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元スレ京太郎「虹の見方を覚えてますか?」
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今日という日を、どれほど待ちわびたことか
ああ絶対俺、今気持ち悪いほどニヤニヤしてる。他の人から見たら、怪しまれること間違いなしだ
こういう時に限り、消えていることに感謝したい
ダメだ待ち遠しい。この早い心拍数の状態も悪くはないが、やはり心臓にはよくなさそうだ
今すぐ傘を放り出して、雨の中で歌い、気ままに踊りたい気分だ。ああ、雨に唄えば!
恥ずかしような、嬉しいような…期待に胸を膨らませるが、プランクスケール程度の不安もあり、胸のあたりがムズムズする
咲が読んでた恋愛ものの小説バカにしてたもんだけど、今の俺は少女漫画の恋する乙女と区別がつかない
それもそのはず。だって、今日は、待ちに待った──
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雅枝「ふわぁ~…おはよ…洋榎」ゴシゴシ
洋榎「おはよう。おかん髪の毛爆発してるで」
雅枝「……」ギュッギュッ
雅枝「どや…?」
洋榎「ばっちしや。今日も綺麗やで」ニコッ
雅枝「機嫌ええな」
洋榎「へへ~、まっあね~!」
雅枝「それ似合てるで」
洋榎「えへへ、そう?よかった~。絹と一緒に選んだんや、これ」
雅枝「ふーん。で、そないやつしてどこに行くねん?まだ、朝やんか…ふわぁ~…」
洋榎「知りたい?」
雅枝「何や、もったいぶって」
洋榎「ふふ、デートや!」
雅枝「へぇ~…」
雅枝「え゛」
洋榎「んじゃ、行ってきまーす!」
バタン
雅枝「……」
雅枝「……」
雅枝「お父ちゃーん、洋榎がついにおかしくなってもうたー…」
愛宕父「ふぇ~…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
約束した待ち時間からまだ30分近くある
そろそろ、来てもおかしくないかもしれない
じいっと改札口を眺めていると、来た!洋榎さんだ
辺りをキョロキョロ見回しているが、一向に見つからない
当たり前だ
やはり、この身体で待ち合わせるのは無理があったか……
トントン
京太郎「ここです、洋榎さん」
洋榎「どっひゃあー!?!!」ビクッ
京太郎「!」ビクッ
洋榎「し、心臓止まるかと思うたわっ!!」
京太郎「す、すみません」
洋榎さんの服装を上から順に見てみる
よく手入れのされた髪の毛は、艶がありとても美しい。最近さらに綺麗になったのではないだろうか?
いつものように後ろでまとめた髪型はポニーテールで、洋榎さんにはやはりこれが一番似合う
上にはデニムジャケットを羽織り、中には膝が隠れるくらいの趣味のいい白のワンピース着用している
肩からは斜めに小さい鞄をかけており、こじんまりとしていてかわいらしく素敵だ
靴はブーツで、色はブラウン。シンプルだが全体の色やシルエットとよくマッチしている
まぁ、そのつまり、総合的かつ客観的に、しかしいくらか独断と偏見をもって評価するなら
かわいい、かわいすぎる!今すぐ抱き締めたいぐらいだ!!
こんな素敵な人がこの世に存在していていいのだろうか?
かわいい
ああ、脳細胞が溶けていく。確実におバカになっていくのが分かる
かわいい
ダメだ、危険すぎる。ここは一旦距離を取って態勢を立て直さなければ──
洋榎「ど、どうやろ…//その…似合てる、かな?///」モジモジ
プツン
京太郎「ふああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
洋榎「!?」ビクッ
京太郎「ふぅー……危なかった」
洋榎「何がっ!?」
京太郎「はい、最高に似合ってます!!」
洋榎「そ、そう…よかった//」
洋榎「後で絹に感謝やな」ボソ
京太郎「?」
京太郎「じゃあ、早速行きましょうか」
洋榎「うん!」
洋榎さんと並びながら、あべの筋を歩いていく
最初の目的地はもちろん、例の映画館だ
洋榎「せっかくのデートやのに、雨なんて最悪や…」ブツブツ
京太郎「はは、確かにツイていませんでしたね」
京太郎「でも、雨の日もそう悪いもんじゃないと思いますよ」
洋榎「そりゃあ、そうかもしれへんけど…時と場合っちゅうもんがあるやろ」
京太郎「また次がありますよ」
洋榎「そ、そうか…ほんなら、ええかもな//」
かわいい
でも、本当にそうなのだろうか?
京太郎「あ、着きましたね」
>>508
マジレスはありがたいがネタだから本気にしなくていいよ
マジレスはありがたいがネタだから本気にしなくていいよ
________
_____
__
洋榎「いやー、めっちゃええもん見たわ!!なっ、京太郎!」
京太郎「そ、そうですね。最高でしたよ!」
どうしよう、あまりにつまらなくて途中で寝てしまったなんて言えない…
洋榎「どこが良かった?」
京太郎「え、えーと…ですね。ほらっ、あの戦闘機がビューンでドカーンなシーン最高でしたよ!」
洋榎「せやろー、やっぱアクション映画はこうでなくちゃな」
京太郎「ですよね、最近のCG技術の進歩には度肝を抜かされますよ」
洋榎「うんうん……まぁでも、戦闘機なんて出てこーへんかったけどな」
京太郎「え」
洋榎「……」ニヤニヤ
京太郎「す、すみませんでしたっ!わたくし実は寝ておりましたっ!!」
洋榎「まーったく、せっかくのデートが台無しやわぁ。傷ついてもうたわぁ」チラ
京太郎「今度何か奢らせてください、お願いします!!」
洋榎「そこまで言うなら、奢られてやらんこともないかなぁ」ニヤニヤ
京太郎「ははー、感謝の極みでございます!」
館長「今日は、如何でしたか?」
洋榎「めっちゃよかったです。安心のセレクトですよ、ほんま」
京太郎「いや、無しですね無し」
館長「ありがとうございます」
館長「あ、そうそう。今、いつも当館をご利用いただいているお客様だけに、特別にお渡ししているものがあるんです」
館長「よろしかったら、どうぞ」
洋榎「えーと……入場引換券、ですか?」
館長「ええ、いつもご利用いただいていますから、そのささやかなお礼と思ってください」
洋榎「でも、2枚も…」
館長「大丈夫です。それで間違いありません」
洋榎「はぁ」
館長「いいですか、それは引換券です」
館長「何か大事なものを得ようとするとき、しばしば引換券が重要になることがあります」
館長「これは単なる紙ですが、それ以上の意味を持つことがあるんです」
洋榎「えーと…テリーの話?」
京太郎「こら」
館長「だから大事にとっておくことです」
館長「人生においては、その時重要に見えないことが、後になって重大な意味を持ってくることがままありますから」
館長「そのことをゆめゆめ忘れぬよう、お願い致します」
洋榎「うーん…」
館長「決して離さないことです。そう、決して……」
京太郎「……」
洋榎「うーん、さっきのは何やったんやろ?」
京太郎「ちょっと分かりかねますね」
洋榎「まぁ、ええわ。じゃあ、はい、これ1枚」
京太郎「いいんですか?」
洋榎「ええよ、別に。お金には困ってへんし。せやから、これ使ってまた2人で来ーな」ニコッ
かわいい、笑顔も素敵だ
京太郎「もちろんです、喜んで!」
洋榎「しかし、微妙な時間やなぁ。どないする?」
京太郎「そうですねぇ、じゃあお昼ご飯食べちゃいませんか?」
京太郎「実は朝ごはん、あまり食べられなかったんでお腹空いてるんですよね」
緊張で、だけど
洋榎「あ……実は、うちも…///」モジモジ
京太郎「え、具合でも悪いんですか?」
洋榎「いやいや!ピンピンしてるで、ほらっ!」
京太郎「なら、いいですけど…」
もし、同じ理由だったら少し嬉しいかな
京太郎「じゃあ、場所はどこにします?」
洋榎「そんなの決まってるやんか、難波の──」
─食事処『男女兼用』
あっ、久しぶりに来たが看板が変わってる。ネーミングセンスゼロだな、つーかマイナスだな
前もお客さんいなかったけど、これじゃあ誰も来ないよ。さらに
ていうか、俺もあまり入りたくはないよ…
カランカラン
店長「あら~、いらっしゃい。待ってたわよ、可愛らしいお嬢さん」
洋榎「お久しぶりです」
店長「んも~、最近来てくれないから私のこと忘れちゃったんじゃないかと思って心配したんだからぁ~」
洋榎「相変わらず、お客さんいないんですね…」
店長「なんでかしらねぇ、お姉さんまったく分からないわ…」
いや、まず表の看板を直した方がよいかと
あと、定食の名前も変えたほうがいい
洋榎「さて、今日は何にしようかなー」
店長「だったら、いいのがあるのよ。新メニュー、試してみない?」
洋榎「なら、それにしようかな」
店長「あ・り・が・と、後で感想聞かせてね」
洋榎「はい。ああ、あと……」
店長「ん、なに?」
洋榎「男日照り定食一丁」ニヤリ
店長「ふっ、相変らずの底なしね」
京太郎「いや、勝手に頼まないでくれません。それ絶対俺のでしょ」
________
_____
__
店長「あらあら、行かず後家定食はともかく、男日照り定食も一緒に完食しちゃうなんて…お姉さん嫉妬」
店長「まったく、大した娘よ」
洋榎「いやー、相変らず最高でした。定食屋にしておくのがもったないぐらいです」
京太郎「まったくですね。これがワンコインっていうんだから、驚異的です」ゲフ
店長「いや、うちはこのままでいいのよ」
洋榎・京太郎「?」
店長「この街のイイ男たちが、私の料理をおいしそうに食べてくれる。それだけで十分だから」
洋榎「くっ…」ウルッ
京太郎「店長…」ウルッ
店長「正直、見てるとムラムラするの」
洋榎「この人、最悪やぁ!!」
店長「それじゃあ、またね」
洋榎「ほなまた」
カランカラン
京太郎「しかし、デートの食事が定食屋っていうのは、少し色気がありませんでしたかね?」
洋榎「うちは全然かめへんよ。あそこおいしいし」
京太郎「うーん、それでもやっぱり、男の意地みたいなのも確かにありまして…」
洋榎「ええかっこしいやなー」
京太郎「大体の男なんてそんなもんですよ」
洋榎「うちはあそこがよかったんや」
京太郎「なぜです?」
洋榎「だって……京太郎とな…初めて外で食べたんがあそこやったんや…せやから、な///」ニコリ
店長のを美味しい美味しいと夢中で口に運ぶナイスガイたちが見れるんだな
店長の視点では
店長の視点では
ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
もうっ!!!
かわいすぎるっ!!!
洋榎「ん、どないしたん?」
京太郎「はっ!いえ、少しだけ脳内宇宙旅行をしていただけですから」
洋榎「大丈夫かいな…?」
京太郎「さっ、お腹もいっぱいになりましたし、次行きましょうか」
洋榎「うん、そうしよ」
愛宕父の口調がアレなのは寝起きだったからだよな。
普段から「ふぇぇ…」とか言ってるわけじゃないよなw
普段から「ふぇぇ…」とか言ってるわけじゃないよなw
疲れたので寝ます
月曜で最後の投下になると思いますが、一気に最後まで行きます
時間については、夜の10時30~40分あたりから投下を始めます
では、おやすみなさい
月曜で最後の投下になると思いますが、一気に最後まで行きます
時間については、夜の10時30~40分あたりから投下を始めます
では、おやすみなさい
乙ー
そういえば写真とかの京太郎認識できるってことはカメラとか通せば洋榎には京太郎の姿見えるんかな
そういえば写真とかの京太郎認識できるってことはカメラとか通せば洋榎には京太郎の姿見えるんかな
─梅田
地下鉄四つ橋線を使って、大阪キタの中心地、梅田にやってきた
梅田と言えば、新宿に匹敵する地下街、高層ビルの数々などが存在する、大阪随一の大都会だ
大阪駅舎を含む大阪ステーションシティや新梅田シティ、グランドフロント大阪などが最近のトレンドだろうか
ここに来れば、大体なんでも揃う。ここはそういうところだ
歴史的には、この梅田は1909年のキタの大火や第二次大戦の大阪大空襲でだいぶボロボロになったらしい
歴史的建造物のほとんども、その時になくなってしまったという
しかし、それからたった100年余りでここまで発展を遂げるとは
なるほど、人間のすごさとはこういうものなのかもしれない
さて、俺たちの目的は観光ではなく買い物だ
春から、洋榎さんの一人暮らしが始まるので、必要なものを買いに来たのだ
─百貨店
ちなみに、大阪ではデパートとは言わないで百貨店と呼ぶことが多い
それを洋榎さんに尋ねてみたところ
洋榎『デパートより百貨店の方がいろいろ揃ってそうやろ?』
だそうだ。これが大阪というものか
京太郎「今日は何買うんですか?」
洋榎「必要なもんは大体買うたから、今日は食器とか調理器具とかやな」
それなら、俺にも手伝えるかもしれない
京太郎「よし、俺も微力ながら力になりますよ」
洋榎「なぁなぁ、これどうやろ」
京太郎「だめですよ、そんな深いコップ買っちゃ。洗うとき大変でしょう?」
洋榎「う…そうやな」
洋榎「おお、このお皿かいらしいなぁ。これにきーめた!」
京太郎「うーん…これもダメですね」
洋榎「な、なんでや!?」
京太郎「まず、この角ばってるところがすごく洗いにくいです。マイナスですね」
京太郎「あと、この表面少しざらついた加工してあるでしょう?これスポンジがだめになりやすいんですよね」
京太郎「それにこの皿、裏に取っ掛かりがないんで、洗剤で洗うとき滑って落とす可能性が高いです」
洋榎「主婦視点。洗う時のことしか考えてへん…」
京太郎「大体一人暮らしの人間が、こんなに大きいお皿をどう使うっていうんですか」
洋榎「ほ、ほら!最近じゃあ、女子会ちゅうのもあるみたいやし、必要になるかもしれへん!」
京太郎「そもそも、洋榎さんってあまり料理しないですよね」
京太郎「こう言っちゃあなんですけど、そのシチュエーション自体ありえないと思いますけど」
洋榎「ぐぬぬ」
京太郎「普段使いのものは、シンプルで使いやすいのに限ります」
京太郎「ほら、こういうのだったどうですか?」
洋榎「あっ、意外と悪うない。せやけど、何か負けた気ぃするな…」
洋榎「このフライパンすごそう、これにしよう」
京太郎「あーた、何言ってやがるんですか」
洋榎「今度は何や…」
京太郎「フライパンの上に食器をのっけて運んで、雅枝さんに怒られたの忘れましたか?」
洋榎「あんなん怒らんでもええのになぁ」
京太郎「喝っ!!!!!」
洋榎「!!」ビクッ
京太郎「何言ってるんですか、洋榎さん。あの程度で済んでよかったと感謝するべきですね」
京太郎「本来、閻魔さまに舌引っこ抜かれても文句言えませんよ。あの行為は」
洋榎「ええー…そこまで言わんでもええやん」
京太郎「朝、フライパンで焦げなく綺麗に目玉焼きを作れることは、その日の家事の質を左右するんですよ」フッ
洋榎「ええー…」
京太郎「料理をするようになれば、その内この気持ちも分かります」シミジミ
洋榎「主婦と言うより、もはや小姑の域やな…」
─中之島
梅田で買い物も済ませたので、今度は歩いて中之島まで来た
百貨店での買い物では、なぜかデートっぽいことができなかったので、今度こそ
いや、まあ、俺が悪いんだけどさ
中之島は梅田から少し南に位置する中州で、都市化の進んだエリアだ
堂島川と土佐堀川に挟まれた細長い島で、科学館、美術館などの文化施設
日本銀行大阪支店や中之島図書館、中央公会堂などの重厚な建造物もある
東へ行くと中之島公園もあり、散歩をするのが楽しそうな場所だ
また中州ということもあり、橋も数多く架かっていて、建築物マニアにはうってつけの場所かもしれない
京太郎「ここへは、確かに晴れのときに来たかったですね」
洋榎「まったくやな」
少し先の方を眺めていると、雲の隙間が光った
1、2、3、4……、7秒
少し遅れて、空気を裂く強烈な音がゴロゴロと響いた
京太郎「雷ですね」
洋榎「大丈夫やろか?」
京太郎「ああ、それなら安心してください、だって──」
洋榎「ここから、約2300メートル離れてるから。せやろ?」ニヤリ
京太郎「…はは、これは一本取られましたね」
洋榎「音は1秒で約330メートル進むから、7秒で約2300メートルや」
京太郎「その通りです。もちろん、光が音に比べてはるかに速いからこそできる近似ですけどね」
洋榎「ふふん、褒めてくれてもええねんで」ドヤッ
京太郎「はいはい、すごいすごい」
まさか、全く同じことを考えていたとは。嬉しいな
それからも、2人並んで、傘を差しながら歩いていった
雨の中ということもあってか、人はかなりまばらだった
おかげで気兼ねなく、洋榎さんと外で話をすることができた。やはり雨というのも悪くない
科学館、美術館を通り過ぎ、そのまま道なりに進んでいった
日本銀行、中之島図書館、中央公会堂を外から見て回った
特に施設の中に入ったりはしなかった
2人で手を繋ぎながら、雑談しているだけで十分満足だったから
不思議と疲れは感じなかった。この雨の中を傘をさしながら歩いているはずなのに
疲れを感じるより、この人ともっと話していたいという気持ちの方が強かったのかもしれない
こんなに幸せでいいのだろうか、俺?
京太郎「ねえ、洋榎さん。なんだか最近、世界が輝いて見えるんですよね」
洋榎「なんやそれ、夢でも見てるんちゃう?」
そうかもしれない
眠い
─毛馬桜ノ宮公園
3連アーチの美しい天神橋を北に渡り、少し東方面に進んだ
途中、喫茶店で少し休憩を挟んで、銀橋を渡って毛馬桜ノ宮公園にやってきた
ここは、桜の名所として有名だが、まだ桜は咲いておらずつぼみの状態だ
周りに人の気配はない
洋榎「なぁなぁ、ここ来るとなんだか懐かしく感じる気ぃせえへん?」
京太郎「ええと…ここ来るの初めてだったような」
洋榎「覚えてへんのかい!薄情なやっちゃなぁ」
京太郎「うっ、申し訳ないです」
洋榎「ほら、初めて会うた時、ここで追いかけっこしたやろ?」
京太郎「…ああ、そういやここら辺来たような覚えあります」
洋榎「せやろせやろ。だからここは思い出の場所やねん」
京太郎「あの時は、かなり警戒されてましたけどね」
京太郎「最初、助けを断られたときは結構ダメージ大きかったですよ」
洋榎「正直、すまんかっと思うてる」
京太郎「はは、あれはあれで仕方ないと思います。むしろ、家においてもらったりしてかなり感謝してますから」
洋榎「あれから色々あったなぁ」
京太郎「そうですね」
洋榎「何かいつも間にうち、大食いキャラになってるし」
京太郎「それにはいつも感謝しています」
洋榎「阪神の応援にも行ったなぁ」
京太郎「正直、もう洋榎さんと雅枝さんとは一緒に観戦したくないです」
洋榎「あんなん慣れや慣れ!来シーズンには、もう阪神無しでは生きられない身体になってるはずや」
京太郎「なにそれ怖い」
洋榎「一緒に心斎橋とか天王寺とかにも行ったなぁ。覚えてる?」
京太郎「もちろんです。看板とマレーグマと映画館ですね」
洋榎「チョイスがなんちゅーか、アレやな…」
京太郎「試験勉強もしましたね。まさか洋榎さんが勉強できない人とは思いませんでしたけど」
洋榎「誰にでも、得手不得手があるんやで」ニコ
京太郎「数学は流石でしたけどね。今度またおもしろい話でもしてあげますよ」
洋榎「はは、楽しみにしとくわ。京太郎センセ」
京太郎「その後も、クリスマスとか正月の初詣とか」
洋榎「なつかしいなぁ」
京太郎「最後はやっぱり、あれですね。麻雀の試合」
洋榎「うわー!!恥ずいからその話はやめやめ!」
京太郎「いいじゃないですか。洋榎さんの色んな部分が見えてよかったと思いますよ」
洋榎「絶対いらんとこ見せてもうたわ…年上の威厳が…」
京太郎「見かけによらず、結構打たれ弱いですもんね」
洋榎「ああー、もうっ!//」
京太郎「でも、全国飛び回ったのは、今からすればいい思い出です。また皆さんに会いたいですね」
洋榎「そうやなぁ」
ああ、眠い
洋榎「でも、京太郎がいてくれたから、うち最後まで頑張れたんやで」
京太郎「俺だって洋榎さんがいてくれたからここまで」
洋榎「京太郎…」
京太郎「洋榎さん…」
握った手から互いの熱が伝わる
洋榎「雨、止んだな」
京太郎「そう、ですね」
洋榎「……」
京太郎「……」
洋榎「よ、よしっ」グッ
京太郎「?」
洋榎「あんな…その…うち…ずっと京太郎に言おう思うてたことあんねん」
洋榎「うち、うち…京太郎のことめっちゃ──」
京太郎「ちょっと待ってください」
洋榎「え…」
京太郎「洋榎さんが何を言おうとしたのか、全然これっぽちも分かりません」
京太郎「けどその先の台詞は、俺がちゃんと元に戻れたら言いますから」
京太郎「だから、もう少しだけ待ってもらえませんか?」
洋榎「う、うん…約束やからな//」
京太郎「はい、約束です」
京太郎「俺、こんな身体になって、最初は色んなものを恨んだんです」
洋榎「……」
京太郎「もしこんなことをした神様がいたなら、絶対ぶん殴ってるやる、てくらいに」
洋榎「……」
京太郎「でも、おかげで色んなものを見れました」
洋榎「……」
京太郎「洋榎さんに出会えました」
洋榎「……」
京太郎「ほんの少し、自分を好きになることができました」
洋榎「……」
京太郎「全部、あなたのおかげです」
洋榎「うちは何もしてへんよ」
京太郎「そうでしょうか?」
洋榎「それにうちだって、京太郎からもらったもんいっぱいあるし」
洋榎「だから…その、あいこやな//」
京太郎「…はい」
目頭が熱くなる
だめだ。我慢してたのに、どうしても溢れてくる
洋榎「ああ、涙が…」
京太郎「ごめんなさい、ちょっと我慢が…」
洋榎「え、あれ…?見えてる……」
京太郎「何がですか?」
洋榎「い、いや、だから身体が…京太郎が」
京太郎「は」
洋榎「見えてる見えてる!やったやんか、京太郎!!」
京太郎「え、でも…」
洋榎「元に戻ったんやで!!」
京太郎「ほ、本当ですか…?」
洋榎「ほんまやほんま!!なんなら、あそこのおっちゃんに話し掛けてみぃ!」
京太郎「そ、そうですね」
京太郎「あのー…俺のこと見えてます?」
なんだこの質問
「何や言うてるんや兄ちゃん、頭大丈夫か…?」
京太郎「!!」
京太郎「や、やった!!でもなんでだ…?」
洋榎「んなもん、どうでもええわ!ほらっ!」
京太郎「なんです、その手は?」
洋榎「嬉しいときは、躍るもんやろっ!!」
京太郎「わっ、ちょっと──」
太陽が後ろから姿を現した
その光は、まだ乾ききらない桜の花びらをうまい具合に反射して煌めいて映る
洋榎さんの手に引かれながら、桜並木の道をテンポよく跳ねながら踊る
風が吹いて、桜が舞う中、洋榎さんの髪も一緒にダンスする
時間が止まったかのような感覚
ああ…なんて綺麗な人なんだろう
伝えなきゃ、このことを
え、桜?
洋榎「ん、どないしたん?」
ああ、ちょっと眠いだけなんです。大丈夫
─榎「えーと、きょ…う……大…丈……?」
すみません、──さん。もう少しはっきり喋ってもらわないと
誰?
ああ、眠い
ええと、なんだっけ?大事な事は…?
『離さないことです、決して』
何のことだ?髪?神?紙?ああ…そういえば、ポケットに…?
──さん?
ああ、ほら、見てください。虹が見えますよ。あんなに綺麗に、はっきりと
虹?
虹の見方?
大事なこと、大事な人…?
ええと、何のこと?誰のことだ…?
確か赤い…?えーと、物理の話?数学か?赤方偏移?ほら、スペクトルがずれるんだよ
膨張する宇宙、重ね合わせの世界、夢…?現実と見分けがつかない夢は、本当に夢なのか?
認めること、認められること?多様性?自分を好きになること?世界の見方の変化?
いや、大事なのはバランスだ。でも、俺にとって本当に大事なのは…?
もう少しで、ああ…もう少しで思い出せそうな気が…そう──
ジリリリ…
うるさいな
ジリリリリリリ
あとちょっとなんだよ、少し静かにしてくれ
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