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元スレ上条「その幻想を!」 仗助「ブチ壊し抜ける!」
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>>452
近所にセブンないんだ……
近所にセブンないんだ……
「おはようございます」
上条当麻が起床すると、友人が正座していた。
その瞳はベタ塗りされていて、ハイライトはない。
傍らには真っ白いシスターが飢えた獣のようにぐるぐる唸っている。
その緑色の目に映るのは敵意だ。
なぜだ。なんだ。
「――確認します。今日の予定はありますか」
「あ、えーっと、補習……が、あります、が」
と言ってから上条はようやく彼が誰なのかに気が付いた。
どうやら今日一日、24時間を仗助は 『 自動書記<ヨハネのペン> 』 に売ったらしい。
「了解――……本日はよろしくお願い申し上げます」
「あ、ああ」
「失礼します」
するりと衣擦れの音さえ立てず、自動書記は上条の部屋を出ていった。
その間ずっと睨みを止めなかったインデックスはナイス番犬と言ったところか。
なんにせよ、朝っぱらからシュールなものを見てしまった。
「信じられないんだよっあいつ、じょうすけの弱み握ってそのうち体を乗っ取っちゃうつもりなんだよっ、間違いないんだよっ!」
「よせよ、縁起でもねえ」
「とうまぁ!」
「それに学園都市の生徒は魔術が使えねーんだろ? そんな奴の体奪ってどうしようってんだ?」
「それは……!」
うぐぅと黙り込むインデックス。
「でもやっぱり、信用できないんだよ!」
「わかったわかった、俺も気をつけとくから」
「とうま!」
自動書記はともかくインデックスの方はかなり奴を嫌っているようだ。
いや、どちらかというと苦手意識から過剰に警戒してるのか?
何にせよあまり近づけないようにしなきゃな――二人の間に立てば――まあ手堅く4・5回は噛まれるだろうから――自動書記の屁理屈の穴を見つけてやって――あと周りのフォローと仗助のアフターケアも――
とナチュラルに苦労人の思考を回している自分に気づき、上条は軽く落ち込んだ。
バカな……ッ、既に不幸を背負う気マンマンだと……!? 俺はいつの間にこんな奴隷体質に……ッ!
いいや違う。自分は既に不幸体質なのだ。
だからある程度の想定と警戒を怠らないだけなのだ、うんうん。
だが、不幸といえば仗助も大概不幸である。
数多の不幸を味わってきた上条当麻であるが、精神と肉体を間借り(しかも半強制的に)されるなんて受難は知らない。
おまけに事情が事情だ。言っても頭の心配をされるだけであろうことは容易に想像がつく。
そりゃ、仗助も隠したがるだろうよ。大切な人になら尚更だ。
――ふむ。『 承太郎さん 』。
上条当麻はまだ名しか知らぬその人物に思いを馳せる。
仗助の尊敬してる人、か……。
一体どんな人なのだろう。
ん、と上条当麻は記憶のしこりに気が付いた。
尊敬してる人、というフレーズ。別のところで仗助が言っていた気がする。
確か、初めて会った時に、自分の部屋で――。
『 時代遅れって言われてんのもわかってるんだけどよ~これァ、尊敬してるヒトと同じ髪型なんスよ 』
『 命の恩人なんス。その人に憧れてるっつー「しるし」なんスよ 』
「……!!」
瞬間、上条当麻にピシャァァーーンと電撃が走った。
待て、落ち着け、上条当麻。
手近の紙とシャーペンを手に取り、情報を書き起こす。
『 仗助の髪型 』=『 尊敬してる人と同じ髪型 』=リーゼント……①
『 尊敬してる人 』=『 承太郎さん 』 ……②
①・②より
『 承太郎さんはリーゼント 』
証明終わり。
「リ、リーゼント人口がまた増えるのか……ッ!」
なんだか、急に色々と楽しみになってきた。
「上条ちゃん……」
ハッと上条は我に返った。
教卓に座れば首から上しか残らないちんまい教師が、なぜか潤んだ目で上条を見つめている。
「今日はいい子にノートを取ってくれてるのですねぇ~~……! 先生はうれしいですぅ~~!」
「は、ははは……」
あわててノートをガードしたのは言うまでもない。
しかし、七月下旬に終わるはずだった補習を八月中旬になった今もなお続けていると、さすがに惨めな気持ちになる。
魔術師との抗争やなんやかんやで日常と非日常の境が薄れ、
『 補習が何ぼのもんじゃーい! 』 と思いきってサボってしまったツケが思いっきり来てしまった。
上条当麻は、自分は本来フツーサイドの人間なのだと改めて自覚した。
「不幸……いや、自業自得か、ってあれ?」
そして帰り道、いつもの自販機前に見知りすぎた人物を見つけたわけである。
「よお仗……じゃなくて 『 自動書記 』」
自動書記は、瞳だけを動かして上条を見た。
「――疑点。新しい名を名乗っているにも関わらず、なぜみな私を 『 自動書記 』 と呼ぶのでしょう」
「はい?」
「当てこすりに聞こえたならお詫びします」
「まあいいけど……何やってんだ? こんなとこで」
自動書記は片手を自販機の腹に当てたまま、上条を振り返った。
「この 『 自動書記 』 の精神で 『 スタンド 』 を操れるか否かを実験しています」
「へぇ~」
確かにこの自販機は年がら年中ガタがきている。直すにはうってつけかもしれない。
瞬間、上条当麻の脳内を二千円札を呑みこまれたあの時や冷たいお汁粉が出てきたあの時が駆け巡った。
お世話になりすぎてて泣けてきた。
「で、結果は?」
「五十二回中五十二回失敗です。やはり 『 スタンド 』 は彼の精神と同一と見た方が良いのかもしれません」
と、すでに結論が出たような言い方をしつつも、自動書記は自販機に触れたまま動かない。
「……53回目もするのか?」
「千回ほど試す予定です」
「1000回ィィ!? ヒトケタ多すぎねーかそれ!?」
「いいえ」
呟き、おそらく五十三回目をやっているのだろう。自動書記の無表情に力がこもる。
その横顔を覗き込んで、上条は、
「……なんかお前、楽しそうだな」
「この自動書記はもともと魔術です。感情は与えられていません。ですが、私の宿主となった二人に影響されている可能性はあります」
「インデックスに仗助かー、確かに感情に素直すぎるお人たちだがなぁ」
「……質問。この会話を続ける必要はありますか」
「はい?」
「気が散ります」
「そりゃ悪い」
「ちょろっとー」
軽いのにどこか棘のある声がかかる。
なぜだか耳馴染みする調子に上条当麻は振り向き、心中 『 ギャーッ 』 と絶叫した。
灰色のプリーツスカート、半袖のブラウスにサマーセーター。
旧のび太並みに変わることのないその服、変わるはずのないその顔。
「ボケッと突っ立ってんじゃないわよ。買わないなら退く退く」
ビリビリこと御坂美琴はそう言って、おもむろに自動書記の学ランを掴んだ
「……」
「? っ、ちょ、退きなさいってば、ちょっとー?」
だが20㎝近くの体格差のせいか、自動書記のあくなき探究心のためか、その体は微動だにしない。
「って、あーー!! アンタあの時の不良! あいつがここにいるからもしかしたらと思ったら……!
あいつに付きまとうのはやめろって何べん言えばわかるのよ! っつうかいい加減どけぇーー!!」
「ちょっと待て御坂!」
自販機に足を突き服を引っ張るも、まだまだカブは抜けません状態。
痺れを切らしたのか、とうとう放電し始めた御坂に慌てて上条は割って入る。
「なによ、またそいつの肩持つつもり? あんた弱みでも握られてんの?」
「なんでそうなるッ 俺と仗助はただの友達だって!」
「前もそんなこと言ってたわね……本当?」
「ウソついてどーすんだ」
「はっきり言ってパシリと不良にしか見えないのよ。あんたら」
「マジすか……」
今までそういう目で見られていたのか、と上条当麻は軽く落ち込んだ。
原因は仗助の不良ルックか? 俺のザコその1ヅラか?
俺も制服改造とかしたらマシになるだろうか……
と、ここで小萌担任に号泣される未来をエピタフしたので、上条の非行滑走計画は未遂に終わった。
「とにかく……あー、仗助、というか自動書記、というか仗助くん、こいつがジュース買うらしいからどいてあげてくれ」
「……第三者がいる場合は 『 仗助 』 で構いません」
構いまくるよその口調! とは言えず、上条当麻はいぶかしげな御坂に愛想笑いを送ってごまかした。
スゥーッと滑らかに場所をあけた自動書記に代わり、御坂美琴はなぜか自販機の前に仁王立ちする。
「――警告。その自販機よぉぉ~~、チコッとイカレてるみてぇーだぜぇぇ~~?」
「!!?」
「アンタに言われなくても知ってるわよ。裏ワザがあんのよ。お金入れなくてもジュースが出てくる裏ワザがね」
「えっ、ちょ、口調、えっ俺の心読んだっ!?」
「チェストォォーッ!!」
「おおぉぉおっ!?」
ガコォンッ! ガコンッ
絶妙な角度で繰り出された蹴りに、たまらず自販機がスープカレーを吐き出す。缶で。
プルタブを片手で空けながら、御坂美琴は胡乱に上条を見やった。
「ぎゃあぎゃあうるさいわね。あんたの心がなんだって?」
「い、いや、お前じゃなくて……」
「――警告。第三章第五節。あなたは盗んではならない……んじゃねッスかねぇぇ~~原罪的によぉ~~」
「もうやめて自動書記ッ! 俺が悪かった!」
「――了解」
「な、なによアンタ……なんかいつもと雰囲気違くない?」
「あ、あははー、まさかまさか美琴さん、そんなわけないですよー」
と、自動書記を背中に隠そうとするも「邪魔」の一言で突破されてしまう。
御坂美琴は上から下まで自動書記を観察すると、
「……っていうか、別人?」
限りなく正解に近いことを言った。
「訂正。私は」
「ああーーっとぉ!」
上条当麻は焦った。
しまったな、せめてこいつ(御坂美琴)が行ってしまうまで演技をお願いするべきだった、と。
「ええっと、別人っつーか、なんつーか……うん、実は別人なんだけど、なんですけどぉ! こいつは……その……」
「その?」
小首をかしげる御坂美琴たん萌えーとか言ってる場合じゃない。
こうなったのは大体俺の責任だ、なんとか言いくるめなくては!
「こ、こいつはッ! 仗助のおとーとなんですよぉぉーー!!」
「……」
「……」
「……」
「……へぇ~~」
やった、納得してくれた。
「つーかそんな気合入れて言うコト?」
「いやだって、お前今にも飛びかかって行きそうだったから」
「行かないわよッ あんた私をなんだと思ってるわけ?」
ビリビリ電撃少女だろう、という答えは胸の奥にしまっておいた。
「ま、確かに別人みたいね。あいつみたく舐めた雰囲気がないわ。でもほんとに弟なの?」
「そ、そっくりだろ? まあ双子というかなんというか、な?」
「ふぅーん、まっ、服やら髪やらセンスのダサいところも似たみたいだけど」
「お、おいおいー……ははは」
「……」
不意に、御坂美琴は鋭い目で上条当麻を射抜いた。
ぎくりと反応する間もなく、その鋭さはなりを潜めてしまったが。
「――報告。上条当麻」
「なんだ?」
「本体の精神回路に異常を確認。自己修復は不可能。しきりに 『 殴る、ぶん殴る 』 と悪態をついています」
「…………なんだ、今は絶対交代するなよ」
「はい」
「お姉さま……?」
不意に気配が現れた。
振り返れば淡い色の髪をツインテールにした少女がいた。その視線はまっすぐ御坂美琴に向いている。
制服も同じだし、後輩だろうか。
「まあお姉さま……まあまあお姉さま……! 補習なんて似合わないマネしていると思ったら、このための口実だったんですのね」
妙にエレガントな口調だ。
御坂美琴は、なぜか口元をひきつらせて彼女に向き直る。
「く、黒子ォォォ……? 念のために聞くけど……『 このため 』 って、どのため?」
「決まっています。それでどちらが本命でして? お二人ともとても個性的な髪型でいらっしゃいますけど……あら失礼」
「くろっ……!」
御坂美琴が放電し叫びかける。
瞬間、
ズガァァァンッとすさまじい音を立て、自動書記の裏拳が自販機をえぐった。
「ふぇっ……?」
「あらまぁ……」
「よ、自動書記……?」
三者三様に絶句して注目する。
「――警告。第十一章第一節」
自動書記がゆっくりと顔を上げる。
「大規模な精神回路の異常を本体より確認。対症法として、破壊衝動を発散させました」
刹那、ピーーーキュロキュログワンッと完璧に逝かれた音がして、自販機の口からガラガラとジュースがあふれ出てきた。
「まあまあまあ」
「ちょ、ちょっとこれどうすんのよ!?」
「俺に聞くなよ! てめぇらが地雷踏みまくったのがいけねーんだからな!?」
「何の話だっつーの!」
「ごたついてるようですわね。お邪魔になるといけませんし、わたくしはこれで」
瞬間ツインテールが掻き消えた。
「ちょ、黒子ーーッ!」
「て、空間移動<テレポート>……?」
呆然とする間もなく、自販機から出る音が警告音に変わる。
「もー! 不良……じゃない不良の弟! アンタのせいよッどうしてくれんの! 私今日は何もしてないのにー!」
「……しょうがない。上条さんとっておきの、あの技を使うしかないようですね……」
「ふえ?」
「――質問。どうするのですか」
「逃げるんだよォォォーー!!」
そういうわけで、少年少女は走った。
「はぁ、はぁ、へぇ……!」
「な、なんで私がこんな目に……」
数分後、御坂美琴と上条当麻は仲良くベンチで息を切らしていた。
汗だくの二人の鼻先に、突如缶ジュースが現れる。
「過度な運動の後は、水分補給を推奨します」
汗ひとつかいてない自動書記がこちらを見下ろしていた。
「お前……持ってきちまったのかよ、それ……」
「代金は置いてきました。問題ありません」
「あーそうですか……」
「あんたにおごられるのは癪だけど……ってきなこ練乳って……ノド焼け死ぬわ」
「あっつぅ!?」
上条当麻が受け取り、取り落としたそれはいちごおでんなる代物だった。
「なんなんですかこの悪意あるセレクトは……」
「――質問。これらの飲料にどのような違いがあるのですか」
飲めりゃそれでいいじゃねッスかぁと言いたげな顔に、上条はため息をついた。
「お前って結構おおざっぱだな……」
いや、生まれてこの方魔道図書館を守るばかりだったのだ。常識知らずなのも仕方ない……のか?
と上条が思考を回していると、不意に背後から
「お姉さま」
とデジャヴを感じるフレーズが聞こえてきた。
またかッと思いつつも、完全にへたばりきった上条は首だけをそらして声の方向を見る。と、上条当麻は目を疑った。
なぜかそこに御坂美琴が立っていたのだ。
しかし御坂美琴は隣に座っている。
じゃあ、あの御坂は何なのだ!?
「妹です、とミサカは問われる前に答えました」
「妹……?」
妹、よく似た妹だ。っていうか瓜二つだ。
しかし、御坂美琴の妹ということは当然名前は 『 御坂ナニガシ 』 になるはずなのに、一人称が 『 ミサカ 』 とはどういうわけだ。家族で混乱しないのかそれは。
どこかズレた疑問にぐぬぬとなった上条は、御坂美琴の顔付きが険しくなったことに気づかなかった。
御坂妹の瞳がスゥーッと自動書記にうつる。それとピッタリのタイミングで自動書記が顔を上げた。
「――質問。あなたと私は初対面ですか」
「夢で逢わない限りは初対面です、とミサカはナンパの常套句を先取りしつつ答えました」
「あなたをナンパするつもりはありません」
「ではなぜわかりきった質問をしたのですか、とミサカは問い返します」
「――回答。『 知り合いの知り合い 』 との遭遇は、私にとって初めてのケースです。
もしあなたが 『 知り合いの知り合い 』 でありかつ 『 初対面の人物 』 ならば理想的な対応を取らせていただきたいと思い、確認しました」
「なるほど、とミサカはわかったような顔をしてみせます」
「……」
「……」
「改めて理想的な対応を行いたいのですが、構いませんか」
「わかりました、とミサカは許可しました」
「……」
「……」
「はじめまして」
「はじめまして、とミサカは恭しく頭を下げます」
なんだこれ、と上条当麻は強く思った。
自動書記も自動書記だが、御坂妹も相当メンドくさい性格をしている。
下手に耳を傾けると精神を摩耗されそうだ。
と、突如上条の首に美琴の腕が巻き付いてきた。ギョッとする間もなく内緒話の距離まで顔を近づけられる。
「あんた、あれ、ホントーに 『 弟 』 なんでしょうねッ?」
「えっ?」
「…………いや、なんでもないわ」
「はぁ?、と」
美琴はそのまま上条を突き放すと、妹に矛先を向けた。
「おい妹、あんたは一体どうしてこんなところでブラブラしてんのよ」
「どうしてかと問われれば、研修中です。とミサカは簡潔に答えます」
「……研修……ね。妹、ちょろっとこっち来てみよっか」
と言うなり、美琴はベンチを立って妹と肩を組んだ。
「いえ、ミサカにもスケジュールはあります、とミサカは」
「いいからッ!」
今度こそ上条当麻はギョッとした。
凝視した美琴の顔は、今まで見たこともないほどこわばっている。
「……来なさい」
そのまま妹は美琴に引きずられていった。
去っていく背中までそっくりだ。
「……複雑な、ご家庭なのかな?」
日が落ちて、夕日に染まる学園都市。
上条当麻はブラブラと帰路を行く。
「……で、どうだったよ。学園都市は」
「はい。有意義でした」
15秒ほどの沈黙を置き、
「……もう一か月程度要求したいところです」
「さすがに無理だろそれは……ってあれ?」
呆れ顔で隣を見ると、自動書記が消えていた。
視線を後ろに向けると、自動書記が直立不動の姿勢で立っている。そしてその更に後ろには御坂美琴が棒立ちしていた。
「あれ……? 御坂……」
「今帰りですか。とミサカは一応の礼儀として問いかけます」
「妹っ?」
御坂妹は軽く顎を引いてそれに答えた。
「はーっ、お前ら本当によく似てんなあ。つーか、そのゴッツイ軍用ゴーグルは何なの?」
と指させば、御坂妹は
「ミサカはお姉様と異なり電子線や磁力線の流れを目で追うスキルがないので、
それらを視覚化するデバイスが必要なのです。と、ミサカは懇切丁寧に説明しました」
そう言って装着してみせた。
「へー……けどお前、さっき姉貴に連れて行かれなかったっけ?」
「…………ミサカはあちらから来ただけですが。と指さします」
上条は少し違和感を覚えたが、「ふーん?」とうなるだけにとどめた。
とどめた瞬間、突風が吹いて御坂妹のスカートをまくり上げた。
薄い布切れはあっさりガードを解く。
そして御坂妹は姉とは違い短パンは穿かない派のようであって、要するに上条当麻は彼女の縞々パンツを目撃してしまったのであった。
このラッキースケベに上条当麻は思わず後退った。風に流され、足元にテニスボールが転がってくる。
「ぐわっ!?」
とある一点を凝視している中で気付けるはずもなく、上条は思いっきりボールを踏んで派手にずっこけた。
ヒュウウ……とエッチな風が収まり、スカートが所定の位置へ戻る。
上条当麻は身を起こす。
御坂妹は無言だった。
「う……うおおぉーーッ!! すみませんッッ!!」
今更目を隠す上条に、平坦な――平坦すぎる声がかかる。
「何に対しての謝罪ですか、とミサカは首をかしげます」
「だ、だからっ、パ、パンっ……!」
「パン……? なんなのでしょうか、とミサカは傍らの少年に意見を聞きます」
「――熟考しましたが、私ではわかりかねます」
「なんだ、俺か!? 俺がおかしいのか!?」
あくまで頭の上にクエスチョンマークを掲げる二人に、上条当麻は妙な疎外感を覚えた。
こいつらに羞恥ってものはないんだろうか。
うん、ないって言うんだろーなーこいつらだったら。
ここまで本人がノーリアクションでは滾るものも滾らず、上条当麻は微妙な気持ちを抱えてまた歩きだした。
その後ろをサウンドオフで二人がついてくる。気配もなしについてくる。
会話もなく、ただ後頭部を見つめる視線だけは感じ取れた。
何考えてんの? 何考えてんのこいつら?
ものすごく堪えるんですがこの状況ッ!
クソックソッ、仗助カムバックッ!
「お前らって似てるよなー……なんていうか、中身とか口調とか」
圧迫感に耐えかね、上条当麻は自分から話題を振った。
瞳孔が開き気味の瞳が四つ、同じタイミングでまばたきする。
「そうですか」
「そうではありません、とミサカは憤慨のポーズをとります」
「いや大体同じだろ」
「彼にはユーモアというか、茶目っ気が足りません。とミサカは行儀悪く彼を指さして見せます」
お前が言うか、と上条当麻は心ひそかに突っ込んだ。
御坂妹は無表情かつ熱のない口調で続ける。
「ユーモアは大切です、とミサカは強調します。ユーモアは人間関係を円滑にします。
ミサカもこのユーモアあふれる口調にしてから、初対面の人にも一発で覚えてもらえるようになったのです、とミサカは熱弁します」
「いや確かに印象には残るけど」
「――検討の余地ありと判断しました」
「マジで!?」
「頑張ってください、とミサカは上から目線でエールを送ります」
まあ、こいつらがいいならいいか……と上条当麻は諦めの境地に達した。
「そういや御坂妹、お前の家って……ってあれ?」
隣を見ると、御坂妹と自動書記が消えていた。
案の定後方で、車道を見たまま一時停止している。
「なにやってんだお前ら。とうとう物理的に俺を置き去りにしようってんですかー?」
すると、御坂妹は黙って車道を指さした。
いや、向こう側の歩道を見ろと言っているのか。
視線をスライドさせると、同じくこちらを凝視している猫がいた。
行儀よくお座りまでしている。
「……おい」
「猫です」
「ええ猫です、とミサカはわかりきったことを繰り返します」
少年少女は首を90度曲げた姿勢のまま微動だにしない。
視線すら合わせずに会話を続ける。
「猫が好きなのですか、とミサカは愛らしい猫を見ながら質問します」
「私に好き嫌いの感情はありません。ですがある人物から人格的な影響を受けたことにより、猫は他に比べ興味深い存在となっています」
「あの猫はまだ生後一年も経ってないのではないでしょうか、とミサカはじっくりと観察した結果を述べます」
「発育不良の可能性も否めませんが、その通りでしょう」
「あの猫は見たところ野良猫ですね、とミサカは確認します」
「はい。同意見です」
「このままだと保健所に回収される恐れがあります、とミサカは指摘します」
「おい、お前ら」
「保健所に回収された動物がどのような扱いを受けるか知っていますか、とミサカは問い詰めます」
「言っとくけどなー、学生寮じゃペットは禁止だぞー!」
「保健所の情報は未収録ですが、口ぶりから察するにいい扱いは受けないのでしょう」
「おい自動書記さん? なに車道に身を乗り出してるんですか?」
「止めてはいけません。とミサカはあなたの腕をがっちりと掴みます。彼は一つの命を救いに行くのです。とミサカはこの行動を美談に仕立て上げようと試みます」
「あっ、コラッ! 行くなって危ねーよ 『 自動書<ヨハネの>――……ってオイオイ!」
学ランの背中は危なげなく車の間を縫って進む。
それを目で追いながらハラハラしっぱなしの上条だったが、無事向かい側についたのを見届けると大きなため息を吐いた。
「お前らってよー……」
「あの猫は三毛猫でした、とミサカは報告します」
「は?」
「オスならば希少価値ですよ、とミサカはここぞとばかりにアピールします」
「…………えっ? 何? 俺が飼うの?」
華奢だ、と自動書記は思考した。
掴めばぽきりと折れてしまいそうなほど細く、小さい。
そんな子猫は、自動書記があと一歩というところまで距離を詰めても逃げ出さなかった。
それどころか小さな体を自動書記の足に擦り付けてきたのである。
柔らかい感触。ほどよいぬくもり。そして、気持ちよさげに細められた猫目。
「――精神に原因不明の障害を確認。自己修復…………成功」
自動書記は色も温度もない瞳で子猫を見つめると、そっと手を伸ばした。
抱こうとしたのか撫でようとしたのかは判然としない。
ただ、触ろうとしたのだ。
子猫も、それを望むように首を伸ばしてきて――……
「くっついてくンじゃねェつってンだよッ糞ガキッ!」
刺々しい声と共に、鋭い風が自動書記の頬を叩いた。
何かがものすごい勢いで通り過ぎて行ったのだ。
未知の現象にビビってしまったのだろう。三毛猫は体中の毛を逆立て、それこそ突風のように走り去ってしまった。
自動書記はしばらく、猫に触れようとした体勢のまま地面を見つめていたが、不意にスゥッと背後に向き直った。
すなわち、風の通り過ぎて行った方向に。
そこには夕日に照らされた、ひょろ長いシルエットがあった。
「……あァ? 何だ、何だよ、何ですかァ? 誰に向かってガンくれてやがンだよォ?」
あれ?スケジュールに異常アリ?
ちょっとォ、アレイスターさんどうなってるんですかぁ?
ちょっとォ、アレイスターさんどうなってるんですかぁ?
反射できたとしても一方さん動かないし承りの洞察力と
スタプラの精密さで木原神拳余裕だろうな
スタプラの精密さで木原神拳余裕だろうな
数キロ先から飛んで戻ってきた極小のラバーズを見切って摘まむとか、スタプラはピンセット並みだな。
クレDなら適当に飛んでくるもん弾きつつ直しつつワンパンKO余裕だな
マズいのは突風ぐらいだけど一方さんド低脳だから…
マズいのは突風ぐらいだけど一方さんド低脳だから…
基本禁書キャラはクサレ脳ミソだからなあ・・・能力が一人歩きしてるって感じ
削岩機レベルの破壊力を顕微鏡レベルで制御する
それが承太郎おじちゃん
それが承太郎おじちゃん
俺も参加しといてなんだけど一通自身は実験止めてほしいって思いながら戦ってるんだからな
それに原作読めばわかるけど反射以外の操作あんまりしないし戦闘方法とか考える必要が無い環境だったから
原作でも低脳っぷりは結構触れられてるしそんなに叩いてやるなよ
それに原作読めばわかるけど反射以外の操作あんまりしないし戦闘方法とか考える必要が無い環境だったから
原作でも低脳っぷりは結構触れられてるしそんなに叩いてやるなよ
せっかくのクロスSSなんだからどちらかを上げて、どちらかを下げるようなことは言ってくれるな
まあアラーキーも幻覚ダメージ描写しまくってるしな。
ポルポの指とか。
ポルポの指とか。
俺がド低脳だからかわからんが
スタプラはともかくなんでクレDと一通さんの相性が悪いんだ?
スタプラはともかくなんでクレDと一通さんの相性が悪いんだ?
まあジョジョも嘘つきではないのですとか探したら結構粗があるしな スゴ味で誤魔化してるけど
ただ禁書はその粗がやたら・・・
>>495
タコはイタリア語でポルポ タコは自分の指を食うことがあるという高度なギャグらしい
ただ禁書はその粗がやたら・・・
>>495
タコはイタリア語でポルポ タコは自分の指を食うことがあるという高度なギャグらしい
ジョジョはホラーとかサスペンスみたいな表現を用いようとするから、読者に対するハッタリと言っていいかなアレは
ポルポの異常性というか、何かヤバイってのは印象付けられると思うけどな
ポルポの異常性というか、何かヤバイってのは印象付けられると思うけどな
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