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    元スレ勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな……」

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    51 = 1 :

    盗賊のアジト。

    戦士「はあっ! はあっ! くそ、すばしっこい連中だ!」

    勇者「戦士! 俺が追い込むから、息を整えておけ!」ダダダ

    戦士「すまない!」

    魔法使い「わしもー、ゆっくりいくわー」

    僧侶「勇者様! こちらですー!」

    勇者「おう! いま行く!」

    戦士(くっそ! 鎧が重い)

    戦士「……はぁー、はぁー」

    戦士(勇者、半分くらい荷物背負ってるのに……)

    魔法使い「ほれ、防具破壊呪文の準備でもしておくから」

    戦士「ああ、分かった」

    52 = 1 :

    勇者「戦士ー! そっち行ったぞ!」

    戦士「!」

    魔法使い「ほれ、柔くなーれ」 ミニョニョ

    盗賊A「うわっ、なんだ!?」

    戦士「敵だよ!」ぶん


    戦士は大きく息を吸い込んで、斧を振り下ろした!

    盗賊Aに大きなダメージ!


    盗賊A「」

    戦士「当たれば逃げられないだろ」

    盗賊B「くそぅ、このメスゴリラがっ!」ヒュバッ

    戦士「ちっ」

    勇者「戦士!」


    盗賊Bの攻撃! 勇者は戦士をかばった!

    53 = 1 :

    戦士「バカ、勇者!」


    戦士の攻撃! 盗賊Bをやっつけた!


    勇者「てて、軽く斬られたか……」

    戦士「バカ! なんで割り込んできた!」

    勇者「いや、戦士が……」

    戦士「あの程度なら受けきれる。私を信用してないのか!」

    勇者「でも、攻撃が崩されると思ったからな……」

    僧侶「勇者様ー! お怪我は……ありますぅー!」

    勇者「あ、ああ。このくらいは大丈夫だよ」

    僧侶「ダメですもう、無茶ばっかりして!」

    勇者「俺を信用してないのか」

    僧侶「勇者様は斬られすぎです!」

    戦士「ホントだよ、バカ」ゴン

    勇者「いてぇ」

    54 = 1 :

    魔法使い「冠は回収したぞい」

    勇者「おー、ありがとう」

    僧侶「もう、動かないでください!」

    戦士「……まったく」

    戦士(そういや、あの時、割り込んできたってことは、一瞬のうちに近づいてきたってことか?)

    勇者「親分もぶちのめしたか」

    親分「み、見逃してくれぇ……」

    勇者「……」

    魔法使い「ま、そう簡単に反省するやつらじゃなかろう」

    戦士「だろうな」

    僧侶「神に代わって裁きを下すべきです!」

    勇者「いや、なんか利用できないかな」

    戦士「……本気か?」

    55 = 1 :

    勇者「……よし、お前ら、その偵察能力を生かして、北の魔物の砦の情報を探ってきてくれ」

    親分「ほ、本当にそれをやれば見逃してくれるのか?」

    戦士「おい、勇者。解放したら確実にトンズラするぞ、こいつら」ヒソヒソ

    勇者「まあ、俺もそう思うけど、別にリンチするほど恨んでるわけじゃないし」ヒソヒソ

    戦士「だったら!」

    勇者「でも、ここでぶった切っても寝覚めが悪いし」

    魔法使い「ほいほい、それじゃあ、ジジイが約束の証にゆびきりげんまんしてやろうかのう」

    親分「へ、へへ、そうだな」(ちょろいな……)

    魔法使い「うむ。裏切ったら死ぬ呪いじゃよー」ユビキリ

    親分「ぶおっ!?」

    魔法使い「今度罪を犯そうとしたら、陰部が死ぬほど痛くなる呪いもかけておくかの」ゲンマン

    盗賊たち「ひぎゃああ!」

    勇者「お、おう」

    56 = 1 :

    城。

    国王「まさか本当に冠を取り戻してくるとは……あっぱれじゃ!」

    勇者「はい」

    国王「お主はやはり、父の血を受け継ぐ、まことの勇者じゃな!」

    勇者「仲間のおかげですよ。まあ、戦士とか強いですからね」

    国王「ほう?」

    戦士「どうも」

    国王「ふーむ、女だてらに剣を振るうのであるか」

    戦士「うるさい」

    勇者「あ、あー、よく知りませんが、戦士にはドラゴン殺しの異名が」

    国王「な、なんだと!?」

    戦士(それは一人でやったわけじゃないんだけど……)

    57 = 1 :

    勇者「まあ、とにかくですね、最初に言ったとおり、報酬を」

    国王「う、うむ。確か、金で三十万だったな……」

    勇者「現実的な数字だと思いますが」

    戦士(あの時は交渉がガチすぎてちょっと引いたわ)

    魔法使い(お金の話のほうがいきいきしとったのう)

    僧侶(勇者様は商人の素質のほうがあるんじゃないでしょうか……)

    国王「実は、だな。その冠が金三十万くらいの価値で」

    勇者「嘘ですね」

    国王「ぐぬっ」

    勇者「大方財務担当からあれこれ言われたんでしょうが、そうやって約束を破る王が信頼されますかね」

    国王「ぐぬぬっ」

    勇者「それと、冠は王権の象徴ですが、本当にこれを頂いてもいいんですか?」

    勇者「私は自国に持ち帰って、そっちの王様に渡すこともできますが」

    国王「ぬぐぐぐ」

    三人(引くわ)

    58 = 1 :

    国王「で、では、宝物庫のだな……」

    戦士「!」

    勇者「再交渉はしませんよ」

    戦士「勇者……」クイ

    勇者「なんだよ」

    戦士「この城に、伝え継がれている魔剣があるはずなんだが」

    勇者「断る」

    戦士「な、なんでだよ」

    勇者「一度決めた約束を決め直すには、それなりの理由が必要だからだよ」

    戦士「それなりの理由だろ」

    勇者「欲しいなら最初から言うべきだろ」

    戦士「勇者、新しい武器!」クイクイ

    国王「し、城の宝物庫の中なら、自由に持って行っても良いぞ!」

    勇者「……」

    59 = 1 :

    勇者「分かりました。じゃあ、そういうことにしましょう」

    国王「!」ホッ

    戦士「やった!」

    僧侶「えええ!? いいんですかぁ?」

    魔法使い「勇者、甘いのう」

    勇者「いくつでも構いませんよね?」

    国王「おお、いいぞ。魔剣も一本だけではなかったと思うしな」

    勇者「だって、戦士」

    戦士「よっし」

    僧侶「勇者様、本当によろしいのですか?」

    魔法使い「魔剣程度では金三十万にはならんぞい」

    勇者「ま、いいよ。ごねられても仕方ないし」

    国王(眼の前で話すなよ……)

    60 = 1 :

    宝物庫。

    兵士「勇者殿、ここが宝物庫でございます。と言っても、半分倉庫みたいになってますが」

    勇者「はい、戦士。とりあえず探してきて」

    戦士「よっし、探すぞー」ガシャガシャ

    魔法使い「勇者よ、ちょっとわしはがっかりじゃなー」

    勇者「そうか?」

    僧侶「うう、大人って汚いですよ!」

    戦士「うわ! これは名剣! これは、魔法の鎚!」

    僧侶「楽しそうですね」

    戦士「魔物の牙を加工した短剣! これは……? く、組み立て式の短槍!」

    魔法使い「ふーむ。素人でも魔法が発動する武器もあるのう」

    勇者「よいしょっと」バサッ → 風呂敷。

    僧侶「勇者様?」

    61 = 1 :

    勇者「戦士、魔剣は見つかったか?」

    戦士「……あった」

    勇者「二本もあったか?」

    戦士「三本だ。さすがに三刀流とはいかないが、全部持って行っても良いんだろう?」

    勇者「ああ」

    僧侶「ううー、聖職者にはあるまじき発言かもしれませんが、金三十万に比べると……」

    魔法使い「そうじゃのう」

    勇者「三本はしばらく自分で持っててもらっていいか?」

    戦士「構わないよ」

    勇者「後は俺が持って行くから」

    戦士「あと?」

    勇者「ああ。後全部」

    三人「……は?」


    その後、ある国が財政危機に陥った。

    62 = 1 :

    闘技場。

    戦士「負けたか……」

    勇者「そう、気を落とすなよ」

    戦士「勇者……すまん、せっかくの評判を下げてしまったかもね」

    勇者「いんや、よくやったよ」

    戦士「そういうわけにもいかない! 私は、ほら、勇者のパーティーの一員だから」

    勇者「まあ、最後の相手はチャンピオンだったんだろ」

    戦士「そうだけど……」

    勇者「戦士はまだまだ強くなっていってる。だから」

    戦士「……」

    勇者「泣くなよ……」

    戦士「……」フルフル

    勇者「怪我は大丈夫か? 飲みに行こうぜ」

    戦士「うん……」

    63 = 1 :

    酒場にて。

    魔法使い「これ、勇者」

    勇者「な、なんだよ」

    魔法使い「お前さんが戦士を連れてきたんだから、もっと慰めんかい」

    勇者「い、いや、あのな」

    僧侶「……勇者様、泣いてる女の子を慰めるのはイケメンの義務です!」

    勇者「泣いてる時に、声なんかかけられたくないだろう……」

    戦士 ゴクゴク

    魔法使い「ふうー、だから未だに童貞なんじゃよ」

    勇者「うるさいな!」

    魔法使い「ほれ、いけ、ほれ」

    勇者「わ、わかった……」

    64 = 1 :

    勇者「おー、戦士、飲んでるかー」

    戦士「ん」ヒック

    勇者「傷にしみないか」

    戦士「飲める」ヒック

    勇者「そっか」

    戦士「この調子なら、もっと戦えた」ヒック ヒック

    勇者(やべぇ……)

    戦士「強くなりたいなぁ」

    勇者「そうか」

    戦士「勇者くらい、強く……」

    勇者「お、俺? 戦士の方が強いだろう……」

    戦士「ゆうしゃ!」ヒック

    勇者「ど、どうした」

    戦士「じぎゃくふうじまんですか?」

    勇者「あ?」

    戦士「ふざけんなよ! え!?」

    65 = 1 :

    戦士「ったく……」ゴクゴク

    勇者「なんなんだよ」

    戦士「おまえはな、ぜんぜんわかってないんだ」

    戦士「わたしが、どれくらいうらやましがってるか」ヒック

    勇者「……」

    戦士「つよくなりたいんだ」

    勇者「なんでそんなに強くなりたいんだ?」

    戦士「……おにいちゃんが」

    勇者「お兄さんいるのか」

    戦士「死んでから……」

    勇者「……」

    戦士「影を追っている。あのくらい、強くなりたいと」

    戦士「お前は、似ている。自分は強くないんだ、というところも」

    戦士「仲間のおかげだというところも。最後は、自分が責任を取ろうとするところも」

    66 = 1 :

    勇者「……」

    戦士「目標だけど、きっと死ぬまで追いつけない」

    戦士「私は、すぐ前が見えなくなってしまう」

    勇者「そんなことは……」

    戦士「ある! お前は、強い。お前くらい、強くなりたい」ヒック

    戦士「だいたい、お前は、なまいき、だ。私より年下のくせに……」

    勇者「せ、戦士?」

    戦士「おにいちゃんみたいなしゃべりかたをなー!」ワシワシ

    勇者「うおっ」

    戦士「ぜったいにつよくなってやるぞー! そのかわり、ちゃんとはたらきもするから」

    勇者「わ、わかった」

    戦士「わかってない!」

    勇者「はいはい……」

    67 = 1 :

    翌朝。

    戦士「ん……くあっ、さすがに傷が痛むな」

    僧侶「あ、おはようございます!」

    戦士「ああ、昨日はすまない」

    僧侶 ジーッ

    戦士「どうしたんだ?」

    僧侶「昨日のこと、覚えているんですか?」

    戦士「ああ、まあ、少しは」

    僧侶「ゆ、勇者様にべたべた甘えたこともですかっ!?」

    戦士「……いや」

    僧侶「頭をわしわしやったり、かと思えば膝枕要求したこともですかっ!?」

    戦士「い、いや……」

    僧侶「あまつさえ、今日は添い寝するって宣言したこともですかっ!?!?」

    戦士「ね、捏造してないだろうなっ」

    68 = 1 :

    戦士編はとりあえずここまで。

    69 :

    ニヤニヤ

    70 = 1 :

    ――魔法使いの場合。

    魔法使い「ほれ、勇者。劇場に行くぞ、夜の劇場」

    勇者「一人でいけよ……」

    魔法使い「なんじゃ、まだこだわっとんのか」

    勇者「うるさいな、俺はエッチなんかしないんだよ」

    魔法使い「やれやれ、若いのに枯れてるのう」

    勇者「じいさんが好色すぎなんだよ」

    魔法使い「女の子と遊んでいると、MPが回復するんじゃ」

    勇者「嘘だろ?」

    魔法使い「ホントじゃよ。まあ、わしレベルの大魔法使いにしかできない芸当じゃがな」

    勇者「……」

    魔法使い「嘘じゃが」

    勇者「だろうな」

    71 = 1 :

    魔法使い「酒は飲めるのに、どうして女の子は嫌いなんじゃ?」

    勇者「嫌いっていうか、苦手なんだよ」

    魔法使い「戦士と僧侶が泣くぞい」

    勇者「あいつらは仲間だろう。その、なんだ、信頼しているから」

    魔法使い「ほっほ」

    勇者「笑うな!」

    魔法使い「あやつらはお前さんにガチじゃからのう。女の部分を殺して接しているのを知っておけ」

    勇者「嘘だろ?」

    魔法使い「ホントじゃよ。なんで一緒の部屋に男女が泊まって何も起こらんかわかるじゃろ」

    勇者「……俺が我慢してるからだろ?」

    魔法使い「かーっ、アホか!」

    勇者「なんだよ」

    72 = 1 :

    魔法使い「お前さんが我慢してるなら、なんで相手は我慢していないと思うんじゃ?」

    勇者「……さあ」

    魔法使い「まあじゃあ、論点を変えてみよ。なんでわしらはお前さんのパーティーに入っとるんじゃ?」

    勇者「戦士は俺がお願いしたからで、魔法使いと僧侶はオススメされたからだな」

    魔法使い「あんぽんたん」ゴッ

    勇者「いてぇ!」

    魔法使い「そりゃお前さんから見ての理由じゃろ」

    勇者「……相手の気持ちになって、ってことか?」

    魔法使い「そういうことじゃ」

    勇者「……」

    魔法使い「指揮官なんだから、相手の心理状態をちゃんと知っとらんとな」

    勇者「ちなみに、魔法使いは?」

    魔法使い「女の子と遊ぶ金が尽きちまったからの」

    73 = 1 :

    エルフの村。

    エルフA「ひい! 人間が、人間がー!」

    エルフB「さらわれてしまうわー!」

    魔法使い「さらいはせんぞー、さわりはするがのー」

    戦士「おい、ジジイ」

    勇者「戦士、悪いがここの長と話している間、じいさん捕まえといてくれ」

    戦士「その方がよさそうだな」

    魔法使い「エルフの尻もいいもんじゃのう」

    僧侶「もう、魔法使いさん! エルフは清らかな乙女の種族なのですよ!」

    魔法使い「そりゃ一部の連中の思い込みじゃ」

    僧侶「な、なんでですか」

    74 = 1 :

    魔法使い「エルフは自然への造詣が深く、魔力も高いが、反面、自然の影響を受け易いことがある」

    僧侶「はあ」

    魔法使い「森に住むなら、森の魔力を利用した技術に長けるが、ほれ、森っちゅーのは美しい自然の空気を生み出すこともあれば、瘴気を孕むこともあるじゃろう」

    僧侶「そ、それは……」

    魔法使い「エルフはそういうのに弱くて、ころっと全滅することもあれば、影響を受けて闇の世界に堕ちる連中も多い」

    魔法使い「敏感なんじゃ!」サワッ

    エルフC「ひゃいっ!」

    戦士「ふん!」ぼかっ

    エルフC「きゃあああ!」タタタッ

    魔法使い「本気で殴らんでくれんか」

    戦士「殺す気では殴ってない」

    75 = 1 :

    勇者「……あー、ちくしょう」

    戦士「どうした、うまく行かなかったのか」

    勇者「とにかく人間不信で、長にあわせてももらえなかった」

    魔法使い「ダメダメじゃのう」

    僧侶「やはり、汚れている人がいるから……!」

    魔法使い「勇者の下半身はまだ清らかなのにのう」

    勇者「やかましいわ」

    魔法使い「ま、ええじゃろ。嫌悪感を持つ相手に、理解してもらおうとしても長い時間がかかる」

    勇者「そうかもしれないが、やっぱり不愉快だ」

    魔法使い「完璧主義じゃな。すべてすっきりすることばかりではあるまい」

    勇者「せっかく来たんだから、なんか手に入れたいと思ってさ」

    魔法使い「貧乏性じゃな。この世にカラの宝箱がいくつあると思ってるんじゃ」

    勇者「だけどさ!」

    魔法使い「面倒じゃのう……」

    76 = 1 :

    魔法使い「仕方ないの。おーい、娘っ子。お菓子をやるから出ておいで」

    エルフC「……」ジーッ

    魔法使い「知っとるか、強力なエルフは愚かな人間の持ち物をさっそうと奪って、逃げてくものじゃ」

    エルフB「」ヒソヒソ

    エルフA「あっ」

    エルフC「……えいっ」タタタッ

    魔法使い「ほれ」サッ


    魔法使いはぺろぺろキャンディーを勇者に放り投げた!


    エルフC「もう!」

    魔法使い「ほい、速度鈍化呪文」ぼうん

    エルフC「あ、あー、しぃまったぁああ」

    魔法使い「ほれ、勇者。確保確保」

    勇者「これじゃ本当に誘拐だろ……」

    77 = 1 :

    エルフC「は、放してぇ!」

    勇者「うーむ」

    魔法使い「放す前に質問じゃ。さらわれたのは誰じゃ?」

    エルフC「女王様の子どもだよ!」

    魔法使い「ふーむ。さらったのはどんなやつじゃ?」

    エルフC「大きくて毛むくじゃらのニンゲン!」

    魔法使い「よし、よく出来ました。ペロキャンは三つある。弓矢を向けてる子にもあげるんじゃぞ」

    魔法使い「勇者、放してやれ」

    勇者「あ、ああ」パッ

    エルフC「あ、えっと……」

    エルフC「ば、ばーかバーカ!」タタタッ

    魔法使い「よしよし、分かったな」

    戦士「……何がだ?」

    78 = 1 :

    魔法使い「戦士は毛の処理はしとるのかのう」

    戦士「今後は殺す気で殴ろうか」

    魔法使い「さっきの毛むくじゃらのニンゲンに当てはまるのかと思ってな」

    僧侶「え、え? どういうことですか」

    勇者「……人間と揉め事があったわけじゃないって言いたいのか」

    魔法使い「エルフの人間嫌いっていうのは、枕ことばみたいなところがあってな」

    魔法使い「わざわざこの森を訪ねてくる人間も多くないだろうに、人間にさらわれたってのは妙じゃな、と思ったんじゃ」

    戦士「大きくて毛むくじゃらの……魔物かな」

    魔法使い「かもしれんの」

    勇者「周辺を探索してみるか。何か見つかるかもしれない」

    魔法使い「ほいほい」

    79 = 1 :

    探索中。

    勇者「……魔法使い」

    魔法使い「なんじゃい。わしは疲れたから休憩するぞい」

    勇者「ありがとう、俺のわがままに」

    魔法使い「ほあ?」

    勇者「エルフの連中に首突っ込むなんて、面倒なことやってさ」

    魔法使い「お前さんは、親父よりはマシだな」

    勇者「なんでだ?」

    魔法使い「あいつはちっとも感謝をせんかったからのう」

    勇者「……そうなのか」

    魔法使い「そうじゃ。ま、あれじゃよ、きっと他人を信頼できなかったんじゃのう」

    勇者「……」

    魔法使い「一人旅しとったしな」

    80 = 1 :

    勇者「でも、親父は強かっただろ」

    魔法使い「んん? 強さにはいろいろあるからのう」

    勇者「剣の才能も、魔法の知識も……」

    魔法使い「人を助けようっていう心もか」

    勇者「うん。俺には、どれも……足りてない」

    魔法使い「そうかのう」

    勇者「旅してれば、あの勇者の息子のーって目で見られるじゃん。で、与し易しって顔して、足元を見てさ」

    魔法使い「……逆手に取っているような気もするがのう」

    勇者「どこがだ?」

    魔法使い(宝物庫を荒らしたり、盗賊を偵察に使ったり……自覚がないのか)

    81 = 1 :

    勇者「だから、正直な話、俺は助かってるよ。仲間がいて」

    魔法使い「……」

    勇者「魔法使いにも、いっぱい世話になってるからな」

    魔法使い「難儀な性格じゃの」

    勇者「ん?」

    魔法使い「お前さんが女の子だったら、ハーレム状態でおさわりし放題だったのにのう」

    勇者「ああ?」

    魔法使い「実は男に育てられた女の子だったりしないのかの」

    勇者「だとしたらなんだよ。尻でも触る気か」

    魔法使い「うっひゃひゃひゃ」

    勇者「色ボケジジイが」

    僧侶「勇者様ー! 洞窟見つけましたよー!」


    ……その後、魔物の洞窟から子エルフを救出した。

    82 = 1 :

    港町。

    四人「かんぱーい!」

    僧侶「良かったですねー! 船が手に入って!」

    勇者「散々、糞みたいな大臣が渋りやがったが」

    戦士「だが、これで海向こうの大陸にも渡れるな」

    魔法使い「となれば、わしの出身地に行くことになるんか」

    勇者「魔法使い、向こうの生まれなのか」

    魔法使い「そうじゃよ。ま、魔物が強すぎて、もう生まれた村はぶっ潰されとるがの」

    僧侶「え……」

    戦士「それは、その」

    魔法使い「うむ。村をたたんでは、別の地で村を作り、魔物に襲われては次の土地へ行くという生活でな」

    勇者「そりゃ大変、だったのか?」

    魔法使い「土地土地のお姉さんのおっぱいを揉みまくってたの」

    戦士「おいジジイ」

    魔法使い「ほっほ」

    83 = 1 :

    魔法使い「ほれ、この地図で言うとな、この北の方に村があってな。やっぱり北方系は乳の大きさ、柔らかさが違ってのう」

    戦士「……で?」

    僧侶「正直、同情心の湧いた自分を裁きたいです」

    魔法使い「それでな、ここにはお城があるんじゃ。昔から鉄壁という噂でな」

    勇者「……胸板も鉄壁の子が多いとか」

    魔法使い「正解!」

    戦士「勇者、このジジイはそろそろ別れるべきだろう」

    僧侶「魔法使いさん、変態発言は勇者のパーティーにふさわしくありません!」

    魔法使い「揉めば大きくなるぞい、といってたっぷりほぐしてやってな」

    勇者「ああ、そう……」

    魔法使い「今じゃあの娘らもいい年だが、魔物に追われて一緒に全力ダッシュしたのう、このへんで」

    勇者「今も村はあるのかね」

    魔法使い「どうかのう。勇者、お姉ちゃんたちの孫でも娶りに行くかい?」

    勇者「やかましい」

    魔法使い「うひゃっひゃ」

    84 = 1 :

    商人「いや~、随分楽しそうですねぇ」

    戦士「誰だ、お前は」

    商人「女商人ですよ~、勇者さんと同郷のね」

    勇者「……知らないが」

    僧侶「何か用ですか、四人で楽しく飲んでたのに」

    商人「勇者さんが、海を渡るって聞いて、いてもたってもいられなくなってしまいまして~」

    魔法使い「おお、そうか、パーティーに加わりたいのか」

    勇者「おい、魔法使い」

    商人「おおー、そうなんですよ~。この先、お役に立てるんではないかと」

    魔法使い「ふむ……」

    勇者「いや、四人で十分だし」

    商人「いや~、どうでしょうかねぇ。勇者さんのお父様は、随分一人で苦労されたそうですし~」

    勇者「……」

    85 = 1 :

    商人「私は~、お役に立てると思うんですよね~」

    商人「勇者さんは有名になってきましたし~、これからもいろいろ交渉が来ると思いますし~」

    商人「そういうのがですね……」

    魔法使い「なるほどのう。ではまず乳を見せてもらわんとな」

    商人「……は?」

    魔法使い「このパーティーでは、女性の乳を重視することになっておってな」

    魔法使い「戦士ちゃんは筋肉質なかっちりおっぱい。僧侶ちゃんはすべすべの微妙なふくらみおっぱいになってるんじゃ」

    商人「……」

    魔法使い「それを超える、おっぱいアピールが必要じゃな!」

    勇者「そうだな」

    性陣「!?」

    魔法使い「じゃろう! おっぱいアピールをすべきじゃ!」

    魔法使い「はよう! かもかも!」

    86 = 1 :

    戦士「ゆ、勇者?」

    勇者「俺は、おっぱいにはそれほどこだわらないが……」

    勇者「戦士のおっぱいも、僧侶のおっぱいも、素敵だと思う」ヒック

    僧侶「よ、酔ってますね!?」

    魔法使い「キターーー!」

    勇者「戦士のはがっしりしてるけど、所々が柔らかいんだぁ」ヒック

    戦士「ゆ、勇者……」

    勇者「僧侶は小柄なのにけっこうずっしりしてるんだよな」ヒクッ

    僧侶「ゆゆゆ、勇者様!?」

    勇者「女商人はどうなんだ?」

    商人「えーと、私はぁ」

    魔法使い「む、これはわしも脱がねばならんな」

    戦士「おい、バカ」

    87 = 1 :

    勇者「自信ないのかなぁ」ヒック

    戦士「……ああー?」

    勇者「ふたりとも俺は好みだし、おっきいと思うんだよ」

    魔法使い「揉んでやれ!」

    僧侶「わ、私は、そんなに大きくないですし……」

    商人「ふうん」ニヤッ

    僧侶 イラッ

    僧侶「勇者様!!!」ガタッ

    勇者「うん」ヒック

    僧侶「私を! 私を見ててください!」ぬぎっ

    戦士「やめんかっ!」パシン

    魔法使い「うっひゃひゃひゃ!」

    88 = 1 :

    酒場外。

    商人「……話にならないわね。酔いすぎ」

    魔法使い「おじょうちゃん」ヒョイ

    商人「あ、お、おじいさん?」

    魔法使い「あまりオイタをするもんじゃないぞぅ」

    商人「は?」

    魔法使い「麻薬かなんかの密売じゃろ」

    魔法使い「……失敗したから高飛びかい?」

    商人「な、なんのこと?」

    魔法使い「東の盗賊団を壊滅させたのはわしらじゃ」

    商人「!」

    魔法使い「後ろ盾がなくなると個人はやりにくくなるからのう」

    商人「あ、あーっと」

    魔法使い「やめどきは今じゃよ」

    89 = 1 :

    商人「ふ、ふん。正義ぶってる連中には分からないさ」

    魔法使い「そうじゃな。信念を貫こうと、流されるまま転がり落ちようと、死ぬときは死ぬしの」

    商人「くっ……」

    魔法使い「逆に、なかなか死なずに、苦しんで生きることもあるがの」

    商人「……」

    商人「おじいさん~、何を言ってるのか分からないですぅ」

    魔法使い「ふん」

    勇者「魔法使い」

    魔法使い「おお、勇者か」

    勇者「あ、女商人さんも」

    商人「あ、勇者さん~、このおじいさんがセクハラを~」

    勇者「女商人さん、思い出したよ」

    90 = 1 :

    勇者「町の武器屋の商ちゃんだろ」

    商人「……えーっと」

    勇者「引越ししちゃったけど、それから、いろいろあったんだろう」

    商人「……」

    勇者「魔王退治の旅だから、一緒に行くってわけにはいかないけど」

    商人「バカにしてる?」

    勇者「ん?」

    商人「私は、そういう旅に相応しくないってことかな?」

    勇者「……」

    商人「勇者さん、小さい頃から勇者の修行とかしてたもんね」

    商人「強くて正しい人はいいよね。それも、父親からして」

    商人「私とは違うもんね!」

    勇者「ああ、違う」

    勇者「俺は人に頼ってここまできた。親父と違って」

    商人「あ……」

    91 = 1 :

    勇者「一つ頼まれてくれ。これ」ポイ

    商人「え」

    魔法使い「おい、勇者」

    勇者「元盗賊団の連中に、情報収集やらせてるんだ。次の依頼書と、あと報酬な」

    魔法使い「いいんか。その報酬は魔法の宝石も……」ヒソヒソ

    勇者「いいんだ。商ちゃん、ちょっと多めに持たすから、報酬代わりにしてくれ」

    商人「……いいの?」

    勇者「どのみち、海を渡るから、しばらく会えなくなるし」

    魔法使い「……」

    商人「けど、そんなの……」

    勇者「俺は大して強くないから、得意な人に得意なことをお願いしているんだ」

    商人「……」

    勇者「頼むぜ」

    商人「……いいけどね」

    92 = 1 :

    魔法使い「甘いのう、勇者よ」

    勇者「魔法使いこそ。商ちゃんの尻も触らんで」

    魔法使い「そりゃな。斜に構えているガキンチョは嫌いじゃし」

    勇者「……」

    魔法使い「本当に良かったのか? あやつ、密売で……」

    勇者「あ、そうなの?」

    魔法使い「ふぅー」

    勇者「まあ、なんか隠してるとは思ってたけど。でも、そのまま帰すのももったいないと思ってさ」

    勇者「この国の大臣の不祥事の証拠を握らせておいたんだ」

    魔法使い「ほう?」

    勇者「商人だし、こちらに腹づもりがあって近づいてくるくらいだから、脅すなり、他国に売り込むなりはするだろう」

    魔法使い「ふむ」

    勇者「あんのくそじじいに一泡吹かせたいと思ったんだが、こっちが直接やろうとすると問題になるじゃん」

    魔法使い「勇者からもらったと言いふらすかもしれんぞ」

    勇者「あ、その線は考えてなかった……」

    93 = 1 :

    勇者「んー、どうするかな」

    魔法使い「まあ、あの様子じゃこちらを攻撃するとは思わんが……」

    魔法使い「ま、なんとなれば、向こうの大陸で一生を過ごしてもええか」

    勇者「ん、まあ」

    魔法使い(酔っ払っとるな、こいつ)

    勇者「……魔法使い、飲み直すか?」

    魔法使い「ん、戻らんのか?」

    勇者「あっちの酒場な、戦士と僧侶が大暴れしてるから……」

    魔法使い「ああ、そういう」

    魔法使い「じゃ、劇場に行こうか」

    勇者「おい」

    魔法使い「ほい、ほい、こないだから目星はつけといたんじゃ」

    勇者「うるせー、ばか!」

    94 = 1 :

    ―――過去。

    魔法使い「おう、勇者父」

    勇者「おお、魔法使い殿か」

    魔法使い「聞いたぞ~? お前みたいな仏頂面に子どもが出来たとは驚きだ」

    勇者「仏頂面は関係ないだろう」

    魔法使い「いやあ、どんな顔してセックスしてたのかと思うと笑いがこみ上げてくるわ」

    勇者「私に男色趣味はないが……」

    魔法使い「あほうか!」

    勇者「それより、魔法使い殿には良い人はいないのか」

    魔法使い「生憎、お前と違って世界中におるでな」

    勇者「そうですか」

    魔法使い「あ、それと、ほれ。誕生祝いじゃい」

    勇者「こ、こんなにはいただけない」

    魔法使い「バカ、人の厚意も受け取れん奴がおるかい」

    95 = 1 :

    魔法使い「それと、お前、強力な魔物退治に行くそうじゃないか」

    勇者「まあ」

    魔法使い「俺も連れていかんかい」

    勇者「……お断りします」

    魔法使い「なんでだ!?」

    勇者「魔法使い殿にもそうだが、他人に迷惑はかけられない」

    魔法使い「ぶぁーかか、てめぇはよ!」

    勇者「私の仕事は頼まれ事だ。誰かと一緒にやるものではない」

    魔法使い「成功率を少しでも上げるのは、請負人なら当然だろうが」

    勇者「そのために、誰かが犠牲になってもよいのか?」

    魔法使い「ふん、それを言うなら、お前に仕事を頼んだやつらはお前に犠牲になれって言ってるんだろうがよ」

    勇者「助けを求めているだけだ」

    魔法使い「お前は助けを求めてないのか」

    勇者「ああ」

    魔法使い「……」

    96 = 1 :

    魔法使い「勇者父よぉ、お前、子どもができるんだろ」

    勇者「ああ」

    魔法使い「そんな考え方で、頼まれれば一人で旅立って、傷だらけで帰ってくる親父を、子どもはどう思う?」

    勇者「……」

    魔法使い「親父を憎むならまだいい。ヘタをすれば、親父をけしかける連中を憎むようになるぞ」

    勇者「……そうかもな」

    魔法使い「そう思うんなら、ちょっと休め。子どもにとっての父親は、紛れもなくお前一人しかいないんだ」

    勇者「そういうわけにもいかん」

    魔法使い「バカが」

    勇者「我が子がどういう道を選ぼうと、構わん」

    魔法使い「ああ?」

    勇者「いや、間違った道を選ばれては困るから、いう時は言うが」

    97 = 1 :

    勇者「だが、俺にとっては、子どもは一人で生きていける力さえ身に着けてもらえばいい」

    勇者「甘えて、人に頼ってばかりの人間にはしたくない」

    魔法使い「……」

    勇者「その結果、もし、誰かを憎むような子どもになるなら……」

    勇者「その時は責任を取る。俺が」

    魔法使い「……てめぇは本当に大馬鹿者だ」

    勇者「どこがだ」

    魔法使い「言わせてもらうぜ? 俺は小さい頃から他人に頼りっぱなしだ」

    魔法使い「何しろ、魔物の襲撃に追われ続けていたからな。一人でなんとかできるなんてのは妄想だって知ってる」

    勇者「いや、それは子どもだから……」

    魔法使い「バカいえ。俺ほどの魔法使いでも、この才能が目覚めた後でも一人じゃとっくに死んでいた」

    勇者「それは……魔法使いだから」

    魔法使い「だろ!? もしお前の子どもに魔法の才能があったら、一人じゃあっさり死ぬぜ」

    勇者「……」

    98 = 1 :

    魔法使い「もっと根本問題だ。一人じゃ生きていけるほどの力が身につかなかったら?」

    魔法使い「そんな才能もなかったら、お前の教育は大破綻しちまうだろ」

    勇者「……」

    魔法使い「甘いんだよ、お前はよ!」

    勇者「しかし、やってもらわなければならない」

    魔法使い「ああ?」

    勇者「魔王の復活すら噂がささやかれている」

    魔法使い「……ああ。その話は俺も聞いている。実際、強力な魔物が現れているところの調査もした」

    勇者「外部からきた形跡がある、という話だったな」

    魔法使い「そうだ。だがな……」

    勇者「力を身につけなければならない時代が来ているのは確かだ」

    魔法使い「だから、一人じゃなくていいだろうが! お前もだぞ!」

    勇者「分かった分かった」

    99 = 1 :

    魔法使い編、終了。

    僧侶編。そして、おそらく勇者編はお待ち下さい。

    あまり長々しく続けるつもりもありませんので、さっくり終わらせる予定。

    100 :

    おっつん
    老魔法使いイイヨネ!


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