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元スレ上条「その幻想を!」 仗助「ブチ壊し抜ける!」
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『――……』
『――さか、――が――生きて――』
『――ジョ――』
『俺た――は、ふたりでひとり――!』
『――ョジョ――!』
『――船は――く――はつする!』
『 ジョナサン ! 』
『――しあわ――せに、エリナ――』
『――――』
~~~
「ハッ!」
「えっ」
「……」
「……」
ある日、東方仗助が目を覚ますと見知らぬ少年がいた。
忍び足で。枕元を横切るところだった。
不法侵入者は見つけた時点でぶん殴っても正当防衛になるのだろーか?――。
徐々に目が据わっていく東方仗助に、少年は飛びのく。
「待って下さい東方さん。上条さんは一週間も高熱出して学生寮に缶詰になっているアワレなあなたをお見舞い兼、看病しにきた善良な上条さんです!」
「ドロボーって口が回るって言うよなぁ~~」
「そんな格言初耳ですけど!?」
「俺も初めて聞いたぜ」
寝起きゆえ東方仗助は喋るのがだるかった。あごに鉛をつけたまま喋っている気分だったが、彼は上体を起こした。だって気になるのだ。
「で、どちら様ッスかァ~~?」
「……ハイ。どうも初めまして。お前と同じクラスの上条当麻です。ちなみに今日の日直」
「日直……? はぁ、どーも」
ペランと目の前に差し出されたプリントを受け取る。
「悪いとは思ったけど、ピンポン押しても返事ねーから心配になってさ。ほら、中で倒れてたりとか。大家さんに鍵開けてもらったんだ」
「あーピンポン、アレ壊れてるんスよ。手間ァとらせたみたいで、どーもスンマセン」
言うなり軽く頭を下げた東方仗助を見て、上条当麻はいやはや、別人のようだと舌を巻いた。
成り行き上ハジメマシテと言ったが、ほんとのところ、上条当麻が彼に会うのはこれが初めてではない。
マー、仕方ないかもな、と上条当麻は早々にあきらめた。
彼が自分に与えた印象と、自分が彼に与えた印象をはかりにかければ、前者の重みに後者は天までぶっ飛ぶだろう。
上条当麻は忘れもしない。
今から一週間前。七月第2週目の木曜日。そういくつ寝ると夏休みというウキウキ空気の中に、ちんまい担任がぽんと爆弾を放り込んだ。
「ちょっぴり急ですけれど今日から転入生が来るのですよ~。なななんと転入生は! イギリス人とのハーフさんなのです! そして男の子なのです! おめでとう子猫ちゃんたち~残念でした野郎ども~~」
おーとキャーでおキャーとなる教室。
その隅では上条当麻の級友である青髪ピアスがブツブツ言って、土御門が合いの手を入れていた。
「おっしぃぃ~~もう少しXX染色体がきばってくれはったら教室に咲く一輪の花! になっとったんに」
「逆に考えるんだぜい。安易にハーフ男になびかない気高い花が見つかると!」
「そしてその花は高嶺の花でしたーってオチがみえみえや!」
「逆に考えたら転入生が女子全部持ってくんじゃねーか」
上条当麻は全うな意見を述べたつもりだったが、級友2人は鉄拳でそれに答えた。
かくしてクラスの三馬鹿デルタフォース同盟による対転入生へのリアクションは終了。
同時にベイビィ・フェイスの担任が声をかけ――そいつは入ってきた。
瞬間クラスの大半が半笑いのまま固まった。だってそいつは――近年まれに見る見事なリーゼント頭だったのだ。おまけに夏も中頃というのに学ランを羽織っていて、これがまた派手な改造が施されている。
日本文化を履き違えちゃったのかしらとクラスがおろおろしているのを尻目に、そいつは『漢字』四文字の氏名を黒板に書き、流暢な日本語で自己紹介した。
「M県から転校してきた『東方仗助』です。ま、ドーモ、よろしく……」
顔は悪くない。むしろイケメンだ。彫りは深いが日本人的で、目玉だけ外人色をしている。
学ランはまだよかろうと上条当麻は思う。ラブアンドピース。襟元には♂と♀を組み合わせたイカリマーク。いいじゃないか、プリンスは俺も好きだ。
ただ、なんというか、彼の首から上だけは学園都市にとって受け入れがたい前時代性を持っている。
よーするに「君のそのヘアスタイル笑っちまうぞ、20~30年前の古臭いセンスなんじゃあないのォ~~!」ってことである。
「なあ、あれなんなん? 受け狙いなん? ここ僕笑ったほうがええん?」
「……」
転入生の席は近かった。青髪の声は響いた。
ついでに言うと転入生の顔は既にこっちを向いている。
だが誰も彼をいさめないのは、それがみんながみんな聞くに聞けないことだったからである。
なるほど、人柱だと上条当麻は納得した。
「ごっつ気になるわ。今時こんな奴おるんかーっちゅう感じ。なんであんな90年代のツッパリ漫画から出てきたみたいな髪形しとるんやろ」
「つまり?」
「ないわー」
土御門に答えた瞬間、青髪ピアスは宙を舞った。
クラス中が上を見て口をあけた。誰も何も言わなかった。美しい放物線がそこにはあった。
ドグワッシャァァァン。
着地はダメだ。
「おふぅ……!?」
「テメー今なんつった? このヘアースタイルがサザエさんみてえだとォ?」
「いやどっちかっつーとスネオうげええ!!?」
「な、何だ今のは!?」
「音速で迫った転入生が青髪に強烈なアッパーを食らわせたんだ!」
「み、見えなかった……この俺の目にも!」
ざわざわする教室。
だが大体みんなマジじゃないのは2人の行動言動に『マジ』が感じられないせいだろう。
だが上条当麻はわかった。なんかわかってしまった。
マジギレだこれ。
そして半笑いなのでわかりにくいが、青髪はマジビビリしている。
「俺の頭をけなした奴は誰であろーと許さねえ~テメーが頭刈り上げられてえか!? アァッ!?」
「ま、まってえな、誰もけなすやなんて」
「確かに聞いたぞコラァァーー!!」
「あひぃ!」
ガグォォンッの派手な音と共に青髪の傍の机が蹴飛ばされる。
その脚がアメ細工のようにぐんにゃりイッてるのを見て、上条当麻は思わず転入生の肩を掴んだ。
「おい! やめろ、やりすぎだ!」
「あ゛ァ?」
瞬間、上条当麻は止めに入ったのを後悔した。
それでも彼は持ち前の正義感で何とか踏みとどまる。結果、双方『ゴゴゴゴゴ』を背負ってのにらみ合いに発展する。
「ひ、ひぇぇ~! 溌剌としたHRが一瞬でルール無用の無法地帯に~!」
泣きそうな担任の声。実際ここがルール無用の世紀末高校だったなら「テメーよくも青髪を!」「ひき肉にしてやる!」からの大乱闘は必至だったろうが、あいにくというか幸いというか、とある高校の生徒の多くはヘタレもとい平和主義だった。
「大丈夫か青髪、しっかりしろ!」
「つ……つっちー……僕の墓前には……小萌センセを供えといて、や。ガクリ」
「青ピィィィーーー!!」
「青ピ!」
「青ピくん!」
『――青ピ! 出番はあるのに本名その他もろもろの詳細は一切明かされず、アニメ化においてはその数少ない設定を無視され軽快なエセ関西声になっても常にギャルゲ的ヒロインを追い求め続けた青ピ! 俺たちはお前のことを忘れない!――』
「み、みんな~~! ううぅ、席に……席についてくださいなのですよ~~」
「ハイ!」
「青ピが生き返った!」
「小萌先生スゲー!」
おまけにマジでないので、以上のようになる。
「東方ちゃん! ちょっと先生と一緒に来るのですよ!」
そこでガンを飛ばしていた転入生の雰囲気が変わった。
剣呑な目つきがくにゃっと鋭さを失い、いうなれば『キョトン』とした顔になる。
「どーゆーつもりなのですか! クラスメイトを殴るなんてー!」
小萌の追い討ちに、転入生はぐるっとクラスを見渡すと、青くなって頭を抱えた。
「や、やっべぇ~、またやっちまった~~じょ、承太郎さんにしかられちまう……」
「はぁ?」
なんて奴だと上条当麻は目を回しそうになった。下手すれば退学上等の狼藉を働いたというのに、『こいつは承太郎さんとかいうひとに叱られることだけを恐れている』。
「ほら、いいからちょっとこっちでお話しするのです!」
彼の独白を聞いたのは上条当麻だけだったらしい。転入生は有無を言わさず担任に引きずられていった。
「……ちびったわ」
打たれた顎をさすりつつ言う青ピに反論するものなどいない。
そこでようやく上条当麻はクラス全員きちんと2人の『マジ』を感じ取っていたのだと気づいた。
なんということだろう。
人柱になった人間は自分が人柱だと知らないものなのだ。
第一印象は奇妙。第二印象も奇妙。
そんな東方仗助は、その日結局クラスに戻ってこなかった。
その日以来、ずーっとクラスにくることはなかった。
サボりなんだろーなー、きっと前の学校でもあーいうヤンチャしておんだされたんだろーなー、だから夏休み前のこんな半端な時期に転入してきたんだろーなー。さもありなん。
これが転入生・東方仗助に対するクラス一同の見解だった。
「上条ちゃん、ちょっとお話ししたいのですよ」
だが、転機は来た。
「東方ちゃんのことなのですけど、実はあの日お説教中に倒れちゃったので早退させたのです。それからずぅっと熱が下がらないみたいで……」
「本当は担任の私が行ってあげたいのですけど、今日はどうしてもはずせない用事があるのです」
「あの子一人暮らしなのですよっ。荷解きもまだって言うし……きっと今頃は寮のベッドの上で、うんうん一人さびしくうなされているのですよ……さびしさのあまりカビでも生えてやしないかと先生は心配で、心配でぇ……!」
とうるうるする担任教師にうっかり同意してしまった結果、上条当麻は一週間分のプリントを押し付けられてしまった。
その時点での彼の気持ちは
「不幸だ……」
その一言に尽きた。
~~~
リーゼントのない東方仗助は毒気もなかった。
その事実は上条当麻を饒舌にさせた。
「お前も大概災難だよなー。転校初日から風邪でぶっ倒れちまうなんて」
「別にィ~? もう熱は大分下がったみたいスから」
ッスから帰れ、いや、帰ってもいいぞという副音声は聞かなかったことにして、上条当麻は部屋を見渡した。
担任の言ってた通り、ダンボールの山以外みるべきところはない。
「ちゃんと食ってるか?」
「え?」
「いや、風邪の時ほどきちんと食わねーと、って話」
「あ~そーいや今何時スか」
「五時ぴった」
「夕方の? やべ~俺一日寝ちまってた。つか宿題プリント多すぎねーか?」
「一週間分だしな」
「はぁ? ああ……今日なん曜スか」
まさかだろ、と思いつつ告げたら、案の定東方仗助は驚きにぶっ飛んだ。
どうやら四日か五日かぶっとおしで寝続けていたらしい。それって昏睡っていいませんか。
まさかだろ。
そこで上条当麻持ち前のおせっかい心が動いた。
「メシ……よかったら作ろうか?」
「はい? いやいッスよ、そんな気ィ使わねーでも」
「気を使ってるのはお前だろ? 引っ越したばっかなんだから、頼れるご近所さんには頼ってろよ」
「ご近所ぉ?」
「ああ。実を言いますと、上条さんは『お隣さん』なのですよ」
これが小萌に白羽の矢を立てられた理由である。
東方仗助は「へ~」と「そッスかぁ~」を二度ほど繰り返してベッドから降りた。
「『上条さん』っしたぁ? せっかくだけどまだ食器やらほとんどダンボールの中だからよぉ~~」
「だったらなおさら手伝うぜ。俺も独り暮らしだからわかるけど、一人のとき風邪ひくとしんどいだろ? 勝手に上がりこんだお詫びと思ってくれりゃいいからさ」
東方仗助は困った顔で前髪をかき上げた。
「とりあえず換気しようぜ。五日も閉め切ったままじゃ空気もこもってるだろーし」
「やや、そんくらい自分でやりますッスよぉ~」
「いやいや病人は座ってろって」
「いやいや」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや」
シャッ。
ドドド。
ドドドドド。
ドドドドドドドドドド。
カーテンを開けた先の光景にふたりは固まった。
「……上条よぉ~~なんか、ベランダの布団とか干すところによ~なんか見えるんだけどよ~幻覚かこいつァ?」
「いや、残念ながら上条さんにもしっかり見えていますよ東方さん」
白い修道服を着たシスターが、ベランダにぶら下がっている。
ふたりは顔を見合わせ、頷きあうと窓を開けた。
ガララッ。
その音にピクリと反応したところを見ると、死んではいないらしい。
「おな……」
シスターの弱弱しい声を、東方仗助は『ただのうめき』と思い、上条当麻は『遺言の一種』だと思った。
「おなか……すいた……」
結果的にどちらでもなかったのはふたりにとって幸運だったのか。
次いで響いた『グゥゥ~~』の音に、ふたりは再び顔を見合わせた。
その後、「おなかいっぱいごはんを食べさせてくれるとうれしいな」と百ワット分の笑顔を振舞われた上条当麻は、
自分の部屋にとって返して冷蔵庫の中身が全滅していることに気づき、やむをえず法外とも言える値段のコンビニ食糧を買いに行く羽目になった。
やはり自分は不幸だ、と上条当麻は考える。
「悪いな。金借りちまって」
キャッシュカードは踏み砕いた。
「別にィ~~作ってもらう立場だしこのくらいしねーとよォ」
「おいしいんだよこれ、すっごくおいしいんだよ!!」
インデックスと名乗った少女は施しに慣れているのか、握り箸のままパクパク胃の中に食料を放り込んでいく。
対して東方仗助は落ち着かない様子だ。
そうだな。病み上がりのところに2人も来訪者がきたら困るだろう。もっと言やぁ迷惑だろう。誰だってそー思う。俺だってそー思う。
上条当麻は心底同情した。が、すぐ撤回した。
「……あのー東方さん? なにをやってるんでせうか」
「髪のセット。ビシッ! ときめとかねーとよォ~~なんか恥ずかしいじゃあねえか~」
「居心地悪そうだったのはそのせいかい!」
気持ちはわからんでもない。だがどっかずれてる。
リーゼントが何とか形になってきたあたりで、少女は箸をおいた。
「ごちそうさま! とってもおいしかったんだよ!」
「えーっと……『インデックス』だったか? なんでお前さんはあんなところに引っかかってやがったんです?」
「落ちたんだよ」
「自殺志願者でしたか!」
「グレートにヘビーだな。まぁ~あれだぜ。世の中色々あるけどよぉ~前向きに生きてりゃなんとかなるってもんでよ~」
東方仗助は鏡越しに少女を見ながら言う。
「むぅう。私はシスターで聖職者なんだよ! 自殺なんて冒涜的なことするわけないかも!
言ったでしょ、『落ちた』って。本当はビルからビルに飛び移ろうとしてたんだよ。追われてたから」
「追われて……?」
上条当麻は不幸の神――そんなものがあるかは不明だが――の足音を聞いた気がした。
さらっと流したが、八階建ての建物から建物へ飛び移ろうとする時点で思考がおかしい。
そういえばインデックスという名も偽名っぽいではないか。
「お前さ……IDとかもってる?」
「あいでぃー?」
おーのー。間違いない。不法入国者だ。上条当麻は戦慄した。
しかも彼女自身は自覚していないときたものだ。
「それでよぉ~なんでインデックスは追われてんだァ?」
「多分、私の持ってる十万三千冊の魔道書が狙いだと思う」
これにはさすがの東方仗助も彼女を振り返った。
上条当麻は茫然自失した。どうしよう。
なんか献身的な子羊がどうとか、死者の書がどうとか全部耳をすり抜けていく。
どころかまじめに理解しようとすると頭痛がしてきたので上条当麻は片手を挙げてインデックスを制した。
「ごめん、無理だ。俺も異能の力は知ってるけど……魔術は無理だ」
「はぁ……? そこんとこよくわかんねッスねぇ~魔術も超能力も同じ『異能』じゃねえんスか?」
「そーだよ、超能力は信じるのに魔術は信じないなんておかしな話!」
インデックスは憤然と、東方仗助は純粋に疑問だという様子で返してくる。
さて、密入国者と外部からの転入生。学園都市にさっぱり馴染みがない2人にどう説明すればいいか、上条当麻は頭を絞った。
「だって魔術は一種のオカルトだろ? 超能力は科学的に証明されてるけどさ。
キリストは信じるけど死者の復活は信じない、みたいなもんだ」
「わかりにきィ」
「そこはかとなく馬鹿にしてるね?」
そこで考えることをやめたのか、東方仗助は再び鏡に向かった。
インデックスは「うさんくせー」という上条当麻の心を読んだようで、ますます不機嫌顔になる。
「そこはかとなく馬鹿にしてるね!」
「あのなぁ~そこまで言うならその魔術ってのを見せてみろよ」
結果。
中略、少女は全裸になった。
上条当麻は何が起こったかわからなかった。
全裸で胸を張るインデックスも何が起こったかわからなかった。
東方仗助はそもそも見てなかった。
「きゃあああああーーーーーー!!!」
結果。
中略、上条当麻は噛みつかれまくった。
「マー、とにかくこれで上条の『右手』もインデックスの『歩く教会』も証明されたわけだしよぉ~」
「……いったん仲直りしねッスかァ~?」
ビシッ! と決まったリーゼントの下で温厚そうな顔が困ってる。
お互い背中を向けた少年少女を、東方仗助は交互に見やった。
上条当麻は痛そうに噛み痕をさすり、インデックスは毛布に包まってプルプルしている。
俺が五日間使い倒したヤツだけどな、臭くねーのかな、と東方仗助は少し逃避した考えをめぐらせた。
「そうだよな……悪かった、お前病み上がりなのに」
「いやそーじゃあなくって、やっぱケンカはいけねッスよ、ウン」
「ケンカじゃないよ。せーとーな怒りなんだよ」
「だからああなるとは思わなかったんだって」
「もう痛み分けってことでいいじゃねッスか」
なだめつつ東方仗助の手はちくちく針を動かしている。
案外、器用な男だった。
「あんなことがあったのに平気な顔してるんだもん」
「全然平気じゃ、俺だってなあッちょっとはドギマギ……」
「バカにして」
「……悪かったって」
「……」
じと目で振り返るインデックスに、上条当麻は幼いころ買い与えてもらった電気ネズミの万歩計を思い出した。
「おし、できた」
そこで東方仗助が修繕の終わった修道服を広げた。急ごしらえだがパッと見おかしくない程度にはきれいに仕上がっている。
これにはインデックスも顔を輝かせた。
「わあ~~ありがとう! あなたの頭ってちょっと個性派だから心配だったけど、まともに直ってよかったんだよ!」
上条当麻はどっかに行ったと思ってた不幸の神が全力疾走で戻ってくる音を聞いた。
「このクソアマァーッ!! 誰の頭が鉄人28号だとォォーー!!?」
「ひぃぃぃやぁぁぁあ!」
「落ち着け東方! さすがに女の子相手に暴力はまずい!」
ツンツン頭の少年がリーゼントの少年を羽交い絞めにし、ベッドの隅では全裸の少女が怯えている。
第三者がこの光景を見たら何を思うのだろうか。
「きゃああぁぁあ!」
「離せや上条! テメーも一緒に殴られてーか!」
「いいや離さねえよ! はっきり言うぞ……東方、お前は間違ってる!
何をそんなに怒ってるかはわからねー……けどな! だからこそ暴力で解決なんかしちゃいけねーんだよ!
怒りってのは裏を返せば『大事なものを傷つけられた』っていう事実がある証拠だ!
その大事なものが何なのか、お前はお前の髪形をけなしたやつに伝えたか!?
伝えず怒りだけを相手にぶつけて……それで大事なものを守ったっていえるのかよ!?」
「ゴチャゴチャゴチャゴチャうるすぇんだよゴラァーーッ!」
「あ、だめ、話が通じる状態じゃねー!」
説教が通じないなら腕力でどうにかするしかない。
だが確実に引っ張る力大なり踏ん張る力に傾いていっている。このままではジリ貧だ。
「どらああああ!!!」
気合と共に、東方仗助が大きく一歩を踏み出した。
と、その瞬間上条当麻は奇妙なものを見た気がした。
東方仗助の腕から、うっすら透けるもう一本の腕が飛び出したように見えたのである。
いや、実際腕はあった!
その腕は上条の拘束を『すり抜け』、まっすぐインデックスに拳を繰り出した!
「インデックス! 見えないのか、よけろォ!!」
ドグォォンッ!
「きゃあ!?」
上条当麻がとっさに声をかけ、インデックスがとっさに反応できたのは幸いだった。
『歩く教会』の性質が頭に残っていたのか(上条当麻の右手で既にただの布切れと化していたが)
インデックスはとっさに顔の前に修道服を突き出した。
『透明の拳』はチャチなガードをあっさり貫く。と思ったら貫かれた穴が直った。
――いや、直ったと言えるのか?
破れた面はきれいに繋がったが、服自体はグニャグニャと妙なデザインに変形している。
「どこに隠れやがった! 出てきやがれェーー!!」
これが意図してやった攻撃ならもうお手上げだったが、どうやら東方仗助は『腕』を出したことすら気づいてないらしい。
それどころか『いないいないばあ』をしかけられた赤ん坊のように顔を隠しただけの相手を消えたと思い込んでいる。
どうやら今の東方は『見えてるけど見えていない状態』らしい。突進するバッファローのように聞くものも聞けず暴れている。
猪突猛進――前しか見えてない?
「これだ!」
「うおッ!?」
上条当麻は全力で羽交い絞めていた腕を解いて、バランスを崩したところに脚払いをかけた。
前に進むことだけしか頭になかった東方仗助はあっさり床に転がる。
「よしとった! インデックス、押さえるの手伝ってくれ!」
「う、うん!」
「放せスッタコがァ~~ッ!!」
ガチャッ。
「たのもー! ピンポン押しても出ないから勝手にあがらせてもらったぜい!」
「不幸体質のカミやんが例によってボコボコにされてないか心配できちゃったでー!」
『……』
シィィーーン。
マウントポジションをとった同級生。とられてる転入生。傍に立つ、毛布を羽織っただけでほぼまっぱの少女。
第三者がこの光景を見れば何を思うのだろうか。
「ロリの上に……タッパある不良まで……」
「カミやん……恐ろしい男だぜい……」
「誤解だ!!!!」
今日の投稿は、終わりですか?
終わりだったら、言ってくれるといいかな
偉そうで、すみません
終わりだったら、言ってくれるといいかな
偉そうで、すみません
あのあと「大丈夫、僕は信じとる、信じとるよ。だから近づかんで僕おいしゅうない」とか「大丈夫、今日日ジェンダーの違いや血縁で愛が左右されることはないぜい、だから安心してああ近づくな俺おいしくない」とか散々言われた末に逃げられた。
学園生活終わりの予感。
おまけにまた他人にすっぽん姿を見られたインデックスになぜか齧りつかれ、
その際おさえる手が緩んだせいで東方仗助から顔面に手酷い一発を食らってしまった。
なんだかもう、満身創痍だ。
「でも元気を出して上条さん……人生とはそういうものだから……」
上条当麻は机に突っ伏して自分を励ました。
とても悲しい光景だった。
「あー、なんか俺のせいでスンマセン」
「そ」
「そうなんだよ! どうしてくれるのかな! このめったやたらと前衛的デザインにされた服を~~ッ」
「怒る役ぐらい譲ってくれよ……」
「今日は厄日なんだよ!」
「こっちのセリフだっつーの!」
怒り役を譲ってくれる気はないらしい。インデックスはグニャグニャの服を抱えたままベッドに突っ伏した。
上条当麻も再び机に額を押し付ける。
「あのォ~~」
「ハイ?」
顔を上げると、非常に決まり悪そうな東方仗助がいた。
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「ほんとスンマセン。俺、髪型のことけなされると抑えが利かなくなるタチで……こー、なって周り見えなくなっちまうんスよ。
だからあんま覚えてないんスけど……でも本当、ハンセーしてます」
「……けなされるのが嫌なら、もうちょっと今風の髪型にしたらいーんじゃないでせうか?」
そこで東方仗助の顔に影ができたので、上条当麻は慌てて退った。
「いや! 別にそのヘアースタイルがどうこう言うわけじゃなくってですよ!」
「……これァッスねぇ~~」
思ったより冷静な声に上条当麻は逃げをやめる。
「時代遅れって言われてんのもわかってるんだけどよ~これァ、尊敬してるヒトと同じ髪型なんスよ」
「尊敬?」
「命の恩人なんス。その人に憧れてるっつー『しるし』なんスよ」
一瞬、東方仗助の瞳がキラリと瞬いたような気がして、上条当麻は彼を凝視した。
「でもそれで女の子殴ってちゃあザマーねぇッスよね~~」
「いや、いいと思う」
「ハイ?」
「ああいや! 人を殴るのはもちろんダメだけどさ、そういう……なんていうか、
本気で怒れるほどの『人生の手本』がいるっていうのは……いいことだと思うぜ?」
東方仗助の顔がちょっぴりだけ緩んだ。
その緩んだ顔に、上条当麻は平手を食らわせた。
「ぶっ!?」
「とりあえずこれで恨みっこナシだ。俺達だって病み上がりのお前に迷惑かけたし、お互い様ってことにしようぜ?」
「はぁ……そッスか?」
「あと別に無理して敬語使わなくてもいいぞ。クラスメイトなんだしさ」
「ドーモ」
まだ微妙な距離感は否めないが、悪いやつでないことは確かだ。
上条当麻はなるべく人好きのする笑顔で手を差し出した。
「とりあえずこれからよろしくな。東方」
「おう。ドーモ」
東方仗助はその手を握り返すと、まじまじ上条当麻の顔を見た。
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「アンタってぇ~委員長タイプッスねぇ~なんとなく」
「……おせっかいと言いたいのでせうか」
「フツーーはベランダに干されてる人間にメシなんて食わせねーよ」
「そりゃそーだ」
「どっちかっつーとお人よしッスね」
「上条さんは生まれながらの不幸体質なので、他人の不幸にはえらく共感する仕様なのです」
「そりゃグレートにヘビーなサガだな」
今のは褒められたのだろうか。
彼と分かり合うには、やはりもう少し時間が必要のようだ。
「で! その変な女もといインデックスはぁ~」
「不貞寝してやがる……妙に静かだと思ったら」
「ま、寝かせといてやりましょーや」
「お前ベッド占領されるわけだけど、いーんですかい?」
「マーなんとか……確か予備の毛布が……この、ダンボールの、どっかに……」
ダンボールの塔の前で途方にくれる東方仗助に、上条当麻が言えることはタダひとつだった。
「そーいやウチに行き場のない来客用布団がありましてね……」
→TO BE CONTINUED....
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
とりあえずここまで
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
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仗助さんはスタンド発動の自覚がない感じ?
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承太郎さんに怒られるっつってから自覚あるんじゃねーッスかねぇ
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サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
これの時間軸はどこなんスかね~
承太郎さんがいるってことはスタンド自覚してると思うんッスけど~
服を針で直すってのはどーゆーことッスかね~
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
承太郎さんがいるってことはスタンド自覚してると思うんッスけど~
服を針で直すってのはどーゆーことッスかね~
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
>>31
テメエ今何つったコラァ~!
テメエ今何つったコラァ~!
上条「その幻想をぶち壊す!」
仗助「問題なく直す」
あれ相性最悪じゃねこいつら
仗助「問題なく直す」
あれ相性最悪じゃねこいつら
合わせて
幻想を直す
問題なくぶち壊す
ほら大丈夫な気がしてきた。
幻想を直す
問題なくぶち壊す
ほら大丈夫な気がしてきた。
そげぶ→治す→そげぶ→治す→…
やったね上条さん、そげぶし放題だ!
やったね上条さん、そげぶし放題だ!
スタンドそげぶしたら本体の体にズギュゥンと戻るのが禁書×ジョジョのお約束になってるな
上条当麻はまじまじと鏡の中の自分を見た。
「……傷が」
消えている。
インデックスが寝て、東方仗助と布団を取りにいって、
その際「怪我いてーんスか? どんくれェひでーの? なんだゼンゼンなんともねーじゃねッスかぁ~~」と東方仗助に言われたと思ったら痛みがひいていた。
確認すれば、真っ赤にはれた頬も、無数の噛み傷も、きれいさっぱり消えていた。
「コレは一体なんじゃらほい……」
いや、心当たりはあるのだ。
『透明の腕』。
転入生・東方仗助の体から出てきた、正体不明の力。
解せないのは、自分が異能の力――それこそ神の奇跡さえ――をことごとく無効化する『右手』を持っているはずなのに、
なぜ『透明の腕』の力が効いているのか? ということである。
いまさらファンタジーやメルヘンの世界の扉が開いたわけでもあるまい。
ならば怪我自体自分の妄想だったか、今までの『右手』に対する解釈が間違っていたか、
――あるいは、『透明の腕』は電撃や魔術とは全く違う世界のシロモノなのか……。
んなアホな。
「しかし、東方といいインデックスといい、日本国外はワンダーランドですかぁ?」
鏡の前でうなっているうちに担任から「明日から夏休み……のはずでしたけど、上条ちゃんは馬鹿だから補習でーす」
とラブコールがかかってきて、上条当麻はまた新たな悩みを抱えることになった。
『一分でも遅刻したら「すけすけ見る見る」ですよ? まあ、上条ちゃんは記録術(カイハツ)の単位が足りてないので、どっちみち「すけすけ見る見る」なのですけどね』
「勉強意欲が減退するようなこと言わんでくださいよ……。小萌先生、ちょっとばかし聞きたいことがあるんですけど……」
オープンキッチンから見やれば、東方仗助とインデックスが毛布の取り合いをしていた。
「くせーからこっち寄越すッスよホラ!」「やぁぁんぐぐぅぅむぅぅ~~」との会話から、使い倒しを取り替えてやろうとした東方仗助に、寝ぼけたインデックスが抵抗しているのだろう。
『はぁ~い? なんなのですか?』
「東方なんですけど、あいつってどんな能力持ちなんです?」
転入生は入学手続きと平行して身体検査(システムスキャン)が行われる。
既に能力系統やレベルは判明しているはずだ。
『もう2人はお友達になったのですか~? やっぱり上条ちゃんに任せて正解だったのですよ!』
「あーー友達かどうかはまだ微妙で……それで?」
『東方ちゃんは~~……上条ちゃんたちとお揃いの、レベル0! なのですよ~』
上条当麻は思わず受話器を見た。
「それ、確かなんですか? ほんとにアイツは無能力者?」
『それはもう、一日漬けでしっかり検査しましたから、間違いなんてありえません』
「……」
と、いうことは。
「どーゆーことなんでしょーか……」
うん。わからん。
ベッド上の戦いは熾烈を極めた末、ついに決着したらしい。
インデックスは毛布を抱き枕のように抱えたまま丸くなっていて、東方仗助はあきらめ顔でそれの端っこをつまんでいる。
「上条よぉ~~こいつなんとかしてくれよ。梃子でも離さねー勢いだぜこいつはよ~」
「案外においフェチなのかもな。まあほっといってやったらいいんじゃないですか?」
「ケッ、あとでニオイが移った~なんつっても責任とってやんねーからな」
「明日までいるのかなーこいつ」
「いるんじゃねーの?」
「だったら俺明日補習だからさ、一緒に世話みてやれねーかも」
「別にいいぜ。俺も全快するまでどーせ暇だしよ~」
「悪いな」
「しかしほんとどーすっかね。こいつ保護者とかいるのかよ」
東方仗助の言葉にうーむとうなって、上条当麻はインデックスを見た。
平和にのん気に寝息を立てている。
「本当にぐっすりだな」
「逃げてきたとか言ってたし、案外クタクタだったのかもなぁ~」
「逃げて、か……」
彼女の巻き込まれている事件のいかんによっては、もしかしたら、警備員(アンチスキル)かなにかにご足労頂くかもしれない。
上条当麻が考えることは色々あった。
まずインデックス。
なぜ、彼女は追われているのか?
誰が彼女を追っているのか?
彼女の言うには、彼女の持つ魔術書を狙って魔術師が襲ってきたとのことだが、この科学の町で、どこまで信用していいものか?
東方仗助もまた謎だ。
あの『透明の腕』はなんなのか?
検査に感知されない。『右手』も通じない。ということは異能じゃない? んなわけない。
わからないことは多すぎて、そのくせそいつはウロボロスの蛇のように自分の尻尾を咥えてやがるもので、思考はいつまでたっても堂々巡りである。
だが――。
上条当麻は思い出す。
インデックスの寝顔は無邪気で安らかだった。
それを見守る東方仗助の顔にも後ろ暗いものはなかった。
「……ま、いいか」
あの2人が何者であるにせよ、悪意ある敵でないことは確かなのだ。
「……よくないのですよ」
「えっ」
気がつくと小萌担任が涙目で自分を見上げていた。
「さっきから何度も呼んでるのに、どおしてお返事してくれないのですかぁ、先生は、先生はぁ……~~!」
「う、うぐっ」
教室を見回すと、男子の悪意ある視線に体を貫かれ、上条当麻は脂汗をたらした。
~~~
その後も下校中ビリビリ中学生に絡まれたり、そのせいでセキュリティに追われたりと、常人の三日分相当くらいの不幸を食らって、上条当麻はようやく寮にたどり着いた。
「……んお?」
エレベーターから出た上条当麻の目に映ったのは、自室の前にたむろする掃除ロボットだった。
その向こうには見慣れた顔がふたつ。
一方は壁にもたれかかって目をつぶり、もう一方はこちらが近づいてくるのを見ると目を潤ませた。
「なんだ? どうして外の、しかも俺の部屋の前にいるんだよ。って、うお」
ぼすんとインデックスが突撃してくる。
プルプル肩が震えてるのを見るに、泣いているらしい。
「ど、どうしたよ、インデックス? また言い合いでもして、東方が頭でも打っちまったのか?」
「ま……ま……」
涙声で何か言おうとしているらしいが、それがまともなセリフになることはなかった。
「おい東方?」
ギクリと。
彼を抱き起こそうとして触れた瞬間、手に言い知れぬ不気味な感触を感じた。
見れば手のひらは赤黒くぬれていて、上条当麻はますます目をむく。
もう一度触れた首筋は、ぞっとするほど冷たかった。
「なん……だよこれ……!」
「ま……魔術師、に、やられて……どうしよう、私、どうすればいいのかな。どうしよう……!?」
「どぉーー、もしなくていいよ」
『!!』
2人が振り返ると、いつの間にか男が立っていた。
赤い髪。いくつもつけたピアス。身長は2mを越しているだろう。咥えタバコに、目の下にはバーコード。
「どうせすぐ死んじゃうだろうしね、そいつ」
上条当麻もインデックスも怖くて言えなかったことを、彼は平然と口にした。
→TO BE CONTINUED....
東方仗助が起きると少女が寝ていた。
しばしの思考停止。
「……あ~~」
冷静になるためヘアースタイルを整えているうちに、彼はすべてを思い出した。
「そーいや泊めてたっけか……しかしあれからずっと起きねーとは、やっぱそーとー疲れてたんだな~」
と言った矢先にインデックスの瞼がぱちりと開いた。
がばりと起き上がり、左右を見渡す。
「わ、私寝ちゃってた!? ここは一体ドコ!? いま何時!?」
朝日がまぶしい。
「朝!?」
「落ち着けってインデックスよぉ~~」
「あ、あなたはひ、ひ……」
「仗助」
「じょうすけ!」
「随分慌ててるみてーだけどよ~なんか約束でもしてたのかよ?」
「そうじゃないんだよ! 私を追ってる魔術師がここまで来るかも……早く立ち去らないと」
バタバタと支度をし始めたインデックスを東方仗助はボーっと見つめる。
不意に、インデックスの動きが止まった。ギギギと振り返る。
「じょうすけ……この服、元には戻らないのかな?」
「は? さあ……ちょっと、そこまで変形してちゃあ難しいかもなぁ~」
「こんな風に改造しちゃったのは君なのに……!」
恨みがましく睨んでくる。
東方仗助は小さくうなって、後ろ頭を掻いた。
「昨日から俺のせい俺のせい言ってくるけどよー、冷静に考えてみりゃ、俺がおめーの服をこんな風にできる道理なんてねーんだよな~」
「実際やったんだよ!」
「じゃ、プッツンしてる時の俺ァ、器用さ二割増しってことか。で、俺がそいつを前衛的デザインに改造してる間おめーらはおとなしく見てたってワケかい?」
「そうじゃなくて! なんかこう……なんだかよくわからないので一瞬でドギュンッてやったんだよ!」
「おめーの言ってることがなんだかよくわからねーな~~俺ァよ~」
「むむむむぅ……! バカにしてぇ……!」
「してねーよ」
「だったらもうちょっとまじめに喋るんだよ!」
「まじめにっつってもよ~~俺ァこーゆー話し方だからよ~」
徹底的にかみ合わない。
インデックスはぷうと頬を膨らました。
「もういいんだよ!」
ぼすんっ。
デッサンの狂った服を頭からかぶり、さっさと身支度を整える。
「オメー行くあてはあるのかよ?」
「教会に保護してもらう。さすがに、連中もそこまで追ってはこないだろうから」
「ふーん? っておーい」
東方仗助が腰を上げる前に、インデックスは玄関のドアに手をかけていた。
「じゃあね、泊めてくれてありがとう。もうひとりの……とうま、にもお礼言っといてほしいな」
バタンッ。
東方仗助は上げかけていた腰をストンと下ろした。
「教会って……学園都市にそんなもんあんのか~?」
と同時に、ベッドの上に放置されていたものを発見する。
東方仗助はそれを手にとってじっと見つめていたが、やがて脇に放り投げた。
「マッ、いーか。そのうち取りに戻ってくるだろ」
インデックスは圧倒されていた。
なんのためかわからないがとにかく高い建物。
なんのためかわからないがひしめく車。
そして人、人、人。
「ご、ごめんなさい、通してほしいかも、ごめんなさ……きゃ!」
ドッシィン。クルクル、ストン。
といった具合にインデックスは商店街へと迷い込んだ。
「な、なにこれ、箱の中に人がいるんだよ」
「なにこれ、掃除キ? これで掃除するの? どうやっ(ブオオオオンッ)……わひゃあ!?」
「なにこれ、箱から風が出て来るんだよ、冷たいんだよ」
「ひっ!? きゅ、急にここだけ明るくなったんだよ!? 空間を切り取って時間軸の操作が行われてるの? それとも太陽のレプリカ? どっちにしたって怖いんだよ!」
まさにインデックス・イン・ワンダーランド。
というより浦島太郎。
シスターで外人というだけでも相当なのに、行く先々でこんなことをやっていては圧倒的に目立つ。
ということに三十分くらいして彼女はやっと気づいた。
「こ、このままじゃ敵に見つかっちゃうかも……早くここを出ないと」
しかし、右も左もわからない。
ついでに言えば地図も読めない。
インデックスは完全に詰んでいた。
「ど、どうしよう……道を聞いてもいいけど、そのせいで誰かが巻き込まれたらいけないし……わひゃ!?」
掲示板の前でウンウンうなっていると、いきなり頭を押さえつけられる。
見上げれば、知っている顔が学ラン姿で立っていた。
「マッ、いーかってな。追ってきちまったぜ。俺って暇だからよ~」
「じょうすけ……?」
「忘れ物だぜ。フード」
「あ! ありがとう! 危なかったんだよ、『歩く教会』は魔術で動いてるから、敵もこれをもとにサーチかけてるんだ……もしあのままあそこにあったら……」
「はぁ……? マーよかったな」
「じゃ、私はこれで!」
「おお? 待てよ」
立ち去ろうとしたインデックスはあっさり引き止められた。
「な~にソソクサ去ろうとしてんだよ。どーせ道どころか出入り口もわかってねぇんだろオメーはよぉ~」
「た、確かにそうだけど、これ以上一緒にいたら君を巻き込んじゃうかも!」
「心配し過ぎだっての。よく考えろよ。こんな真昼間の人通りの多いところでよ~好き好んで襲ってくるヤローがいると思うか?」
言われてインデックスは辺りを見回す。
確かに、暗殺だの誘拐だのするにはここは明るすぎるかもしれない。
「俺ァよくしらねーけど、セキュリティも万全らしーしよぉ~なんかあったらすぐ警備が飛んでくるよーなところで襲い掛かってくるほど、敵もモウロクしてねーだろ」
「そ、そう、かな?」
「そうそ」
ポンポン。
インデックスの肩をたたく東方仗助。
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