元スレほむら「魔法少女の日常」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
51 = 49 :
みんなに、いろんな意味で一目置かれる人間のふりをする必要も無い。
私は、あの瞬間に、元の弱くて脆くて情けない暁美ほむらに戻ったのだから。
みんな、あの時は私を見て笑っていた気がする。
そうよね。
こんな人間だったんだ。
虚勢を張っていただけだと知ったのだから。
52 = 49 :
呆れただろうな。
失望しただろうな。
…いえ、失望も何も、期待などされていないよね。
こういうところ、自惚れてるっていうのかな。
でも、それでも、私は構わなかった。
53 = 49 :
まどかが生きていてくれたのだから。
それだけ。
自分はどうなってもいい。
生きようが、死のうが。
生きようが。
死のうが。
55 :
……。
…やっぱり、生きていたいな。
あれだけ命を賭して、と思っていたのに。
なのに、そう思ってしまう。
私は弱いから。
56 :
恐がりだから。
死ぬのが怖いと、改めてそう思った。
でも、やっと辿り着いたこの世界なのに、私は、生きていけない。
せっかく、目的の世界に辿り着いたのに…。
辿り着いた。
57 = 56 :
……。
そうね。
だからなのね、やっぱり。
だから、私はやる事が無くなった。
だから、私の居る意味が無くなった。
58 = 56 :
だから、私は居なくてもいいんだ。
私の命は、まどかを救うためだけに存在したのだから。
ならいっそ、私の命はあの時ワルプルギスの夜と一緒に消えていればよかったのかもしれない。
だって、現にこうして、私はもう、魔法少女として生きる術を失っているのだから。
何かおかしいわけでもないのに、生きる術を失ってしまった魔法少女。
59 = 56 :
それはどうして?
時間を止められない直接の理由は分かっているけど、どうしてこうなってしまったのだろうと考えたとき、一つの答が浮かんだ。
そうだ。
それは、私自身が役割を終えたからだ。
やることが無くなっただけじゃない。
60 = 56 :
役目が終わったからなんだ。
花が、役割を終えたら枯れるように。
先の減ったGペンが捨てられるように。
私は、願いを叶えた。
自信を持ってそう断言できる。
61 = 56 :
断言できるけど…。
それはつまり、私の寿命があの時、終わったと言う事になるんだ。
「ああ…」
そうか、そうなんだわ。
私は、私としてやり遂げることを、全部やってしまったのね。
62 = 56 :
…悲しむことなんか、無いんだ。
無いんだね。
そう思うと、なんだか恐怖が和らいだ気がする。
魔法少女になった時、その瞬間から、私の寿命は決まっていた。
まどかを救う。
63 = 56 :
その時が、私の寿命の終わる時だったんだ。
じゃあ、これでも私、大往生って事になるのかな?
「そうか…」
中学生だけど、生きてるうちにやりたい事は、全て果たしちゃったんだね。
「まどかぁ…」
64 :
>>先の減ったGペンが捨てられるように
うむ。よくわからん
65 :
今日も今、どこかでまどかは笑っている筈。
親友のさやかや、優しい先輩のマミ、元気な杏子と一緒に。
その場所に、私の居場所はない。
居られない。
居てはいけない。
66 = 65 :
それは、悲しい。
本当にそう思う。
でも、それでいいのかも知れない。
それが当然なのかも知れない。
私は、他の時間軸でいっぱい、いっぱい、ほんとうにいっぱい、酷い仕打ちをみんなにしてきたのだから。
67 = 65 :
私は、みんなと一緒に笑ってはいけないんだ。
私は、みんなが幸せな場所に居てはいけないんだ。
何故なら、私は、他の時間軸で苦しんで死んだ、死なせてしまったみんなの分の業を背負わなければならないからだ。
たくさんのまどか。
たくさんのさやか。
68 = 65 :
たくさんのマミ。
たくさんの杏子。
たくさんのみんなの命を私は奪った。
直接的かどうかなんて関係ない。
私は救えなかった。
69 = 65 :
たくさんのみんなを。
たくさんの…。
「……」
…たくさんいるみんなを想像したら、ちょっと怖…可愛かった。
マミさんは、まどかは、私の最初の師匠だったのに。
70 = 65 :
さやかは、あの直情的な性格さえ出なければ、真っ直ぐな、良い友人なのに。
杏子は、だれよりも純粋だからこその正義感を持っていた、尊敬すべき子なのに。
なのに、いつしか私は救おうとすることすらかまけてしまった。
だから、奪ったと同じなんだ。
私は、私が奪ったみんなの命を、何としても償わなければならない。
71 = 65 :
「……」
また、じわりとソウルジェムが濁る。
体に、嫌なしびれを感じた。
骨の奥深くから何か重い物が噴き出してくるような、寒気のする痺れ。
僅かに吐き気もする。
72 = 65 :
みしりとした頭痛と同時に、ふわりと浮かぶような感覚で一瞬気が遠くなった。
ああ…。
もしかすると私、もう…。
脳裏に、無数の魔女の姿がよぎる。
私も…もうすぐ…彼女たちの…。
73 :
ほむらちゃん…
74 :
「……」
私は盾の中から一丁の銃を取りだした。
中には一発だけ弾も入っている。
シルバーに光るデザートイーグル。
頼りになる相棒。
75 = 74 :
その名もデザートホームル。
意味は特にない。
初期に作られた次装弾不良に泣かされた357マグナム版ではなく、リムレス薬莢の採用で事実上世界最強のハンドガンとなった50Action-Express版。
50Action-Express版は手に入れるのに苦労した。
デッドコピーではやはり精度が甘く操作性が悪かったので、貴重なループを消費してイスラエルへ飛び、本場の銃を工場から失敬した。
76 = 74 :
ロールアップされたばかりの、誰も触っていない本物を手に取ったときの感動は今も覚えている。
一度完全に分解してバリを丹念に削り、歪みをミクロン単位で直して油を差し、そして組み立て直した時には、もうこの銃は大量生産品では無い、私だけの一品となって生まれ変わっていた。
弾丸も千発ほどいただき、アヴダトにあった石柱が丁度的にぴったりだったので、一晩に二百発ほど撃って照準を調整した。
何本か石柱が折れたけど、ただの石だし大丈夫よね。
そんなことよりあの試し打ちで、命を預ける銃とはこういうものなのだと実感したのを覚えている。
77 = 74 :
どんなハイパワーライフルでもこいつの破壊力に比べればパチンコ玉みたいなもの。
このバケモノじみた大きさとずしりとした重さが私の命を守ってくれる保障なの。
葉巻好きのナイスガイもそう言っているから間違い無い。リボルバーではないけど。
ポリゴナルライフリングになってからはクリーニングが楽でいいのだけど、撃てる弾丸が銅系合金皮膜されたものに限られるのが難点。
いざと言うとき使える弾丸に制限があるのは困る。
78 = 74 :
真鍮で弾頭を覆わない、鉛剥き出しのソフトポイント弾は当たったときのダメージが強いから使い勝手がいいのに。
それに、やはり年頃の女子中学生としては誰もが持っているように、ライフリングのあの独特の形状には憧れがあったので、この変更は痛し痒しといったところね。
その前は、両さんが二丁持ちしていたのに惚れたのと、名前の響きがいいので44オートマグを使っていたけど、ジャムりが多くて困った。
オートジャムとは良く言った物だったわ。
あれだってリムレスだったのに。
79 = 74 :
動作不良の原因の一つは弾薬の供給の遅れなんだから、きっと先を行きすぎた、生まれるのが早すぎた銃だったのね。
まぁ、8.5インチのロングバレルを構えたときの格好良さは今でもデザートイーグル以上だと思っているけど。
e-bayに純正カスタムの10インチがあったのを見たときは飾りでもいいと本気で落札を考えたし。
話が逸れたわ。
このデザートホ…。
デザートイーグル。
80 = 74 :
それは、私のソウルジェムを砕くためのもの。
私が、人でいられるうちに人のままで死ぬ為の死刑執行器具。
魔女になる前に、ソウルジェムを砕く。
その為にワルプルギスの夜の時も使わなかった、本当に最後の武器。
でも、今はこのまま身を任せてもいいかと、そう思い始めてきていた。
81 :
所々の変なネタは何なの?
82 :
>>1の趣味じゃね?
今までシリアスだったのにここにきてデザートホームルで吹いたわww
83 :
スレタイでほのぼのかと思いきや暗くシリアスだと思ってたら銃器スレだった
84 :
一瞬、「あの程度で殺し合い」スレかと思って「蒸し返すな」ってレスしそうになったwwwwww
85 :
だって、私だけが人のまま命を終えたら、それじゃあ、他の時間軸で魔女になっていったみんなに、死んでいったみんなに、悪いもの。
人のままで死ぬ事は、ある意味魔法少女にとって幸せな最期。
ならば、私にその資格は欠片もない。
私は、魔女になろう。
そしてせめてみんなの為に、自分を本当に散らし、グリーフシードを残そう。
86 = 85 :
居てもなんの役に立たない愚図な私の、最後のまともな役目。
みんなに戦わせると言う面倒はかけてしまうけど、彼女たちなら大丈夫。
それに、私はそもそも弱い魔法少女。
因果の強さが魔翌力の強さとなり、それが強いほど強力な魔女になる。
ならば、私は魔女になっても大した事は無いに決まっている。
87 = 85 :
魔女なのに、使い魔程度にしかならないかもしれない。
今は武器を持ってないけど、魔女になったら流石に何か攻撃手段くらいは持つのかしら?
でも、それにしてもこんな私だもの。
きっとへなちょこな攻撃方法よね。
泣き虫の私に相応しい、だだっ子パンチとか、そんな程度かしら。
88 = 85 :
槍でも剣でも、矢でも銃でも、ちょっと離れた所から一撃、ね。
勝てるイメージがまるでわかない。
なのに、無様に倒れる自分の姿は容易に想像できる。
魔女のイメージがわかないので、自分の姿のままで。
血を流して倒れる自分。
89 = 85 :
怖い事の筈なのに、むしろ滑稽で思わず笑みが漏れた。
積み重ねた罪をようやく精算できるのね、と。
あ。
罪を積み重ねる。
…罪だけに。
遺書代わりにメモしておこう。
90 = 85 :
ただ、一つだけ心配なのは、私がちゃんとグリーフシードになれるのかと言う事。
倒されるのはいいけど、その後必ずグリーフシードに変化する訳ではないから、ただ戦わせるだけになったらそれは本当に申し訳ない。
死んでからも迷惑をかけるだけなんて、それだけは本当に嫌。
私のソウルジェムよ。
どうかお願いだから、彼女たちのために少しでも質の良いグリーフシードを生み出しておくれ。
91 = 85 :
指輪を握りしめ、心から願う。
本当に、心から。
ソウルジェムが、いっそ他の魔法少女の魂のスペアにでもなればいいのに。
じわり。
またソウルジェムが黒ずんだ。
92 = 85 :
…そうだ、いけない。
ここで魔女になっちゃ駄目。
みんなが流石に怪しむわ。
最近私が魔女退治に付き合わないのは彼女たちも承知。
なら、私が居なくても不思議には思わないだろうけど、それでも、ここで魔女になっては自分が魔女になりましたと言っているようなもの。
93 :
そんな事になったら、彼女たちが私を倒すのを躊躇ってしまう。
みんな優しいから。
それはいけない。
出かけよう。
少し遠い所、人気の無いところ、私とは関係なさそうな所へ移動して、そこで魔女になれば彼女たちはそれが私のなれの果てとは気付かないだろう。
94 = 93 :
なれの果て…。
私は、どんな醜い魔女になるのだろう。
我が儘が許されるなら、あんまり汚くないといいな。
魚とか、どろどろなのは、いやだな。
……。
95 = 93 :
駄目かな。
さあ。
足が重いが、今出なくてはもう、自分の意思で動けなくなるかも知れない。
行かなくちゃ。
その名の通り、死出の旅立ちへ。
これは、とても怖いことの筈。
96 :
>魚、ドロドロ
オクタヴィア嫌いすぎだろwwwwww
97 = 93 :
なのに、そんなに怖い気はしなかった。
ふふ。
人間、腹をくくるとそれなりに落ち着くものね。
ワルプルギスの夜の時みたいな半ばヤケではない、なんだか、今はすがすがしさすら感じるわ。
今なら、まどかからお誘いがあっても、悩まずに断れそう。
…虚勢じゃ無いクールに、なれているかな?
98 = 93 :
私みたいな人間でも、覚悟を決めるとこんな気持ちになれるのね。
部屋を出た。
多分、もう帰ってこないであろう部屋から。
……。
あ。
冷蔵庫にハーゲンが残っていた。
99 = 93 :
ワルプルギスの夜を倒したらと思ってそのまま忘れていたものだから、カチカチになっているだろうな。
後ろ髪を引かれたけど、今振り向いたら決心が揺らぐ。
私は今、本当にクールなほむらなんだから。
少しだけ、心が揺らいだけど、そのまま部屋を後に出来た。
外は夕方。
陽が落ちている。
100 = 93 :
斜陽。
今の私にこれ程ぴったりな景色はない。
…ううん。
それは違う。
私は、出来る事をやって、全てを終えた。
この濃いオレンジ色の夕焼けは、私への最後のご褒美。
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