元スレ夕立「恋情は見返りを――」提督「求めない」
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201 = 1 :
長門「では、私はこちらで」
提督「ああ……」
カチャ
提督「ほう。木刀なんてあるのか……」
長門「……」
長門(会った時は気づかなかったが……)
長門(この提督……身体の芯にまったくブレがない)
長門「提督は、なにか武道を?」
提督「いや、武道なんてそんな御大層なものは知らない」
提督「さすがに軍人だから格闘くらいは出来るが」
長門「そうか」
長門(そんなレベルには見えないがな……)
202 = 1 :
―食堂―
提督「おはよう」
天龍「おはよう提督。昨日は遅かったのか?」
提督「んん? なんだ、どういう意味だ?」
天龍「いや、なんか執務室の電気つけっぱなしだったみたいだぜ?」
提督(しまった――!)
金剛「Good Morning!!!! テートクゥー! なにやら不思議な言葉が聞こえてきましたネー?」
提督「な、なんだ?」
金剛「私のLadyとしての勘が告げていマース!」
金剛「昨夜夕立と何かありましたネー?」
提督「い、いや……」
提督(め、めんどくせぇ……)
金剛「Chi Chi! 私の眼はごまかせマセーン。今朝の提督の顔はお疲れ気味デース」
天龍「んん? まあ、言われてみれば確かに少し……」
金剛「Because! 大方、寝ぼけた夕立に捕まえられて眠れなかったんデスネー?」
天龍「え、そうなのか提督?」
203 = 1 :
提督(朝っぱらから無駄に頭が回るなこの帰国子女は……。もういいやめんどうくさい)
提督「ああ、そうだ」
金剛「んー! やっぱりネー! さすがヴィッカ―ズ生まれの私の眼に狂――What's!!??」
天龍「て、提督!? マジかよ!?」
提督「ああマジだ。仕方がなかった。起きなかったし離さなかったからな」
金剛「どどどど同禽!?」
天龍「ま、まさか手を出したりなんか……」
提督「するかバカ」ゴツン
天龍「いてぇ」
金剛「まさか提督と夕立のrelationがそこまで進んでいるとは!」
提督「別に進んでない……」
提督「勘繰り過ぎだ」
提督「だいたい、私の顔が疲れているだなんて。そんなことがわかるほど私のことを見ていたのか?」
金剛「え! あっ……。いや。そんなことはないデスが……///」カア
提督「どうなんだ?」ズイ
金剛「え、あの、提督、近い…………デス……///」モジモジ
提督(大人しくなったか……)
天龍「……」
204 = 1 :
川内「おはよーみんな。なんか夜戦の匂いがするねぇ~」
提督「おはよう川内。そんな匂いはないから安心しろ」
長門「なんだか騒がしかったな。朝から何を騒いでいるんだ金剛」
金剛「……何でもないデス」
提督「ほら、少し早く来たんだからみんなで飯の準備するぞ」
一同「はーい」
鳳翔「あ、皆さんおはようございます。今準備しますね」
提督「あ、鳳翔!」
鳳翔「はい?」
提督「あとで少し話がある」
鳳翔「?」
―――
――
―
205 = 1 :
とりあえずここまで。
次は日曜日かな。
206 :
日曜日って……今日っぽい?
207 :
日日土土土日日ならそうかもな
208 :
死にたくなるサイクルだな
違ってよかった
209 :
毎日日曜日!
211 :
―工廠―
提督「やあ」
鳳翔「こ、こんにちは」
開発妖精A「おや」
開発妖精B「ていとくさんですな」
開発妖精C「かんむすさんもいらっしゃるようで」
開発妖精D「おしどりふうふですな」
開発妖精E「ほんじつはおひがらもよいゆえ」
開発妖精F「えいえんのあいをちかいます?」
提督「誓わない誓わない」
鳳翔「あ、あの……////」
提督「鳳翔も真に受けなくていいぞ」
212 = 1 :
提督「今日は艦載機開発に来た」
開発妖精A「ついにぼくらのでばん」
開発妖精B「ぼくらでばんなかた」
開発妖精C「さいていちはかいはつにはいりますか?」
開発妖精D「かいはつしなくてもなんとかなるしすてむゆえ」
開発妖精E「しんこうがおそいのでは?」
開発妖精F「さあー?」
鳳翔「彼らは何を話しているんでしょう?」
提督「よくわからないことだ。気にしなくていい」
提督「ともかく、彼女に見合ったものをどうかひとつ」
妖精一同「「「はーい!」」」
―――
――
―
213 = 1 :
提督「建造ではあまり気にならないが、妖精の仕事は本当にランダムだな……」
提督「しかし望みのものは手に入った」
提督「零式艦戦21型だ」
鳳翔「提督、ありがとうございます」ペコリ
提督「さっそく装備してみるか」
提督「艤装の、その矢2本か。1本には九九式艦爆が装備されている?」
鳳翔「そうですね。矢じりをはずすとこんな風に分離します」
提督「……摩訶不思議だな。装備するとこの模型は消滅し、矢じりとして矢と一体化するのか」
鳳翔「ん……。こちらの矢とそちらの矢では、反映される搭載数が違うようです」
提督「……なるほど。不便なもんだな。なんとかならんのか?」
開発妖精A「さあー?」
開発妖精B「ままなりませんな」
開発妖精C「じんせいはままなりませんゆえ」
開発妖精D「あんぱんのようなものですな」
開発妖精E「あまいあまーい」
開発妖精F「すうとしあわせになれるです?」
提督「人生論どころか麻薬にまで飛躍するのか……」
214 = 1 :
提督「もっと大量生産出来ないのか?」
開発妖精A「んー」
開発妖精B「とらいあんどえらーが、ひつよう?」
開発妖精C「じょうほうがだんぺんてきすぎますな」
開発妖精D「かくりつぶんぷがきびしかた」
提督「どういうことだ……。そもそも矢とのこの連動はなんだ」
開発妖精A「ぜんたいのけいですゆえ」
開発妖精B「ごをたんどくでかんがえるのはだめとしかられました……」
開発妖精C「ちぇすのこまをひとつだけながめるのもおこられました……」
開発妖精D「このぶんだとしょうぎもだめなんだろうなー」
開発妖精E「ぼーどげーむ、やるです?」
開発妖精F「じんせいげーむだー」
提督「……」
鳳翔「提督……」
提督「いいさ。詮無いことだ。彼らには彼らの理屈があるのだろう」
提督(多分……)
215 = 1 :
―司令室―
提督「それでは夕立。朝の報告を」
夕立「はい」
夕立「今朝は初めて意識的な装備開発を行いました」
夕立「合計消費資源は80/240/40/440」
夕立「また建造での消費資源は300/30/400/300です」
夕立「航空戦力の拡充も少しずつ進めていきますので、ご理解をお願いします」
提督「ありがとう」
提督「午後に本部からこちらに一人、軽巡洋艦が送られる」
提督「報告は以上」
提督「続いて作戦内容の説明に移る」
提督「まず遠征だが、第二艦隊のスターティングメンバーは旗艦吹雪、以下睦月、響、白雪、深雪、那珂βとする」
提督「今回はアクションによって作戦遂行人数とメンバーが変わるので、そこはこの書類をよく確認してくれ」
吹雪「……川内さんと天龍さんがローテーションですね」
提督「そうだ。何か不明な点はあるか?」
吹雪「ありません。大丈夫です!」
睦月「吹雪ちゃん、頑張ろうね!」ニコッ
吹雪「うん!」
提督「よし。第二艦隊は出撃準備にかかれ」
一同「了解!」
216 = 1 :
提督「さて、残りのメンバーは全員第一艦隊となる」
提督「旗艦は那珂。以下長門、夕立、神通、金剛、殿は鳳翔」
提督「こちらが計画書だ」
提督「今回の作戦では南西諸島の防衛ライン上の敵侵攻艦隊を捕捉し、全力出撃によりこれを可及的速やかに撃滅する」
提督「本作戦から低速艦混成の編成になるが速力には注意すること」
提督「また鳳翔の着任により索敵が一気に拡大した」
提督「うまく調整してみてくれ」
提督「夕立は長門を、金剛は鳳翔のフォローを頼む」
長門(よし!)グッ
提督「何か質問はあるか?」
提督「……よし。第一艦隊、出撃!!」
217 = 1 :
今宵はここまで。
皆さん励みになるレスありがとうございますw
次回更新は水曜日を予定。
218 :
乙ぽい
222 :
乙
妖精さんたちの会話なにげにレベル高ぇwwwwww
脳内再生度がはんぱないですwwwwww
224 :
妖精さんは癒やし
225 :
遅れました申し訳ない。
『平常運転』読まないとなー。あと2期とか来ないですかね?
2月中最後の更新になります。
つづき
226 = 1 :
―海上―
那珂(敵侵攻艦隊……。当然、戦艦や空母が出てくる可能性が……)
那珂『そろそろ予測された戦闘海域に入ります』
那珂『鳳翔さん。戦闘機を索敵機として……』
鳳翔「はい」
鳳翔(……一機、二機、三機)
鳳翔「発艦!」
長門(さて、どうなるか……)
那珂『各員、鳳翔さんからの伝達を待ち、攻撃準備を整えてください』
那珂『長門さんと金剛さんは』
金剛『OK! 先制を叩き込むネー!』
那珂『はい。お願いします』
鳳翔「………………」
鳳翔(私はここからの眺めを見たことがないはずのに……)
鳳翔(この既視感は……?)
鳳翔(それとも私は、本当は見ていたのでしょうか?)
鳳翔(……いいえ。今は戦いに集中しなくては)
227 = 1 :
鳳翔『見えました!』
鳳翔『二番機より。10時の方向。へ級へ級ハ級ハ級の複縦陣』
鳳翔『敵艦載機なし。このまま爆撃に移ります』
金剛『主砲発砲準備!』
鳳翔『攻撃隊、発艦!』
金剛『Standby!』
長門『いつでも来い』
鳳翔『攻撃開始地点へ到達、爆撃態勢に移ります』
鳳翔『爆撃開始!』
ドドーン!
那珂「封鎖を解除します」
鳳翔「ハ級一隻の撃沈を確認。反転します」
長門「あの位置か……」
提督『鳳翔が爆撃したところか。長門、狙えるか?』
長門「ふん、任せておけ。金剛!」
金剛「Roger that!」
長門「第一主砲発射!」ズドーン!
228 = 1 :
鳳翔「……目標、着弾地点から30の位置より右に20」
長門「次は当てる。第二主砲発射!」ズドーン!
金剛「撃ちます! Fire!!」ズドーン!
鳳翔「金剛さんの夾叉を確認! 敵艦、発砲しました!」
金剛「Great! 続けて第二主砲!」ズドーン!
神通「私も撃ちます」
鳳翔「へ級一隻撃沈」
金剛「Ouch! ちょっと被弾したネ」ガッ!
提督(弾道から逆算して……)
神通「撃ちます。当たってください!」ドドーン!
鳳翔「続けて旗艦へ級も轟沈」
那珂「主砲発射準備。てぇー!!!」ドドーン!
鳳翔「ハ級大破炎上。沈んでいきます」
那珂「敵艦隊、全艦沈黙。戦闘を終了します」
229 = 1 :
鳳翔「やりました!」
長門「ふん、まあこんなものだな」
提督『鳳翔、長門、実に見事な動きだった』
金剛「頑張りましたネー!」
夕立「……」
神通「夕立ちゃん……?」
夕立「何だか出番、なかったっぽい……?」ガーン!
神通「夕立ちゃんの顔が妖精さんみたいになってる!?」
那珂「ま、まあまあ。こういう時もあるよ」
提督『そうだな。自分が活躍できる時にしっかり活躍できることが大事だな』
夕立「ぽいー……」
230 = 1 :
―――
――
―
那珂「ん? あれは……」
長門「小島、だな」
那珂「……妖精さんがいるように思います」
那珂「ちょっと上陸してみます」
長門「お、おい。いいのか?」
金剛「ま、私たちが哨戒していれば問題Nothing!」
夕立「いってらっしゃーい」
那珂「え? みんな来ないの?」
長門「私は残ろう」
夕立「私も残るっぽーい」
長門「そ、そうか」ドキドキ
夕立「2人で守ってるよー」
金剛「Oh! それなら、じゃ、行ってくるネー!」
神通「行ってきます」
鳳翔「行って参ります」
長門(期せずして夕立とふたりきりになってしまった……)
長門(何を話せばいいんだろうか)ドギマギ
231 = 1 :
―小島―
那珂「ホントに……。こんなところに妖精さんが!」
はぐれ妖精A「かんむすさんだー」
はぐれ妖精B「みちくさ、たべる?」
はぐれ妖精C「たべてもげんきはでませんな」
はぐれ妖精D「たべれる? たべられる?」
はぐれ妖精E「ことばのみだれはこころのみだれ」
はぐれ妖精F「うちゅうのほうそくがみだられるー」
神通「皆さんは、ここで何を?」
はぐれ妖精A「なんだったか?」
はぐれ妖精B「さあー?」
はぐれ妖精C「みんなではがねつくってました」
はぐれ妖精A「そうだっような」
はぐれ妖精B「そうじゃなかったような」
はぐれ妖精D「それしかとりえがなくて」
はぐれ妖精E「だうーん……」
はぐれ妖精F「ぼくら、いらないこ?」
那珂「いらなくないです。大丈夫です」アセアセ
232 = 1 :
金剛「Well……皆さんはどうして鋼材を?」
妖精一同「「「…………」」」
妖精一同「「「さあー?」」」
金剛「さ、さあーって……」
那珂「あはは……」
鳳翔「それより、鋼材を“つくる”というのが気になります」
鳳翔「鋼は掘り出して加工するものではないのですか?」
はぐれ妖精A「あー」
はぐれ妖精B「はがねははがねからつくります」
那珂「なんですって?」
はぐれ妖精C「あと、うみからはがねをひろってきます」
神通「海に潜るんですか? 危ないです」
はぐれ妖精C「あぶないですか?」
金剛「海には、深海棲艦という魔物がいるんデスよー?」
はぐれ妖精D「もしかして、うみのかんむすさんたち?」
はぐれ妖精E「たまにまみえるかも」
はぐれ妖精F「みなさんかっこいいでざいん」
金剛「海の……艦娘…………」
那珂「…………」
233 = 1 :
はぐれ妖精A「みんなともだち」
はぐれ妖精B「じんるいみなきょうだい?」
那珂「……その、“海の艦娘”さんたちとはどんなやり取りを?」
はぐれ妖精E「なんでしたっけ?」
はぐれ妖精F「よくかんがえたことなかた」
妖精一同「「「…………」」」
妖精一同「「「さあー?」」」
はぐれ妖精A「いろいろおはなししましたが」
はぐれ妖精B「いろいろあそんでもらいましたが」
はぐれ妖精D「ぼくら、もてあそばれてばっかり」
はぐれ妖精C「でもそれがいいかもー?」
那珂「……は、話を戻しましょう」
那珂「海から鋼材を拾うというのは?」
はぐれ妖精C「うみのみずからはがねをひっこぬいてます」
金剛「What's!? か、海水から!?」
はぐれ妖精C「なにか、おかしかったですか?」
はぐれ妖精D「やっぱりぼくら、やくたたず?」
はぐれ妖精E「だうーん……」
鳳翔「そんなことないですよ!」アセアセ
234 = 1 :
はぐれ妖精B「ほんと?」
はぐれ妖精A「よかたよかた」
はぐれ妖精C「かんむすさんは、みんな、やさしいです」
那珂(いや、おかしいと言えば何もかもおかしいけど)
那珂(そもそも私たちの存在自体……)
那珂(ドロップだって、私の持っている記憶からは大きく逸脱しているし……)
那珂(それと似たようなもの……なのかな……)
那珂「やっぱり妖精さんたちはすごいです」
那珂「私たちにできないことを平然とやってのけます」
はぐれ妖精A「ぼくら、すごかった?」
はぐれ妖精B「たいしたことないですな」
はぐれ妖精C「きょうえつ、しごく?」
はぐれ妖精D「しごかれたいかもー」
はぐれ妖精E「これはおれいをしなくては」
はぐれ妖精F「おそなえものだー」
はぐれ妖精D「くもつくもつ」
はぐれ妖精E「しずまりたまえー」
はぐれ妖精B「なぜわがむらをおそうー?」
235 = 1 :
はぐれ妖精C「はがね、あげます」
那珂「本当ですか? ありがとうございます」ペコリ
はぐれ妖精A「こちらへどうぞー」
那珂「こ、これは……」スッ
はぐれ妖精B「あっしゅくしてます」
はぐれ妖精D「かくちょうし、つけました」
はぐれ妖精E「ごかんせいがありますゆえ」
はぐれ妖精F「かいとうできますな」
那珂(私たちの身体と同じ。物理的情報がそれ自体の中に折り畳まれているんだ……)
那珂「これ、ありがたく頂戴しますね」ニコッ
はぐれ妖精A「ではでは」
はぐれ妖精B「またあえる?」
はぐれ妖精C「またあそべる?」
那珂「うん!」
那珂「また、来ます」
236 = 1 :
―海上―
長門「ん。戻ったか」
夕立「おかえりー!」
長門(結局緊張して何も話せなかった……)
長門「どうだった?」
金剛「妖精さんから鋼材を貰ってきたヨー!」
長門「そ、それだけ?」
那珂「いや、かなり収穫はありましたよ」
神通「提督にはちゃんと報告しないとですね」
那珂「うん……」
長門「ほう……?」
鳳翔「とりあえず、進軍しましょうか」
夕立「れっつごー!!」
―――
――
―
237 = 1 :
長門「そしてまた、このパターンか……」
夕立「ふんふんふーん♪」
長門(自分も小島に向かうべきだったか?)
長門(しかし哨戒は必要だ。いつ敵が襲ってくるかわからん)
長門「……」チラッ
夕立「~♪」
長門(夕立は気にしてないようだが、これでは間が持たん!)
長門(いや、私の精神が持たん!)
長門(しかし話しかけるのは……)ドキドキ
長門「……」チラッ
夕立「うん?」
長門(目、目が逢ってしまったー!!!)ズキューン!
夕立「どうしたんですかー? 長門さん」
長門「い、いや……。ちゃ、ちゃんと哨戒をやってるかと思って」
夕立「やってますよぅ、もーう!」プクー
長門「そ、そうだな。悪かった……」
長門(マズイ、夕立の機嫌を損ねてしまったか! というか、哨戒出来てないのは私の方じゃないかー!)ガーン!
238 = 1 :
夕立「……」
夕立「“自分の甲板”に立つのって、気持ちいいですよねー」
長門「え?」
夕立「ほら。この姿にならないと、自分の甲板の上に立てないじゃないですか」
長門「ああ……。まあ、確かに。この姿に生まれ変わらなければ、経験出来ないことだったのかもしれんな……」
長門「かつて私に乗った幾人もの兵が見ていた光景を、否応なく想像させられる」
夕立「でも、なんか不思議ですよね」
夕立「私が私の上に乗っているだなんて……」
夕立「なんだかこの船は、私じゃないみたい」
長門「それは……どういう?」
夕立「だって、自分の姿なんて鏡がないと見られないはずのに、こうやって直接見ることが出来るなんて、不思議じゃないです
か?」
長門「それはまあ、そうかもしれん」
夕立「だから、夕立は、実は今下にある夕立とは別のものなんじゃないかなー…………」
239 = 1 :
夕立「なーんてね!」
長門「は?」
夕立「夕立、こういう難しい話はよくわからないっぽい!」
長門「おいおい、自分からその話を振ったんじゃないか」フッ
夕立「ふふ……。長門さん、やっと笑ってくれましたね」タッタッタ
長門「え?」
タッ
長門「お、おい!」
スタッ
夕立「ふぅー。着地成功ー!」
長門「な、何も、こちらまで跳んでこなくても……」
夕立「言葉だけじゃ、伝わらないことだってあると思いますよ?」
夕立「私は、もっと長門さんとお話したいです!」
夕立「長門さんだけじゃなくて、他の娘とも、そして……」
夕立「提督とも」
長門「夕立……」
240 = 1 :
夕立「だからこれからも、よろしくお願いします」ペコリ
長門「夕立……」ジーン
夕立「ぷはっ、長門さん、泣いてるんですか?」
長門「なっ! バカか、泣いてなどおらん! このビッグセブンが……。目にゴミが入っただけだ!」
夕立「あははー! 長門さんおもしろいかもー! みんなに報告しなきゃー!」
長門「おい、こら夕立ー!」
夕立「きゃー!! 長門さんこわいっぽいー!」
長門「待てー!!!」
夕立「長門さん! 哨戒ですよ哨戒! 哨戒しなきゃ!」アハハ
長門「ふふふ……。このビッグセブン、哨戒しながらお前をとっ捕まえるくらい、造作もないことだ……」
長門「いくぞ!」
夕立「わー!!!」
――――――――――
那珂「なーに甲板でいちゃついてんですかねーあのふたりは……」
金剛「Picnicと勘違いしているのデショウかー」ヤレヤレ
神通「まああのふたりに限って、哨戒を忘れてることはないでしょうけど……」
鳳翔「なんだか仲良くなったみたいですね」ニコニコ
241 = 1 :
―――
――
―
那珂「かなり進軍を進めました……」
那珂「各艦、警戒を厳に」
那珂「鳳翔さん、索敵をお願いします。敵艦載機に充分注意してください」
鳳翔『はい!』
鳳翔『航空隊、発艦始め!』
長門『……那珂、どう思う?』
那珂「先程の戦闘は明らかに偵察艦隊でしょう」
那珂「作戦書通りに侵攻艦隊が来るとすれば、空母や戦艦がいても何らおかしくはないと思います」
長門『なるほどな』
金剛『腕がなるネー!』
鳳翔『! 三番機より、敵艦隊見ゆ! ヲ級ヌ級リ級へ級ハ級ハ級の6隻』
長門『やはり来たか』
鳳翔『このまま航空戦に移ります』
鳳翔『偵察隊に従い侵攻! 敵戦闘機と交戦に入ります!』
242 = 1 :
那珂「封鎖を解除します」
那珂「提督、航空母艦2隻を含む艦隊と会敵しました」
提督『ああ。まずは健闘を祈る』
提督『各艦、対空戦闘準備』
提督『鳳翔は爆撃の準備も進めろ』
鳳翔「了解! 攻撃隊、発艦!」
提督『よし』
提督(先程は航空母艦がいなかったからな。ここからだ)
鳳翔「制空権争い、拮抗しています!」
提督『充分! そのまま爆撃態勢に移れ』
鳳翔「爆撃開始! 爆弾投下!」
那珂「敵爆撃機及び攻撃機接近!」
提督『各艦対空砲火! 撃ち落とせるだけ撃ち落とせ!』
金剛「Fire!!!」ズドーン!
長門「てぇー!!!!」ズドーン!
神通「撃ちます!!」ドドーン!
那珂「当たれ―!!!」ドドーン!
夕立「てぇー!!」ドドーン!
243 = 1 :
ズドーン!
金剛「くっ!」ガツン!
金剛「残骸が接触! みんなは!?」
鳳翔「中破しました……。しかし、このまま沈む訳には参りませんっ!」
提督『状況は!?』
那珂「金剛さんが若干の被弾。鳳翔さん中破。敵艦隊はハ級を1隻撃沈しました」
提督『よし。砲撃戦だ! 長門!』
長門「もうやっている! 第一、第二主砲、斉射!!!」ズドーン!
夕立「へ級が発砲!」
神通「重巡リ級、沈んでいきます」
長門「ふん。きかぬ!」ガッ
夕立「ヌ級の発艦を確認!」
提督『かまうな! 今は撃ち続けろ!』
金剛「撃ちマス! 第三、第四主砲一斉射! Fire!!!」ズドーン!
神通「うてぇー!!!!」ドドーン!
244 :
那珂「ヲ級轟沈! ……長門さん!」
長門「またか。それで攻撃のつもりか!?」ガツン!
那珂「ハ級中破! 発砲してきます! うてぇー!!」ドドーン!
夕立「これでどう!?」ドドーン!
神通「へ級中破! 続いてハ級の撃沈を確認しました。ヌ級が攻撃隊を発艦。きゃあ!」ガガガッ
長門「しつこいな……。私が仕留める」
那珂「続けて撃ちます。てぇー!!!」
長門「これで終わりだ。てぇー!!!!」
夕立「鳳翔さん! くっ!」ドドーン!
鳳翔「あぁ!!」ドカーン!
長門「大丈夫か!?」
鳳翔「うぅ……。大破……しました…………」
那珂「ヌ級の轟沈及びへ級の撃沈を確認。敵艦隊、殲滅しました」
提督『鳳翔! 航行は可能か!?』
鳳翔「はい……。なんとか……」
提督『……長門、乗せてやれ』
長門「了解した」
提督『ふぅ。なんとか、終わったな……』
245 = 1 :
―司令室―
那珂「第一艦隊、戻りました」
提督「ご苦労。みんなお疲れ様」
提督「今日はみんなよく頑張ってくれたと思う。鳳翔もだ」
鳳翔「提督……。お言葉ですが……」
鳳翔「……私は、こんなにやられてしまいました」
提督「それがどうした」
提督「初の実戦であそこまでやれたんだ。誇っていいはずだ」
鳳翔「でも……。悔しくて……っ! うっ…………うぅ……」ポロポロ
提督「鳳翔。涙が溢れるのなら、それは自身の能力を卑下することなく、精一杯戦ったことの紛れもない証だ」
鳳翔「!」
提督「だから鳳翔。どうか、泣かないでほしい」
鳳翔「……はい!」
鳳翔「ですが、私が無茶をしては、ダメですね……。本当は今晩、皆さんに晩御飯を――」
提督「今日は特別サービスだ。鳳翔には高速修復材の使用を許可する」
提督「修復後は風呂にでも浸かって、ゆっくり身体と心を休めるといい」
提督「そして晩御飯、楽しみにしているぞ」
鳳翔「……ありがとうございます!」
ガチャ
246 = 1 :
那珂「へぇ。提督もいいこと言うじゃないですか」
提督「まあたまにはな」
提督「長門と金剛。働きとして申し分なかった。この調子でやっていってほしい」
長門「任せろ」グッ
金剛「任せるネー!」
提督「それと夕立、鳳翔が攻撃を食らう際にちゃんとフォローに入っていたな。偉いぞ」
夕立「…………でも、鳳翔さんを大破させちゃった」
提督「それでも褒めるには値すると思う」
提督「神通も、あのタイミングで反応出来ると望ましかった。那珂では間に合わなかっただろうからな」
提督「少なくとも、私はそのレベルを望む」
神通「はい、ごめんなさい……。精進します」
提督「うん、いい眼だ」
提督「細かい説教は後にしよう。私も航空戦のデータを分析しなくてはならないし、そのフィードバックが済んでからだ」
提督「それから任務申請をしておいたので、明日の朝には新艦娘が本部からやってくるだろう」
提督「こちらからは以上。何かあるか?」
那珂「はい」スッ
247 = 1 :
提督「なんだ?」
那珂「第一艦隊旗艦、那珂より報告させていただきます」
那珂「進軍中、2箇所の小島にそれぞれ上陸しました」
那珂「そこでは妖精が活動しており、資源をつくっていました」
提督「ほう? “つくっていた”というのは、加工していた、ということか?」
那珂「いいえ。文字通り、“創って”いるようです」
提督「なんだって?」
那珂「これは妖精との対話から得た情報ですが……。彼らが言うには、鋼材から鋼材を創れるのだそうです」
提督「……」
那珂「また、海水から鋼材を抜き出すことが出来るとも言っていました」
那珂「2箇所目の小島ではボーキサイトを創っていたようですが、ほぼ同様の解答結果が得られました」
提督「抜き出す、というのは面白いな。やはりドロップに近いように思う」
那珂「私も同じことを考えました」
提督「だろうな。んー……。前者についてはよくわからないが後者は……」
提督「確か資料上では“構成”とあった気がするが、実質的には“抽出”なのかもしれない」
提督「そう考えると色々と符合する点が見えてくるな。報告ありがとう。他には?」
248 = 1 :
那珂「はい。もう1点ありまして……」
提督「聴こう」
那珂「はい。それが、どうも妖精は、深海棲艦とも接触しているようです」
提督「なんだと?」
金剛「妖精たちは、深海棲艦を“海の艦娘”と呼んでマシタ……」
提督「なるほど。出航は陸からだから、君たちは差し詰め“陸の艦娘”と言ったところか」
提督「しかしよくよく考えてみると、奴らは洋上で会う時には艦船形態なわけだから、“艦娘”なのかどうかは見当がつかなか
ったな」
長門「そんな、バカな……」
那珂「でも可能性としては大いにあり得ますよね……」
提督「まあ、そうなるな」
提督「鹵獲してしまえばてっとり早いが……それも難しいだろう」
提督「だがこれに関しては一応資料がある。そこのモニターを見てくれ」
ピッ
提督「これだ」
249 = 1 :
神通「これが、深海棲艦……」
那珂「確かに、独特の……ヒト型をしていますね……」
提督「だが一方でヒトの姿からかけ離れてもいる。どう思う? 自分と同種の存在に見えるか?」
長門「まったく見えないな」
金剛「そんな質問、nonsenseデース……」
夕立「……」
提督「“海の艦娘”というのは彼らなりの比喩じゃないか?」
提督「深海棲艦の正体には諸説あるようだが、沈んだ艦娘の怨念、というのが通説だそうだ」
那珂「提督は、それを?」
提督「いや、さすがに鵜呑みには出来ないだろう。それで万事説明出来るというのなら盲目的に信じるかも知れんが……」
提督「何よりわかっていることが少な過ぎる」
提督「だからと言って、妖精の言葉を鵜呑みにするのも、ね」
提督「彼らの言葉は難し過ぎるからな」
提督「まあともかく。貴重な情報をありがとう。とても参考になった」
提督「報告は終わりか?」
那珂「あ! 結局、鋼材20、ボーキ15を妖精さんから戴きました。以上です」
250 = 1 :
提督「了解した。那珂は拾得艦を呼んできてくれ。これ以上待たせては申し訳ない」
那珂「はい、ただいま」
ガチャ
タッタッタ
??「失礼します」
??「……失礼、します」
提督「私がこの鎮守府の提督だ。とりあえず自己紹介を頼む」
??「堅苦しいのは苦手なんだが……」
提督「まあ、そう言わずに。何なら楽にしてくれていいぞ」
??「そ、そうなのか? じゃあ……」
摩耶「アタシ、摩耶ってんだ、よろしくな」
足柄「足柄よ。ふふ、よろしくね」
提督「ああ。ふたりとも、よろしく」
摩耶(なんかこの提督、ちょっと怖いな……)
足柄(なかなかいい男じゃない……!)
提督「那珂は摩耶を、神通は足柄を案内してやってくれ」
那珂・神通「「了解!」」
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