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元スレ京太郎「タイム…リープ!?」
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部員1?「おう!よろしくー。まあゆくっりしていってな」
元気娘といったところか、雰囲気は優希に似てる。おもちなし。はい次
部員2?「よ、よろしくお願いします」
ちょっと緊張してる。真面目そうな人だ。おもちは平均くらいかな、このくらいのもなかなかよいではないか
京太郎「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
京太郎「それで、今日は見学させていただいてもよろしいですか?」
部長?「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ」
部長?「まずは簡単に自己紹介しとくね、私が部長であのでかいのが副部長、そこの二人が部員1と部員2だね」
でかいのって…その通りだが、副部長さんが顔を赤らめてらっしゃる。セクハラとはいい趣味してる、ぐへへ
京太郎「はい、分かりました。僕は1年生の熊倉京太郎といいます」
部長「熊倉くんねえ……もしかして、熊倉トシさんのところに来ている孫というのは君のことかな?」
京太郎「祖母のこと知っているんですか?」
部長「ああ。知ってるかもしれないが、熊倉さんはここら辺の子達を集めて月に何度か麻雀教室をしてるんだ」
部長「で、私達もそれに参加しているんだが――先月だったかやけに嬉しそうにしていてね」
部長「それで聞いてみると長野から孫が来ているとおっしゃっていたんだ」
部長「とても嬉しそうに君の事を教えてくれたよ。あんなこと珍しいんじゃないかな、なあみんな」
「「うんうん」」
そんなことがあったのか。なんだか色々な感情がこみ上げてきて、胸にじーんと来る
今日の夕飯はうんとおいしいものしよう
京太郎「なんだか恥ずかしいですね……」
副部長「とういうことは、熊倉くん麻雀はもう打てるのかしら?」
京太郎「ややこしいので京太郎でいいですよ。麻雀は初心者に毛が生えた程度ですね、残念ながら」
部長「なあに、一年生なんだからこれからどんどん強くなっていけばいいのさ」
京太郎「はは、そうですね。ところで質問いいですか?男子部員の方はいないんでしょうか?」
部長「ああ、残念ながらね。だからこのまま京太郎くんが入部しても団体戦に出場するのは正直かなり厳しいと思う」
部員1「でも、それは私達も同じだよねー」
部員2「先輩達が卒業しちゃって、もう四人しかいないもんね…」ハァ
清澄や鶴賀みたいに部員で苦労してるとこは他にもあるんだな
あのときは咲がいたからよかったが……
いやまてよ、小鍛治がいるじゃないか
そもそも、小鍛治プロは高校生のころインターハイに出場していたと聞いたことがある
このまま行くと、小鍛治が麻雀をやらなくなって、もしかしたら未来が変わってしまうかも
…………よしっ!
京太郎「あの、それだったら心当たりがあるかもしれないです」
部長「えっ!?」
京太郎「うちのクラスの女子に麻雀に興味持ってそうなやつがいるんで、明日にでも誘ってみましょうか?」
部長「ぜひっ!といいたいところだが、やはり本人の意思が一番大事だからな。無理に誘う必要はないぞ」
部員1「相変わらずかたーい。ま、でもよろしく頼むよ新人くん。我が麻雀部の命運は君にかかっているのだ!」
京太郎「はい、了解です!!」
とりあえず初日はこんな感じだった
なんだかいつの間に俺の入部は決まっているかのような雰囲気だったが、俺もこの部が気に入ったので構わなかった
決しておもちで決めたわけじゃないよ?念のため
ちなみにその後皆と麻雀を打つことになって、とても盛り上がった。久々に麻雀を打てて楽しかったのもある
え、結果だって? もちろんラスばっかりだったよ(笑)
トシさーん、俺にも麻雀教えてくださーい!
ときかけって昔と最近で2回ぐらい実写化やってるから主演が誰かって言うだけで歳がばれるな。
アラフォーともなると面倒見のいいイケメンを過去の自分にあてがうことぐらい容易いか…
――4月中旬 翌日の放課後
さて放課後だ。朝に言おうかと悩んだが、小鍛治みたいなタイプは時間をかけると逆効果になりかねない
よって速攻とその場の勢いを使う作戦を試みる
今教室には俺と小鍛治しかいない…絶好のチャンスだ!
ガシッ
京太郎「小鍛治大事な話があるんだ、聞いてくれないか?」キリッ
いきなり腕をつかむ。スキンシップには慣れていないだろうよ。さあどうだ
小鍛治「わっ、ひゃあ! どどどどどど、どうじたのさっ////!?」
効果はばつぐんだ!次いで肩をつかむ
京太郎「話は後だ!何も言わずに俺について来てくれ!」キリリッ
小鍛治「えっ!ででででででもなんで私なんかが――」
ここで決める!!
グイッ
京太郎「…なんかじゃない小鍛治、お前じゃなきゃダメなんだ」ミミモト
小鍛治「は、はひ…////////」ボンッ
アラフォー敗れたり。誰か俺に敗北を教えてくれ
というわけで
ガラガラガラ
京太郎「お届けものでーす!」
小鍛治「えっ、え、ここどこ? 麻雀部???」
正気に戻ったか、だがもう遅いぜ
部長「おおいらっしゃい京太郎くん、その子が昨日言っていた子かな?ささ座って」
京太郎「ありがとうございます。さ、小鍛治座ろうぜ」イケメンスマイル
ゴゴゴゴゴゴッ
小鍛治「京太郎くん…これはどういうことなのかな?」グギギ
イケメンスマイルでは誤魔化されんか…しかし、なんという圧力。咲以上か
京太郎「す、すまん小鍛治、騙したりして悪かった。だからカン(物理)だけはゆるしてくれー」ビクビク
小鍛治「カン(物理)ってなに!?私そんなことしたことないよねっ!?」
京太郎「はは、悪い悪い。いつもの癖でな…」トオイメ
小鍛治「はあ…もう分かったよ。で、話ってなに?」
京太郎「ああ実はな――」
先輩方が卒業して団体戦に出られないこと
なので俺が一肌ぬいで小鍛治の勧誘をしたこと
小鍛治の麻雀の実力がぜひ必要なこと
俺も入部してくれると嬉しいこと
などを一生懸命説明した
小鍛治「話は理解したけど、私が麻雀できること言ったっけ?」
やっべえ…そうだった、うまく誤魔化さんと
京太郎「ほ、ほらこの前小鍛治、色川○大の本読んでたじゃないか」
京太郎「そのとき阿佐○哲也の話になって、ついでに麻雀の話をしたじゃんか」
小鍛治「確かに阿○田哲也の話はしたけど……うーん?」
誤魔化しきれないか…
部長「おーい二人とも、話は終わったかい?」
ナイスタイミングです、部長!
健夜「!」ササッ
部長が再度話しかけてくると、小鍛治は俺の斜め後ろに隠れてしまった
てかこいつ今まで興奮してて部長達のこと忘れてたな
京太郎「はい、とりあえず終わりました」
部長「そうか、でもダメじゃないか。ちゃんと説明してから勧誘しないと」
京太郎「すみません」
部長「私じゃなくて、その子に謝るべきなんじゃないかな?」
京太郎「すまなかった小鍛治」ペコリ
京太郎「でもさっき説明したことは本当だし、小鍛治が入部すれば俺としても嬉しい」
京太郎「だから真剣に入部の件考えてくれないか?」
小鍛治「う、うん……考えておく…」
うーんこのテンションの落差、他に人がいるとこうも違うものか
部長「京太郎くんの責任は部を預かる私の責任でもある、嫌な思いをさせてすまなかった」ペコリ
小鍛治「い、いえ…そんなに怒っていないので…」
部長「そうか、だが君に入部してもらいたいというのは本当だ」
部長「だから今日は見学だけでもしていかないかな?」
副部長「そうそう、おいしいお茶もあるわよ」
京太郎「見学だけじゃつまんないし、一緒に打とうぜ。俺の実力見せてやるよ!」
部員1「京太郎の実力見せられても、反応に困るだけだって」ケラケラ
部員2「ちょっと本当のこと言うのやめなよ」
京太郎「ひどい!」
小鍛治「…ふふ」
京太郎「!」
小鍛治「分かりました。と、とりあえず見学させてもらいます//」
やっぱり笑ってる方がかわいいな
部活二日目はこんな感じだった
小鍛治のやつは終始ビクビクしたりどもったりしていたが、帰るころには多少和らいでいた
だが俺がサポートしてやらないと、まだうまくコミュニケーションを取れないようだった
意外だったのは、対局のときだ
俺は勝手に小鍛治は魔物クラスなのでは、と考えていたがこの頃はまだそこまでじゃないようだった
手加減をしているという可能性もあるが、あの誠実な部長相手に小鍛治がそんなことをするとは考え難い
確かに小鍛治は繊細で他人の気持ちに対して敏感だが、相手の思いを踏みにじるほど鈍感ではない
きっとこれからどんどん練習して強くなっていったに違いないのだ
そう思うと俺もやる気が湧いてくるというものだ
ちなみにその日初めて小鍛治と一緒に帰った
前にトシさんが言っていたことは本当だったようで、小鍛治の家とはわりと近かったのだ
なのでバス停から少しは一緒だった
京太郎「今日は悪かったな」
小鍛治「もう気にしてないよ」
京太郎「先輩達いい人だったろ?」
小鍛治「京太郎くんに比べるとずっとね」フン
京太郎「小鍛治にしては言うじゃないか」
小鍛治「さ、さっきのお返しだよ//」
小鍛治「あっ、私こっちの道だから」
京太郎「そうか」
なら、最後に一番聞きたかったことを聞こう
京太郎「また明日も来てくれるか?」
小鍛治「ふふ、考えておくよ。また明日ね!」
まったく…素直じゃないな
京太郎「ああ、また明日!」
また明日、か…いい言葉だな
さて、夕飯はなににしますかね
――4月下旬 体験入部終了後
あのあと体験入部の期間中、小鍛治は毎日麻雀部に顔を出してくれた
麻雀部が気に入ったのか、あるいは誘った俺に気をつかったのか…
なんにせよ、ありがたいことは確かだった
なぜなら俺達以外の一年生は結局一度も部室に姿を現さなかったから
これで小鍛治が入部してくれれば、とりあえず女子の団体戦の人数は集まる
部員は全員三年生なのでぜひ団体戦には出場して、悔いの残らないようにしてもらいたい
京太郎「おはよー」
小鍛治「うん、おはよう」
京太郎「今日は何を読んでるんだ?」
小鍛治「うん今日はね―――」
こうして小鍛治の読んでる本を尋ねるのがもはや日課になっている
こいつ意外と雑食で、いろんなジャンルのものを読むから聞いていて飽きないのだ
興奮した様子で本の内容を話してくれるので、楽しさも人一倍伝わってくる
このおかげか俺に対してはかなり打ち解けているといえるだろう。継続は力なり
京太郎「そういえば今日入部届けの提出日だろ、ちゃんと持ってきたか?」
小鍛治「もう!おかーさんみたいなこと言って、持ってきたよ!」
京太郎「おおそうか、えらいぞ」
小鍛治「えへへ、ありがと…じゃなくて、だから何!?」
京太郎「ええと、小鍛治さんはどこに入るのかなーと気になりまして…」
小鍛治「はあ…素直に麻雀部に入るか聞けばいいじゃん」
京太郎「そうは言ってもほとんど無理やり誘ったようなものですし…」
小鍛治「変なところで気をつかうんだから」
京太郎「うぅ、すみません…」
小鍛治「確かに最初のアレはどうかと思ったよ」
小鍛治「でもいくら私だって嫌ならそう何度も行かないからね?」
京太郎「それはつまり気に入ったから毎日来ていた、ってことでオーケー?」
小鍛治「ま、まあ、ありていに言えばそうなるかな…///」
この恥ずかしがり屋さんめ
小鍛治「みんなで何かするのって久しぶりだったし」ボソ
今のは聞かなかったことにしておこう
京太郎「で、結局入部届けにはなんて書いたんだ?」
小鍛治「はいっ!」
返事の変わりに入部届けを突き出してきたが、そこには――
京太郎「ゲスリング部……」
小鍛治「ちがうよね!?ほら、ちゃんと麻雀部って書いてあるじゃん!」
京太郎「すまんすまん、読み間違えた」
小鍛治「どうやって間違えるのさ!?一文字も合ってないよね!?第一ゲスリング部ってなに!?」
やはり小鍛治はいじってこそ、その真価を発揮する
担任「おーい時間だ席につけー」
担任「あとそこー、夫婦漫才はほどほどにしとけよー」
「すごいツッコミだったのよー」
「ウチより目立っとるやないかい、なんとかせな」
「ダルい…」
あのやりとりを見られていたとは…さすがにこれは少々はずかしい。小鍛治はというと
小鍛治「あ、穴があったら入りたい、うぅ…//」カァァァァ
下向いて顔を真っ赤にしていた、南無三
その後入部届けを回収し、いつも通り授業を受けた
ホームルームでの失態は確かに恥ずかしかったが、小鍛治がクラスの話題にのぼったのはよい傾向だと思う
このまま俺以外にも心を開いていけばすぐに友達なんかできるはずだ
俺以外にも、もっとその魅力を知ってほしいと思う…少々寂しい気もするが
さて放課後、我ら学生のもう一つの本分、部活動の始まりだ
京太郎「小鍛治ー、一緒に行こうぜ」
小鍛治「ふん」プイッ
あ、あれ!? もしかして朝の件、まだ怒ってらっしゃる…
京太郎「からかいすぎたのは悪かったって、何度も謝ったんだから許してくれよ…」
小鍛治「女の子に恥をかかせたんだから、当然の報いだよね」
恥をかかせた、って…聞きようによっては誤解を招きかねないぞ
「まーたはじまった」
「熊倉は責任を取るべきだね」
「最近の高校生は、わっかんねーな」
おおう、またこのパターン
京太郎「さ、とりあえず行こうぜ」
小鍛治「う、うん、そうだね…///」
「ほな、またなー」
「小鍛治さーん、またなのよー」
京太郎「おう、みんなまた明日なー!」
京太郎「ほら、小鍛治も」ボソ
小鍛治「う、うん……じゃ、じゃあ、また…//」
みんな小鍛治との接し方を学習しつつあるな
さすが高校生、そういうとこは早い
ガラガラガラ
京太郎「こんにちはー」
小鍛治「こ、こんにちは」
部長「こんにちは、来てくれて嬉しいよ!」
京太郎「あれだけ毎日通っていたんですから、当然ですよ」
部長「はは、進入部員の名簿は先ほどもらっていたんだが、それでも来てくれるか不安でね…」
結局最後まで部長達は俺達に入部するのか聞いてこなかった
彼女達なりに配慮があったのだろう
ということは、今の今まで俺達が来るのを不安に感じていたに違いない
京太郎「でもこれで俺達も晴れて麻雀部員ですね。あらためてよろしくお願いします」ペコリ
小鍛治「…お願いします」ペコリ
部長「ああ、こちらこそよろしくな!」
部長「ではさっそく練――」
副部長「あだ名を決めないとね」
部員1「おっ、それいいね!」
部員2「えっ!? まずは歓迎会じゃないの?」
部長「練――」
部員1「歓迎会は部活終わった後だな」
副部長「あらそれなら駅前におしゃれな喫茶店できたから行ってみない?」
部員2「こんな田舎にそんなのできたんだ。でもいつものガ○トとかマ○クとかじゃ普通過ぎるもんね」
部長「れ――」
京太郎「俺まだ駅の方あまり行ったことないんで、ついでに駅周辺のこと教えてくださいよ」
部員1「そういうことなら私にまかせな。嫌になるほど案内してやるぜ!」
副部長「まあまあ、その話はまた後にしましょう」
部員2「そうだね、まずはあだ名決めないとね」
部長「r――」パクパク
小鍛治「ほ、ほら部長。練習なら二人でもできますから、ね、一緒にやりましょ」アセアセ
部長「うん」
部員1「まず京太郎はそのまま京太郎でいいだろ?」
副部長「そうね」
部員2「異議なし」
あっさりしすぎでは!?
京太郎「ま、まあ別にそれでいいですけど…」
部員2「小鍛治さんはどうするの?」
部員1「女の子だし名前そのままはかわいそうだよね、『こかっじ』とか?」
副部長「それなら私前から考えてたのよ」
部員1「へえ、どんなん?」
副部長「ずばり『すこやん』ね、かわいいでしょ!」
部員2「ありきたりだけど悪くはないね」
副部長「ね、どうかしら「すこやん」さん」
小鍛治「えっ、わ、私ですか!?」
隅っこで意気消沈した部長と練習をしていた(単に部長の愚痴を聞いていただけだが)小鍛治が反応する
小鍛治「え、えとですね…」アセアセ
案の定なかなか答えられないのでフォローする
京太郎「いいじゃないか小鍛治」
小鍛治「そ、そう…///」
京太郎「うん、小鍛治のポンコツっぷりが滲み出ていて初対面の人にも安心設計だな」
小鍛治「なにそれポンコツって!わたしそんなんじゃないよ!?」
部員1「小鍛治さんはポンコツだったかー」
部員2「確かに普段はちゃんとしてるけど、京太郎くんと話すとすぐボロが出るよね」
京太郎「部屋の掃除はお母さん任せだもんな」
小鍛治「えっ、えっ!?な、なんでそれを…///」
本当なのかよ……
小鍛治「あ!い、今のは違うんでひゅ。し、信じてください…」アセアセ
もうボロボロだよ小鍛治さん
部長「みんなもう止めないか」キリッ
あ、部長がいつの間にか立ち直ってる
部長「すまない、こいつらも悪気があるわけではないんだが…なかなか止まらなくてな」
小鍛治「い、いえ、嫌ではなかったですから…」
慣れてないだけだもんな
部長「そうか、でも愛称というものがあったほうがいいというのは私も同意する」
部長「だから君さえよければ、さっきのでかまわないかな?」
小鍛治「は、はい…私はそれでも//」
部長「そうかよろしくな、すこやん!」
その後は麻雀卓を囲み普通に練習した
小鍛治は、その「すこやん」という呼び名を最初こそ恥ずかしがってはいたが
だんだんと慣れてきたようで顔を赤らめることもなくなっていった
むしろ、そう呼ばれるたびに嬉しそうにしていたように思うのは俺だけだろうか?
ちなみ俺は未だに「小鍛治」と呼んでいる
だってなんだか男が「すこやん」って恥ずかしいじゃん?
小鍛治は若干不満そうな顔をしていたが許して欲しい
男の子には譲ることのできない、チープでいて大事なプライドというものがあるのだ
そして練習が終わると、予定通り駅前の喫茶店に行くことになった
________
_____
__
カランカラン
店員「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
副部長「5人です」
店員「かしこまりました、ではこちらのお席にどうぞ」
確かになかなかこじゃれたお店だ、BGMには心地よい音楽が使われている
あ、ちなみに、注文するときに魔法のような専門用語を必要とするあのお店じゃない
京太郎「いいお店ですね」
副部長「そうね、この辺じゃあ珍しいくらいね」
これは持論だが喫茶店にもっとも必要なのはリラックスできる環境だ
たとえばド○ールや☆バックスなどはとにかく席が狭く居心地が悪い、もちろん店にもよるが
また隣の人との間隔も狭いため落ち着いて休むこともできやしないではないか
なので俺は都内の珈琲チェーン店が基本的に嫌いなのだが、唯一ル○アールだけはなかなか良いと思う
よく効いた冷暖房に落ち着いたBGM、そしてなんと言っても広々とした空間にフカフカの座席
さらに居眠りしていても起こされることはないし、メインの品の後には必ず緑茶が出される
ただ完全に分煙されていないのは改善してほしいが
多少値段が高かろうとも、そのことが分かっていない喫茶店など行く気にもならん
失礼、話がずれたがこのお店は少なくともそういうことを満たしているお店ということだ
さて、みんなの注文した品も届いたので歓迎会が始まる
部長「あらためて入部してくれてありがとう、二人とも」
部員2「これで今年も団体戦に出ることができるもんね」
京太郎「そういえば何か目標とかはないんですか?部としての」
部員1「やっぱ最後だからまた団体戦で全国行きたいなー」
小鍛治「個人戦はどうなんです?」
副部長「私と部長は去年個人戦で全国に行ったから、今年ももちろん狙うわ」
通りで二人とも強かったわけだ
部長「しかし何といっても団体戦はおもしろいからな、個人戦にはないものがあるよ」
部員1「そうそう、自分の結果がチームの勝敗を左右するからな、燃えるぜー」
部員2「去年は最後に捲られて順位下げてたけどね」
部員1「うるせー」
小鍛治「そ、それって私も出るんですよね?緊張します……」
部長「はは、県予選が6月で今は4月の後半に入ったところだよ。まだまだ時間はある」
副部長「そうね、それまでにゆっくり準備していけばいいわ」
京太郎「でもみんないいですね、俺も団体戦出たかったなー」
部長「来年にまたお得意の勧誘をすればいいさ」
それはそうなんだが……俺に来年なんてあるのか、この時代に?
部長「だから今年の目標は団体戦で全国出場、もちろん個人戦でも頑張って欲しい」
京太郎「じゃあ俺の目標はどうしましょう?」
部長「そうだな、今の実力を考慮に入れると6月の県予選で上位入賞ってところが妥当だろう」
京太郎「けっこうハードル高いですよねそれ…」
部員1「大丈夫、私達がみっちり教えてやるよ」
部員2「部活では私達に、家では熊倉さんに教えてもらうといいんじゃないかな」
けっこうスパルタですね
小鍛治「がんばればいけるよ、たぶん…」
たぶんかよ!?
こうして部としての目標が決まり、歓迎会は進んでいった
どうやらこれからの俺の生活は麻雀が中心になってきそうだ
だが、さっきも少し考えたが俺はいつまでこの時代にいることができるのだろうか?
トシさんの情報待ちだが、さすがに1年もこちらにいるとは考えにくい
そんな短い時間しかこの人達と過ごせないのかと思うとなんだか……
こんなとこと考えていると心配そうな顔をした小鍛治が「どうかしたの?」と聞いてきた
俺は「なんでもない、小鍛治に心配されるなんて一生の不覚だよ」とごまかした
でも本当は悲しかった
いまこの時の思い出は恐らく未来にも、みんなの中に残るのだろう
しかし12年後のその時、俺が熊倉京太郎であることを信じてくれる人はいない
それがどうしようもなく寂しかったのだ
__________
______
__
部長「ではこれで新入部員の歓迎会を終了とする」
「「おつかれさまでしたー!」」
副部長「じゃあ帰りましょうか」
部員2「うん
部員1「一緒に帰ろうぜー」
部長「分かった分かった、今日は寄り道は無しだぞ」
京太郎「んじゃ、俺達も行くか」
小鍛治「そうだね」
俺と小鍛治は他愛のない話をしながらバス停に向かい、バスに乗り込んだ
そこそこ混んでいたので車内ではほとんど会話はできなかった
小鍛治「けっこう混んでたね」
京太郎「ああそうだな、俺がいないときは痴漢に気をつけるんだぞ」
京太郎「…ま、でも、小鍛治に限ってその心配はないか」
小鍛治「そ、そんなことないよ!私だって東京の満員電車とか乗ったら、きっと痴漢されちゃうよ!?」
い、いや、そんなこと熱弁されましても…
京太郎「ハハ、ソウデスネー」
小鍛治「あからさまに棒読みだよね! わ、私だって大人になればもっとこう……」
まあ、小鍛治プロのを見る限りそうはならないんじゃないでしょうかねえ
そんな小鍛治も、12年も経てば俺のことを……
小鍛治「京太郎くん? どうかしたの?」
京太郎「い、いや、なんでもない」アセアセ
今日2回も小鍛治に心配かけちまった、なにやってんだ俺は。いつもは逆だろうが…
小鍛治「さっきも同じような顔してたよ、もしかしたら何か悩んでるんじゃない?」
京太郎「ほんとに何でもないんだよ、だから――」
小鍛治「うそだよ!入学式から今日までずっと京太郎くんといたんだよ。私にだってそれくらい分かるよ!」
いつになく語気が強い、でも話せないことなんだよ
京太郎「いやでも――」
小鍛治「いつも私に構うくせに、こういうときは関わらせてくれないの!?」
小鍛治「私たち、と、とも……同じ部員なんだから相談くらいしてくれてもいいじゃない!?」
そこでヘタれるんだ!?
しかしあの小鍛治が勇気を振り絞って俺のために言ってくれたんだ
京太郎「わかったよ、すまん、ありがとう」
京太郎「正直小鍛治のこと見くびってた、見直したよ」
小鍛治「わ、分かればいいんだよ…///」
ほんとのことは言えないから何て言おうか
京太郎「…実はな、この生活を続けることに何か意味はあるのか、って悩んでいたんだよ」
なんだかこれだけ聞くと中二病のポエマーみたいだな…
小鍛治「それって中島○道的な、人生に生きる意味はあるのか、ってこと?」
中島○道って…チョイスが女子高校生じゃないよ小鍛治さん
京太郎「ま、まあ似たようなものかな?」
小鍛治「京太郎くんでもそういうこと考えるんだ、へえ…」
こんな突飛なこと馬鹿にされると思ったが、小鍛治は真剣に考えてくれているようだった
しばらく小鍛治はうーんとうなっていたが、突然しゃべり出した
小鍛治「身も蓋もないかもしれないけど、そんなの人それぞれなんじゃないかな」
小鍛治「そういうことって、本を読んだりしても書いてないでしょ?」
小鍛治「…いや、書いてあるにはあるけど、でもそれって結局その人ものでしかないわけで…」
京太郎「うん?」
小鍛治「例えば仏教の本を読んだ人みんなが悟りを開くってわけじゃないよね?」
小鍛治「それと同じで、私が京太郎くんにどうこう一般論を言っても意味なんてたぶんないんだよ」
京太郎「つまり?」
小鍛治「つまり生きる意味なんてものは、日々の生活の中で様々なもの…」
小鍛治「例えば楽しい事とか苦しい事とかを経験して、そのたびに一生懸命自分なりに考えていく…」
小鍛治「その過程にしかないってこと、かな?」
京太郎「うーん……なるほど」
小鍛治「ご、ごめんね、かっこつけて偉そうなこと言って。あまり参考にならないよね…///」アセアセ
なんとなく理解はできる
難しいこと言っていたが、つまり小鍛治は、そんなのは自分で考えるしかない
取りあえず今をがんばれ、と言っているのだ
なるほどその通りじゃないか。俺らしくなかったな
京太郎「いやそんなことない、なんとなく分かった気がするよ」
京太郎「俺のために考えてくれてありがとうな、小鍛治」ニコ
ナデナデ
小鍛治「ちちちちちょっとーーーー!!ななななななな、何してるのさ!!!?////」バッ
京太郎「あ、わるい。その、いつもの癖でな!?嫌だったろ、すまん!」
やべぇ、いつも咲にやってるみたいに同じことしちまった
というか、いきなり(相手が小鍛治とはいえ)女の子の頭なでるとかありえんだろ普通
小鍛治「い、いや。そ、そのびっくりしただけだから、そんなに嫌ではなかったっていうかそのー……//////」カァァ
京太郎「そ、そうか!?」
小鍛治「う、うん…///」
小鍛治「そういえば、さっきの…癖って言ってたけど、いつも女の子にあんなことしてるの?」ジトー
京太郎「い、いや、小鍛治さん!?誤解しないでほしいのですが、いつもってわけではないんですよ?」
小鍛治「じゃあどういうときにしてるのさ?」
京太郎「ええとそうだな…長野にいたとき仲の良い女の子がいたんだけど…その子がまた小鍛治に似てるんだよ」
京太郎「すぐ道に迷うわ、何もないところでこけるわ、コミュニケーションに不安があるわ……」
京太郎「まあ、小鍛治とは少し方向性がちがうかもしれんが」
小鍛治「へぇー、わたしより酷い人もいるんだね」
自覚がないって恐ろしい
京太郎「ま、まあとにかく世話のかかる子だったんだよ」
京太郎「で、そういう子がさ、いつもより頑張ったりするとするじゃん?」
京太郎「そうすると何かムラムラっときて思わず頭をなでたくなっちゃうんだよ」
小鍛治「ま、まあ分からなくはないけど…」
京太郎「だから父性っていうのかな…娘の頑張る姿を見守る父親の気持ちというか…」
京太郎「つまり決して小鍛治の想像するような、やましいものではないんだよ!」
小鍛治「そ、そうなんだ」
京太郎「おう、分かってくれて嬉しいよ」
小鍛治「…でもそれって私のこともそういう目で見てるってことじゃあ――」ジロ
変に追及される前にスタコラサッサだぜ
京太郎「おおっともうこんな所か!今日はありがとな小鍛治またなー!」ダッ
小鍛治「ちょ、ちょっと話はまだ―――」
小鍛治「もう!」
>>86
ここさるよけいらないよ
ここさるよけいらないよ
俺は小鍛治の追撃を見事かわし、無事自宅という名のトシさんの家に到着した
京太郎「ただいまー!」
トシ「おやおかえり、少し遅かったね」
京太郎「今日は麻雀部の歓迎会があったからね、駅前の方まで行ってたんだ」
トシ「おや、結局麻雀部に入ることにしたのかい?」
京太郎「まあその…いろいろあってね」
小鍛治を入部させるため、ってことが一つの理由だがこれはさすがに話せないな
トシ「…そうかい」
トシさんも何かを察しってくれたようだ
京太郎「それでなんだけど、改めてきちんと麻雀の指導をお願いしたいんだけどいいかな?」
トシ「それなら今でもやってるじゃないか」
京太郎「それはそうなんだけど…今まで以上に真剣に麻雀に取り組みたいんだ」
トシ「どういう心境の変化だい?」
俺の表情を見てトシさんも真面目に聞いてくる
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