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    元スレ勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな……」

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    151 = 1 :

    宿屋、風呂。

    僧侶「んー、気持ちいいー、っていうか、お風呂広い!」

    戦士「そうだな」

    僧侶「もう、戦士さん、どうしたんですか?」

    戦士「いや、魔王に許された町っていうのもな」

    僧侶「正直、信じられません……」

    戦士「どうかな。魔王だって、人間を絶滅させるのが目的ではあるまい」

    僧侶「じゃ、じゃあ、その、こうやって人間を服従……!」

    戦士「本人たちは命を助けられて喜んでいるんじゃないか」

    僧侶「そんなこと……あ、実は脅されてたり……!」

    戦士「脅されていようが、生かされていようが、命をかけて抵抗するにはそれなりに理由がいる」

    戦士「まして、それが自発的に服従しているとなれば、厄介のきわみだ」

    僧侶「でも、実際には魔物に殺されている人も大勢います!」

    戦士「どうだろう。抵抗するからやられるんだ、と考えているかもしれない」

    僧侶「それに、全部の国を攻め落としたら、牙をむくのかも……」

    戦士「……今の生活には関係がない、と思っているんだろう」

    152 = 1 :

    僧侶「そんなぁ……」

    戦士「まあ、私達にとっても、そういう態度なら、利用するだけさせてもらうのでいいさ」

    僧侶「な、そんなこと!」

    戦士「おそらく、ここが最後の補給地だ。いざこざを起こしても仕方があるまい」

    戦士「それに、魔物が冒険者との接触を禁じていないのも、魔王側がよほど自信があるということだろう」

    戦士(その方が好都合だがな)

    僧侶「でも、ひどすぎます! 魔物に襲われた村もあるのに!」

    戦士「ふうーっ」

    僧侶「戦士さん!」

    戦士「自主的に生贄を捧げてる村だってあったんだろう。人間もひどい奴はひどいもんさ」

    僧侶「そ、それは……」

    戦士「それより、体を洗ってもいいかい?」

    僧侶「むう~っ!」

    153 = 1 :

    ザバーッ。

    僧侶「……うーん」

    戦士「……なんだ?」

    僧侶「本当だったらここで、『わあ~、戦士さんの肌って綺麗ですー!』とか『戦士さんってやっぱりグラマーなんですねー!』とか」

    戦士「傷だらけだろう?」

    僧侶「そうですねぇ、やっぱり、前線で戦ってるから……」

    戦士「ああ、まあな。それほど胸も大きいわけじゃないし」

    僧侶「おっぱいというより大胸筋ですもんねぇ」ニコニコ

    戦士「……」

    僧侶「あ、disってるわけじゃないんですよ!?」

    戦士「まあ、僧侶もあまり無いものな、おっぱい」

    僧侶「あ、ありますよ!」

    戦士「幼児体型とは言わんが……」

    僧侶「ななななに言ってるんですかー!」

    僧侶「私は、その、ちょっと小さい頃、栄養不良でぇ!」

    154 = 1 :

    宿、女性部屋。

    戦士「ん……?」

    「こんばんはぁ~」

    僧侶「えっと、あ、マッサージの方ですか?」

    「そうですぅ~」

    戦士「私は別にいい。体を見られたくもないし」

    「え、え、でも……」

    僧侶「あ、じゃあ、私が受けますよ! お願いしまーす!」

    「本当にいいんですかぁ~?」

    戦士「……」

    「じゃあ、せめてこの安眠のお香でもぉ……」

    戦士「ふーっ」

    「あ、あのう……」グスッ

    僧侶「別にいいんですよぉ、ぶっきらぼうですけど、優しいんですから」

    「そ、そうですか~」

    155 = 1 :

    僧侶「ん、んー」

    「どうですかぁ~、気持ちいいですかぁ~」

    僧侶「あー、う、ん、んー」

    僧侶「ふあ……」

    僧侶(眠くなってきちゃった……)

    「眠くなったら、そのまま寝ちゃってもいいですよぉ~」チラッ

    戦士「……」

    「ちゃんと、ベッドまで運んで上げますからね~」

    僧侶「ん、ふぁ、あー、あ、あー」

    「……」

    戦士「……」グーグー

    「……大丈夫ですからね~、悪いことにはきっとならないですからね~」

    僧侶「んー……」スースー

    「……大丈夫ですから」

    156 = 1 :

    夢魔「……どうだ?」

    「オッケーです、みんな寝ちゃいました~」ヒソヒソ

    夢魔「……勇者の方は?」

    「宿についたら着のままで寝ちゃったそうです~」ヒソヒソ

    夢魔「よし、よくやった」

    「あと、おじいさんは……」

    夢魔「そこまで気を回さなくてもいい」

    「あ、あのう……」

    夢魔「なんだね?」

    「……わ、悪いコトはしないですよねぇ~」

    夢魔「疑うのか?」

    「い、いえ、そんなことは……」

    夢魔「もちろんだ。ちょっと夢を見てもらうだけだ」

    「ほっ」

    夢魔「だが、その前に、君も夢を見た方が良さそうだな」

    「え」

    157 = 1 :

    酒場。

    魔法使い「……ふむ」

    バニー「ねぇ~、おじいさん、もっと飲みましょうよ」

    魔法使い「確かにうまいが、わしゃ酒はあまり好きではなくてなー」

    マスター「ははは、そうおっしゃらずに。どうです?」

    魔法使い「女の子はかわいいのう。わしゃ、かわいい子は大好きじゃ」サワッ

    バニー「やだー、おじいさんったら」

    マスター「それにしても、この町はいい町でしょう」

    魔法使い「そうかのう」

    バニー「いいところよ~、魔王様も良くしてくれてるし」

    魔法使い「ほっほ、バニーちゃんは魔王が好きなんじゃのう」

    バニー「あ、えーと、そ、そうなのよ~」

    魔法使い「わしは魔物も魔王も大嫌いでのう……すまんのう」

    バニー「あ、あはは」

    マスター「いやいや、おじいさんもいろいろあったんでしょう。わかりますよ」

    魔法使い(本当に分かるのか?)

    158 = 1 :

    マスター「ですが、まあ、話せば分かるお方ですし、それこそ、人間の方がよほど……」

    魔法使い「なんかあったのかい?」

    マスター「ええ、まあ……こう、妻に濡れ衣を着せられましてね。生まれた町を追われることに……」

    魔法使い「そりゃ、大変じゃったのう」

    マスター「絶望して、魔物に食われてやろうと思っていたんですよ。そこでね」

    魔法使い「そうかそうか」

    バニー「人間なんか、最低よね」

    魔法使い「バニーちゃんもなんかあったのかい?」

    バニー「私は、その……」

    魔法使い「ん? ん?」

    バニー「なんでもない! 無理やり聞く人は嫌ーい」

    魔法使い「ふーむ、突っぱねれば寂しそうな顔をするのにのう。ほんとにバニーちゃんじゃな」

    バニー「な、なによ、もう!」

    159 = 1 :

    マスター「おじいさん、悪いことは言いませんよ」

    魔法使い「んー?」

    マスター「魔王退治なんて、無茶すぎますよ」

    魔法使い「……」

    マスター「まあ、その、もういい年でしょうし……お仲間にも言って」

    魔法使い「ふーむ、そうじゃのう」

    魔法使い「確かに、この町は栄えているな。魔王のおかげでな」

    マスター「え、ええ……」

    魔法使い「で、お前さんはここに来る冒険者たちに、みんなそういうことを言ってるのか」

    マスター「ま、まあ、一応……何しろ、魔王退治に行った人は、誰も帰って来ませんでしたよ」

    魔法使い「そうかそうか」

    バニー「おじいさんも、無理しちゃダメだよ?」

    魔法使い「バニーちゃんも優しいのう」

    バニー「だ、だから……」

    魔法使い「そうじゃのう」

    160 = 1 :

    魔法使い「そこまで言うなら、帰ろうかの」

    マスター「え?」

    魔法使い「どれ、お会計をしてくれんか」

    マスター「えっと、え」

    魔法使い「仲間に言わないといけないから、宿に帰るんじゃ」

    魔法使い「ほれ、つり銭はいらんから」ジャラ

    マスター「えっと……」

    魔法使い「予想外みたいな顔をするでない。それとも、強引に引き止めるかい?」

    バニー「お、おじいさん」

    魔法使い「ふはははっ! 誰が薬を混ぜた酒なんかに引っかかるかよ」

    魔法使い「心底説得するつもりなら、そんな下らんことをするもんじゃなかったな!」

    マスター「あ……」

    魔物「もういいぞ! 店主」


    酒場に魔物が現れた!

    161 = 1 :

    キャー! ナニナニ、ドウシテマモノガ……

    魔物「やはり、報告通り、ジジイが参謀役だったな」

    魔法使い「ほうほう、なるほど、わしらのことを調べてあったというわけかい」ガタッ

    マスター「ま、魔物の皆さん、こ、これは……」

    バニー「あ、あの」

    魔物「動くなジジイ! 動けばここにいる人間を殺すぞ!」

    魔法使い「よもや、たった四人のために殺しにかかるとはな」

    魔物「光栄だろう? さすがに塔や砦も落とされては、見過ごすわけにはいかなかったからな」

    魔物「ほら、動くんじゃない!」

    マスター「う、嘘だ……」

    バニー「ど、どうして」

    魔法使い「別に構わんぞ。殺しても」

    マスバニ『!』

    魔物「ほう」

    162 = 1 :

    魔法使い「親兄弟も、息子も友人も魔物に殺されたしの」

    魔法使い「もちろん、一緒に逃げたお姉ちゃんたちも大体殺されたわ」

    魔法使い「今更、少し知り合った連中を殺されてもどうってことはない」

    魔物「貴様……それでも人間かっ!」

    魔法使い「演技が下手じゃのう。まあ、そういうことでもええわい」

    魔法使い「ジジイが一番恨みつらみが溜まっておるんじゃ。家族の仇を誰が忘れると?」

    マスター「う、ぐ……」

    魔法使い「うひゃひゃ、ほれ、爆発呪文」 どうっ!

    バニー「きゃあっ!」

    魔物「ま、待てっ、宿屋にいるお前の仲間がどうなってもいいのかっ!」

    魔法使い「ほ……そういえばそうじゃったな」

    魔法使い「……死んだらそれまでかのう」

    魔物「おいっ!?」

    チビ悪魔「いまだ、魔封じの杖!」 ムニョニョ

    魔法使い「うおっ」

    163 = 1 :

    魔法使い「しもうた!」

    チビ悪魔「ウケケ、ざまーみろっ」

    魔物「でかしたっ」

    魔法使い「うーむ、極大爆発呪文で酒場ごと吹っ飛ばすつもりじゃったのに……」

    チビ悪魔「で、デストロイヤージジイめ」

    魔法使い「こうなったら仕方があるまい。ほれ、爆弾石」コロコロ……

    魔物「うわあっ」

    魔法使い「今のうちに逃げるわい」


    魔法使いは逃げ出した!


    魔物「……? 何も、起きない」

    マスター「……これ、ただの石ころですよ」

    魔物「あ、あのジジイ!」

    チビ悪魔「みんな追えーっ、逃がすなーっ!」

    164 = 1 :

    さかのぼって、宿屋。

    勇者「……」グー、グー

    夢魔A「寝てるな」

    夢魔B「寝てますな」

    夢魔A「睡眠を誘発する香というのはよく効くな」

    夢魔B「人間に開発させた甲斐がありますな」

    夢魔A「それで、えーと、勇者にはどんな夢がいいんだったか?」

    夢魔B「悪夢ですな。とにかく、精神攻撃をして動きを鈍らせると」

    夢魔A「で、他の魔物は?」

    夢魔B「町に待機させております。なんでも、ジジイが一人、酒場に行ってしまったそうで」

    夢魔A「ふーむ、全員就寝していればよかったがな」

    夢魔B「一応、勝手に動かないように釘でも指しておきますか」

    夢魔A「どうせ言うことを聞くまい……全く、戦闘に向いてないからと、我々を軽視しおって」

    夢魔B「悪夢には睡眠呪文が必要ですからな……早いところ、勇者にかけてしまいましょう」

    夢魔A「うむ。他の二人はすでに夢に囚われおったしな」

    夢魔A「さあ、勇者よ……悪夢にうなされ、いっそ二度と還らぬほど、苦しむがよい……」

    165 = 1 :

    夢。

    勇者『やあっ! たあっ!』

    勇者『……』

    勇者『とうっ! てやっ!』

    勇者『はあ、はあ』

    勇者『どうした、勇者。もうおしまいか』

    勇者『お、お父さん……休ませて……』

    勇者『駄目だ。まだ日が高いし、ノルマも達成していない』

    勇者『で、でも……』

    勇者『勇者よ。できないことを私は言っていない』

    勇者『……』

    勇者『お前がたとえどんな道を進もうと、この先の世界は力が必要になる』

    勇者『でも、僕はそんなに強くないよ……』

    勇者『なぜそんなことを言う?』

    166 = 1 :

    勇者『こないだの剣術大会、負けちゃったもん……』

    勇者『そういうこともある。あれは目安の一つだ』

    勇者『ま、魔法試験だって、真ん中くらいだったし』

    勇者『私も魔法が得意とは言えない』

    勇者『じゃあ、なんでこんなことさせるの? 僕よりもっと強い人ががんばればいいじゃない!』

    勇者『それは違う。これからは誰もが強くならなければ』

    勇者『そんなの、わかんないよ!』

    勇者『別に人々を救うような人間になれとは言っていない』

    勇者『たとえば、母さんを守る時、力があれば……』

    勇者『お、お父さんがやればいいじゃない』

    勇者『……』

    勇者『お父さんが強いんだから、僕がやらなくても』

    勇者『私がいなくなったらどうする?』

    勇者『え?』

    167 = 1 :

    勇者『私がいなくなったら、お前はどうするのだ』

    勇者『母さんが殺されそうになっても、震えてじっとしているのか』

    勇者『……』

    勇者『勇者よ。お前が救いたいと思った時、その力を手にしているとは限らないのだ』

    勇者『心に見合った力を手にしていなければ、たとえ勇気を起こしても、ただの無謀にしかならない』

    勇者『分かるか、強くならなければ!』

    勇者『それは、お父さんが強いからでしょ』

    勇者『強いから、そんなことが言えるんだ』

    勇者『……』

    勇者『僕は弱いんだ、お父さんより、周りのみんなより、ずっと弱い……』

    勇者『お母さんなんか守りたくないよ……誰かを助けたいなんて、思えないよ……』

    勇者『何を言ってるんだ!』ガシッ

    勇者『うっ』

    168 = 1 :

    勇者『勇者、お前は……!』

    勇者『ほ、ら……振り払う、ことも、できな……』

    勇者『馬鹿なことを……! 大切な人を守れない悔しさを、お前は分からんのかっ!』

    勇者『うああ、やめて……助けて……』

    勇者『あなた! 何しているの!』


    勇者「うぐ、ぐぐぐぐ……」

    夢魔A「効いてる、効いてる」

    夢魔B「このまま目が覚めなければよいのですが」

    夢魔A「しかし、どうやら親父の夢を見ているようだな」

    夢魔B「あなたのお父様も、厳しい方でしたからな。こういう悪夢に心当たりは」

    夢魔A「うわー、やめてくれ」


    ――どおぉん!


    夢魔A「な、なんだっ!」

    夢魔B「……外で戦闘が始まっているようですな」

    夢魔A「なんだと!?」

    169 = 1 :

    夢魔A「くそー、勝手に動くなって言っただろうに!」

    夢魔B「どうなさいますか」

    夢魔A「中止するわけにもいかんが……」

    夢魔B「別室の人間どももいますよ」

    夢魔A「ど、どうしよう」

    夢魔B「指揮権はあなたにあるのですよ」

    夢魔A「ええい、こうなったら、まず勇者の夢をめちゃくちゃな感じに……」


    勇者『あなた! 何しているの!』

    勇者『お前は分からんのかっ!』

    勇者『ぐうっ……』

    勇者『あなた!』

    勇者『強くならなければ!』

    子ども『勇者って言われてるけど、大したことねぇな、こいつ』

    勇者『ううう……』

    170 = 1 :

    子ども『だっせ、悔しかったら一本取ってみろよ』

    戦士『ほれみろ、七光りだ』

    魔法使い『甘いのう、勇者』

    武闘家『血筋って得だよな~』

    戦士『バカ、勇者!』

    勇者『誰かを助けたいなんて思えない』

    勇者『ああああ』

    勇者『僕は弱いんだ』

    勇者『うあああああ』

    子ども『おら、魔法使ってみろよ』

    勇者『もっと強い人が』

    勇者『いやだ、いやだ、いやだ』


    僧侶『……大丈夫です』

    171 = 1 :

    僧侶『大丈夫ですよ! 私達なら!』


    勇者『あ』


    戦士『私を信用してないのかっ!』


    勇者『あ、あ』


    魔法使い『お前さんは、親父よりはマシだな』


    勇者『うあ』


    勇者『勇者、逃げなさい!』


    勇者『』


    ――勇者は跳ね起きた!

    172 = 1 :

    夢魔A「うおっ!?」

    夢魔B「な、なに!」

    勇者「ううううううううううう」

    夢魔A「ちょっと待て! ストップ!」

    夢魔B「に、逃げますぞ!」

    勇者「ああああああああああっ! 助ける、俺が助けるんだああああああああああ!」


    勇者は剣を掴むと、魔物に襲いかかった!

    勇者の攻撃!


    夢魔A「ぐわあっ!」

    夢魔B「くっ、こ、こちらです、早く!」


    勇者の攻撃!

    勇者の攻撃!
    勇者の攻撃!
    勇者の攻撃!

    173 = 1 :

    別室。

    戦士「……お兄ちゃん」

    戦士「どこにもいかないでよぉ……」

    僧侶「うう……ごめんなさい……」

    僧侶「もうしませんから……許してください」


    勇者の攻撃! 扉が音を立てて吹き飛んだ!


    戦・僧「!?」

    勇者「うああああああああっ!」

    勇者「助けるんだ! 俺がぁあっ!」ダダダッ

    戦士「え、え、なに」

    僧侶「ふぁっ!?」

    戦士「なんだ、頭が、痺れてる……」

    僧侶「ああ、眠気、覚ましぃ、呪文っ!」パッ


    戦士、僧侶、そして娘の眠気が吹き飛んだ!

    174 = 1 :

    戦士「どうしたっ!? 何があった!?」

    僧侶「わ、分かりません……勇者さまがいたような……」

    戦士「おい、娘!」

    「あ、あ……」

    戦士「何があったのか分かるか!」

    「ご、ごめんなさい……戦士様、僧侶様……」

    戦士「謝るな! 何があったのかだけ言ってくれ!」

    「この町は、冒険者を捕らえる、罠なんです……」

    僧侶「ええっ!?」

    戦士「……ああ、そういうことかっ。くそっ、油断した!」

    「ごめんなさい、町には手出ししないって、ずっと言ってたのに……」

    「今回は、入り込んで、逆らえなくて……」

    僧侶「い、いいんですよ、それは」

    戦士「おい、町中で戦闘しているぞ!」

    「あ、ああ! そんな!」

    175 = 1 :

    僧侶「加勢しなくては!」

    戦士「武器を持って来い! まさか奪われてないだろうな!?」

    僧侶「だ、大丈夫です!」

    戦士「縛られもしてない……なめられていたのか、自信があったのか……」

    僧侶「あ! 魔法使いさんが!」

    戦士「くそっ、おい、娘!」

    「はい、はいぃ~」

    戦士「いいから隠れていろ! 宿が襲われそうなら、全力で逃げろ!」

    「わ、私、皆さんを……陥れようとぉ」

    僧侶「今は罪を問いません! とにかく隠れていてください!」

    「わ、私」

    戦士「急ぐぞ、僧侶!」

    僧侶「はい! いいですか、気に病む前に、ちゃんと生き延びるんですよっ」

    「は、はい」

    176 = 1 :

    今夜はここまで。あともう一回くらいで終わらせたい。

    どう考えても人間同士で足を引っ張ってる件について。

    177 :


    とても人間らしくて良いと思うけどな

    178 :

    人間なんてそんなもんだろ

    179 :

    おっつん

    180 :

    あと一回で完結なのか、魔王に飼われた町編が終わりなのか…?(゚Д゚)

    182 :

    魔王はロマサガ好きみたいだな

    184 :

    出来れば今日中に投下したい。
    それにしても、どうして書くたびに根暗シナリオになってしまうのか……

    185 :

    深くていいんじゃない?

    186 :

    広場。

    戦士「くそっ、多くはないが、かなり入り込んでるな!」

    僧侶「戦士さん、あっちに勇者様が!」

    戦士「う!」


    勇者の攻撃! 魔物は反撃を繰り出した!
    勇者の攻撃! 勇者の攻撃! 勇者の攻撃!


    魔物「うおおおお! 怯むなああああ!」

    チビ悪魔「数では勝ってるんだぞー!」


    勇者の攻撃! 勇者の攻撃!


    僧侶「ち、血だらけですよ!?」

    戦士「まずい、回復を忘れてるのか」

    僧侶「私、行きます!」

    戦士「おい待て! ……ジジイはどうしたんだ?」

    僧侶「えっと……ああ!」

    187 = 1 :

    僧侶「どうしましょう!? 勇者様の足元……!」

    戦士「あっちもぶっ倒れてるかっ、急がないとまずいな!」

    戦士「僧侶! 私が引き付けるから、お前は左から回り込め!」

    僧侶「はい!!」タタタッ

    戦士「……」

    戦士「こちとら腕を見込まれて雇われた傭兵だ……」

    戦士「腕の見せ所ってのはこういうときなんだろうな」


    戦士は大剣を構えて、魔物に襲いかかった!

    魔物は驚き戸惑っている!


    戦士「うらあっ!」ギイィン!

    戦士「よーし、こっちだ! こっちにも相手がいるぞ!!」

    魔物「な、なんだと……夢魔のやつらは何をやっていたのだ!」

    戦士「夢? ……やっぱりあの夢は連中の仕業か、くそっ」

    戦士「どうした!? 魔王の配下ってのはこんなに弱くていいのかっ!」

    188 = 1 :

    チビ悪魔「……まずいっすよ」

    魔物「どうした!?」

    チビ悪魔「町の連中も抵抗するような素振りを見せてるっす」

    魔物「ち……恩知らずな連中め!」

    魔物「どうせなら、やつらを取り押さえる壁にでもなれば役に立つものを!」

    チビ悪魔「どうしましょう」

    魔物「夢魔の連中も失敗したのに、これ以上戦えるかっ」

    チビ悪魔「ああ~、失敗したらボーナスなしだぁ」

    魔物「それだけで済みゃいいがな、くそっくそっ」

    魔物「撤退するぞ、撤退ー!」

    チビ悪魔「逃げるぞー! 散れ散れー!」


    ドドドドドド……

    189 = 1 :

    戦士「はあーっ、はあーっ」

    僧侶「戦士さぁん!」

    戦士「……ああ、僧侶。意外と撤退が早かったな」

    僧侶「多分、魔法使いさんと勇者様が、押していたから」

    戦士「そうだ、勇者は? 魔法使いは?」

    僧侶「そ、それが……」


    勇者の攻撃! 勇者の攻撃!

    勇者は誰も居ないところで剣を振っている……


    戦士「勇者……!」

    僧侶「あ、危なくて、私じゃ」

    戦士「ちっ、バカやろっ」


    戦士の攻撃! 勇者の剣を受け止めた!

    190 = 1 :


    戦士「勇者! もう魔物はいないぞ!」

    勇者「うわああああああ」

    戦士「落ち着け、どうどう、大丈夫だ!」

    勇者「うぐぐぐぐぐ……」

    戦士「よし、ほら、動くんじゃない」

    戦士「ぎゅーってしてやるから、大丈夫だ、血まみれなんか怖くない……」

    勇者「ううううぅぅ」

    戦士「……よしよし」

    戦士「よくやったな。お前はよくやったよ」ぎゅーっ

    勇者「うう……」

    戦士「……」

    僧侶「あのう」

    戦士「な、なんだ!?」

    191 = 1 :

    僧侶「魔法使いさんが、危険な状態なんです!」

    戦士「なんだって」

    僧侶「すでに魔物の攻撃をかなり受けていたみたいで……」

    戦士「どれ……」

    僧侶「回復呪文はかけたんですが、すでに流れた出血が」

    戦士「うっ……! もろに受けたな、これは」

    戦士「ジジイが、一人で戦おうとするから」

    僧侶「ど、どうしましょう、私一人の回復呪文じゃ」

    戦士「とにかく、宿に運ぼう」

    僧侶「大丈夫でしょうか」

    戦士「まさか、町の近くでテントを張って野宿するわけにもいくまい」

    僧侶「でも、この町の人は」

    戦士「……私が見張りをやる。とにかく多少なりとも安静にできる場所がいい」

    192 = 1 :

    宿屋。

    「み、みなさん」

    戦士「もう、魔物はいないぞ」

    「そ、そうですかぁ~……」

    僧侶「あの、宿に怪我人を運ばせてもらっても良いですか!? 一刻を争いますので!」

    「は、はいぃ」

    僧侶「回復呪文じゃ足りません、水と、包帯、なければシーツを貸してください!」

    「わ、わ、わかりましたぁ!」パタパタ

    戦士「僧侶」

    僧侶「戦士さんは、二人をベッドまで運んでくださいね!」

    戦士「分かった。他に何か必要なものは」

    僧侶「魔法使いさんが危険です、考えたんですが、蘇生呪文を使いますので」

    僧侶「ただし、成功率が低いので、その……」

    戦士「分かった。魔法水を持ってこよう」

    僧侶「お願いします!」

    193 = 1 :

    そして、夜が明けた――

    194 = 1 :

    魔法使い「……」

    僧侶「クー、スー」

    戦士「ヌグ、ぐぅぅぅ」

    魔法使い「……」

    「……スピー」

    魔法使い「……なんじゃ、まだ生きとったか」

    魔法使い「やはり女の子に囲まれて起きる目覚めは良いのう」

    魔法使い「……」

    魔法使い「勇者がおらんようじゃな」

    戦士「ん……」

    魔法使い「おはようさん」

    戦士「んー……あ、お、まえ」

    魔法使い「よだれついとるぞ」

    戦士「ジジイ! 目が覚めたんなら言え!」

    魔法使い「今、起きたばかりじゃわい。うるさいのう」

    195 = 1 :

    戦士「痛みはあるか」

    魔法使い「まったく動く気になれん。口は回るがの」

    魔法使い「ああー、女の子の尻を触ったら回復するかもしれんのう」

    戦士「そんだけ喋れるなら、大丈夫だろう」

    魔法使い「ほっほ」

    戦士「……僧侶に感謝しろよ。慣れない蘇生呪文をかけたんだから」

    魔法使い「老い先短いジジイにありがたいことじゃ」

    戦士「……」

    魔法使い「すまんな。本気で恩に着る」

    戦士「ちゃんと僧侶にも言えよ」

    魔法使い「わかっとるわかっとる」

    魔法使い「で、勇者は?」

    戦士「……」

    196 = 1 :

    戦士「向こうの端っこのベッドにいる」

    魔法使い「なに、あんな隅にいたんかい」

    魔法使い「おうい、勇者よ。昨日は助かったわい」

    勇者「……」ガタガタガタ

    魔法使い「……なんじゃ?」

    戦士「いや、傷は決して浅くはなかったが、回復呪文も効いたし……」

    戦士「ただ、夜中からずっとそうして震えているんだ……」

    197 = 1 :

    僧侶「……あ、お、じいさん」

    魔法使い「おう、僧侶ちゃん。昨日は頑張ったみたいじゃの」

    僧侶「いえ、私は……不覚を取って眠らされてしまいましたし」

    戦士「うっ、それは、私も……」

    魔法使い「情けないのう」

    戦士「そういうお前も、苦戦していたじゃないか」

    魔法使い「うっかり魔封じ食らったんじゃ。テヘペロ」

    戦士「ふん! 魔王の居城も近いのに、油断し過ぎていた」

    僧侶「うう……面目ないです……」

    魔法使い「さて、ここが魔物を呼び込む町とわかれば、とっととおさらばしたいところじゃがな……」

    戦士「……勇者!」

    勇者「……」ガタガタガタ

    魔法使い「どうしたっちゅうんじゃい」

    僧侶「そ、それがですねぇ」

    198 = 1 :

    魔法使い「なるほど。夢魔に悪夢を見せられたと」

    僧侶「わ、私は、皆さんに置いてかれる夢を見まして」

    戦士「……」

    魔法使い「戦士ちゃんは何を見せられたのかのう」

    戦士「覚えてない!」

    魔法使い「じゃが、勇者があんな振動物になったのも、その夢のせいじゃろ」

    魔法使い「それぞれどんなものを見せられたか、知らんと」

    戦士「わ、笑うなよ」

    魔法使い「はよ」

    戦士「……兄に」

    魔法使い「ふむふむ」

    戦士「兄に突き放される夢だ! はい、言ったぞ!」

    魔法使い「戦士はブラコンだったんじゃな」

    戦士「うるさい!」

    199 = 1 :

    僧侶「あの……すみません、私、さっきのは嘘でして」

    魔法使い「ほう?」

    戦士「な、なんだと。聖職者のくせに」

    僧侶「うっ、す、すみません……」

    魔法使い「はよはよ」

    僧侶「あああの、この事は何度も神に告白したことなのですが、人に話したことはなくてですね」

    戦士「……言い難いことなのか」

    僧侶「……すー、はー」

    僧侶「そ、うです」

    僧侶「私、小さい頃から修道院にいまして……」

    戦士「うん」

    僧侶「……」

    僧侶「よくいじめてきた子を、町の外に出た時、置き去りにしたんです……」

    200 = 1 :

    魔法使い「なるほど」

    戦士「えっと……それが、悪夢なのか?」

    僧侶「……」

    僧侶「それで、そのことでこっぴどく叱られましてね!」

    僧侶「私、もう、世界を救うような人間にならなきゃ、もうこれはダメなんじゃないかっていう!」

    僧侶「その、叱られてる時の悪夢が、わーって!」

    魔法使い「分かった分かった。十分じゃ」

    僧侶「そ、そうですか?」

    魔法使い「要するに、トラウマになっている過去の出来事を、悪夢として呼び起こされたんじゃな」

    魔法使い「勇者の場合は、それが極端に操られたに違いない。だから、爆発した」

    戦士「……それで、あんな風に暴走したのか」

    僧侶「すごかったですよね……」

    魔法使い「その後遺症がひどいんじゃろう」


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