元スレ勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな……」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
151 = 1 :
宿屋、風呂。
僧侶「んー、気持ちいいー、っていうか、お風呂広い!」
戦士「そうだな」
僧侶「もう、戦士さん、どうしたんですか?」
戦士「いや、魔王に許された町っていうのもな」
僧侶「正直、信じられません……」
戦士「どうかな。魔王だって、人間を絶滅させるのが目的ではあるまい」
僧侶「じゃ、じゃあ、その、こうやって人間を服従……!」
戦士「本人たちは命を助けられて喜んでいるんじゃないか」
僧侶「そんなこと……あ、実は脅されてたり……!」
戦士「脅されていようが、生かされていようが、命をかけて抵抗するにはそれなりに理由がいる」
戦士「まして、それが自発的に服従しているとなれば、厄介のきわみだ」
僧侶「でも、実際には魔物に殺されている人も大勢います!」
戦士「どうだろう。抵抗するからやられるんだ、と考えているかもしれない」
僧侶「それに、全部の国を攻め落としたら、牙をむくのかも……」
戦士「……今の生活には関係がない、と思っているんだろう」
152 = 1 :
僧侶「そんなぁ……」
戦士「まあ、私達にとっても、そういう態度なら、利用するだけさせてもらうのでいいさ」
僧侶「な、そんなこと!」
戦士「おそらく、ここが最後の補給地だ。いざこざを起こしても仕方があるまい」
戦士「それに、魔物が冒険者との接触を禁じていないのも、魔王側がよほど自信があるということだろう」
戦士(その方が好都合だがな)
僧侶「でも、ひどすぎます! 魔物に襲われた村もあるのに!」
戦士「ふうーっ」
僧侶「戦士さん!」
戦士「自主的に生贄を捧げてる村だってあったんだろう。人間もひどい奴はひどいもんさ」
僧侶「そ、それは……」
戦士「それより、体を洗ってもいいかい?」
僧侶「むう~っ!」
153 = 1 :
ザバーッ。
僧侶「……うーん」
戦士「……なんだ?」
僧侶「本当だったらここで、『わあ~、戦士さんの肌って綺麗ですー!』とか『戦士さんってやっぱりグラマーなんですねー!』とか」
戦士「傷だらけだろう?」
僧侶「そうですねぇ、やっぱり、前線で戦ってるから……」
戦士「ああ、まあな。それほど胸も大きいわけじゃないし」
僧侶「おっぱいというより大胸筋ですもんねぇ」ニコニコ
戦士「……」
僧侶「あ、disってるわけじゃないんですよ!?」
戦士「まあ、僧侶もあまり無いものな、おっぱい」
僧侶「あ、ありますよ!」
戦士「幼児体型とは言わんが……」
僧侶「ななななに言ってるんですかー!」
僧侶「私は、その、ちょっと小さい頃、栄養不良でぇ!」
154 = 1 :
宿、女性部屋。
戦士「ん……?」
娘「こんばんはぁ~」
僧侶「えっと、あ、マッサージの方ですか?」
娘「そうですぅ~」
戦士「私は別にいい。体を見られたくもないし」
娘「え、え、でも……」
僧侶「あ、じゃあ、私が受けますよ! お願いしまーす!」
娘「本当にいいんですかぁ~?」
戦士「……」
娘「じゃあ、せめてこの安眠のお香でもぉ……」
戦士「ふーっ」
娘「あ、あのう……」グスッ
僧侶「別にいいんですよぉ、ぶっきらぼうですけど、優しいんですから」
娘「そ、そうですか~」
155 = 1 :
僧侶「ん、んー」
娘「どうですかぁ~、気持ちいいですかぁ~」
僧侶「あー、う、ん、んー」
僧侶「ふあ……」
僧侶(眠くなってきちゃった……)
娘「眠くなったら、そのまま寝ちゃってもいいですよぉ~」チラッ
戦士「……」
娘「ちゃんと、ベッドまで運んで上げますからね~」
僧侶「ん、ふぁ、あー、あ、あー」
娘「……」
戦士「……」グーグー
娘「……大丈夫ですからね~、悪いことにはきっとならないですからね~」
僧侶「んー……」スースー
娘「……大丈夫ですから」
156 = 1 :
夢魔「……どうだ?」
娘「オッケーです、みんな寝ちゃいました~」ヒソヒソ
夢魔「……勇者の方は?」
娘「宿についたら着のままで寝ちゃったそうです~」ヒソヒソ
夢魔「よし、よくやった」
娘「あと、おじいさんは……」
夢魔「そこまで気を回さなくてもいい」
娘「あ、あのう……」
夢魔「なんだね?」
娘「……わ、悪いコトはしないですよねぇ~」
夢魔「疑うのか?」
娘「い、いえ、そんなことは……」
夢魔「もちろんだ。ちょっと夢を見てもらうだけだ」
娘「ほっ」
夢魔「だが、その前に、君も夢を見た方が良さそうだな」
娘「え」
157 = 1 :
酒場。
魔法使い「……ふむ」
バニー「ねぇ~、おじいさん、もっと飲みましょうよ」
魔法使い「確かにうまいが、わしゃ酒はあまり好きではなくてなー」
マスター「ははは、そうおっしゃらずに。どうです?」
魔法使い「女の子はかわいいのう。わしゃ、かわいい子は大好きじゃ」サワッ
バニー「やだー、おじいさんったら」
マスター「それにしても、この町はいい町でしょう」
魔法使い「そうかのう」
バニー「いいところよ~、魔王様も良くしてくれてるし」
魔法使い「ほっほ、バニーちゃんは魔王が好きなんじゃのう」
バニー「あ、えーと、そ、そうなのよ~」
魔法使い「わしは魔物も魔王も大嫌いでのう……すまんのう」
バニー「あ、あはは」
マスター「いやいや、おじいさんもいろいろあったんでしょう。わかりますよ」
魔法使い(本当に分かるのか?)
158 = 1 :
マスター「ですが、まあ、話せば分かるお方ですし、それこそ、人間の方がよほど……」
魔法使い「なんかあったのかい?」
マスター「ええ、まあ……こう、妻に濡れ衣を着せられましてね。生まれた町を追われることに……」
魔法使い「そりゃ、大変じゃったのう」
マスター「絶望して、魔物に食われてやろうと思っていたんですよ。そこでね」
魔法使い「そうかそうか」
バニー「人間なんか、最低よね」
魔法使い「バニーちゃんもなんかあったのかい?」
バニー「私は、その……」
魔法使い「ん? ん?」
バニー「なんでもない! 無理やり聞く人は嫌ーい」
魔法使い「ふーむ、突っぱねれば寂しそうな顔をするのにのう。ほんとにバニーちゃんじゃな」
バニー「な、なによ、もう!」
159 = 1 :
マスター「おじいさん、悪いことは言いませんよ」
魔法使い「んー?」
マスター「魔王退治なんて、無茶すぎますよ」
魔法使い「……」
マスター「まあ、その、もういい年でしょうし……お仲間にも言って」
魔法使い「ふーむ、そうじゃのう」
魔法使い「確かに、この町は栄えているな。魔王のおかげでな」
マスター「え、ええ……」
魔法使い「で、お前さんはここに来る冒険者たちに、みんなそういうことを言ってるのか」
マスター「ま、まあ、一応……何しろ、魔王退治に行った人は、誰も帰って来ませんでしたよ」
魔法使い「そうかそうか」
バニー「おじいさんも、無理しちゃダメだよ?」
魔法使い「バニーちゃんも優しいのう」
バニー「だ、だから……」
魔法使い「そうじゃのう」
160 = 1 :
魔法使い「そこまで言うなら、帰ろうかの」
マスター「え?」
魔法使い「どれ、お会計をしてくれんか」
マスター「えっと、え」
魔法使い「仲間に言わないといけないから、宿に帰るんじゃ」
魔法使い「ほれ、つり銭はいらんから」ジャラ
マスター「えっと……」
魔法使い「予想外みたいな顔をするでない。それとも、強引に引き止めるかい?」
バニー「お、おじいさん」
魔法使い「ふはははっ! 誰が薬を混ぜた酒なんかに引っかかるかよ」
魔法使い「心底説得するつもりなら、そんな下らんことをするもんじゃなかったな!」
マスター「あ……」
魔物「もういいぞ! 店主」
酒場に魔物が現れた!
161 = 1 :
キャー! ナニナニ、ドウシテマモノガ……
魔物「やはり、報告通り、ジジイが参謀役だったな」
魔法使い「ほうほう、なるほど、わしらのことを調べてあったというわけかい」ガタッ
マスター「ま、魔物の皆さん、こ、これは……」
バニー「あ、あの」
魔物「動くなジジイ! 動けばここにいる人間を殺すぞ!」
魔法使い「よもや、たった四人のために殺しにかかるとはな」
魔物「光栄だろう? さすがに塔や砦も落とされては、見過ごすわけにはいかなかったからな」
魔物「ほら、動くんじゃない!」
マスター「う、嘘だ……」
バニー「ど、どうして」
魔法使い「別に構わんぞ。殺しても」
マスバニ『!』
魔物「ほう」
162 = 1 :
魔法使い「親兄弟も、息子も友人も魔物に殺されたしの」
魔法使い「もちろん、一緒に逃げたお姉ちゃんたちも大体殺されたわ」
魔法使い「今更、少し知り合った連中を殺されてもどうってことはない」
魔物「貴様……それでも人間かっ!」
魔法使い「演技が下手じゃのう。まあ、そういうことでもええわい」
魔法使い「ジジイが一番恨みつらみが溜まっておるんじゃ。家族の仇を誰が忘れると?」
マスター「う、ぐ……」
魔法使い「うひゃひゃ、ほれ、爆発呪文」 どうっ!
バニー「きゃあっ!」
魔物「ま、待てっ、宿屋にいるお前の仲間がどうなってもいいのかっ!」
魔法使い「ほ……そういえばそうじゃったな」
魔法使い「……死んだらそれまでかのう」
魔物「おいっ!?」
チビ悪魔「いまだ、魔封じの杖!」 ムニョニョ
魔法使い「うおっ」
163 = 1 :
魔法使い「しもうた!」
チビ悪魔「ウケケ、ざまーみろっ」
魔物「でかしたっ」
魔法使い「うーむ、極大爆発呪文で酒場ごと吹っ飛ばすつもりじゃったのに……」
チビ悪魔「で、デストロイヤージジイめ」
魔法使い「こうなったら仕方があるまい。ほれ、爆弾石」コロコロ……
魔物「うわあっ」
魔法使い「今のうちに逃げるわい」
魔法使いは逃げ出した!
魔物「……? 何も、起きない」
マスター「……これ、ただの石ころですよ」
魔物「あ、あのジジイ!」
チビ悪魔「みんな追えーっ、逃がすなーっ!」
164 = 1 :
さかのぼって、宿屋。
勇者「……」グー、グー
夢魔A「寝てるな」
夢魔B「寝てますな」
夢魔A「睡眠を誘発する香というのはよく効くな」
夢魔B「人間に開発させた甲斐がありますな」
夢魔A「それで、えーと、勇者にはどんな夢がいいんだったか?」
夢魔B「悪夢ですな。とにかく、精神攻撃をして動きを鈍らせると」
夢魔A「で、他の魔物は?」
夢魔B「町に待機させております。なんでも、ジジイが一人、酒場に行ってしまったそうで」
夢魔A「ふーむ、全員就寝していればよかったがな」
夢魔B「一応、勝手に動かないように釘でも指しておきますか」
夢魔A「どうせ言うことを聞くまい……全く、戦闘に向いてないからと、我々を軽視しおって」
夢魔B「悪夢には睡眠呪文が必要ですからな……早いところ、勇者にかけてしまいましょう」
夢魔A「うむ。他の二人はすでに夢に囚われおったしな」
夢魔A「さあ、勇者よ……悪夢にうなされ、いっそ二度と還らぬほど、苦しむがよい……」
165 = 1 :
夢。
幼勇者『やあっ! たあっ!』
勇者父『……』
幼勇者『とうっ! てやっ!』
幼勇者『はあ、はあ』
勇者父『どうした、勇者。もうおしまいか』
幼勇者『お、お父さん……休ませて……』
勇者父『駄目だ。まだ日が高いし、ノルマも達成していない』
幼勇者『で、でも……』
勇者父『勇者よ。できないことを私は言っていない』
幼勇者『……』
勇者父『お前がたとえどんな道を進もうと、この先の世界は力が必要になる』
幼勇者『でも、僕はそんなに強くないよ……』
勇者父『なぜそんなことを言う?』
166 = 1 :
幼勇者『こないだの剣術大会、負けちゃったもん……』
勇者父『そういうこともある。あれは目安の一つだ』
幼勇者『ま、魔法試験だって、真ん中くらいだったし』
勇者父『私も魔法が得意とは言えない』
幼勇者『じゃあ、なんでこんなことさせるの? 僕よりもっと強い人ががんばればいいじゃない!』
勇者父『それは違う。これからは誰もが強くならなければ』
幼勇者『そんなの、わかんないよ!』
勇者父『別に人々を救うような人間になれとは言っていない』
勇者父『たとえば、母さんを守る時、力があれば……』
幼勇者『お、お父さんがやればいいじゃない』
勇者父『……』
幼勇者『お父さんが強いんだから、僕がやらなくても』
勇者父『私がいなくなったらどうする?』
幼勇者『え?』
167 = 1 :
勇者父『私がいなくなったら、お前はどうするのだ』
勇者父『母さんが殺されそうになっても、震えてじっとしているのか』
幼勇者『……』
勇者父『勇者よ。お前が救いたいと思った時、その力を手にしているとは限らないのだ』
勇者父『心に見合った力を手にしていなければ、たとえ勇気を起こしても、ただの無謀にしかならない』
勇者父『分かるか、強くならなければ!』
幼勇者『それは、お父さんが強いからでしょ』
幼勇者『強いから、そんなことが言えるんだ』
勇者父『……』
幼勇者『僕は弱いんだ、お父さんより、周りのみんなより、ずっと弱い……』
幼勇者『お母さんなんか守りたくないよ……誰かを助けたいなんて、思えないよ……』
勇者父『何を言ってるんだ!』ガシッ
幼勇者『うっ』
168 = 1 :
勇者父『勇者、お前は……!』
幼勇者『ほ、ら……振り払う、ことも、できな……』
勇者父『馬鹿なことを……! 大切な人を守れない悔しさを、お前は分からんのかっ!』
幼勇者『うああ、やめて……助けて……』
勇者母『あなた! 何しているの!』
勇者「うぐ、ぐぐぐぐ……」
夢魔A「効いてる、効いてる」
夢魔B「このまま目が覚めなければよいのですが」
夢魔A「しかし、どうやら親父の夢を見ているようだな」
夢魔B「あなたのお父様も、厳しい方でしたからな。こういう悪夢に心当たりは」
夢魔A「うわー、やめてくれ」
――どおぉん!
夢魔A「な、なんだっ!」
夢魔B「……外で戦闘が始まっているようですな」
夢魔A「なんだと!?」
169 = 1 :
夢魔A「くそー、勝手に動くなって言っただろうに!」
夢魔B「どうなさいますか」
夢魔A「中止するわけにもいかんが……」
夢魔B「別室の人間どももいますよ」
夢魔A「ど、どうしよう」
夢魔B「指揮権はあなたにあるのですよ」
夢魔A「ええい、こうなったら、まず勇者の夢をめちゃくちゃな感じに……」
勇者母『あなた! 何しているの!』
勇者父『お前は分からんのかっ!』
勇者『ぐうっ……』
勇者母『あなた!』
勇者父『強くならなければ!』
子ども『勇者って言われてるけど、大したことねぇな、こいつ』
勇者『ううう……』
170 = 1 :
子ども『だっせ、悔しかったら一本取ってみろよ』
男戦士『ほれみろ、七光りだ』
魔法使い『甘いのう、勇者』
武闘家『血筋って得だよな~』
戦士『バカ、勇者!』
幼勇者『誰かを助けたいなんて思えない』
勇者『ああああ』
幼勇者『僕は弱いんだ』
勇者『うあああああ』
子ども『おら、魔法使ってみろよ』
幼勇者『もっと強い人が』
勇者『いやだ、いやだ、いやだ』
僧侶『……大丈夫です』
171 = 1 :
僧侶『大丈夫ですよ! 私達なら!』
勇者『あ』
戦士『私を信用してないのかっ!』
勇者『あ、あ』
魔法使い『お前さんは、親父よりはマシだな』
勇者『うあ』
勇者母『勇者、逃げなさい!』
勇者『』
――勇者は跳ね起きた!
172 = 1 :
夢魔A「うおっ!?」
夢魔B「な、なに!」
勇者「ううううううううううう」
夢魔A「ちょっと待て! ストップ!」
夢魔B「に、逃げますぞ!」
勇者「ああああああああああっ! 助ける、俺が助けるんだああああああああああ!」
勇者は剣を掴むと、魔物に襲いかかった!
勇者の攻撃!
夢魔A「ぐわあっ!」
夢魔B「くっ、こ、こちらです、早く!」
勇者の攻撃!
勇者の攻撃!
勇者の攻撃!
勇者の攻撃!
173 = 1 :
別室。
戦士「……お兄ちゃん」
戦士「どこにもいかないでよぉ……」
僧侶「うう……ごめんなさい……」
僧侶「もうしませんから……許してください」
勇者の攻撃! 扉が音を立てて吹き飛んだ!
戦・僧「!?」
勇者「うああああああああっ!」
勇者「助けるんだ! 俺がぁあっ!」ダダダッ
戦士「え、え、なに」
僧侶「ふぁっ!?」
戦士「なんだ、頭が、痺れてる……」
僧侶「ああ、眠気、覚ましぃ、呪文っ!」パッ
戦士、僧侶、そして娘の眠気が吹き飛んだ!
174 = 1 :
戦士「どうしたっ!? 何があった!?」
僧侶「わ、分かりません……勇者さまがいたような……」
戦士「おい、娘!」
娘「あ、あ……」
戦士「何があったのか分かるか!」
娘「ご、ごめんなさい……戦士様、僧侶様……」
戦士「謝るな! 何があったのかだけ言ってくれ!」
娘「この町は、冒険者を捕らえる、罠なんです……」
僧侶「ええっ!?」
戦士「……ああ、そういうことかっ。くそっ、油断した!」
娘「ごめんなさい、町には手出ししないって、ずっと言ってたのに……」
娘「今回は、入り込んで、逆らえなくて……」
僧侶「い、いいんですよ、それは」
戦士「おい、町中で戦闘しているぞ!」
娘「あ、ああ! そんな!」
175 = 1 :
僧侶「加勢しなくては!」
戦士「武器を持って来い! まさか奪われてないだろうな!?」
僧侶「だ、大丈夫です!」
戦士「縛られもしてない……なめられていたのか、自信があったのか……」
僧侶「あ! 魔法使いさんが!」
戦士「くそっ、おい、娘!」
娘「はい、はいぃ~」
戦士「いいから隠れていろ! 宿が襲われそうなら、全力で逃げろ!」
娘「わ、私、皆さんを……陥れようとぉ」
僧侶「今は罪を問いません! とにかく隠れていてください!」
娘「わ、私」
戦士「急ぐぞ、僧侶!」
僧侶「はい! いいですか、気に病む前に、ちゃんと生き延びるんですよっ」
娘「は、はい」
176 = 1 :
今夜はここまで。あともう一回くらいで終わらせたい。
どう考えても人間同士で足を引っ張ってる件について。
177 :
乙
とても人間らしくて良いと思うけどな
178 :
人間なんてそんなもんだろ
乙
179 :
おっつん
180 :
あと一回で完結なのか、魔王に飼われた町編が終わりなのか…?(゚Д゚)
182 :
魔王はロマサガ好きみたいだな
184 :
出来れば今日中に投下したい。
それにしても、どうして書くたびに根暗シナリオになってしまうのか……
185 :
深くていいんじゃない?
186 :
広場。
戦士「くそっ、多くはないが、かなり入り込んでるな!」
僧侶「戦士さん、あっちに勇者様が!」
戦士「う!」
勇者の攻撃! 魔物は反撃を繰り出した!
勇者の攻撃! 勇者の攻撃! 勇者の攻撃!
魔物「うおおおお! 怯むなああああ!」
チビ悪魔「数では勝ってるんだぞー!」
勇者の攻撃! 勇者の攻撃!
僧侶「ち、血だらけですよ!?」
戦士「まずい、回復を忘れてるのか」
僧侶「私、行きます!」
戦士「おい待て! ……ジジイはどうしたんだ?」
僧侶「えっと……ああ!」
187 = 1 :
僧侶「どうしましょう!? 勇者様の足元……!」
戦士「あっちもぶっ倒れてるかっ、急がないとまずいな!」
戦士「僧侶! 私が引き付けるから、お前は左から回り込め!」
僧侶「はい!!」タタタッ
戦士「……」
戦士「こちとら腕を見込まれて雇われた傭兵だ……」
戦士「腕の見せ所ってのはこういうときなんだろうな」
戦士は大剣を構えて、魔物に襲いかかった!
魔物は驚き戸惑っている!
戦士「うらあっ!」ギイィン!
戦士「よーし、こっちだ! こっちにも相手がいるぞ!!」
魔物「な、なんだと……夢魔のやつらは何をやっていたのだ!」
戦士「夢? ……やっぱりあの夢は連中の仕業か、くそっ」
戦士「どうした!? 魔王の配下ってのはこんなに弱くていいのかっ!」
188 = 1 :
チビ悪魔「……まずいっすよ」
魔物「どうした!?」
チビ悪魔「町の連中も抵抗するような素振りを見せてるっす」
魔物「ち……恩知らずな連中め!」
魔物「どうせなら、やつらを取り押さえる壁にでもなれば役に立つものを!」
チビ悪魔「どうしましょう」
魔物「夢魔の連中も失敗したのに、これ以上戦えるかっ」
チビ悪魔「ああ~、失敗したらボーナスなしだぁ」
魔物「それだけで済みゃいいがな、くそっくそっ」
魔物「撤退するぞ、撤退ー!」
チビ悪魔「逃げるぞー! 散れ散れー!」
ドドドドドド……
189 = 1 :
戦士「はあーっ、はあーっ」
僧侶「戦士さぁん!」
戦士「……ああ、僧侶。意外と撤退が早かったな」
僧侶「多分、魔法使いさんと勇者様が、押していたから」
戦士「そうだ、勇者は? 魔法使いは?」
僧侶「そ、それが……」
勇者の攻撃! 勇者の攻撃!
勇者は誰も居ないところで剣を振っている……
戦士「勇者……!」
僧侶「あ、危なくて、私じゃ」
戦士「ちっ、バカやろっ」
戦士の攻撃! 勇者の剣を受け止めた!
190 = 1 :
戦士「勇者! もう魔物はいないぞ!」
勇者「うわああああああ」
戦士「落ち着け、どうどう、大丈夫だ!」
勇者「うぐぐぐぐぐ……」
戦士「よし、ほら、動くんじゃない」
戦士「ぎゅーってしてやるから、大丈夫だ、血まみれなんか怖くない……」
勇者「ううううぅぅ」
戦士「……よしよし」
戦士「よくやったな。お前はよくやったよ」ぎゅーっ
勇者「うう……」
戦士「……」
僧侶「あのう」
戦士「な、なんだ!?」
191 = 1 :
僧侶「魔法使いさんが、危険な状態なんです!」
戦士「なんだって」
僧侶「すでに魔物の攻撃をかなり受けていたみたいで……」
戦士「どれ……」
僧侶「回復呪文はかけたんですが、すでに流れた出血が」
戦士「うっ……! もろに受けたな、これは」
戦士「ジジイが、一人で戦おうとするから」
僧侶「ど、どうしましょう、私一人の回復呪文じゃ」
戦士「とにかく、宿に運ぼう」
僧侶「大丈夫でしょうか」
戦士「まさか、町の近くでテントを張って野宿するわけにもいくまい」
僧侶「でも、この町の人は」
戦士「……私が見張りをやる。とにかく多少なりとも安静にできる場所がいい」
192 = 1 :
宿屋。
娘「み、みなさん」
戦士「もう、魔物はいないぞ」
娘「そ、そうですかぁ~……」
僧侶「あの、宿に怪我人を運ばせてもらっても良いですか!? 一刻を争いますので!」
娘「は、はいぃ」
僧侶「回復呪文じゃ足りません、水と、包帯、なければシーツを貸してください!」
娘「わ、わ、わかりましたぁ!」パタパタ
戦士「僧侶」
僧侶「戦士さんは、二人をベッドまで運んでくださいね!」
戦士「分かった。他に何か必要なものは」
僧侶「魔法使いさんが危険です、考えたんですが、蘇生呪文を使いますので」
僧侶「ただし、成功率が低いので、その……」
戦士「分かった。魔法水を持ってこよう」
僧侶「お願いします!」
193 = 1 :
そして、夜が明けた――
194 = 1 :
魔法使い「……」
僧侶「クー、スー」
戦士「ヌグ、ぐぅぅぅ」
魔法使い「……」
娘「……スピー」
魔法使い「……なんじゃ、まだ生きとったか」
魔法使い「やはり女の子に囲まれて起きる目覚めは良いのう」
魔法使い「……」
魔法使い「勇者がおらんようじゃな」
戦士「ん……」
魔法使い「おはようさん」
戦士「んー……あ、お、まえ」
魔法使い「よだれついとるぞ」
戦士「ジジイ! 目が覚めたんなら言え!」
魔法使い「今、起きたばかりじゃわい。うるさいのう」
195 = 1 :
戦士「痛みはあるか」
魔法使い「まったく動く気になれん。口は回るがの」
魔法使い「ああー、女の子の尻を触ったら回復するかもしれんのう」
戦士「そんだけ喋れるなら、大丈夫だろう」
魔法使い「ほっほ」
戦士「……僧侶に感謝しろよ。慣れない蘇生呪文をかけたんだから」
魔法使い「老い先短いジジイにありがたいことじゃ」
戦士「……」
魔法使い「すまんな。本気で恩に着る」
戦士「ちゃんと僧侶にも言えよ」
魔法使い「わかっとるわかっとる」
魔法使い「で、勇者は?」
戦士「……」
196 = 1 :
戦士「向こうの端っこのベッドにいる」
魔法使い「なに、あんな隅にいたんかい」
魔法使い「おうい、勇者よ。昨日は助かったわい」
勇者「……」ガタガタガタ
魔法使い「……なんじゃ?」
戦士「いや、傷は決して浅くはなかったが、回復呪文も効いたし……」
戦士「ただ、夜中からずっとそうして震えているんだ……」
197 = 1 :
僧侶「……あ、お、じいさん」
魔法使い「おう、僧侶ちゃん。昨日は頑張ったみたいじゃの」
僧侶「いえ、私は……不覚を取って眠らされてしまいましたし」
戦士「うっ、それは、私も……」
魔法使い「情けないのう」
戦士「そういうお前も、苦戦していたじゃないか」
魔法使い「うっかり魔封じ食らったんじゃ。テヘペロ」
戦士「ふん! 魔王の居城も近いのに、油断し過ぎていた」
僧侶「うう……面目ないです……」
魔法使い「さて、ここが魔物を呼び込む町とわかれば、とっととおさらばしたいところじゃがな……」
戦士「……勇者!」
勇者「……」ガタガタガタ
魔法使い「どうしたっちゅうんじゃい」
僧侶「そ、それがですねぇ」
198 = 1 :
魔法使い「なるほど。夢魔に悪夢を見せられたと」
僧侶「わ、私は、皆さんに置いてかれる夢を見まして」
戦士「……」
魔法使い「戦士ちゃんは何を見せられたのかのう」
戦士「覚えてない!」
魔法使い「じゃが、勇者があんな振動物になったのも、その夢のせいじゃろ」
魔法使い「それぞれどんなものを見せられたか、知らんと」
戦士「わ、笑うなよ」
魔法使い「はよ」
戦士「……兄に」
魔法使い「ふむふむ」
戦士「兄に突き放される夢だ! はい、言ったぞ!」
魔法使い「戦士はブラコンだったんじゃな」
戦士「うるさい!」
199 = 1 :
僧侶「あの……すみません、私、さっきのは嘘でして」
魔法使い「ほう?」
戦士「な、なんだと。聖職者のくせに」
僧侶「うっ、す、すみません……」
魔法使い「はよはよ」
僧侶「あああの、この事は何度も神に告白したことなのですが、人に話したことはなくてですね」
戦士「……言い難いことなのか」
僧侶「……すー、はー」
僧侶「そ、うです」
僧侶「私、小さい頃から修道院にいまして……」
戦士「うん」
僧侶「……」
僧侶「よくいじめてきた子を、町の外に出た時、置き去りにしたんです……」
200 = 1 :
魔法使い「なるほど」
戦士「えっと……それが、悪夢なのか?」
僧侶「……」
僧侶「それで、そのことでこっぴどく叱られましてね!」
僧侶「私、もう、世界を救うような人間にならなきゃ、もうこれはダメなんじゃないかっていう!」
僧侶「その、叱られてる時の悪夢が、わーって!」
魔法使い「分かった分かった。十分じゃ」
僧侶「そ、そうですか?」
魔法使い「要するに、トラウマになっている過去の出来事を、悪夢として呼び起こされたんじゃな」
魔法使い「勇者の場合は、それが極端に操られたに違いない。だから、爆発した」
戦士「……それで、あんな風に暴走したのか」
僧侶「すごかったですよね……」
魔法使い「その後遺症がひどいんじゃろう」
みんなの評価 : ★
類似してるかもしれないスレッド
- 勇者「パーティーにまともな奴がいない……」 (1001) - [62%] - 2012/2/12 4:30 ★
- 勇者「ポーションについて聞きたいんだけどさ」 (92) - [51%] - 2022/5/30 16:00
- 勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」 (670) - [50%] - 2013/11/13 22:45 ★
- 勇者「ハーレム言うなって」魔法使い「2だよっ!」 (1001) - [46%] - 2012/2/27 20:15 ★★
- 久「ロッカーの中で」京太郎「襲わないから」 (617) - [44%] - 2013/6/14 15:00 ★
- 苗木「ゲームをしようよ。闇のゲームをね……」 (573) - [44%] - 2013/10/25 14:00 ☆
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について