
金剛と愛宕を生返事であしらい、妙高たちに視線を向ける。
妙高、足柄、羽黒は引き継ぎに必要な資料を整理している。
提督「妙高、準備は?」
妙高「私は可能です」
足柄「私も出来たわ」
羽黒「私もできました」
金剛と愛宕に視線を戻す。
提督「だそうだ。早く引き継ぎを済ませろ」
金剛は歯ぎしりをすると、両手で再び机を叩く。
机が軋む。
金剛「My Lord! Please explain to me!」
その呼び方はやめろ。
榛名「お姉さま……」
提督「先ほど説明した以上のことはない。病人を保護し、預かり、連れてきた」
愛宕「でも、提督がお世話する必要はないですよね?」
愛宕は眼を細め、両手を合わせて右頬に添える。
愛宕「貸して? それ、私がヤっておきますから、ね?」
提督「……」
愛宕「ね?」
提督「……預かったのは私だ、最後まで私が面倒を見る」
次の瞬間、目の前の机が消えたかと思うと、天井に突き刺さった。
凹んだ天井から、剥がれた石膏が砂となり、机があったところに落ちてくる。
榛名が私ごと椅子を引いてくれたおかげで、頭に砂が掛からずに済んだ。
眼前に、前蹴上げの姿勢になった愛宕がいる。足が綺麗に180度開いており、黒いストッキングが艶めかしい。
愛宕はゆっくり足を降ろすと、再び両手を合わせて頬に添え、眼を細め、笑顔を私に向ける。
愛宕「ね?」
那智、金剛、妙高、羽黒から砲口を向けられながら、愛宕は笑顔を私に向ける。
提督(……)
厄介な娘だ……
・本日 ここまで
・キャラが プロットから ズレる orz
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摩耶「姉貴、やりすぎ」
私から見て左側、榛名と金剛の間にいつの間にか摩耶と足柄がいた。
摩耶「ほれ、提督、摩耶様がお前の書類、避難しといてやったぜ」
そういって摩耶は得意顔で、左手にある書類と右手にある業務用電話を軽く上げて見せつける。
足柄も、執務机にあった業務用電算機 ――と言うよりパソコンと呼ぶべきもの―― と、摩耶が持ち切れなかったのであろうスタンドライトと羽ペンを持っている。
提督「助かる」
よくもまあ、あの一瞬で確保できたものだ。
足柄「これ、どこに置いておけばいいかしら?」
足柄が電算機を団扇のように軽く振る。もう少し丁寧に扱ってくれ。
提督「適当に置いといてくれ」
摩耶「おうよ」
そう返事をすると、摩耶と足柄は金剛の後ろを周り、妙高と羽黒の射線上を横切ると、入口から見て左側にある秘書艦用の机にそれぞれの手に持っていたものを置く。
その際、足柄が電算機を机に置いたとき、硬いものがぶつかり合う音がした。
頼むから丁寧に扱ってくれ。お前の時代にも電算機があっただろ……あったよな?
足柄「ここに置いておくわね」
提督「ああ」
摩耶と足柄が机に物をちょうど置き終わったとき、それを見計らってか、愛宕が振り向き摩耶を睨む。
愛宕「なによ摩耶~、その言い方、私が悪いみたいじゃない」
愛宕は自分に向けられている砲口を歯牙にも掛けず、両手を握り、両腕をペンギンのように少し広げ、頬を膨らませて、子供のように駄々をこねる。
摩耶「だからやりすぎだって、そいつ、今日仕事できねえじゃねえか」
摩耶は左手を腰に当て、顎を使って私を差す。そういう仕草はやめなさい。
愛宕「ん~」
愛宕はそれを聞くと、右手人差指を唇に当て、目線を上にあげて唸る。
愛宕「あっ、それならこれを使えばいいんじゃない?」
そう言うと愛宕は、頭部と心臓部に砲口を向けている金剛の艤装、その艤装の盾のような部分を指で差す。余裕だなお前。
その愛宕の行動に対し、今まで指一本視線一つ動かさず、ただ艤装を展開し、その砲口だけを向けていた金剛が口を開いた。
金剛「Heeey、愛宕、そんなにこれが気になるなら、試しマスカ?」
金剛は首を傾げながらゆっくりと愛宕に顔を向ける。
金剛「Come on, pig」
榛名「お姉さま、お止めください」
摩耶「姉貴、ふざけすぎ」
まったくだ。本当にもう、どうしてこうなった。
愛宕「む~」
摩耶の言葉で脹れっ面になった愛宕は、私に顔を向ける。
愛宕「提督、どう思います?」
知るかよ。
提督「……」
夕立を除く全員が私を見る。
金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」
提督「……」
金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」
提督「……」
胃が痛い。
金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」
提督「……愛宕」
愛宕に右手で手招きをする。
愛宕「は~い♪」
執務机があったところにまで、愛宕が弾むように近づく。
提督「帽子を取れ」
そう言うとともに、手で愛宕にしゃがむ様に指示する。
愛宕は両手で帽子を掴み、しゃがんで頭を私に差しだす。
撫でる。
愛宕「♪」
提督「構ってあげられなくて、すまない。あとで埋め合わせするから、もう少しだけ待っていてくれるか?」
愛宕は帽子で口元を隠すと、上目遣いに私を見る。
愛宕「絶対ですよ?」
提督「ああ、約束する」
愛宕はニコリと微笑む。
愛宕「なら、少しだけ我慢してあげます」
愛宕の言葉を聞き、妙高と羽黒が艤装を格納する。
しかし、眉間に皺を寄せた金剛は、未だ艤装を展開したまま、私に詰め寄る。
金剛「テートクー! そういうのはよくないデース! Judge her!」
提督「本音は?」
金剛「ワタシも提督にお姫様抱っこされて、イチャラブしたいデース!」
金剛は両手をバタつかせてごねる。正直でよろしい。
提督「わかった。少し後になるが、二人きりで過ごそうか」
金剛「Really!?」
私の言葉で動きを止めた金剛は、驚いたように眼を開く。
提督「本当だ。何か問題でもあるのか?」
私の言葉で一転、艤装を格納した金剛は破顔し、腰に手を当て、胸を張る。
金剛「No problem! テートクの眼を釘付けにしてあげマース!」
そこは眼じゃなくて視線だろ。眼球に釘でも刺すつもりか。
榛名「……」
提督「榛名、希望があればお前の時間も作るぞ」
榛名「……えっ」
私と金剛の会話を少し俯いて聞いていた榛名に声をかける。
なんだか寂しそうな表情をしていた気がしたが、気のせいだったか?
榛名「いえ……榛名は……」
金剛「榛名、自分を抑え込む必要はありまセーン。そうでしょ、テートクぅ?」
提督「まあな」
夕立の背中をさすりながら答える。
榛名「本当に……よろしいのでしょうか?」
顔に影を落としたまま、榛名は自分に言い聞かせるように呟く。
榛名の美しさは、顔に陰りが見えても、変わらない。
提督「私は一向に構わない。金剛の後にはなるが、それでもいいか?」
榛名「はい……榛名は大丈夫です」
榛名は恥じらうように微笑んだ。
愛宕「じゃあ、摩耶は榛名ちゃんの後ね」
摩耶「は? ……はぁ!? あたしもかよっ!?」
妙高、足柄、羽黒と共に、ソファーで引き継ぎを行っていた摩耶が、口を半開きに驚いた表情を向ける。
提督「希望があれば、だ。嫌ならべ「嫌とは言ってね―し!!」
左様か。
提督「……さて、引き継ぎをいい加減始めてくれ」
愛宕「はーい」
金剛「All right」
金剛、愛宕、摩耶、妙高、足柄、羽黒がソファーに集まる。
榛名「……」
提督「どうした、榛名?」
榛名「……机、どう致しましょうか……」
榛名はソファーに行かず、天井に突き刺さった机を見上げている。
提督「……明石に頼むさ」
すまん、明石。
まあ、みかん箱でもいいけど。
榛名は「かしこまりました」というと、ソファーへと向かった。
那智「……」
仏頂面の那智は、未だ艤装を展開したまま腕を組み、山の如く聳え立っている。
提督「……那智」
那智「……なんだ」
提督「お前にもしようか?」
那智「いらん」
提督「そうか」
那智は艤装を納めた。
・本日 ここまで
・英語が きつい orz
・キャラが 多いと 影が薄くなるキャラが どうしても 出てしまう orz
・地の文 もう少し 削ったほうが いいですか?
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提督「夕立、気分はどうだ?」
夕立「ん」
妙高たちが引き継ぎをしている間、夕立に調子を聞く。
夕立は私の首元左側で顔を少し擦ると、眠た眼で欠伸をした。
夕立「……眠いっぽい」
口をぼんやりと開き、目を擦りながら、薄らと開いた眼を私に向ける。
さっきからやけに静かだと思ったら、寝ていたのか。
提督「朝礼台のところまで一人で行けるか?」
そろそろ離れて欲しいところだ。このまま点呼に出るわけにもいかないだろうし。
夕立はジッと私を見つめた後、再び私の首元に顔をくっつける。
子供特有の暖かい体温とスベスベプルプルな肌の感触が心地よい。
それなりの手入れは恐らくしているのだろうが、艦娘の肌はなぜいつも新鮮な果実のように瑞々しいのだろう、少し羨ましい。綾波や足柄の肌なんてプニプニだぞプニプニ。寝ぼけて足柄のおっぱいをお餅と間違えて噛み付いたこともあるんだぞ。足柄はなぜか喜んでいたけど。
夕立「もう少し、寝込むっぽい」
夕立の言葉で脱線した思考が戻る。
提督「そうか」
どうやらこのまま点呼に出る以外ないようだ。諦めよう。
提督(……それにしても)
天井に突き刺さった机を見る。
提督(愛宕、手加減したな)
以前だったら、天井は突き抜けて穴が開き、机は粉々になり、執務室は跡形も無くなっていただろうに。
ソファーに座っている愛宕に視線を移す。
溢れる黄金の大河のような髪、宝石のサファイアを埋め込んだような瞳、大海原を写したような服。
そのような広大さを感じさせる容姿をしながら、それでいて、個人的印象ではあるが、雪原の白兎を彷彿させるその雰囲気は、美しいというより可愛らしいという言葉が相応しかった。
今、愛宕はその可愛らしい顔を小難しくしかめて、妙高たちから話を聞いている。
愛宕が私の視線に気づいた。
愛宕は朗らかな顔で、小さく手を振ってくる。
私も右手で小さく手を振って返す。愛宕、仕事しなさい。
かつて私を縊り殺そうとした娘が、今は私に微笑を向ける。なんだか嬉しいような恐ろしいような、複雑な気分になる。
愛宕の様子に気づいたのか、金剛をはじめとした周りの娘が愛宕の視線の先に顔を向ける。
視線の先が私だと気づいた瞬間、娘たちの顔つきが険しくなる。
娘たちから顔を背ける。
背けた先にいた那智が、冷たい目線で私を見下ろしていた。
那智「……」
左に顔を背ける。
背けた先にいた夕立が、恨みがましい目つきで私を見上げていた。
夕立「……ありえないんだけど」
夕立、鈴谷の口調が移っているぞ。
提督(……)
天井を見上げる。
見せしめのように突き刺さっている机に、なぜか親近感を覚えた。
引継ぎを終えた妙高たちが私の前まで移動し、那智も含め横列縦隊で並ぶ。
私から見て左から、妙高、足柄、那智、羽黒で並ぶ。
その後ろに、同様に左から、摩耶、愛宕、金剛、榛名の順で並んでいる。
……気のせいかもしれないが、金剛たちの並び方、おかしくないか?
妙高「提督」
妙高が私に呼びかける。
提督「始めろ」
妙高の合図と共に、私と夕立を除く全員が、気をつけ、敬礼、直れ、をする。
本来なら私も立ってやるべきなのだが、夕立がいるので省略だ。
妙高「妙高以下4名、摩耶以下4名への引継ぎ、完了致しました、以上」
引継ぎ程度で堅苦しい気もするが、規律遵守というやつだ。
まあ、ここら辺は緩いし、適当だが。
提督「引継ぎ完了の旨、了解した。只今を以って、妙高以下4名を秘書艦の任から解く、以上」
妙高「はい、妙高以下4名、只今を以て秘書艦の任を終えます」
妙高、足柄、那智、羽黒が敬礼し、直る。
提督「よろしい、退室せよ」
妙高「はい、退室致します」
妙高たちの秘書艦の任はここまでだ。
妙高「では提督、また後日」
提督「ああ」
後ほど、妙高との予定を調整しないとな。
妙高が退室する。
那智「軽率な行動は慎め、いいな?」
提督「肝に銘じておく」
那智「……ふん」
那智が退室する。
足柄「寂しくなったら、いつでも来て頂戴♡」
提督「……」
足柄「ちょっと、その目はなによ」
足柄が退室する。
羽黒「あの……司令官さん」
提督「ん、どうした?」
羽黒は胸の前で両手を組み、不安そうな表情を見せる。
羽黒「少し、耳をお貸しいただいてもよろしいですか?」
提督「? 構わないが」
引継ぎで何かあったか?
羽黒は私の右耳側によると、腰を曲げて耳に顔を近づける。
羽黒「……失礼します」
提督「ああ」
次の瞬間、
チュッ
金剛「Nooooooooooo!!!」
金剛の絶叫が響く。やかましい。
羽黒「し、失礼しました!」
羽黒は退室した。
私の頬に柔らかい感触を残したまま。
榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「……」」」」
扉を睨む金剛を除き、他の娘たちが私を睨む。
提督「……」
金剛「テートクゥ……」
……私にどうしろと。
金剛・榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「「……」」」」」
そんなに厳つい表情で睨まれると、さすがに怖い。
提督「……後でいくらでもしてやるから、早く始めてくれ」
私の言葉に全員が呆れたと言わんばかりの溜息をついた。何なんだよ、ほんと。
摩耶「あー、とりあえず始めるぜ」
摩耶が後頭部を左手で掻きながら、引き継ぎ開始を告げる。
提督「……お前か?」
摩耶「あ? んだよ、悪ぃかよ」
提督「いや、そういう訳ではないが」
てっきり榛名がやるかと思ったが。
提督「……始めてくれ」
摩耶「おう」
摩耶の合図で、摩耶、愛宕、金剛、榛名が敬礼、気をつけ、直れをする。
先ほどとほぼ同様の応答を行い、金剛たちは秘書艦の任に就く。
摩耶「━━━━━はい、摩耶以下4名、只今を以て秘書艦の任に就きます」
提督「よろしい。行動を開始せよ」
摩耶「了解」
摩耶の言葉で応答を終え、各々の楽な姿勢に戻る。
秘書艦にはそれぞれ役割分担があるので、それを確認することにしよう。
……正直、秘書艦が4人もいるのは人材の無駄使いだと思う。
実際、要員を圧迫しているせいで、毎月加賀がウンウン唸っているし。
提督「で、だ。今日の補佐は……」
この顔ぶれなら、いつもは榛名だが。
摩耶「あたし」
摩耶が左手を挙げる。
薄々感じていたが、やはりか。
提督「……珍しいな、出来るのか?」
いつもなら指導だろうに。
摩耶が私にガンを飛ばす。
摩耶「あっ? お前、あたしを舐めてんのか、それぐらい出来るっつーの」
提督「そうか……指導は?」
愛宕「はーい、私でーす♪」
愛宕が元気よく右手を挙げる。本気か。
提督「……出来るのか?」
私の言葉で、愛宕は口を窄める。
愛宕「む~、できますよ~」
不安だ。
思わず摩耶を見てしまう。
摩耶は私の視線に対して、首を左に傾げて、右手で左肩を揉む。
摩耶「あ~、まあ、あたしから助言はしてるから」
提督「……頼む」
愛宕「もー、提督も摩耶も失礼よー」
提督「悪かったよ……護衛は?」
金剛「ワタシデース! I am your shield!」
金剛は左手をまっすぐ前に出し、美しい手のひらを見せてくる。
提督「心強い。頼りにしているぞ、金剛」
金剛「Yes! ワタシの実力、見せてあげるネー!」
提督「ああ……と、なると」
榛名を見る。
榛名は左を向いて、私と目を合わせようとしない。
榛名「……」
提督「……」
榛名「……」
提督「……」
榛名「……」
提督「……福祉か」
榛名「……はい」
榛名は顔を真っ赤にすると、両手で顔を覆った。
頑張ったんだな。
・本日 ここまで
・寝落ち してました orz
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