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元スレ京太郎「虹の見方を覚えてますか?」
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絶対オカルトに精通してそうなとこからヒロイン選ばれると思ってた
乙。
展開的にモモが本命、対抗が宮守&永水、穴で咲、大穴ですこやんあたりかなと思ってた。
展開的にモモが本命、対抗が宮守&永水、穴で咲、大穴ですこやんあたりかなと思ってた。
ようやく京太郎にオカルトが……って、これじゃ麻雀出来んな
それにしても、愛宕ネキのこと思い出すのに苦労するってのは酷いw
二回も清澄と当たった、特徴的な顔なのに……
それにしても、愛宕ネキのこと思い出すのに苦労するってのは酷いw
二回も清澄と当たった、特徴的な顔なのに……
おもちのせいかと思ったが絹恵のことは思い出さなかったから違うか
――10月下旬 大阪
洋榎さんとの出会いから、1週間経った
あれから俺は、洋榎さんの家に居候している
あの日、夕食を食べ終わった後、別の場所に寝床を探しに行こうとした
しかし、洋榎さんがもう遅いからと家に泊まらせてくれた
それ以来、なぜだかここに居候させてもらっている
別に許可をもらったでわけではない。そういう言葉は交わしてない
でもなぜか、洋榎さんが色々と面倒を見てくれていてるうちに、こうなったのだ
俺に同情したのか、絹恵さんのことでの感謝か、あるいはこれこそが大阪人の人情というものなのか
判然とはしないが、洋榎さんにはとても感謝している
部屋は物置になっていたところを、掃除して使わせてもらっている
今までは、味気ないビジネスホテルなどの部屋を勝手に使わせたもらっていた(お金はもちろん払った)
だから、こんな部屋でも家独特の温もりが感じられるので満足している
ここでの生活にも慣れてきた、ある日のこと
雅枝「今週は帰りが遅うなるから、家事は二人で分担しといてな」
この人は、愛宕雅枝さん。洋榎さんと絹恵さんのお母さんだ
髪の色は絹恵さん、髪型は洋榎さんと絹恵さんとのハイブリッド
眼鏡着用は絹恵さんに似ているが、そのタレ目は洋榎さんとそっくりだ
そして、胸の脂肪はどうやら妹さんにしか遺伝しなかったようだ
実に残念である。洋榎さんはお父さんに似たのかな?
洋榎・絹恵「はーい」
雅枝「まぁ…洋榎はせんでもええねんけど」
洋榎「ちょ、おかん」
雅枝「まぁ、ええわ。行ってくる」
洋榎・絹恵「行ってらっしゃい!」
パタン
絹恵「ほな、私たちもそろそろ行こか?」
洋榎「そうやな」
洋榎「須賀はどないする?」ボソ
京太郎「今日は、千里山の方に行ってみようかと思います」
京太郎「あそこにもヒントがあるかもしれないので」
洋榎「そうか、ほなな」ボソ
京太郎「はい、また後で」
________
_____
__
はぁ……結局千里山でも収穫無しか
まあ、そう簡単にうまく行くとは思っていない
それに洋榎さんという、最大の手掛かりもある
気長にやっていこう
ガチャ
京太郎「ただいまー」
洋榎「おう、おかえり。なんか収穫は?」
京太郎「いえ、さっぱりですね」
洋榎「そか」
京太郎「そういえば、今週は雅枝さん遅くなるんでしたっけ?」
洋榎「ん?ああ、そうやな。せやから、家事せえへんと…」
京太郎「なら、俺手伝いますよ。これでもやもめ暮らしは長いんで」
洋榎「ほう、そうなんか……って、結婚しとったんかいっ!!」ビシッ
京太郎「さすが洋榎さん、いいツッコミです」
京太郎「やもめ暮らしは嘘ですけど、家事は慣れてるんで手伝いますよ」
洋榎「そ、そうか…?そうしてくれると助かるわ」
洋榎「なら…おーい、絹ー!」
絹恵「どうしたの、お姉ちゃん?」
洋榎「うちがご飯作っとくから、絹は風呂掃除して、ついでにお風呂沸かしておいてくれへん?」
絹恵「え゛っ、お姉ちゃんが料理!?それは止めておいた方が…」
洋榎「大丈夫、いけるいける!今回はサポートもあるし、お姉ちゃんにまかしとき!」
絹恵「サポート?まぁ、そこまで言うなら…」
洋榎「よっしゃ!汚名挽回したるでー」
京太郎「ベタですけど、汚名返上ですね
_________
______
__
絹恵「この炊いたん、めっちゃうまいやん!お姉ちゃん、どないしたの?」
雅枝「いつもと少しちゃうけど、味がしゅんでておいしいなぁ」モグモグ
洋榎「せ、せやろー!うちが本気だしたらこんなもんや」ドヤァ
京太郎「煮物作るとき、洋榎さん鍋の様子見てただけですけどね」モグモグ
絹恵「このお魚もうまいなぁ…いくらでもいけそう。これなんの魚なん?」
洋榎「えっ!?え~…とそれは…」チラ
京太郎「銀だらの西京漬けです。ちなみに俺は鮭の方が好みです」パクパク
洋榎「銀だらや銀だら、うっかり忘れてたわ~(棒)」
雅枝「洋榎がこない料理がうまくなってたなんて…お父さんも今頃お空の上で喜んでるわ…」ホロリ
絹恵「そうやな……って!まだ生きてるから!!」
洋榎「おとんがおらん時、いっつもこのネタ使うからなぁ…もう流石に飽きたわ」
ちなみに、お父さんは出張中らしい
雅枝「…それにしても、洋榎、その…大丈夫か?」
洋榎「え、なにが?」
京太郎「…うん、我ながらうまい」モグモグ
雅枝「いや、ええんやで。育ち盛りやなぁ思て」
洋榎「?」パクパク
京太郎「?」モグモグ
─別の日
絹恵「お姉ちゃん、ほんまに大丈夫?別に無理せんでもええよ?」
洋榎「なに言うとるんや絹。最近のお姉ちゃんの変わりよう知ってるやろ?」
絹恵「まぁ、そやけど…」
京太郎「9割以上、俺がやってますけどね」
洋榎「部活遅れてまうやろ?家事はうちに任せて、早よ行きぃ」
絹恵「うん…分かった。じゃあ行ってきます」
洋榎「いってらっしゃい」
京太郎「では、わたくしも行ってまいりますわ、お姉さま!(裏声)」
洋榎「ブッ!」
絹恵「?」
洋榎「い、いや、なんでもあれへん…気ぃつけてな」プルプル
パタン
京太郎「さて、家事の分担どうしましょうか?」
洋榎「って、行かないんかい!」ビシッ
京太郎「おうふ」
洋榎「絹は夕方頃帰ってくるから、それまでに掃除、洗濯して夕飯作っておけばええと思う」
京太郎「了解です。それにしても、洋榎さんは勉強とかしなくていいんですか?」
洋榎「勉強?なんで?」
京太郎「いや、ほら…大学受験とかあるでしょう?」
洋榎「おう、須賀~。うちをなめたらあかんでー」
京太郎「どういう意味ですか?」
洋榎「もう既に、麻雀プロのオファーが来てん。せやから勉強なんかせえへんで大丈夫なんやで~」
京太郎「へえー、すごいじゃないですか」
洋榎「せやろー、もっと褒めてもええんやで」ドヤ
洋榎「まあでも…ほんまははまだ本決まり、ってわけやないんやけどな」
京太郎「なんでですか?」
洋榎「実は1月と2月にプロも参加する大会があってな、そこで結果出さなきゃいけないんやと」
洋榎「ま、最終試験みたいなもんや」
京太郎「そこで、駄目だったらどうなるんです?」
洋榎「まぁ、アカンやろ。プロの世界は厳しいちゅうこっちゃ」
洋榎「せやから引退した今でも、時々部活には顔出してるんやで」
京太郎「そうだったんですか……で、オチは?」
洋榎「ないわ、そんなもん!」
京太郎「おかしいですね。大阪の人は長話の最後には、必ずオチをつけるとこの本に――」
洋榎「そないな本、ほってまえ!」
京太郎「いやん」
京太郎「じゃあ、俺は風呂掃除してきますから、先に洗濯物洗っといてください」
洋榎「りょーかいりょーかい」
京太郎「使い方分かりますか?洗剤は多すぎても少なすぎても駄目なんですよ?」
京太郎「柔軟剤なんですが、雅枝さんは匂いがキツイのが苦手みたいなんであまり入れすぎないでくださいね?」
京太郎「あと、絹恵さんのデニム、新しいみたいなんでかなり色落ちすると思います。だから白物とは別々にしてください」
京太郎「それと、洗濯機の横に置いてあるバケツなんですけど、中に漂白してるタオルが入ってるんでちゃんとすすいでから――」
洋榎「おまえは主婦かっ!!」
_______
____
__
雅枝「ただいまー」
洋榎「おかえりー」
雅枝「って、なんやこれ…大掃除でもしたん?」
洋榎「ま、まぁ、こういうのはいっつも絹とおかんに任せぱなしやったから…たまには、な」ポリポリ
京太郎「今日ばっかりは、洋榎さんもちゃんとやってましたからね」
雅枝「」ブワッ
洋榎「ちょ、おかん、どないしたん!?」
雅枝「うおー!洋榎~!!」ダキッ
洋榎「ちょ、やめ、やめて恥ずいから///」
京太郎「いい話だなー」
絹恵「夕飯も用意してあるみたいやしはよ食べよ、お母さん」
雅恵「ん」
雅枝「夕飯まで用意してあるなんて…私は世界一幸せな母親やなぁ」ウルッ
京太郎「料理作ったのはほとんど俺ですけどね。でも、そう言われるのは嬉しいです」パクパク
絹恵「それにしても、お姉ちゃん。水垢の落とし方とかよう知っとったね?」
洋榎「えーと、それはあれや…そのー…」チラ
京太郎「水垢落としに使ったのはクエン酸です。台所の油汚れにはセスキ炭酸ソーダを使いました」モグモグ
京太郎「まあ、あのくらいならクエン酸で十分なんです」パクパク
京太郎「けど、酷いものは研磨剤やスケール除去剤を使わないとうまく取れないんですよ。勉強になりましたね」モグモグ
洋榎「長いわっ!」
絹恵「?」
洋榎「あっ!そ、そりゃあクエン酸やろ?うちかてそんくらい知ってるわ」
絹恵「お、お姉ちゃん…」ウルッ
雅枝「洋榎…」ウルッ
洋榎「二人して泣く事ないやろ…」
京太郎「ほら、普段粗暴な人が時折優しさを見せると、そのギャップの分だけ感動してしまうというアレですよ」パクパク
洋榎「うちの評価、そない低かったんかい!?」
絹恵・雅枝「?」
京太郎「すみません、洋榎さん。ご飯おかわりいいですか?」
洋榎「……」コクリ
京太郎「了解です」
京太郎「やっぱり、イカの塩辛にはご飯が良く合いますねー」モグモグ
洋榎「せやなー」パクパク
京太郎「……」パクパク
洋榎「……」モグモグ
雅枝「……」
雅枝「あんなぁ、洋榎。あんまこないなこと言うたくないねんけど」
洋榎「?」
雅枝「最近ちょっと食べすぎやないやろか」
洋榎「へ」
雅枝「いつも軽く2人前は平らげるし、それに今なんてご飯3杯目やし」
雅枝「急に家事うまくなったんは嬉しいんやけど……なにか悩み事でもあるのかと思て」
洋榎「は?」
京太郎「あーそういえば、言い忘れてました」パクパク
京太郎「時々、俺のしたことが他人のしたことに変わることがあるんですよ」モグモグ
洋榎「え」
京太郎「今回で言うと、俺が食べたものは洋榎さんが食べたことになってるんですね」パクパク
京太郎「いやー、不思議ですねー。まあ、これなら矛盾も起きませんし、よくできた現象です」モグモグ
洋榎「はい?」
京太郎「今日は大掃除して疲れたんでお腹減りますね。もう少しおかず貰おうかな」
京太郎「いやー、うまいなぁ」モグモグ
雅枝「洋榎…」
絹恵「お姉ちゃん…」
洋榎「いや、ちゃうちゃう!うちやないから!!」
京太郎「あ、知ってますか洋榎さん。チャウチャウは中国犬で元々は食用だったんですよ」パクパク
洋榎「んなこと知らんわ!それより食べるのやめてくれる!?」
雅枝「独り言まで…」
絹恵「お姉ちゃん…」
洋榎「あ゛、あ゛、あ、あああ…」カタカタ
京太郎「どんな話にもオチを付けてくる、洋榎さんは大阪人の鏡ですね」モグモグ
洋榎「そんなオチいややーーー!!!」
――10月下旬
大阪での生活にも馴染めてきたので、この一週間は大阪を中心して関西圏に手がかりを求めていた
兵庫、京都、奈良をとりあえず回ってきたが成果は上がっていない
念のため、神戸ではハーバーランドに出向いたが、誰も俺のことをつかまえてはくれなかった
ゲームのようにうまくはいかないものだ
とはいっても、この三県は立派な観光地でもあるので、思いの外楽しめてしまったのは事実だ
一人旅ってのは良さってのは、こういうことなのかもしれない
他人に気を遣わないで、ゆっくりと観光するというものもなかなか乙なものだ
でも、再びここに来る機会がもしあれば、友達や麻雀部のみんなと来たいと思う
さて、これだけ探し回って、未だにまともな手ががりは洋榎さんのみ
なぜだろうか?
洋榎さんとそれ以外との差はなんなのだろうか?
洋榎さんにしか、俺の声が聞こえないのはなぜだろうか?
その洋榎さんにも、俺の姿は見えないのはなぜだろうか?
そこに理由があるのなら、それは一体どういうものなのだろうか?
考えても答えが出ないのは分かっているが、それでも考えずにはいられない
それにしても、随分疲れた
慣れない土地というのもあるけど、この一週間ずっと動きっぱなしだったから尚更だ
早く帰って、ゆっくり浴槽に浸かって、雅枝さんの作ったおいしいご飯を味わいたいものだ
京太郎ここまで万能だとハギヨシというより某借金執事を思い出すな
――11月上旬 大阪
11月に入った
寒さが厳しくなってきて、いよいよ冬本番を感じさせる
コートを着ないで外に出ると、寒いくらいだ
まあ、それでも長野よりはマシだけど
俺は、関西小旅行を終えて久々に大阪に戻ってきていた
ガチャ
京太郎「ただいまー」
洋榎「ん、この声…?須賀か、おかえり。1週間ぶりやなぁ、元気にしとった?」
京太郎「いやー、流石に疲れましたよ。成果も挙がりませんでしたし」
洋榎「ふーん…」
京太郎「だから、今日はゆっくり休みたいですね」
洋榎「休む?そら、アカンよ」
京太郎「何でですか?」
洋榎「これから出掛けるからや」
京太郎「どこへ?」
洋榎「甲子園」
京太郎「はい?」
_________
______
__
雅枝「ほら、ゆっくりせんと、はよせんかいな」
絹恵「ああー…急にお腹が痛くなってきたなぁー(棒)」
雅枝「ん?」ニコリ
絹恵「やっぱしなんともなかったわ…」ハァ
京太郎「俺は別に行かなくてもいい気がするんですが…それに疲れてるんで休みたいんですけど…」
洋榎「ん?」ニコリ
京太郎「ナンデモアリマセン」
雅枝「ほな行くでー」
―車内
雅枝「……」
洋榎「……」
絹恵「……」ハァ
なにこの、重苦しい雰囲気
京太郎「あっ、そうだ!ラジオつけましょう、ラジオ!いいいですよね?」
洋榎「……」コクリ
少しでも、この空気を紛らわせれば何でもいい
藁にもすがる思いとはこのこと
ポチ
「いやー、昨日の試合はすごかったですねぇ。私途中まで絶対阪神が勝つと思ってましたもん」
洋榎・雅枝「……」ピクッ
「そうですねえ、でもオリックスも後半頑張りましたよ。あの逆転劇には思わず感動してしました」
洋榎・雅枝「……ちっ」
絹恵・京太郎「ひっ」ビクビク
「でも、これでお互い3勝3敗になったので最終戦までもつれ込みましたからねえ」
「ええ、まったく分からなくなってきました。今日の試合、非常に楽しみです」
「しかし、阪神はペナント3位からCSで這い上がって来ましたからね。勢いはほんとうにありますよ」
雅枝「おっ、分かってるやないかい」
洋榎「負ける気せぇへん地元やし」
負けフラグ、ゲットだぜ!
でも、どっちとも地元ですよね?
「いやぁ、でも今のオリックスは打線が非常に調子いいですからね。私はこちらの方が若干有利なんじゃないかと――」
雅枝・洋榎「あ゛?」
絹恵「」ビクッ
京太郎「チャ、チャンネル変えましょ。ね?ちょうど今日のニュースが知りたかったんですよねー(棒)」
ポチ
「えー、本日提出された法案は賛成33、反対4。つまり33―4!、33対4ですよ!!、で可決されました」
洋榎・雅枝「」ピクッ
あわわわわわ…
「次のニュースです。昨日あった地震の影響で334世帯の――」
洋榎・雅枝「」ビキビキ
京太郎「そ、そうだ。明日の天気は何かなぁー」
ポチ
「明日の大阪市内の天気は、曇りのち雨となっております」
京太郎「ほっ…」
天気予報なら安牌だろ
「雨の確率は33.4%となっており、今後とも大気の状態は――」
大阪の天気予報ってすげー(棒)
洋榎・雅枝「……」ビキビキ
ポチ
「実はここに植えてある桜の木は334本ありまして――」
ポチ
「ここは生徒数334人の――」
ポチ
「本日の3時34分頃――」
ポチ
「33-4――」
「33対4──」
もうどうしようもないね…
雅枝「洋榎」ニコリ
洋榎「うん」コクリ
その後何が起こったか、俺の口からはちょっと言えない
だが、車のラジオを修理に出す必要があるのは確かなようだった
_______
____
__
―兵庫県 阪神甲子園球場
雅枝「モータープール、めっちゃ混んでるな…」
流石、最終戦とあってかなりの人だかりだ
恐らく全国からファンが集まっているのだろう
雅枝「お、空いてるとこあった」
雅枝「んじゃ、行こか」
車から降り、早速球場に向かう
ここが阪神甲子園球場か…
野球には全く興味はないが、こうして歴史ある球場を前にすると、不思議と感動が沸き起こってくる
シーズン中、毎試合の様にここに来るファンの方々の気持ちも、なんとなく分かるような気がした
京太郎「あ、そういえば」
洋榎「ん、なんや?」
京太郎「俺のチケットって、もちろん無いんですよね?」
洋榎「まぁな」
京太郎「じゃあ、どうやって観戦すれば?」
洋榎「立ち見」
京太郎「え」
洋榎「立ち見」ニコリ
京太郎「はい…」
洋榎「死ぬ気で応援するんやで」ニコリ
京太郎「」
洋榎「あとこれユニフォームな」
京太郎「見えないから意味ないじゃないですか…?」
洋榎「気分や気分。ほら、さっさと着る!うちのエースや!」
京太郎「……背番号14」
球場に入り、しばらくすると試合が始まった
凄い熱気だ。最終戦までもつれ込んだこともあり、互いの選手もファンも必死なのだろう
どんなことであれ、何かに一生懸命に打ち込めることができるということに、多少の羨望を覚える
さて、俺たちはというと
雅恵「……」
洋榎「……」
この2人、試合開始からひとっことも喋らない
どこぞのアニメの司令官のように手と手を重ねて、その上に顎を乗せて静観している
シンクロ率100%だ
熱心さを通り過ぎて、一種の狂気すら感じる
俺だったら絶対に他人の振りをするだろうな
絹恵「……はぁ」
絹恵さん、その気持ちよく分かります
5回表、二死満塁の場面、阪神は守りで対するは下位打線。危険な状況だが打ち取れる可能性も十分高い
ピッチャーが投げたボールははじき返されたが、芯から外れた鈍い音。なんでもないフライだ
誰もが取れると思っただろう。しかし、野手がファンブルしてしまい、その間にランナーが一人帰ってしまった
「「あぁ……」」
会場から、大きなため息が聞こえてくる
「何やっとんじゃ、ぼけぇー!さっさと引っ込めー!!」
後方から野次すら聞こえてくる。気持ちは分かるが、真のファンなら言うべきではないだろう
ヤジもあり周りの雰囲気が悪くなっていたところ、雅恵さんと洋榎さんがいきなりスクっと立ち上がった
洋榎「がんばれー!!汚いヤジなんかに負けんなー!!」
雅恵「まだまだ1点差や!気張れやー、阪神!!」
洋榎「失敗なんて誰にでもあるっ!まだまだ中盤や、次の打席頼んだでー!!!」
雅恵「そやそや!うちの娘なんかこの間、左右別々の靴下履いて出かけておったでー!!」
洋榎「ちょ…おかん!お願いやからその話はせんといてぇな!?」
「「あっはっはっ!!」」
「……」
「おいこらぁ!!喧嘩売ってんのか…!」
さっきのヤジの人だ
雅恵「あ゛?」ピキピキ
「おう、なんや!やる気かっ!!」
「……っ!!」
雅恵「?」バイン
「で、でけぇ…」
絹恵「ちょ、ちょっとお母さん、やめなよ…」バインバイン
「で、でけぇ…」
洋榎「おうおう、何か文句でもあんのか、おっちゃん」スカッ
「で、で…………あ!」
洋榎「?」スッカスカ
「…………」
「ご、ごめんな姉ちゃん。その、俺が悪かったよ…」
「こない人に優しくなれたの、ほんまに久しぶりや。ありがとうな」ニコリ
その表情、憐れみを乗り越えて、もはや悟りを開いた聖人の域に達してらっしゃる
これが現代における生類の憐れみ、いや"小"類の憐れみ、か…
くっ…
洋榎「おい、ほんまにいてこましたろか…」ピキピキ
京太郎「洋榎さん、落ち着いてください!」
洋榎「止めるな、須賀ぁ!うちは、うちは……!!」
京太郎「力に頼らず、争い事を治める。こんなこと、なかなかできることじゃないですよ」
洋榎「そ、そうか?うち、すごいんか……?」
京太郎「流石ですお姉さま、って感じですよ!だから、さあ!!胸を張ってください…………あ」
なかった
洋榎「……」
京太郎「……」
洋榎「……」
京太郎「……」
洋榎「覚悟はできたかな?」ニコリ
京太郎「いいえと言ったら、許してくれます?」ニコリ
洋榎「NOやで」
京太郎「Oh…やで」
洋榎「SEE YA!!」ブンッ
京太郎「ホームラン!!」アウチ
絹恵「何やってるの、お姉ちゃん…?」
洋榎「大丈夫や、絹。悪は滅んだ」キリッ
絹恵「?」
京太郎「」ピクピク
_______
____
__
絹恵「あああああ、アカンて……」
絹恵「このままやと前みたく、1ヶ月間朝食がロッ○の板チョコだけ、みたいにになってまう……」ガクガク
潔いのか悪いのか…
でも、オリックスに負けたらどうなるんだろう?気になる
回は9回裏、表の守備を終えて点差は1点、このままだと阪神の負け
ワンアウト一塁三塁の場面、長打を打てば一打逆転のサヨナラもあり得る
『ストライークッ!!』
絹恵「ああ…追い込まれてもうた」
洋榎「安心しぃや、絹。阪神がこのまま負けるわけないやろ」ニコリ
ガクガクガクガク
京太郎「そんなこと言って洋榎さん、とんでもない勢いで貧乏ゆすりしてますよ!!」
洋榎「ハハハ、ナニユーテンネン」
ガクガクガクガク
雅恵「洋榎、少しは落ち着きぃや。ほら、お母ちゃん見習って」ニコリ
ダラダラダラダラ
京太郎「とか言いながら雅恵さん、脂汗すごいことになってますよ!!滝ってレベルじゃないですよ!?」
絹恵「あっ、打った」
京太郎「え」
洋榎「え」
雅恵「え」
右中間に鋭く飛んでいった打球は
京太郎「捕れないっ!!」
三塁ランナーは余裕のホームイン、同点!
ライトの渾身の送球はコントロールよくキャッチャーの元へ
一塁ランナーは…………
『セーフッ!!!!』
「「ワァァァァ!!!!!!」」
京太郎「や、やりましたよ洋榎さん!!」
絹恵「お母さん、お姉ちゃん!やったやん、勝ったんやで、優勝したんやで!!」
雅恵「……」
洋榎「……」
京太郎「洋榎さん…?」
絹恵「お母さん…?」
雅恵「」
洋榎「」
絹恵「気ぃ失ってる……」
京太郎「メディーーック!!!!」
こうして阪神は勝った
今度こそ、Vやねん、タイガース!!
でも、この2人とは、もう一緒に試合観戦には行きたくはない。だって、ねぇ…?
でも、絹恵さんとならいいな
そうだ、絹恵さんとおそろいのユニフォームを着てサッカー観戦……
ふむふむ、なるほど……すばらっ!
絹恵さんのユニフォーム姿。ああ、やばい、めちゃくちゃ似合うな!!
きっと、胸の辺りとか殺人的過ぎるだろうな!!
サッカーはこれからもシーズン中だから、きっとそういう機会もあるだろう
楽しみだなぁ
_________
______
__
―後日
絹恵「じゃあ、お母さんそろそろ行こ!」
雅枝「え……あー実はなぁ絹、車の調子が悪くて――」
絹恵「ん?」ニコリ
雅枝「ナンデモアリマセン」
洋榎「あー、恭子達と遊ぶ約束してたのの忘れてわー。ごめんなー絹(棒)」
絹恵「ん?」ニコリ
洋榎「ハハー、ベツノヒヤッタワー」
京太郎「どうしたんですか、洋榎さん?」
洋榎「いいから、須賀も来い。今から出掛けるから」
京太郎「えー、嫌ですよ。久々に勉強でもしようかなあって思って――」
洋榎「ん?」ニコリ
京太郎「イエッサー」
京太郎「それで、どこに行くんですか?」
洋榎「万博記念競技場や」
京太郎「確かガンバ大阪の本拠地ですね。まさか、サッカー観戦ですか?」
洋榎「せや…」
京太郎「やったー!さっ、早く行きましょうよ!」
―万博記念競技場
『ゴーーーーーーールッ!!!!』
絹恵「おんどりゃあああ!!なんぼのもんじゃい!!!!!」
雅枝・洋榎「ひっ」ビクッ
京太郎「あわわわわわわ…」ガクガク
愛宕家最後の良心、絹恵さんが…
絹恵「なんやあの審判!!」
絹恵「鼻の穴に割り箸突っ込んで、下からカッコーンしたろか!!!」
雅枝・洋榎「ひぃいい」ガクガクガク
京太郎「ふぇ~…」
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