元スレいろは「私、先輩のことが、好きです」八幡「……えっ?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
151 = 2 :
葉山「いろは」
いろは「はい?」
葉山「悪かったね。何度もいろいろ誘ってもらったのに、一度も応えられなくて」
いろは「あー……。別にいいんですよ、もう」
葉山「そうか……」
葉山先輩はどこか安心したような笑みを浮かべる。そしてすぐにその表情はまた申し訳なさそうなそれに変わる。
葉山「でも……」
いろは「?」
葉山「……いや、どれだけ時間があったとしても俺はきっといろはの想いには応えられなかったと思う」
いろは「どうして今になってそんなことを……?」
152 = 2 :
葉山「ごめん。今のは忘れてくれ。じゃあ、また」
強引に話を打ち切って葉山先輩は私の横を通り過ぎた。
その言葉の真意を解せない私は、ただ廊下にポツンと立ち尽くしていた。
コーレーガーコーイーダトーシーターナーラー
いろは「あっ」
スマホの着信音が鳴り、急いでロックを解除する。
From:せんぱい
おう、サンキュー
いろは「…………」
ってそれだけっ!?
153 = 2 :
――
――――
「…………」
時計とスマホの画面を交互に見る。あと、五分。
こういう時ってなんで時間が経つのが長く感じるんだろうな。
試験自体の手応えは正直微妙なところだ。ネットに載った解答速報と見比べて自己採点をしても、その結果は良好とは言えない。
とりあえず滑り止めは受かっているから浪人はしないが、それでも第一志望に受かっていて欲しいという思いは強い。
それに――。
――いや、それはいいか。
大丈夫、だよな。
そう自分に言い聞かせながら、小町の言葉を思い出す。
『大丈夫だよ、お兄ちゃんなら。だって、今まで頑張ってきたんでしょ?』
154 = 2 :
「大丈夫……、大丈夫」
焦る思いを噛み殺しながらもう一度時計を見る。
あと、三分。
「……なげぇ」
合否の結果はネットで見ることになっている。まぁ受ける人数が人数だし、こういう方法の方が合理的だわな。
少し風情がないような気もするが、家から出なくてもいいという点においては文明の進歩に感謝すべきだろう。
それに同じ家から出ないでも郵便が来るかどうかを待っているよりかは、すぐに結果が見られるネットの方が断然いい。
ただ、それでも自信のない試験の結果ほど見たくないものもない。
また時計を見る。
あと、一分。
155 = 2 :
もう、スマホのデジタル時計で見ていても問題はないな。
59の文字をジッと見つめる。
額に汗がにじむのを感じる。こんなに緊張しているのは初めてかもしれない。
その瞬間、画面に表示された59の文字が00に変わった。
サッと画面をタッチする。
しかし画面は読み込み画面で止まった。なんだよ、接続集中しすぎでサーバー落ちたか?
八幡「……くっ」
変わらない画面にヤキモキする。くそ、早くしろよ。
耐えきれなくなり更新ボタンを押す。すると、今度はすぐに画面が切り替わった。
そして、結果を知らせる文字が表示された。
156 = 2 :
ここまで。
次の次か、そのまた次が最後になると思う。
157 :
ここで切るとかマジ鬼畜…
乙!
158 :
俺の時は合否結果サイト1時間くらい繋がらなかったなぁ……
159 :
おつおつ
受験期の描写がリアルだな
つづきはよ
160 :
乙です!
果たして八幡の合否は!?
161 :
俺「………番号ねえ…」
162 :
――
――――
いつからだったかはわからないけれど、自分は気づいていた。あの二人の気持ちに。
そこでとった行動は、『何もしない』だった。
本来なら選ぶべきだったのだろう。自分は誰かの味方であるべきだったのであろう。しかしそれによって選ばなかった方に罪悪感を生むのが嫌だった。
だから、何もしなかった。
せいぜいちょっとしたおせっかいを焼くだけで、まともなことは何もしなかった。
それでどうしたかったのかと言われると、答えられない。結局のところただ選択を避け続けただけなのだ。
この判断が正しかったのか今はわからない。それでも今だけはそれは許されるだろう。
そう、思っていた。
間違っていたと気づいた時には、もう手遅れだった。
163 = 2 :
高二、三月
いろは「川崎くん! これとこれお願い!」
大志「うす! あと、ここに終わったの置いとくっす!」
いろは「わかった!」
まぁ、この時期っていろいろと忙しいんだよね、生徒会。
去年の経験のおかげで多少は勝手を知っていても、難なくこなせるかと言われるとそうでもない。やはりキツいものはキツい。
いろは「……とりあえず今日の分は終わったね」
大志「っすね」
他会員「「お疲れ様です」」
いろは「うん、お疲れ様!」
164 = 2 :
卒業式を一週間後に控えた今日になっても、先輩からの報告はない。
結局どこを受けたのかも、どこに行くことになったのかも、私は何も知らない。
ダメだったのかな……。
でも受かってても連絡しなさそうだからなぁ、あの先輩。ちなみに葉山先輩からはもう連絡があった。
結局第一志望の大学に受かったらしい。さすが葉山先輩だ。
雪ノ下先輩も結衣先輩も進む大学が決まったようだ。しかしあの二人であっても先輩の結果がどうなったかは知らないらしい。
うーん……、どういうことだろ……?
165 = 2 :
――
――――
「……よし、これでいいな」
準備は終わり。あとは明日、指定された場所に行くだけ。
向こうから誘ってくるなんて珍しいな。まぁ、最近ほとんど話す機会もなかったし、いろいろ報告することもあるしちょうどいい。
いろいろ世話にもなったしな。これくらいは常識の範疇だ。
「さて、と……」
でも、どうしてわざわざこんなタイミングで呼び出すのだろう。こんなことをしなくても五日後には卒業式だ。話そうと思えばその時にだって可能なのに。
……いや、何を考えているんだ。校内で女子と関わるのをずっと避けていたのは俺の方じゃないか。ったく、どんな退化だよ。
……
…………。
もしかして……。
……それはないか。
166 = 2 :
――
――――
いろは「~♪」
大志「あれ、ずいぶんご機嫌っすね?」
いろは「そう?」
大志「そうっすよ」
川崎くんに気づかれちゃうくらい浮かれちゃっているのか、私。でもいい。だって今日は久しぶりに先輩に会えるんだもん! 嬉しくないわけがない!
大志「……まぁ、なんとなく想像はついたっすけど」
いろは「嫌だなー川崎くん。そんなわけないでしょー」
大志「まだ何も言ってないんすけど……」
167 = 2 :
いろは「じゃあ今日はお先に失礼するねー」
大志「うす。デート楽しんできてください」
いろは「デ、デートって……!」
大志「そんな感じっすよね?」
いろは「ま、まだ、そういうのじゃないから……」
大志「まだ?」
いろは「!」カァァッ
大志「…………」
いろは「も、もう行かないと!」ガララ
大志「…………」
大志「……さて、俺ももう少ししたら帰るっすかね」
168 = 2 :
今日、久しぶりに先輩に会える。それだけで心臓がバクバクだ。
一応チラッと校内で顔を見かけたりすることはあったが、ちゃんと話したりしたのはあの忘れ物の時以来だった。
待ち合わせ場所に着いて時計を見る。
約束の時間まではまだ三十分以上ある。ちょっと早く来すぎちゃったかな。
いろは「すぅー……はぁー……」
大きく深呼吸をする。しかし緊張は消えてくれない。
そしてこの緊張は、ただ先輩に会えるからというだけではない。
これは、もっと別のものだ。
ずっと前から決めていた。
先輩の受験が終わったら、告白しようと。
まさに今日は絶好のチャンスだ。逆に今日できないようなら、これから先もずっと伝えられないだろう。
169 = 2 :
言葉も決まっている。
どんな風に言うのかも、どんなタイミングで言うのかも。
あとは、言うだけ。
私の気持ちを、伝えるだけ。
それだけなのに、今までで一番緊張する。
まぁ、あたりまえだよね。
ふと今まで自分に告白してきた人たちのことを思い出す。
あの人たちも、今の私のような気持ちだったのかな。
だとしたら悪いことをしたと思う。あの時の私からしたら、誰かからの告白なんて邪魔以外の何物でもなかったから。
だから、適当に断ってしまった。そんな昔の罪に良心が少し痛む。
170 = 2 :
いろは「……あっ」
遠くの方の見覚えのある人が視界に入る。そんな言い方は変だね。本当は見てすぐにそれが誰なのかわかっちゃった。
いろは「せーんぱーいー!」
八幡「おお、久しぶりだな」
先輩はそう言って片手を上げる。私服を着ている先輩の姿は新鮮に感じられる。
いろは「お久しぶりですー。先輩から誘ってくれるなんて珍しいですねー」
八幡「まぁ、ちょっとな」
いろは「えー、なんですかーそれー?」
171 = 2 :
八幡「とりあえず立ち話もあれだし、どっか行こうぜ」
いろは「先輩にしては気が利くんですねー」
八幡「ばっかお前。俺はめちゃくちゃ気が利くからな。気が利きすぎてもう気功砲とか出るレベル」
いろは「えっ?」
八幡「いや、なんでもない。忘れてくれ」
いろは「私は気円斬が好きです♪」
八幡「ネタわかるのかよ」
172 = 2 :
――
――――
いろは「……で、結局サイゼなんですね」
八幡「決まってるだろ。逆にサイゼ以外あり得ない」
いろは「センスなさすぎです」
八幡「うっせ」
後輩との久しぶりの再会で使うお店がサイゼってどうなの……? ……でも、あの時みたいだし逆にいいかも。あっ、だから先輩もそう言ったのかな。
いろは「先輩、受験は終わったんですよね?」
八幡「まぁ、な」
いろは「お疲れ様でした」
八幡「おう、サンキュー」
173 = 2 :
いろは「……結果は、聞いてもいいですか?」
八幡「ん……」
その話題になると先輩の表情がわずかに曇った。そのせいで納得のいく結果ではなかったとわかってしまった。
いろは「じゃあ、お願いします」
八幡「……第一は落ちた。第二は受かってた」
いろは「あー……」
八幡「そもそも俺の実力には見合わないところを受けたからな。当然と言えば当然と言える」
いろは「それは……残念、でしたね」
八幡「まぁ、落ちたものは仕方ない。浪人するよりはマシだ」
いろは「浪人は嫌ですよねー」
八幡「朝から晩までひたすら勉強。親からは白い目で見られ家が安息の場所でなくなり、いくら学力を上げようとも去年のトラウマが安心させず、息抜きをしていても心のどこかで勉強しなきゃと考え続ける、そんな毎日は嫌だよな」
いろは「まるで実際に経験してきたかのような口振りですね」
174 = 2 :
いろは「それでも長い間お疲れ様でした」
八幡「おう、ありがとな。じゃあ、今度はそっちの番だな」
いろは「私ですかー?」
そこから先は私の話になった。生徒会とか文化祭とかクリスマスイベントとか。
何かハプニングの話をすると、その度に先輩は苦笑したりへんなことを言ったりする。それに私が乗っかったりドン引きしたりする。
そのやり取りがただ心地よい。
もしも。
もしも、私が先輩の彼女になれたなら、こんな幸せな時間を毎日過ごせるのだろうか。
こんな風に先輩をひとりじめしたいなんて、そんな身勝手なわがままも許されるのだろうか。
腕時計を見る。話に夢中で気づかなかったが、時間はもうあまり残っていない。話を切り出すならそろそろしないと。
175 = 2 :
その時、一色いろはの携帯電話は電波を受信した。
それに反応して着信を告げる。
しかし彼女はそれに気づかない。
せっかくの時間を、機械に邪魔されたくなかった彼女は、
設定をマナーモードに変更していたのだ。
着信は誰にも気づかれない。
今この瞬間に一色いろはの携帯電話が着信を告げていたことを知る人はただ一人。
それは彼女に電話をかけていた本人だけだ。
176 = 2 :
いろは「もう、三日後には卒業ですね」
八幡「あんまり実感ないけどな」
いろは「やっぱりそういうものなんですか?」
八幡「そりゃそうだろ。こういうのは中学も高校も変わらん」
いろは「ですねー。卒業ってもっとビッグイベントかのように思えますけど、実際終わってみたら拍子抜けだったりしますよね」
八幡「そんな感じだ」
でも、私にとっての先輩の卒業は重大なことだ。
普通に校内で会えていた好きな人に、あと三日で会えなくなる。
少なくとも、今までみたいに気軽に会うのは難しくなるだろう。
177 = 2 :
先輩に会えない。
それを考えた瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられるような感じがした。
もしも、私が先輩の後輩じゃなくて同い年だったら。
そんな空想が頭をかすめる。本当にそうだったならよかったのにな。
でもそんなのはありえない。
私に残されたチャンスは最初で最後の今だけだ。
言おう。
ずっと前から決めていた言葉を。
伝えよう。
ずっと胸にしまってあったこの想いを。
178 = 2 :
いろは「すぅー、はぁー」
一度、深呼吸。
先輩はコーヒーに浮いた氷を見つめてストローで軽くかき混ぜる。
どんな顔をするだろうか。
どんな反応をしてくれるのだろうか。
わからないけれど、後先のことなんて考えていられない。今の私にとって大切なのは、過去でも未来でもなくて「今」なんだ。
心臓の鼓動が早まる。口から心臓が出てしまいそうという比喩をこんなところで実感するなんて思わなかった。
少しでも気を落ち着かせるために、もう一度深呼吸。
そんな私の様子に気づいているのかいないのか、先輩もどこかソワソワしているように見える。これはただの投射かな。
とりあえず声が裏返らない程度に落ち着いて、息を吸う。
八幡・いろは「「あの」」
179 = 2 :
いろは「あ……」
八幡「わ、わりぃな。そっちからでいいぞ」
いろは「あっ、い、いや、私の方こそどうでもいい話なので先輩からでいいですよ」
八幡「そ、そうか……」
せっかく心の準備が出来ていたのに、見事に邪魔されてしまった。先輩ってまさかエスパー?
思わぬハプニングに気を削がれながらも、少し先延ばしになって安心していたりもする。私の覚悟弱すぎ。
八幡「…………」
180 = 2 :
話があるようだったのに、なかなか始めようとせず、飲み切ったグラスの底に溜まった氷をストローで弄ってばかりいる。
いろは「……先輩?」
八幡「…………」
先輩はついさっきまでとは全く違う表情をしている。真剣でありながら困惑や不安が表れていて、これから口にする言葉を選んでいるように見える。
……いや、違うかな。もう言葉も何もかも決まっていて、あとはそれを口にするかどうかを迷っているようだ。
それは今の私とどこか似ていた。
八幡「…………」
私から目線を逸らすようにうつむく。先輩が何を考えているのかまるでわからない。
181 = 2 :
先輩はそのまま何度も口を開いては閉じるを繰り返していた。五回くらい繰り返され、さすがに痺れを切らした私が声をかける。
いろは「話があるんですよね?」
八幡「ああ……。まぁ……」
それでもなかなか話に入らない。もう一度何かを言おうかと思ったその時、先輩が口を開いた。
八幡「……いつか、言っていたよな」
いろは「はい?」
八幡「何かあったら相談に乗るって」
いろは「あー、言ったような……」
八幡「だから一色。一つ相談がある」
182 = 2 :
予想外の言葉に脳が停止する。
しかし思考が停止していても直感は何かを発していた。
が、その何かを私は理解できない。
いろは「は、はぁ……」
八幡「……俺さ」
直感が告げる何かを頭で理解できる言語に変換する。
ダメ。
その二文字が頭の中に浮かぶ。何がダメなのかはわからない。ただ、それより先の言葉を言わせてはならないと強く感じた。
なのに、先輩の言葉を止める勇気が出ない。焦ってしまって何をすればいいのかわからない。
そんな私の様子に気づかないまま、先輩は言った。
八幡「好きな人が出来た」
183 = 2 :
ここまで。
次回最終回。
184 :
乙乙
185 :
おっつまってるぜ
186 :
おおうつ
187 :
おっつおっつ
188 :
相思相愛じゃんか
189 :
いろはすはす!
190 :
ここで止められると眠れないんだが おつ
192 :
心臓痛い……
193 :
194 :
誘い誘われた人物が同一人物といつから錯覚していた
195 :
最近叙述トリック流行ってるみたいだしな
197 :
まじで気になるわああああああああああああ
198 :
続きはよ
199 :
続きはよ
200 :
>>114
誤)その労いの言葉がまた私の鼓動をまた狂わせる。きっと顔も真っ赤になっているだろうから、窓の外に目を移す。
正)その労いの言葉が私の鼓動をまた狂わせる。きっと顔も真っ赤になっているだろうから、窓の外の方に顔を向けた。
>>141
誤)あー、何やっちゃってるだろ、私。恋にうつつを抜かして生徒会をなおざりにしちゃうなんて。
正)あー、何やっちゃってるんだろ、私。恋にうつつを抜かして生徒会をなおざりにしちゃうなんて。
>>170
誤)先輩はそう言って片手を上げる。私服を着ている先輩の姿は新鮮に感じられる。
正)先輩はそう言って片手を上げる。私服を着ている先輩の姿は新鮮に見えた。
最終回は近日中にでも。まだ全然終わってないけど。
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